JP3603568B2 - 排ガスフィルタおよびその製造方法 - Google Patents

排ガスフィルタおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジン等から排出される排ガス中に含まれる黒煙等をろ過する排ガスフィルタおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題が深刻化したことに伴いディーゼルエンジン等の燃焼機関から排出される排気ガスとともに大気中に分散される黒煙の処理が問題となってきている。この問題を解決するために、ディーゼルエンジン等の燃焼機関の排気管の途中に排ガスフィルタを設け、この排ガスフィルタによって黒煙をろ過、捕集し排ガスのみを排出している。
【0003】
ところで、この排ガスフィルタに黒煙が多量に捕集されると、排ガスフィルタは目詰まりを起こすようになって、排ガスの流路を妨げることになり、結果的にエンジンの燃焼効率等に悪影響を及ぼすことになる。そのため、予め設けられた所定の捕集量に達すると黒煙を空気とともに燃焼させて気体化し、目詰まりを除去して排ガスフィルタを初期の状態に戻して再生することが必要である。
【0004】
この排ガスフィルタの再生には主として電気ヒータ方式が用いられ、黒煙が所定量捕集されるのを検知した制御部は、黒煙を安定して燃焼させるように制御する。ここで、電気ヒータ方式というのは、排ガスの流入側もしくは流出側に電気ヒータを設け、電気ヒータに通電することによって排ガスフィルタを加熱し、排ガスの流入側もしくは流出側から供給される空気によって黒煙を燃焼させるものである。そして再生中は、予備の排ガスフィルタを使用してディーゼルエンジンは継続して運転される。
【0005】
ところで、この捕集された黒煙は排ガスフィルタの全面に分布しているが、その全面の黒煙が同時に燃焼するのではなく、電気ヒータ側の排ガスフィルタ端部から徐々に燃焼が進行する。そのため排ガスフィルタの部分によっては温度勾配が生じ、熱膨張の差から熱応力を発生することになる。通常の使用では捕集される黒煙の量を予測して、比較的早い段階に燃焼させて排ガスフィルタを再生することが行われている。この場合には黒煙は600〜900℃で徐々に燃焼し、排ガスフィルタは急激に加熱されることがなく、大きな熱応力を受けることは少ない。
【0006】
一方、制御部による制御が十分でなかったり、黒煙が所定量以上に捕集された場合などには加熱によって黒煙は急激に燃焼し、1000℃以上もの高温度に急激に上昇して異常燃焼する。このとき排ガスフィルタは部分的に大きな熱衝撃を受け、疲労破壊によってクラックが生じ破壊されることになる。
【0007】
従って、排ガスフィルタはこの異常燃焼による急激な熱衝撃に耐えられる材質のものが必要で、低熱膨張性、高耐熱衝撃性が強く要求されている。更に、黒煙の捕集効率が高いことと、同時に黒煙の捕集によって起こる排ガスの流路抵抗が小さいことも必要である。
【0008】
そこで、これらの要求を満たすため、排ガスフィルタは材料、構造、製造法等について様々な開発が行われている。
【0009】
ここで、排ガスフィルタの格子壁を構成する多孔質セラミックス材料について説明する。
【0010】
例えば、排ガスフィルタに一般的に使用されている材料の一つとして、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライト焼結体(2MgO・2Al・5SiO)がある。このコージェライトの熱膨張係数は結晶の方向によって異方性を示し、結晶のa軸が2.0×10−6−1、c軸が−0.9×10−6−1と異なっている。
【0011】
しかしながら、押出成形法でハニカム状に成形されたものは、工程中で原料に含まれるカオリンやタルク等の板状結晶が剪断力を受けて格子壁と平行な方向に分散されるので、c軸は押出成形方向(排ガス流路方向)に僅かながら多く配向された状態となる。これにより、コージェライトの押出成形方向の熱膨張係数は約0.5×10−6−1、押出成形方向に垂直な方向の熱膨張係数は約0.9×10−6−1となり、全体にわたって熱膨張係数が小さく異方性が少なくなり、高耐熱衝撃性の排ガスフィルタが製造されている。
【0012】
一方、多孔質セラミックス材料として、従来からのコージェライトの他に、最近ではチタン酸アルミニウム(Al・TiO)が検討され始めている。チタン酸アルミニウムは溶融温度が1600℃以上と高く、再生時の高温にも十分耐えることができるものである。
【0013】
しかしながら、このチタン酸アルミニウムの熱膨張係数はやはり結晶の方向によって異方性を示し、結晶のa軸が11.8×10−6−1、b軸が19.4×10−6−1、c軸が−2.6×10−6−1と、コージェライトの結晶と比べてもその異方性は大きいという特徴がある。そして、このように異方性が大きいと、結晶粒子間にマイクロクラックを生じ易いという問題がある。また、チタン酸アルミニウムの結晶は高温度(750〜1200℃)のもとで酸化チタニウム(ルチル)と酸化アルミニウム(コランダム)に分解しやすいという問題もある。
【0014】
この様に、チタン酸アルミニウムは低膨張で耐熱性に優れた材料であるが、他のセラミックス材料に比べて、製造時に発生する結晶粒子間のマイクロクラックのために機械的強度が低く、製造条件によっては、結晶粒子の分解による材質の変化により熱膨張係数が変化して大きくなりやすいという問題がある。
【0015】
そこでチタン酸アルミニウムの機械的強度の向上や熱膨張係数の制御について改善が行われ、既に一部実用化されるまでになってきている。
【0016】
例えば、特公平6−31180号公報には、チタン酸アルミニウムを主成分とし、副成分としてSiOを1〜10wt%、Alを1〜10wt%、Feを0.1〜5wt%含む多孔質成形体の構成が開示されている。これは、耐熱衝撃性、耐熱性のあるチタン酸アルミニウム基材を使用し、成形体の緻密化による強度向上、ならびに鉄系の高温鉄溶湯に対する耐食性低下の抑制を図っている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
特公平6−31180号公報に記載された多孔質成形体の用途は鉄系の高温溶湯の不純物除去フィルタあるいは高温悪環境での通気性固体とされているが、当該公報の記載によれば、鉄系の金属溶湯フィルタとしての性能調査を行い、他の多孔質成形体についての性能調査は行っていない。特に、副成分の上限(Fe:3wt%,SiO:10wt%,Al:10wt%)は鉄系の高温鉄溶湯に対する耐食性の低下を理由に設定され、排ガスフィルタとしての副成分の化学組成とは異なるところがある。
【0018】
ここで、排ガスフィルタについて、チタン酸アルミニウムを主成分とした場合の開発過程および問題点を以下に示してみる。
【0019】
第1に、チタン酸アルミニウムは焼結性に乏しく、高温安定性が悪いため、副成分を添加する必要がある。第2に、チタン酸アルミニウムは比較的高温度(1400℃以上)で焼結するため、微小粒子ではなく粗大粒子を適用して焼成収縮率を抑制する必要がある。第3に、チタン酸アルミニウムの粗大粒子を使用すると、押出成形時の可塑性に乏しいため、有機結合剤を多量に添加する必要がある。第4に、チタン酸アルミニウムは比重が大きく、押出成形後の保形性に乏しいため、鉛直方向に押し出す必要がある。第5に、チタン酸アルミニウムの粗大粒子を使用すると、焼成過程における有機結合剤消失後の保形性に乏しく、焼成過程でハニカム成形体が崩れるため、充填材などで支えながら焼成する必要がある。第6に、充填材などで支えながら焼成すると、焼成過程における成形体の内外部で温度や酸素濃度が部分的に異なり、有機結合剤の局部的な燃焼が起こり、焼成後にクラックが発生しやすい。
【0020】
特公平6−31180号公報に記載された化学組成は、高温安定性の向上、機械的強度の向上などを図ることができ、確かに前記した第1の問題点をクリアする手段となり得る。しかしながら、第2〜第6の問題点をクリアすることはできない。従って、特公平6−31180号公報に記載された技術を排ガスフィルタに適用するのは、未だ不十分である。特に、第5および第6の問題点に示すような焼成過程での崩壊やクラックに関する問題は、排ガスフィルタにとって重要になる。
【0021】
ここで、従来の成形体の焼成時の状態を図6に示す。図6に示すように、ハニカム成形体11は、その周囲をセラミック充填材12で支持された状態でセラミック坩堝13中で焼成されている。これは、チタン酸アルミニウムを主成分とした排ガスフィルタの焼成では、ハニカム成形体11をセラミック充填材12で支持しないと、焼成後に崩壊やクラックが必ず発生することになるからである。
【0022】
そこで、本発明は、高温安定性の向上を図ることのできる排ガスフィルタについての技術を提供することを目的とする。
【0023】
また、本発明は、焼成収縮率を抑制して寸法制度の安定化を図ることのできる排ガスフィルタについての技術を提供することを目的とする。
【0024】
さらに、本発明は、押出成形時の可塑性の向上を図ることのできる排ガスフィルタについての技術を提供することを目的とする。
【0025】
本発明は、押出成形後の保形性の向上を図ることのできる排ガスフィルタについての技術を提供することを目的とする。
【0026】
本発明は、充填材を用いることなく焼成を行うことのできる排ガスフィルタについての技術を提供することを目的とする。
【0027】
そして、本発明は、焼成後のクラックを防止することのできる排ガスフィルタについての技術を提供することを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、本発明の排ガスフィルタは、多孔質セラミックスよりなり多数の連通気孔を有する格子壁に仕切られて排ガスの流路方向に多数形成された貫通孔と、貫通孔の一方端である排ガス入口と他方端である排ガス出口の端面部に交互に設けられた封止材とで構成され、格子壁の結晶成分はチタン酸アルミニウムのみからなり、チタン酸アルミニウムを構成する結晶粒子の間隙および表面にはAlとSiOとを含有する非晶質粒子が突出して存在し、格子壁の化学組成は、Alが48〜53wt%、TiOが33〜40wt%、SiOが7〜13wt%、Feが1〜3wt%とされている。
【0029】
これにより、排ガスフィルタの焼結性が向上し、良好な高温安定性を得ることができる。
【0030】
また、本発明の排ガスフィルタの製造方法は、AlがTiOに対して等モルより3〜6wt%多く配分されたチタン酸アルミニウムからなる主成分と、少なくともSiOを4〜7wt%、Feを1〜3wt%有する副成分とからなる第1のセラミックス原料100重量部を用意し、AlとSiOとを主成分として構成される粘土からなる第2のセラミックス原料5〜20重量部を第1のセラミックス原料に添加し、第1のセラミックス原料および第2のセラミックス原料を造孔剤、結合剤、可塑剤および水とともに混合してセラミックス坏土を作製し、セラミックス坏土をハニカム形状に押出成形し、得られた押出成形体を加熱、焼結して多孔質セラミックスを形成するようにしたものである。
【0031】
これにより、寸法制度の安定化、押出成形時の可塑性の向上、押出成形後の保形性の向上、焼成時の充填材の撤去および焼成後のクラックの発生防止を図ることができる。
【0032】
本発明の排ガスフィルタの製造方法は、AlがTiOに対して等モルより3〜6wt%多く配分されたチタン酸アルミニウムからなる主成分と、少なくともSiOを4〜7wt%、Feを1〜3wt%有する副成分とからなる第1のセラミックス原料100重量部を用意し、AlとSiOとを主成分として構成される粘土からなる第2のセラミックス原料5〜20重量部と、TiOからなる第3のセラミックス原料5〜12重量部を第1のセラミックス原料に添加し、第1のセラミックス原料、第2のセラミックス原料および第3のセラミックス原料を造孔剤、結合剤、可塑剤および水とともに混合してセラミックス坏土を作製し、セラミックス坏土をハニカム形状に押出成形し、得られた押出成形体を加熱、焼結して多孔質セラミックスを形成するようにしたものである。
【0033】
これにより、寸法制度の安定化、押出成形時の可塑性の向上、押出成形後の保形性の向上、焼成時の充填材の撤去および焼成後のクラックの発生防止を図ることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、多孔質セラミックスよりなり多数の連通気孔を有する格子壁に仕切られて排ガスの流路方向に多数形成された貫通孔と、貫通孔の一方端である排ガス入口と他方端である排ガス出口の端面部に交互に設けられた封止材とで構成された排ガスフィルタであって、格子壁の結晶成分はチタン酸アルミニウムのみからなり、チタン酸アルミニウムを構成する結晶粒子の間隙および表面にはAlとSiOとを含有する非晶質粒子が突出して存在し、格子壁の化学組成は、Alが48〜53wt%、TiOが33〜40wt%、SiOが7〜13wt%、Feが1〜3wt%とされたものであり、排ガスフィルタの焼結性が向上して、良好な高温安定性を得ることができるという作用を有する。
【0035】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、非晶質粒子の化学組成は、Alが37〜48wt%、SiOが49〜60wt%である排ガスフィルタであり、焼成収縮率が低く寸法精度のよい排ガスフィルタを得ることができるという作用を有する。
【0036】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、排ガスの流路方向における格子壁は、熱膨張係数αが|α|≦2×10−6−1(室温〜800℃)であり、開口率を0に換算した時の圧縮強度σがσ≧150kgf/cmである排ガスフィルタであり、排ガスフィルタの耐熱衝撃性を向上させることができるという作用を有する。
【0037】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、格子壁は、連通気孔の平均気孔径が7〜20μm、気孔率が30〜40%である排ガスフィルタであり、黒煙を高効率で捕集でき、圧力損失の上昇率を小さくすることができるという作用を有する。
【0038】
本発明の請求項5に記載の発明は、AlがTiOに対して等モルより3〜6wt%多く配分されたチタン酸アルミニウムからなる主成分と、少なくともSiOを4〜7wt%、Feを1〜3wt%有する副成分とからなる第1のセラミックス原料100重量部を用意し、AlとSiOとを主成分として構成される粘土からなる第2のセラミックス原料5〜20重量部を第1のセラミックス原料に添加し、第1のセラミックス原料および第2のセラミックス原料を造孔剤、結合剤、可塑剤および水とともに混合してセラミックス坏土を作製し、セラミックス坏土をハニカム形状に押出成形し、得られた押出成形体を加熱、焼結して多孔質セラミックスを形成するようにした排ガスフィルタの製造方法であり、寸法制度の安定化、押出成形時の可塑性の向上、押出成形後の保形性の向上、焼成時の充填材の撤去および焼成後のクラックの発生防止を図ることができるという作用を有する。
【0039】
本発明の請求項6に記載の発明は、AlがTiOに対して等モルより3〜6wt%多く配分されたチタン酸アルミニウムからなる主成分と、少なくともSiOを4〜7wt%、Feを1〜3wt%有する副成分とからなる第1のセラミックス原料100重量部を用意し、AlとSiOとを主成分として構成される粘土からなる第2のセラミックス原料5〜20重量部と、TiOからなる第3のセラミックス原料5〜12重量部を第1のセラミックス原料に添加し、第1のセラミックス原料、第2のセラミックス原料および第3のセラミックス原料を造孔剤、結合剤、可塑剤および水とともに混合してセラミックス坏土を作製し、セラミックス坏土をハニカム形状に押出成形し、得られた押出成形体を加熱、焼結して多孔質セラミックスを形成するようにした排ガスフィルタの製造方法であり、寸法制度の安定化、押出成形時の可塑性の向上、押出成形後の保形性の向上、焼成時の充填材の撤去および焼成後のクラックの発生防止を図ることができるという作用を有する。
【0040】
本発明の請求項7に記載の発明は、請求項5または6記載の発明において、第1のセラミックス原料の平均粒子径を8〜30μmとした排ガスフィルタの製造方法であり、排ガスフィルタの焼成収縮率を低減することができるという作用を有する。
【0041】
本発明の請求項8に記載の発明は、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の発明において、第2のセラミックス原料の平均粒子径を10μm以下とした排ガスフィルタの製造方法であり、第2のセラミックス原料を第1のセラミックス原料の粒子間隙に存在させて、焼成時の保形性を向上させることができるという作用を有する。
【0042】
本発明の請求項9に記載の発明は、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の発明において、第3のセラミックス原料の平均粒子径を10μm以下とした排ガスフィルタの製造方法であり、第3のセラミックス原料が第1のセラミックス原料と焼結反応し易くなり、機械的強度を向上させることができるという作用を有する。
【0043】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図6を用いて説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0044】
図1は本発明の一実施の形態による排ガスフィルタを示す斜視図、図2は図1の排ガスフィルタの端面部拡大図、図3は図1の排ガスフィルタの断面における排ガスの流路を示す概略図、図4は図1の排ガスフィルタにおける格子壁のX線回折図、図5は図1の排ガスフィルタを作製する際における成形体の焼成時の状態を示す説明図である。
【0045】
図1に示すように、排ガスフィルタ1には、その長さ方向である排ガスの流路方向に貫通孔2が多数形成されている。この貫通孔2は、多孔質セラミックスで形成されて多数の連通気孔を有する格子壁3によって仕切られている。貫通孔2の排ガス入口である一方の端面部1a、および排ガス出口である他方の端面部1bは、封止材4により交互に閉塞されている。
【0046】
図示するように、排ガスフィルタ1は円柱状であり、端面部1a,1bの直径は約144mm、排ガスの流路方向に沿った長さは約152mmになるように構成されている。但し、これ以外の寸法とすることもできる。
【0047】
この排ガスフィルタ1の大きさは、エンジン排気量が2000〜3000ccのものに多く用いられる。その理由は、この程度の容量の排ガスフィルタ1が排ガス中の黒煙等を効率的に捕集できるからである。なお、排ガスフィルタ1が円柱状とされているので、等方的に応力を分布させることができ、製造工程で発生する加工歪等が低減されて強度が高められている。
【0048】
ここで、この排ガスフィルタ1は多孔質セラミックスであるために、外周面1cに連通気孔が多く形成されているが、使用時には外周面1cには断熱材等が密着されるので、黒煙が外部に漏れることはない。この排ガスフィルタ1をディーゼルエンジンなどに取り付ける場合には、排ガスフィルタ1を無機繊維質の断熱材等で包み、更にSUS等の収納容器内に収納して固定される。
【0049】
ここで、端面部1a,1bの詳細な構造について説明する。なお、端面部1a,1bは基本的に同じ構造をしているので、ここでは端面部1aを取り上げて説明する。
【0050】
端面部1aには排ガスフィルタ1の排ガス流路方向に沿って断面方形状の複数の貫通孔2が設けられており、貫通孔2は多数の連通気孔が設けられた格子壁3で区切られている。格子壁3は端面部1aから端面部1bまで連続して構成されている。格子壁3の厚さt1,t2はそれぞれ0.2〜0.3mm(貫通孔2の数が200セル/平方インチ)、0.4〜0.5mm(貫通孔2の数が100セル/平方インチ)の範囲内で構成することが好ましい。これより小さくなると、機械的強度が低くなりすぎたり、捕集効率が落ちたりするからである。また、これより大きくなると、圧力損失が高くなる等の不都合が生じることがあるからである。
【0051】
また、格子壁3の矢印方向Lに沿ったピッチA1と矢印方向Mに沿ったピッチA2とはそれぞれ2mm〜4mmの範囲にあることが好ましい。これより小さくなると排ガスの圧力損失が高くなったり、これより大きいと黒煙等の捕集量が少なくなったりするなど不都合が生じるからである。本実施の形態においては、A1=A2として、等方的に機械的強度を向上するとともに捕集能力を各部で均一にしているので、安定したフィルタ特性を得ることができる。なお、ピッチA1およびピッチA2の長さを相互に違えることによって貫通孔2の断面形状を長方形にし、形成された長方形の長辺部と短辺部を通過する排ガスの流量に差を設けるようにすると補集能力の偏りを任意に調整することができるので、排ガスフィルタ1の収納容器の設計やそれに接続する配管などの構成の自由度を大きくとることができる。
【0052】
前述のように、封止材4は端面部1a側の貫通孔2と同じ端面部1b側の貫通孔2のどちらかに、しかも交互に設けられている。一般にこの封止材4は格子壁3と同じ材料組成で構成されたり、違った種類の材料でも熱膨張係数の比較的近いものが選択され、これにより、貫通孔2の周辺に生じるクラックなどが防止されている。
【0053】
また、格子壁3と封止材4のそれぞれの主成分を同じにしておき、副成分の種類およびその添加量を変えることによって、格子壁3と封止材4の熱膨張係数を調整することができるとともに、製造時にペースト状の封止材4の硬度等をも調整することができ、作業性がよくなり生産性を向上させることもできる。
【0054】
ここで、封止材4を端面部1a,1bのそれぞれの貫通孔2に設けたときの排ガスの流路について図3で説明する。
【0055】
図3に示すように、貫通孔2は格子壁3によって流入孔2aと流出孔2bに区画される。端面部1a側から排ガスが流入すると、排ガスはまず開口状態の流入孔2aに流入するが、その対向する側の端面部1bの貫通孔2が封止材4によって封止されているため、格子壁3を通過して流出孔2bに流出し開口状態の貫通孔2を通って端面部1bより系外に排出する。そして、排ガスがこのように多孔質セラミックからなる格子壁3を通過する際に、排ガスの中の黒煙等が排ガスフィルタ1の内部に捕集されることになる。
【0056】
次に、この排ガスフィルタ1の製造方法について説明する。
先ず、主成分としてチタン酸アルミニウムからなり、AlとTiOは等モルよりAlが3〜6wt%多く、副成分として少なくともSiOが4〜7wt%、Feが1〜3wt%とからなる第1のセラミックス原料100重量部を用意する。
【0057】
次に、主成分としてAlとSiOで構成される粘土からなる第2のセラミックス原料5〜20重量部を第1のセラミックス原料に添加する(なお、試料によっては、TiOからなる第3のセラミックス原料も5〜12重量部を添加する)。
【0058】
そして、造孔剤(格子壁に気孔を形成させるもの)、結合剤、可塑剤、水などを第1のセラミックス原料および第2のセラミックス原料(第3のセラミックス原料を添加した場合には、さらに第3のセラミックス原料)に混合して坏土状にする。
【0059】
続いて、これをハニカム形状の金型を通して押出成形する。そして、得られた押出成形体を乾燥後、1500℃で熱処理し、これに予め調整した封止材4(主成分はチタン酸アルミニウム)を貫通孔2に充填して前述のように端面部1a,1bを閉塞した後、1400℃で熱処理する。
【0060】
これにより、図1に示す排ガスフィルタ1が作製される。
このように第2のセラミックス原料である粘土5〜20重量部を第1のセラミックス原料に添加することで、第1に、押出成形時において、粘土質特有の可塑性を付与するため、メトローズなど有機結合剤の使用量を低減することができる、第2に、押出成形直後において、チタン酸アルミニウム粗大粒子の間隙に粘土粒子が充填され保形性を付与するため、成形体の変形を防止し製造歩留まりの向上を図ることができる、第3に、焼成時において、チタン酸アルミニウム粗大粒子の間隙に粘土粒子が充填され保形性を付与するため、焼成体の崩壊やクラックを防止し製造歩留まりの向上を図ることができる、第4に、焼成時において、チタン酸アルミニウム粗大粒子の間隙や表面上で粘土粒子が非晶質となり粗大粒子同士の結合を付与するため、焼成体の強度の向上を図ることができる、などの作用効果が得られ、排ガスフィルタ1およびその製造において極めて有効である。
【0061】
なお、粘土のタイプとしては、耐熱温度を低下させないため、AlとSiOで構成され不純物の少ない粘土(例えばカオリナイト系)が好ましい。ここで、第2のセラミックス原料が5重量部より少ないと焼成時の保形力不足により焼成体が崩壊し、20重量部より多いと高温下でSiOがクリストバイライトに相転移し熱膨張が増加してしまう。
【0062】
さらに、第3のセラミックス原料であるTiOも添加すると、これがチタン酸アルミニウム粗大粒子の間隙や表面に存在する粘土粒子と反応して、特に前述した第4の作用効果を十分に引き出すことができる。なお、第3のセラミックス原料は5重量部〜12重量部添加する必要がある。これは、5重量部より少ないと焼結反応不十分により焼成体の機械的強度を大幅に向上させることができず、12重量部より多いと高温下でチタン酸アルミニウムが分解し熱膨張が増加してしまうからである。
【0063】
第1のセラミックス原料の平均粒子径は8〜30μmの範囲が好ましい。平均粒子径が8μmより小さいと排ガスフィルタ1の焼成収縮率が大きいため寸法精度が悪くなり、30μmより大きいと焼結性が乏しいため機械的強度が低くなるからである。また、第2のセラミックス原料および第3セラミックス原料の平均粒子径はそれぞれ10μm以下であることが好ましい。これは、平均粒子径が10μmを越えると、チタン酸アルミニウム粗大粒子の間隙にうまく入り込めず、結果として焼成収縮率が増大してしまうからである。
【0064】
ここで、本発明の排ガスフィルタ1における最大の特徴は、チタン酸アルミニウムの結晶粒子の間隙や表面に、AlとSiOを含有する非晶質粒子が点在していることである。
【0065】
既に説明した製造方法で示したように、この排ガスフィルタ1は第1のセラミックス原料に第2のセラミックス原料を添加することにより作製されている。そして、第2のセラミックス原料である粘土粒子はチタン酸アルミニウム粗大粒子の間隙や表面に存在するため、粘土の添加量を増やしてもある程度までは焼成収縮率に大きな変化はない。焼成により、粘土粒子はチタン酸アルミニウム粗大粒子上で丸く焼結し、突出した状態で非晶質粒子が存在している。
【0066】
格子壁を拡大して観察すると、チタン酸アルミニウム粗大粒子の間隙や表面に存在する非晶質粒子が確認される。また、マイクロクラックが認められる。このマイクロクラックは、チタン酸アルミニウムに特有のもので、結晶異方性により低熱膨張化する材料には必ず存在するものである。
【0067】
格子壁3の化学組成は、前記のように、チタン酸アルミニウムを構成するAlとTiO以外に、焼結や分解抑制に効果のある副成分(SiO、Fe、ZrO、MgO、希土類の酸化物など)を含有する必要がある。これは、AlとTiOのみからチタン酸アルミニウムを合成すると、焼結不十分による強度不足、チタン酸アルミニウムの分解などの問題が起きるからである。
【0068】
また、格子壁3の結晶状態は、チタン酸アルミニウムの結晶粒子と前記副成分が非晶質として存在し、他の結晶粒子を殆ど含まないことが必要である。チタン酸アルミニウム以外の結晶粒子を含有する場合、チタン酸アルミニウムの高温安定性が劣る傾向にあり、750〜1200℃の温度範囲において分解が急激に進行することになるからである。チタン酸アルミニウム質製品の機械的強度を向上させる目的で、ムライト、コランダム、ルチル、コージェライトなど、チタン酸アルミニウム以外に他の結晶粒子を存在させた試みが行われているが、排ガスフィルタとしては高温安定性に問題があり実用できない。従って、排ガスフィルタとして高温安定性を維持しながら機械的強度を向上させるためには、チタン酸アルミニウム以外の結晶粒子を存在させてはならない。
【0069】
本発明における格子壁3は、チタン酸アルミニウムの理論組成(AlとTiOが等モル)に近い範囲からAlがやや多めに構成されている。これによって、AlやTiOの余剰成分でコランダムやルチルは殆ど生成されない。ここで、チタン酸アルミニウム以外の結晶粒子を存在させてはならないと示したが、チタン酸アルミニウムの高温安定性は他の結晶粒子の種類や存在量によって異なる。勿論、他の結晶粒子の存在量が少ないほど、高温安定性はよくなる傾向にある。例えば、コランダムやルチルが微量存在している場合、チタン酸アルミニウムの分解はかなり遅く進行する程度であり、実用可能な範囲である。
【0070】
ここで、図4の格子壁のX線回折図について説明する。図4に示すデータはX線回折法によって求められている。X線回折法は、管球から発生したX線を固定した試料に照射し、反射、散乱したX線を検出器でカウントするものである。試料に結晶質を含有してる場合には、鋭いピークが現れる。このピークは結晶格子の配置によって特有であり、X線回折法においてそのX線回折図(パターン)はほぼ一定である。図4において、縦軸は格子壁3に回折されたX線強度をとり、横軸は走査角度2θである。ここで、図4において、チタン酸アルミニウム粗大粒子による結晶ピーク8、非晶質粒子による非晶質ピーク9が認められる。非晶質ピーク9は結晶ピーク8のように鋭くなく、バックグランドが盛り上がったようなブロードなピークとして現れている。なお、X線回折装置は理学製のものを使用した。
【0071】
格子壁3へチタン酸アルミニウムの分解抑制に効果的な副成分を含有させた場合、排ガスフィルタ1の再生(黒煙の燃焼)時の温度600℃以上に長時間さらされても、チタン酸アルミニウムを分解することを防ぐことができる。このチタン酸アルミニウムの焼結や分解抑制に効果的な副成分には、SiO、Fe、ZrO、MgO、希土類の酸化物などがある。
【0072】
副成分SiO、Feは、チタン酸アルミニウムの焼結や分解抑制に効果がある。ここで、SiOが7wt%よりも少ないと上記の第1〜第4の作用効果を十分に発揮することができず焼成体が崩壊する。一方、13wt%よりも多いと高温下でSiOがクリストバライトに相転移し、熱膨張が増加してしまう。また、Feが1wt%よりも少ないと焼結性が悪く、3wt%よりも多いと耐熱温度が低くなってしまう。
【0073】
本実施の形態では、実験に際して島津製作所製水銀ポロシメーター(マイクロメリティックスポーアライザー9320形)を用いた。この装置は水銀圧入法に基づくもので、排ガスフィルタ1に水銀が1g当り何cc浸透するかを求めたものである。実験は、排ガスフィルタ1の格子壁3を所定の容器に収納し、その容器内に段階的に圧力を変化させて水銀を圧入する。容器内の圧力が低いときは、比較的大きな連通気孔に水銀のみが入り込み、圧力が高いときは小さな連通気孔にまで水銀が入り込む。従って、所定の圧力の時に排ガスフィルタ1の格子壁3に水銀が1g当り何cc入り込むかを測定することによって、所定の気孔径がどの程度存在するか測定することができる。
【0074】
連通気孔の平均気孔径は7〜20μm、気孔率は30〜40%の範囲が適当である。これは、平均気孔径が7μmより小さいと圧力損失が高くなりすぎて、20μmより大きいと黒煙の捕集効率が低下するからである。また、気孔率は30%より小さいと圧力損失が高くなりすぎて、40%より大きいと機械的強度が極端に低くなるからである。
【0075】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0076】
以下の化学組成からなる第1のセラミックス原料に、第2のセラミックス原料である粘土を添加量を変えて秤量し、セラミックス原料(第1のセラミックス原料と第2のセラミックス原料の総量)100重量部に対して、造孔剤として合成樹脂10〜12重量部、造孔剤としてメチルセルロース10〜15重量部を添加し、乾燥状態で混合した。これに、可塑剤としてグリセリン2〜3重量部、水24〜27重量部を添加し、混合・混練して坏土状にした。これをハニカム形状の金型を通して押出成形し、この押出成形体を乾燥後、1500℃で熱処理した。これに、主成分がチタン酸アルミニウムである封止材4を貫通孔2に市松模様になるよう両端面部に交互に充填し、1400℃にて再度熱処理を行い、排ガスフィルタ1を作製した。
【0077】
Al ・・・54wt%
TiO ・・・39wt%
SiO ・・・ 5wt%
Fe ・・・ 2wt%
ここで得られた格子壁3の特性としては、熱膨張係数αが排ガス流路方向ならびに排ガス流路方向と垂直方向の各方向ともα<|2×10−6−1|であり、平均気孔径が約10μm、気孔率が約35%であった。
【0078】
このようにして得られた排ガスフィルタ1について、第1のセラミックス原料、第2のセラミックス原料、第3のセラミックス原料の各配合量、格子壁3の化学組成、成形後の保形性、焼成後の状態、排ガス流路方向の圧縮強度、熱処理前、熱処理後の各結晶状態を(表1)に示す。ここでの熱処理は、高温安定性をみるために、熱処理温度1100℃、熱処理時間500時間で実施した。
【0079】
【表1】
Figure 0003603568
【0080】
試料1〜4は本発明によるもので、第1のセラミックス原料に第2のセラミックス原料、第3のセラミックス原料を添加することで、格子壁の化学組成がAl48〜53wt%、TiO33〜40wt%、SiO7〜13wt%、Fe1〜3wt%になるよう構成されている。なお、第2のセラミックス原料(粘土)の種類はカオリナイト系を使用したが、他の結晶系(例えば、ハロイサイト系)で構成される粘土でも保形性、低焼成収縮率の効果がある。また、第3のセラミックス原料(TiO)の種類はアナターゼ型を使用したが、ルチル型やアナターゼ型とルチル型の混合粉末でも同様な傾向がある。
【0081】
本実施例における焼成は、図5に示すように支持材であるセラミック充填材を用いることなく成形体1aをセットして行った。
【0082】
(表1)に示すように、比較例である試料5の焼成後の状態は、成形体外周部が崩壊して成形体全体にクラックが発生していた。ここで、試料5は、第1のセラミックス原料のみの使用で作製されたものであり、第2のセラミックス原料による保形力がないため、崩壊およびクラックが発生している。また、試料5を除くものは第2のセラミックス原料を充分含有しているので、崩壊およびクラックは発生していない。
【0083】
比較例である試料6は、第1のセラミックス原料100重量部に第2のセラミックス原料を25重量部添加したものである。この試料は、第2のセラミックス原料を充分含有し保形力があるため、焼成後の崩壊やクラックは発生していない。しかし、高温安定性試験においては、熱処理後にクリストバライト(SiO)が析出して高温安定性に劣る。ここで、クリストバライトは高熱膨張を示す材料であるため、格子壁にクリストバライトが析出すると、排ガスフィルタ1の耐熱衝撃性が低くなりクラックが発生しやすくなる。
【0084】
(表1)に蹴る圧縮強度は、排ガスの流路方向で測定した。(表1)に示したデータは、開口率を0に換算した時の排ガス流路方向の圧縮強度であり、10回の平均値である。第1のセラミックス原料に第2のセラミックス原料や第3のセラミックス原料を添加すると、添加量が増加するに従い圧縮強度も向上する。これは、第1のセラミックス原料(粗大粒子)の間隙や表面に第2のセラミックス原料や第3のセラミックス原料が位置し、焼成過程において第1のセラミックス原料同士が強力に焼結するためで、添加量が増加するわりには焼成収縮率の増大は極めて緩やかである。
【0085】
以上のように、試料1〜4の化学組成から構成されるものは、焼成後の崩壊やクラックがなく、機械的強度が向上し、高温安定性に優れている。しかし、チタン酸アルミニウムの化学組成(AlとTiOは等モル)よりTiOが多かったり、粘土成分(AlとSiO)が多かったりすると、高温安定性に劣り耐熱衝撃性が低下する傾向にある。
【0086】
【発明の効果】
以上のように、本発明の排ガスフィルタによれば、排ガスフィルタの焼結性が向上して、良好な高温安定性を得ることができるという有効な効果が得られる。
【0087】
非晶質粒子の化学組成をAlが37〜48wt%、SiOが49〜60wt%とすることにより、焼成収縮率が低く寸法精度のよい排ガスフィルタを得ることができるという有効な効果が得られる。
【0088】
排ガスの流路方向における格子壁の熱膨張係数αを|α|≦2×10−6−1(室温〜800℃)とし、開口率を0に換算した時の圧縮強度σをσ≧150kgf/cmとすることにより、排ガスフィルタの耐熱衝撃性を向上させることができるという有効な効果が得られる。
【0089】
格子壁の連通気孔の平均気孔径を7〜20μm、気孔率を30〜40%とすることにより、黒煙を高効率で捕集でき、圧力損失の上昇率を小さくすることができるという有効な効果が得られる。
【0090】
また、本発明の排ガスフィルタの製造方法によれば、寸法制度の安定化、押出成形時の可塑性の向上、押出成形後の保形性の向上、焼成時の充填材の撤去および焼成後のクラックの発生防止を図ることができるという有効な効果が得られる。
【0091】
第3のセラミックス原料を添加すると、焼成体の強度をさらに向上させることができるという有効な効果が得られる。
【0092】
第1のセラミックス原料の平均粒子径を8〜30μmとすることにより、排ガスフィルタの焼成収縮率を低減することができるという有効な効果が得られる。
【0093】
第2のセラミックス原料の平均粒子径を10μm以下とすることにより、第2のセラミックス原料を第1のセラミックス原料の粒子間隙に存在させて、焼成時の保形性を向上させることができるという有効な効果が得られる。
【0094】
第3のセラミックス原料の平均粒子径を10μm以下とすることにより、第3のセラミックス原料が第1のセラミックス原料と焼結反応し易くなり、機械的強度を向上させることができるという有効な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による排ガスフィルタを示す斜視図
【図2】図1の排ガスフィルタの端面部を示す拡大図
【図3】図1の排ガスフィルタの断面における排ガスの流路を示す概略図
【図4】図1の排ガスフィルタにおける格子壁のX線回折図
【図5】図1の排ガスフィルタを作製する際における成形体の焼成時の状態を示す説明図
【図6】従来の成形体の焼成時の状態を示す断面図
【符号の説明】
1 排ガスフィルタ
2 貫通孔
3 格子壁
4 封止材

Claims (9)

  1. 多孔質セラミックスよりなり多数の連通気孔を有する格子壁に仕切られて排ガスの流路方向に多数形成された貫通孔と、前記貫通孔の一方端である排ガス入口と他方端である排ガス出口の端面部に交互に設けられた封止材とで構成された排ガスフィルタであって、
    前記格子壁の結晶成分はチタン酸アルミニウムのみからなり、
    前記チタン酸アルミニウムを構成する結晶粒子の間隙および表面にはAlとSiOとを含有する非晶質粒子が突出して存在し、
    前記格子壁の化学組成は、Alが48〜53wt%、TiOが33〜40wt%、SiOが7〜13wt%、Feが1〜3wt%であることを特徴とする排ガスフィルタ。
  2. 前記非晶質粒子の化学組成は、Alが37〜48wt%、SiOが49〜60wt%であることを特徴とする請求項1記載の排ガスフィルタ。
  3. 排ガスの流路方向における前記格子壁は、熱膨張係数αが|α|≦2×10−6−1(室温〜800℃)であり、開口率を0に換算した時の圧縮強度σがσ≧150kgf/cmであることを特徴とする請求項1または2記載の排ガスフィルタ。
  4. 前記格子壁は、前記連通気孔の平均気孔径が7〜20μm、気孔率が30〜40%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の排ガスフィルタ。
  5. AlがTiOに対して等モルより3〜6wt%多く配分されたチタン酸アルミニウムからなる主成分と、少なくともSiOを4〜7wt%、Feを1〜3wt%有する副成分とからなる第1のセラミックス原料100重量部を用意し、
    AlとSiOとを主成分として構成される粘土からなる第2のセラミックス原料5〜20重量部を前記第1のセラミックス原料に添加し、
    前記第1のセラミックス原料および前記第2のセラミックス原料を造孔剤、結合剤、可塑剤および水とともに混合してセラミックス坏土を作製し、
    前記セラミックス坏土をハニカム形状に押出成形し、
    得られた押出成形体を加熱、焼結して多孔質セラミックスを形成することを特徴とする排ガスフィルタの製造方法。
  6. AlがTiOに対して等モルより3〜6wt%多く配分されたチタン酸アルミニウムからなる主成分と、少なくともSiOを4〜7wt%、Feを1〜3wt%有する副成分とからなる第1のセラミックス原料100重量部を用意し、
    AlとSiOとを主成分として構成される粘土からなる第2のセラミックス原料5〜20重量部と、TiOからなる第3のセラミックス原料5〜12重量部を前記第1のセラミックス原料に添加し、
    前記第1のセラミックス原料、前記第2のセラミックス原料および前記第3のセラミックス原料を造孔剤、結合剤、可塑剤および水とともに混合してセラミックス坏土を作製し、
    前記セラミックス坏土をハニカム形状に押出成形し、
    得られた押出成形体を加熱、焼結して多孔質セラミックスを形成することを特徴とする排ガスフィルタの製造方法。
  7. 前記第1のセラミックス原料の平均粒子径は8〜30μmであることを特徴とする請求項5または6記載の排ガスフィルタの製造方法。
  8. 前記第2のセラミックス原料の平均粒子径は10μm以下であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の排ガスフィルタの製造方法。
  9. 前記第3のセラミックス原料の平均粒子径は10μm以下であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の排ガスフィルタの製造方法。
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