JP2004075500A - サファイア、偏光板付きサファイヤ、表示装置及びサファイアの製造方法 - Google Patents
サファイア、偏光板付きサファイヤ、表示装置及びサファイアの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】高精度でしかも安価なサファイヤを提供すること。
【解決手段】所定の角度でC面を有する面220研削する。研削されたC面を有する面220の一部含み、サファイヤインゴット200の成長軸230に平行かつ、水平に研削して基準面1を作成する。透過面は、基準面1に対して所定の角度で切り出す。
【選択図】 図1
【解決手段】所定の角度でC面を有する面220研削する。研削されたC面を有する面220の一部含み、サファイヤインゴット200の成長軸230に平行かつ、水平に研削して基準面1を作成する。透過面は、基準面1に対して所定の角度で切り出す。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
サファイヤ、サファイヤの製造方法及びこれを用いた表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
サファイヤの製法には大きく分けて2通りある。溶解したサファイヤに種結晶を密着させて結晶を成長させる引き上げ法と種結晶の上に溶解したサファイヤを結晶化させる堆積法の2通りである。引き上げ法は緻密な結晶を製造する方法であり、例としてはチョコラルスキー法(CZ法)、やEFG法がある。堆積法は簡易的なサファイヤ製造法であり、結晶品質は一般的に引き上げ法と比べると生産コストが低い事が特徴として上げられる。堆積法の例としてベルヌーイ法がある。ベルヌーイ法で製造されたサファイヤは時計のカバーガラスや宝飾品などで広くに使われており、生産量も安定している。
【0003】
また、従来の表示装置、例えば液晶プロジェクタに用いられる偏光板付きサファイヤ板には、従来結晶性の高いサファイヤが使用されて来た。液晶プロジェクタは当初、その価格が高価であった為により明るくより鮮やかにとその光学性能が重視された。従って、液晶プロジェクタに用いられるサファイヤ板も光学特性を高める為に結晶性の高いサファイヤ素材が用いられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、液晶プロジェクタがホームシアター等の家庭用用途に市場が変化する中で、結晶性の高いサファイヤ素材のコストが液晶プロジェクタの価格を引き下げられない1つの要因となる様になった。従って、液晶プロジェクタ装置に用いられるサファイヤ原料のコストを下げる為には、ベルヌーイ材の導入が考えられるが、従来液晶プロジェクタ用に使われて来たサファイヤ原料と比較すると多結晶性が高い為、液晶プロジェクタ用として使う為には従来の加工及び測定方法を用いる事が出来ない。ベルヌーイインゴットは数多くの単結晶サファイヤの集まりで構成されている為に、各結晶の結晶方位がバラバラでサファイヤ板にした場合も板全体の結晶軸方向を規定出来ないためである。
【0005】
そこで、本発明では、表示装置に適した安価で高精度のサファイヤとこれを用いた表示装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のサファイヤは、所定の角度で研削されたC面を有する面の一部含み、サファイヤインゴットの成長軸に平行かつ、水平に研削された基準面と、前記基準面に対して所定の角度で切り出した透過面と、を有する。
【0007】
本発明のサファイヤは、前記サファイヤインゴットがサファイヤを堆積させて作成された堆積法により作成されたものである。
【0008】
本発明の偏光板付きサファイヤは、上記のサファイヤと、前記サファイヤの光を入射する第1の透過面に取り付けた偏光板とを有する。
【0009】
本発明の偏光板付きサファイヤは、前記第1の透過面と対抗する第2の透過面に反射を防ぐコーティングを施したものである。
【0010】
本発明の表示装置は光源と、前記光源から発射される光を最初に入射する入射側に配置した上記の入射側サファイヤと、前記入射側サファイヤに対して前記光が透過する側に配置した表示素子と、を有する。
【0011】
本発明の表示装置は、前記表示素子の前記光の透過側に配置した上記の透過側サファイアを有する。
【0012】
本発明の表示装置は、前記入射側はサファイヤの透過側に偏光板を貼付し、
前記透過側サファイアの入射側に偏光板を貼付し、前記表示素子が液晶であってもよい。
【0013】
本発明のサファイヤの製造方法は、種結晶から成長軸に沿って成長したサファイヤインゴットから所定の角度傾けてC面を有する面を加工するステップと、 前記C面を有する面の一部を含んで水平で前記成長軸と平行となる基準面を作成するステップと、前記基準面に対して所定の角度傾けて切断するステップと、を有する。
【0014】
本発明のサファイヤの製造方法は、前記サファイヤインゴットがサファイヤを堆積させて作成された堆積法により作成してもよい。
【0015】
【発明の実施の態様】
本発明のサファイヤを図面に基づいて説明する。
【0016】
<実施例1>
図1は、サファイアの製造方法を示す。先ずベルヌーイインゴットを用意する(工程100)。ベルヌーイインゴットの形状を図2に示す。ベルヌーイインゴット200は砲弾型の形状をしている。図2の右端に示した種結晶210と呼ばれるインゴットの結晶方位を決定する部分があり、種結晶210から成長軸230の方向に沿ってインゴット200が成長する。通常、種結晶210の近傍でインゴット200が太くなり始める部分に、1対の平面状の部分220がある。この部分220は一般的にC面の方向を表す部分である。多結晶のベルヌーイインゴット200では平坦部が不明確の場合が多いが、他の部分と比較すると明らかに異なり目視で判断出来る。これをC面表示部220と言う。
【0017】
このC面表示部220の一方が研削用ホイールと平行になる様に、ベルヌーイインゴットを角度冶具に貼り付ける(工程101)。図3は、ベルヌーイインゴット200を角度冶具400に取り付けた状態を示す状態図である。角度治具400の上面である接着面410に、ベルヌーイインゴット200を固定する。角度冶具400上のベルヌーイインゴット200の取り付け角度は、インゴット200に因って個体差があるが、概ね10度が好ましい。
【0018】
次に、C面表示部を研削ホイールで切削し、C面表示部を平坦化し、また明確にする作業を示す(工程102)。図3において、取り付け角度を維持して、研削ホイールを回転させてC面表示部220を平坦化する。更に切削されたC面表示部延長線上の面を成長軸と平行になる様に削り出す(工程103)。図4は、サファイヤインゴット200を成長軸230と平行に研削する状態を示す模式図である。接着面410の角度を0度にして、角度治具400を成長軸230と平行にし、研削ホイール300で研削する。この工程で加工された面を基準面1とする。基準面1は、例えば表示装置の1つである液晶プロジェクタに使用された場合、光透過面に使われる通称A面と呼ばれる面の基準となる。このA面は光透過率が最も高い面である。ベルヌーイインゴット200が複数結晶で構成されているので個々の結晶方位を明確に定義できないが、各結晶のA面方向は成長軸230に対して概ね垂直である。従って、ベルヌーイインゴット200を成長軸230に垂直に切断する事で、光透過面がA面に近い面を得る事ができる。また、ベルヌーイ法サファイヤでは、成長軸230に垂直な面と各結晶のA面とがなす角度は、成長軸230に垂直な面を中心にある程度均等に分布する事が知られている。従って、成長軸230に対して垂直にベルヌーイインゴット200を切断する事で、切断面上にある各結晶のA面方位を切断面に対して一定の範囲に押さえる効果がある。
【0019】
基準面1に対して、インゴット200の反対側に基準面1に平行な基準面2を付加する(工程104)。
【0020】
基準面2をX線結晶方位測定器でC面からのズレ角を測定する(工程105)。測定位置を図6に示す。サファイヤインゴット200の基準面1を5つの部分H11、H12、H13、H14、V1に分ける。基準面2も同様に、5つの部分H21、H22、H23、H24、V2に分ける。X線結晶方位測定器の基準測定角度は、41.68度を用いて測定した。測定の際に測定ピークが複数出る場合があり、測定強度が強い物から順に記述した。測定強度はC面220に近づくに従って大きくなるが、複数のピークが出るので測定面に複数の結晶が存在している事を立証される。但し、結晶面がC面220に対して5度を超えると測定強度が大幅に減少するが、この測定に於いてサファイヤの表面に、C面から5度以上外れた面があるか確認されなかった。
【0021】
次に、基準面1及び2に対して垂直な面をインゴット状に作成する(工程106)。指定された縦及び横の寸法に角材を切り出す(工程107)。この角材の形状を図7に示す。角材700は、成長軸230を長手方向とする直方体である。
次に、結晶の成長軸に対して直角になる様に板材を切り出す(工程108)。板材800の厚みは、用途により変更する(図7参照)。
【0022】
切り出された板材の表面を鏡面加工する(工程109)。鏡面研磨法は通常片面ずつ研磨する片面2回研磨方式と、両面を同時に研磨する両面同時研磨法の2つがある。研磨による表面の歪みを押さえる為、本実施例では両面同時研磨法を用いた(特許願01000621参照)。このサファイヤ板をX線結晶方位測定器でA面に対する角度差を測定する(工程110)。図8は、板材800の形状と測定位置を示す。X線結晶方位測定器の基準測定角度は37.78度を用いて測定した。その結果、複数の測定位置810、820において、約マイナス2度から約マイナス1度以内に収めることができる。測定位置によっては、マイナス1度よりも小さい値を示すところがある。この測定に於いても複数のピークが確認される場合があり、測定面に複数の結晶が存在している事を示している。
【0023】
<実施例2>
次に、本発明のサファイヤを使用した表示装置について説明する。本実施例では、表示装置のうち多く使われている液晶プロジェクタ装置の光学系を想定し、この光学系にベルヌーイ材サファイヤ板を用いた時の使用可能範囲を決定する実験を行った。
【0024】
図9は、液晶プロジェクタ装置の光学系におけるサファイヤ板、偏光板、液晶素子の位置関係を示した図である。なお、図9は液晶装置による光変調装置のみを抜粋したものであり、通常は赤、青、緑と3種の光を分光するダイクロ一クミラーとそれぞれの光に対しての光変調装置及び3つの光を合成するクロスプリズムとからなっている。
【0025】
入射光は入射サファイヤ910を通過してから、サファイヤ板910に貼られた入射偏光板912に於いて、偏光板の偏光透過軸にあった偏派面を持つ光のみが偏光板を通過する。偏光光は液晶素子920を通過し、素子内の液晶の状態によって偏派面が回転させられる光とそうでない光が出来る。液晶による偏派面回転角度は、近年では90度が一般的になっている。液晶素子920を通過した光は出射偏光板931を通過しようとするが、ここでも偏派面が出射偏光板の偏光透過軸に一致した光のみが出射偏光板931を通過できる。出射偏光板931を通過した光は、出射偏光板931が貼られたサファイヤ板930を通過する。これによって、液晶素子920による光変調が可能となる。なお、入射側サファイヤ910の入射側と、出射側サファイヤ930の出射側には、無反射コート911、932を施しておく。無反射コート911、932はサファイヤ板の反射率を高める為に用いられる表面コートである。 多結晶サファイヤ板は、光透過面が結晶方位の異なる複数のサファイヤ単結晶で出来ている為、透過するサファイヤ結晶の向きで偏派面が曲げられる度合いが異なり、それが2枚の偏光板の偏光透過軸を90度に交差させ、その間に多結晶サファイヤ板を入れた場合に、部分的に色の濃淡が出る問題がある。これをモザイク模様と呼んでいる。しかし、本実施例における光変調部分の光学系、つまり入出射の偏光板912の外側にサファイヤ板910が配置されるので、サファイヤ板910を透過する総光量は、偏派面が曲げられる事で減少しなければ良いことになる。
【0026】
次に、ここで用いた表示装置の光学特性を測定してみる。図10は、5つのサファイヤ板サンプルの各波長における相対透過率を表したグラフである。図1に示す加工手順で作成したベルヌーイ製サファイヤ板を、異なる5つのベルヌーイインゴットから各一枚作成し、リファレンスにはCZ法サファイヤを原料としたモザイク模様の全くないサファイヤ板を用い、総透過光の変化を各1つのサファイヤ板から2点を測定した。試料は、本発明の図1で示した方法でベルヌーイインゴットから作成されたサファイヤ板5枚を用い、その番号をAからEとした。各試料ごとに2点を取り、各1及び2とした。また、基準値は、CZ法サファイヤで製造された同じ外形と同じ厚みを持ったサファイヤ板を1枚用い、そのエッジとC軸の成す角度はX線結晶方位測定の結果0.23度であった。測定された変化量は、400nmから700nmの間で、レファレンスに対して1%未満との結論を得た。従って、ベルヌーイ材は総光透過量に於いては、CZ法サファイヤに損色ない事が実証された。
【0027】
次に偏光透過軸とC軸の関係や倒れ角に関する制限は、透過光量が使用に適する偏光透過軸とC軸の関係は、−5度+n*90度以上で+5度+n*90度以下の範囲である(特許出願2002−096720参照)。nは任意の正数である。本実施例で用いたサファイヤ板を、5枚の内から3枚を用いて、偏光板の偏光透過軸とエッジの成す角度が偏光透過光量に与える影響に付いて調査した。調査した波長は、青色の波長450ナノメートル、緑色の波長510ナノメートル、赤色の波長610ナノメートルの3波長を行なった。測定は偏光板の一辺を偏光透過軸に平行に、その他の辺はサファイヤ板の外形と同じ大きさに切った。その偏光板は、サファイヤ板のエッジに対して指定された角度で貼り、それを測定に用いた。
【0028】
図11はベルヌーイ製サファイヤ板のエッジと偏光軸の角度を合わせて貼る時の状態を示す模式図である。サファイヤ1100に対して、偏光板1120を一定の角度1130をもって貼り合わせる。角度1130は、サファイヤ1110の辺(エッジ)と偏光板1120の偏光軸1121とのなす角度とする。接着角度1130は、−20度から+20度の間で可変させ、特に0度プラスマイナス5度の範囲は1度毎に測定した。
【0029】
図12は、その結果をグラフにしたものである。グラフは、角度1130を横軸にとり、透過減衰率を縦軸にとってある。透過光量のリファレンスとして用いた値は、試料毎にエッジ角度と偏光軸角度が0度の時の値を用いた。ベルヌーイサファイヤは多結晶である為、試料に依って透過光率100%の部分に若干の角度差が出るが、偏光板1120の偏光軸1121とサファイヤ板1110のエッジとが成す角度が5度以下の場合はほぼ100%となり、CZ法サファイヤで作成されたサファイヤ板とほぼ同等の結果(特許出願2002−096720参照)を得た。 次に、本実施例の製造工程について説明する。図13は、ベルヌーイインゴットを用意する工程からから研磨したサファイヤ板に偏光板を貼り付けるまでの工程を示したものである。先ずベルヌーイインゴット200を用意する(工程301)。ベルヌーイインゴット200の直径は、作成するサファイヤ板1110の対角線長より2ミリメートル程度大きいものを選ぶ。例えば、サファイヤ板1110の大きさが縦23.5ミリメートル、横20ミリメートルの場合、対角線長が30.85ミリメートルになる。本実施例では、直径33ミリメートルのベルヌーイインゴット200を用いた。
【0030】
次にベルヌーイインゴット200のC面表示部220が研削ホイール300に平行となる様に、ベルヌーイインゴット200を角度冶具400に固定する(工程302)。固定用の接着剤にはラックを使用し、平面研削盤に切削ホイール300に150番のダイヤモンドホイールを装着した設備を使用した。次に角度冶具400を平坦にしてから、研削したC面表示部220の延長上で成長軸230に平行となる様に、ベルヌーイインゴット200の上に基準面1を付ける(工程303)。
【0031】
次に基準面1を基準に、ベルヌーイインゴット200の180度反対側の位置に基準面2を付ける(工程304)。次に基準面1に対して90度になるベルヌーイインゴット200の位置に基準面3を付ける(工程305)。更に基準面3の180度反対側に基準面4を付ける(工程306)。次にベルヌーイインゴット200を成長軸230に対して垂直な面で切断する(工程307)。本実施例では基準面1、2、3及び4が成長軸230に対して平行に加工してある為、基準面1及び基準面3をガイドにして切断をした。切断にはワーイヤーソーを用いた。切断厚みは、加工上がり厚みが0.5ミリメートルを考慮して0.7ミリメートルとした。
【0032】
次に切断されて出来たサファイヤ板32の4基準面をガイドに指定された外形寸法に加工する(工程308)。本実施例では縦23.5ミリメートル、横20.0ミリメートルとした。また、サファイヤ板1110の短辺に対してサファイヤ板1110のC軸が平行になる様にした。次にサファイヤ板1110の面取りを行う(工程309)。本実施例では、ダイヤブラシを用いて面取りを行った。この工程が終わると、nの値を1する(工程351)。
【0033】
次に、サファイヤ板32を研磨する工程に付いて説明する。研磨手法には、片面2回研磨と両面同時研磨の二通りが考えられる。本実施例では片面2回研磨に付いて説明する。先ず、サファイヤ板1110をワーク盤に貼る(工程310)。ワーク盤に接着する接着剤にはラックを使用した。サファイヤ板1110を粗研磨する(工程311)。研磨機は研磨定盤に錫を用いた定盤を使用し、研磨剤には平均粒径20ミクロンの単結晶ダイヤをひまし油に溶いたものを使用した。次にサファイヤ板1110を中間研磨する(工程312)。研磨機は銅定盤を装着したものを、研磨剤には平均粒径5ミクロンのダイヤをひまし油に溶いたものを使用した。次にサファイヤ板32を化学研磨する(工程313)。研磨機にはポリエステル製の研磨パッドを使用し、研磨材は平均粒径40ナノメートルのコロイダルシリカ乳剤を使用した。研磨終了後に中間検査を行う(工程314)。中間検査終了後にサファイヤ1110板をワーク盤から剥がす(工程315)。nの値をチェックし(工程352)、Nの値が1より大きくないときは、nに1を加える(工程310)。剥がしたサファイヤ板1110を裏返してワーク盤に貼る(工程310)。裏返しに貼ったサファイヤ板1110を同じ要領で粗研磨し、(工程311)。中間研磨する(工程312)。その後、化学研磨する(工程313)。更に中間検査を行う(工程314)。後にサファイヤ板1110をワーク盤から剥がす(工程315)。
【0034】
工程316でnが1より大きいときは、サファイヤ板1110を洗浄する(工程316)。洗浄にはガラス磨きを主成分とする洗剤を用いた。最後に完了検査を行う(工程317)。終了検査は外形寸法、表面傷や表面粗さを測定する。特に、サファイヤ板の面内厚みバラツキと平坦度が、サファイヤ板の性能を決める条件となる。
【0035】
次にサファイヤ板の一面に無反射コート911、932を施す(工程318)。無反射コート911、932の種類はマルチ及びシングルの2種類が大半を占めるが、本実施例では弗化マグネシウムの3層のマルチコートを使用した。
【0036】
次に偏光板1120の貼り方に付いて説明する。図14は、偏光板の貼り方を示したフローチャートである。また、図15は、偏光板とサファイヤとを貼り合せるための治具である。図16は、サファイヤと偏光板を貼り合わせた後、貼り合わせ時にできた気泡を取り除く様子を示した図である。
【0037】
偏光板1120は、通常サファイヤ板1110の大きさと比較して若干小さく出来ている。ベルヌーイ法サファイヤから作成されたサファイヤ板1110は、C軸の方向が明確でない為に、測定機でC軸の方向を測定する事が出来ない。本実施例で当初光学式方法でC軸位置を測定する試みをしたが、測定位置でその値が変化し、測定不能であった。従って、ここではサファイヤ板1110のエッジをガイドにして貼り付ける方法を説明する。
【0038】
先ず、サファイヤ板1110を固定する位置出し冶具1530を用意する(工程321)。サファイヤ板1110を位置出し冶具1530の上にセットする(工程322)。この時、無反射コート911、932を施した面は下側にする。偏光板1120用位置合わせ冶具1540をサファイヤ板1110の上に乗せる(工程323)。サファイヤ板1110の上に接着剤を塗布する(工程324)。偏光板1120には接着剤が既に塗布されているものの有るが、近年は紫外線乾燥型接着剤を多用する為に、接着剤は後から塗布する方が一般的である。
【0039】
偏光板1120を所定の大きさに切断する(工程325)。位置出し冶具1530に合わせて、サファイヤ板1110の上に切断した偏光板1120を密着させる(工程326)。ローラー1610を使い、偏光板1120上に均等に力を掛けて、気泡や歪みをなくす(工程327)。はみ出した接着剤を除去する(工程328)。接着剤を乾かし、固化させる(工程329)。本実施例では紫外線乾燥型の接着剤を用いた為に、紫外線照射型の乾燥機を用いた。硬化時間は接着剤に依って異なるので紫外線照射の時間は送りベルトの速度で調節した。サファイヤ板1110は偏光板1120の付加着している面を下にして、乾燥用キャリアに入れて硬化させた。本実施例では完全に固化させる為に、2回通しを実施した。最後に検査を行って貼り付け工程を終了する(工程330)。検査内容は主に気泡の混入や偏光板の剥がれや歪み、接着剤のはみ出し等を検査の対象とした。
【0040】
【発明の効果】
本発明のサファイヤは、高精度でしかも安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサファイヤの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】ベルヌーイサファイヤインゴットの形状を示す。
【図3】ベルヌーイインゴットの角度冶具取り付け状態図である。
【図4】ベルヌーイインゴットの取り付け角度0度状態図である。
【図5】インゴットと基準面の関係を示した図である。
【図6】ベルヌーイインゴット方位測定結果を示した図である。
【図7】インゴットから切り出された角材の状態を示す図である。
【図8】光透過面の結晶方位を示す図である。
【図9】使用頻度が高い光変調回路を示す図である。
【図10】ベルヌーイ材の透過率測定結果を示した図である。
【図11】ベルヌーイサファイヤ板のエッジと偏光軸の角度を示す図である。
【図12】偏光透過特性を表したグラフである。
【図13】ベルヌーイインゴットによるサファイヤ板の製造工程フローチャートである。
【図14】サファイヤ板に偏光板を貼る工程のフローチャートである。
【図15】偏光板接着用位置出し冶具と位置合わせ冶具の模式図である。
【図16】ローラーによる気泡抜きの模式図である。
【符号の説明】
200 サファイヤインゴット
210 種結晶
220 C面を示す平面
230 成長軸
300 切削ホイール
400 角度冶具
800、1110 サファイヤ板
911、932 無反射コート
1120 偏光板
【発明の属する技術分野】
サファイヤ、サファイヤの製造方法及びこれを用いた表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
サファイヤの製法には大きく分けて2通りある。溶解したサファイヤに種結晶を密着させて結晶を成長させる引き上げ法と種結晶の上に溶解したサファイヤを結晶化させる堆積法の2通りである。引き上げ法は緻密な結晶を製造する方法であり、例としてはチョコラルスキー法(CZ法)、やEFG法がある。堆積法は簡易的なサファイヤ製造法であり、結晶品質は一般的に引き上げ法と比べると生産コストが低い事が特徴として上げられる。堆積法の例としてベルヌーイ法がある。ベルヌーイ法で製造されたサファイヤは時計のカバーガラスや宝飾品などで広くに使われており、生産量も安定している。
【0003】
また、従来の表示装置、例えば液晶プロジェクタに用いられる偏光板付きサファイヤ板には、従来結晶性の高いサファイヤが使用されて来た。液晶プロジェクタは当初、その価格が高価であった為により明るくより鮮やかにとその光学性能が重視された。従って、液晶プロジェクタに用いられるサファイヤ板も光学特性を高める為に結晶性の高いサファイヤ素材が用いられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、液晶プロジェクタがホームシアター等の家庭用用途に市場が変化する中で、結晶性の高いサファイヤ素材のコストが液晶プロジェクタの価格を引き下げられない1つの要因となる様になった。従って、液晶プロジェクタ装置に用いられるサファイヤ原料のコストを下げる為には、ベルヌーイ材の導入が考えられるが、従来液晶プロジェクタ用に使われて来たサファイヤ原料と比較すると多結晶性が高い為、液晶プロジェクタ用として使う為には従来の加工及び測定方法を用いる事が出来ない。ベルヌーイインゴットは数多くの単結晶サファイヤの集まりで構成されている為に、各結晶の結晶方位がバラバラでサファイヤ板にした場合も板全体の結晶軸方向を規定出来ないためである。
【0005】
そこで、本発明では、表示装置に適した安価で高精度のサファイヤとこれを用いた表示装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のサファイヤは、所定の角度で研削されたC面を有する面の一部含み、サファイヤインゴットの成長軸に平行かつ、水平に研削された基準面と、前記基準面に対して所定の角度で切り出した透過面と、を有する。
【0007】
本発明のサファイヤは、前記サファイヤインゴットがサファイヤを堆積させて作成された堆積法により作成されたものである。
【0008】
本発明の偏光板付きサファイヤは、上記のサファイヤと、前記サファイヤの光を入射する第1の透過面に取り付けた偏光板とを有する。
【0009】
本発明の偏光板付きサファイヤは、前記第1の透過面と対抗する第2の透過面に反射を防ぐコーティングを施したものである。
【0010】
本発明の表示装置は光源と、前記光源から発射される光を最初に入射する入射側に配置した上記の入射側サファイヤと、前記入射側サファイヤに対して前記光が透過する側に配置した表示素子と、を有する。
【0011】
本発明の表示装置は、前記表示素子の前記光の透過側に配置した上記の透過側サファイアを有する。
【0012】
本発明の表示装置は、前記入射側はサファイヤの透過側に偏光板を貼付し、
前記透過側サファイアの入射側に偏光板を貼付し、前記表示素子が液晶であってもよい。
【0013】
本発明のサファイヤの製造方法は、種結晶から成長軸に沿って成長したサファイヤインゴットから所定の角度傾けてC面を有する面を加工するステップと、 前記C面を有する面の一部を含んで水平で前記成長軸と平行となる基準面を作成するステップと、前記基準面に対して所定の角度傾けて切断するステップと、を有する。
【0014】
本発明のサファイヤの製造方法は、前記サファイヤインゴットがサファイヤを堆積させて作成された堆積法により作成してもよい。
【0015】
【発明の実施の態様】
本発明のサファイヤを図面に基づいて説明する。
【0016】
<実施例1>
図1は、サファイアの製造方法を示す。先ずベルヌーイインゴットを用意する(工程100)。ベルヌーイインゴットの形状を図2に示す。ベルヌーイインゴット200は砲弾型の形状をしている。図2の右端に示した種結晶210と呼ばれるインゴットの結晶方位を決定する部分があり、種結晶210から成長軸230の方向に沿ってインゴット200が成長する。通常、種結晶210の近傍でインゴット200が太くなり始める部分に、1対の平面状の部分220がある。この部分220は一般的にC面の方向を表す部分である。多結晶のベルヌーイインゴット200では平坦部が不明確の場合が多いが、他の部分と比較すると明らかに異なり目視で判断出来る。これをC面表示部220と言う。
【0017】
このC面表示部220の一方が研削用ホイールと平行になる様に、ベルヌーイインゴットを角度冶具に貼り付ける(工程101)。図3は、ベルヌーイインゴット200を角度冶具400に取り付けた状態を示す状態図である。角度治具400の上面である接着面410に、ベルヌーイインゴット200を固定する。角度冶具400上のベルヌーイインゴット200の取り付け角度は、インゴット200に因って個体差があるが、概ね10度が好ましい。
【0018】
次に、C面表示部を研削ホイールで切削し、C面表示部を平坦化し、また明確にする作業を示す(工程102)。図3において、取り付け角度を維持して、研削ホイールを回転させてC面表示部220を平坦化する。更に切削されたC面表示部延長線上の面を成長軸と平行になる様に削り出す(工程103)。図4は、サファイヤインゴット200を成長軸230と平行に研削する状態を示す模式図である。接着面410の角度を0度にして、角度治具400を成長軸230と平行にし、研削ホイール300で研削する。この工程で加工された面を基準面1とする。基準面1は、例えば表示装置の1つである液晶プロジェクタに使用された場合、光透過面に使われる通称A面と呼ばれる面の基準となる。このA面は光透過率が最も高い面である。ベルヌーイインゴット200が複数結晶で構成されているので個々の結晶方位を明確に定義できないが、各結晶のA面方向は成長軸230に対して概ね垂直である。従って、ベルヌーイインゴット200を成長軸230に垂直に切断する事で、光透過面がA面に近い面を得る事ができる。また、ベルヌーイ法サファイヤでは、成長軸230に垂直な面と各結晶のA面とがなす角度は、成長軸230に垂直な面を中心にある程度均等に分布する事が知られている。従って、成長軸230に対して垂直にベルヌーイインゴット200を切断する事で、切断面上にある各結晶のA面方位を切断面に対して一定の範囲に押さえる効果がある。
【0019】
基準面1に対して、インゴット200の反対側に基準面1に平行な基準面2を付加する(工程104)。
【0020】
基準面2をX線結晶方位測定器でC面からのズレ角を測定する(工程105)。測定位置を図6に示す。サファイヤインゴット200の基準面1を5つの部分H11、H12、H13、H14、V1に分ける。基準面2も同様に、5つの部分H21、H22、H23、H24、V2に分ける。X線結晶方位測定器の基準測定角度は、41.68度を用いて測定した。測定の際に測定ピークが複数出る場合があり、測定強度が強い物から順に記述した。測定強度はC面220に近づくに従って大きくなるが、複数のピークが出るので測定面に複数の結晶が存在している事を立証される。但し、結晶面がC面220に対して5度を超えると測定強度が大幅に減少するが、この測定に於いてサファイヤの表面に、C面から5度以上外れた面があるか確認されなかった。
【0021】
次に、基準面1及び2に対して垂直な面をインゴット状に作成する(工程106)。指定された縦及び横の寸法に角材を切り出す(工程107)。この角材の形状を図7に示す。角材700は、成長軸230を長手方向とする直方体である。
次に、結晶の成長軸に対して直角になる様に板材を切り出す(工程108)。板材800の厚みは、用途により変更する(図7参照)。
【0022】
切り出された板材の表面を鏡面加工する(工程109)。鏡面研磨法は通常片面ずつ研磨する片面2回研磨方式と、両面を同時に研磨する両面同時研磨法の2つがある。研磨による表面の歪みを押さえる為、本実施例では両面同時研磨法を用いた(特許願01000621参照)。このサファイヤ板をX線結晶方位測定器でA面に対する角度差を測定する(工程110)。図8は、板材800の形状と測定位置を示す。X線結晶方位測定器の基準測定角度は37.78度を用いて測定した。その結果、複数の測定位置810、820において、約マイナス2度から約マイナス1度以内に収めることができる。測定位置によっては、マイナス1度よりも小さい値を示すところがある。この測定に於いても複数のピークが確認される場合があり、測定面に複数の結晶が存在している事を示している。
【0023】
<実施例2>
次に、本発明のサファイヤを使用した表示装置について説明する。本実施例では、表示装置のうち多く使われている液晶プロジェクタ装置の光学系を想定し、この光学系にベルヌーイ材サファイヤ板を用いた時の使用可能範囲を決定する実験を行った。
【0024】
図9は、液晶プロジェクタ装置の光学系におけるサファイヤ板、偏光板、液晶素子の位置関係を示した図である。なお、図9は液晶装置による光変調装置のみを抜粋したものであり、通常は赤、青、緑と3種の光を分光するダイクロ一クミラーとそれぞれの光に対しての光変調装置及び3つの光を合成するクロスプリズムとからなっている。
【0025】
入射光は入射サファイヤ910を通過してから、サファイヤ板910に貼られた入射偏光板912に於いて、偏光板の偏光透過軸にあった偏派面を持つ光のみが偏光板を通過する。偏光光は液晶素子920を通過し、素子内の液晶の状態によって偏派面が回転させられる光とそうでない光が出来る。液晶による偏派面回転角度は、近年では90度が一般的になっている。液晶素子920を通過した光は出射偏光板931を通過しようとするが、ここでも偏派面が出射偏光板の偏光透過軸に一致した光のみが出射偏光板931を通過できる。出射偏光板931を通過した光は、出射偏光板931が貼られたサファイヤ板930を通過する。これによって、液晶素子920による光変調が可能となる。なお、入射側サファイヤ910の入射側と、出射側サファイヤ930の出射側には、無反射コート911、932を施しておく。無反射コート911、932はサファイヤ板の反射率を高める為に用いられる表面コートである。 多結晶サファイヤ板は、光透過面が結晶方位の異なる複数のサファイヤ単結晶で出来ている為、透過するサファイヤ結晶の向きで偏派面が曲げられる度合いが異なり、それが2枚の偏光板の偏光透過軸を90度に交差させ、その間に多結晶サファイヤ板を入れた場合に、部分的に色の濃淡が出る問題がある。これをモザイク模様と呼んでいる。しかし、本実施例における光変調部分の光学系、つまり入出射の偏光板912の外側にサファイヤ板910が配置されるので、サファイヤ板910を透過する総光量は、偏派面が曲げられる事で減少しなければ良いことになる。
【0026】
次に、ここで用いた表示装置の光学特性を測定してみる。図10は、5つのサファイヤ板サンプルの各波長における相対透過率を表したグラフである。図1に示す加工手順で作成したベルヌーイ製サファイヤ板を、異なる5つのベルヌーイインゴットから各一枚作成し、リファレンスにはCZ法サファイヤを原料としたモザイク模様の全くないサファイヤ板を用い、総透過光の変化を各1つのサファイヤ板から2点を測定した。試料は、本発明の図1で示した方法でベルヌーイインゴットから作成されたサファイヤ板5枚を用い、その番号をAからEとした。各試料ごとに2点を取り、各1及び2とした。また、基準値は、CZ法サファイヤで製造された同じ外形と同じ厚みを持ったサファイヤ板を1枚用い、そのエッジとC軸の成す角度はX線結晶方位測定の結果0.23度であった。測定された変化量は、400nmから700nmの間で、レファレンスに対して1%未満との結論を得た。従って、ベルヌーイ材は総光透過量に於いては、CZ法サファイヤに損色ない事が実証された。
【0027】
次に偏光透過軸とC軸の関係や倒れ角に関する制限は、透過光量が使用に適する偏光透過軸とC軸の関係は、−5度+n*90度以上で+5度+n*90度以下の範囲である(特許出願2002−096720参照)。nは任意の正数である。本実施例で用いたサファイヤ板を、5枚の内から3枚を用いて、偏光板の偏光透過軸とエッジの成す角度が偏光透過光量に与える影響に付いて調査した。調査した波長は、青色の波長450ナノメートル、緑色の波長510ナノメートル、赤色の波長610ナノメートルの3波長を行なった。測定は偏光板の一辺を偏光透過軸に平行に、その他の辺はサファイヤ板の外形と同じ大きさに切った。その偏光板は、サファイヤ板のエッジに対して指定された角度で貼り、それを測定に用いた。
【0028】
図11はベルヌーイ製サファイヤ板のエッジと偏光軸の角度を合わせて貼る時の状態を示す模式図である。サファイヤ1100に対して、偏光板1120を一定の角度1130をもって貼り合わせる。角度1130は、サファイヤ1110の辺(エッジ)と偏光板1120の偏光軸1121とのなす角度とする。接着角度1130は、−20度から+20度の間で可変させ、特に0度プラスマイナス5度の範囲は1度毎に測定した。
【0029】
図12は、その結果をグラフにしたものである。グラフは、角度1130を横軸にとり、透過減衰率を縦軸にとってある。透過光量のリファレンスとして用いた値は、試料毎にエッジ角度と偏光軸角度が0度の時の値を用いた。ベルヌーイサファイヤは多結晶である為、試料に依って透過光率100%の部分に若干の角度差が出るが、偏光板1120の偏光軸1121とサファイヤ板1110のエッジとが成す角度が5度以下の場合はほぼ100%となり、CZ法サファイヤで作成されたサファイヤ板とほぼ同等の結果(特許出願2002−096720参照)を得た。 次に、本実施例の製造工程について説明する。図13は、ベルヌーイインゴットを用意する工程からから研磨したサファイヤ板に偏光板を貼り付けるまでの工程を示したものである。先ずベルヌーイインゴット200を用意する(工程301)。ベルヌーイインゴット200の直径は、作成するサファイヤ板1110の対角線長より2ミリメートル程度大きいものを選ぶ。例えば、サファイヤ板1110の大きさが縦23.5ミリメートル、横20ミリメートルの場合、対角線長が30.85ミリメートルになる。本実施例では、直径33ミリメートルのベルヌーイインゴット200を用いた。
【0030】
次にベルヌーイインゴット200のC面表示部220が研削ホイール300に平行となる様に、ベルヌーイインゴット200を角度冶具400に固定する(工程302)。固定用の接着剤にはラックを使用し、平面研削盤に切削ホイール300に150番のダイヤモンドホイールを装着した設備を使用した。次に角度冶具400を平坦にしてから、研削したC面表示部220の延長上で成長軸230に平行となる様に、ベルヌーイインゴット200の上に基準面1を付ける(工程303)。
【0031】
次に基準面1を基準に、ベルヌーイインゴット200の180度反対側の位置に基準面2を付ける(工程304)。次に基準面1に対して90度になるベルヌーイインゴット200の位置に基準面3を付ける(工程305)。更に基準面3の180度反対側に基準面4を付ける(工程306)。次にベルヌーイインゴット200を成長軸230に対して垂直な面で切断する(工程307)。本実施例では基準面1、2、3及び4が成長軸230に対して平行に加工してある為、基準面1及び基準面3をガイドにして切断をした。切断にはワーイヤーソーを用いた。切断厚みは、加工上がり厚みが0.5ミリメートルを考慮して0.7ミリメートルとした。
【0032】
次に切断されて出来たサファイヤ板32の4基準面をガイドに指定された外形寸法に加工する(工程308)。本実施例では縦23.5ミリメートル、横20.0ミリメートルとした。また、サファイヤ板1110の短辺に対してサファイヤ板1110のC軸が平行になる様にした。次にサファイヤ板1110の面取りを行う(工程309)。本実施例では、ダイヤブラシを用いて面取りを行った。この工程が終わると、nの値を1する(工程351)。
【0033】
次に、サファイヤ板32を研磨する工程に付いて説明する。研磨手法には、片面2回研磨と両面同時研磨の二通りが考えられる。本実施例では片面2回研磨に付いて説明する。先ず、サファイヤ板1110をワーク盤に貼る(工程310)。ワーク盤に接着する接着剤にはラックを使用した。サファイヤ板1110を粗研磨する(工程311)。研磨機は研磨定盤に錫を用いた定盤を使用し、研磨剤には平均粒径20ミクロンの単結晶ダイヤをひまし油に溶いたものを使用した。次にサファイヤ板1110を中間研磨する(工程312)。研磨機は銅定盤を装着したものを、研磨剤には平均粒径5ミクロンのダイヤをひまし油に溶いたものを使用した。次にサファイヤ板32を化学研磨する(工程313)。研磨機にはポリエステル製の研磨パッドを使用し、研磨材は平均粒径40ナノメートルのコロイダルシリカ乳剤を使用した。研磨終了後に中間検査を行う(工程314)。中間検査終了後にサファイヤ1110板をワーク盤から剥がす(工程315)。nの値をチェックし(工程352)、Nの値が1より大きくないときは、nに1を加える(工程310)。剥がしたサファイヤ板1110を裏返してワーク盤に貼る(工程310)。裏返しに貼ったサファイヤ板1110を同じ要領で粗研磨し、(工程311)。中間研磨する(工程312)。その後、化学研磨する(工程313)。更に中間検査を行う(工程314)。後にサファイヤ板1110をワーク盤から剥がす(工程315)。
【0034】
工程316でnが1より大きいときは、サファイヤ板1110を洗浄する(工程316)。洗浄にはガラス磨きを主成分とする洗剤を用いた。最後に完了検査を行う(工程317)。終了検査は外形寸法、表面傷や表面粗さを測定する。特に、サファイヤ板の面内厚みバラツキと平坦度が、サファイヤ板の性能を決める条件となる。
【0035】
次にサファイヤ板の一面に無反射コート911、932を施す(工程318)。無反射コート911、932の種類はマルチ及びシングルの2種類が大半を占めるが、本実施例では弗化マグネシウムの3層のマルチコートを使用した。
【0036】
次に偏光板1120の貼り方に付いて説明する。図14は、偏光板の貼り方を示したフローチャートである。また、図15は、偏光板とサファイヤとを貼り合せるための治具である。図16は、サファイヤと偏光板を貼り合わせた後、貼り合わせ時にできた気泡を取り除く様子を示した図である。
【0037】
偏光板1120は、通常サファイヤ板1110の大きさと比較して若干小さく出来ている。ベルヌーイ法サファイヤから作成されたサファイヤ板1110は、C軸の方向が明確でない為に、測定機でC軸の方向を測定する事が出来ない。本実施例で当初光学式方法でC軸位置を測定する試みをしたが、測定位置でその値が変化し、測定不能であった。従って、ここではサファイヤ板1110のエッジをガイドにして貼り付ける方法を説明する。
【0038】
先ず、サファイヤ板1110を固定する位置出し冶具1530を用意する(工程321)。サファイヤ板1110を位置出し冶具1530の上にセットする(工程322)。この時、無反射コート911、932を施した面は下側にする。偏光板1120用位置合わせ冶具1540をサファイヤ板1110の上に乗せる(工程323)。サファイヤ板1110の上に接着剤を塗布する(工程324)。偏光板1120には接着剤が既に塗布されているものの有るが、近年は紫外線乾燥型接着剤を多用する為に、接着剤は後から塗布する方が一般的である。
【0039】
偏光板1120を所定の大きさに切断する(工程325)。位置出し冶具1530に合わせて、サファイヤ板1110の上に切断した偏光板1120を密着させる(工程326)。ローラー1610を使い、偏光板1120上に均等に力を掛けて、気泡や歪みをなくす(工程327)。はみ出した接着剤を除去する(工程328)。接着剤を乾かし、固化させる(工程329)。本実施例では紫外線乾燥型の接着剤を用いた為に、紫外線照射型の乾燥機を用いた。硬化時間は接着剤に依って異なるので紫外線照射の時間は送りベルトの速度で調節した。サファイヤ板1110は偏光板1120の付加着している面を下にして、乾燥用キャリアに入れて硬化させた。本実施例では完全に固化させる為に、2回通しを実施した。最後に検査を行って貼り付け工程を終了する(工程330)。検査内容は主に気泡の混入や偏光板の剥がれや歪み、接着剤のはみ出し等を検査の対象とした。
【0040】
【発明の効果】
本発明のサファイヤは、高精度でしかも安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサファイヤの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】ベルヌーイサファイヤインゴットの形状を示す。
【図3】ベルヌーイインゴットの角度冶具取り付け状態図である。
【図4】ベルヌーイインゴットの取り付け角度0度状態図である。
【図5】インゴットと基準面の関係を示した図である。
【図6】ベルヌーイインゴット方位測定結果を示した図である。
【図7】インゴットから切り出された角材の状態を示す図である。
【図8】光透過面の結晶方位を示す図である。
【図9】使用頻度が高い光変調回路を示す図である。
【図10】ベルヌーイ材の透過率測定結果を示した図である。
【図11】ベルヌーイサファイヤ板のエッジと偏光軸の角度を示す図である。
【図12】偏光透過特性を表したグラフである。
【図13】ベルヌーイインゴットによるサファイヤ板の製造工程フローチャートである。
【図14】サファイヤ板に偏光板を貼る工程のフローチャートである。
【図15】偏光板接着用位置出し冶具と位置合わせ冶具の模式図である。
【図16】ローラーによる気泡抜きの模式図である。
【符号の説明】
200 サファイヤインゴット
210 種結晶
220 C面を示す平面
230 成長軸
300 切削ホイール
400 角度冶具
800、1110 サファイヤ板
911、932 無反射コート
1120 偏光板
Claims (9)
- 所定の角度で研削されたC面を有する面の一部含み、サファイヤインゴットの成長軸に平行かつ、水平に研削された基準面と、
前記基準面に対して所定の角度で切り出した透過面と、
を有するサファイヤ。 - 前記サファイヤインゴットがサファイヤを堆積させて作成された堆積法により作成された請求項1記載のサファイヤ。
- 請求項1又は2記載のサファイヤと、
前記サファイヤの光を入射する第1の透過面に取り付けた偏光板と、
を有する偏光板付きサファイヤ。 - 前記第1の透過面と対抗する第2の透過面に反射を防ぐコーティングを施した偏光板付きサファイヤ。
- 光源と、
前記光源から発射される光を最初に入射する入射側に配置した請求項1又は2記載の入射側サファイヤと、
前記入射側サファイヤに対して前記光が透過する側に配置した表示素子と、
を有する表示装置。 - 前記表示素子の前記光の透過側に配置した請求項1又は2記載の透過側サファイアを有する請求項5記載の表示装置。
- 前記入射側はサファイヤの透過側に偏光板を貼付し、
前記透過側サファイアの入射側に偏光板を貼付し、
前記表示素子が液晶である請求項6記載の表示装置。 - 種結晶から成長軸に沿って成長したサファイヤインゴットから所定の角度傾けてC面を有する面を加工するステップと、
前記C面を有する面の一部を含んで水平で前記成長軸と平行となる基準面を作成するステップと、
前記基準面に対して所定の角度傾けて切断するステップと、
を有するサファイヤの製造方法。 - 前記サファイヤインゴットがサファイヤを堆積させて作成された堆積法により作成された請求項8記載のサファイヤの製造方法。
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