JP3602918B2 - 高速フレーム溶射方法 - Google Patents
高速フレーム溶射方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3602918B2 JP3602918B2 JP17864096A JP17864096A JP3602918B2 JP 3602918 B2 JP3602918 B2 JP 3602918B2 JP 17864096 A JP17864096 A JP 17864096A JP 17864096 A JP17864096 A JP 17864096A JP 3602918 B2 JP3602918 B2 JP 3602918B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- oxygen
- spraying
- sprayed
- substrate
- speed flame
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Coating By Spraying Or Casting (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般には、燃焼ガスを用いて高速フレーム(火炎)を発生し、この高速フレームを用いて被溶射基材表面に溶射原料粉末を溶射して、被溶射基材表面に被膜を形成する高速フレーム溶射方法に関するものであり、特に、アルミニウム合金、鋳鉄又は鉄鋼系合金にて作製されたエアーコンプレッサーポンプ用斜板の一部或は全部の表面に潤滑性、耐摩耗性に優れた被膜を形成するのに好適に使用される。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばエアーコンプレッサーポンプの斜板は、回転することによって、斜板の両面円周上に当接しているシューを介してピストンを往復運動させる構成とされ、従って、斜板の円周面上をシューが摺動する構成となっている。
【0003】
通常、斜板はアルミニウム合金、鋳鉄又は鉄鋼系合金にて作製され、摺動する相手部品のシューはSUJ2にて形成されており、そのために、潤滑が不十分な状態になると焼付きが発生する。従って、従来、斜板の表面は、Snメッキ或はテフロンコーティングを施し、更に、MoS2 (潤滑剤)を塗布するなどの処理が施されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、Snメッキされた斜板が無潤滑状態になり、しかも高速回転で高負荷がかかる運転条件では、斜板表面の摩耗量が増し、遂には、斜板とシューとが焼付くこととなる。又、Snメッキを行なう場合、10μmのメッキ被膜を形成するのに約30分かかり、且つ、メッキ時には、斜板表面のメッキ不要部位をマスキングする必要があり、マスキング材料を塗布し、又、それを剥がすのに多くの時間を要し、作業性の点で問題がある。
【0005】
同様に、テフロンコーティングされた斜板が無潤滑状態になり、しかも高速回転で高負荷がかかる運転条件では、斜板表面の摩耗量が増す。又、テフロンコーティング時にも、Snメッキの場合と同様に、斜板表面のコーティング不要部位をマスキングする必要があり、このために、上述のように多くの時間を要し、この方法も又、作業性の点で問題がある。
【0006】
現在、本発明者らの知る限りにおいて、材料SUJ2にて作製されているシューに対して、高速回転、高負荷、無潤滑条件において、耐摩耗性、耐焼付性及び耐圧強度を示す、例えばアルミニウム合金、鋳鉄又は鉄鋼系合金にて作製された斜板などのための適当な被覆材料は見当たらない。
【0007】
更に、被膜形成が不要な部位を湿式で簡単にマスキングでき、又、被膜形成後は素早く剥がすことができ、しかも被膜形成(成膜)速度が早い表面改質方法はない。
【0008】
従って、本発明の目的は、高速回転、高負荷、無潤滑条件において、耐摩耗性及び耐焼付性を有する被膜を、高速度で且つ容易に被溶射基材表面に溶射することのできる高速フレーム溶射方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、特に、アルミニウム合金、鋳鉄又は鉄鋼系合金にて作製されたエアーコンプレッサーポンプ用斜板の一部或は全部の表面に潤滑性、耐摩耗性に優れた被膜を形成することのできる高速フレーム溶射方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は本発明に係る高速フレーム溶射方法にて達成される。要約すれば、本発明は、燃焼ガスを用いて高速フレームを発生し、この高速フレームを用いて被溶射基材表面に溶射原料粉末を溶射して、被溶射基材表面に被膜を形成する溶射方法において、前記溶射原料粉末として、Cu=84〜95重量%、Sn=4〜11重量%、Zn=1〜7重量%及び残部不純物からなるCu基青銅合金粉末90〜70体積%と、Mo、MoO3或はポリエステル樹脂粉末10〜30体積%とから成る混合粉末を使用することを特徴とする高速フレーム溶射方法である。好ましくは、前記Cu基鉛青銅合金粉末、及び前記Mo、MoO3或はポリエステル樹脂粉末の粒径は、10〜60μmである。又、本発明の好ましい実施態様によると、前記被溶射基材は、その表面を粗度がμRz=10〜60となるようにグリットブラスト処理を行ない、次いで50〜150℃まで加熱した後、溶射を行ない、前記被溶射基材表面に厚み0.02〜0.5mmの被膜が形成される。又、前記燃焼ガスとして、酸素/プロパン、酸素/プロピレン、酸素/天然ガス、酸素/エチレン、酸素/灯油又は酸素/水素のいずれかの混合ガスを用いてフレーム速度が1000〜2500m/秒、フレーム温度が2200〜3000℃の高速フレームを発生させ、溶射距離は170〜350mmに保持して溶射を行なう。
【0011】
又、本発明の好ましい実施態様によれば、前記被溶射基材表面に形成された被膜は、表面粗度Ra=0.4〜6.0Sに仕上げる。
【0012】
本発明の溶射方法は、アルミニウム合金、鋳鉄又は鉄鋼系合金にて作製されたエアーコンプレッサーポンプ用斜板への溶射に好適に使用される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る高速フレーム溶射方法を図面に則して更に詳しく説明する。
【0014】
図1に、本発明の高速フレーム溶射方法を実施する溶射装置(溶射ガン)1の概略構成を示す。簡単に説明すると、溶射ガン1は、中心部に溶射原料粉末を投入する粉末投入ポート2が配置され、そして、その回りに同中心にて、内方より外方へと、ノズルインサート3、シェル4及びエアキャップ5が配置され、燃焼ガス通路8並びに圧縮空気通路7及び9を形成している。更に、エアキャップ5の外側にはエアキャップボディ6が配置されている。斯る溶射ガン1の構造は当業者には周知であるので、これ以上の詳しい説明は省略する。
【0015】
溶射原料粉末は、窒素ガスなどの不活性ガスで搬送されて前記粉末投入ポート2へと供給され、ポート先端より燃焼炎中に噴出される。一方、燃焼ガス通路8から供給される高圧燃焼ガスは、ノズルインサート3及びシェル4の先端外周部にて燃焼する。この燃焼炎は、圧縮空気に包まれ、高温高圧でエアキャップ5より噴出し円筒状の超高速炎(フレーム)となる。この超高速フレームによりポート2の先端から噴出された溶射原料粉末は、フレーム中心部にて加熱され、溶融され、そして加速されて、溶射ガン1より高速で噴出される。そして、溶射原料液滴は、所定の距離、即ち、170〜350mに配置された所望の基材100へと衝突し、その表面に溶射被膜102を形成する。
【0016】
次に、本発明にて使用される溶射原料粉末について説明する。
【0017】
本発明では、溶射原料粉末としては、硬さ及び引張強度が大とされるCu基青銅合金粉末と、耐焼付性と自己潤滑性を有したMo、MoO3 或はポリエステル樹脂粉末とを含んだ混合粉末が使用される。
【0018】
更に説明すると、Cu基青銅合金は、Cu=84〜95重量%、Sn=4〜11重量%、Zn=1〜7重量%及び残部不純物からなる。不純物としては、通常、Fe、Pb、P、Siなどが挙げられる。
【0019】
Cu基青銅合金にて、Cuが84重量%未満では脆性が起こり、一方、95重量%を超えると、被膜の結合強度の低下が起こる。そこで、このCuの母相にSn及びZnが添加される。従って、Cuの量は、84〜95重量%、好ましくは、86〜95重量%とされる。又、添加されるSnはCuに固溶し、硬さ、引張強度を向上させる。Snが4重量%未満では靭性が低く、又、11重量%を超えると脆いδ相が生成し易くなる。従って、Snの量は、4〜11重量%、好ましくは5〜10重量%にするのが好ましい。又、Znは、溶融した時、Sn酸化物の生成を抑える作用がある。Znが1重量%未満ではSn酸化物の生成を抑える作用が低く、又、7重量%を超えると溶解鋳造が難しくなる、といった問題が起こる。従って、Znの量は、1〜7重量%、好ましくは1〜5重量%にするのが好ましい。
【0020】
上記Mo、MoO3 或はポリエステル樹脂は、自己潤滑性のある材料で、添加量が増えると、耐焼付性が増大する。しかし、これら材料の添加量が多過ぎると被膜の結合強度が損なわれる。従って、高負荷の摺動条件では、Mo、MoO3 或はポリエステル樹脂粉末の量は、混合粉末中に体積比率で10〜30%、好ましくは、10〜20%含まれる。
【0021】
本発明にて使用する粉末状とされる上記Cu基青銅合金、及びMo、MoO3 或はポリエステル樹脂の粒径は、10〜60μmにすることが望ましい。つまり、粒径が60μmを超えると溶射中の粒子温度が低くなり、未溶融粒子が多くなり、そのために緻密な被膜が形成しにくくなる。一方、粒径が10μm未満では、は溶射原料粉末材料の供給性が低下し、連続溶射が難しくなる。従って、粒径は、上述のように、10〜60μmとされ、好ましくは、15〜45μmとされる。
【0022】
本発明の溶射方法にて使用する燃焼ガスとしては、酸素/プロパン、酸素/プロピレン、酸素/天然ガス、酸素/エチレン、酸素/灯油或は酸素/水素のいずれかの混合ガスが好適に用いられ、1000〜2500m/秒のフレーム速度が得られる。フレーム速度が上がると溶射粒子の速度も上がり、被溶射基材との衝突時に粒子の基板への食い込み、言い換えるとアンカーリング効果が高くなるため密着性が向上する。又、粒子の速度が速いと衝突時に運動エネルギーから変換される熱エネルギーが増し、基板の最表面を溶融させるため密着性が向上する。この密着性を確保するのに必要なフレーム速度は1000m/秒以上である。一方、上述のような構成をした現状の溶射ガン1の構造上からフレームの最高速度は2500m/秒と制限される。又、上述のような混合ガスの燃焼ではフレーム温度は2200〜3000℃とされる。
【0023】
例えば、燃焼ガスとして酸素/プロパンの混合ガスを使用した場合の溶射中のガス条件としては、酸素ガスを圧力9〜13Bar、流量150〜400LPM(リットル/分)に、プロパンガスを圧力5〜8Bar、流量50〜120LPMに、圧縮空気を圧力5〜7Bar、流量250〜700LPMにする。又、プロパンガスと酸素ガスの流量比は、燃焼効率が最適なプロパン:酸素=1:3.8〜4.8(標準状態に換算した場合)になるようにする。このプロパンに対する酸素の比率が3.8未満では反応しないプロパン量が多くなりコスト高になる。又、プロパンに対する酸素の比率が4.8を超えると反応しない酸素量が多くなり溶射被膜に酸化物が生成し被膜の劣化が生じる。
【0024】
燃焼ガスとして酸素/プロピレンの混合ガスを使用した場合の溶射中のガス条件としては、酸素ガスを圧力9〜13Bar、流量150〜400LPMに、プロピレンガスを圧力5〜8Bar、流量40〜130LPMに、圧縮空気を圧力5〜7Bar、流量250〜700LPMにする。又、プロピレンガスと酸素ガスの流量比は、燃焼効率が最適なプロピレン:酸素=1:3.5〜4.5(標準状態に換算した場合)になるようにする。このプロピレンに対する酸素の比率が3.5未満では反応しないプロピレン量が多くなりコスト高になる。又、プロピレンに対する酸素の比率が4.8を超えると反応しない酸素量が多くなり溶射被膜に酸化物が生成し被膜の劣化が生じる。
【0025】
燃焼ガスとして酸素/水素の混合ガスを使用した場合の溶射中のガス条件としては酸素ガスを圧力9〜13Bar、流量150〜400LPMに、水素ガスを圧力8〜12Bar、流量500〜900LPMに、圧縮空気を圧力5〜7Bar、流量250〜700LPMにする。又、酸素ガスと水素ガスの流量比は、燃焼効率が最適な酸素:水素=1:2.0〜2.6(標準状態に換算した場合)になるようにする。この酸素に対する水素の比率が2.0未満では反応しない酸素量が多くなり溶射被膜に酸化物が生成し被膜の劣化が生じ、又、この酸素に対する水素の比率が2.6を超えると反応しない水素量が多くなりコスト高になる。
【0026】
本発明にて、溶射時の溶射距離(溶射ガン1と被溶射基材100との距離)は170〜350mmにする。この理由は、170mm未満では粉末が加速、加熱されず、又、350mmを超えると、一旦加速、加熱された粉末の温度及び速度が低下し、基材と粉末粒子、及び粒子間の密着強さが下がり好ましくないからである。
【0027】
なお、被溶射基材100の表面は、密着表面を拡大し、溶射被膜102との密着強さを高く維持するために、被膜形成する前に、溶射すべき基材表面の一部或は全部のスケールを取り除き、予め洗浄化し、粗面化処理を行うことが必要である。粗面化処理は、グリットブラスト処理にて行うのが好適であり、SiC、アルミナなどのグリットを0.5MPa程度の圧力で被溶射基材表面に吹き付けて行なう。粗面化処理後の基材の表面は、表面粗度μRz=10〜60の凹凸を形成するのが好ましい。この凹凸により溶射被膜と基材との接触面積が増しアンカーリング効果、即ち、機械的結合が強化される。ここで、表面粗度が10μRz未満であるとアンカーリング効果が不十分であるため密着強度が低下し、一方、表面粗度が60μRzを超えると被膜の表面粗度が粗くなり後の仕上げ工数が多くなり効果的でない。
【0028】
このようなブラスト処理をした後、被溶射基材を50〜150℃に加熱した後に溶射することが好ましい。温度を50℃以上に上げるのは結露の発生を抑えたり、密着力を増すために必要である。又、基材を150℃以下にするのは基材の熱変形や基材の強度劣化を防ぐために必要である。被膜の厚みは耐摩耗性効果を得るためには0.02mm以上に、また溶射中の剥離や摺動中の熱応力による剥離を防ぐために0.5mm以下にすることが好ましい。又、溶射後の被膜表面粗度は、Ra=0.4〜6.0Sに仕上げ加工するのが好ましい。Raが6.0Sを超えると耐焼付性を損ない、0.4S未満ではコスト高になる。
【0029】
次に、本発明を実施例について更に詳しく説明する。
【0030】
実施例1
溶射原料粉末としては、下記表1に示す組成とされるCu基青銅合金を70体積%、Mo(純度99.7%(不純物として微量のW、Crなど)、粒径10〜60μm)を30体積%含む混合粉末を調製して使用した。
【0031】
被溶射基材としては、外径105mm×内径60mm×厚さ6.5mmのエアーコンプレッサーポンプ用斜板を使用した。斜板の材質はFCD440であった。
【0032】
先ず、前処理として、この斜板表面に、アルミナグリット(粒度#30)を圧力0.5MPaで吹き付け、グリットブラスト処理を行なった。この前処理にて、斜板の表面粗度はμRz=40〜55となった。
【0033】
次いで、図1に示す溶射ガン1を使用して、予熱処理を行なった。このとき、溶射ガン1は、下記に示す溶射条件にて、但し、溶射原料粉末を供給しないで、溶射距離を300mmに保ち、フレームのみを噴射するように作動させ、斜板を150℃に加熱して、斜板表面の湿気、水、水蒸気を除去した。
【0034】
次いで、溶射ガン1を使用して、下記溶射施工条件にて斜板に被膜を形成した。
【0035】
(溶射施工条件)
・燃焼ガス
酸素 :圧力=12Bar、流量=310SLM
プロピレンガス:圧力= 7Bar、流量= 75SLM
空気 :圧力= 7Bar、流量=400SLM
ここで、「SLM」は、標準状態に換算したガス流量(リットル/分(LPM))を意味する。
・フレーム温度 2700℃
・フレーム速度 1500m/秒
・溶射距離 225mm
・溶射原料粉末供給量 70g/分
【0036】
【表1】
【0037】
このようにして得られた斜板表面の溶射被膜の厚さは、0.20mmであり、この被膜表面は、その後、切削加工後バフ研磨にて、被膜厚さ0.12mmとし、且つ表面粗度Ra=0.8〜1.0Sに仕上げた。
【0038】
上述のようにして作製した溶射被膜を有する斜板を用い、この斜板表面にSUJ2からなるシューを面圧330MPaで押圧し、且つ斜板を周速20m/秒で回転することにより、実機摩擦摩耗試験を行なった。又、比較例として従来の表面にSnメッキした斜板(メッキ厚さ0.01mm)を使用し、同じ条件にて実機摩擦摩耗試験を行なった。その結果、従来品のSnメッキのものでは最大摩耗深さが0.05mm以上にまで摩耗し、下地のFCD440が露出して焼付いたのに対し、本発明にて作製した斜板表面の摩耗量は3μmで、耐摩耗性及び耐焼付性に優れていることが分かった。
【0039】
実施例2〜4
溶射原料粉末としては、下記表2に示す組成とされるCu基青銅合金(A)と、下記表2に示すMo、MoO3 或はポリエステル樹脂(B)とを表に示す混合割合にて含む混合粉末を調製して使用した。
【0040】
被溶射基材としては、外径115mm×内径65mm×厚さ6.5mmの寸法を有し、FCD440で作製したリング状の摩擦摩耗用試験片を使用した。
【0041】
先ず、前処理として、この試験片の表面に、アルミナグリット(粒度#30)を圧力0.5MPaで吹き付け、グリットブラスト処理を行なった。この前処理にて、試験片の表面粗度はμRz=40〜55となった。
【0042】
次いで、図1に示す溶射ガン1を使用して、予熱処理を行なった。このとき、溶射ガン1は、下記に示す溶射条件にて、但し、溶射原料粉末を供給しないで、溶射距離を300mmに保ち、フレームのみを噴射するように作動させ、試験片を150℃に加熱して、試験片表面の湿気、水、水蒸気を除去した。
【0043】
次いで、溶射ガン1を使用して、下記溶射施工条件にて試験片に被膜を形成した。
【0044】
(溶射施工条件)
・燃焼ガス
酸素 :圧力=12Bar、流量=200SLM
水素 :圧力=10Bar、流量=880SLM
空気 :圧力= 7Bar、流量=420SLM
ここで、「SLM」は、標準状態に換算したガス流量(リットル/分(LPM))を意味する。
・フレーム温度 2700℃
・フレーム速度 2100m/秒
・溶射距離 225mm
・溶射原料粉末供給量 80g/分
【0045】
【表2】
【0046】
このようにして得られた各試験片表面の溶射被膜の厚さは、0.2mmであった。これら各試験片の被膜表面は、その後、切削加工後バフ研磨にて、被膜厚さ0.10mmとし、且つ表面粗度はRa=0.4〜0.8Sに仕上げた。
【0047】
上述のようにして作製した溶射被膜を有するリング状の摩擦摩耗用試験片を用い、この試験片表面にSUJ2からなるブロックを面圧10MPaで押圧し、且つ試験片を周速1m/秒で回転することにより、被膜の摩耗量を測定した。又、比較例(従来品)として、表面にSnメッキ(メッキ厚さ0.01mm)或はテフロンコーティング(被膜厚さ0.3mm)した同じ形状寸法、材料(FCD440)で作製したリングを使用した。その結果を図2に示す。更に、ブロックにかかる荷重を段階的に上げて焼付き荷重を測定した。その結果を図3に示す。
【0048】
図2及び図3に示す結果から、本発明に従って作製した実施例2、3、4に示す溶射被膜を有するものが、従来品に比べて耐摩耗性及び耐焼付性の点で優れていることが分かった。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の高速フレーム溶射方法は、溶射原料粉末として、Cu=84〜95重量%、Sn=4〜11重量%、Zn=1〜7重量%及び残部不純物からなるCu基青銅合金粉末90〜70体積%と、Mo、MoO3或はポリエステル樹脂粉末10〜30体積%とから成る混合粉末を使用する構成とされるので、
(1)高速回転、高負荷、無潤滑条件において、耐摩耗性、耐焼付性を有する被膜を、高速度で且つ容易に被溶射基材表面に溶射することができる。
(2)特に、アルミニウム合金、鋳鉄又は鉄鋼系合金にて作製されたエアーコンプレッサーポンプ用斜板の一部或は全部の表面に潤滑性、耐摩耗性に優れた被膜を形成することができる。
といった多くの効果を達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高速フレーム溶射方法を実施するための溶射ガンの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の高速フレーム溶射方法にて得られる溶射被膜と、従来品とにおける耐摩耗性を示す図である。
【図3】本発明の高速フレーム溶射方法にて得られる溶射被膜と、従来品とにおける焼付荷重を示す図である。
【符号の説明】
1 溶射ガン
2 粉末投入ポート
3 ノズルインサート
4 シェル
5 エアキャップ
6 エアキャップボディ
7 圧縮空気通路
8 燃焼ガス通路
100 被溶射基材
102 溶射被膜
Claims (6)
- 燃焼ガスを用いて高速フレームを発生し、この高速フレームを用いて被溶射基材表面に溶射原料粉末を溶射して、被溶射基材表面に被膜を形成する溶射方法において、前記溶射原料粉末として、Cu=84〜95重量%、Sn=4〜11重量%、Zn=1〜7重量%及び残部不純物からなるCu基青銅合金粉末90〜70体積%と、Mo、MoO3或はポリエステル樹脂粉末10〜30体積%とから成る混合粉末を使用することを特徴とする高速フレーム溶射方法。
- 前記Cu基鉛青銅合金粉末及び前記Mo、MoO3或はポリエステル樹脂粉末の粒径は、10〜60μmである請求項1の高速フレーム溶射方法。
- 前記被溶射基材は、その表面を粗度がμRz=10〜60となるようにグリットブラスト処理を行ない、次いで50〜150℃まで加熱した後、溶射を行ない、前記被溶射基材表面に厚み0.02〜0.5mmの被膜を形成する請求項1又は2の高速フレーム溶射方法。
- 前記燃焼ガスとして、酸素/プロパン、酸素/プロピレン、酸素/天然ガス、酸素/エチレン、酸素/灯油又は酸素/水素のいずれかの混合ガスを用いてフレーム速度が1000〜2500m/秒、フレーム温度が2200〜3000℃の高速フレームを発生させ、溶射距離は170〜350mmに保持して溶射を行なう請求項1、2又は3の高速フレーム溶射方法。
- 前記被溶射基材表面に形成された被膜は、表面粗度Ra=0.4〜6.0Sに仕上げる請求項1〜4のいずれかの項に記載の高速フレーム溶射方法。
- 前記被溶射基材は、アルミニウム合金、鋳鉄又は鉄鋼系合金にて作製されたエアーコンプレッサーポンプ用斜板である請求項1〜5のいずれかの項に記載の高速フレーム溶射方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17864096A JP3602918B2 (ja) | 1996-06-19 | 1996-06-19 | 高速フレーム溶射方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17864096A JP3602918B2 (ja) | 1996-06-19 | 1996-06-19 | 高速フレーム溶射方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH108230A JPH108230A (ja) | 1998-01-13 |
JP3602918B2 true JP3602918B2 (ja) | 2004-12-15 |
Family
ID=16052001
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP17864096A Expired - Fee Related JP3602918B2 (ja) | 1996-06-19 | 1996-06-19 | 高速フレーム溶射方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3602918B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002257042A (ja) | 2001-02-28 | 2002-09-11 | Toyota Industries Corp | 圧縮機における潤滑面形成対象部品 |
US20070269151A1 (en) * | 2006-05-18 | 2007-11-22 | Hamilton Sundstrand | Lubricated metal bearing material |
JP7384690B2 (ja) * | 2020-02-12 | 2023-11-21 | トーカロ株式会社 | 摺動部品 |
-
1996
- 1996-06-19 JP JP17864096A patent/JP3602918B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH108230A (ja) | 1998-01-13 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US5958522A (en) | High speed thermal spray coating method using copper-based lead bronze alloy and aluminum | |
CA2186172C (en) | Thermally depositing a composite coating on aluminum substrate | |
US5766693A (en) | Method of depositing composite metal coatings containing low friction oxides | |
EP0607779A1 (en) | Thermal spray method for coating cylinder bores for internal combustion engines | |
US3896244A (en) | Method of producing plasma sprayed titanium carbide tool steel coatings | |
JP4648541B2 (ja) | すべり軸受のライニングの形成方法 | |
CN108048784B (zh) | 一种等离子热喷涂制备氮化物增强高熵合金涂层的方法 | |
EP2413006B1 (en) | Piston ring | |
JP3602918B2 (ja) | 高速フレーム溶射方法 | |
US7404841B2 (en) | Composite powder and gall-resistant coating | |
JP2003138367A (ja) | 溶射皮膜、溶射皮膜の形成方法及び溶射原料粉末 | |
JPH108231A (ja) | 高速フレーム溶射方法 | |
CN109913787B (zh) | 一种冶金结合的耐磨耐腐蚀复合涂层的制备方法 | |
RU2319049C1 (ru) | Способ получения антифрикционного покрытия на тонкостенных стальных вкладышах опор скольжения | |
JP2825884B2 (ja) | ピストンリング及びその製造方法 | |
JPH06221438A (ja) | 溶射ピストンリング | |
JPH08325698A (ja) | 連続溶融金属めっき浴中ロール軸部材用被覆材料 | |
JP2000170594A (ja) | シリンダライナとピストンリングとの組合せ | |
JP3133970B2 (ja) | ロープ車 | |
EP0571481B1 (en) | Bearings | |
CN115896547B (zh) | 一种耐磨、高硬、加工性好的涂层材料及其制备方法 | |
JPH11241153A (ja) | 摺動部材のなじみ性溶射被膜層 | |
JPH08225917A (ja) | 連続鋳造用鋳型への溶射方法 | |
JPH09228071A (ja) | 連続鋳造用鋳型への溶射方法及び連続鋳造用鋳型 | |
JPS59133360A (ja) | 溶射材料 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040121 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040302 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040506 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040921 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040927 |
|
R150 | Certificate of patent (=grant) or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071001 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081001 Year of fee payment: 4 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |