JP3604358B2 - コールドシール接着剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コールドシール接着剤、即ち、通常の状態では、接着剤が塗工された塗工面にタックを生じない接着剤であって、その塗工面を接着剤が塗工された他の面と、両者の接着剤の層が接するように重ねたとしても、接着及びブロッキングを生ずることのない接着剤であるが、その重ねた両者の面に一定以上の圧力を加えることで両者を接着でき、接着後に再剥離することが可能な接着剤の層を形成する接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、種々の情報、例えば、(1)個人的情報、プリント情報、もしくは印刷情報等の親展性、秘匿性、もしくは隠蔽性等が必要とされる情報又は(2)宣伝もしくは広告等の必ずしも親展性等を必要としない情報(以下、(1)及び(2)の情報を、単に「情報」ともいう)を、基体シートに印刷することによって、それらの情報が含まれた情報担体が普及しつつある。
【0003】
ここで「情報担体」とは、連続(例えば、ロールに巻かれた連続紙)もしくは単票(例えば、重ねられた枚葉紙)の基体シートに、上述の「種々の情報」が、例えば、手書きもしくは印刷等されることによって含まれている情報の媒体であって、その媒体が、例えば、葉書、封筒、ビジネスフォーム、配送伝票、通信カード、折りたたみカード、重ね合わせシート、もしくは情報隠蔽シート等の形態である情報の媒体をいう。尚、封筒等は、必ずしも情報が印刷されるわけではなく、情報の媒体を含むための情報の容器というべきものであるが、本明細書においては、上記の情報担体に含める。
【0004】
このような情報担体の中でも、必要情報を記録した基体シートを、その情報を記録した面を内側にして折り畳み、親展性を付与した葉書(いわゆる親展性葉書)は代表的なものである。
尚、本明細書において「基体シート」とは、通常情報担体に用いられているシート形態の基材をいい、基体シートとして、例えば、通常紙、布、及び合成紙、並びにポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、及びセルロイド等のフィルム等を使用することができる。更に、「基体シート」は、予めコート層を設けたコート紙もしくはキャストコート紙、並びに樹脂フィルムを紙の表面に貼り合わせた、もしくは溶融樹脂によって加工されたラミネート紙等を含む。
【0005】
このような親展性葉書の基体シートには、通常、情報を記録する前に、コールドシール接着剤と称される接着剤が前もって塗工される。次に、親展性葉書について共通する情報を、例えば、オフセット印刷及びグラビア印刷等の印刷方法を用いて、その塗工された塗工面に印刷する。なお、印刷と塗工の順序は前後してもよい。その後、各個人情報等の特定の個々の情報を記録する。更に、その情報を印刷した印刷面を、コールドシール接着剤を塗工した他の面と、両方の面の接着剤の層が接するように重ねて、一定以上の圧力を加えることで接着し、その結果、秘密情報が隠蔽された(外部から見えない)積層体、即ち、親展性葉書を形成することができる。この秘密情報は、接着した面を再び剥離することで読み取ることが出来るが、一旦剥離された面は、再度一定以上の圧力を加えないと接着しないので、秘密情報が隠蔽された剥離前の積層体の状態に戻らない。その結果、親展性葉書は、親展性を保つことができる。
【0006】
ところで、本明細書において「印刷」とは、オフセット印刷及びグラビア印刷等のいずれかの一般的な印刷方法を用いて、例えば、共通の情報及びパターン等を書き込むことをいい、「記録又はインクジェット記録」とは、いわゆるインクジェットプリンターを用いる情報及びパターン等の印刷であって、例えば、共通でない各個人の情報等を書き込むことをいう。
更に、本明細書において「接着剤の層」とは、溶媒がない(乾燥)状態の接着剤の層をいう。
【0007】
このようなコールドシール接着剤には、以下の基本特性が要求される:
通常の状態では、接着剤が塗工された塗工面に、タックを生じない;
通常の状態では、接着剤が塗工された2つの塗工面の接着剤の層同士を、両者の接着剤の層が接するように重ねても、接着及びブロッキングを生じない;
その両者の層の重なりに一定以上の圧力を加えることで両者を接着できる;
接着された面を再剥離することができる;
一旦剥離すると接着されていた面は、再度一定以上の圧力を加えないと(通常の状態では)接着しない。
【0008】
尚、本明細書において「通常の状態」とは、接着剤を塗工した基体シートに、加圧等の何ら特別の操作を加えないことをいい、例えば、コールドシール接着剤を基体シートに塗工した塗工面を、積み重ねて放置もしくは保存した場合、この積み重ねた基体シートを手で強く押した場合、又はそれらの塗工面に情報を印刷する時に加わる程度の低い圧力(約7,840N/m2以下の圧力)を加えた場合等をいう。
【0009】
このようなコールドシール接着剤には、以下の様な追加の特性が更に要求される:
基体シートに接着剤が塗工されることで形成された接着剤の層の上に、印刷できること(以下「先塗工」ともいう)、又は基体シートの印刷の上に接着剤を塗工して接着剤の層を形成できること(以下「後塗工」ともいう);
更に、上記接着剤の層の上に、各個人情報等の特定の情報を記録できること;接着した箇所の基体シートを、通常、相互に引き離すように人が手で引張る程度の力で引き剥がすことによって、接着を解除できること;
接着が解除された面の情報を、完全に読み取れること、即ち、接着を解除するときに基体シートの破壊を生じないこと(以下「再剥離可能」ともいう)。
【0010】
従来から、このような親展性葉書等に各個人情報等の特定の情報を記録する方法として、主としてレーザービーム方式のプリンターが使用されてきた。これに対し、近年、処理速度が速く、小ロットの記録に対応することが可能なので、水溶性染料を使用するインクジェット方式のプリンターが使用されるようになってきた。
【0011】
しかし、従来のレーザービーム方式のプリンターに対応したコールドシール接着剤(以下、「従来型コールドシール接着剤」という。)をインクジェット方式のプリンターにそのまま使用すると、インクジェット記録された印字の品質について問題が発生することがわかってきた。即ち、(i)印字部に水が付着すると、インクジェット方式のプリンターの水溶性染料(以下、「水性染料」という。)が水に溶出するので、情報の読み取りが困難になるという印字の耐水性の問題と、(ii)インクジェット記録された面を圧着した後、その面を剥離すると、インクジェット記録された印字が反対面に転写されるという印字の転写性の問題が発生する。
尚、本明細書において「記録、インクジェット記録、又はインクジェット方式のプリンターを用いる記録」には、黒色等の無彩色を用いる記録に加え、赤、青、緑、黄色等の有彩色等を用いるフルカラーの記録も含まれる。
【0012】
上述の問題は、印字に含まれている水性染料が従来型コールドシール接着剤に定着し難いことに起因している。
通常、水性染料は、その染料分子中にスルホン酸基及び/又はカルボキシル基の塩を有し、その塩によって水溶性が施されている。従って、水性染料は、負に帯電しているアニオン系の分子を含む。
一方、従来型コールドシール接着剤もアニオン系の分散系であって、その接着成分は、負に帯電している。このような接着成分として、例えば、天然ゴム、変性天然ゴム、及び合成ゴム等を例示することができる。
従って、水性染料と、従来型コールドシール接着剤の接着成分は、共に負に帯電し、電気的に引き合うことがないから、水性染料は従来型コールドシール接着剤に定着し難いと考えられる。
【0013】
ところで、インクジェット方式のプリンターの印刷用紙には、インクジェット記録された印字に耐水性を付与するために特別の用紙が使用されている。即ち、印刷用紙のインク受容層に正に帯電したカチオン性を有する高分子が導入されている。これは、カチオン性高分子の正電荷によって、負の電荷を帯びた染料分子を捕捉し、水の蒸発によって、染料分子をインク受容層にクーロン力によって固定化するものである。
【0014】
インク受容層に導入するカチオン性高分子としては、例えば、4級化ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、4級化ポリエチレンイミン、ポリアリルスルホン、ジシアンジアミド縮合物、ポリエチレンポリアミン系ポリマー、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、ポリアミン・エピクロルヒドリン系ポリマー、ポリアルキレンポリ尿素、ポリアミドポリ尿素、ジメチルアリルアンモニウムクロリド、カチオン性ビニル共重合体等が開示されている(特開平7−315632号公報及び特開平8−51487号公報参照)。
【0015】
従って、同様にしてインクジェット記録された印字に耐水性及び非転写性を施すことができるという考えに基づいて、インクジェット記録に好適なコールドシール接着剤を得ることができることが期待された。
例えば、特開平10−52985号公報は、インクジェット方式のプリンター用の記録用紙に通常使用されているカチオン性高分子を、従来型コールドシール接着剤に添加してインクジェット記録に好適なコールドシール接着剤を得る方法を開示している。しかし、インクジェット記録された印字の耐水性及び非転写性は向上するが、コールドシール接着剤の粘度は、揺変性が大きく、特性が必ずしも安定しないことが記載されている。さらに、この方法には、カチオン性高分子の水溶性が高いため、オフセット印刷時に、オフセット版を汚すというオフセット印刷適性の問題も有る。
【0016】
また、特開平9−71758号公報は、従来型コールドシール接着剤の接着成分である変性天然ゴムに添加しても系の安定性を比較的良好に保ち得る弱カチオン性高分子を、従来型コールドシール接着剤に添加してインクジェット記録に好適なコールドシール接着剤を得る方法を開示している。しかし、この方法では添加する高分子のカチオン性が弱いから、添加量が少ないとインクジェット記録された印字に十分な耐水性及び非転写性を付与することができない。そこで、弱カチオン性高分子の添加量を増加すると、接着力が低下するという問題が発生する。従って、この方法では、特性のバランスのよいインクジェット記録に好適なコールドシール接着剤を容易に得ることが困難である。
【0017】
実際、本発明者らも、カチオン性高分子を従来型コールドシール接着剤に添加すると、コールドシール接着剤の分散系が不安定化することを確認した。更に、インクジェット記録された印字の耐水性及び非転写性を向上するために、従来型コールドシール接着剤にカチオン性高分子を添加する量を増加すると、即座に又は保存中に、コールドシール接着剤の粘度増加、凝集物発生及び/又はゲル化等を生じ、コールドシール接着剤として使用することが不可能になることも確認した。
【0018】
従って、単純に、従来型コールドシール接着剤に、従来から使用されているカチオン性高分子を配合することによって、インクジェット記録された印字の耐水性が向上し、再剥離時の印字の転写性が低下し、さらにオフセット印刷適性が良好なインクジェット記録に好適なコールドシール接着剤を得ることは困難といえる。
【0019】
また、インクジェット記録された印字について、その発色性を向上し、その耐水性を得るために、コールドシール接着剤に充填剤を含有させる多くの検討が行われている。しかし、充填剤の添加量が多い場合、コールドシール接着剤を塗工した紙をオフセット印刷すると、印刷するときに使用するいわゆる湿し水により一時的にコールドシール接着剤によって形成された接着剤の層の強度が低下する。その結果、その充填剤を含むコールドシール接着剤の層の一部分が、塗工された紙の表面から剥がれ落ちて、印刷用版を汚染し得るという問題が有る。更に、同様の理由で、印刷・フォーム加工ラインのターンバーにおいて、基体シートに塗工され形成されたコールドシール接着剤の層が摩耗によって粉落ちして、印刷用版を汚染し得るという問題が有る。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたもので、その課題は、基体シートの印刷すべき面にコールドシール接着剤を塗工して乾燥後、情報を印刷し、インクジェット方式のプリンターを使用して記録した後に、又は基体シートの印刷すべき面に情報を印刷後、コールドシール接着剤を塗工して乾燥し、インクジェット方式のプリンターを使用して記録した後、印字部に水が付着した場合インクジェットプリンターの水性染料が水に滲む若しくは水に溶出するという印字の耐水性の問題、インクジェット記録した面を圧着した後剥離する際に印字が圧着した他の面に転写するという印字の転写性の問題、基体シートに塗工され形成されたコールドシール接着剤の層が摩耗によって粉落ちするという摩耗性の問題等の少なくとも1つが緩和され、好ましくは実質的に解消され、更には、オフセット印刷適性も良好であって、これらの特性を容易に適宜調節することができる、総合的な性能が高いコールドシール接着剤を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の要旨によれば、新たなコールドシール接着剤が提供され、それは、
成分(A):天然ゴムラテックス、変性天然ゴムラテックス、及び合成ゴムラテックスから選択される少なくとも1種、並びに
成分(B):両性高分子から選択される少なくとも一種、
を含んで成るコールドシール接着剤であって、
下記式(1)で示す、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、成分(B)の10重量%溶液の比粘度(ηsp)(以下、「成分(B)の比粘度」ともいう)が、0.5〜4.0であるコールドシール接着剤である。
【数3】
式(1):ηsp=(η―η0)/η0
[但し、式(1)において、
η0は、1NのNaCl水溶液の30℃における粘度を表し、
η は、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、成分(B)の10重量%溶液の30℃における粘度を表す。]
【0022】
第一の要旨のコールドシール接着剤の一つの態様として、成分(B)は、成分(B)を基準として連鎖移動剤及びアリル化合物から選択される少なくとも一種に由来する部分を1〜10重量%含有する第一の要旨のコールドシール接着剤を提供する。
【0023】
また、本発明の第二の要旨によれば、新たなコールドシール接着剤が提供され、それは、
成分(A)並びに成分(B)を含んで成るコールドシール接着剤であって、
両性高分子は、カチオン性単量体及びアニオン性単量体を必須成分として含む単量体混合物を共重合することによって得られ、
カチオン性単量体は、アミノ基とエチレン性二重結合を有する単量体、ピリジル基とエチレン性二重結合を有する単量体、アンモニウム塩基とエチレン性二重結合を有する単量体及びピリジニウム塩基とエチレン性二重結合を有する単量体から選択される少なくとも一種を含んで成り、
アニオン性単量体は、カルボキシル基とエチレン性二重結合を有する単量体、カルボン酸塩基とエチレン性二重結合を有する単量体、スルホン酸基とエチレン性二重結合を有する単量体、スルホン酸塩基とエチレン性二重結合を有する単量体、リン酸基とエチレン性二重結合を有する単量体及びリン酸塩基とエチレン性二重結合を有する単量体から選択される少なくとも一種を含んで成るコールドシール接着剤において、
単量体混合物は、連鎖移動剤及びアリル化合物から選択される少なくとも一種を1〜10重量%含有するコールドシール接着剤である。
【0024】
この第二の要旨のコールドシール接着剤の一つの態様として、成分(B)の比粘度が、0.5〜4.0である上述の第二の要旨のコールドシール接着剤を提供する。
【0025】
更に、本発明は、上述の第一及び第二のコールドシール接着剤の一つの態様として、アリル化合物が、メタアリルスルホン酸塩であるコールドシール接着剤を提供する。
また、本発明は、上述のコールドシール接着剤の別の態様として、連鎖移動剤が、チオール化合物であるコールドシール接着剤を提供する。
更にまた、本発明は、上述のコールドシール接着剤の他の態様として、成分(B)が、四級アンモニウム塩基を含有するコールドシール接着剤を提供する。
更に、本発明は、上述のコールドシール接着剤の一つの好ましい態様として、成分(B)のカチオン基/アニオン基(モル比)が、70/30〜90/10であるコールドシール接着剤を提供する。
【0026】
また、本発明は、上述のコールドシール接着剤の別の好ましい態様として、非晶質シリカを、更に含んで成るコールドシール接着剤を提供する。
更にまた、本発明は、上述のコールドシール接着剤の他の好ましい態様として、カチオン性高分子を、更に含んで成るコールドシール接着剤を提供する。
上述のコールドシール接着剤はいずれも、特に、インクジェット記録用に好適である。
尚、下記の本明細書の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、重量部及び重量%の基準としている。
【0027】
【発明の実施の形態】
本明細書において「成分(A)」とは、いわゆる「接着成分」と呼ばれるものであって、接着力の主体となる成分で、自着性を有するものをいい、天然ゴムラテックス、変性天然ゴムラテックス、及び合成ゴムラテックスから選択される少なくとも1種を含めば、これらの組み合わせであってよい。成分(A)として、従来型コールドシール接着剤の接着成分として使用されているものを用いることができる。
このような接着成分(A)として、具体的には、特開平5−295335号公報、特開平5−186640号公報、及び特開平9−310055号公報等に開示されているものが含まれ、目的とする特性に応じて適宜選択し、本発明の成分(A)として使用することができる。なお、本引用により、これらの明細書の内容は本明細書の内容をなす。
【0028】
ここで「天然ゴムラテックス」とは、天然に産するゴムのエマルションをいい、通常「天然ゴムラテックス」と称されるものであって、目的とする本発明のコールドシール接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
【0029】
「変性天然ゴムラテックス」とは、天然ゴムラテックスをエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物を用いて付加重合(又はラジカル重合)してその特性を変性した天然ゴムラテックスをいい、通常「変性天然ゴムラテックス」と称されるものであって、目的とする本発明のコールドシール接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
【0030】
変性天然ゴムラテックスとして、例えば、天然ゴムラテックスを(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、並びにスチレン等の各種エチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物と付加重合することによって変性した天然ゴムラテックスを例示することができる。具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類を共重合させて変性したアクリル変性天然ゴムラテックスを例示できる(特開平5−295335号公報参照)。(本明細書においては、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」ともいう。)
尚、変性天然ゴムラテックスは、所望の特性に応じて、付加重合する化合物の種類及び共重合する量を適宜選択できる。
変性天然ゴムラテックスは、公知の方法を用いて製造できるが、市販のものを用いてもよい。
変性天然ゴムラテックスは、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0031】
「合成ゴムラテックス」とは、合成ゴムのエマルションをいい、目的とする本発明のコールドシール接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。合成ゴムラテックスとして、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)ラテックス、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム(MBR)ラテックス、及びネオプレンラテックス等を例示できる(特開平5−186640号公報参照)。
合成ゴムラテックスは、公知の方法を用いて製造できるが、市販のものを用いてもよい。
また、合成ゴムラテックスは、単独で又は組み合わせて使用できる。
このような種々の天然ゴムラテックス、変性天然ゴムラテックス、及び合成ゴムラテックスは、単独で又は組み合わせて成分(A)として使用できる。
【0032】
本明細書において「成分(B)」とは、両性高分子から選択される少なくとも一種を含んで成ればよく、後述する種々の両性高分子の単独又は組み合せを成分(B)として使用できる。
本明細書において「両性高分子」とは、「アニオン性単量体(D)」及び「カチオン性単量体(E)」を必須成分として含む単量体混合物であって、「他の重合可能な単量体(F)」を含んで成ってもよい単量体混合物を共重合(付加重合又はラジカル重合)することによって得られる両性高分子をいい、アニオン基及びカチオン基を共に有する高分子をいう。
【0033】
ここで「アニオン性単量体(D)」とは、少なくとも一つのアニオン基及び少なくとも一つのエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物であって、目的とする両性高分子に、重合反応(付加重合又はラジカル重合)によって、アニオン基を提供することとなる化合物をいう。
【0034】
本明細書において「アニオン基」とは、負電荷を有する官能基(例えば、−COO−及び−SO3 −等)(負電荷が対カチオンによって電気的に中和されている官能基(例えば、−COO−Na+及び−SO3 −K+等)を含む)及び水中で水素イオンを放出して負電荷を有する官能基を形成し得る官能基(例えば、−COOH及び−SO3H等)をいう。これらの「負電荷を有する官能基」及び「水中で水素イオンを放出して負電荷を有する官能基を形成し得る官能基」は、各官能基の周囲の状態、例えば、pH等を変えることによって、容易に相互に変換可能であることはいうまでもない。本発明における「アニオン基」に関しては、両性高分子の特性に応じて、これらの官能基を単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0035】
ここで「負電荷を有する官能基(負電荷が対カチオンによって電気的に中和されている官能基を含む)」として、例えば、カルボン酸塩基(−COO−及び−COOM1)、スルホン酸塩基(−SO3 −及び−SO3M2)、及びリン酸塩基(−PO4H−、−PO4 2−及び−PO4M3M4)等を例示できる[但し、M1、M2、M3、及びM4は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムである(尚、M3及びM4は、いずれか一方が水素であってもよい)]。
更に「水中で水素イオンを放出して負電荷を有する官能基を形成し得る官能基」として、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(又はスルホ基)(−SO3H)、及びリン酸基(−PO4H2)等を例示できる。
【0036】
本明細書において「エチレン性炭素原子間二重結合」とは、重合反応(付加重合又はラジカル重合)し得る炭素原子間の二重結合をいう。そのようなエチレン性炭素原子間の二重結合を含む官能基として、例えば、ビニル基(CH2=CH−)、(メタ)アリル基(CH2=CH−CH2−及びCH2=C(CH3)−CH2−)、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH2=CH−COO−及びCH2=C(CH3)−COO−)、及び−COO−CH=CH−COO−等を例示できる。
【0037】
このような「アニオン性単量体(D)」として、例えば、以下の化合物を例示できる:
(D1)アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸、マレイン酸の半エステル等のカルボキシル基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物、並びにカルボン酸塩基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物;
(D2)スチレンスルホン酸等のスルホン酸基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物、並びにスルホン酸塩基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物;
(D3)(メタ)アクリル酸オキシエチルアミドフォスフェート等のリン酸基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物、並びにリン酸塩基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物。
【0038】
尚、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、及びリン酸塩基の対カチオンはアンモニウムイオン及びアルカリ金属イオン類等が好ましく、特に、アンモニウムイオン、カリウムイオン、及びナトリウムイオンが好ましい。
特に、アニオン性単量体(D)として、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
これらのアニオン性単量体(D)は、単独で又は組み合わせて、目的とする両性高分子の特性に応じて適宜使用することができる。
【0039】
更に「カチオン性単量体(E)」とは、少なくとも一つのカチオン基及び少なくとも一つのエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物であって、目的とする両性高分子に、重合反応(付加重合又はラジカル重合)によって、カチオン基を提供することとなる化合物をいう。
【0040】
本明細書において「カチオン基」とは、正電荷を有する官能基(例えば、−N+(CH3)3及び−C5H4N+−CH3等)(対アニオンによって電気的に中和されている官能基(例えば、−N+(CH3)3Cl−及び−C5H4N+−CH3Br−等)を含む)をいい、水中で水素イオンを受容して正電荷を有する官能基を形成し得る官能基(例えば、−N(CH3)2及び−C5H4N等)を含む。これらの「正電荷を有する官能基」及び「水中で水素イオンを受容して正電荷を有する官能基を形成し得る官能基」は、各官能基の周囲の状態、例えば、pH等を変えることによって、容易に相互に変換可能であることはいうまでもない。本発明における「カチオン基」に関しては、目的とする両性高分子の特性に応じて、これらの官能基を単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0041】
ここで「正電荷を有する官能基」として、例えば、アンモニウム塩基((−NR3R4R5)+及び(−NR3R4R5)+X−)及びピリジニウム塩基((−C5H4N−R6)+及び(−C5H4N−R6)+X−)を例示できる[但し、R3、R4、R5、及びR6は、水素、メチル基、エチル基、ベンジル基、フェニル基、もしくはメチルフェニル基であり、X−は、塩素イオン及び臭素イオン等のハロゲンイオン、酢酸イオン(CH3COO−)、硫酸イオン(SO4 2−)、硝酸イオン(NO3 −)、過塩素酸イオン(ClO4 −)、メチル硫酸イオン(CH3SO4 −)、エチル硫酸イオン(C2H5SO4 −)、並びにp−トルエンスルホン酸イオン(CH3C6H4SO3 −)等をいう]。
【0042】
更に「水中で水素イオンを受容して正電荷を有する官能基を形成し得る官能基」として、例えば、アミノ基(−NR7R8)[但し、R7及びR8は、水素、メチル基、エチル基、ベンジル基、フェニル基、もしくはメチルフェニル基である]及びピリジル基(−C5H4N)を例示できる。
「エチレン性炭素原子間二重結合」については、「アニオン性単量体(D)」の説明で記載した内容と同様である。
【0043】
このような「カチオン性単量体(E)」として、例えば、以下の化合物を例示できる:
(E1)1級アミノ基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物、並びに1級アンモニウム塩基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物;
(E2)2級アミノ基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物、並びに2級アンモニウム塩基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物;
(E3)3級アミノ基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物、並びに3級アンモニウム塩基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物;
(E4)4級アンモニウム塩基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物;
(E5)ピリジル基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物、並びにピリジニウム塩基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物。
【0044】
「カチオン性単量体(E)」として、下記の化合物がより好ましい:
(E1)として、例えば、(メタ)アクリル酸エステルであって1級アミノ基を有する化合物、並びにそれらの塩の形態の(メタ)アクリル酸エステルであって1級アンモニウム塩基を有する化合物;
(E2)として、例えば、(メタ)アクリル酸エステルであって2級アミノ基を有する化合物、並びにそれらの塩の形態の(メタ)アクリル酸エステルであって2級アンモニウム塩基を有する化合物;
(E3)として、例えば、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジブチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(N,N−メチルエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(N,N−エチルブチルアミノ)エチル、及び(メタ)アクリル酸2−(N,N−エチルベンジルアミノ)エチル等の(メタ)アクリル酸エステルであって3級アミノ基を有する化合物、並びにそれらの塩の形態の(メタ)アクリル酸エステルであって3級アンモニウム塩基を有する化合物、更に、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドであって3級アミノ基を有する化合物、並びにそれらの塩の形態の(メタ)アクリルアミドであって3級アンモニウム塩基を有する化合物;
(E4)として、例えば、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメチルクロリド塩、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジルクロリド塩、及び(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルエピクロルヒドリン塩酸塩等の(メタ)アクリル酸エステルであって4級アンモニウム塩基を有する化合物;並びに
3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミドエピクロルヒドリン塩酸塩等の(メタ)アクリルアミドであって4級アンモニウム塩基を有する化合物;
(E5)として、例えば、(メタ)アクリル酸2−(4−ピリジル)エチル、(メタ)アクリル酸3−(4−ピリジル)プロピル、及び(メタ)アクリル酸4−(4−ピリジル)ブチル等の(メタ)アクリル酸エステルであってピリジル基を有する化合物、更に、(メタ)アクリル酸2−(N−メチルピリジニウム)エチルクロリド、(メタ)アクリル酸2−(N−エチルピリジニウム)エチルブロミド、(メタ)アクリル酸2−(N−ブチルピリジニウム)エチルクロリド、(メタ)アクリル酸3−(N−メチルピリジニウム)プロピルクロリド、及び(メタ)アクリル酸2−(N−ベンジルピリジニウム)エチルクロリド等の(メタ)アクリル酸エステルであってピリジニウム塩基を有する化合物、更に、ビニルピリジン等のビニル基及びピリジル基を有する化合物、並びにN−メチルビニルピリジニウムクロリド、N−エチルビニルピリジニウムクロリド、及びN−フェニルビニルピリジニウムクロリド等のビニル基及びピリジニウム塩基を有する化合物。
【0045】
なお、上述のアンモニウム塩基及びピリジニウム塩基の対アニオンとして、塩素イオン及び臭素イオン等のハロゲンイオン、酢酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、並びに過塩素酸イオン等を例示することができる。
これらのカチオン性単量体は、単独で又は組み合わせて、目的とする両性高分子の特性に応じて適宜使用することができる。
【0046】
さらに、上述のカチオン性単量体の中でも、本発明のコールドシール接着剤を塗工して接着剤の層を形成した基体シートをインクジェット方式のプリンターに用いる場合、インクジェット用水性染料に十分な耐水性を付与するために、「上記の(E3)及び(E4)から選択される少なくとも1種」が、上述のカチオン性単量体中に10〜100重量%含まれるのが好ましく、50〜100重量%含まれるのがより好ましく、80〜100重量%含まれるのが特に好ましい。
【0047】
このインクジェット方式のプリンターに用いる場合、上記の(E3)及び(E4)から選択される少なくとも1種として、以下の化合物がより好ましい:
(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル等の(メタ)アクリル酸エステルであって3級アミノ基を有する化合物;
(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメチルクロリド塩、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジルクロリド塩、及び(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルエピクロルヒドリン塩酸塩等の(メタ)アクリル酸エステルであって4級アンモニウム塩基を有する化合物;並びに
3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミドエピクロルヒドリン塩酸塩等の(メタ)アクリルアミドであって4級アンモニウム塩基を有する化合物。
【0048】
インクジェット方式のプリンターに用いる場合、上記の(E3)及び(E4)から選択される少なくとも1種として、特に、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメチルクロリド塩、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジルクロリド塩、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルエピクロルヒドリン塩酸塩、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミドエピクロルヒドリン塩酸塩、及び(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル等が好ましい。
「カチオン性単量体」は、四級アンモニウム塩基を有する単量体を含むのが好ましい。
【0049】
両性高分子を得るための単量体混合物は、アニオン性単量体(D)を2〜30重量%及びカチオン性単量体(E)を50〜98重量%含むのが好ましく、アニオン性単量体(D)を2〜15重量%及びカチオン性単量体(E)を70〜98重量%含むのがより好ましい。
【0050】
また、単量体混合物が含む「アニオン性単量体(D)」のアニオン基に対する「カチオン性単量体(E)」のカチオン基のモル比(カチオン基/アニオン基)は、70/30〜90/10であるのが好ましい。
【0051】
更に、単量体混合物は、他の重合可能な単量体(F)を含むことができる。
ここで「他の重合可能な単量体(F)」とは、上述のアニオン性単量体(D)及びカチオン性単量体(E)以外の化合物であって、これらのアニオン性単量体(D)及びカチオン性単量体(E)と共重合(付加重合又はラジカル重合)できるエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物をいう。
尚「エチレン性炭素原子間二重結合」については、「アニオン性単量体(D)」の説明で記載した内容と同様である。
【0052】
このような「他の重合可能な単量体(F)」として、例えば、以下の化合物を例示できる:
(F1)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、及び(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(F2)(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;
(F3)スチレン及びビニルトルエン等のスチレン及びスチレンの誘導体類;
(F4)エチレン等のアルケン類、並びにブタジエン、イソプレン等のジエン類;
(F5)酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物類;
(F6)塩化ビニル及び塩化ビニレン等の塩素化されたビニル化合物類;
(F7)アクリロニトリル等のシアノ基を有するエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物類;
(F8)ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン基とエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物。
これらの他の重合可能な単量体(F)は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0053】
本明細書において「両性高分子」は、カチオン性単量体及びアニオン性単量体を必須成分として含む単量体混合物を共重合することによって得ることができ、カチオン性単量体は、アミノ基とエチレン性二重結合を有する単量体、ピリジル基とエチレン性二重結合を有する単量体、アンモニウム塩基とエチレン性二重結合を有する単量体及びピリジニウム塩基とエチレン性二重結合を有する単量体から選択される少なくとも一種を含んで成り、
アニオン性単量体は、カルボキシル基とエチレン性二重結合を有する単量体、カルボン酸塩基とエチレン性二重結合を有する単量体、スルホン酸基とエチレン性二重結合を有する単量体、スルホン酸塩基とエチレン性二重結合を有する単量体、リン酸基とエチレン性二重結合を有する単量体及びリン酸塩基とエチレン性二重結合を有する単量体から選択される少なくとも一種を含んで成るのが好ましい。
【0054】
また、上述の単量体混合物は、連鎖移動剤を含むことができる。
「連鎖移動剤」とは、少量の添加によって目的とする両性高分子の分子量の調節をすることができる化合物であって、水性溶媒及び有機溶剤中において使用できるものが好ましい。このような「連鎖移動剤」として、例えば、2−メルカプトエタノール、n−オクチルメルカプタン等のチオール化合物、テトラメチルチウラムジスルフィド等のジスルフィド、クロロホルム等のハロゲン化合物等を例示できる。特に、2−メルカプトエタノール、n−オクチルメルカプタン等のチオール化合物が好ましい。
【0055】
両性高分子は、通常の重合方法を使用して、適宜、触媒等を用いて、単量体混合物を重合(付加重合又はラジカル重合)することによって製造することができる。重合反応は、水性溶媒中で行ってもよいが、有機溶媒中で重合した後、溶媒を水性溶媒に変換してもよい。
反応温度、反応時間、溶媒の種類、単量体混合物の種類及び濃度、攪拌速度、並びに触媒の種類及び濃度等の重合反応の条件は、目的とする両性高分子の特性等によって、適宜選択され得るものである。
【0056】
ここで「触媒」とは、少量の添加によって単量体混合物の重合反応を起こさせることができる化合物であって、水性溶媒及び有機溶媒中で使用することができるものが好ましい。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2−アゾビス(2−ジアミジノプロパン)ジヒドロクロリド、及び2,2―アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を例示することができ、特に、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及び2,2−アゾビス(2−ジアミジノプロパン)ジヒドロクロリドが好ましい。
【0057】
なお、本明細書において「水性溶媒」とは、主に蒸留水、イオン交換水、及び純水等のいわゆる水であるが、水溶性の有機溶剤、例えば、アセトン及び低級アルコール等を適宜含むことができる。
また、本明細書において「有機溶媒」とは、重合反応及び接着剤としての特性に実質的に悪影響を与えないものであれば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、及び酢酸エチル等、並びにそれらの組み合わせを例示することができる。
【0058】
本発明の第一の要旨のコールドシール接着剤について、下記式(1)で示される、成分(B)の比粘度は、0.5〜4.0である。
【数4】
式(1):ηsp=(η―η0)/η0
[但し、式(1)において、
η0は、1NのNaCl水溶液の30℃における粘度を表し、
η は、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、成分(B)の10重量%溶液の30℃における粘度を表す。]
第一の要旨のコールドシール接着剤の場合、成分(B)の比粘度は、0.5〜2.0であるのが好ましく、0.5〜1.0であるのが特に好ましい。
【0059】
式(1)は、下記式(2)のように変形できる。
【数5】
式(2):ηsp=(η―η0)/η0=η/η0−1=t/t0−1
[但し、式(2)において、
t0は、1NのNaCl水溶液の30℃における流下時間であり、
t は、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、両性高分子の10重量%溶液の30℃における流下時間である。
(ここで、流下時間とは、ウベローデ粘度計の毛管内を溶液が流下するのに要する時間を表す。)]
【0060】
従って、成分(B)の比粘度は、具体的には、ウベローデ粘度計を用いて、30℃にて、1NのNaCl水溶液の流下時間(t0)と、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、成分(B)の10重量%溶液の流下時間(t)を測定し、式(2)を用いて求める。
【0061】
上述の第一の要旨のコールドシール接着剤の場合、成分(B)は、連鎖移動剤及びアリル化合物から選択される少なくとも一種に由来する部分を、成分(B)を基準として1〜10重量%含有するのが好ましい。第一の要旨のコールドシール接着剤の場合、成分(B)は、連鎖移動剤に由来する部分を0.1〜2.0重量%含むのがより好ましく、0.5〜1.0重量%含むのが特に好ましい。アリル化合物に由来する部分を1.0〜10重量%含むのがより好ましく、5.0〜10重量%含むのが特に好ましい。尚、上記したように、成分(B)の重量%は、成分(B)の溶媒を考慮しない部分を基準としている。
【0062】
そのような第一の要旨のコールドシール接着剤の場合、成分(B)は、連鎖移動剤及びアリル化合物から選択される少なくとも一種を含む単量体混合物を重合することによって得られる両性高分子を用いて得ることができる。単量体混合物は、連鎖移動剤及びアリル化合物から選択される少なくとも一種を1〜10重量%含むのが好ましい。単量体混合物は、連鎖移動剤を0.1〜2.0重量%含むのがより好ましく、0.5〜1.0重量%含むのが特に好ましい。単量体混合物は、アリル化合物を1.0〜10重量%含むのがより好ましく、5.0〜10重量%含むのが特に好ましい。
【0063】
本明細書において「連鎖移動剤」とは、上述した連鎖移動剤であって、チオール化合物が好ましい。連鎖移動剤は、上述したように両性高分子を製造する際に単量体混合物の一部として使用され、両性高分子を構成する部分となる。
本明細書において「アリル化合物」とは、「アリル基(CH2=CH−CH2−)及び/又はメタアリル基(CH2=C(CH3)−CH2−)」を有する化合物をいい、連鎖移動剤と同様に、両性高分子の分子量を調節することを目的として、両性高分子の製造に使用されて、共重合し、両性高分子を構成する部分となる。
【0064】
従って、「アリル化合物」とは、エチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物であるから、より具体的には、上述した「カチオン性単量体」、「アニオン性単量体」及び「他の重合可能な単量体」の中で、エチレン性炭素原子間二重結合を有する官能基がアリル基又はメタアリル基である化合物に該当する。
【0065】
「アリル化合物」であって「カチオン性単量体」にも該当する化合物として、例えば、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン及びアリルアミン等のアミノ基を有するアリル化合物を例示できる。
「アリル化合物」であって「アニオン性単量体」にも該当する化合物として、例えば、アリルスルホン酸及びメタアリルスルホン酸等のスルホン酸基を有するアリル化合物、アリルスルホン酸ナトリウム及びアリルスルホン酸カリウム等のアリルスルホン酸塩、並びにメタアリルスルホン酸ナトリウム及びメタアリルスルホン酸カリウム等のメタアリルスルホン酸塩(アリルスルホン酸塩とメタアリルスルホン酸塩の両者をあわせて「スルホン酸塩基を有するアリル化合物」ともいう)等を例示できる。
「アリル化合物」であって「他の重合可能な単量体」にも該当する化合物として、例えば、アリルアルコール、アリルグリシジルエーテル、4−ペンテン−2−オール、酢酸アリル、アリルベンゼン、n−酪酸アリル、n−カプリン酸アリル等を例示できる。
アリル化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0066】
一方、本発明の第二の要旨のコールドシール接着剤について、単量体混合物は、連鎖移動剤及びアリル化合物から選択される少なくとも一種に由来する部分を1〜10重量%含有する。第二の要旨のコールドシール接着剤の場合、単量体混合物は、連鎖移動剤を0.1〜2.0重量%含むのがより好ましく、0.5〜1.0重量%含むのが特に好ましい。更に単量体混合物は、アリル化合物を1.0〜10重量%含むのがより好ましく、5.0〜10重量%含むのが特に好ましい。
「連鎖移動剤」及び「アリル化合物」については、上述した通りである。
【0067】
本発明の第二の要旨のコールドシール接着剤について、成分(B)は、式(1)で示される、成分(B)の比粘度が、0.5〜4.0であるのが好ましい。
【数6】
式(1):ηsp=(η―η0)/η0
[但し、式(1)において、
η0は、1NのNaCl水溶液の30℃における粘度を表し、
η は、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、成分(B)の10重量%溶液の30℃における粘度を表す。]
第二の要旨のコールドシール接着剤の場合、成分(B)の比粘度は、0.5〜2.0であるのがより好ましく、0.5〜1.0であるのが特に好ましい。
尚、式(1)の変形及び成分(B)の比粘度の具体的な測定方法は、第一の要旨のコールドシール接着剤に関して記載した内容と同様である。
【0068】
本発明においては、成分(B)の電気的特性、即ち正電荷及び負電荷の強度ならびに全体の電荷等を単量体混合物の組成を好ましい組み合わせに適宜選択することによって容易に調節することができる。従って、水性染料の種類に応じて印字の耐水性及び非転写性を調節することが容易なので、水性染料の種類に適切に対応するコールドシール接着剤を容易に提供することができる。
【0069】
本発明においては、成分(B)の分子量をある特定の範囲に制御することによって、水性染料の印字の耐水性及び非転写性等の調節がより容易となる。そのために、本発明に係る第一の要旨のコールドシール接着剤においては、成分(B)の比粘度をある特定の値(0.5〜4.0)に制御し、また、本発明に係る第二の要旨のコールドシール接着剤においては、アリル化合物及び連鎖移動剤から選択される少なくとも一種を特定量含む単量体混合物を重合して得られる両性高分子を成分(B)として使用する。
【0070】
本発明の上述の目的のためには、もちろん成分(B)の分子量を直接測定することができればよいが、成分(B)については、通常の分子量測定法として広く用いられているゲル浸透クロマトグラフィー法を用いて、分子量を正常に検出することが困難である。これは、成分(B)が電荷を帯びているため、成分(B)が一旦カラム内のゲルに吸着すると、脱着し難いことに起因すると考えられる。そこで、成分(B)の分子量を制御することを目的として、分子量との相関が認められる比粘度を制御することとしたものである。また、成分(B)の分子量を制御することを目的として、成分(B)の製造において、分子量の制御を可能とする化合物であるアリル化合物及び連鎖移動剤から選択される少なくとも一種を特定量使用するとしたものである。尚、比粘度が大きい場合、分子量も大きく、比粘度が小さい場合、分子量は小さい。
【0071】
尚、本発明に係る上述のコールドシール接着剤に関し、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、成分(B)の10重量%溶液の比粘度が、0.5〜4.0である場合、コールドシール接着剤の層にインクジェット記録された印字の耐水性とコールドシール接着剤の層のオフセット印刷適性が向上し好ましい。インクジェット印字の耐水性の向上は、成分(B)が比粘度4.0以下の場合に適度の水溶性を有することで、インクジェットインク中の染料とのイオン的相互作用が得られやすくなるためと考えられる。また、オフセット印刷適性の向上は、成分(B)が比粘度0.5以上の場合にオフセット印刷時の湿し水に溶出しにくくなるためと考えられる。
尚、これらの理由により、本発明に係るコールドシール接着剤が何ら制限を受けるものではない。
【0072】
本発明に係るコールドシール接着剤は、成分(B)として、例えば、(メタ)アクリル酸エステルであって4級アンモニウム塩基を有する化合物、カルボキシル基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物と、スルホン酸基を有するアリル化合物の組み合わせを付加重合して得られる両性高分子、(メタ)アクリル酸エステルであって4級アンモニウム塩基を有する化合物、カルボキシル基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物と、チオール化合物の組み合わせを付加重合して得られる両性高分子、並びに(メタ)アクリル酸エステルであって3級アミノ基を有する化合物、カルボキシル基及びエチレン性炭素原子間二重結合を有する化合物と、チオール化合物の組み合わせを付加重合して得られる両性高分子を例示できる。
【0073】
本発明に係るコールドシール接着剤は、成分(B)として、より具体的には例えば、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメチルクロリド塩、アクリル酸及びメタアリルスルホン酸の組み合わせを付加重合して得られる両性高分子、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジルクロリド塩、メタクリル酸及び2−メルカプトエタノールの組み合わせを付加重合して得られる両性高分子、並びにメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸及びn−ドデシルメルカプタンの組み合わせを付加重合して得られる両性高分子を例示できる。
【0074】
本発明に係る「アリル化合物」は、メタアリルスルホン酸塩であるのが好ましい。更に、本発明に係る「連鎖移動剤」は、チオール化合物であるのが好ましい。
また、成分(B)は、四級アンモニウム塩基を含有するのが好ましい。
更に、成分(B)のカチオン基/アニオン基(モル比)は、70/30〜90/10であるのが好ましい。
【0075】
本発明のコールドシール接着剤においては、成分(A)100重量部当たり、成分(B)を10〜120重量部含むのが好ましく、20〜100重量部含むのがより好ましく、30〜90重量部含むのが特に好ましい。
尚、上記したように、成分(A)及び成分(B)の重量部は、成分(A)及び成分(B)の溶媒を考慮しない部分を基準としている。
【0076】
本発明に係る上述のコールドシール接着剤は、後述する微粒子充填剤から選択される少なくとも一種を、「微粒子充填剤」として含んで成るのが好ましい。
本発明に係る「微粒子充填剤」とは、コールドシール接着剤に通常使用される微粒子充填剤であって、本発明のコールドシール接着剤に悪影響を与えないものであれば、特に制限されるものではない。
このような微粒子充填剤として、例えば、非晶質シリカ、雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、穀物澱粉、及び変性澱粉等を例示できる。
【0077】
更に、微粒子充填剤は、通常粒子、好ましくは球状であって、その寸法(球状の場合は直径)は、本発明の目的とする性能を発揮すれば特に限定されるものではない。
これらの種々の微粒子充填剤は、単独で又は組み合わせて、必要とする特性に応じて適宜選択して使用できる。
微粒子充填剤を用いることで、コールドシール接着剤に要求される接着性、耐ブロッキング性、印刷適性、耐磨耗性、及び紙への密着性等の特性を容易かつ好適に調節することができる。
【0078】
本発明のコールドシール接着剤を塗工して接着剤の層を形成した基体シートを、インクジェット方式のプリンターに使用して記録する場合は、微粒子充填剤として非晶質シリカを用いるのが好ましい。この場合、本発明のコールドシール接着剤は、成分(A)100重量部当たり、非晶質シリカを50〜150重量部含むのが好ましい。
非晶質シリカは、コールドシール接着剤によって形成される接着剤の層の中にインクを取り込む特性に優れており、その結果、インクの発色性の向上及びインクと接着剤中に存在し得る両性高分子とのイオン的相互作用の発現に有効に働いていると考えられる。
【0079】
更に、本発明のコールドシール接着剤は、成分(A)100重量部当たり、成分(B)を10〜120重量部含み、非晶質シリカを50〜150重量部含むのが好ましく、成分(B)を20〜100重量部含み、非晶質シリカを50〜150重量部含むのがより好ましい。
尚、上記したように、成分(A)及び(B)の重量部は、成分(A)及び(B)の溶媒を考慮しない部分を基準としている。
【0080】
更に、本発明のコールドシール接着剤は、助剤を含んで成ってもよい。
ここで「助剤」とは、コールドシール接着剤において通常使用される助剤であって、本発明のコールドシール接着剤に悪影響を与えないものであれば、特に制限されるものではない。通常、「助剤」とは、耐ブロッキング性、印刷適性、耐磨耗性、及び紙への密着性等を付与するものをいう。助剤として、例えば、ポリビニルアルコール(PVOH)、デンプン、カゼイン、ポリスチレンマレイン酸、カルボキシメチルセルロース等の水溶性樹脂や合成ゴム、アクリルエマルション、及びポリオレフィン系エマルション類を例示できる。
助剤は、単独又は組み合わせて使用できる。
【0081】
本発明のコールドシール接着剤は、水性エマルションの形態であって、成分(A)及び成分(B)等が、水性溶媒中に分散している形態を有している。この形態を維持し、適切な接着特性を発現させるために、水性溶媒を適宜添加して製造し、保存し、使用することができる。
【0082】
更に、本発明のコールドシール接着剤は、カチオン性高分子から選択される少なくとも一種を含んで成ってもよい。
本発明のコールドシール接着剤においては、さらに必要に応じて、また所望の特性に応じて、さらに少量のカチオン性高分子をコールドシール接着剤に配合することができる。これによって、本発明のコールドシール接着剤を塗工して接着剤の層を形成した基体シートをインクジェット方式のプリンターに使用する場合に、水性染料の耐水性及び非転写性の強さ等を容易に調節することができ、印字の耐水性及び非転写性について万全を期することができる。
【0083】
ここで「カチオン性高分子」とは、正の電荷を帯びた高分子であって、少量の添加では、コールドシール接着剤の接着特性等に悪影響を及ぼさないものであれば、カチオン性の強さに特に限定されるものではない。
カチオン性高分子として、例えば、ポリジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン、ポリジメチルアミンエチレンジアミンエピクロルヒドリン等(特開平10−52985号公報参照)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリアミド・エポキシ系樹脂、ポリアミド・尿素樹脂、アルデヒド系樹脂及びメラニン系樹脂等(特開平9−71758号公報参照)を例示することができる。特に、ポリジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン及びジアリルジメチルアンモニアクロリド等を好適に使用することができる。
これらのカチオン性高分子は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0084】
尚、本発明のコールドシール接着剤においては、各種添加剤を配合することができる。
ここで「添加剤」として、コールドシール接着剤において必要により通常使用される添加剤を使用することができる。添加剤として、例えば、滑剤、印刷適性向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、導電剤、蛍光塗料、着色染料、安定剤、消泡剤、防かび剤、防バクテリア剤、増粘剤、及び保湿剤等を例示できる。
さらにまた、本発明においては、コールドシール接着剤の耐ブロッキング性を高めるために、添加剤としてポリエチレン分散液及び/又は粘着特性を付与するために、ロジン系等のタッキファイヤーを添加することができる。
これらの添加剤は単独で又は組み合わせて、必要とする特性に応じて適宜選択して使用することができ、印刷適性、安定性、及び防かび性等に優れたコールドシール接着剤を提供することができる。
【0085】
本発明のコールドシール接着剤は、情報担体を得るために、基体シートに接着剤を塗工して接着剤の層を形成し、圧力を加えて接着するコールドシール接着剤として好適である。
従って、本発明は、上記のコールドシール接着剤を塗工して形成された接着剤の層を有する基体シートを提供する。
【0086】
本発明は、更に情報担体を得るために、基体シートに、上述のコールドシール接着剤を塗工して接着剤の層が形成された接着部位を提供する。
ここで「接着部位」とは、コールドシール接着剤が塗工され接着剤の層が形成されているが、まだ圧力を加えて接着されていない部位をいう。
従って、更に本発明は、上記の接着部位を有する情報担体を提供する。そのような情報担体として、特に、親展性葉書が好ましい。
【0087】
本発明のコールドシール接着剤を基体シート(例えば、上質紙)に塗工して接着剤の層を形成後、その基体シートを更に加工し、情報担体として、例えば、親展性葉書を作製する場合、その親展性葉書の含む情報及び用途等によって、種々の親展性葉書の形態を適宜選択することができ、特に、形態を限定されるものではない。そのような親展性葉書の形態として、例えば、基体シートの片方の面のみに接着剤の層を形成し、基体シートを二つに折り曲げて重ね合わせた二面見開きの葉書の形態、基体シートの片方の面のみに接着剤の層を形成し、いわゆるZ折りにより基体シートを三つ折りにし、一組の向き合う二面が圧着されている六面葉書の形態、並びに基体シートの両面に接着剤の層を形成し、Z折りにより基体シートを三つ折りにし、二組の向き合う二面が圧着されている六面葉書の形態等を例示できる。
【0088】
尚、本発明のコールドシール接着剤を塗工する方法として、通常コールドシール接着剤を塗工する方法として使用されている方法を用いることができる。本発明のコールドシール接着剤を塗工できる限り、塗工方法は特に限定されるものではない。このような塗工方法として、例えば、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、及びグラビアロールコーター等を例示することができる。
【0089】
更に本明細書において「圧着」とは、従来からコールドシール接着剤の接着にに用いられている方法であって、コールドシール接着剤を塗工して接着剤の層を形成した2つの面同士を接触するように重ねて圧力及び必要に応じて熱を加えて2つの面を一体に接着することをいう。
従って、「圧着」とは、上記の基体シートの接着部位に圧力を加えて一体に接着することをもいう。
【0090】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、重量部及び重量%の基準としている。
【0091】
(1)両性高分子の製造と、1NのNaCl水溶液を溶媒とする両性高分子の10重量%溶液の比粘度の測定
(i)両性高分子B1の製造
アニオン性単量体として7重量部のアクリル酸(AA)、カチオン性単量体として85重量部のメタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩[(CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)2CH2C6H5)+Cl−](DML)、10重量部のポリエチレングリコールモノメタクリレート(PE350)と、アニオン性単量体であってアリル化合物である10重量部のメタアリルスルホン酸ナトリウム[CH2=C(CH3)CH2SO3Na]を900重量部の蒸留水に加え、攪拌しつつ触媒として1重量部の2,2−アゾビス(2−ジアミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V50)を添加した後、80℃に加熱して3時間反応させて、両性高分子B1を水溶液の形態で得た。
【0092】
(ii)1NのNaCl水溶液を溶媒とする両性高分子B1の10重量%溶液の比粘度の測定
上述の両性高分子B1を105℃で3時間乾燥して、溶媒を実質的に除去した後、1NのNaCl水溶液を溶媒とする両性高分子B1の10重量%溶液を作成した。
1NのNaCl水溶液を溶媒とする両性高分子の10重量%溶液の比粘度(以下、「両性高分子の比粘度」ともいう)は、上述のように式(1)で示される。
【数7】
式(1):ηsp=(η―η0)/η0
[但し、式(1)において、
η0は、1NのNaCl水溶液の30℃における粘度を表し、
η は、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、両性高分子の10重量%溶液の30℃における粘度を表す。]
【0093】
式(1)は、更に式(2)のように変形できる。
【数8】
式(2):ηsp=(η―η0)/η0=η/η0−1=t/t0−1
[但し、式(2)において、
t0は、1NのNaCl水溶液の流下時間を表し、
t は、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、両性高分子の10重量%溶液の流下時間を表す。
(ここで、「流下時間」とは、ウベローデ粘度計の毛管内を、30℃にて溶液が流下するのに要する時間をいう。)]
従って、ウベローデ粘度計を用いて、30℃にて、1NのNaCl水溶液の流下時間(t0)と、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、両性高分子B1の10重量%溶液の流下時間(t)を測定し、式(2)を用いて両性高分子B1の比粘度として0.7の値を得た。
【0094】
(iii)両性高分子B2〜B7の製造と、両性高分子B2〜B7の比粘度
両性高分子B2〜B7は、上述した両性高分子B1の製造方法と同様の方法を用いて、表1に記載した化合物を表1に記載した量を用いて製造し、両性高分子B2〜B7を、いずれも水溶液の形態で得た。尚、両性高分子B2〜B7の製造において、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノールを用いる場合、2−メルカプトエタノールは、2,2−アゾビス(2−ジアミジノプロパン)ジヒドロクロリドを加える前に、反応容器に加えた。得られた両性高分子B2〜B7の比粘度を、上述した両性高分子B1の比粘度の測定にて記載した方法と同様の方法を用いて測定した。結果は、表1に示した。
尚、市販のカチオン性高分子についても、同様の方法を用いて比粘度を測定して、結果を表1に示した。
【0095】
【表1】
a)化合物の使用量の単位は重量部である。
b)ジメチルアミノエチルメタクリレートベンジルクロライド塩[CH2=C(CH3)−COO−CH2CH2N+(CH3)2−CH2C6H5・Cl−]
c)ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド塩[CH2=C(CH3)−COO−CH2CH2N+(CH3)3・Cl−]
d)アクリル酸[CH2=CH−COOH]
e)ポリオキシエチレンメタクリレート(ポリオキシエチレン付加モル数n≒8)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH2CH2O)n−H]
f)2,2−アゾビス(2−ジアミジノプロパン)ジヒドロクロリド
g)カチオン性高分子は市販品である。
【0096】
(2)コールドシール接着剤の製造
(i)実施例1のコールドシール接着剤の製造
常套の方法によって天然ゴムラテックスにメタクリル酸メチルを共重合して得たメタクリル酸メチル変性天然ゴムラテックス(以下「MMA変性天然ゴムラテックス」ともいう)100重量部当たり、10重量部のスチレン−ブタジエンゴム(SBR)ラテックス、60重量部の上述の両性高分子B1、100重量部の非晶質シリカ、20重量部のその他の微粒子充填剤(澱粉等)(微粒子充填剤は合計120重量部)、並びに10重量部のポバール(PVOH:日本合成化学社製のゴーセーファイマーZ210(商品名))を配合して実施例1のコールドシール接着剤を得た。実施例1のコールドシール接着剤の組成を表2に示した。
【0097】
(ii)実施例2〜9及び比較例1〜3のコールドシール接着剤の製造
表2及び3に記載のMMA変性天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)ラテックス、両性高分子、非晶質シリカ、その他の微粒子充填剤(澱粉等)、並びにポバール等の成分を、表2及び3に記載した重量部で配合して実施例2〜9及び比較例1〜3のコールドシール接着剤を得た。
【0098】
(2)コールドシール接着剤の評価
(i)コールドシール接着剤の配合安定性
このコールドシール接着剤の配合安定性を、接着剤のグリット値(コールドシール接着剤を配合した時の凝集物の発生の有無)、コールドシール接着剤の粘度の経時変化、コールドシール接着剤の目視観察によって評価した。粘度は、B型粘度計(30℃)を用いて測定した。グリットの発生は認められず、粘度の増加も実質的に無いものを◎、グリットの発生が認められなくとも、粘度は増加したが、実質的に問題のないものを○、グリットの発生は認められなかったが、粘度の増加が大きいものを△、グリットの発生が認められるか、又は粘度が増加してゲル化したものを×とした。結果は、表2及び3に示した。
【0099】
(ii)インクジェット記録された印字の耐水性及び非転写性
試験シートの作成
コールドシール接着剤を、上質紙(130g/m2)から成る基体シートの片面に、乾燥後の塗工量が10g/m2となるように塗工、乾燥して、接着剤の層を形成した基体シート(以下「接着剤塗工シート」ともいう)を得た。この接着剤塗工シートの接着剤の層の上に、インクジェット方式のプリンターを用いて、サイテックス社製の黒インク、赤インク、青インク及び緑インクを使用して印字した後、105℃の乾燥機中で1分間乾燥した接着剤塗工シート(以下「試験シート」という)を得た。
【0100】
インクジェット記録された印字の耐水性(滲み)の評価
インクジェット記録された印字の耐水性(滲み)の評価は、試験シートの印字部分に水滴を落とし、風乾後の印字の状態を目視で観察することによって行った。試験シートの印字に滲みのほとんど無いものを◎、少し滲みがあるが実用的に問題がないものを○、はっきりと滲みが認められるものを△、滲みがひどく文字の読み取りが困難な場合を×とした。結果は表2及び3に示した。尚、全ての実施例及び比較例において、色の種類の相違による結果の相違はなかった。
【0101】
インクジェット記録された印字の耐水性(溶出)の評価
インクジェット記録された印字の耐水性(溶出)の評価は、試験シートを3分間水中に浸漬後のインクの溶出を目視で観察することによって行った。インクの溶出がほとんど無いものを◎、少しインクの溶出があるが実用的に問題がないものを○、はっきりとインクの溶出が認められるものを△、インクの溶出がひどく文字の読み取りが困難な場合を×とした。結果は表2及び3に示した。尚、全ての実施例及び比較例において、色の種類の相違による結果の相違はなかった。
【0102】
インクジェット記録された印字の非転写性の評価
インクジェット記録された印字の非転写性の評価は、試験シートを二つに折り返し、温度20℃、湿度60%においてプレスして圧着し、30分経過後に再剥離する際に、印字の転写の有無を目視で観察することによって行った。尚、プレスする圧力は、再剥離する際に、試験シートが少なくとも部分的に破壊される(材料破壊)直前の圧力を用いた。圧力試験シートの印字が、全く転写しなかった場合を◎、わずかに転写したが実用的に問題がない場合を○、少し転写がある場合を△、転写がひどい場合を×とした。結果は表2及び3に示した。
【0103】
(iii)接着剤の層の耐摩耗性の評価
耐摩耗性(ドライ)の評価は、学振型耐摩耗堅牢度試験機を用い、1000gのおもりを用いて、接着剤塗工シートの表面を200回摩耗した後、接着剤塗工シートの表面の状態を目視観察することで行った。接着剤塗工シートの表面の削れが全くない場合を◎、わずかに表面の削れが認められた場合を○、削れカスが発生し、表面の削れが10%未満の場合を△、削れカスが多量に発生し、表面の削れが10%以上の場合を×とした。結果は表2及び3に示した。
【0104】
【表2】
a)各成分の単位は、重量部である。
【0105】
【表3】
a)各成分の単位は、重量部である。
【0106】
【発明の効果】
本発明に係る第一の要旨のコールドシール接着剤は、成分(B)(両性高分子から選択される少なくとも一種)を含んで成り、その成分(B)は1NのNaCl水溶液を溶媒とする、10重量%溶液の比粘度が0.5〜4.0であるから、印字の耐水性の問題、印字の転写性の問題及び耐摩耗性の問題の少なくとも1つが緩和され、好ましくは実質的に解消され、更には、オフセット印刷適性も良好であって、これらの特性を容易に適宜調節することができる、総合的な性能が高いコールドシール接着剤を提供することができる。
【0107】
更に、第一の要旨のコールドシール接着剤において、成分(B)が、連鎖移動剤及びアリル化合物に由来する部分を1〜10重量%含んで成ることによって、印字の耐水性の問題、印字の転写性の問題及び耐摩耗性の問題の少なくとも1つをより緩和し、実質的に解消することができる。
【0108】
本発明の第二の要旨のコールドシール接着剤は、成分(B)が、連鎖移動剤及びアリル化合物に由来する部分を1〜10重量%含んで成るので、印字の耐水性の問題、印字の転写性の問題及び耐摩耗性の問題の少なくとも1つが緩和され、好ましくは実質的に解消され、更には、オフセット印刷適性も良好であって、これらの特性を容易に適宜調節することができる、総合的な性能が高いコールドシール接着剤を提供することができる。
【0109】
更に、第二の要旨のコールドシール接着剤において、成分(B)の、1Nの
の比粘度が0.5〜4.0であるから、印字の耐水性の問題、印字の転写性の問題及び耐摩耗性の問題の少なくとも1つをより緩和し、実質的に解消することができる。
Claims (10)
- 成分(A):天然ゴムラテックス、変性天然ゴムラテックス、及び合成ゴムラテックスから選択される少なくとも一種、並びに
成分(B):両性高分子から選択される少なくとも一種、
を含んで成るコールドシール接着剤であって、
成分(B)は、連鎖移動剤及びアリル化合物から選択される少なくとも一種に由来する部分を1〜10重量%含有し、
下記式(1)に示す、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、成分(B)の10重量%溶液の比粘度(ηsp)が、0.5〜4.0であることを特徴とするコールドシール接着剤。
η0は、1NのNaCl水溶液の30℃における粘度を表し、
η は、1NのNaCl水溶液を溶媒とする、成分(B)の10重量%溶液の30℃における粘度を表す。] - 成分(A):天然ゴムラテックス、変性天然ゴムラテックス、及び合成ゴムラテックスから選択される少なくとも一種、並びに
成分(B):両性高分子から選択される少なくとも一種、
を含んで成るコールドシール接着剤であって、
両性高分子は、カチオン性単量体及びアニオン性単量体を必須成分として含む単量体混合物を共重合することによって得られ、
カチオン性単量体は、アミノ基とエチレン性二重結合を有する単量体、ピリジル基とエチレン性二重結合を有する単量体、アンモニウム塩基とエチレン性二重結合を有する単量体及びピリジニウム塩基とエチレン性二重結合を有する単量体から選択される少なくとも一種を含んで成り、
アニオン性単量体は、カルボキシル基とエチレン性二重結合を有する単量体、カルボン酸塩基とエチレン性二重結合を有する単量体、スルホン酸基とエチレン性二重結合を有する単量体、スルホン酸塩基とエチレン性二重結合を有する単量体、リン酸基とエチレン性二重結合を有する単量体及びリン酸塩基とエチレン性二重結合を有する単量体から選択される少なくとも一種を含んで成るコールドシール接着剤において、
単量体混合物は、連鎖移動剤及びアリル化合物から選択される少なくとも一種を1〜10重量%含有することを特徴とするコールドシール接着剤。 - アリル化合物は、メタアリルスルホン酸塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコールドシール接着剤。
- 連鎖移動剤は、チオール化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコールドシール接着剤。
- 成分(B)は、四級アンモニウム塩基を含有することを特徴とする請 求項1〜5のいずれかに記載のコールドシール接着剤。
- 成分(B)のカチオン基/アニオン基(モル比)は、70/30〜90/10であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコールドシール接着剤。
- 非晶質シリカを、更に含んで成ることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のコールドシール接着剤。
- カチオン性高分子を、更に含んで成ることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のコールドシール接着剤。
- インクジェット記録用の請求項1〜9のいずれかに記載のコールドシール接着剤。
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