JP3608267B2 - 車両の障害物検知装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自車進行路上で最も近くに存在する物体を捕捉すると共に、この捕捉物体が自車進行路から逸脱したときはその捕捉を解除する車両の障害物検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両に搭載される障害物検知装置は、レーダ装置を用いて自車の前方に存在する前方走行車両等の物体を検出すると共に、自車の走行状態に基づいて自車が走行するであろう進行路を推定して、この自車進行路上にあって最も自車の近くに存在する前方走行車両を検知し、これを先行車としてその位置情報を捕捉していくものであり、この捕捉された先行車の位置情報は、例えば該先行車に対して一定の車間距離を保ちながら追従走行をする場合や衝突を回避する場合の制御等に利用される。
【0003】
そして、一般には、先行車が自車進行路から逸脱したときは、その捕捉を解除して新たに上記条件を満たす車両を先行車として捕捉するのであるが、これでは自車がまだ直線道路を直進走行中に先行車がカーブに進入して旋回走行を始めた場合に、該先行車が自車の走行状態に基づいて略直線状に推定される自車進行路から見掛け上逸脱したものと判断されて、同じ車線を走行しているにも拘らずその捕捉が誤って解除されることになるので、このような不都合に対処するものとして、特開平6−292729号公報に開示されているように、先行車が自車進行路から逸脱しても、その逸脱した時から所定の時間が経過するまで、例えば自車がその逸脱した地点に到達してカーブに沿った進行路が推定されるまでは、該車両を依然先行車として捕捉し続けるようにしたものも知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記公報にも記載されているように、自車進行路は、自車速V及び自車に発生するヨーレートφを次式1に代入して旋回半径Rを求め、この旋回半径Rを有する直線又は曲線に所定の幅(例えば車幅に相当する幅)をもたせることにより推定される。
【0005】
【式1】
これによれば、例えば直進走行時はヨーレートφが0に近くなるので旋回半径Rが無限大となって略直線状の自車進行路が推定され、また旋回走行時は自車に発生するヨーレートφに応じた所定曲率の曲線状の進行路が推定される。
【0006】
しかしながら、低車速時は高車速時に比べて車体振れが大きいのでヨーレートが変動し、例えば直線道路を走行していても曲線状の進行路が推定されて、先行車が見掛け上自車進行路から逸脱し、その捕捉が誤って解除されてしまうという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、従来の障害物検知装置における上記問題に対処するもので、低車速時の車体振れによる先行車の捕捉の誤解除を抑制し得る車両の障害物検知装置の提供を課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明のうち請求項1に記載の発明(以下「第1発明」という。)は、自車の前方に存在する物体を検出し、これらのうち自車の走行状態に基づいて推定される自車進行路上で最も自車の近くに存在する物体を捕捉すると共に、該物体が上記自車進行路から逸脱したときはその捕捉を解除する車両の障害物検知装置であって、自車の車速が所定の車速より低いときには上記捕捉の解除を規制する捕捉解除規制手段が備えられていることを特徴とする。
【0009】
この第1発明によれば、捕捉解除規制手段によって、車体振れが大きく、自車進行路が正しく推定されない低車速時には、それまで捕捉していた物体が自車進行路から逸脱しても、その捕捉の解除が規制されるので、捕捉の誤解除が抑制される。
【0010】
そして、請求項2に記載の発明(以下「第2発明」という。)は、上記第1発明において、捕捉解除規制手段は、自車の車速が所定の車速より低いときに、低くなったときから所定の時間が経過するまで物体の捕捉の解除を規制することを特徴とする。
【0011】
この第2発明によれば、車体振れが大きく、自車進行路が正しく推定されない低車速時に、その低車速となったときから所定の時間が経過するまで、捕捉の解除が規制されるので、捕捉の誤解除が抑制される。
【0012】
また、請求項3に記載の発明(以下「第3発明」という。)は、上記第1発明において捕捉解除規制手段は、自車の車速が所定の車速より低いときであっても、自車が減速している場合にのみ物体の捕捉の解除を規制することを特徴とし、さらに請求項4に記載の発明(以下「第4発明」という。)は、この第3発明において捕捉解除規制手段は、自車が停止するまで物体の捕捉の解除を規制することを特徴とする。
【0013】
これらの第3、第4発明によれば、低車速時であっても特に車体安定性が低下してヨーレートの変動が著しい減速時に物体の捕捉の解除が規制されるので、捕捉の誤解除を抑制することについて大きな効果が得られる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明(以下「第5発明」という。)は、上記第1発明ないし第4発明のいずれかにおいて捕捉解除規制手段による物体の捕捉の解除の規制は、捕捉の解除の禁止であることを特徴とする。
【0015】
この第5発明によれば、物体の捕捉の解除が禁止されるので、捕捉の誤解除が回避される。
【0016】
一方、請求項6に記載の発明(以下「第6発明」という。)は、上記第1発明と同様の車両の障害物検知装置であって、自車の車速が低いときの方が高いときよりも自車進行路の幅を広くする進行路幅変更手段が備えられていることを特徴とする。
【0017】
この第6発明によれば、進行路幅変更手段によって、車体振れが大きく、自車進行路が正しく推定されない低車速時の方が高車速時よりも該進行路の幅が広くされるので、物体が自車進行路から逸脱することが少なくなり、捕捉の誤解除が抑制される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0019】
図1に示すように、この実施の形態における車両には、自車の前方に所定の範囲内でレーダ波を走査、発信してその反射波から前方走行車両の位置を検出するスキャン式のレーダ装置1と、自車の車速を検出する車速センサ2と、自車に発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサ3とが備えられて、これらの検出信号がコントロールユニット4に入力されるようになっている。
【0020】
このコントロールユニット4には、上記車速V及びヨーレートφを前述の式1に代入して自車の第1の進行路の旋回半径R1を算出する第1進行路推定部5と、前方走行車両の各位置情報Xn及び上記第1進行路に基づいて該第1進行路上にあって最も自車の近くに存在する前方走行車両を先行車Xとして識別する先行車識別部6とが備えられて、この先行車Xに関する位置情報を受けて追従走行制御部7から変速制御信号Sが自動変速機8に出力され、上記先行車に対して追従走行をするようになっている。
【0021】
また、先行車Xの位置情報は第2進行路推定部9にも出力されて、図2に示すように自車Aと先行車Xとの距離L及び角度θに基づいて次式2により自車の第2の進行路(図2中、破線で示すa)の旋回半径R2が算出される。
【0022】
【式2】
さらに、先行車識別部6は、車速V及び上記第1,第2の進行路の旋回半径R1,R2に基づいて次式3,4により自車がこれらの進行路に沿って走行した場合に発生する第1,第2の横加速度G1,G2を算出するようになっている。
【0023】
【式3】
【0024】
【式4】
したがって、先行車が自車の走行状態に基づいて推定される第1進行路上にある場合は第2進行路が第1進行路と一致し、第1,第2の横加速度G1,G2が略同じ値となるが、先行車が第1進行路から逸脱したときは第1,第2の横加速度G1,G2間に有意差が現れることになる。
【0025】
以下、これらの算出結果等を用いながらコントロールユニット4が行なう先行車に対する追従走行制御(ロックオン制御)を図3に示すフローチャートに従って説明する。
【0026】
まずステップS1でロックオンフラグLckfが0か否かを判定するのであるが、このロックオンフラグLckfは追従走行の対象となる先行車を捕捉しているときは1、捕捉していないときは0にされる状態フラグである。
【0027】
そして、現在のところ先行車を捕捉していないときはステップS2に進んで、いま検知している先行車となるべき車両を最初に検知した時からの時間Tが所定の時間Toを超えたか否かを判定して、YESのときはステップS3でロックオンフラグLckfを1にしてステップS12に進み、NOのときはロックオンフラグLckfを0としたままでステップS12に進む。
【0028】
一方、先行車を捕捉しているときはステップS4に進んで、自車速Vが車体振れのために第1進行路がずれて推定されるような低い車速Voより低いか否かを判定して、NOのとき、つまり高車速時で車体振れが小さく、第1進行路が正しく推定されるときはステップS5で捕捉保持時間のタイマーtをリセットし、YESのとき、つまり低車速時で車体振れが大きく、第1進行路がずれて推定されるときはステップS6で上記タイマーtをインクリメントする。
【0029】
次いで、高車速時はステップS7において第1,第2の横加速度G1,G2の差dを算出したのち、ステップS8でこの差dが0.2g(gは重力加速度)より大きいか否かを判定して、YESのときはステップS9でロックオンフラグLckfを0にしてステップS12に進み、NOのときはロックオンフラグLckfを1としたままでステップS12に進む。
【0030】
ここで、判定基準である0.2gは、一般に高速道路等で設計されるカーブに沿って定常旋回走行した場合に車両に発生する横加速度の最大値である。すなわち、自車がまだ直線道路を直進走行中(このとき旋回半径R1は無限大で、横加速度G1は式3から0である。)に先行車がカーブに進入して同じ車線を定常旋回走行し始めた場合においては、第1,第2の横加速度G1,G2の差dは0.2g以下のはずであるので、該先行車が第1進行路から逸脱していても依然この車両を先行車として捕捉すべくロックオンフラグLckfを1に維持するのに対して、第1,第2の横加速度G1,G2の差dが0.2gより大きいときは、先行車が車線変更等を行なって第2進行路の旋回半径R2がカーブの旋回半径よりも小さくなったことを示しているので、この車両を先行車として捕捉する必要はなくロックオンフラグLckfを0に戻すのである。
【0031】
一方、低車速時はステップS10において捕捉保持時間のタイマーtが所定の時間toを超えたか否かを判定して、YESのときはステップS11でロックオンフラグLckfを0にすると共に上記タイマーtをリセットしてステップS12に進み、NOのときはこれらを行なわずにステップS12に進む。
【0032】
ここで、タイマーの判定基準である所定時間toは、自車速Vが上記所定車速Voより低くなった時から自車が停止するまでの時間であり、車速V及び減速度αに基づいて次式5により算出される。
【0033】
【式5】
すなわち、自車速Vが上記所定車速Voより低くなれば車体振れが大きくなって第1進行路がずれて推定され、その結果先行車の捕捉が誤って解除されるので、自車が停止するまでは、それまで捕捉してきた先行車を捕捉し続けるべくロックオンフラグLckfを1に維持し、自車が停止した時点で初めてその捕捉を解除すべくロックオンフラグLckfを0とするのである。
【0034】
そして、いずれの場合もこのような判定ルーチンを経たのちステップS12でロックオンフラグLckfが1か否かを判定して、1のときはステップS13に進んでロックオンの実行、すなわち捕捉している先行車の位置情報に基づいて該先行車に対して一定の車間距離を保ちながら追従走行をするように自動変速機8に変速信号Sを出力し、0のときはステップS14に進んでロックオンを解除する。
【0035】
これによれば、まず最初に、先行車となるべき車両を所定時間Toを超えて検知し続けたときにロックオンフラグLckfが1とされて該先行車に対する追従走行が開始され、その後自車が比較的高車速で走行しているあいだは、第1,第2の横加速度G1,G2の差dが0.2gより大きくなった場合を除き、追従走行が続行される。
【0036】
そして、自車速Vが所定車速Voより低くなり、大きな車体振れのために第1進行路が正しく推定されなくなったときでも、自車が停止するまでは上記先行車の捕捉が保持されて、ロックオンが続行されることになる。したがって、それまで捕捉していた先行車が第1進行路から見掛け上逸脱してもその捕捉が誤って解除されることがなくなる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0038】
図4に示すように、この実施の形態における車両においても前述と同様にスキャン式のレーダ装置21、車速センサ22及びヨーレートセンサ23が備えられ、これらの各検出信号Xn,V,Φがコントロールユニット24に入力されて、旋回半径Rを有する自車進行路が進行路推定部25で推定され、さらに先行車Xが先行車識別部26で識別されて、この先行車Xに対する追従走行の変速制御信号Sが追従走行制御部27を介して自動変速機28に出力されるようになっている。
【0039】
そして、この車両においては、進行路推定部25で推定される自車進行路の幅が車速Vに応じて変更されるようになっている。以下、この進行路幅変更制御を図5に示すフローチャートに従って説明する。
【0040】
まずステップS21で自車速Vを読み込んだのち、ステップS22でロックオンフラグLckfが0か否かを判定して、現在のところ先行車を捕捉していないときはステップS23に進み、進行路幅Wを2メートルとして自車進行路を作成する。この2メートルの幅というのはおよそ車幅に相当し、進行路を有効に推定するにあたっての最小限の幅である。したがって、先行車を捕捉していないあいだは、この2メートル幅の自車進行路上に先行車Xを求めることになる。
【0041】
一方、先行車を捕捉しているときはステップS24に進んで、自車速Vを図6に示すマップに当てはめ、対応する値f(V)を進行路幅Wとして自車進行路を作成する。その場合に、関数値f(V)は、車速Vが60km/h以上の場合は最小幅の2メートルとされ、以下20km/hまでは車速Vが低くなるに従って大きくなり、20km/h以下で4メートルに設定されている。なお、この4メートルの幅というのはおよそ車線幅に相当し、進行路を有効に推定するにあたっての最大限の幅である。
【0042】
したがって、先行車を捕捉している場合において、自車が60km/h以上の車速で走行しているときは2メートル幅の自車進行路から先行車Xが逸脱したときにその捕捉を解除するのに対して、車速が60km/h以下となれば、車速が低くなるほど広い幅の自車進行路が作成され、自車速が20km/h以下のときは車線幅に相当する4メートルの幅を有する自車進行路から先行車Xが逸脱したときにその捕捉を解除することになる。その結果、車体振れが大きくなって推定進行路の旋回半径の誤差が大きくなる低車速時には、先行車が推定進行路から逸脱することが少なくなるので、誤ってその捕捉が解除されることが抑制されることになる。
【0043】
なお、図6に示す進行路幅のマップにおいて、関数値f(V)は、車速Vに対して線形に変化するものの他、ステップ状に変化するように設定してもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の車両の障害物検知装置では、車体振れが大きく、自車進行路がずれて推定される低車速時は、それまで捕捉していた先行車の捕捉の解除を規制し、又は進行路幅を広くするので、先行車の捕捉の誤解除を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両の制御システム図である。
【図2】上記車両の先行車識別部が行なう制御の説明図である。
【図3】上記車両のロックオン制御のフローチャート図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における車両の制御システム図である。
【図5】上記車両の進行路幅変更制御のフローチャート図である。
【図6】上記制御で用いる進行路幅のマップ図である。
【符号の説明】
1,21 レーダ装置
2,22 車速センサ
3,23 ヨーレートセンサ
5 第1進行路推定部
6,26 先行車識別部
24 進行路推定部
Claims (6)
- 自車の前方に存在する物体を検出し、これらのうち自車の走行状態に基づいて推定される自車進行路上で最も自車の近くに存在する物体を捕捉すると共に、該物体が上記自車進行路から逸脱したときはその捕捉を解除する車両の障害物検知装置であって、自車の車速が所定の車速より低いときには上記捕捉の解除を規制する捕捉解除規制手段が備えられていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
- 捕捉解除規制手段は、自車の車速が所定の車速より低いときに、低くなったときから所定の時間が経過するまで物体の捕捉の解除を規制することを特徴とする請求項1に記載の車両の障害物検知装置。
- 捕捉解除規制手段は、自車の車速が所定の車速より低いときであっても、自車が減速している場合にのみ物体の捕捉の解除を規制することを特徴とする請求項1に記載の車両の障害物検知装置。
- 捕捉解除規制手段は、自車が停止するまで物体の捕捉の解除を規制することを特徴とする請求項3に記載の車両の障害物検知装置。
- 捕捉解除規制手段による物体の捕捉の解除の規制は、捕捉の解除の禁止であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の車両の障害物検知装置。
- 自車の前方に存在する物体を検出し、これらのうち自車の走行状態に基づいて推定される自車進行路上で最も自車の近くに存在する物体を捕捉すると共に、該物体が上記自車進行路から逸脱したときは、その捕捉を解除する車両の障害物検知装置であって、自車の車速が低いときの方が高いときよりも上記自車進行路の幅を広くする進行路幅変更手段が備えられていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
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