JP3605896B2 - パルス電源 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高電圧・大電流の短パルスを発生するパルス電源に係り、特に可飽和リアクトルを磁気スイッチ手段とするパルス電源における可飽和リアクトルの磁気リセット回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
パルスレーザ励起やパルスプラズマ発生,パルス脱硝装置等のパルス電源には、サイラトロンスイッチやトリガトロンスイッチ等の放電スイッチを用いて直接に高電圧・大電流をスイッチングすることでパルスを発生するものと、半導体スイッチと磁気スイッチになる可飽和リアクトルを組合せたものがある。
【0003】
図4は、半導体スイッチと可飽和リアクトルを組み合わせたパルス電源の例を示す。
【0004】
コンデンサ1は、高圧直流電源2により初期充電される。半導体スイッチ3は、レーザヘッド4の放電周期にしたがって投入制御される。半導体スイッチ3の投入により、コンデンサ1の電圧が可飽和リアクトル5とコンデンサ6の直列回路に印加される。
【0005】
この電圧印加により、可飽和リアクトル5には電流が流れ始めてコンデンサ6を充電する。この電流により、可飽和リアクトル5は励磁され、ある値以上で飽和してインダクタンスが急激に低下する。この磁気スイッチ動作により、コンデンサ1からコンデンサ6への電流が急上昇し、コンデンサ6にはパルス圧縮した急速充電をする。
【0006】
同様に、コンデンサ6の充電電圧は、可飽和リアクトル7の磁気スイッチ動作でコンデンサ8をパルス圧縮した急速充電をし、さらにコンデンサ8の充電電圧を可飽和リアクトル9でパルス圧縮してレーザヘッド4に放電する。
【0007】
このような可飽和リアクトルを磁気スイッチ手段とするパルス電源において、可飽和リアクトル5、7、9は、磁気スイッチ動作後には飽和状態から非飽和状態に戻るが、このままでは鉄心(磁性体)に残留磁気が存在し、次回の磁気スイッチ動作にパルス圧縮効果が得られなくなる。
【0008】
この現象を図5で説明する。同図は、可飽和リアクトルの鉄心の磁化曲線を示し、初期励磁では点Oから点Pさらには点P1に向かって移動し、励磁電流により動作点Pに達したときに磁束密度Bの飽和を起こし、可飽和リアクトルが飽和状態になる。
【0009】
この後、磁気スイッチ動作後の励磁電流の減少で磁化力Hが減少すると、鉄心は飽和状態から非飽和状態に戻り、動作点Qになって残留磁気が残る。
【0010】
この状態で、次回の磁気スイッチ動作をさせようとうすると、鉄心の動作点はQからPを経てP1への移動になり、その磁束変化が小さいため非飽和時の可飽和リアクトルのインダクタンスが十分に大きくなり得ず、パルス圧縮が殆ど行えなくなる。
【0011】
そこで、磁気スイッチ動作を行った後、鉄心に逆励磁電流を流し、その動作点をQからR点に戻し、さらに逆励磁電流の消滅で動作点Sに戻しておく、いわゆる磁気リセットを行い、次回の磁気スイッチ動作に備える。
【0012】
この磁気リセットを行うため、図4に示すように、各可飽和リアクトル5、7、9、には磁気リセット回路を設けている。この磁気リセット回路は、各可飽和リアクトルの鉄心にリセット巻線10〜12を設け、これら巻線10〜12にリセット用電源になる直流電源13〜15から半導体スイッチ16〜18の投入で逆励磁電流を供給する。
【0013】
半導体スイッチ16〜18は、リセット動作後には開放され、直流電源13〜15をリセット巻線10〜12から遮断する。すなわち、リセット巻線10〜12は、可飽和リアクトルの主巻線と電磁的に結合しているため、可飽和リアクトルの磁気スイッチ動作時にリセット巻線から直流電源へ高圧誘導電圧が印加されないようにして直流電源を保護する。
【0014】
半導体スイッチ16〜18に代わる他の方式として、直流電源13〜15とリセット巻線10〜12との間に設けるインピーダンス素子19〜24を高いインピーダンスを持たせてスイッチ16〜18を省略した構成もある。
【0015】
図6の(a)、(b)は、磁気リセット回路の他の方式を示し、交流又は直流の外部電源25からトランス26を通して2つの可飽和リアクトル27、28の主巻線に直接にリセット電流を供給する場合である。この場合も半導体スイッチ29、30によりリセット用電源と可飽和リアクトルとの間の遮断を得る。また、(b)の場合はトランスと可飽和リアクトルとの間の遮断も得る。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従来の磁気リセット回路は、可飽和リアクトルの磁気スイッチ動作時にリセット巻線に発生する誘導電圧からリセット用電源等を保護するために、半導体スイッチや高インピーダンス素子を設けるようにしている。
【0017】
このうち、半導体スイッチを設ける回路では、半導体スイッチのオン・オフ制御回路を必要とするし、可飽和リアクトルの動作との間のタイミング及び各半導体スイッチ間のタイミングなど、各半導体スイッチのオン・オフのタイミング制御が難しくなる。
【0018】
特に、高い繰り返し動作になるパルス電源では、半導体スイッチも高い繰り返しでオン・オフ制御しなければならず、適切なタイミングでリセット電流を供給するためには、回路構成等を考慮しなければならず、そのタイミング制御が極めて難しくなる。
【0019】
なお、半導体スイッチを省略して高いインピーダンス素子とする場合は、磁気リセット回路に存在する浮遊容量等によりリセット電流供給に遅れが発生し、高い繰り返し動作のパルス電源には適用できない。
【0020】
従来装置の他の課題として、複数の可飽和リアクトルに一括してリセット電流を供給するにはトランスと半導体スイッチを必要とし、磁気リセット回路が一層複雑になる。
【0021】
本発明の目的は、磁気リセット回路に半導体スイッチを設けることなくリセット用電源を保護できるようにしたパルス電源を提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、高い繰り返し動作にも確実にリセット電流を供給できるようにしたパルス電源を提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的は、複数の可飽和リアクトルを一括して磁気リセットを行うのにトランスを不要にしたパルス電源を提供することにある。
【0024】
本発明の他の目的は、リセット電流の増大を確実、容易にしたパルス電源を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明は、可飽和リアクトルを磁気スイッチ手段とし、該可飽和リアクトルのリセット巻線にリセット電流を供給して可飽和リアクトルの鉄心を逆励磁しておく磁気リセット回路を設けたパルス電源において、前記磁気リセット回路は、前記リセット巻線にリセット電流を常時供給する直流電源と、前記直流電源のリセット電流出力端に設けられ、リセット電流路のサージが該直流電源へ侵入するのを抑制する第1のリアクトルと、前記第1のリアクトルと前記リセット巻線との間に設けられ、該リセット巻線に発生する誘導電流を抑制する第2のリアクトルと、前記第2のリアクトルと前記リセット巻線との直列回路に並列に設けられ、前記誘導電流を第2のリアクトルに循環させるダイオードと、を備えたことを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、磁気リセット回路は、複数の可飽和リアクトルのリセット巻線の直列接続回路に一括してリセット電流を供給する構成としたことを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、磁気リセット回路は、直流電源と第1のリアクトルとダイオードを有する複数の回路から1つの第2のリアクトルを通してリセット巻線にリセット電流を供給する構成としたことを特徴とする
以上の各構成になる本発明は、リセット巻線にはリセット電流を常時供給することにより、可飽和リアクトルの磁気スイッチ動作にタイミングを合わせるスイッチを不要にして磁気リセットを行う。
【0028】
また、リセット巻線に発生する誘導電流は第2のリアクトルで抑制しながらダイオードにより第2のリアクトルに循環させ、誘導電流が直流電源側に侵入するのをスイッチを設けることなく防止して直流電源を保護する。また、第1のリアクトルにより直流電源をサージから保護する。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態を示す磁気リセット回路図である。リセット用電源になる直流電源41から可飽和リアクトル42のリセット巻線43に供給するリセット電流路には、リアクトル44と抵抗45及びリアクトル46を直列に設ける。また、抵抗45とリアクトル46とリセット巻線43との直列回路に並列にダイオード47を設ける。このダイオード47は、直流電源41の出力極性に対して逆方向にされ、直流電源41からリセット巻線43へのリセット電流には作用せず、リセット巻線43からの誘導電流には導通して該電流を循環させる。
【0030】
抵抗45は、直流電源41の電圧との関係からリセット巻線43へのリセット電流を設定する抵抗値にされる。
【0031】
リアクトル44は、直流電源41の出力端に設けられ、リセット電流路に発生するサージ(高周波電流)が直流電源41に侵入するのを抑制するサージ抑制手段にされる。リアクトル46は、リアクトル44とリセット巻線43の間に設けられ、可飽和リアクトル42の磁気スイッチ動作時に発生する誘導電流を抑制するための誘導電流抑制手段にされる。このため、リアクトル44のインダクタンスL44と、リアクトル46のインダクタンスL46は、L46≫L44の関係に設定される。
【0032】
ダイオード47は、リセット電流には阻止状態になり、可飽和リアクトル42の磁気スイッチ動作時に発生する誘導電流には抵抗45とリアクトル46を通してリセット巻線43に循環させることにより、誘導電流が直流電源41側に流れ込むのを抑制する。
【0033】
以上の回路構成において、図1中に矢印IRで示すリセット電流は、回路に半導体スイッチを設けることなく、リセット巻線43に常時供給される。このときの電流値は抵抗45の抵抗値により決定され、可飽和リアクトル42の鉄心を逆励磁しておく。この状態は、鉄心を図5の動作点R近辺に励磁しておき、最小のリセット電流で鉄心の逆励磁を得る。
【0034】
このリセット電流IRが常時供給されている状態で、可飽和リアクトル42が磁気スイッチ動作したとき、リセット巻線43には誘導電流が発生する。この誘導電流は、図1中に矢印Iiで示す方向に発生し、ダイオード47を通して抵抗45及びリアクトル46側に循環し、直流電源41側へ印加されるのを防止する。また、誘導電流Iiは、リアクトル46のインダクタンスにより抑制し、誘導電流のエネルギーは、抵抗45で吸収される。
【0035】
また、誘導電流の発生に、サージが含まれる場合にはリアクトル44により直流電源41をサージ電流から保護する。
【0036】
したがって、本実施形態によれば、リセット用電源になる直流電源41と可飽和リアクトル42のリセット巻線43との間には、回路を遮断するための従来の半導体スイッチを不要にするため、該スイッチ自体を不要にすると共に、そのオン・オフのタイミング制御が不要になる。
【0037】
また、リセット電流は常時供給するため、高い繰り返し動作にもリセット電流の供給タイミングを考慮することなく、リセット電流を確実に供給できる。なお、リアクトル46及び44は、誘導電流など高周波電流阻止用になるため、直流になるリセット電流に対しては影響しない。
【0038】
さらに、可飽和リアクトル42の磁気スイッチ動作で発生する誘導電流は、ダイオード47でリセット巻線側に循環させ、リアクトル46で抑制するため、直流電源41への印加を阻止し、直流電源41を誘導電流から保護することができる。
【0039】
なお、図1の構成において、直流電源41の電流容量を大きくすることなくリセット電流を等価的に増大させるには、リセット巻線43の巻数を増やすことでリセット磁化レベルを増加させることができる。この場合、リセット巻線の巻数の増大で誘導電圧も大きくなることから、ダイオード47の耐電圧を大きくするか、複数のダイオードの直列接続で対応できる。
【0040】
図2は、本発明の他の実施形態を示す磁気リセット回路である。同図は、複数個の可飽和リアクトル511〜51Nの各リセット巻線521〜52Nに対して、1つの直流電源53から一括してリセット電流を供給する場合を示す。
【0041】
本実施形態においては、各リセット巻線521〜52Nの直列接続回路を1つのリセット巻線として取り扱い、図1の回路と同様に、直流電源53からサージ抑制用のリアクトル54とリセット電流設定用の抵抗55及び誘導電流抑制用のリアクトル56を通してリセット電流を供給し、リアクトル56で誘導電流を抑制しながらダイオード57により誘導電流を循環させる。
【0042】
本実施形態においても、図1の場合と同様に、従来の半導体スイッチを不要にしながらリセット電流を確実に供給できる。また、誘導電流から直流電源を保護することができる。さらに、従来のトランスと、これをリセット巻線から切り離すための半導体スイッチが不要になる。
【0043】
図3は、本発明の他の実施形態を示し、2つの直流電源から1つのリセット巻線にリセット電流を供給する場合である。
【0044】
直流電源61と62は、それぞれサージ抑制用のリアクトル63、64とリセット電流設定用抵抗65、66を通して1つの誘導電流抑制用リアクトル67に接続し、リアクトル67から可飽和リアクトル68のリセット巻線69にリセット電流を供給する。また、誘導電流の循環用ダイオード70、71を備える。
【0045】
本実施形態によれば、リセット電流を増大する方法として、前記のようにリセット巻線の巻数を増大させる場合、1つの直流電源方式ではダイオードの耐電圧や複数ダイオードの負担電圧バランスに問題がある場合に採用してこれら問題を解消できる。
【0046】
また、既設の1つの直流電源では所期のリセット電流を供給するのに電圧不足や電流不足となる場合に採用してこれら問題を解消できる。例えば、可飽和リアクトル68を図2のように複数個設け、そのリセット巻線を直列接続してリセット電流を供給する場合では1つの直流電源では電圧又は電流容量が不足する場合に2台(又は3台)以上の直流電源を設けた図3の構成で対応できる。
【0047】
以上までの実施形態において、直流電源41、53、61、62は、電圧源構成とするに限らず、電流源構成や電池構成として同等の作用効果を得ることができる。電流源構成では抵抗45、55、65、66を省略できるが、誘導電流のエネルギー吸収手段として設けられる場合もある。
【0048】
また、パルス電源の主回路構成は、図4のものに限らず、可飽和リアクトルを磁気スイッチ手段とするパルス電源に適用できる。
【0049】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、リセット巻線にはリセット電流を常時供給し、リセット巻線からの誘導電流は誘導電流抑制用リアクトルとダイオードにより抑制すると共に直流電源側への侵入を防いでその保護をし、さらにサージ抑制用リアクトルでサージから直流電源を保護する構成としたため、以下の効果がある。
【0050】
(1)リセット電源とリセット巻線との間を遮断する半導体スイッチとその制御手段が不要になる。
【0051】
(2)リセット電流を常時供給するため、可飽和リアクトルの磁気スイッチ動作とのタイミング合わせをすることなく、高い繰り返しの磁気スイッチ動作にも確実にリセット電流を供給できる。
【0052】
(3)誘導電流及びサージから磁気リセット回路の電源を保護できる。
【0053】
(4)トランスを設けることなく、複数の可飽和リアクトルを一括して磁気リセットを行うことができる。
【0054】
(5)リセット電流を増大する場合や直流電源の電圧・電流容量が不足する場合にも容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す磁気リセット回路。
【図2】本発明の他の実施形態を示す磁気リセット回路。
【図3】本発明の他の実施形態を示す磁気リセット回路。
【図4】従来のパルス電源と磁気リセット回路。
【図5】可飽和リアクトルの鉄心の磁化曲線。
【図6】従来の磁気リセット回路。
【符号の説明】
41、53、61、62…直流電源
42、511、68…可飽和リアクトル
43、521、69…リセット巻線
44、54、63、64…リアクトル
45、55、65、66…抵抗
46、56、67…リアクトル
47、57、70、71…ダイオード
Claims (3)
- 可飽和リアクトルを磁気スイッチ手段とし、該可飽和リアクトルのリセット巻線にリセット電流を供給して可飽和リアクトルの鉄心を逆励磁しておく磁気リセット回路を設けたパルス電源において、
前記磁気リセット回路は、
前記リセット巻線にリセット電流を常時供給する直流電源と、
前記直流電源のリセット電流出力端に設けられ、リセット電流路のサージが該直流電源へ侵入するのを抑制する第1のリアクトルと、
前記第1のリアクトルと前記リセット巻線との間に設けられ、該リセット巻線に発生する誘導電流を抑制する第2のリアクトルと、
前記第2のリアクトルと前記リセット巻線との直列回路に並列に設けられ、前記誘導電流を第2のリアクトルに循環させるダイオードと、を備えたことを特徴とするパルス電源。 - 前記磁気リセット回路は、複数の可飽和リアクトルのリセット巻線の直列接続回路に一括してリセット電流を供給する構成としたことを特徴とする請求項1記載のパルス電源。
- 前記磁気リセット回路は、前記直流電源と第1のリアクトルとダイオードを有する複数の回路から1つの前記第2のリアクトルを通して前記リセット巻線にリセット電流を供給する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のパルス電源。
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JPH0983052A JPH0983052A (ja) | 1997-03-28 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010200446A (ja) * | 2009-02-24 | 2010-09-09 | Kyosan Electric Mfg Co Ltd | 磁気パルス圧縮回路およびパルス電源装置 |
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JP7325635B2 (ja) | 2020-06-17 | 2023-08-14 | 三菱電機株式会社 | パルス電源装置 |
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1995
- 1995-09-08 JP JP23058495A patent/JP3605896B2/ja not_active Expired - Lifetime
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