JP3607624B2 - 有機化合物の分解処理方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は環境汚染物質等の難分解物質、特に有機化合物の分解処理方法及びその装置に関し、特にはフロンガスとかポリエチレン,プラスチック,更にはベンゼン核を持つ有機化合物及びその他の産業廃棄物等の環境汚染物質を過熱蒸気の雰囲気の中で反応させることにより、鉄と有機化合物との直接反応、鉄と過熱蒸気との直接反応で生成した水素による還元反応及び過熱蒸気による加水分解反応の複合反応によって有機化合物を分解処理するようにした処理方法とその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から冷媒とかスプレー剤として使用されているフロンガス及び消化剤として使用されているハロンガス等の有機化合物は環境汚染物質であることが指摘されており、これら物質の無害化処理が地球環境を守る観点から全世界的な関心事として各種の対処手段が提案されている。例えばフロンガス処理方法に関しては、水熱反応法,焼却法,爆発反応分解法,微生物分解法,超音波分解法及びプラズマ反応法等が提案されている。
【0003】
これらの処理方法の中で、水熱反応法はフロンガス等に限定することなく、トリクレン等有機溶剤、廃油、ダイオキシン、PCB、糞尿等の産業廃棄物を主体とする被分解物質全般に対し汎用性のある処理方法として注目されている。この水熱反応法では、例えばフロンガスを塩化ナトリウム、二酸化炭素等の安全な物質に分解することができる。
【0004】
水熱反応法を具体化するための装置に関しては、実験室においてオートクレーブを用いた処理実験、例えば苛性ソーダ液,エタノール,フロン液の混合比率、温度の設定値、圧力の設定値及び反応時間の設定値についての実験が行われているが、通常水熱反応は300〜450℃で100〜350(kg/cm)という高温高圧条件を維持して行われている。
【0005】
本願出願人は先に特願平6−204519号により水熱反応処理による環境汚染物質の処理方法と装置に関する提案を行った。その内容を図11のフロン処理システムフローに基づいて簡単に説明すると、タンク1にフロン液,苛性ソーダ液,エタノールの混合液を収容し、これをポンプ2,流量計3を介して配管4から熱交換器5に送り込み、水熱反応器6で反応させた後に再び熱交換器5を介して冷却器7に送り、冷却器7から流量制御のための圧力調整弁8を経て分離器9に送り、分離器9により清浄水及び清浄物に分離する。同図のタンク1a、ポンプ2a及び流量計3aは、フロンガスの種類によっては常温でガス化する場合もあるため、このようなときに用いる系統である。
【0006】
上記ポンプ2,2aは通常のスラリーポンプを用いる。このスラリーポンプとしては吸入がバキュームで圧送力が高く、容積効率がよいことが必要であり、高濃度スラリー、粉体混合スラリー、酸,アルカリ性スラリー等の高濃度スラリー圧送シリンダが採用される。
【0007】
水熱反応器6は、図12に示したように前記熱交換器5を経由した混合液が入口11からバンドヒータ13が巻き付けられたパイプ12を通って出口14から排出されるように蛇行して構成されている。バンドヒータ13はパイプ12の長手方向へ適宜間隔にて必要個数が配設されていて、パイプ12内の温度が一定になるように制御される。更に前記冷却器7は、反応チューブの周囲に冷却水の通路を形成した通常の冷却機器が採用されている。
【0008】
しかしながら、水熱反応器6は高温高圧条件を維持しなければならないので、圧力調整弁8の構造は複雑、かつ、高価となり、更に高温高圧で使用するために機械的な強度、例えば引張応力とか熱応力に耐えるための設計が難しく、使用する材料が限定されるという難点がある。また高温高圧下での固液混合液の圧送と排出を行う機構は複雑であって被分解物質の種類によっても構造を変える必要があり、操作上のコントロールが難しいという問題点があり、高圧に伴って運転中に配管4の破損事故が生じる惧れもあるため、安全性確保の観点からも難点を残している。
【0009】
上記に対処して、更に本願出願人は特願平8−340560号により、常圧の状態で有機化合物の分解を可能としたことにより、高温高圧に起因する配管とか排出弁の破損がなく、装置を構成する材質を任意に選択することができる分解処理方法とその装置を提案した。即ち、被分解物タンク内に投入されたフロンと水タンク内に投入された水を配管を通して加熱器に送り込み、予め加熱器に配置された内部ヒータと外部ヒータを働かせて加熱器の内部を500℃〜750℃に加熱しておくことによって過熱蒸気が発生する。分解処理するために必要な過熱蒸気の温度は被分解処理物によって異なるため、それぞれ被分解処理物に応じて設定する。例えばフロンガスの場合は500℃〜750℃、ポリエチレンで400℃前後の過熱蒸気とする。
【0010】
加熱器内には過熱蒸気と反応して水素を生成する物質である鉄片が配置されていて、この鉄片がほぼ同温度に加熱されると、過熱蒸気が鉄片と接触して以下の反応式によりマグネタイトと水素を生成する。
3Fe+4HO → Fe+4H………(1)
【0011】
ここで生成した水素は非常に還元力が強く、多くの物質と結合して有機化合物を分解する。反応器内も予め内部ヒータと外部ヒータの駆動によって過熱蒸気の温度を維持するように加熱しておき、該反応器内に配置された鉄片の存在により上記(1)式の反応を行わせる。この反応器内には同じ雰囲気中に過熱蒸気も存在しているため加水分解も併行して起こり、複合的な分解反応が進行する。これに伴って被分解処理物の分解速度が速くなるとともに分解率も向上する。
【0012】
反応器内は加熱器内と略同じ温度に加熱しておくことが適当であり、反応器内を過熱蒸気が通過する間に所定の反応時間が経過して過熱蒸気中の有機化合物が分解処理され、次段の冷却器内に送り込まれて分解処理された分解物のガスが冷却されて液化する。
【0013】
排液は冷却器から気液分離器に導入されて液状物が中和装置に流入し、所定の中和処理が行われてから排出され、排液タンク内に貯留される。また、溶媒としての水のみを加熱器により過熱蒸気として反応器に連続して供給し、この溶媒の過熱蒸気の雰囲気中の反応器内に有機化合物を供給して所定の反応時間経過させることもできる。この構成は被分解処理物として流体状又は気体状以外の固形状の有機化合物、例えばPE、プラスチック、ゴム等を分解処理する場合に適しており、固形状の被分解処理物としての有機化合物を反応器に供給すると共に、反応器内にフィーダ等の移送手段を設けておくとよい。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
前記したように水熱反応器6は高温高圧条件を維持しなければならないので、圧力調整弁8の構造は複雑で、かつ、高価となり、更に高温高圧で使用するために機械的な強度、例えば引張応力とか熱応力に耐えるための設計が難しく、使用する材料が限定されるという難点がある。また高温高圧下での固液混合液の圧送と排出を行う機構は複雑であり、有機化合物の種類によっても構造を変える必要があって操作上のコントロールが難しいという問題点がある。更に高圧に伴って運転中に配管4の破損事故が生じることがあるため、安全性確保の観点からも難点を残している。
【0015】
上記した水熱反応法はクローズドシステムであるが、開放型の装置であるロータリキルン法とか焼却法は残渣中に発生するダイオキシン等に対する対策が問題であり、その他の処理方法においても被分解物質によって反応過程を変えることは困難であるとともに専用の装置を必要とするため、ランニングコスト及びイニシャルコストが高い上、これらの装置には殆ど汎用性がないという欠点を有している。
【0016】
更に特願平8−340560号により提案した方法は、加熱器と反応器の何れか一方もしくは双方に過熱蒸気と反応して水素を生成する物質である鉄片を配置したことにより、過熱蒸気が鉄片と接触して生成した水素の還元力を利用して反応当初は順調に有機化合物を分解することができて効果的であるが、反応中に該鉄片の表面に磁鉄鉱の皮膜が生じてしまい、鉄片と水蒸気との反応が徐々に行われにくくなるという問題がある。
【0017】
そこで本発明は環境汚染物質であるフロンガスとかポリエチレン,プラスチック,更にはベンゼン核を持つ有機化合物及びその他の産業廃棄物等の難分解物質の分解を行うシステムにおける上記問題点を解消して、常圧の状態で分解可能として高温高圧に起因する配管とか排出弁の破損がなく、溶媒として水を用いた場合でも分解率を高めるとともに反応の経時的変化が生じない有機化合物の分解処理方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、有機化合物と溶媒を加熱器を用いて所定の温度に加熱して過熱蒸気とし、該過熱蒸気を所定の温度に加熱された常圧の反応器内を所定の反応時間経過させることにより、該有機化合物を分解処理する方法において、溶媒として水を使用するとともに、加熱器及び反応器の何れか一方もしくは双方を、鉄又は鉄を含む合金を用いて構成し、鉄と有機化合物との直接反応、鉄と過熱蒸気との直接反応で生成した水素による還元反応及び過熱蒸気による加水分解反応の複合反応によって有機化合物を分解処理することを基本手段としている。具体的には前記の鉄又は鉄を含む合金が赤熱される温度に加熱することによって有機化合物を分解処理する。
【0019】
鉄を含む合金として、ステンレス,炭素鋼もしくはハステロイから選択された1種又は複数の素材を使用する方法、有機化合物がフロンであるときの過熱蒸気の温度を650℃〜1100℃とした方法を提供する。
【0020】
また、有機化合物の分解処理装置として、有機化合物と溶媒を所定の温度に加熱して過熱蒸気を発生させる加熱器と、得られた過熱蒸気を所定の反応時間経過させて分解処理する所定の温度に維持された常圧の反応器とを備えてなり、上記加熱器及び反応器の何れか一方もしくは双方を、鉄又は鉄を含む合金を用いて構成し、上記鉄を含む合金として、ステンレス,炭素鋼もしくはハステロイから選択された1種又は複数のもので構成している。
【0021】
かかる分解処理方法と装置によれば、フロンガスとかベンゼン核を持つ有機化合物及びその他の産業廃棄物等の難分解物質は溶媒と共に過熱蒸気となり、或は過熱蒸気の雰囲気中の反応器内に供給されて溶媒と共に過熱蒸気となり、反応器で更に加熱されて常圧で温度のみが上昇した過熱蒸気として反応器内を所定の反応時間経過させることにより、赤熱された鉄,ステンレス,炭素鋼もしくはハステロイと有機化合物との直接反応、鉄と過熱蒸気との直接反応で生成した水素による還元反応及び過熱蒸気による加水分解反応の複合反応によって有機化合物が分解処理される。その後に分解の終了した過熱蒸気は冷却液化して排出される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明にかかる有機化合物の分解処理方法及びその装置の具体的な実施形態を説明する。前記した水熱反応処理における問題点に鑑みて、本願発明者は種々の改良実験を試みた結果、フロン等の有機化合物を溶媒としての水を用いて過熱蒸気とし、過熱蒸気の状態のまま所定の反応時間を保持すれば、反応器内を高圧状態とすることなく、常圧とした状態で、即ち反応器の排出口を開放した状態の常圧であっても温度だけを上げて過熱蒸気の雰囲気を維持することにより、鉄との直接反応、鉄と過熱蒸気との直接反応によって生成した水素による還元反応及び過熱蒸気による加水分解反応の複合反応によって有機化合物を効率的に分解処理することができるという知見を得た。
【0023】
特に反応器として鉄又は鉄を含む合金からなる素材で構成することにより、赤熱した鉄又はステンレス,炭素鋼もしくはハステロイ等の鉄を含む合金と有機化合物との直接反応とともに、過熱蒸気と鉄との直接反応により反応器内で活性化した水素を生成して、この水素による還元反応でもフロン等の有機化合物を分解し、同時に過熱蒸気による加水分解によっても分解可能であるという知見を得た。
【0024】
本発明はフロンガス等の環境汚染物質を始めとする有機化合物を常圧の状態で分解処理するものであり、対象とする有機化合物は特に限定はなく、フロンガス,トリクレン等有機溶剤,廃油,ダイオキシン,PCB,糞尿等の産業廃棄物,ゴム等あらゆるものを対象とし、その状態は固体、液体、気体を問わず特に限定がない。なお、主には▲1▼有機化合物として有用ではあるが使用後の処理が困難なものや有害なもの、例えばクロロベンゼン、フロン(ハロゲン炭素化合物)、問題となっているダイオキシン等であり、又▲2▼有機化合物で有用であるが極めて安定なものであって有害ではないが処理の困難なもの、例えばPE、プラスチック、ゴム等である。
【0025】
これらは石油を原料とする場合が多く、分解すると殆ど油化できるから燃料として用いるか、リサイクルできるように分解処理することを目的とする。また、ゴムの場合は有機化合物を無害化処理するか、リサイクルできるように分解処理をすることを目的とする。
【0026】
本発明によればベンゼン環を開環することが可能であり、本発明が分解対象としているベンゼンは芳香族炭化水素の基本的化合物であってCで表わされ、モノクロロベンゼンはCClで表わされる。ベンゼン核を持つ有機化合物としてはフェノール類が挙げられる。このフェノール類はベンゼン核にOH基が結合した有機化合物の総称であり、COHで表わされる。また、本発明によればベンゼン環を骨格構造とするダイオキシン、PCBなども分解して無害化することが可能である。
【0027】
図1は本発明の一実施形態を概略的に示すシステム図であり、図中の21はフロン等の被分解物タンク、22は被分解物ポンプ、23は溶媒としての水タンク、24は水ポンプ、25は加熱器であり、この加熱器25には内部ヒータ26と外部ヒータ27が配置されている。加熱器25の素材として、鉄又は鉄を含む合金を用いて構成したことが本発明の基本的な特徴となっている。この鉄を含む合金としては、ステンレス,炭素鋼もしくはハステロイから選択された1種又は複数の素材を使用する。
【0028】
被分解物ポンプ22としては被分解処理物に応じて被分解処理物を圧送可能なポンプが選択され、高濃度スラリー、粉体混合スラリー等を圧送できる圧送力が高く、容積効率がよいスラリーポンプを用いるのが適当である。
【0029】
29は反応器であり、所定の温度を保って被分解処理物と溶媒の過熱蒸気及び水素を所定時間反応させて分解処理するための装置である。この反応器29には内部ヒータ30,30と外部ヒータ31,31が配備されている。詳細は後述するように、反応器29内に挿入された反応管の素材として、加熱器25と同様に鉄又は鉄を含む合金を用いる。鉄を含む合金とはステンレス,炭素鋼もしくはハステロイを用いる。また、図示は省略したが反応器29に発生した水素を無害化するために空気/酸素を供給するための空気/酸素の導入管を設けておく。
【0030】
反応器29内は加圧されておらず、排出口側を開放した常圧としている。つまり注入口側の配管の圧力は管路による圧損のみの圧力勾配となっている。あるいは、排出口側からブロア等で吸引するようにしてもよい。このように反応器29は従来の高圧の水熱反応装置と異なって強制的に加圧をしない開放型の装置を使用して被分解処理物質を分解処理できることが本発明の特徴の一つである。また、反応器29内は過熱蒸気によって僅かな圧力が自然に発生しており、圧力勾配によって被分解物を移送する。本発明で常圧とはこのように従来の水熱反応装置のように強制的に高圧に加圧することなく、排出口を開放した状態であることを示している。
【0031】
32は冷却器であり、該冷却器32内には反応器29から導出された配管と連通する配管33が配置されている。34は冷却水の入口、35は冷却水の出口である。36は気液分離器、37は中和装置であって、冷却器32から導出された配管38の他端部が気液分離器36に挿入されており、気液分離器36から導出された配管39の他端部が中和装置37に挿入されている。40は処理液の排出口である。
【0032】
図2は反応器29の内部構造を示す概要図、図3は図2のA−A線に沿う部分を上下に開いた状態の断面図であり、図中の41は円管状の反応管、42は反応管41の周囲を覆う位置に配置された上ケース、43は同じく下ケース、30は反応管41に近接して配置された内部ヒータ、44は内部ヒータ用の断熱材、45,46は上ケース42と下ケース43の開口端を覆う断熱材である。前記反応管41には空気/酸素の導入管47とフロンガスと水との混合物の導入管48が連結されている。このように予め溶媒としての水と被分解物質としてのフロンガスを混合して反応器29に供給する場合は導入管は1本でよい。一方、被分解物質であるフロンガスと溶媒としての水とを個別に反応器29に供給する場合は、水蒸気の導入管49を設け、この水蒸気の導入管49から水を加熱した水蒸気を反応器29に供給し、フロンガスと水との混合物の導入管48からはフロンガスのみを供給するようにする。図3に示したように上ケース42と下ケース43は蝶番50により開閉自在に構成されている。尚、図2では外部ヒータの図示は省略してある。
【0033】
また、被分解物質の種類に応じて、反応器29を複数設けることも本発明の実施形態に含まれる。例えば、固体を分解しようとする場合は反応器29に入れると蒸発潜熱などが必要で温度が下がり安定した反応場が形成できない。そこで、反応器29を複数設置し、先ず最初の反応器29でガス化などの適正な1次処理をしたのち次弾の反応器29において本来の目的に応じた分解を行うことが適当なためである。
【0034】
また、加熱器25も図2に示す上記した反応器29と同様の構成を採用するものである。なお、加熱器25は溶媒としての水を加熱する加熱器と被分解物質としてのフロンガスを加熱する加熱器を別個に装備することもできる。
【0035】
前記したように反応管41の素材として、鉄又は鉄を含む合金、具体的にはステンレス,炭素鋼もしくはハステロイの1種を用いて構成する。図2は被分解処理物を分解処理する反応器29に本発明を適用した例であるが、溶媒を加熱して過熱蒸気とする加熱器25と上記反応器29の何れか一方もしくは双方を同様な素材を用いて構成する。
【0036】
かかる本実施形態の動作態様を説明する。環境汚染物質であるフロンガスを分解処理する場合を例に取ると、被分解物タンク21内にフロンを投入し、被分解物ポンプ22と水ポンプ24を起動することによってフロンと溶媒としての水が配管を通して加熱器25に送り込まれ、適当な比率で混合される。
【0037】
予め加熱器25に配置された内部ヒータ26と外部ヒータ27を働かせて、加熱器25を赤熱した状態に加熱しておくことによって過熱蒸気が発生する。分解処理するために必要な過熱蒸気の温度は有機化合物の種類によって異なるため、それぞれの被分解処理物に応じて設定する。例えばフロンガスの場合は500℃〜750℃、ポリエチレンで400℃前後の過熱蒸気とすることが適当であるが、上記以上の加熱温度であってもよい。特に加熱器25を構成する鉄又は鉄を含む合金が赤熱された温度とすることによって被分解処理物の分解率を高くすることができる。
【0038】
加熱器25の素材として鉄を用いたケースでは、過熱蒸気が赤熱された鉄と接触して前記の反応式(1)によりマグネタイトと活性化した水素を生成する。
3Fe+4HO → Fe+4H………(1)
ΔH=−22.9kcal, ΔG=−3.9kcal
(1)式は発熱反応であり、活性化した水素が鉄の近傍に存在することから激しい還元反応が生じる。
【0039】
従ってフロンは過熱蒸気による加水分解反応だけでなく、(1)式によって発生した水素の還元反応によっても分解される。更に水と鉄との反応場において水が活性化されることから難分解物質である有機化合物との反応が急速に進行する。但し1000℃近辺の高温ではΔGが0になり、以降はプラスになるから反応は進みにくくなる。
【0040】
上記(1)式の外、
2Fe+3HO → Fe+3H…………………(2)
ΔH=−14.8kcal, ΔG=5.5kcal
がある。特に鉄が赤熱される温度では前記(1)式が進行し、赤熱される温度よりも低い温度では(2)式が主反応として進行する。即ち、(2)式では温度が500℃以上ではΔGがプラスに変わり、左から右への反応は生じない。
【0041】
上記(1)式で生成した水素は非常に還元力が強く、多くの物質と結合して有機化合物を分解する。反応器29内も予め内部ヒータ30,30及び外部ヒータ31,31の駆動によって過熱蒸気の温度を維持するように加熱されて保持されており、この反応管41のフロンガスと水との混合物の導入管48からフロンガスと水蒸気の混合物が導入され、必要に応じて導入管47から空気/酸素を送り込むことにより、反応管41の素材として鉄を用いたケースでは上記(1)式の反応が進行している。反応管41内には同じ雰囲気中に過熱蒸気も存在しているため、活性化した水素による還元反応とともに加水分解反応も併行して起こり、複合的な分解反応が進行する。これに伴って有機化合物の分解速度が速くなるとともに分解率も向上する。なお、反応器29内には被分解物質と溶媒を混合した過熱蒸気と共に、導入管47を介して空気/酸素を供給する。これは空気/酸素を供給することにより、加水酸化反応を生じさせると共に、発生した水素と酸素を反応させることにより大きな活性化エネルギーを得るとともに、発生した水素が排出されると危険であるため、供給された空気/酸素によって水素を水にして無害化するためである。
【0042】
反応管41は加熱器25と同様に赤熱温度に加熱しておくことが肝要である。そして該反応管41内を過熱蒸気が通過する間に所定の反応時間が経過して、過熱蒸気中の有機化合物が分解処理され、次段の冷却器32内に送り込まれる。
【0043】
冷却器32では冷却水の入口34から冷却水を供給して同出口35から流出させることにより、反応管41と連通する配管33内で分解処理された分解物のガスが冷却されて液化する。冷却器32内の温度は分解物のガスを液化できる温度であればよく、フロンガスの場合は略18℃とした。このように液化することにより副生成物の発生が防止される。
【0044】
排液は配管38を通って気液分離器36に入り、気液が分離されて液状物が中和装置37に流入し、所定の中和処理が行われて排出口40から排出され、図外の排液タンク内に貯留される。上記冷却器32に熱交換器を組み込んで、熱交換器により冷却する熱を回収し、回収した熱を過熱蒸気の発生に再利用することも可能である。
【0045】
上記の説明において、溶媒としての水のみを加熱器25により過熱蒸気としてから反応器29に連続して供給し、この溶媒の過熱蒸気の雰囲気中の反応器29の反応管41内に被分解処理物を供給して所定の反応時間経過させることもできる。この構成は被分解処理物として流体状又は気体状以外の固形状の被分解処理物、例えばPE,プラスチック,ゴム等を分解処理する場合に適しており、固形状の被分解処理物を反応器29に供給すると共に、反応器29内にフィーダ等の被分解処理物の移送手段を設けておくとよい。
【0046】
前記反応管41内の反応温度は650℃〜1100℃の温度範囲が採用可能である。反応温度650℃は有機化合物の処理量が少ない時とか、反応速度を問題にしないケースで用いられ、反応管41の腐食等が最小限になるという利点がある。反応温度1100℃は有機化合物の処理量が多くて反応速度を高めるケースで用いられるが、反応管41の腐食劣化も早められるので、反応管41として最適な素材を選択することが要求される。
【0047】
前記(1)式におけるマグネタイト(Fe)は酸に対する耐蝕性が高い不動態であり、容器等の表面に付着して保護膜を形成する。また、鉄に付着したマグネタイトは有機化合物中の炭素と反応して
Fe+2C → 3Fe+2CO…………(3)
更にCOとも反応して
Fe+4CO → 3Fe+4CO………(4)
となり、前記(1)式の反応に必要な鉄がリサイクルされる。しかし、多くは熱による膨張と収縮が進行してマグネタイトが剥離して新しい鉄表面が露出し、反応が継続する。
【0048】
この実施形態は流体状或は気体状の有機化合物を分解処理するためのものであり、環境汚染物質としてフロンガスの外にクロロベンゼン,トリクロロエタン等のハロゲン炭化化合物の液状物の分解が可能であるが、フロンガスの場合の実験条件として加熱器25及び反応管41内の温度を650℃、冷却器32内の配管33の温度を18℃とした。また、モル比で溶媒である水の方が過剰になるように選択し、フロンガス:水=1:3とした。この時の分解率はガスクロマトグラフィーでフロンが検出されない程度まで、換言すれば99.99%以上の分解率が得られた。
【0049】
一方、加熱器25と反応器29を構成する素材として鉄のみを用いると、過熱蒸気と鉄とが激しく反応して温度が異常に上昇するとともに酸が生成して容器自体の耐久性が低下する難点がある。例えば生成した塩酸もしくはフッ酸と鉄とが反応して下記の(5)(6)式に示す反応が進行する。
Fe+2HCl → FeCl+H……………………(5)
ΔH=−23.7kcal, ΔG=−2.9kcal
Fe+2HF → FeF+H…………………………(6)
ΔH=−36.243kcal, ΔG=−0.3kcal
【0050】
上記に対処して、反応器29を構成する素材として鉄のみでなく、鉄を含む合金からなる素材を用いて実験を行った。図4は前記反応管41としてセラミックチューブ(SiC)を用いており、該セラミックチューブ内に表面積が3200cmの鉄片を入れ、反応管41を850℃に加熱してフロンガスの分解処理を行った際の分解率(%)と時間(分)との相関を示すグラフであり、実際の測定データを添付してある。フロンガスの処理量は10(kg/h)であり、鉄片が赤熱状態にならないと鉄と水蒸気との反応が活発に行われないため、反応管41を850℃に加熱することが必要である。
【0051】
図4によれば40分を過ぎたあたりから分解率が低下し始め、90分経過した時点では鉄片を入れていない場合と同程度の分解率となっている。これは鉄片の表面に磁鉄鉱の膜ができて水蒸気との反応が徐々に少なくなったためと考えられる。従って表面の磁鉄鉱の膜を取り除くと分解率が回復する。
【0052】
図5は前記反応管41を構成する鉄を含む合金として表面積が3140cmのステンレスチューブ(SUS304)を用いて、この反応管41を850℃に加熱してフロンガスの分解処理を行った際の分解率(%)と時間(分)との相関を示すグラフである。フロンガスの処理量は10(kg/h)である。図5によれば、時間の経過に伴う分解率の低下はなかったが、反応管41が約2週間で腐食して使用不能となった。ステンレスチューブでは表面にできた磁鉄鉱の膜が膨張率の相違により自然に剥離するので、新しい面が常時露出していることによって分解率を一定に維持する作用が得られている。
【0053】
図6は反応管41として3種類のフロンガス(R12,R22,R134A)10(kg/h)をそれぞれ分解処理を行った際の分解率(%)と温度(℃)との相関を示すグラフである。尚、反応管41の材質はSUS310Sを用い、直径は120mm,長さは1900mm,反応時間は2秒とした。
【0054】
図7は反応管41として3種類のフロンガス(R12,R22,R134A)10(kg/h)をそれぞれ分解処理を行った際の分解率(%)と温度(℃)との相関を示すグラフである。尚、反応管41の材質はS45Cを用い、直径と長さ及び反応時間は図6の例と同一とした。
【0055】
図8は反応管41として3種類のフロンガス(R12,R22,R134A)10(kg/h)をそれぞれ分解処理を行った際の分解率(%)と温度(℃)との相関を示すグラフである。反応管41の材質はSiCを用い、直径と長さ及び反応時間は図6の例と同一とした。
【0056】
図6乃至図8の比較から、反応管41の素材がFe>SUS>SiCの順序でフロンガスの分解率は異なっていることが判明した。従って溶媒として水を使用するとともに加熱器25及び反応器29の反応管41の何れか一方もしくは双方を鉄を用いて構成することにより、有機化合物と鉄との直接反応と、生成した水素による還元反応及び過熱蒸気による加水分解反応によって有機化合物を分解することができる。
【0057】
図9は前記反応管41として(A)一般構造用圧延鋼材(SS)を用いた場合の分解反応時間を1として基準化し、他の素材である(B)S45C,(C)SUS304,(D)SUS316,(E)SUS310,(F)ハステロイC22,(G)ニッケル,(H)銅,(I)SiC,(J)アルミナを用いた場合のフロンガスの分解反応時間比を示すグラフである。尚、分解反応時間比は850℃の分解温度で処理量が1(kg/h)の小型反応器を用いて処理した際のフロンガスの分解率が99.99%に達成するのに要する時間を測定して算出した。(A)〜(F)は鉄を含む素材であり、(G)〜(J)は鉄を含んでいない素材である。図9から反応管41の素材として鉄を用いた際の反応時間比が最も小さく、分解率を高める上で鉄の効果が大きいことが分かる。
【0058】
図10は反応管41として、Fe,SUS,SiCを用いてフロンガス(R22)の分解処理を行った際の分解率(%)と温度(℃)との相関を示すグラフである。反応管41の直径と長さ及び反応時間は図6の例と同一とした。図10から分解率はFe>SUS>SiC の順序であることが判明した。
【0059】
また、被分解処理物がフロンCFC−12,CFC−22R,CFC−134Aの場合には、反応器29に溶媒としての水を加えて反応させることにより、下記(7)(8)(9)式のように鉄と有機化合物との直接反応が進行する。
Fe+CFCl →FeF+C+Cl………………(7)
ΔH=−50.4kcal, ΔG=−54.6kcal
Fe+CHClF →FeF+C+HCl………………(8)
ΔH=−73.6kcal, ΔG=−71.9kcal
Fe+C →FeF+2C+2HF……………(9)
ΔH=−84.1kcal, ΔG=−113.5kcal
【0060】
生成した炭素は酸素と反応して二酸化炭素になり、発熱反応を引き起こす。上記(7)(8)(9)式は全て発熱反応であって右方向に進行し、左側には進行しない。この発熱によって反応近傍の有機化合物が活性化され、激しい反応場を形成する。
【0061】
従って本実施形態例によれば、フロンと鉄との接触により、活性化された水素による還元反応、酸素による発熱反応、有機化合物と鉄との直接反応という複合反応が同時に惹起され、かつ、発生する熱によって反応場全体が活性化されるという作用が得られる。
【0062】
次に過熱蒸気による各種フロンの加水分解原理を説明する。フロンCFC−22の加水分解は、下記の(10)〜(12)式により行われる。
CHClF+2HO → CO+HCl+2HF+H………(10)
CHClF+HO → HCl+2HF+CO……………………(11)
4CHClF+6HO → 3CO+8HF+4HCl+CH………(12)
(10)(11)(12)式によれば、Hガス,COガス,CHガスという有害もしくは可燃性ガスが生成する問題がある。そこで水とともに空気もしくは酸素を加えて加水酸化分解を行わせると下記の(13)式が進行する。
CHClF+2HO+O → 2CO+2HCl+4HF…(13)
従って一酸化炭素COは
2CO+O=2CO
となり、水素ガスH
2H+O=2H
となり、メタンガスCH
CH+3O=CO+2H
となる。従って有害もしくは可燃性ガスは二酸化炭素として無害化されるか水分に変換され、前記(4)式で示す結果に帰結する。
【0063】
フロンCFC−134Aの加水分解は、下記の(14)〜(16)式により行われる。
+2HO → 4HF+2CO+2H………………(14)
+4HO → 4HF+2CO+3H …………(15)
+3HO → 4HF+CO+2H+CO ……(16)
(14)(15)(16)式の場合でもHガス,COガスという有害もしくは可燃性ガスが生成するが、水とともに空気もしくは酸素を加えて反応させると前記(4)式が進行し、加水酸化分解が行われる。
【0064】
フロンCFC−141Bの加水分解は、下記の(17)〜(18)式により行われる。
ClF+2HO → 2CO+HF+2HCl+2H…………(17)
ClF+4HO → 2CO+HF+2HCl+4H…………(18)
(17)(18)式は一酸化炭素,Hガスが生成するため不適である。そこで水とともに空気もしくは酸素を加えて反応させると下記の(19)(20)式が進行し、加水酸化分解が行われる。
ClF+3/2O+HO → 2CO+2HCl+HF+H……(19)
2CClF+O+2HO → 4CO+4HCl+2HF+2H……(20)
この場合、水、酸素を加えると(19)(20)式のようにCO,Hが発生して不適である。酸素だけを加えた酸化分解の場合には下記の(21)(22)式が進行する。
ClF+2O → 2CO+2HCl+HF ………(21)
ClF+O → 2CO+2HCl+HF ……………(22)
この場合にも(22)式に示されるようにCOガスが生成されるが、実際には酸素過剰の状態で(21)式が優先して起きるため、酸素が十分に過剰な雰囲気を作り、どの過程の分解が起きても最終的には(21)式になるようにすることが可能となる。酸素だけを加えた場合には酸化分解が進行するが、予期できない副生成物ができることがあるため、水を適量添加することによって生じる過熱蒸気の存在が重要となる。従って分解方法としては加水酸化分解が最適である。
【0065】
被分解処理物としてフロンガスを用い、空気/酸素を入れたときには下記の生成物が確認された。先ず気体はCO,H,HCl,HF,CO(微量)であり、冷却後は水にHCl,HFは溶けて強酸となる。
【0066】
下記の(23)式に示したようにフロンの濃度に応じて苛性ソーダNaOHを加えて炭酸ガスを重炭酸ソーダNaHCOとし、(24)式のように苛性ソーダと塩酸の反応で食塩NaClを生成して、更に(25)式のように苛性ソーダとフッ酸の反応でフッ化ナトリウムNaFを生成して対処する場合もある。液化後の強酸性液をNaOHで中和する場合、(24)(25)式が、又必ずCOが発生するので(23)式も起きて炭酸ガスを放出しない方法も可能となる。
NaOH+CO → NaHCO……………………………(23)
NaOH+HCl → NaCl+HO………………………(24)
NaOH+HF → NaF+HO…………………………(25)
【0067】
以上説明した実施形態は、流体状或は気体状の有機化合物を分解処理するためのものであり、環境汚染物質としてフロンガスの外にクロロベンゼン,トリクロロエタン等のハロゲン炭化化合物の液状物の分解が可能である。本実施形態によるトリクロロエタン(CH・CCl)及びベンゼン核を持つ有機物であるクロロベンゼン(CCl)の分解反応を説明する。
【0068】
先ずトリクロロエタン(CH・CCl)を分解する場合は以下のように反応が進行する。溶媒として水を使用した場合の加水分解は、
CH・CCl+HO → 3HCl+CO+C+H ………(26)
CH・CCl+2HO → 3HCl+CO+C+2H…(27)
となる。過熱蒸気の存在により生成された水素によって、
CH・CCl+3H → CH・CH+3HCl…………(28)
となる。水素による置換反応が認められ、更に
CH・CH+H → 2CH …………………………………(29)
となる分解が進行し、メタンガスとして放出されるが、次いで
CH → C+2H ………………………………………………(30)
となる場合もある。従って最終的にはCO,CO,H,C,HClに分解される。
【0069】
次にクロロベンゼン(CCl)を分解する場合は、以下のように加水分解が進行する。
Cl+HO → COH+HCl……………………(31)
過熱蒸気の存在によって生成された水素による分解は、
Cl+H → C+HCl……………………………(32)
となって、ベンゼンと塩酸が生成されるが、更にHが付加されて、
+3H → C12 ……………………………………(33)
となり、シクロヘキサン(C12)が生成され、更に開環されてメタン、エタン等に分解される。
12+6H → 6CH………………………………………(34)
このメタンは
CH → C+2H …………………………………………………(35)
となってC(グラファイト)と塩酸と水素に分解される。
【0070】
(26)〜(35)式にOを加えることで,CO→COに、H→HOに、C→COに、CH→CO+HOにと、すべてCO,HOの無害なものに分解される。勿論、HCl,HFなどはNaOHで中和した場合に、NaCl,NaFとHOになる。従って、その反応の形態を見て、加水分解、加水酸化分解、酸化分解のどれかを主な反応に選ぶことで完全に無害化することができる。なお、鉄に水を加えると水素が発生し、排出ガスに水素が含まれると危険である。そこで、反応器29内に酸素/空気を供給することにより、水素を水にするものである。生成された水素は還元もするし、酸素と反応して水素となるが、このときの発熱量は非常に大きいため分解に必要な活性化エネルギーを局部的に供給し分解を促す。これが連鎖的に連続して反応するきっかけを作るのである。
【0071】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によればフロンガスとか有機化合物及びその他の産業廃棄物を、溶媒としての水のみを供給して反応器内で所定の反応を行わせることにより、鉄と有機化合物との直接反応、鉄と過熱蒸気との直接反応で生成した水素による還元反応及び過熱蒸気による加水分解反応の何れかの形態によって有機化合物を分解処理することができる。特に本発明は水熱反応を利用した分解手段のように反応器内を高温高圧に維持する必要がないため、反応器及びその他の圧力調整弁等を不要とし、操作上のコントロールも容易となる利点がある。
【0072】
また、反応形態は一律であって、反応中に該鉄片の表面に磁鉄鉱の皮膜が生じてしまい、鉄片と水蒸気との反応が徐々に行われにくくなることもなくなり、有機化合物を効率的に分解処理することができる。しかも加熱器と反応器内に鉄片等の反応助材を配置していないため、反応中に鉄片の表面に磁鉄鉱の皮膜が生じることによる反応低下現象がなくなり、経時的な変化が生じない。更に反応器内に空気/酸素を供給するため、反応中に一酸化炭素等の有毒ガスとか水素ガス等の爆発性を有する可燃性ガスは生成せず、もしくは生成しても直ちに無害化処理することが可能となる。更に反応生成物に起因する配管の詰まりとか、途中の配管内で反応が開始されることによる配管の腐食現象を防止することができる。
【0073】
分解の終了したガス成分を冷却することにより、液化して排出することができる。特に常圧下での加熱が主工程となっているため、高圧ポンプは不要であり、排出弁とか配管が破損する懸念はない。更に反応は全て反応器の中で起こるクローズドシステムであるので二次汚染がないという効果が得られる。
【0074】
特に従来から知られている過熱蒸気と空気雰囲気中において触媒の存在下で有機化合物を分解処理する方法は、触媒の酸化等による劣化が生じる難点があるのに対して、本発明の場合には触媒を使用していないために上記の問題点はなく、しかもフロンのみならず他の産業廃棄物とかベンゼン核を持つ有機物にも適用可能である。
【0075】
更に本発明によれば、低圧で工程が進行するため反応器は所定の高温に耐えられる鉄又は鉄を含む合金であれば良く、機械的な強度及び引張応力とか熱応力に耐えるための設計は格別要求されないという利点があり、各種機器の破損に対する対策は容易であるとともに装置自体の自動化も容易であり、安全性が高いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的実施形態を示すシステム図。
【図2】本発明を適用した反応器の内部構造を示す概要図。
【図3】図2のA−A線に沿う部分を上下に開いた状態の断面図。
【図4】従来の方法でSiCを用いてフロンガスの分解処理を行った際の分解率(%)と時間(分)との相関を示すグラフ。
【図5】本発明により反応管にSUSを用いてフロンガスの分解処理を行った際の分解率(%)と時間(分)との相関を示すグラフ。
【図6】ステンレスチューブで3種類のフロンガスの分解処理を行った際の分解率(%)と温度(℃)との相関を示すグラフ。
【図7】鉄を用いて3種類のフロンガスの分解処理を行った際の分解率(%)と温度(℃)との相関を示すグラフ。
【図8】セラミックチューブを用いて3種類のフロンガスの分解処理を行った際の分解率(%)と温度(℃)との相関を示すグラフ。
【図9】各種の素材を用いた場合のフロンガスの分解反応時間比を示すグラフ。
【図10】Fe,SUS,SiCを用いてフロンガスの分解処理を行った際の分解率(%)と温度(℃)との相関を示すグラフ。
【図11】従来のフロン処理方法の概要を示すシステム図。
【図12】図11のシステム図における水熱反応装置の概要図。
【符号の説明】
21…被分解物タンク
22…被分解物ポンプ
23…水タンク
24…水ポンプ
25…加熱器
26,30…内部ヒータ
27,31…外部ヒータ
29…反応器
32…冷却器
36…気液分離器
37…中和装置
41…反応管
42…上ケース
43…下ケース
50…蝶番
整理番号 P3245

Claims (7)

  1. 有機化合物と溶媒を加熱器を用いて所定の温度に加熱して過熱蒸気とし、該過熱蒸気を所定の温度に加熱された常圧の反応器内を所定の反応時間経過させることにより、該有機化合物を分解処理する方法において、
    溶媒として水を使用するとともに、加熱器及び反応器の何れか一方もしくは双方を、鉄又は鉄を含む合金を用いて構成し、鉄と有機化合物との直接反応、鉄と過熱蒸気との直接反応で生成した水素による還元反応及び過熱蒸気による加水分解反応の複合反応によって有機化合物を分解処理することを特徴とする有機化合物の分解処理方法。
  2. 有機化合物と溶媒を加熱器を用いて所定の温度に加熱して過熱蒸気とし、該過熱蒸気を所定の温度に加熱された常圧の反応器内を所定の反応時間経過させることにより、該有機化合物を分解処理する方法において、
    溶媒として水を使用するとともに、加熱器及び反応器の何れか一方もしくは双方を、鉄又は鉄を含む合金を用いて構成し、この鉄又は鉄を含む合金が赤熱される温度に加熱することにより有機化合物を分解することを特徴とする有機化合物の分解処理方法。
  3. 鉄を含む合金として、ステンレス,炭素鋼もしくはハステロイから選択された1種又は複数の素材を使用する請求項1又は2記載の有機化合物の分解処理方法。
  4. 有機化合物がフロンであるときの過熱蒸気の温度を650℃〜1100℃とした請求項1,2又は3記載の有機化合物の分解処理方法。
  5. 有機化合物と溶媒を所定の温度に加熱して過熱蒸気を発生させる加熱器と、得られた過熱蒸気を所定の反応時間経過させて分解処理する所定の温度に維持された常圧の反応器とを備えてなり、上記加熱器及び反応器の何れか一方もしくは双方を、鉄又は鉄を含む合金を用いて構成したことを特徴とする有機化合物の分解処理装置。
  6. 溶媒を所定の温度に加熱して過熱蒸気を発生させる加熱器と、得られた溶媒の過熱蒸気と有機化合物を所定の反応時間経過させて分解処理する所定の温度に維持された常圧の反応器とを備えてなり、上記加熱器及び反応器の何れか一方もしくは双方を、鉄又は鉄を含む合金を用いて構成したことを特徴とする有機化合物の分解処理装置。
  7. 鉄を含む合金として、ステンレス,炭素鋼もしくはハステロイから選択された1種又は複数の素材を使用する請求項5又は6記載の有機化合物の分解処理装置。
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