JP3609130B2 - クロムの分離回収方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、フェロクロム、クロム鉄鉱石、クロム−鉄系合金材料のスクラップなど、クロムと鉄とを含有する原料からクロムを分離回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クロムはステンレス鋼、スーパーアロイ、耐熱材などの原料として工業的に利用されている極めて重要な金属元素である。しかし、現在日本におけるクロム鉱石の産出は全くなく、クロム資源はすべて海外からの輸入に頼っている。このため、原料の供給体制は脆弱で市場価格が極めて不安定であり、原料の確保は重要な課題である。
【0003】
クロムの主要鉱石はクロム鉄鉱(主成分FeCr )であり、これを選鉱と製錬の加工工程を経て金属クロムおよびフェロクロムの形態で供給されている。クロム鉱物中の主要な共存元素は鉄であるため、クロム金属の製造工程において鉄の分離除去が重要なプロセスとなっている。さらに、近年ではクロム資源の保有国は高付加価値化を図るため、クロム鉱石を直接炭素還元によりフェロクロムといった中間製品の形に加工してから輸出する傾向が強く、したがってフェロクロムから鉄および炭素などの混入物を除去してクロムを分離回収し、耐食性、耐熱性あるいは耐摩耗性を有する特殊合金用の高純度クロムに精製することは益々重要な課題となっている。
【0004】
従来、上記クロムと鉄とを含有する原料からクロムを分離回収する方法として、アルミノテルミット法およびミョウバン塩の晶析分離−電解法が工業的に行われている。アルミノテルミット法は、クロム精鉱を原料として1000℃以上の高温で酸化クロムを選択的に還元して分離回収する。この方法では、鉄やアルミニウム、シリコンなどの残存により高純度のクロムを得ることが困難である。また、フェロクロムからのクロムの分離回収には適用できない。ミョウバン塩の晶析分離法は、クロムと鉄とを含有する原料を硫酸で溶解した後、アンモニアを加えて温度を繰り返して調節することにより鉄および他の金属不純物をアンモニウムミョウバン塩の沈澱として分離除去し、溶液中のクロムを電解採取法により回収する。この方法では、沈澱工程において鉄などのアンモニウムミョウバン塩は微細なコロイド状を呈するためその中にクロムイオンの混入による損失が多く、また沈澱物の濾過性が悪いため溶液からの分離が容易ではない。さらに、溶液の温度調節工程で温度を変える速度が適切でないと、一部のクロムは溶解度の低いクロムアンモニウムミョウバンとなって沈澱する恐れがある。
【0005】
このように、クロムと鉄とを含有する原料からクロムを工業的に分離回収する経済的かつ合理的な方法はまだ確立されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、クロムと鉄とを含有する原料から、クロムを効率的かつ経済的に回収する方法の開発、すなわち、安価な試薬を使用して操作性の良好なプロセスで、クロムを収率よく、かつ利用可能な純度で分離回収するクロムの分離回収方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(3)の本発明により達成される。
(1)クロムと鉄とを含有する原料からクロムを分離回収する方法であって、
硫酸水溶液にクロムと鉄とを含有する原料を溶解して酸化し、この溶液中の鉄を3価の鉄の硫酸塩とし、クロムを3価のクロムの硫酸塩とし、さらにこの溶液を熟成し、3価のクロムの硫酸塩をヘキサアクアクロム(III) 硫酸塩の形態とした後、10〜40℃の温度で、この溶液に晶析剤を添加してクロムの硫酸塩を選択的に晶析させるクロムの分離回収方法。
(2)前記熟成を10〜30℃の温度で、この温度に10時間以上保持することにより行う上記(1)のクロムの分離回収方法。
(3)前記晶析剤が、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類およびカルボン酸類のうちの少なくとも1種の水溶性有機溶媒である上記(1)または(2)のクロムの分離回収方法。
【0008】
【作用】
本発明では、クロムと鉄とを含有する原料からクロムを分離回収する際、クロムと鉄とを含有する原料を硫酸水溶液に溶解し、鉄を鉄(III) とし、クロムをクロム(III) とし3価をこえる価数の酸化状態のクロムとならないような条件で酸化して鉄(III) の硫酸塩およびクロム(III) の硫酸塩とする。この後、この酸化溶液を熟成し、クロム(III) の硫酸塩を、クロム(III) に水分子が6個配位した紫色のヘキサアクアクロム(III) 硫酸塩の形態とし、この後10〜40℃の温度で晶析剤を添加し、クロムを硫酸塩として選択的晶析させているので、高純度の硫酸クロム晶析物が高回収率で回収できる。
【0009】
このように、本発明では、晶析剤である水溶性有機溶媒と水との混合溶媒に対する鉄塩とクロム塩との溶解度の差をより大きくすることで、クロム晶析物の高純度および高回収率を実現させている。すなわち晶析に際して溶液中にヘキサアクアクロム(III) 硫酸塩の形態で存在するクロム(III) 硫酸塩は、水に対する溶解度が大きく、晶析剤である水溶性有機溶媒に対する溶解度が小さいのに対し、鉄(III) 硫酸塩は上記混合溶媒に対する溶解度が大きく、上記混合溶媒を溶媒とするクロム(III) 硫酸塩の晶析分離が容易になる。また、晶析の際の温度を上記範囲とすることで、ヘキサアクアクロム(III) 硫酸塩においてクロム(III) に配位した水分子が一部スルファト(SO 2− )配位子に置換して、ヘキサアクアクロム(III) 硫酸塩より水に対する溶解度が小さく、有機溶媒に対する溶解度が大きいアクアスルファトクロム(III) 硫酸塩に変換するのを防止し、クロム(III) 硫酸塩の晶析分離を容易にしている。
【0010】
また、本発明は、従来、工業的に行われているアルミノテルミット法やアンモニウムミョウバン沈澱法に比べて、コスト面で有利である。すなわち、本発明は、用いる試薬が安価であり、特別な装置も必要とせず、エネルギーコスト的にも有利である。
【0011】
なお、特開平3−207825号公報には、Nd等の希土類元素と鉄とを含有する原料を硫酸および硫酸水溶液中に溶解し、次いで得られた溶液にアルコールを添加して希土類元素の硫酸塩を選択的に晶析させる方法が示されている。しかし、上記公報には、本発明と異なり、晶析に先立ち、溶液を熟成し、希土類元素のヘキサアクア錯体を生成させて晶析する旨の記載はない。
【0012】
また、特開平6−65656号公報には、ニッケルと鉄とを含有する原料を、硫酸を含有する水溶液に溶解して酸化し、この溶液中の鉄を鉄(III) としたのち、この溶液に有機溶媒を添加してニッケルの硫酸塩を選択的に晶析させる方法が示されている。しかし、上記公報には、本発明と異なり、晶析に先立ち、溶液を熟成し、ニッケルのヘキサアクア錯体を生成させて晶析する旨の記載はない。
【0013】
【具体的構成】
以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0014】
本発明は、クロムと鉄とを含有する原料(以下、「原料」ともいう。)からクロムを選択的に分離回収する方法であり、主に、
(1)原料を硫酸水溶液に溶解し、酸化する溶解酸化工程、
(2)溶解酸化した液中のクロム(III) 硫酸塩をヘキサアクアクロム(III) 硫酸塩とする熟成工程、
(3)晶析剤として水溶性有機溶媒を用い、10〜40℃の温度で、クロムを硫酸塩として晶析させる晶析工程、および
(4)晶析物を溶液から分離する分離工程から構成される。
【0015】
本発明の対象となる原料としては、クロムと鉄とを含有するものであれば特に制限はないが、具体的にはフェロクロム、クロム鉄鉱石、クロム−鉄系合金のスクラップ等のいずれであってもよい。特に、鉄を金属元素換算で5〜80重量%程度含有するクロム含有原料であることが好ましい。クロム、鉄の他に含有される金属等の主な元素としては、通常、マンガン、カルシウム、ニッケル、コバルト、銅、アルミニウム、酸素、ケイ素、炭素、イオウ、リン等である。
【0016】
なお、原料中の金属等の主な元素の含有量は、金属やケイ素等については、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法による測定結果から、また炭素等については燃焼赤外線吸収法による測定結果から求めることができる。また、回収物における金属等の主な元素の含有量も同様にして求めることができる。
【0017】
次に、本発明の分離回収方法を、(1)溶解酸化工程、(2)熟成工程、(3)晶析工程および(4)分離工程に分けて詳述する。
【0018】
(1)溶解酸化工程
本発明では、まずクロムと鉄とを含有する原料を硫酸水溶液に溶解する。使用する硫酸の量は原料中のクロムと鉄が硫酸塩を生成するのに必要な化学量論量の1〜3倍、好ましくは1〜2倍とする。このような量比とすることによって、存在するクロムおよび鉄をすべて硫酸塩とすることができる。これに対し、硫酸の量が少なすぎると、硫酸塩への変換が不完全となり、硫酸の量が多すぎると無駄となるばかりでなく好ましくない不要な反応が起きてしまう。
【0019】
また、硫酸水溶液における硫酸濃度は12規定程度以下、好ましくは1〜8規定程度が適当である。このような硫酸濃度とすることによって存在するクロムおよび鉄をすべて硫酸塩とすることができる。これに対し、濃度が高くなりすぎると、硫酸はのちほど添加する晶析剤と作用して硫酸エステルなどを生成する恐れがある。硫酸エステルは不揮発性の油状液体であり、晶析物に付着してその濾別と乾燥を困難にするので好ましくない。
【0020】
なお、溶解時の温度は50〜120℃程度に上げることが好ましく、これにより溶解を促進させることができる。
【0021】
次に、このような溶液を酸化して溶液中の硫酸第一鉄を硫酸第二鉄に酸化させる。この場合の酸化は、溶解したのち行ってもよく、また溶解と同時に進行させてもよく、特に限定されるものではない。
【0022】
このように硫酸第一鉄を硫酸第二鉄に酸化するのは、のちほど添加する水溶性有機溶媒の水溶液中において硫酸第二鉄の溶解度が硫酸第一鉄の溶解度よりも高く、次の晶析工程における硫酸クロムとの晶析分離を容易に進行させるためである。
【0023】
酸化は、いずれの方法によってもよいが、Fe2+を電気化学的にFe3+に酸化する能力を有し、Cr3+を酸化する能力を持たないことが必要である。原料中のクロムは硫酸溶解時に通常三価クロムイオンの硫酸塩となるが、さらに高い価数に酸化されるとクロム酸イオン(CrO 2− )や重クロム酸イオン(Cr )などの陰イオンになってしまい、これらの陰イオンは晶析時において鉄イオンと結合してクロム酸鉄などの形で析出する恐れがある。
【0024】
なかでも、酸化は空気酸化により行うことが好ましい。具体的には、硫酸水溶液に原料を溶解させながら同時に空気酸化を進行させることが好ましい。このような空気酸化は、溶解時と同じ温度で溶解工程も含めて1時間〜10時間程度の時間をかけて行うことが好ましい。このような空気酸化によることが操作性等の点で好ましいが、空気中に限らず酸化性雰囲気とすればよく、酸化性雰囲気中の酸素濃度は20体積%以上とすればよい。この他、溶液中に酸素を吹き込むなどして酸化を促進することができる。さらには硝酸(HNO )などの酸化剤を用いて酸化を行ってもよい。硝酸を用いるときは、6〜14規定程度の硝酸水溶液などを添加すればよい。このような場合、使用する酸化剤の量は原料中の鉄含有量に応じて、第一鉄の酸化に必要な化学量論量の1〜2倍程度が適当である。
【0025】
このような酸化により溶液中に存在する鉄の硫酸塩のほとんどすべて[存在する鉄(元素換算重量)の95%以上、好ましくはほぼ100%]が酸化して鉄(III) の硫酸塩となる。
【0026】
上述した方法により原料中のクロムおよび鉄は容易に硫酸塩溶液として溶解され、それぞれ鉄(III) とクロム(III) の硫酸塩の形態で存在する。なお、クロム(III) の硫酸塩は、テトラアクアクロム(III) スルファト錯塩やトリアクアクロム(III) スルファト錯塩を主体[存在するクロム(元素換算重量)の60〜90%]とし、これらに加えヘキサアクアクロム(III) 硫酸塩、ペンタアクアクロム(III) スルファト錯塩やジアクアクロム(III) スルファト錯塩、さらに場合によってはモノアクアクロム(III) スルファト錯塩や無水硫酸クロム等が少量共存したものである。ただし、モノアクアクロム(III) スルファト錯塩や無水硫酸クロム(III) 等のクロム(III) の硫酸塩は実質的に存在せず、その存在量は通常0〜5%程度である。これらの塩の存在および存在割合は分光光度法等で確認することができる。
【0027】
上記の溶液は濾過することが好ましい。これにより難溶性不純物(例えば炭素、カルシウム等)は濾別により分離除去される。
【0028】
また、上記溶液中の鉄およびクロムイオンの加水分解を防ぐために、溶解液のpH値を0.5〜2程度に調整しておくことが好ましい。このpH範囲において鉄(III) およびクロム(III) は最も安定に存在する。なお、pHの調整には希硫酸または純水を用いることが好ましい。
【0029】
(2)熟成工程
次いで、この溶液を温度10〜30℃で攪拌または振とうを加えながら熟成させ、溶液中のクロム(III) の硫酸塩をヘキサアクアクロム(III) 硫酸塩(紫色塩)の形態とする。このような紫色塩の形態とすることにより、後続の晶析分離を容易に行うことができる。この熟成により溶液中に存在するクロム(元素換算重量)の95%以上、好ましくはほぼ100%が紫色塩として存在するようになる。また、熟成時間には特に制限はないが、上記の変換率を高めるためには、上記温度に10時間以上保持することが好ましく、さらには10〜48時間程度保持することが好ましい。なお、溶液の温度を上記範囲とするのは、クロム(III) の硫酸塩から紫色塩への変換を確実に行い、かつ紫色塩が下記化1の式(1)に示されるような配位異性体である緑色塩に変化する反応が起きるのを防止するためである。この緑色塩は、紫色塩に比べて水への溶解度が小さく、かつ晶析剤である水溶性有機溶媒への溶解度が大きいため、後続の晶析分離に際して不利になる。一方、上記温度が低くなりすぎると、クロム(III) の硫酸塩から紫色塩への変換が進行しにくくなったり、鉄の硫酸塩が析出したりする。またあまり温度が高くなりすぎると紫色塩の配位子である水分子がスルファト(SO 2− )配位子に置換して緑色塩が生成してしまう。
【0030】
【化1】
Figure 0003609130
【0031】
なお、クロム(III) の硫酸塩から紫色塩への変換や紫色塩から緑色塩への変換は、可視紫外吸収スペクトル等によって確認することができる。また、これらの塩の定量は、分光光度法やICP発光分析法によって行うことができる。
【0032】
(3)晶析工程
得られた溶液中に晶析剤を添加してクロムの硫酸塩を結晶物として析出させる。使用する晶析剤はアルコール類、ケトン類、アルデヒド類およびカルボン酸類のうちの少なくとも1種以上の水溶性有機溶媒である。これらの晶析剤は、分子中の総炭素数が8以下、好ましくは4以下、さらに好ましくは2〜4であることが好ましい。これらの有機溶媒は炭素数が比較的少なく、分子の構造上極性が高いため水によく溶解する。また、これらの晶析剤と水との混合溶媒を溶媒とする溶液中において、硫酸第二鉄の溶解度はヘキサアクアクロム(III )硫酸塩ないし硫酸クロムの溶解度より遥かに高いため、晶析剤添加によりクロムを硫酸塩として選択的に晶析させ鉄から分離することが可能である。
【0033】
このような晶析剤として具体的には、メチルアルコール(CH OH)、エチルアルコール(C OH)、プロピルアルコール(C OH)などのアルコール類、アセトン(CH COCH )、メチルエチルケトン(C COCH )などのケトン類、プロピオンアルデヒド(C CHO)などのアルデヒド類、ギ酸(HCOOH)、酢酸(CH COOH)などのカルボン酸類が挙げられる。このような水溶性有機溶媒の水に対する溶解度は25℃で水100g に対し15g 〜∞であり、沸点は45〜100℃程度である。
【0034】
晶析剤の添加量は、当然のことながら原料を溶解した溶液中のクロムおよび鉄の含有量に応じる必要があり、特に限定するものではない。通常、原料を溶解した溶液中のクロムおよび鉄の含有量に応じ、溶液重量の10〜90重量%の広い範囲の晶析剤添加量において好結果が得られる。
【0035】
なお、晶析操作は10〜40℃、好ましくは10〜30℃の温度で行うことが望ましい。40℃より高い温度では、前記式(1)に示したようにクロム硫酸塩は紫色塩から緑色塩に変化する反応が起こる。緑色塩が紫色塩より有機溶媒の水溶液への溶解度が高いため晶析分解が困難になる。また、10℃未満の温度では、鉄(III )および他の金属不純物の硫酸塩の溶解度も低くなり、その分がクロム硫酸塩晶析物へ混入して晶析物の純度は低下してしまう。なお、この温度範囲は工業的に極めて容易に実現できる。
【0036】
有機溶媒の添加による硫酸クロムの晶析は極めて迅速に進行し、例えば恒温水槽中に容器を設置して数分間振とうさせると、硫酸クロムの結晶が析出し始める。ただし、本発明では通常、1時間〜5時間程度振とうさせることが好ましい。これにより析出した硫酸クロムの結晶は十分に熟成され、沈降濾過性が良好である。
【0037】
なお、本発明に用いる容器は、特に限定されず、公知の晶析器などを用いることができる。
【0038】
(4)分離工程
硫酸クロムが完全に晶析した後、容器を設置すると沈降性の良好な沈澱物が沈降してくる。晶析物と溶液の分離は、例えば上澄みを流すデカンテーション法や吸引濾過器を用いる濾別法により容易に行われる。そして、その後、晶析物は乾燥される。
【0039】
以上の各工程により、鉄および他の少量金属不純物は硫酸塩として溶液中に残留して除去される。また、原料中の炭素などの非金属不純物や難溶性金属不純物のほとんどは溶解工程で不溶残査として除去されるか、または晶析工程で上記混合溶媒を溶媒とする溶液中に残留して除去される。従って、高い純度の硫酸クロム晶析物(通常Cr (SO で表されるもの)が得られる。なお、上記の晶析工程および分離工程を繰り返すことによって晶析物の純度をさらに上げることができる。
【0040】
このようにして、本発明では、97重量%以上の純度のものが得られる。回収物である硫酸クロムは、X線回折分析、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA)により同定することができる。また、クロムの回収率は90%以上、特に95〜100%である。
【0041】
得られた硫酸クロム晶析物は、水に容易に溶解し、これを水に溶かして公知の電解還元法により高純度クロムを製造することができる。あるいは晶析物をクロム酸塩や酸化物の形態に転換して化学工業や、クロムメッキ、耐火材などに使用することができる。
【0042】
なお、晶析分離に使用した晶析剤は、いずれも水との間に十分な蒸気圧差がある有機溶媒であるため、公知の蒸留分離法により容易に回収することができる。回収後の有機溶媒を再利用することによって処理コストの低減化が十分可能である。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
高炭素フェロクロム原料粉末30.00g をガラス製三角フラスコに入れ、その中に5規定の硫酸水溶液400mlを加えて攪拌し、次いで80〜100℃に加熱しながら5時間で試料はほぼ完全に溶解した。この溶解工程では同時に溶液が空気酸化され、鉄(III) 硫酸塩とクロム(III) 硫酸塩が生成した。この場合のクロム(III) 硫酸塩は、テトラアクアクロム(III) スルファト錯塩およびトリアクアクアクロム(III) スルファト錯塩を主体(存在する全クロム量のそれぞれ47%および35%程度)とし、このほかペンタアクアクロム(III) スルファト錯塩、ジアクアクロム(III) スルファト錯塩等が存在するものであった。これらの塩の存在および存在割合は可視紫外分光光度計による測定等によって確認した。その後、この溶液を濾過し、少量の不溶物を濾別して除去した。このときの溶液のpHは1程度とした。
【0044】
このようにして得られた溶液を500mlに定容量した後、15℃の恒温水槽に設置して24時間振とうを加えながら熟成させた。この熟成により溶液中のクロム(III) の硫酸塩は[Cr(HO)](SO3/2(紫色塩)に変換し、溶液中に存在するクロムのほぼ100%が紫色塩に変換した。この変換は可視紫外分光光度計による測定により確認した。また変換率はICP発光分析によって溶液中の全クロム含有量を定量することにより求めた。
【0045】
なお、この熟成後の溶液はクロム40.6g/ l、鉄15.0g/ l、pH1程度であった。
【0046】
この溶液に純度99.5%のエチルアルコール750ml(上記溶液重量に対するエチルアルコールの添加量:約50重量%)を添加し、20℃にて4時間振とうして晶析させた。沈降してきた晶析物を母液から吸引濾過により濾別して回収し、次いで150℃で一昼夜(24時間程度)乾燥し、含有水分を蒸発除去した。この回収乾燥物の重量は72.72g であった。
【0047】
高炭素フェロクロム原料粉末および上記回収物の組成を化学分析により求めた。その結果を表1に示す。化学分析は、金属元素およびケイ素がICP発光分析法により、炭素が燃焼赤外線吸収法によって行った。なお、上記乾燥後の回収物をX線回析分析および熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA)により同定した結果、そのほとんどは無水硫酸クロム結晶物(Cr (SO )であり、その純度は97.13重量%であった。クロムの回収率を表1に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0003609130
【0049】
表1から明らかなように、本発明の方法により、クロムを高純度で効率よく回収できることがわかる。
【0050】
なお、上記実施例では高炭素フェロクロムを原料として用いたが、これに限らず、クロム鉄鉱やクロムと鉄を含有する原料であればいずれにも適用でき、このほかのものでも上記と同等の良好な結果が得られた。
【0051】
また、晶析剤として使用したエチルアルコールは濾液を蒸留することによって、水溶液から分離することができ、再使用に供することができた。
【0052】
さらに、上記において、晶析剤としてエチルアルコールのかわりに、アセトン、プロピオンアルデヒド、酢酸をそれぞれ用いたところ、エチルアルコールと同等の良好な結果が得られた。
【0053】
一方、上記において、熟成を行うことなく晶析を行ったところ、硫酸クロムの析出は遅く、しかも微細なコロイド状の緑色塩が析出し、沈降濾過性の悪い析出物となった。10時間経過後の晶析物を乾燥、分析したところ、クロムの回収率は53.8%であった。また、晶析を5℃で行うほかは同様の操作を行ったところ、回収物の純度は74.2重量%に低下した。一方、晶析を50℃で行ったところ、紫色塩が緑色塩に変化し、硫酸クロムの晶析が非常に遅く、しかもほとんど沈降濾過性の悪い微細なコロイド状の緑色塩として析出し、晶析分離が困難であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、クロムと鉄とを含有する原料からクロムを良好な収率かつ高い純度で分離回収することができる。本発明の方法は、全く知られていない新規な方法であり、従来法に比べ、画期的に安価な試薬を使用し、また、簡単な装置と容易な操作によりクロムの回収を確実に行うことができる。従って、工業的に実施することは経済的かつ合理的である。

Claims (3)

  1. クロムと鉄とを含有する原料からクロムを分離回収する方法であって、
    硫酸水溶液にクロムと鉄とを含有する原料を溶解して酸化し、この溶液中の鉄を3価の鉄の硫酸塩とし、クロムを3価のクロムの硫酸塩とし、さらにこの溶液を熟成し、3価のクロムの硫酸塩をヘキサアクアクロム(III) 硫酸塩の形態とした後、10〜40℃の温度で、この溶液に晶析剤を添加してクロムの硫酸塩を選択的に晶析させるクロムの分離回収方法。
  2. 前記熟成を10〜30℃の温度で、この温度に10時間以上保持することにより行う請求項1のクロムの分離回収方法。
  3. 前記晶析剤が、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類およびカルボン酸類のうちの少なくとも1種の水溶性有機溶媒である請求項1または2のクロムの分離回収方法。
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