JP3605249B2 - 締結装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多板クラッチや多板ブレーキ等の締結装置に関し、特に自動変速機に組み込まれる締結装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の締結装置として、例えば、実開平2−48650号公報に開示された自動変速機のブレーキ装置が知られている。図6はその自動変速機のブレーキ装置を示す縦断面図、図7は図6におけるC−C線に沿う断面図である。
このブレーキ装置は、遊星歯車装置を用いた変速機構にトルクコンバータを連結した自動変速機に組み込まれている。変速機構は、複数の遊星歯車装置、クラッチ、及びブレーキを含み、クラッチとブレーキの組み合わせを異ならせることより、複数の遊星歯車装置から必要な変速比の変速出力を取り出すようになっている。
【0003】
この従来のブレーキ装置は、図6に示すように、トランスミッションケース60の周壁内面に形成され、複数枚の摩擦板63が噛み合っているスプライン64と、摩擦板63に交互に重ねられ、リングギヤ61の外周に形成されたスプラインに噛み合った複数枚の摩擦板62とを備える。スプライン64の後端面には、スプリングシート座面が形成されている。この座面に、スプリングシート65が係合して固定されている。トランスミッションケース60の周壁内面には、シリンダ68がシール部材を介して固定され、その周壁内面とシリンダ68との間に環状油圧室67が形成されている。環状油圧室67内には、摩擦板62,63を押圧するリング状ブレーキピストン69が軸方向に摺動自在に設けられている。そして、スプリングシート65とブレーキピストン69との間には、ブレーキピストン69を摩擦板62,63から離れる方向に付勢する複数のリターンスプリング70が周方向に間隔を置いて配置されている。
複数のリターンスプリング70は、図7に示すように、周方向にほぼ等間隔で配置された3つのグループ70A,70B,70Cに分けて配置されている。各グループは、周方向にほぼ等間隔で配置された7個のリターンスプリング70からなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、摩擦板62,63を押圧するブレーキピストン69の押圧部が3つのグループ70A,70B,70Cの各リターンスプリング70と干渉しないようにするために、ブレーキピストン69の押圧部を周方向にほぼ等間隔で3分割している。これによって、3分割された押圧部69A,69B,69Cの各々により摩擦板62、63が3箇所で局部的に押圧されるため、薄い金属板でできた摩擦板62、63が変形して互いに全面で均一に接触せず、押圧された箇所だけで局部的に接触する。その結果、摩擦板62、63の磨耗が激しく、その焼き付きなども発生するおそれがあり、ブレーキディスクの耐久性が低下してしまうという問題があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題は摩擦板の耐久性の向上を図った締結装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、変速機構に遊星歯車装置を含む自動変速機において、径方向に対向するスプラインをそれぞれ有する相対的に回転可能な2つの支持部材と、2つの支持部材の一方のスプラインに噛み合う複数の第1摩擦板と、第1摩擦板と環状の重ね合わせ領域を共有して交互に重ねられ、2つの支持部材の他方のスプラインに噛み合う複数の第2摩擦板と、2つの支持部材の一方に相対的回転の軸方向に移動可能に保持され、第1摩擦板及び第2摩擦板を周方向に配置された複数の押圧部で軸方向に押圧して両摩擦板に締結力を与える油圧ピストンとを備え、前記他方の支持部材の前記スプラインの内周側に近接して軸方向に延びるプラネットキャリアが配置された締結装置であって、油圧ピストンを保持する支持部材のスプラインに噛み合った環状の板部と、この板部から油圧ピストン側に突出するとともに複数の押圧部に当接可能な端面を有する筒状の受圧部とを一体に形成した受圧板が、両摩擦板と油圧ピストンとの間に配置されており、さらに、受圧板の内周側でかつ軸方向に受圧板とオーバーラップさせた位置に遊星歯車装置のプラネットキャリアが配置され、該プラネットキャリアは、その外周が受圧部の近傍まで当該受圧部に向かって立ち上がっているものとした。
また、2つの支持部材の一方を自動変速機の筐体とし、かつ2つの支持部材の他方を筐体に対し回転可能な部材としてもよい。
【0006】
【作用】
油圧ピストンを保持する支持部材のスプラインに噛み合った環状の板部と、この板部から油圧ピストン側に突出するとともに複数の押圧部に当接可能な端面を有する筒状の受圧部とを一体に形成した受圧板が、両摩擦板と油圧ピストンとの間に配置されているため、受圧板の筒状の受圧部が油圧ピストンの複数の押圧部により押圧される際に、剛性の高い筒状の受圧部と一体の板部が変形したりせず、油圧ピストンの複数の押圧部から受ける押し付け力を両摩擦板に均一に伝える。これによって、両摩擦板が互いに全面で均一に接触する。
また、筒状の受圧部を設け、この受圧部に向かってプラネットキャリアの外周が立ち上がっていることにより、第1摩擦板及び第2摩擦板に供給される潤滑油が、受圧部で阻止されて両摩擦板の外側へ逃げにくくなり、両摩擦板のある空間に溜まる潤滑油の量が増えて両摩擦板の耐久性がより一層向上する。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を実施例により説明する。
図1は本発明の実施例に係る自動変速機の締結装置を示す部分的な断面図、図2は図1におけるA−A線に沿う断面図、図3は図1の締結装置で用いた受圧板の左側面図、図4は図3で示す受圧板の縦断面図、そして図5は図4におけるB部の拡大図である。図1では、自動変速機の変速機構を構成する複数の遊星歯車装置、複数のクラッチ、及び複数のブレーキのうち、1つの遊星歯車装置と、実施例に係る締結装置である1つのブレーキ(以下、締結装置という)が示されている。
【0008】
図1で示す締結装置は、停止側摩擦板である複数のドリブンプレート1と、回転側摩擦板である複数のドライブプレート2とを備える。各ドリブンプレート1と各ドライブプレート2の間の摩擦力によって、ドライブプレート2に噛み合う回転体3の回転を制動する。自動変速機のケーシング(支持部材)4の内面にスプライン4Aが形成されている。一方、ケーシング4に対して相対的に回転可能な回転体3の外周には、スプライン4Aに対向するスプライン3Aが形成されている。スプライン4Aはドリブンプレート1の外周に形成した歯に噛み合い、スプライン3Aはドライブプレート2の内周に形成した歯に噛み合っている。回転体3は、その内側にある回転体5に軸受けによって回転自在に支持されている。この回転体5は、入力側回転軸6とスプライン結合した不図示の回転体に軸受けによって回転自在に支持されている。
【0009】
図1で示す遊星歯車装置は、サンギヤ7、複数のピニオンギヤ8、プラネットキャリア9、及びリングギヤ10によって構成されている。
サンギヤ7は、回転体5の外周に回転自在に支持されるとともに、回転体3と一体に回転するようにこの回転体3に固定されている。複数のピニオンギヤ8は、それぞれプラネットキャリア9に回転自在に支持されている。各ピニオンギヤ8は、サンギヤ7及びリングギヤ10に噛み合っている。そして、プラネットキャリア9及びリングギヤ10は、それぞれ他のブレーキやクラッチの要素と連結されている。
【0010】
ドリブンプレート1とドライブプレート2は、環状の重ね合わせ領域を共有して交互に重ねられている。ドリブンプレート1はスプライン4Aに沿って、ドライプブレート2はスプライン3Aに沿って、それぞれ自動変速機の軸方向に移動可能である。ドリブンプレート1とドライブプレート2は、リテーニングプレート11と油圧ピストン12によって挟み込まれる。この油圧ピストン12は、周方向にほぼ等間隔に分割された5つの押圧部12aを有する。
【0011】
油圧ピストン12は、ケーシング4の右側内壁面部に設置されたシリンダ30の油圧室30aaに油圧が供給されると、図中左方向に移動するようになっている。油圧ピストン12を図中右方向へ付勢する複数(20個)のリターンスプリング13が設けられている。各リターンスプリング13は、4個ずつ、スプリングシート14と油圧ピストン12の左端面との間に周方向にほぼ等間隔で配置された5つのグループに分けて配置されている(図2参照)。各グループ内でも、4個のリターンスプリング13の各々は周方向にほぼ等間隔で配置されている。
【0012】
すなわち、スプリングシート14は、図2に示すように、周方向にほぼ等間隔で形成された5箇所のばね受け部14aと、各ばね受け部14aの間に形成された5箇所の切り欠き部14bとを有する。各ばね受け部14aには、周方向にほぼ等間隔で配置された4つのばね受け15が固定されている。各リターンスプリング13の一端を各ばね受け15に位置決めした状態で、スプリングシート14をスプライン4Aに固定したスナップリング31の端面に当接させるとともに、各リターンスプリング13の他端を油圧ピストン12の位置決め突起12bに嵌合させてピストン12の左端面に当接させてある。油圧ピストン12の各押圧部12aは、各リターンスプリング13と干渉しないように、スプリングシート14の各切り欠き部14b内を通ってその先端がドリブンプレート1及びドライブプレート2側に延びている。
【0013】
リテーニングプレート11の外周には、スプライン4Aに噛み合う歯が形成されている。リテーニングプレート11は、スプライン4Aに固定したスナップリング16によって図中左方向への移動を制限されている。油圧室30aに油圧が供給されると、油圧ピストン12がリターンスプリング13を押し縮めて左方向に移動する。油圧ピストン12は、スナップリング16に突き当たったリテーニングプレート11と協働して、ドリブンプレート1とドライブプレート2の重ね合わせ部分を圧縮する。この圧縮力がドリブンプレート1とドライブプレート2の面間に摩擦力を生み出し、スプライン4A、ドリブンプレート1、ドライブプレート2、スプライン3Aの経路に制動トルクが伝達されて、回転体3の回転が制動されるようになっている。
【0014】
そして、本実施例の自動変速機の締結装置では、図1に示すように、ドリブンプレート1及びドライブプレート2のうち、油圧ピストン12側で最も外側にある摩擦板、すなわち本実施例ではドライブプレート2と、油圧ピストン12との間に受圧板20が配置されている。
この受圧板20は、図1、図3及び図4に示すように、スプライン4Aに噛み合った環状の摩擦板部21と、この摩擦板部21から油圧ピストン12側に突出するとともに5つの押圧部12aに当接可能な端面を有する筒状の受圧部22とを一体に形成したものである。
環状の摩擦板部21の外周には、図3に示すように、スプライン4Aに噛み合う歯23が形成されている。一方、筒状の受圧部22は、図4及び図5に示すように、その外周面22aが歯23の底部23aより径方向内側に位置するように形成されている。換言すると、受圧板20がドリブンプレート1と同様にスプライン4Aに沿って円滑に摺動できるようにするために、歯23が形成されている摩擦板部21の板厚をドリブンプレート1のそれとほぼ同程度に薄くしてある。
【0015】
以上のような構成を有する締結装置では、ケーシング4のスプライン4Aに噛み合った環状の摩擦板部21と、この摩擦板部21から油圧ピストン12側に突出するとともに5つの押圧部12aに当接可能な端面を有する筒状の受圧部22とを一体に形成した受圧板20が、油圧ピストン12側で最も外側にあるドライブプレート2と油圧ピストン12との間に配置されているため、受圧板20の筒状の受圧部22が油圧ピストン12の5つのの押圧部12aにより押圧される際に、剛性の高い筒状の受圧部22と一体の摩擦板部21が変形したりせず、5つの押圧部12aから受ける押し付け力をドリブンプレート1及びドライブプレート2に均一に伝える。これによって、両プレート1、2が互いに全面で均一に接触する。
したがって、上記実施例によれば、ドリブンプレート1及びドライブプレート2の耐久性を向上することができる。
【0016】
また、筒状の受圧部22を設けたことにより、入力側回転軸6内の油路及びその回転軸6の貫通孔6aを通って図1の矢印で示すように回転体3とプラネットキャリア9の間の空間に流入し、さらにドリブンプレート1及びドライブプレート2のある空間に供給される潤滑油が、受圧部22で阻止されて両プレート1、2の外側へ逃げにくくなる。これによって、両プレート1、2のある空間に溜まる潤滑油の量が増えて両プレート1、2の耐久性がより一層向上する。
【0017】
さらに、歯23が形成されている摩擦板部21の板厚をドリブンプレート1のそれとほぼ同程度に薄くしてあるため、受圧板20がスプライン4Aに沿って円滑に摺動することができる。
【0018】
なお、上記実施例では、本発明に係る締結装置を自動変速機のブレーキに適用した例を示したが、その締結装置を自動変速機のクラッチにも適用可能である。また、上記実施例では、受圧板20の環状の摩擦板部22をドライブプレート2に面接触させるようにしてあるが、受圧板20の環状の板部をドリブンプレート1に面接触させるように構成してもよい。この場合、その板部はドリブンプレート1を押し付けるだけであり、このプレート1との間に摩擦力を発生する必要はない。したがって、その板部は、単なる環状の板であればよく、摩擦板である必要はない。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、油圧ピストンを保持する支持部材のスプラインに噛み合った環状の板部と、この板部から油圧ピストン側に突出するとともに複数の押圧部に当接可能な端面を有する筒状の受圧部とを一体に形成した受圧板が、両摩擦板と油圧ピストンとの間に配置されているため、受圧板の筒状の受圧部が油圧ピストンの複数の押圧部により押圧される際に、剛性の高い筒状の受圧部と一体の板部が変形したりせず、油圧ピストンの複数の押圧部から受ける押し付け力を両摩擦板に均一に伝える。これによって、両摩擦板が互いに全面で均一に接触する。したがって、摩擦板の耐久性を向上することができる。
また、筒状の受圧部を設け、この受圧部に向かってプラネットキャリアの外周が立ち上がっていることにより、第1摩擦板及び第2摩擦板に供給される潤滑油が、受圧部で阻止されて両摩擦板の外側へ逃げにくくなり、両摩擦板のある空間に溜まる潤滑油の量が増えて両摩擦板の耐久性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る自動変速機の締結装置を示す部分的な断面図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1の締結装置で用いた受圧板の左側面図である。
【図4】図3で示す受圧板の縦断面図である。
【図5】図4におけるB部の拡大図である。
【図6】従来例を示す縦断面図1である。
【図7】図6におけるC−C線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 ドリブンプレート(摩擦板)
2 ドライブプレート(摩擦板)
3 回転体(支持部材)
3A スプライン
4 ケーシング(支持部材)
4A スプライン
6 入力側回転軸
7 サンギヤ
8 ピニオンギヤ
9 プラネットキャリア1
10 リングギヤ
11 リテーニングプレート
12 油圧ピストン
12a 押圧部
13 リターンスプリング
14 スプリングシート
14a ばね受け部
14b 切り欠き部
15 ばね受け
16 スナップリング
20 受圧板
21 摩擦板部(板部)
22 受圧部
22a 受圧部の外周面
23 歯
23a 歯の底部
30 シリンダ
30a 油圧室
Claims (2)
- 変速機構に遊星歯車装置を含む自動変速機において、径方向に対向するスプラインをそれぞれ有する相対的に回転可能な2つの支持部材と、該2つの支持部材の一方のスプラインに噛み合う複数の第1摩擦板と、該第1摩擦板と環状の重ね合わせ領域を共有して交互に重ねられ、前記2つの支持部材の他方のスプラインに噛み合う複数の第2摩擦板と、2つの支持部材の一方に前記相対的回転の軸方向に移動可能に保持され、第1摩擦板及び第2摩擦板を周方向に配置された複数の押圧部で軸方向に押圧して両摩擦板に締結力を与える油圧ピストンとを備え、前記他方の支持部材の前記スプラインの内周側に近接して軸方向に延びるプラネットキャリアが配置された締結装置であって、
前記油圧ピストンを保持する支持部材のスプラインに噛み合った環状の板部と、この板部から前記油圧ピストン側に突出するとともに前記複数の押圧部に当接可能な端面を有する筒状の受圧部とを一体に形成した受圧板が、前記両摩擦板と前記油圧ピストンとの間に配置されており、
さらに、前記受圧板の内周側でかつ軸方向に受圧板とオーバーラップさせた位置に遊星歯車装置の前記プラネットキャリアが配置され、該プラネットキャリアは、その外周が前記受圧部の近傍まで前記受圧部に向かって立ち上がっていることを特徴とする締結装置。 - 前記2つの支持部材の一方は自動変速機の筐体であり、かつその他方は前記筐体に対し回転可能な部材であることを特徴とする請求項1記載の締結装置。
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