JP3609516B2 - 被覆成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばハードコートタイプのプラスチック製品を製造する際に使用される被覆成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来において、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)等からなるプラスチック製品は、軽量で、加工し易く、更に耐衝撃性等にも優れているため、様々な用途に使用されている。
【0003】
ところが、このようなプラスチック製品は、表面が比較的軟らかく、傷付き易いので、耐摩耗性等の表面特性が要求される分野では、そのまま使用することは困難である。このため、耐摩耗性向上のために、上記プラスチック製品の表面を、高硬度の表面処理剤によりコーティングする技法が多く採用されている。
【0004】
このようなハードコートされたプラスチック製品は、もちろん、そのままの形状、すなわちフィルムないしはシート状のまま使用されることもあるが、必要に応じて、所定の形状に成形加工して使用することもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ハードコートタイプのプラスチック製品は、被覆層の硬度が高いため、成形加工した際に、被覆層の折曲部周辺に応力が集中して、クラックが発生し、品質が低下するという問題があった。
【0006】
またプラスチック基材を所定形状に成形した後、表面処理剤を塗布して硬化することも考えられるが、そうすると複雑形状のプラスチック基材に、表面処理剤を塗布することになり、その塗布作業が非常に面倒であるという別の問題が発生する。
【0007】
一方、近年になって、特公平5−43507号公報に示されるように、未硬化状態で固体の紫外線硬化型樹脂を、プラスチック基材の表面に塗布して積層体を得、その積層体を所定の形状に成形加工した後、紫外線を照射して、上記紫外線硬化型樹脂からなる表面被覆層を硬化させるという技術が提案されている。
【0008】
しかしながら、未硬化状態の上記紫外線硬化型樹脂は、粘性が高く、べた付き易いので、成形加工時等の取扱作業をスムーズに行えず、更に成形加工時等に未硬化状態の表面被覆層に簡単に傷が付いてしまい、良好な外観美を得ることができないという問題が発生する。
【0009】
この発明は、上記従来技術の問題を解消し、成形加工時等の取扱作業を支障なく行えて、しかも表面硬度が高くて耐摩耗性等の表面特性に優れ、更にクラックの発生や傷付きを防止できて、外観も良好な高品質のプラスチック製品を得ることができる被覆成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の被覆成形品の製造方法は、可視光線、紫外線、エックス線、ガンマ線、電子線により規定される活性エネルギー線を照射することによって硬化する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と、加熱することによって硬化する熱硬化性樹脂組成物とが配合された表面処理剤を、成形用基材の表面に塗布して積層体を得、前記積層体に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物成分を硬化させることにより、前記表面処理剤を半硬化させ、その半硬化状態で、前記積層体を所定の形状に成形し、次いで、その成形された積層体を加熱して、熱硬化性樹脂組成物成分を硬化させることにより、前記表面処理剤を全硬化させるものである。
【0011】
本発明の被覆成形品の製造方法においては、上記積層体の表面処理剤に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物成分を硬化させることにより、表面処理剤を半硬化させ、その半硬化状態で所定形状に成形加工するものである。この場合、積層体の表面被覆層である表面処理剤は半硬化状態であるため、べた付かず、成形加工時等の取扱作業をスムーズに行えるとともに、傷が付き難く、良好な外観美を保つことができる。
【0012】
また本発明において、半硬化状態の表面被覆層は、適度な柔軟性を有しているため、成形加工時に、表面被覆層の折曲部に集中しようとする応力を周辺に分散させることができ、クラックが発生するのを有効に防止できる。
【0013】
更に積層体を所望の形状に成形加工した後、加熱処理して表面被覆層をその熱硬化樹脂組成物成分を硬化させることにより全硬化させるものであるため、表面被覆層に十分な硬度が得られ、耐摩耗性等の表面特性に優れたプラスチック製品を製造できる。
【0014】
以下、本発明の構成を、更に詳細に説明する。
【0015】
本発明において、成形用基材としては、成形加工が可能なものであれば、どのようなものでも使用できるが、加工性等を考慮すると、真空成形、圧空成形、プレス成形等の熱成形により成形加工可能な合成樹脂、具体的にはポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)等からなるものを好適に使用できる。更に成形用基材は、透明であっても、着色されていても良く、更に形状も限定されるものではないが、シート状、フィルム状、板状等が一般的である。また成形用基材は、必要に応じて、適宜の手段により模様等が付与されていても良い。
【0016】
本発明における表面処理剤は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と、熱硬化性樹脂組成物とが配合されたものからなる。
【0017】
ここで本発明において、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とは、可視光線、紫外線、エックス(X)線、ガンマ(γ)線、電子線により規定される活性エネルギー線を照射することによって硬化する樹脂組成物を言う。
【0018】
この樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化型樹脂に、光重合開始剤が配合されるもので構成されるのが一般的であり、このうち活性エネルギー線硬化型樹脂としては、光重合開始剤の存在下で、活性エネルギー線の照射により高分子化あるいは架橋する重合性化合物を使用するのが好ましく、中でも特にカチオン重合性樹脂であるものが好ましい。
【0019】
カチオン重合性樹脂としては、エポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、ビニル化合物等の中から選択される1種又は2種以上の化合物からなるものを例示することができ、中でも特に、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、例えば、周知の芳香族エポキシ樹脂や、脂環状エポキシ樹脂等を好適例として挙げることができる。このうち芳香族エポキシ樹脂の具体例としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3´,4´−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5´−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキセン)、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジエポキサイド等を挙げることができる。
【0020】
これらの活性エネルギー線硬化型樹脂は、単独で使用しても2種以上のものを所望の性質に応じて併用して使用しても良い。
【0021】
またこの活性エネルギー線硬化型樹脂としてエポキシ系のものを使用する場合、多価アルコール類の架橋剤を添加するのが良い。多価アルコールの具体例としては、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0022】
本発明において、光重合開始剤とは、活性エネルギー線の照射により重合を開始させる物質を放出することが可能なものを言う。特に上記活性エネルギー線硬化型樹脂がカチオン重合性のものである場合には、光重合開始剤として、活性エネルギー線の照射によりルイス酸を放出するオニウム塩やメタロセン錯体等の活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤を好適に使用することができる。具体的には、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−ジフェニルスルフォニオフェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート等を好適なものとして例示できる。
【0023】
これらの光重合開始剤は、単独で使用しても2種以上のものを併用して使用しても良い。
【0024】
本発明において光重合開始剤は、上記活性エネルギー線硬化型樹脂を100重量部としたとき、0.1〜10重量部配合するのが好ましく、下限値を1重量部以上、上限値を7重量部以下とするのが、より一層好ましい。すなわち光重合開始剤の配合量が少な過ぎると、活性エネルギー線の照射によっても、表面処理剤が硬化せず、粘着性が高くなり、成形加工時等の取扱作業が困難になる恐れがある。逆に光重合開始剤の配合量を過度に多くしても、それによる利益は得られず、無意味であるので、好ましくない。
【0025】
本発明において、熱硬化性樹脂組成物とは、加熱により硬化する樹脂組成物のことを言う。この組成物は、熱重合触媒の存在下で加熱により架橋して硬化する熱硬化性樹脂に熱重合触媒等の熱重合開始剤が配合されたものにより構成されるのが一般的である。このうち、熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ基を含むカチオン重合性樹脂を好適例として挙げることができ、具体的には、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、多価アルコールのポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物を挙げることができる。
【0026】
これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用しても2種以上のものを併用して使用しても良い。
【0027】
本発明において、上記熱重合開始剤とは、加熱により重合を開始させる官能基を含む化合物を言う。特に上記熱硬化性樹脂がエポキシ基を含むものである場合には、この熱重合開始剤としては、熱反応性カチオン重合開始剤を使用するのが好ましい。熱反応性カチオン重合開始剤の具体例としては、4−クロロフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート、ビニルベンジル−4−メチルフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、シンアミルジメチルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート、9−フルオレニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフロロアンチモネート等を挙げることができる。
【0028】
もちろん、これらの熱重合開始剤は、単独で使用しても2種以上のものを併用して使用しても差支えない。
【0029】
本発明において熱重合開始剤は、上記熱硬化性樹脂を100重量部としたとき、0.1〜10重量部配合するのが好ましく、下限値を1重量部以上、上限値を7重量部以下とするのが、より一層好ましい。すなわち熱重合開始剤の配合量が少な過ぎると、加熱処理によって、表面処理剤が硬化せず、十分な耐摩耗性等の表面特性を得ることができず、好ましくない。逆に熱重合開始剤の配合量を過度に多くしても、それによる利益は得られず、無意味であるので、好ましくない。
【0030】
本発明の表面処理剤は、上記活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤、熱硬化性樹脂、及び熱重合開始剤等が配合されてなるものであるが、この配合物には、必要に応じて、反応性希釈剤、硬化促進剤、顔料、染料等の色剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種樹脂添加剤、改質用樹脂等を、上記配合物の性能が損なわれない範囲内で、適宜添加しても良い。
【0031】
本発明の表面処理剤において、活性エネルギー線硬化型樹脂と熱硬化性樹脂との配合割合は、その合計を100重量部としたとき、活性エネルギー線硬化型樹脂を20〜80重量部、熱硬化性樹脂を80〜20重量部とするのが好ましく、更に好ましくは活性エネルギー線硬化型樹脂を35重量部以上で、65重量部以下、熱硬化性樹脂を65重量部以下で、35重量部以上とするのが良い。すなわち活性エネルギー線硬化型樹脂の配合量が多くなって相対的に熱硬化性樹脂の配合量が少なくなり過ぎると、活性エネルギー線を照射して表面処理剤を半硬化させた際に、被覆層としての表面処理剤の硬化が過剰に進行し、その後の成形加工が困難になるので、好ましくない。逆に活性エネルギー線硬化樹脂の配合量が少なくなって相対的に熱硬化性樹脂の配合量が多くなり過ぎると、活性エネルギー線の照射により、被覆層としての表面処理剤を半硬化させた際に、その硬化が不十分となり、軟らか過ぎて、被覆層に傷が付いたり、べた付いたりする等の不具合が生じるので、好ましくない。
【0032】
以上の構成の表面処理剤は、適当な方法により、成形用基材に積層すれば良い。例えば、表面処理剤を溶剤に希釈して、ロールコート、フローコート、あるいはディップコート等のコーティング処理方法により成形用基材表面に被覆層として積層し、積層体(中間製品)を得る。
【0033】
この積層体は、活性エネルギー線を照射することにより被覆層の表面処理剤のうち、熱硬化性樹脂成分は未硬化のままで、活性エネルギー線硬化型樹脂成分が硬化して、半硬化状態となる。この半硬化状態の被覆層は、適度な硬度を有しているため、べた付きや傷付きが発生し難く、その後の成形加工等を支障なく行える。また半硬化状態の被覆層は、適度な柔軟性も兼ね備えているため、成形加工時に、被覆層の折曲部に集中しようとする応力を周辺に分散させることができ、クラックが発生するのを有効に防止できる。
【0034】
ここで積層体の成形加工方法として、は、周知の熱成形法、例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形の他、プレス成形等の方法を好適に採用できる。
【0035】
成形加工した後、上記積層体を加熱して、表面被覆層の熱硬化性樹脂成分を硬化させることにより、被覆層を全硬化させる。これにより、良好な表面硬度を有するプラスチック製品を製造できる。
【0036】
なお本発明において、積層体は、成形加工前、成形加工中、あるいは成形加工後に他の基材と積層一体化しても良い。この積層方法としては、例えばプレスラミネート、押出同時ラミネート等の熱ラミネート方式や、接着剤を用いる接着剤ラミネート方式等を好適に採用できる。
【0037】
ところで、本発明は、積層体の表面処理剤を、活性エネルギー線の照射による硬化と、加熱による硬化との2段階で硬化させるものであるが、活性エネルギー線の照射による硬化を先に行って、加熱による硬化を後から行う必要がある。すなわち加熱により表面処理剤を半硬化させた後、成形加工し、続いて表面処理剤に活性エネルギー線を照射しても、被覆層(表面処理剤)の硬度は十分に向上せず、被覆成形品として、十分な表面硬度を得ることができなくなってしまう。この要因は正確には判っていないが、本発明者の見解によると、熱は表面処理剤の内部までスムーズに伝達して、被覆層全体の硬度を向上させるのに対し、活性エネルギー線は、熱のように、表面処理剤の内部まで浸透することはなく、被覆層表面のみの硬度を向上させるに過ぎず、被覆層全体としての硬度を十分向上させることができないためと考えられる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明に関連した実施例及びその効果を導出するための比較例につき、詳細に説明する。
【0039】
<実施例1>
【表1】
上表1に示すように、活性エネルギー線硬化型樹脂として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3´,4´−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを45重量部、光重合開始剤として、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを2重量部、熱硬化性樹脂として、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイドを55重量部、熱重合開始剤として、4−クロロフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフロロアンチモネートを2重量部配合して、十分混合し、表面処理剤を得た。この表面処理剤を、厚さ2mmの透明なポリカーボネート樹脂製板からなる成形用基材の表面に、バーコーターを用いて厚さ10μmとなるように塗布して、積層体を得た。
【0040】
【表2】
上記積層体に、紫外線照射装置にて1000mJの紫外線を照射して、被覆層としての表面処理剤を半硬化させた。このとき上表2に示すように、半硬化状態の被覆層に、タック(粘着性)は認められなかった。またこの積層体において、JIS K5400「碁盤目テープ法」に準拠して被覆層の成形用基材に対する密着性試験を行ったところ、その測定値が100/100となり良好な密着性が得られた。
【0041】
次に被覆層を半硬化させた後、積層体を、真空成形機を用いて、所定の形状に成形した。すなわち、積層体表面をヒーターで185℃まで加熱した後、積層体を面倍率(成形後の面積/成形前の面積)2.0で成形した。このとき、被覆層にクラックの発生は一切認められなかった。更に積層体における成形加工に伴う取扱作業の面でも全く支障はなかった。
【0042】
次にこの積層体を金型上において180℃で20分間加熱して被覆層を全硬化させて、ハードコートタイプのプラスチック製品(被覆成形品)を得た。そしてこの被覆成形品の表面に対し、テーパー摩耗試験(ASTM D1044,CS−10F摩耗輪,500g荷重・100回転)を行ったところ、試験前後の曇価の差(ΔHAZE)は、3.3%であり、良好な耐摩耗性を備えていることが判った。
【0043】
<実施例2>
上表1、2に示すように、活性エネルギー線硬化型樹脂として、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートを45重量部、光重合開始剤として、ビス(4−ジフェニルスルフォニオフェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネートを1.5重量部、熱硬化性樹脂として、リモネンジオキサイドを55重量部、熱重合開始剤として、シンアミルジメチルスルホニウムヘキサフロロアンチモネートを2重量部、更に架橋剤として、トリメチロールプロパンを5重量部配合して、十分混合し、表面処理剤を得、上記実施例1と同様に積層体を得た。
【0044】
そしてこの積層体に、上記と同様に紫外線を照射して、被覆層としての表面処理剤を半硬化させたところ、被覆層にタックは認められなかった。更に上記と同様の密着性試験を行ったところ、その測定値は100/100となり、被覆層が成形用基材に良好に密着していた。
【0045】
次にこの積層体を上記と同様に所定形状に成形した。このとき被覆層にクラックは発生せず、また成形加工に伴う取扱作業の面でも全く支障はなかった。
【0046】
続いて成形後、上記と同様にして被覆層を全硬化させた。そしてこの被覆成形品に対し、上記と同様に、テーパー摩耗試験を行ったところ、試験前後の曇価の差(ΔHAZE)は、2.6%であり、良好な耐摩耗性を備えていた。
【0047】
<実施例3>
上表1、2に示すように、本実施例3においては、活性エネルギー線硬化型樹脂の配合割合を、他の配合物質に比べて、かなり多くして上記と同様な実験を行った。
【0048】
すなわち活性エネルギー線硬化型樹脂として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3´,4´−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを90重量部、光重合開始剤として、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを4重量部、熱硬化性樹脂として、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイドを10重量部、熱重合開始剤として、4−クロロフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフロロアンチモネートを0.5重量部配合して、十分混合し、表面処理剤を得、上記と同様に積層体を得た。
【0049】
そしてこの積層体に、上記と同様に紫外線を照射して、被覆層としての表面処理剤を半硬化させたところ、被覆層にタックは認められず、更に上記と同様の密着性試験においても、100/100となり、被覆層が成形用基材に良好に密着していた。
【0050】
次にこの積層体を、上記と同様な方法で、面倍率1.2で成形したが、クラックの発生は認められなかったが、また面倍率2.0で成形すると、クラックの発生が認められた。なお成形加工に伴う取扱作業は支障なく行えた。
【0051】
続いて成形後、上記と同様にして被覆層を全硬化させた。そしてこの被覆成形品に対し、上記と同様にテーパー摩耗試験を行ったところ、試験前後の曇価の差(ΔHAZE)は、3.5%であり、良好な耐摩耗性を備えていることが判った。
【0052】
<実施例4>
上表1、2に示すように、この実施例4においては、熱硬化性樹脂の配合割合を、他の配合物質に比べて、かなり多くして上記と同様な実験を行った。
【0053】
すなわち、活性エネルギー線硬化型樹脂として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3´,4´−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを10重量部、光重合開始剤として、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを0.4重量部、熱硬化性樹脂として、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイドを90重量部、熱重合開始剤として、4−クロロフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフロロアンチモネートを4重量部配合して、十分混合し、表面処理剤を得、上記と同様に積層体を得た。
【0054】
そしてこの積層体に、上記と同様に紫外線を照射して、被覆層としての表面処理剤を半硬化させたところ、多少のタックは認められたものの、実質的に問題となるものではなかった。更に上記と同様の密着性試験においても、100/100となり、被覆層が成形用基材に良好に密着していた。
【0055】
次にこの積層体を、上記と同様な方法で、面倍率2.0で成形したが、クラックの発生はなく、また多少の困難は伴ったが、所定の品質を確保しつつ、滞りなく成形加工は行えた。
【0056】
続いて成形後、上記と同様にして被覆層を全硬化させた。そして上記と同様にテーパー摩耗試験を行ったところ、試験前後の曇価の差(ΔHAZE)は、4.0%であり、良好な耐摩耗性を備えていることが判った。
【0057】
<比較例1>
上表1、2に示すように、この比較例1においては、熱硬化性樹脂組成物を配合せずに、表面処理剤を作製した。
【0058】
すなわち、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3´,4´−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(活性エネルギー線硬化型樹脂)を100重量部、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(光重合開始剤)を4重量部配合して十分混合し、表面処理剤を得、上記と同様に積層体を得た。
【0059】
そしてこの積層体に、上記と同様に紫外線を照射して、被覆層としての表面処理剤を硬化させたところ、被覆層にタックは認められず、更に密着性試験においても、100/100となり、被覆層が成形用基材に良好に密着していた。
【0060】
次にこの積層体を、上記と同様な方法で、面倍率1.2で成形加工したところ、被覆層にクラックが発生し、良好な成形品を得ることができず、以降の実験を中止せざるを得なかった。
【0061】
<比較例2>
上表1、2に示すように、この比較例2においては、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を配合せずに、表面処理剤を作製した。
【0062】
すなわち、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド(熱硬化性樹脂)を100重量部、シンアミルジメチルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート(熱重合開始剤)を3重量部配合して十分混合し、表面処理剤を得、上記と同様に積層体を得た。
【0063】
そしてこの積層体に、上記と同様に紫外線を照射したが、被覆層としての表面処理剤はほとんど硬化せず、タックが残っていた。また密着性試験においては、100/100となり、基材への密着性は、良好であった。
【0064】
次にこの積層体を、上記と同様な方法で、面倍率2.0で成形した。このとき被覆層にクラックの発生は認められなかったが、被覆層に、成形加工による型跡が明確に残っていた。更にタックが残っていることにより、取扱作業も非常に困難であった。
【0065】
続いてこの成形品を、上記と同様に加熱処理して、被覆層を硬化させた後、上記と同様に、テーパー摩耗試験を行ったところ、試験前後の曇価の差(ΔHAZE)は、25.2%となり、良好な耐摩耗性を得ることができなかった。
【0066】
<評価>
以上のように、本発明の要件を満たす実施例1〜4のものにおいては、成形加工時の取扱を支障なく行え、高品質のプラスチック製品を得ることができた。中でも配合割合を特定範囲内に設定した実施例1、2のものは、良好な結果が得られた。
【0067】
これに対し、本発明の要旨を逸脱する比較例1、2のものでは、成形加工性や品質の点で劣っているのが判る。
【0068】
【発明の効果】
以上のように、この発明の被覆成形品の製造方法によれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と熱硬化性樹脂組成物とを配合した表面処理剤を、成形用基材の表面に塗布して積層体を得、その積層体を、活性エネルギー線の照射により表面処理剤を半硬化させた状態で所定形状に成形するものである。この場合、積層体の表面被覆層としての表面処理剤は半硬化状態であるため、べた付かず、成形加工時等の取扱作業を支障なく行えるとともに、傷が付き難く、良好な外観美を得ることができる。更に半硬化状態の表面被覆層は、適度な柔軟性を兼ね備えているため、成形加工時に、表面被覆層の折曲部に集中しようとする応力を周辺に分散させることができ、クラックが発生するのを有効に防止できる。また積層体を成形加工した後、加熱処理して表面被覆層を全硬化させるものであるため、その被覆層に十分な硬度が得られ、耐摩耗性等の表面特性に優れた高品質のプラスチック製品を製造できるという効果がある。
【0069】
また本発明において、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂及び光重合開始剤や、熱硬化性樹脂組成物を構成する熱硬化性樹脂及び熱重合開始剤を、所定の割合に配合する場合には、上記の効果を、より確実に得ることができるという利点がある。
Claims (5)
- 可視光線、紫外線、エックス線、ガンマ線、電子線により規定される活性エネルギー線を照射することによって硬化する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と、加熱することによって硬化する熱硬化性樹脂組成物とが配合された表面処理剤を、成形用基材の表面に塗布して積層体を得、
前記積層体に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物成分を硬化させることにより、前記表面処理剤を半硬化させ、
その半硬化状態で、前記積層体を所定の形状に成形し、
次いで、その成形された積層体を加熱して、熱硬化性樹脂組成物成分を硬化させることにより、前記表面処理剤を全硬化させることを特徴とする被覆成形品の製造方法。 - 前記活性エネルー線硬化型樹脂組成物は、光重合開始剤と、光重合開始剤の存在下で活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型樹脂とからなり、
前記熱硬化性樹脂組成物は、熱重合開始剤と、熱重合開始剤の存在下で加熱により硬化する熱硬化性樹脂とからなる請求項1記載の被覆成形品の製造方法。 - 前記表面処理剤における活性エネルギー線硬化型樹脂と、熱硬化性樹脂との配合割合は、20〜80:80〜20である請求項2記載の被覆成形品の製造方法。
- 前記表面処理剤において、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対し、光重合開始剤の配合量が0.1〜10重量部である請求項2又は3記載の被覆成形品の製造方法。
- 前記表面処理剤において、熱硬化性樹脂100重量部に対し、熱重合開始剤の配合量が、0.1〜10重量部である請求項2ないし4のいずれかに記載の被覆成形品の製造方法。
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