JP3608139B2 - 防振支承の構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物のスラブおよび当該構造物を支持する基盤の間に介装されて、これらの間の振動の伝達を防止する防振支承の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、構造物から発生する振動が、周囲に伝達することを防ぐ必要がある場合、また逆に、地震動や交通振動などの振動が構造物に与える影響を低減する必要がある場合には、当該構造物を支持するにあたって防振支承が用いられる。
【0003】
このような防振支承としては、例えば、図18に示す、特開平8−105144号に記載されたものが知られている。図18において防振支承1は、基盤2に固定される固定板3と、固定板3上に載置される弾性体4と、床スラブ5中に埋め込まれて固定される外筒体6とを備えて構成されている。外筒体6は、その内面に雌螺子が切られるとともに、内部に押圧固定用メインナット7が螺設されたものである。押圧固定用メインナット7の中心部には、ジャッキボルト8が螺設され、ジャッキボルト8は弾性体4によって弾性的に支持されたバネ座9に対して回動自在に係合されている。また、押圧固定用メインナット7に対しては、ロックナット10が設けられている。
【0004】
弾性体4は、押圧固定用メインナット7を締めていき、外筒体6内を圧し下げることによって、圧縮させることができ、さらに、ジャッキボルト8を押圧固定用メインナット7に対して螺入することにより、より大きな圧縮力を弾性体4に対して作用させることができる。
【0005】
防振支承1によって、床スラブ5を基盤2に対して接した状態から浮上させるためには、上記のような手順によって弾性体4に対し圧縮力を作用させていけばよく、弾性体4による反発力が床スラブ5の自重を上回った場合に、床スラブ5が浮上することとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図18に示したような防振支承1は、外筒体6の内面に雌螺子が形成される構成とされているため、その製作にあたっては、旋盤などを利用した切削加工が必要であった。さらに、押圧固定用メインナット7、ジャッキボルト8、バネ座9などの部材に対しても、ネジ切りや溝切りなどの機械加工が必要とされていることから、防振支承1は、その製作が容易でなく、またコストのかかるものとなっていた。
【0007】
また、防振支承1は、その操作性に関しても問題のあるものであった。例えば、押圧固定用メインナット7は、回転させるのに特殊な締め込み装置が必要な構成とされており、また、特に床スラブ5浮上時にこれを回転させる場合には、床スラブ5の荷重が押圧固定用メインナット7に作用していることから、大きな力が必要であった。さらに、このような場合、押圧固定用メインナット7が錆びていると、これを回転させることは一層困難となっていた。
また、押圧固定用メインナット7は、交換の必要が生じた場合、取り外しのために回転させていくとジャッキボルト8の頭部に当接してしまうことから、その交換作業も困難なものとなっていた。
【0008】
さらに、防振支承1においては、押圧固定用メインナット7に対するロックナット10はあっても、ジャッキボルト8に対するロックナットがなく、その経年的な変化を想定した場合、ジャッキボルト8と押圧固定用メインナット7との螺設部の位置が下方に移動することが考えられ、その結果、床スラブ5全体が下降するという懸念があった。さらに、防振支承1は、上述したように、部品交換時等における操作性においても問題があるため、床スラブ5下降の際のメインテナンス作業も容易でなかった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その製作が容易であり、操作性に優れると同時に、メインテナンス作業を容易に行うことができるような防振支承の構造を提供することをその目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の防振支承の構造は、構造物のスラブと基盤との間に介装されて、該スラブを支持するとともに、該スラブと前記基盤との間の振動の伝達を防止する防振支承の構造であって、
その下面がフランジとして形成されるとともに、前記スラブ中に埋め込まれて固定されるハウジング部と、
その下面が前記基盤に固定される下部フランジ、該下部フランジの上面に対して固定されたバネ、および該バネによって弾性的に支持された上部フランジを具備するバネ配設部とを備えてなり、
前記上部フランジには、貫通孔が形成され、
前記フランジには、ネジ棒がその上端が前記貫通孔に挿通された状態で立設され、
該ネジ棒には、前記上部フランジの上端位置を規制するナット部材が螺設されていることを特徴とする。
【0011】
この防振支承の構造は、上記のような構成とされているため、従来の防振支承に比べて、ネジ切りや溝切りなどの加工を施さなければならない部品が少なく、また、構造も単純なものとすることができる。
【0012】
請求項2記載の防振支承の構造は、請求項1記載の防振支承の構造において、前記ハウジング部には、ジャッキにより前記上部フランジを押し下げる際に反力をとるためのジャッキ固定部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
この防振支承の構造においては、上部フランジ上に載置したジャッキによって上部フランジとハウジング部の間隔を圧し広げると同時に、バネ配設部を押し下てバネ配設部に圧縮力を加え、その反発力によってハウジング部およびスラブを押し上げることが可能である。
【0014】
請求項3記載の防振支承の構造は、請求項1または2記載の防振支承の構造において、
前記フランジには開口部が設けられ、
前記バネ配設部には、前記バネを収納するケーシングが設けられ、
前記バネ配設部は、前記開口部から前記ハウジング部内部に収納されるとともに、前記開口部は、前記バネ配設部と前記ハウジング部との水平方向の相対変位を規制するように、前記ケーシングに対して当接可能に位置していることを特徴とする。
【0015】
この防振支承の構造においては、地震動等によって、バネ配設部とハウジング部との間に水平方向の相対変位が生じた場合、ハウジング部の開口部とバネを収納するケーシングとが当接することによって、これらバネ配設部とハウジング部との相対変位を規制する耐震ストッパーの機能が果たされるとともに、このことによって防振支承を構成する各部材の破壊・変形が防がれる。
【0016】
請求項4記載の防振支承の構造は、請求項3記載の防振支承の構造において、前記ケーシング内部に粘性体が注入されていることを特徴とする。
この防振支承の構造においては、ケーシング内部に注入された粘性体が、構造体の振動を減衰する機能を果たす。
【0017】
請求項5記載の防振支承の構造は、請求項3または4記載の防振支承の構造において、前記ケーシング外面の前記開口部と対向する位置に緩衝材が配置されていることを特徴とする。
【0018】
この防振支承の構造においては、ケーシング外面に配置された緩衝材によって、地震動等によりハウジング部の開口部とケーシングが衝突した場合、衝突による衝撃が緩和される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を、図面を参照して説明する。
図3は、本発明の一実施の形態を示す図である。この実施の形態は、鉄道構造物11におけるフローティングスラブ軌道に本発明を適用したものである。図3(a)は鉄道構造物11を上方から図示したものであり、符号12は鉄道構造物11を構成するスラブを、13は軌道を表す。また、スラブ12は、防振支承14によって支持されている。
【0020】
図3(b)は、鉄道構造物11の断面図を示したものである。図に示すようにスラブ12は、基盤15によって支持されており、防振支承14は、基盤15に対してスラブ12の荷重を伝達する役割を果たすとともに、スラブ12を基盤15から隔絶した状態において弾性的に支持することによって、スラブ12上において発生した振動の基盤15に対する伝達を遮断する機能を合わせ持つものである。
【0021】
図1において、防振支承14の断面形状を拡大して示す。図に示すように、防振支承14は、バネ配設部16とハウジング部17を備えて構成されている。ハウジング部17はスラブ12中に埋め殺しとされるとともに、バネ配設部16により基盤15とは隔絶した状態で支持されている。これにより、スラブ12もハウジング部17と同様に、基盤15とは隔絶した状態でバネ配設部16によって支持されることとなっている。
【0022】
図4ないし図6に、バネ配設部16の形状を拡大して示す。図4は、バネ配設部16の断面形状を示す図である。図に示すように、バネ配設部16は、下部フランジ18、ケーシング19、および上部フランジ20を備えて構成されており、下部フランジ18および上部フランジ20との間は、第一のバネ21および第二のバネ22によって弾性的に連結されている。また、下部フランジ18およびケーシング19は、一体的に形成されており、これらによって囲まれた空間Sには、第一のバネ21および第二のバネ22が収納されると同時に、シリコーンオイルからなる粘性体Vが注入されている。
【0023】
図5は、バネ配設部16の外観形状を示す斜視図である。このようにケーシング19は円筒上に形成され、また、下部フランジ18および上部フランジ20は、略三角形状に形成された板状部材により形成されている。また、これら下部フランジ18および上部フランジ20には、ボルト固定用の穴18aおよび貫通孔20aがそれぞれ形成されている。
また、図6はバネ配設部16の外観を上方から示した図である。
【0024】
図7ないし図9に、ハウジング部17の形状を拡大して示す。図7は、ハウジング部17の外観を示す斜視図である。図に示すように、ハウジング部17は、下面に位置するフランジ25に円筒形状の側壁部26が接合された形状とされている。
【0025】
フランジ25の中央部には、図において点線で示したように略三角形状の開口部27が設けられている。また、側壁部26の外面には、スラブ12中に埋め殺しとされる鉄筋28が接合されるとともに、側壁部26の内面側の上端および下端には、ジャッキ固定部29および点線で示した補強リブ30が接合されている。ジャッキ固定部29は、後述するように、打設後のスラブ12を基盤15から浮き上がらせる際に、ジャッキの反力をとる際に使用されるものであり、また、ハウジング部17にカバーを上方から付設する際に、カバーを固定するための役割を果たすものである。また、補強リブ30は、側壁部26およびフランジ25の接合を補強する役割を果たす。
【0026】
図8は、ハウジング部17を上方から図示したものである。フランジ25において、開口部27の周囲の二つの補強リブ30に挟まれた部分には、ボルト固定用の穴25aが設けられている。
また、ハウジング部17の断面形状を示した図が、図9である。
【0027】
再び図1に戻って、防振支承14の構成の詳細を説明する。
バネ配設部16の下部フランジ18は、図に示すように基盤15に対してアンカーボルト32によって固定されており、また、下部フランジ18により第一のバネ21および第二のバネ22を介して弾性的に支持された上部フランジ20には、ハウジング部17のフランジ25がネジ棒33を介して懸架された状態で連結されている。すなわち、ネジ棒33は、上端が上部フランジ20において設けられた貫通孔20aを挿通するようにフランジ25から立設されるとともに、貫通孔20aの上側には上部フランジ20の上端位置を規制するためのナット部材34が螺着された状態とされる。また、ネジ棒33におけるフランジ25の上側には、フランジ25にネジ棒33を固定するために、ナット35が螺着されている。
【0028】
また、図に示すように、ハウジング部17は、開口部27からその内部にバネ配設部16を収納する状態で、バネ配設部16に対して配置される。さらに、この状態において、フランジ25が上部フランジ20から懸架されることにより、ハウジング部17は、基盤15とは隔絶した状態で支持されている。
【0029】
さらに、ハウジング部17は、スラブ12中に埋め殺しにされることから、スラブ12もハウジング部17と同様に、基盤15から隔絶した状態で支持されることとなる。
【0030】
また、ケーシング19の外面側の開口部27と対向する位置には、ケーシング19および開口部27が衝突した際に、その衝撃を緩和するために、緩衝材36が配置されている。
【0031】
図2は、防振支承14を上方から図示したものである。図に示すように、開口部27および下部フランジ18は、ほぼ同様の三角形状とされており、その寸法は、下部フランジ18よりも開口部27の方が若干大きなものとなっている。
【0032】
また、アンカーボルト32は、下部フランジ18に設けられた穴18aを挿通して基盤15に固定されており、ネジ棒33は、フランジ25の穴25aに対してナット35によって固定されるとともに、上部フランジ20の貫通孔20aを挿通している。さらに、ネジ棒33には、上部フランジ20の上端位置を規制するためのナット部材34が螺着される。
【0033】
以上が、本実施の形態の構成であるが、次に図10ないし図15を参照して防振支承14および鉄道構造物11の施工方法について説明する。なお、図10ないし図12および図15において、(a)において示すものは、施工中の状況を上方から示す図であり、(b)において示すものは、施工中の状態を示す断面図である。
【0034】
まず、図10(a)(b)に示すように、基盤15に対してアンカーボルト32を打設する。次に、図11(a)(b)に示すように、アンカーボルト32の打設された基盤15上にハウジング部17を配置し、また、フランジ25の穴25aには、ネジ棒33をナット35によって固定しておく。さらにその後、ハウジング部17の外周囲における基盤15の上側にコンクリートを打設し、スラブ12を形成する。このとき、ハウジング部17は、スラブ12中に埋め殺しとされるが、基盤15とスラブ12とが一体化しないように、基盤15上には図示しない型枠、あるいはビニルシートやプラスチックシートなどのコンクリート剥離シートが配置される。
【0035】
図11に示すようにコンクリートを打設した後、図12(a)(b)に示すように、バネ配設部16をハウジング部17の内側に装添する。(a)において示すように、バネ配設部16は、打設されたアンカーボルト32が下部フランジ18の穴18aを挿通するとともに、ネジ棒33の上端が、上部フランジ20の貫通孔20aを挿通するように配置される。穴18aを挿通したアンカーボルト32には、ナット36が締結され、これにより、バネ配設部16は基盤15上に固定されることとなる。さらに、ネジ棒33における上部フランジ20の上側にはナット部材34を螺着しておく。
【0036】
スラブ12部分に打設されたコンクリートが固化した後、スラブ12をジャッキアップする。このスラブ12のジャッキアップは、図13および14に示すように行われる。すなわち、まず図12に示した状態から、図13に示すように上部フランジ20上に油圧ジャッキ38を載置する。このとき、油圧ジャッキ38は、ジャッキ固定部29において反力をとることができるように設置される。次に、油圧ジャッキ38を動かして、上部フランジ20を押し下げると同時に、上部フランジ20とハウジング部17と離間させる。このように上部フランジ20を押し下げると、まず、第一のバネ21および第二のバネ22が圧縮させられ、ついで、これらに対する圧縮力がスラブ12の自重を上回った時点で、これらによる反発力によって図14に示すようにスラブ12が浮上することとなる。
【0037】
図14に示すように、スラブ12を浮上させた後、最後に、ナット部材34の位置を、上部フランジ20の上端位置を規制するように調整してやり、さらに、油圧ジャッキ38を撤去してやると、図15(a)(b)に示すように、上部フランジ20からハウジング部17およびスラブ12がネジ棒33を介して懸架されるようになる。
【0038】
この後、必要に応じて、ジャッキ固定部29に対してカバー等を固定し、またケーシング19の開口部27と対向する面に緩衝材36が配置されることによって、図1に示すような防振支承14、および図3(a)に示すような外観の鉄道構造物11が実現される。
【0039】
以上が、本実施の形態における防振支承14および鉄道構造物11の施工手順であるが、次に防振支承14の持つ機能およびその効果について説明する。
防振支承14においては、基盤15から弾性的に支持されたバネ配設部16の上部フランジ20からハウジング部17およびスラブ12が懸架される。これにより、スラブ12が基盤15により弾性的に支持されることとなり、スラブ12上で、列車などの通過にともない振動が発生した場合にも、その振動の基盤15への伝達が低減されることとなる。
【0040】
防振支承14は、このように、従来の防振支承と同様に、振動の伝達を遮断する機能をもつものであるが、その構成が上記のようなものとされているため、特殊な機械加工を必要とする部品を多く使用することなく製作可能である。また、上記実施の形態において使用されているネジ棒33やナット部材34などのネジ切りされた部品も、市販のものを使用することが可能とされている。このため、防振支承14は、従来のものと比較して、製作を容易におこなうことができ、また製作コストの低減化を図ることができる。
【0041】
さらに、防振支承14においては、上部フランジ20とフランジ25がネジ棒33およびナット部材34により連結されているために、それらの間の寸法を調節することが可能となっている。したがって、ナット部材34の位置を変化させることによりスラブ12の基盤15からの高さを容易に調節することが可能であり、スラブ12構築後にも、その高さ調整をいつでも、また簡単に行うことができる。
【0042】
また、防振支承14においては、スラブ12を浮上させる際に、油圧ジャッキ38によって上部フランジ20を押し下げるとともに、その反力をハウジング部17に設けられたジャッキ固定部29においてとることが可能とされている。このように、防振支承14においては、油圧ジャッキ38を用いてスラブ12を持ち上げることから、上部フランジ20の押し下げ高さおよび上部フランジ20に作用させる押し下げ力を知ることができ、したがって、上部フランジ20の位置がどれだけ変化したか測定すれば、油圧ジャッキ38における変位量とから、スラブ12が基盤15に対してどれだけ浮上したかを容易に知ることができる。このように、本実施の形態の防振支承14によれば、先に示した従来の防振支承1のように、スラブの浮上高さを知るためにスラブ外部の基準からレベルなどを用いて高さを図る必要がなくなる。
【0043】
また、先に示した従来の防振支承1においては、スラブ5を浮上させる際に、ネジなどを使用してバネに圧縮力を付与し、その反発力を利用する構成が採用されており、これらのネジ等は、防振支承1に内蔵された構成とされていたのに対し、本実施の形態の防振支承14においては、外部から油圧ジャッキ38を利用して、バネ配設部16に圧縮力を与える構成とされている。このため、防振支承14においては、バネ配設部16に圧縮力を与えるための構造を内部に組み込むことなく構成することが可能であり、したがって、その構造を簡略化することが可能である。
【0044】
さらに、防振支承14においては、油圧ジャッキ38によってスラブ12を持ち上げている間に、ナット部材35の位置を調整することができる。従来の防振支承1においては、押圧固定用メインナット7を荷重が作用した状態で回さなければならず、そのため大きな力が必要であったが、本実施の形態の防振支承14によれば、ナット部材35をスラブ12の荷重が作用していない状態で回転、螺着することが可能であるため、スラブ12の高さ調整の際の作業性の向上を図ることが可能となる。
【0045】
また、このような防振支承14の構成は、ナット部材35やネジ棒33の交換の際にも有利である。すなわち、ナット部材35およびネジ棒33に対して加わる力を、油圧ジャッキ38を用いることで一時的に除荷することができ、その間にナット部材35およびネジ棒33を交換することができる。このように、本実施の形態の防振支承14は、部材の交換等のメインテナンス作業の面でも有利である。
【0046】
本実施の形態の防振支承14は、以上に挙げたような利点を有するが、それだけでなく、地震の際にも以下のような有利な点を有するものである。
地震等が発生し、鉄道構造物11に水平力が作用した場合、スラブ12は、基盤15に対して弾性的に支持されていることから、スラブ12と基盤15は、これらの間に、水平方向に相対変位を生じるように移動しようとする。このため、スラブ12と一体化されたハウジング部17、および基盤15上に固定されたバネ配設部16にも、これらの間に相対変位が生じるような方向に水平力が作用する。
【0047】
このとき、防振支承14は、図16に示すように、第一のバネ21および第二のバネ22が変形することによって、基盤15およびスラブ12の水平方向の相対変位を許容するように作用する。しかし、この水平変位がある程度以上になると、図17に示すように、開口部27とケーシング19の外面に配置された緩衝材36が衝突し、バネ配設部16とハウジング部17との相対変位を規制するように働くこととなる。
【0048】
このように防振支承14には、地震を想定して、バネ配設部16とハウジング部17との間に必要以上に相対変位が発生することを規制する耐震ストッパー機能が付加されているため、大規模な地震等により強い水平力が発生した場合においても、防振支承14を構成する各部材が、破壊したり変形したりする懸念がない。したがって、地震時においても、スラブ12および軌道13の安全が守られることになる。
【0049】
特に、このことによって、本実施の形態のように金属性のコイルバネを防振要素として使用した場合にも、地震時の安全性が図られることとなり、したがって、ゴム製の防振支承等に比較して、耐久性を損なわずに高度な防振性能を発揮することでき、しかも、地震時においても安全性の保持が可能であるような防振支承が実現されることとなる。
【0050】
さらに、本実施の形態の防振支承14によれば、上記のように耐震ストッパー機能を兼ねたものとなっているので、地震時を想定して、別途ストッパー等の耐震要素を構造物に付加する必要がなくなり、その分のコストを低減できる。
【0051】
また、そればかりでなくストッパーを別途設ける場合に比べ、施工手順が単純化し、施工コストの低減を併せて実現することが可能であり、さらに、保守点検箇所が減るために、保守点検に要する労務も低減化することができる。
【0052】
また、防振支承14においては、ケーシング内に粘性体Vが注入されていることにより、別途減衰要素を付加しなくても、鉄道構造物11の振動を減衰させることが可能である。また、これにより、コイルバネを防振支承として使用した場合にしばしば問題となるサージング(自己共振現象)を防止することも可能である。
【0053】
また、本実施の形態の防振支承14においては、耐震ストッパーとなるケーシング19および開口部27の当接する部分に、あらかじめ緩衝材36が配置されているので、地震時等において、ケーシング19および開口部27が衝突した場合にも、それによる衝撃が緩和され、その結果、防振支承14および鉄道構造物11の安全が図られることとなる。
【0054】
以上が本発明の実施の形態の一例であるが、もちろん本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その性能的、強度的な要求等にしたがって、形態的、材質的な変更や設置箇所の変更等が可能である。
例えば、上記実施の形態においては、第一のバネ21および第二のバネ22の二つのバネが備えられているが、これらの内の一方のみを備えるように防振支承14を構成してもよい。
また、上記実施の形態においては、粘性体Vの材質としてシリコーンオイルが用いられているが、その代わりにシリコーングリース等を用いるようにしてもよい。
さらに、上記実施の形態における防振支承14は、鉄道構造物における振動の防止に使用されるだけでなく、機械基礎や建築物の床スラブなど任意の構造物に対して適用することが可能である。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る防振支承の構造においては、スラブに埋め込まれたハウジング部の下面のフランジから、基盤側から弾性的に支持された上部フランジにむけてネジ棒が立設され、ネジ棒は、その上端が上部フランジに設けられた貫通孔を挿通するように配置されるとともに、ネジ棒における上部フランジの上側には、上部フランジの上端位置を規制するナット部材が設けられる構成とされる。このことにより、上部フランジからフランジが懸架された状態となり、スラブは基盤から隔絶した状態で弾性的に支持され、これらの間における振動の伝達が遮断されることとなる。このように、本発明の防振支承の構造においては、特殊な機械加工を必要とする部品がほとんど使用されないため、従来のものと比べ製作を容易に行うことができ、また製作コストの低減化を図ることが可能となる。
【0056】
さらに、この防振支承の構造は、上記のような構成とされているため、ハウジング部の下面のフランジと上部フランジとの距離寸法が調節自在であり、したがって、スラブの位置調整を容易に行うことが可能となるだけでなく、スラブ構築後においても、その基盤からの高さの微調整を行うことが可能となる。
【0057】
請求項2に係る防振支承の構造によれば、ハウジング部において、ジャッキにより上部フランジを押し下げる際に反力をとるためのジャッキ固定部が設けられているため、油圧ジャッキによって上部フランジの押し下げ高さおよび上部フランジに作用する押し下げ力を知ることができ、したがって、スラブが基盤に対してどれだけ浮上したかを容易に知ることができる。
【0058】
また、この防振支承の構造によれば、スラブを持ち上げるための構造を内蔵しない構成とされているため、従来のものに比べて、構造を簡略化することが可能である。
さらに、この防振支承の構造においては、ネジ棒やナット部材などの部品を交換する際の作業を、ジャッキを用いてスラブの荷重を支持している間に容易に行うことができ、このためメインテナンスの作業性の面においても有利である。
【0059】
請求項3に係る防振支承の構造においては、ハウジング部下面の開口部が、ハウジング部に対するバネ配設部の水平方向の相対変位を規制するように、ケーシングに対して当接可能なように位置しているため、地震時には開口部およびケーシングが当接することによって、耐震ストッパー機能を発揮し、その結果、防振支承および当該防振支承が適用された構造物の安全性が保たれることになる。このため、本発明によれば、防振要素として防振性能と耐久性の双方において優れたコイルバネを使用しながら、地震時にも安全性を保つような防振支承が実現可能である。
【0060】
また、この防振支承の構造においては、防振支承に耐震ストッパー機能が付加されていることから、耐震ストッパーを防振支承とは別途に設けた場合に比べ、ストッパーの設置コストの削減、施工手順の単純化、および、保守点検箇所の低減に伴う保守点検作業の容易化が図られることとなる。
【0061】
請求項4に係る防振支承においては、ケーシング内部に粘性体が注入されることにより、振動の減衰作用を発揮させるように構成されているため、別途減衰要素を付加することなく、防振に最適な減衰を実現することが可能となり、また、防振要素としてコイルバネを使用した場合に問題となる自己共振現象を防止することができる。
【0062】
請求項5に係る防振支承においては、ケーシングの外面における開口部と対向する部分に緩衝材が配置されており、地震時等において、ケーシングおよび開口部が衝突した場合にも、それによる衝撃が緩和され、その結果、防振支承および構造物の安全が図られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を模式的に示す防振支承の断面図である。
【図2】図1に示した防振支承の上方からの外観を示した図である。
【図3】本発明が適用される鉄道構造物を示す図であって、(a)は鉄道構造物を上方から示した図であり、(b)はその断面図である。
【図4】本発明の防振支承におけるバネ配設部を拡大して示した断面図である。
【図5】図4に示したバネ配設部の外観を示す斜視図である。
【図6】図4に示したバネ配設部の上方からの外観を示した図である。
【図7】本発明の防振支承におけるハウジング部の外観を拡大して示した斜視図である。
【図8】図7に示したハウジング部の上方からの外観を示した図である。
【図9】図7に示したハウジング部を断面形状を示す図である。
【図10】本発明の防振支承の施工手順を示す図であって、(a)は、施工中の状況を上方から示した図であり、(b)は、同断面図である。
【図11】本発明の防振支承の施工手順を示す図であって、(a)は、施工中の状況を上方から示した図であり、(b)は、同断面図である。
【図12】本発明の防振支承の施工手順を示す図であって、(a)は、施工中の状況を上方から示した図であり、(b)は、同断面図である。
【図13】本発明の防振支承の施工手順を示す図である。
【図14】本発明の防振支承の施工手順を示す図である。
【図15】本発明の防振支承の施工手順を示す図であって、(a)は、施工中の状況を上方から示した図であり、(b)は、同断面図である。
【図16】本発明における防振支承が水平力を受けた場合の状態を示す断面図である。
【図17】本発明における防振支承が水平力を受けた場合の状態を上方から示した図である。
【図18】本発明の従来の技術を示す防振支承の断面図である。
【符号の説明】
12 スラブ
14 防振支承
15 基盤
16 バネ配設部
17 ハウジング部
18 下部フランジ
19 ケーシング
20 上部フランジ
20a 貫通孔
27 開口部
29 ジャッキ固定部
33 ネジ棒
34 ナット部材
36 緩衝材
V 粘性体
Claims (5)
- 構造物のスラブと基盤との間に介装されて、該スラブを支持するとともに、該スラブと前記基盤との間の振動の伝達を防止する防振支承の構造であって、
その下面がフランジとして形成されるとともに、前記スラブ中に埋め込まれて固定されるハウジング部と、
その下面が前記基盤に固定される下部フランジ、該下部フランジの上面に対して固定されたバネ、および該バネによって弾性的に支持された上部フランジを具備するバネ配設部とを備えてなり、
前記上部フランジには、貫通孔が形成され、
前記フランジには、ネジ棒がその上端が前記貫通孔に挿通された状態で立設され、
該ネジ棒には、前記上部フランジの上端位置を規制するナット部材が螺設されていることを特徴とする防振支承の構造。 - 請求項1記載の防振支承の構造において、
前記ハウジング部には、ジャッキにより前記上部フランジを押し下げる際に反力をとるためのジャッキ固定部が設けられていることを特徴とする防振支承の構造。 - 請求項1または2記載の防振支承の構造において、
前記フランジには開口部が設けられ、
前記バネ配設部には、前記バネを収納するケーシングが設けられ、
前記バネ配設部は、前記開口部から前記ハウジング部内部に収納されるとともに、前記開口部は、前記バネ配設部と前記ハウジング部との水平方向の相対変位を規制するように、前記ケーシングに対して当接可能に位置していることを特徴とする防振支承の構造。 - 請求項3記載の防振支承の構造において、前記ケーシング内部に粘性体が注入されていることを特徴とする防振支承の構造。
- 請求項3または4記載の防振支承の構造において、前記ケーシング外面の前記開口部と対向する位置に緩衝材が配置されていることを特徴とする防振支承の構造。
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