JP3601791B2 - サファイヤ板、偏光板付きサファイヤ板及び液晶プロジェクタ装置 - Google Patents

サファイヤ板、偏光板付きサファイヤ板及び液晶プロジェクタ装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、高輝度化を図るサファイヤ板、偏光板付きサファイヤ板及び液晶プロジェクタ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のサファイヤ板を図面に基づいて説明する。図17は、従来のサファイヤ板のインゴットと成長軸の関係を示した模式図である。ベルヌーイ法またはチョコラルスキー法により製造されたサファイヤインゴット10は、成長軸12の方向(図17では左の方向に)に成長する。サファイヤ板13は、成長軸と直角になる方向17に、一定の厚さとなるようにサファイヤインゴット10を切断する。このときのサファイヤ13の切断面は、通常A面[11−20]と呼ばれている。
【0003】
このように製造されたサファイヤ板13に偏光板を貼り付けて、偏光板付きサファイヤ板となる。従来の偏光板付きサファイヤ板は、サファイヤ板13のC軸方向又はC軸方向投影線方向と偏光板の偏光透過軸のなす角度が±2度以内になるように、サファイヤ板13と偏光板を貼り合わせる。
【0004】
また、従来の液晶プロジェクタは、この偏光板付きサファイヤ板を使用していた。液晶プロジェクタ用光学系に用いられるサファイヤ板は通常光変調用液晶モジュールの前後に偏光板を貼り付けた状態で配置される。A面液晶プロジェクタ用サファイヤ板には通常片面に無反射コート、もう片面に偏光板が張られ光変調用液晶モジュールの前後に配置される。(特開平11−337919参照)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のサファイヤ板は、透過面はC軸の影響を受けてしまう。そのため、C軸の方向を透過面に対して正しくあわせなければならないという問題点があった。また、サファイヤ板に偏光板を貼る際に、サファイヤ板のC軸の方向を確認しながら、正確な位置に偏光板を貼らなければならない。ところが、サファイヤ板のC軸は肉眼では見えないので、サファイヤ板のC軸を確認していたのでは、作業効率を損なうという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、C軸と偏光軸とのなす角度に影響されることなく使えるサファイヤ板、偏光板付きサファイヤ板及び液晶プロジェクタ装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決する為の手段】
本発明は、光を透過するための透過面と、単結晶における結晶軸のひとつであるC軸と、を有し、前記透過面と前記C軸とのなす角度が±10度以下であるサファイヤ板である。
【0008】
透過面とC軸とのなす角度を±10度以下とすることにより、サファイヤ板が透過光に対してC軸の影響を受けづらくなる。なお、結晶には純アルミナ単結晶を使用するのが好ましい。
【0009】
次に、本発明は、光を偏光する偏光板と、サファイヤ板と、を有し、前記偏光板から光を入射した場合に、前記偏光板を透過した透過光の光軸が前記サファイヤ板のC軸に対して70度より大きくかつ90度以下となるように、前記偏光板に対して前記サファイヤ板を配置した偏光板付きサファイヤ板である。
【0010】
偏光板を透過した透過光の光軸がサファイヤ板のC軸に対して70度より大きくかつ90度以下となるように、偏光板をサファイヤ板に貼り付けることにより、偏光板により偏光した光がサファイヤ板の結晶方位に起因する透過光減衰の影響を受けづらくなる。
【0011】
次に、本発明は、前記サファイヤ板が光を透過するための透過面と、アルミナ単結晶における結晶軸のひとつであるC軸と、を有し、前記透過面と前記C軸とのなす角度が±10度以下であるサファイヤ板である偏光板付きサファイヤ板である。
【0012】
サファイヤ板が透過面とC軸とのなす角度が±10度以下であることで、透過光がサファイヤ板の結晶方位に起因する透過光減衰の影響を受けなくなる。
【0013】
次に、本発明は、光を偏光する偏光板と、透過面とC軸とのなす角度が±10度以下であるサファイヤ板と、を有し、前記サファイヤ板の少なくとも1つの外形に対し、前記偏光板の1つの偏光軸とがなす角度が±5度以内の偏光板付きサファイヤ板である。
【0014】
サファイヤ板の外形を基準とすることで、偏光板の貼り付けが容易になる。
次に、本発明は、光を偏光する偏光板と、サファイヤ板と、を有し、前記サファイヤ板のC軸又は前記C軸の前記サファイヤ板上への投影線と前記偏板の偏透過軸のなす角度のうち狭角が、2度より大きくかつ5度以下であるか、85度以上かつ88度より小さい偏光板付きサファイヤ板である。言い換えると、サファイヤ板のC軸又は前記C軸の前記サファイヤ板上への投影線と前記偏板の偏透過軸のなす角度が、2度より大きく5度以下か、85度以上88度より小さいか、92度より大きく95度以下か、175度以上178度より小さいか、182度より大きく185度以下か、265度以上268度より小さいか、272度より大きく275度以下か、355度以上358度より小さいか、あるいはこれらの角度に360度の整数倍の角度を加えた角度のいずれか1の範囲内にある偏光板付きサファイヤ板である。なおサファイヤ板は、透過面とC軸とのなす角度がア10度以下であってもよい。
【0015】
そして、本発明は光源と、像を表示し、前記光源からの光を透過する液晶パネルと、前記液晶パネルの少なくとも前あるいは後のいずれか一方に配置し、前記光源からの光を偏光するこれらの偏光板付きサファイヤ板と、を有する液晶プロジェクタ装置である。
【0016】
サファイヤ板の結晶方位に起因する透過光減衰の影響を受けづらくなる偏光板付きサファイヤ板を使用することにより、高輝度で製造容易の液晶プロジェクタ装置を提供することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
<実施の態様1>
図1は、サファイヤ板とC軸との関係を示すものである。サファイヤ板15は、入射光80を透過する2つの光透過面が互いに平行となるように、サファイヤインゴットから切り出す。ここでは、光透過面20が入射側の面である場合について説明する。サファイヤ板15のC軸は、光透過面20を基準にした場合、この基準から入射光側をプラス、サファイヤ板側をマイナスと仮定する。サファイヤ板15のC軸はプラス側に10度、あるいはマイナス側に10度以内の角度の範囲内75に設ける。光透過面20が透過側の光透過面を基準にしても同様である。
【0019】
このように、C軸が光透過面20に対してプラスマイナス10度以下に設けると、入射光80サファイヤ板15を透過する際に、サファイヤ板15の結晶方位に起因する透過光減衰の影響を受けることがなくなる。
【0020】
<実施の態様2>
図2は、倒れ角と光透過面の関係を示した図である。なお、図2は偏光板30をサファイヤ板15に貼り付ける前の状態を表している。
【0021】
入射光80を偏光板30に入射すると、偏光板30の透過軸により一定の方向に変更された偏光光81が透過される。透過された偏光光81は、サファイヤ板15に入射される。このとき、サファイヤ板15のC軸70と偏光光81との角度のうち、小さいほうの角度を「倒れ角」と定義する。そして、この倒れ角25を70度より大きく、かつ90度以下の角度になるように偏光板30をサファイヤ板15に貼り付ける。ここで、使用するサファイヤ板15は、実施の態様1で用いたサファイヤ板を使用してもよい。
【0022】
倒れ角25を70度より大きく、かつ90度以下とすることで、サファイヤ板15を透過する偏光光81がサファイヤ板の結晶方位に起因する透過光減衰の影響を受けずにすむ。測定方法と測定結果は後述する。
【0023】
<実施の態様3>
実施の態様1で説明したサファイヤ板15に偏光板30を貼る際に、サファイヤ板15の外形に対して、偏光軸をプラスマイナス2度以内とする。偏光板をサファイヤ板に貼り付ける際に、基準がC軸でなくサファイヤ板外形となるので、製造しやすくなる。
【0024】
従来、偏光板30を貼る際にサファイヤ板のC軸を確認する方法として、2枚の偏光板の偏光透過軸を直角に交差させ前記偏光板30の間にサファイヤ板15を置いて一方の偏光板の外側からを当てて偏光光の強度を見てサファイヤ板15のC軸方向を見分ける光学式手法が取られて来た。従来の光学的手法では、C軸のプラスマイナスを示す方向及びC軸に対して平行なのか直角なのかも判明出来なかった。また、測定制度もプラスマイナス1度程度でしかなかった。従って、偏光板の貼り付け精度を考慮すると、前記偏光板30の偏光透過軸とサファイヤ板15のC軸との角度差はプラスマイナス2度程度であった。
【0025】
本発明では、サファイヤ板15の結晶軸方向の測定にX線結晶方位測定器を用いてサファイヤ板の外形の正確な結晶方位を数分単位で求める事ができ、その求められた外形の結晶方位を基にサファイヤ板15の加工が行えるので、サファイヤ板15の外形の結晶方位を正確に加工できる。つまり、本発明により、サファイヤ板はその外形でC軸を代行することができる。
【0026】
<実施の態様4>
図3は本発明に係る液晶プロジェクタ装置、特に光学エンジン部分を示す模式図である。
【0027】
光源100から発せられた光300は、第1のダイクロリックミラー110により、反射された光(青色)330と透過した光310に分かれる。第1のダイクロリックミラー110を透過した光310は、第2のダイクロリックミラー120により、反射された光(緑色)360と透過した光(赤色)370に分かれる。第1のダイクロリックミラー110により反射された光330は、反射鏡140によって進路を変更され、光340となり偏光板付きサファイヤ板160に入射される。
【0028】
偏光板付きサファイヤ板160は、サファイヤ板162の入射側の光透過面に無反射コート161を施す。一方、サファイヤ板162の透過側の光透過面に偏光板163を貼り付ける。このとき、偏光板163は、サファイヤ板162のC軸と偏光板163の偏光軸とのなす角度、すなわち倒れ角が70度よりも大きく90度以下にする。
【0029】
光340は偏光板付きサファイヤ板160を透過すると、偏光板163の偏光軸で偏光した光となる。偏光板163で偏光された光340は、青変調用液晶モジュール170を透過して、偏光板付きサファイヤ板180に入射される。偏光板付きサファイヤ板180は、サファイヤ板182の入射側の光透過面に偏光板183を貼り付ける。一方、サファイヤ板182の透過側の光透過面に無反射コートを施す。このとき、偏光板183は、サファイヤ板182のC軸と偏光板183の偏光軸とのなす角度、すなわち倒れ角が70度よりも大きく90度以下にする。偏光板付きサファイヤ板180を透過した光340は、クロスプリズム250により、光軸が直角に曲げられ、光350となる。
【0030】
第2のダイクロリックミラー120により反射された光360は、偏光板付きサファイヤ板190に入射される。偏光板付きサファイヤ板190を透過して光360は、緑変調用液晶モジュール200を透過し、偏光板付きサファイヤ板210に入射される。偏光板付きサファイヤ板ガラス210を透過した光360はクロスプリズム250を透過する。このとき、緑変調用液晶モジュール200の入射側に配置した偏光板付きサファイヤ板190は、青変調用液晶モジュール170の入射側に配置した偏光板付きサファイヤ板160と同様である。また、緑変調用液晶モジュール200の透過側に配置した偏光板付きサファイヤ板210は、青変調用液晶モジュール170の入射側に配置した偏光板付きサファイヤ板180と同様である。
【0031】
第2のダイクロリックミラー120を透過した光370は、第3のダイクロリックミラー130により反射されて、光380となる。光380は、反射板150により反射されて、進路が変更された光390となる、偏光板付きサファイヤ板220に入射される。偏光板付きサファイヤ板220を透過した光390は、赤変調用液晶モジュール230を透過して、偏光板付きサファイヤ板240に入射される。偏光板付きサファイヤ板240を透過した光390は、クロスプリズム250により直角に曲がられて光400となる。
【0032】
このとき、赤変調用液晶モジュール230の入射側に配置した偏光板付きサファイヤ板220は、青変調用液晶モジュール170の入射側に配置した偏光板付きサファイヤ板160と同様である。また、赤変調用液晶モジュール230の透過側に配置した偏光板付きサファイヤ板240は、青変調用液晶モジュール170の入射側に配置した偏光板付きサファイヤ板180と同様である。そして、クロスプリズム250を透過した3つの光350、360、400は同一方向に進む。なお、偏光板付きサファイヤ板160、180、190、210、220、240は実施の態様3で説明した偏光板付きサファイヤ板であってもよい。また、偏光板付きサファイヤ板160、180、190、210、220、240は、実施の態様1で説明したサファイヤ板であってもよい。
【0033】
<成長軸とC軸との関係>
本発明における成長軸とC軸との関係について説明する。図4は、本発明の加工工程を示したものである。
【0034】
実施に際し、液晶プロジェクタに用いられるサファイヤ板の一般的な性能を調査し、特に光学的な特性においてサファイヤ板単体の透過率が91%以上と得た。従って、この値を基準にサファイヤ板の結晶方位や原料製法の違いに因って許される可変範囲を実験によって検証し、その範囲を求めた。
【0035】
本発明は成長軸12とC軸がなす角度が90度、85度、80度、70度となるチョコラルスキー法サファイヤインゴット10を4種類用意し、順にサンプルA、サンプルB、サンプルC、サンプルDとする(工程100)。チョコラルスキー法サファイヤインゴット10上に、C面となす角度がサンプルAは90度、サンプルBは85度、サンプルCは80度、サンプルDは70度をなす成長軸12に平行な基準面をインゴット毎に加工し(工程110)、成長軸12に対して垂直な面で切断する(工程120)。4種類のサファイヤ切断板13を基準となるエッジを一辺とする長方形の板を切り出し(工程120)、サファイヤ板15の4面上下計8面の面取りする(工程130)。4面上下計8面の面取りを行ったサファイヤ板15を上面と下面を同時に研磨する方法(両面同時研磨法)で両面を鏡面状態に仕上げ、両面鏡面サファイヤ板15を作成する(工程140)。サファイヤ板15の加工寸法及び加工精度を図5に示す。本実施例では加工寸法は縦が23.5mm、横が20mm、厚みが0.5mmである。また、4隅に0.1mmで面取りを施す。研磨されたサファイヤは、平行度が5μm以内であり、平坦度も5μm以内の精度を有する。
【0036】
サファイヤ板の上下の両面を同時に研磨することで、研磨面の平行度及び平坦度が5μm以内に押さえられる為に、研磨面つまり光透過面に歪みが少なくなる。歪が少なくなるため、歪みに因る光透過面の結晶方位の狂いが少ない鏡面に仕上ることができる。従って、光透過面20に対してサファイヤインゴット10の成長軸となす角度はほぼ直角となる。ここで、光透過面20に対して入射光が垂直に入射した場合の入射光方向とC軸のなす角度を、倒れ角25と定義する。サファイヤ板の片側全面に、フッ化マクネシウムの単層膜で無反射コート27を施す(工程150)。4種の無反射コート付きサファイヤ板16について分光光度計を用いて透過率を測定する(工程160)。測定条件を図6に示す。波長が700nmから400nmの範囲で測定する。この範囲の波長を、入射角度12度で入射する。このとき、バンドパスは5nm/servoで、スピードは1分間当たり120nmとする。無反射コート付きサファイヤ板16の透過率は、光透過面20に対して90度の角度で、測定用入射光を無反射コート付きサファイヤ板16に当てて、サファイヤ板15と無反射コート27を通過した透過光強度を測定し、入射光強度の比から透過率を求めた。
【0037】
図7は、その結果を平均した倒れ角別透過率変化としてまとめたものである。
【0038】
測定値のばらつきは最大で0.7%ほどあり、誤差としては大きい。しかし、倒れ角が80度以上であれば透過率に若干の違いがあってもお互いに近似しており、また透過率91%を超えた値になっている。最大測定値ばらつき0.7%を考慮に入れて、倒れ角が70度になると透過率が格段に下がる。但し、倒れ角85度と90度のサファイヤインゴット10は同じメーカの製品であるが、倒れ角70度と80度のサファイヤインゴット10に付いては、異なる2社のメーカの製品であるため、結晶性等の違いにより全く同じ条件ではないが、光透過率91%以上のサファイヤ板15の条件は倒れ角が80度以上となる。 入射光が光透過面20に対して垂直に入射する場合、倒れ角が100度でも80度と同じ条件となるので入射光とC軸のなす角度が90度±10度以内、従って、入射面とC軸のなす角度が±10度以内が好ましいとの結果を得た。
【0039】
次に、上記で説明したのと同様に、成長軸12とC軸がなす角度が90度、85度、80度、70度となるチョコラルスキー法サファイヤインゴット10を4種類用意し、順にサンプルA、サンプルB、サンプルC、サンプルDとする(工程10)。チョコラルスキー法サファイヤインゴット10上にC面となす角度がサンプルAは90度、サンプルBは85度、サンプルCは80度、サンプルDは70度をなす成長軸12に平行な基準面をインゴット毎に加工し(工程110)、成長軸12に対して垂直な面で切断する(工程120)。4種類のサファイヤ切断板を基準となるエッジを一辺とする長方形の板を切り出し、サファイヤ板15の4面上下計8面の面取りする(工程130)。面取りしたサファイヤ板15を両面同時研磨法で両面を鏡面状態に仕上げ、光透過面20が両面鏡面状のサファイヤ板15を作成する(工程140)。
【0040】
更に、市販のEFG法サファイヤ材11を用意する(工程210)。EFG法サファイヤ材は、サンプルA面を光透過面20とする材料を2枚の平行な偏光板の間で回転させ、透過光が最大になった角度で偏光板30の偏光軸35と平行な線分をサファイヤ板15上に印を付けて、その線分と平行に切り出したサファイヤ切断材を用意する(工程220)。サファイヤ板15の4面上下計8面の面取りする(工程230)。4面上下計8面の面取りを行ったサファイヤ板15を、上下面を同時に研磨する方法(両面同時研磨法)で両面を鏡面状態に仕上げ、両面鏡面サファイヤ板15を作成する(工程240)。サファイヤ板15の加工寸法及び加工精度は、上記の例と同じ精度を得た(図5参照)。更にサファイヤ板15の片側全面に、フッ化マクネシウムの単層膜で無反射コート27を上記の例と同条件で施す(工程250)。
【0041】
次に、偏光板30の偏光軸が平行になる様に置いた2枚の偏光板30の後ろから白色光を当て、2枚の偏光板30の間にサファイヤ板15を入れ回転させながら透過光強度を測定し、その値を偏光板30とサファイヤ板のC軸の投影方向が0度となる位置の透過光強度と比較した(工程260)。
【0042】
図8は、偏光軸とC軸角度による減衰量測定実験装置の模式図である。減衰量測定実験装置は、光源50とその光源の光度を測る光度計60を一直線上に配置する。光源50と光度計60の間に、2枚の偏光板30、31を置く。このとき、偏光板30の偏光軸35と他方の偏光板31の偏光軸36とを90度に交差させる。さらに、サファイヤ板15を2枚の偏光板30、31の間におく。
【0043】
光源50から出た光37は、偏光板31の偏光軸36を通過することで、一定の方向に偏光される。その偏光された光37はサファイヤ板15を通過し、偏光板30の偏光軸35を通って、光度計60に到達する。サファイヤ板15のC軸70は、光源50と光度計60を結んだ軸を回転中心として回転させる。C軸70と偏光板30、31の偏光軸35、36とがなす角度により、光度計60の値が変わることで、C軸70を測定する。
【0044】
図9は、偏光板とサファイヤ板のC軸の投影方向が0度となる位置の透過強度を100とした時の光強度を回転角度毎に示したものである。この加工方法では簡易測定装置を用いた為に、迷光や外部からの入射光により測定精度が影響を受けた。そのため倒れ角90度、85度、80度では顕著な差が出なかったので、倒れ角90度と70度の場合を記述した。またEGF法で加工したEGF材の場合についても、測定を行った。
【0045】
図9が示す結果において、無反射コート付きサファイヤ板の透過率が概ね93%以下で有ることを考慮に入れると、透過率91%以上を保持する為には回転角が±10度以内に収める必要がある。
【0046】
従って、サファイヤの物理的指標としてサファイヤ板15の外形の一部がC軸に対して±5度以内になるように加工することで、その外形の一部をガイドにサファイヤ板15に偏光板30を貼ることが出来る。このように貼り付けると、2枚の偏光板がそれぞれサファイヤ板15に対して±5度ずれたとしても、全体では±10度以内に収めることができる。外形の一部とは例えばサファイヤ板のエッジ40やC軸70の方向を示す切欠き45等が考えられる。この関係を図10に示す。
【0047】
図10は、サファイヤ板の外形とC軸との関係を示す図である。図10Aは外形形状を基準とした図であり、図10Bは切り欠きを基準とした場合である。図10Aにおいて、サファイヤ板15は四角形をしている。C軸70は外形を構成する4辺の内の1つの辺と平行に設ける。また、図10Bにおいては、サファイヤ板15の外形の一部に面取り45を施す。C軸70はこの面取り45と平行に設ける。回転角±5度以内の場合、実験に使用したサファイヤ板15は、全ての回転角に対して偏光透過光量の変化に同じ傾向が見られた。
【0048】
更に、倒れ90度のサファイヤ板15に対して、角度を大きくして透過光量比を測定した(工程270)。その結果を図11に示す。図11の結果から、倒れ角90度のサファイヤ板15は、C軸と偏光軸とのなす角度を45度、60度及び90度にしたとき、いずれの場合でも、透過光量比が90%以上であった。また、倒れ角90度のEFG法のサファイヤ板15に対して、角度を大きくして透過光量を赤、緑、青に対応する610nm、550nm、450nmの3波長にいて分光光度計を用いて測定した(工程270)。その結果を図14乃至16に示す。
【0049】
図14乃至16は、各波長におけるC軸と偏光透過軸のなす角度での相対透過光量を示した図である。C軸と入射側の偏光透過軸のなす角度を0度、90度、180度及び270度を基準の角度とし、この基準の角度に対して、左回りをプラス方向、右回りをマイナス方向と仮定する。図8の装置を用いたが、2枚の偏光板の偏光透過軸は交差させた。また、透過率は何も入れない状態を基準として、2枚の偏光板の中にサファイヤ板を入れて、C軸と偏光透過軸の角度を変化させたときの値と比較した相対透過率として表した。測定範囲は、C軸と偏光透過軸のなす角を基準角度からプラス方向に20度、また基準角度からマイナス方向に20度とした。
【0050】
図14は、C軸と偏光透過軸のなす角度を0度としたときの図である。図15は、C軸と偏光透過軸のなす角度を90度としたときの図である。図16は、C軸と偏光透過軸のなす角度を180度としたときの図である。なお、C軸と偏光透過軸のなす角度を270度の場合は、図14乃至16と同様であるため、省略した。
【0051】
基準の角度が0度のとき(図14)、C軸と偏光透過軸のなす角度がプラスマイナス5度変化しても、相対透過率はマイナス3%を超えず、実用上問題となることはない。赤色光を除けば、プラスマイナス10度変化しても、問題とはならない。基準の角度が90度のとき(図15)、相対透過率がマイナス3%以内であることを満足するのは、光透過軸のなす角度がマイナス10度からプラス5度の範囲である。そして、基準の角度が180度のとき(図16)、マイナス10度からプラス5度の範囲である。3つの波長の全てが実用上問題とならない、相対透過率がマイナス3%以内であることを満足するには、基準の角度に対して、プラスマイナス5度以内であればよい。もちろん、これらの角度に対して、360度の整数倍の角度を加えても、同様な結果を得ることができる。 更にサファイヤ板15を360度回転させ、目視で透過光量の変化を見た(工程280)。その結果、偏光板の偏光透過軸上で偏光板の下から上に向かうベクトルを想定し、このベクトルとC軸が成す角度と透過光量の関係は90度の倍数で最大となり、90度の倍数に45度を足した角度で最小となった。更にこのベクトルとC軸が成す角度が90度、180度、270度を中心として各角度毎に−20度から+20度の範囲で分光光度計を使って透過光強度を測定すると、偏光透過光の光量は前記のベクトルとC軸が成す角度が0度、90度、180度、270度に於いて−5度から+5度の範囲で同一の透過光量が得られた。
【0052】
図12は、サファイヤ板と液晶モジュールとの位置関係を示した図である。ここで、光軸55は、図面の右から左に向かう方向と仮定する。
【0053】
液晶モジュール90の入射側と透過側に偏光板付きサファイヤ板をそれぞれ配置する。透過側の偏光板付きサファイヤ板は光軸55の方向に対して、入射面に無反射コート27を施す。また、透過面には偏光板30を貼り付ける。
【0054】
一方、透過側の偏光板付きサファイヤ板は光軸55の方向に対して、入射面に偏光板30を貼り付ける。また、透過面には無反射コート27を施す。
【0055】
図13は、倒れ角による透過率と波長の関係を示した図である。この図において、縦軸に透過率、横軸に波長をとり、倒れ角が70度、80度、85度及び90度のときの透過率と波長の関係を表す。倒れ角が70度(グラフ400)のとき、約700nmから約380nmまで波長を変化させると、透過率は約85%から約88%の間で変動する。倒れ角が80度(グラフ410)のとき、透過率は約92%から約88%間で変動する。倒れ角が85度(グラフ420)のとき、透過率は約92%から約90%間で変動する。倒れ角が90度のとき、透過率は約93%から約90%間で変動する。また、倒れ角が80度(グラフ410)、85度(グラフ420)及び90度(グラフ430)の場合、約450nmあたりから透過率は下がる傾向にある。
【0056】
【発明の効果】
本発明は以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0057】
本発明は、透過面とC軸とのなす角度を±10度以下とすることにより、サファイヤ板が透過光に対してC軸の影響を受けづらくなる。
【0058】
また、本発明は、偏光板を透過した透過光の光軸がサファイヤ板のC軸に対して70度より大きくかつ90度以下となるように、偏光板をサファイヤ板に貼り付けることにより、偏光板により偏光した光がC軸の影響を受けることがなくなる。
【0059】
また、本発明は、サファイヤ板が透過面とC軸とのなす角度が±10度以下であることで、透過光がサファイヤ板の結晶方位に起因する透過光減衰の影響を受けなくなる。また、サファイヤ板の外形を基準とすることで、偏光板の貼り付けが容易になる。
【0060】
そして、本発明は、サファイヤ板の結晶方位に起因する透過光減衰の影響の影響を受けづらくなる偏光板付きサファイヤ板を使用することにより、高輝度で製造容易の液晶プロジェクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るサファイヤ板の側面図である。
【図2】入射光とC軸との関係を示す模式図である。
【図3】液晶プロジェクタ装置の模式図である。
【図4】加工工程を表した工程図である。
【図5】サファイヤ板の加工寸法と加工精度を表した図である。
【図6】分光光度計の測定条件を表した図である。
【図7】倒れ角に対する透過率の変化を示した図である。
【図8】偏光軸とC軸角度による減衰量測定実験装置の模式図である。
【図9】透過光の強度比を示した図である。
【図10】外形とC軸との関係を示した図である。
【図11】偏光軸との角度を大きくした場合における透過光量比を表した図である。
【図12】サファイヤ板と液晶モジュールとの位置関係を示した図である。
【図13】倒れ角に対する透過率と波長の関係を示したグラフである。
【図14】C軸と偏光透過軸のなす角度を0度を基準の角度としたとき、各波長におけるC軸と偏光透過軸のなす角度における相対透過光量を示した図である。
【図15】C軸と偏光透過軸のなす角度を90度を基準の角度としたとき、各波長におけるC軸と偏光透過軸のなす角度における相対透過光量を示した図である。
【図16】C軸と偏光透過軸のなす角度を180度を基準の角度としたとき、各波長におけるC軸と偏光透過軸のなす角度における相対透過光量を示した図である。
【図17】従来のサファイヤ板である。
【符号の説明】
10 チョコラルスキー法サファイヤインゴット
11 EFG法サファイヤ板
12 成長軸
13 サファイヤ切断板
15 サファイヤ板
16 無反射コート付きサファイヤ板
20 光透過面
25 倒れ角
27 無反射コート
30 偏光板
35 偏光軸
37 偏光透過軸
40 サファイヤ板のエッジ
45 C軸方向を示す切欠き

Claims (2)

  1. 単結晶における結晶軸のひとつであるC軸を有し且つ入射光が透過する光透過面が互いに平行なサファイヤ板に偏光板を貼り付けた偏光板付きサファイヤ板において、
    前記偏光板を透過した透過光の光軸と前記C軸とのなす角度が70度よりも大きく、かつ90度以下になるように前記偏光板は前記サファイヤ板に対して配置されていること、及び、
    前記サファイヤ板のC軸又は前記C軸の前記サファイヤ板上への投影像と前記偏光板の偏光透過軸のなす角度のうち狭角が2度より大きく且つ5度以下であることを特徴とする偏光板付きサファイヤ板。
  2. 光源と、液晶パネルと、前記液晶パネルの少なくとも前あるいは後のいずれか一方に配置された偏光板付きサファイヤ板を少なくとも具備する液晶プロジェクタ装置において、
    前記偏光板付きサファイヤ板は、請求項1に記載の偏光板付きサファイヤ板であることを特徴とする液晶プロジェクタ装置。
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