JP3601587B2 - コンデンサ放電式内燃機関用点火装置 - Google Patents

コンデンサ放電式内燃機関用点火装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルサコイルを用いずに、エキサイタコイルの波形から得た情報に基づいて点火時期を定めるコンデンサ放電式の内燃機関用点火装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンデンサ放電式の内燃機関用点火装置として、内燃機関の回転情報(回転角度情報及び回転速度情報)を得るための専用の信号を発生するパルサコイルを用いずに、点火用のコンデンサを充電するために内燃機関により駆動される磁石発電機内に設けられたエキサイタコイルの出力電圧の波形を利用して機関の回転情報を得るようにしたパルサレス方式のものがある。
【0003】
この種の点火装置は、点火コイルと、該点火コイルの一次側に設けられてエキサイタコイルの一方の半サイクルの出力電圧で充電される点火用コンデンサと、内燃機関の点火時期を演算する点火時期演算手段と、エキサイタコイルの出力電圧を波形整形して、該エキサイタコイルの一方の半サイクルの出力電圧の立上りで立ち上がる矩形波状の基準信号を発生する基準信号発生回路と、該基準信号の立上がりのタイミングを計測開始タイミングとして点火時期演算手段により演算された点火時期の計測を開始し、該点火時期が計測された時に点火信号を発生する点火信号発生手段と、点火信号が発生した時に点火用コンデンサを点火コイルの一次コイルを通して放電させる放電回路とを備えていて、該放電回路を通して行われる点火用コンデンサの放電により点火コイルの二次コイルに点火用高電圧を誘起させる。
【0004】
このような構成をとれば、パルサコイルを設けるための信号発電機を機関に取り付ける必要がないため、機関の構成を簡単にすることができる。
【0005】
従来のこの種の点火装置において、機関を停止したり、機関の過回転を防止したりする際に機関を失火させる方法をとる場合には、エキサイタコイルの両端にダイオードを通してエキサイタ短絡スイッチを設けて、該スイッチを通してエキサイタコイルの一方の半サイクルの出力を短絡することにより点火装置の動作を停止させるようにしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなパルサレス方式の点火装置により点火される機関が定常運転状態にあるときには、エキサイタコイルの負荷がほぼ一定しているため、該エキサイタコイルの一方の半サイクル及び他方の半サイクルの位相関係は常にほぼ一定である。そのため、機関の回転情報を得るための専用の信号発電機を設けずに、エキサイタコイルの出力電圧を波形整形することによりその一方の半サイクルの出力電圧の立上がりで立ち上がる基準信号を発生させて、該基準信号の立上がりを計測開始タイミングとして点火時期の計測を行わせるようにしても、演算された通りの点火時期に点火動作を行わせることができ、機関の運転を安定に行わせることができる。
【0007】
しかしながら、上記のような点火装置において、エキサイタコイルを短絡して機関を失火させた後、機関が回転している間にエキサイタコイルの短絡を解除して点火動作を再開させた場合には、点火動作が再開された際に、点火時期が演算された時期から大幅にずれて、機関の動作が異常になることがあった。
【0008】
例えば、内燃機関により駆動される乗り物において、機関を停止させるために、エキサイタコイルの一方の半サイクルの出力を短絡すると、エキサイタコイルを通して流れる短絡電流により生じる電機子反作用の影響を受けて該エキサイタコイルの一方の半サイクルの期間が長くなり、これにより基準信号の立ち上がりの位相(演算された点火時期の計測を開始するタイミング)が遅れるため、運転者がエキサイタ短絡用スイッチを閉じる操作を行った後、思い直して機関が回転している間に該スイッチを開いたときに、既に点火時期の計測が開始されていると、演算された点火時期から大幅にずれた点火時期に機関が点火されるため、機関が異常な動作をして運転フィーリングが悪くなったり、最悪の場合には機関が破壊したりするおそれがあった。
【0009】
他の目的でエキサイタコイルの一方の半サイクルの出力電圧を短絡して機関を失火させるようにした場合、例えば、機関の過回転を防止するためにエキサイタコイルの一方の半サイクルの出力電圧を短絡することにより機関の回転速度を低下させる方法をとる場合や、原付き自転車においてスタンドが立っている状態での機関の始動を禁止するために、エキサイタコイルの一方の半サイクルの出力を短絡して失火させる方法をとる場合にも、エキサイタコイルの短絡を解除して点火動作を復帰させる時点で同様の問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、機関を失火させた後、機関が回転している間に点火動作を再開させて運転状態に復帰させる際に、機関の点火時期が演算された時期からずれて機関の動作が異常になるのを防止することができるようにしたコンデンサ放電式の内燃機関用点火装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内燃機関により駆動される磁石発電機内に設けられたエキサイタコイルと、点火コイルと、該点火コイルの一次側に設けられてエキサイタコイルの一方の半サイクルの出力電圧で充電される点火用コンデンサと、内燃機関の点火時期を演算する点火時期演算手段と、エキサイタコイルの出力電圧の波形に基づいて定めた計測開始タイミングで点火時期演算手段により演算された点火時期の計測を開始して該点火時期が計測された時に点火信号を発生する点火信号発生手段と、点火信号が発生した時に点火用コンデンサを点火コイルの一次コイルを通して放電させる第1の放電回路とを備えて、第1の放電回路を通して行われる点火用コンデンサの放電により点火コイルの二次コイルに点火用高電圧を誘起させるようにしたコンデンサ放電式内燃機関用点火装置を対象とする。
【0012】
本発明においては、内燃機関の点火動作を停止させる必要があるときに停止指令を発生する停止指令発生手段と、停止指令が発生しているときに点火信号の代りに放電指令信号を発生する放電指令信号発生手段と、放電指令信号が発生した時に点火用コンデンサの電荷を放電させる第2の放電回路とを設けた。
【0013】
ここで第2の放電回路は、該第2の放電回路を通して行われる点火用コンデンサの放電によっては点火コイルの二次コイルに点火用高電圧を誘起させないように構成する。
【0014】
エキサイタコイルの出力電圧の波形に基づいて計測開始タイミングを定めるためには、エキサイタコイルの出力が他方の半サイクルから一方の半サイクルに移行する際に立ち上がり、該一方の半サイクルが終了するまでの間に消滅する基準信号を発生する基準信号発生回路を設けて、該基準信号の立上りのタイミングを計測開始タイミングとするように点火信号発生手段を構成すればよい。
【0015】
上記第2の放電回路は、例えば、放電指令信号が発生したときにオン状態になる放電用スイッチと電流制限素子とを備えて、点火用コンデンサを放電用スイッチと電流制限素子とを通して放電させるように構成することができる。
【0016】
この場合、第2の放電回路は、点火用コンデンサの電荷を放電用スイッチと電流制限素子と点火コイルの一次コイルとを通して放電させるように構成してもよく、点火用コンデンサを点火コイルの一次コイルを通すことなく放電用スイッチ及び電流制限素子を通して放電させるように構成してもよい。
【0017】
点火用コンデンサを電流制限素子を通して放電させるようにすると、第2の放電回路を通して流れる放電電流の時間的変化率が小さくなるため、該放電電流を点火回路の一次コイルに流しても、点火コイルの二次コイルに点火用高電圧(機関の気筒に取り付けられた点火プラグに火花を生じさせることができる高電圧)が誘起することはない。
【0018】
上記のように構成すると、停止指令が与えられている時には、点火コイルの二次コイルに点火用高電圧が誘起しないため、機関を失火させることができる。
【0019】
上記のように構成すると、機関を失火させる際にも点火用コンデンサの充電が行われるため、機関を点火する際も、失火させる際もエキサイタコイルの負荷は同一である。従って、停止指令が与えられて機関を失火させる際のエキサイタコイルの正負の半サイクルの位相関係と、機関の定常運転時(機関を失火させることなく正常に点火動作を行わせて運転する時)のそれとを同一とすることができ、停止指令が与えられていないときも、与えられているときも、点火時期の計測開始タイミングを同一とすることができる。
【0020】
従って、停止指令に応答して機関を一旦失火させた後、点火動作を再開させた際に点火時期が正規の時期からずれて内燃機関の動作が異常になるのを防ぐことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係わる点火装置の構成例を示したもので、同図において1は図示しない内燃機関に取り付けられた磁石発電機、2は磁石発電機1内に設けられたエキサイタコイルである。エキサイタコイル2は、図2(B)に示すように、正の半サイクル(一方の半サイクル)の電圧Ve1と負の半サイクル(他方の半サイクル)の電圧Ve2とからなる交流電圧を機関の回転に同期して出力する。
【0022】
3は一端が共通接続された一次コイル3aと二次コイル3bとを有する点火コイルで、一次コイル3aの他端は接地され、一次コイル3aの両端にはカソードを接地側に向けたダイオード4が接続されている。点火コイルの一次コイルの一端には点火用コンデンサ5の一端が接続され、該コンデンサ5の他端はカソードを該コンデンサ側に向けたダイオード6を通してエキサイタコイル2の一端に接続されている。点火用コンデンサ5の他端と接地間に点火用スイッチを構成するサイリスタ7が、そのアノードを点火用コンデンサ5側に向けた状態で接続されている。
【0023】
8はエキサイタコイル2の一端と接地間に設けられた昇圧回路、9はアノードを接地側に向けた状態でエキサイタコイル2の一端と接地間に設けられた電流帰還用ダイオード、10はカソードが接地され、アノードが電流制限素子としての抵抗11を通して点火用コンデンサ5の他端に接続された放電用スイッチである。
【0024】
昇圧回路8は、例えばエキサイタコイル2が正の半サイクルの出力電圧を発生したときに導通して該エキサイタコイル2に短絡電流を流す昇圧用スイッチと、該エキサイタコイルの正の半サイクルの出力電圧がピークに達した時に昇圧用スイッチを遮断状態にする昇圧用スイッチ制御回路とを備えていて、昇圧用スイッチの遮断によりエキサイタコイル2の短絡電流を遮断して、該エキサイタコイル2に高い電圧を誘起させる。
【0025】
12はマイクロコンピュータで、マイクロコンピュータ12のポートP1 から抵抗13を通してサイリスタ7のゲートに点火信号Viが与えられ、ポートP2 から抵抗14を通してサイリスタ10のゲートに放電指令信号Vdが与えられるようになっている。
【0026】
15はエキサイタコイル2の負の半サイクルの出力電圧を一定の直流電圧に変換する電源回路で、この電源回路は、エキサイタコイル2の負の半サイクルの出力電圧によりダイオードD1 を通して充電されるコンデンサC1 と、コンデンサC1 の両端の電圧が設定値に達して、抵抗R1 及びR2 の直列回路からなる分圧回路によりコンデンサC1 の両端の電圧を分圧して得た検出電圧がツェナーダイオードZDのツェナー電圧を超えた時に導通してコンデンサC1 の充電を停止させるサイリスタTh1と、コンデンサC1 の両端の電圧を入力として一定の直流電圧を出力するレギュレータIC15aと、レギュレータIC15aの出力電圧により充電されるコンデンサC2 とからなり、コンデンサC2 の両端に得られる一定の直流電圧がマイクロコンピュータ12の電源端子やその他の回路の電源端子に与えられている。
【0027】
また16はエキサイタコイル2の出力電圧を波形整形して、マイクロコンピュータ12の割り込み入力端子INP1 及びINP2 にパルス信号を与える波形整形回路である。この波形整形回路においては、エキサイタコイル2の負の半サイクルの電圧Ve が所定のレベルに達した時にトランジスタTR1 がオン状態になり、トランジスタTR2 がオフ状態になって、該トランジスタTR2 のコレクタの電位が上昇する。また電源回路15のサイリスタTh1によりエキサイタコイル2の負の半サイクルの電圧が短絡された時にトランジスタTR1 及びTR2 がそれぞれオフ状態及びオン状態になって、トランジスタTR2 のコレクタの電位が低下する。従って、図2(D)に示したように、エキサイタコイルの負の半サイクルの電圧Ve2が発生するタイミングより僅かに遅れたタイミングでトランジスタTR2 のコレクタにパルス信号Vpが得られる。このパルス信号Vpはマイクロコンピュータ12の1つの割込み信号入力端子に与えられる。マイクロコンピュータ12は、パルス信号Vpの立上りのエッジを内燃機関の低速時の点火時期を定めるための割込み信号INP1 として認識し、パルス信号Vpの立下がりのエッジを外部割込み信号INP2 として認識する。
【0028】
17はエキサイタコイル2の出力電圧を波形整形して、基準信号Vsを発生する基準信号発生回路である。この基準信号発生回路には、エキサイタコイル2が正の半サイクルの電圧を発生したときに流れる電流の帰路を構成するダイオードD2 及びD3 と、ダイオードD2 の両端に順方向電圧降下が生じていない時にオン状態を保ち、ダイオードD2 の両端に順方向電圧降下が生じた時に該順方向電圧降下によりベースエミッタ間が逆バイアスされてオフ状態にされるトランジスタTR3 とが設けられている。
【0029】
基準信号発生回路17は、ダイオードD2 及びD3 を通して電流が流れていて、ダイオードD2 の両端に順方向電圧降下が生じている期間(エキサイタコイル2が正の半サイクルの電圧を出力している期間)トランジスタTR3 をオフ状態にして、該トランジスタTR3 のコレクタに、図2(C)に示すような矩形波状の基準信号Vsを発生させる。この基準信号は、エキサイタコイル2の出力電圧が負の半サイクルから正の半サイクルに移行するタイミングで立上り、該エキサイタコイルの出力電圧が正の半サイクルから負の半サイクルに移行するタイミングで立ち下がる矩形波状の信号である。この基準信号は、マイクロコンピュータ12の他の割り込み信号入力端子に与えれている。マイクロコンピュータ12は、基準信号Vsの立上がりのエッジを割込み信号INP3 として認識する。
【0030】
18は停止指令発生回路で、この回路は、エミッタが電源回路15の出力端子に接続され、コレクタが抵抗R3 を通してマイクロコンピュータ12のポートP3 に接続されたPNPトランジスタTR4 と、該トランジスタTR4 のベースに抵抗R4 を通してアノードが接続されたダイオードD4 とを備えていて、ダイオードD4 のカソードと接地間に押ボタンスイッチからなる停止指令スイッチ19が接続されている。
【0031】
停止指令スイッチ19がオフ状態にあるときには、トランジスタTR4 にベース電流が流れないため、該トランジスタTR4 がオフ状態にあり、マイクロコンピュータ12のポートP3 の電位は低レベルの状態にある。停止指令スイッチ19がオン状態にされると、トランジスタTR4 がオン状態になるため、電源回路15からトランジスタTR4 と抵抗R3 とを通してマイクロコンピュータのポートP3 に電圧が印加される。マイクロコンピュータ12は、このポートP3 の電位の上昇を停止指令信号として認識する。
【0032】
マイクロコンピュータ12は、機関の回転速度が設定値を超えている状態で、基準信号Vsの立上りのエッジを割り込み信号INP3 として認識した時に点火時期計測用タイマをスタートさせる。
【0033】
マイクロコンピュータ12はまた、基準信号Vsの前回の立上りから今回の立上りまでの時間(基準信号の発生周期で、クランク軸が一定の回転角度を回転するのに要する時間)Tsを回転速度計測時間として読み込んで、該回転速度計測時間Tsから機関の回転速度を演算する。
【0034】
マイクロコンピュータ12はまた、演算された機関の回転速度に対して点火時期を演算する。この点火時期は、基準信号Vsが立上った時のクランク軸の回転角度位置から点火時期に相当する回転角度位置まで機関が回転する間に点火時期計測用タイマが計数すべきクロックパルスの計数値の形で演算される。
【0035】
マイクロコンピュータ12は、基準信号Vsの立上りのエッジを認識した時に点火時期計測用タイマに点火時期を求めるための計数値をセットして該タイマをスタートさせる。マイクロコンピュータ12は、点火時期計測用タイマがセットされた計数値の計数を完了した時にポートP1 から点火信号Viを発生させて、該点火信号をサイリスタ7に与える。
【0036】
マイクロコンピュータ12はまた、停止指令スイッチ19が閉じられてポートP3 に停止指令信号が与えられた時に、ポートP1 から点火信号Viを出力する代りに、該点火信号Viが発生するタイミングと同じタイミングでポートP2 から放電指令信号Vdを出力する。この放電指令信号Vdはサイリスタ10に与えられる。
【0037】
機関の始動時のように、機関の回転速度が低い時には、機関の回転速度が安定せず、機関の行程変化によりクランク軸の各回転角度位置における回転速度が細かく変動するため、マイクロコンピュータにより演算された点火時期を点火時期計測用タイマにより正確に検出することが困難になる。そのため、機関の回転速度が低い時には、マイクロコンピュータにより演算された点火時期に点火動作を行わせるのではなく、予め設定した一定の回転角度位置で点火動作を行わせるようにするのが好ましい。図示の例では、機関の回転速度が設定値未満の時に、マイクロコンピュータがパルス信号Vp の立上りのエッジを割込み信号INP1 として認識した時の時刻を点火時期とし、該点火時期にポートP1 からサイリスタ7に点火信号Viを与えて点火動作を行わせる。
【0038】
点火コイル3の二次コイル3bには機関の気筒に取り付けられた点火プラグ20が接続されている。
【0039】
図1に示した点火装置においては、エキサイタコイル2−ダイオード6−点火用コンデンサ5−ダイオード4及び点火コイルの一次コイル3a−ダイオードD2 及びD3 −エキサイタコイル2の閉回路により、点火用コンデンサ5の充電回路が構成され、点火用コンデンサ5はエキサイタコイル2が正の半サイクルの出力電圧を発生したときにこの充電回路により図示の極性に充電される。
【0040】
また点火用コンデンサ5−サイリスタ7−点火コイルの一次コイル3a−点火用コンデンサ5の閉回路により、点火信号Viが発生した時に点火用コンデンサ5を点火コイル3の一次コイルを通して放電させる第1の放電回路が構成され、点火用コンデンサ5−抵抗(電流制限素子)11−サイリスタ10−一次コイル3a−点火用コンデンサ5の閉回路により、放電指令信号Vdが発生した時に点火用コンデンサ5の電荷を放電させる第2の放電回路が構成されている。
【0041】
図1に示した点火装置において、機関が運転されている時には、エキサイタコイル2が正負の半サイクルの電圧Ve1及びVe2を発生し、正の半サイクルの電圧Ve1が発生したときに、昇圧回路8がエキサイタコイル2に短絡電流を流す。昇圧回路8は、エキサイタコイルの正の半サイクルの出力電圧Ve1がピークに達した時にそれまで流れていた短絡電流を遮断するため、エキサイタコイル2には、図2(B)に示すように高い電圧Vemが誘起する。この電圧はダイオード6を通して点火用コンデンサ5に印加されるため、該点火用コンデンサ5が充電され、コンデンサ5の両端の電圧Vcは図2(F)に示すようにほぼ電圧Vemまで上昇する。
【0042】
マイクロコンピュータ12は基準信号Vsの各立上りから次の立上りまでの時間Tsを回転速度計測時間として該時間Tsから機関の回転速度を演算し、演算した回転速度に対して点火時期を演算する。マイクロコンピュータはまた、基準信号Vsの立上りを検出する毎に点火時期計測用タイマをスタートさせて演算した点火時期を計測し、該点火時期の計測が完了した時に図2(E)のように点火信号Viを発生する。この点火信号Viはサイリスタ7に与えられるため、該サイリスタ7が導通して点火用コンデンサ5の電荷を点火コイルの一次コイル3aを通して放電させる。これにより点火コイルの二次コイル3bに点火用高電圧V2 (図2H)が誘起する。この高電圧は点火プラグ20に印加されるため、該点火プラグ20に火花が生じて機関が点火され、その回転が維持される。
【0043】
機関を停止させるため、図2に示した時刻t1 で停止指令スイッチ19が閉じられると、前述の動作により同図(A)に示したように、マイクロコンピュータ12のポートP3 の電位が上昇して高レベル(Hレベル)になる(マイクロコンピュータ12に停止指令が与えられる)。このときマイクロコンピュータ12は、演算した点火時期が検出された時にポートP1 からサイリスタ7に点火信号Viを与える代わりに、図2(G)に示すように、点火信号Viの発生タイミングと同じタイミングでポートP2 から放電指令信号Vdを発生させ、該放電指令信号をサイリスタ10に与える。したがって、停止指令が与えられた時には、点火用コンデンサ5の電荷が抵抗11とサイリスタ10と点火コイル3の一次コイル3aとを通して(第2の放電回路を通して)放電する。このとき一次コイル3aを流れる放電電流は抵抗11により制限され、図2(F)に示すように該放電電流I1 の時間的変化率dI1 /dtが小さくなるため、図2(H)に示すように、点火コイルの二次コイル3bには、ほとんど電圧が誘起しないか、または誘起したとしても、その誘起電圧のレベルは、点火プラグ20に火花を生じさせることができるレベルには達しない。このように、停止指令が与えられたときには、点火コイルの二次コイルに点火用高電圧が誘起しないため、機関は失火状態になる。この状態を放置すると、機関はやがて停止する。
【0044】
停止指令を与えた後、機関が回転している間に、例えば図2(A)に示した時刻t2 において停止指令スイッチ19が開かれると、マイクロコンピュータ12のポートP3 の電位が低レベル(Lレベル)になるため、マイクロコンピュータ12は、停止指令が解除されたと判断してポートP2 からの放電指令信号Vdの出力を停止し、演算された点火時期を検出した時に、ポートP1 から点火信号Viを出力する。したがって、点火動作が再開され、機関の回転が維持される。
【0045】
上記の例では、基準信号Vsの立上りのエッジを検出した時に、点火時期計測用タイマーをスタートさせるようにしたが、パルス信号Vpの立上りのエッジを検出した時に点火時期計測用タイマーをスタートさせるようにし、パルス信号Vpの立下がりのエッジを検出した時の時刻を低速時の点火時期としてもよい。このように構成する場合の各部の電圧波形を図3に示した。
【0046】
パルス信号Vpの立上りのエッジが検出されたときに点火時期計測用タイマーをスタートさせる場合には、マイクロコンピュータ12にパルス信号Vpの立上りのエッジを割込み信号INP2 として認識させ、パルス信号Vpの立下りのエッジを割込み信号INP1 として認識させる。また基準信号Vsの立上りのエッジを割込み信号INP3 として認識させる。
【0047】
この場合、マイクロコンピュータ12は、図2に示した例の場合と同様に、割込み信号INP3 を認識する毎に基準信号Vsの前回の立上りから今回の立上りまでの時間(タイマの計数値)Tsを読み込んで、この時間Tsから機関の回転速度を演算し、演算した回転速度に対する点火時期を演算する。この点火時期は、パルス信号Vpが立ち上がった時のクランク軸の回転角度位置から点火時期に相当する回転角度位置まで機関が回転するまでの間に点火時期計測用タイマが計数すべきクロックパルスの計数値の形で演算される。
【0048】
マイクロコンピュータ12は、機関の回転速度が設定値を超えている状態でパルス信号Vpの立ち上がりのエッジが検出されて割込み信号INP2 が発生した時に点火時期計測用タイマーに上記計数値をセットして該タイマーをスタートさせ、点火時期計測用タイマーがセットされた計数値を計数した時にポートP1 から点火信号Viを出力する。
【0049】
停止指令スイッチ19が閉じられてポートP3 に停止指令信号が与えられた時に、ポートP1 から点火信号Viを出力する代りに、該点火信号Viが発生するタイミングと同じタイミングでポートP2 から放電指令信号Vdを出力させる点は前記の例と同様である。
【0050】
機関の始動時には、パルス信号Vpの立下りのエッジが割込み信号INP1 として認識されたときにポートP1 から点火信号Viを発生させる。
【0051】
参考のため、図1に示した点火装置に相当する従来例を図4に示し、図4に示した点火装置の各部の電圧波形を図4に示した。
【0052】
図4に示した点火装置においては、図1に示された停止指令発生回路18が設けられておらず、代りに、エキサイタコイル2の一端と接地間にダイオードD5 を通して停止指令スイッチ19が接続されている。また図4に示した従来の点火装置では、図1の点火装置に設けられていたサイリスタ10と抵抗11及び14からなる第2の放電回路が設けられていない。その他の点は、図1に示した点火装置と同様に構成されている。
【0053】
図4に示した点火装置において、図5(A)に示したように、時刻t1 で停止指令スイッチ19が閉じられると、エキサイタコイル2の正の半サイクルの出力電圧がダイオードD5 と停止指令スイッチ19とを通して短絡されるため、エキサイタコイル2の誘起電圧が零になり、点火用コンデンサ5が充電されなくなる。エキサイタコイル2の正の半サイクルの出力電圧が短絡されると、短絡電流により生じる電機子反作用によりエキサイタコイルの正の半サイクルの期間が長くなるため、エキサイタコイル2の出力電圧の次の正の半サイクルの立上がりが遅れる。時刻t3 で停止指令スイッチ19が開かれると、エキサイタコイルの短絡が解除されるため、エキサイタコイルの正の半サイクルの立上がりの位相は元の状態に復帰する。そのため、停止指令スイッチ19を閉じる前と閉じた後とでは、機関の回転速度が同じであったとしても、回転速度計測時間(基準信号の各立上りから次の立上りまでの時間)に差が生じる。
【0054】
即ち、図5に示した例では、停止指令スイッチの開閉により機関の回転速度に変化が生じなかったとしても、同図(C)に示した回転速度計測時間T1 ,T2 ,T3 に差が生じ、回転数の演算値と実際の回転数との間に差が生じる。またエキサイタコイルの正の半サイクルの出力電圧が短絡されているときには、基準信号Vsの立上がりのタイミング(点火時期の計測を開始するタイミング)が遅れるため、停止指令スイッチ19を開いたときに、既に点火時期の計測が開始されていると、適正な点火時期から大幅にずれた時期に点火用高電圧V2 ´が発生することになる。このように点火時期が適正な時期から大幅にずれると、機関が異常な動作をして運転フィーリングが悪くなることがあり、最悪の場合には機関が破壊するおそれがある。
【0055】
これに対し、本発明のように構成すると、機関を失火させる際にも点火用コンデンサ5の充電が行われるため、機関を点火する際も、失火させる際もエキサイタコイルの負荷は同一である。従って、停止指令が与えられて機関を失火させる際のエキサイタコイル2の正負の半サイクルの位相関係と、機関の定常運転時(機関を失火させることなく正常に点火動作を行わせて運転する時)のそれとを同一とすることができ、停止指令が与えられていないときも、与えられているときも、回転速度の演算値、及び点火時期の計測開始タイミング(基準信号Vsが立ち上がるタイミング)を同一とすることができる。
【0056】
従って、停止指令に応答して機関を一旦失火させた後、点火動作を再開させた際に点火時期が適正な時期からずれて内燃機関の動作が異常になるのを防ぐことができる。
【0057】
図1に示した例では、内燃機関を停止させるために停止指令スイッチ19を設けて、該停止指令スイッチを閉じた時にマイクロコンピュータ12に停止指令信号を与えるようにしたが、内燃機関の回転速度を検出して、検出した回転速度が設定値を超えた時に機関を失火させることにより機関の過回転を防止する場合等にも本発明を適用することができる。
【0058】
図1に示した例では、内燃機関を失火させる際に、点火用コンデンサ5の電荷を放電用サイリスタ10と抵抗11と点火コイルの一次コイル3aとを通して放電させるようにしたが、点火用コンデンサ5を点火コイルの一次コイルを通さずに放電させるようにすることもできる。例えば、図1において、サイリスタ10と抵抗11との直列回路を点火用コンデンサ5に対して並列に接続して、点火用コンデンサ5を抵抗11とサイリスタ10とを通して放電させるようにしてもよい。
【0059】
上記の例に示したように、エキサイタコイル2の誘起電圧を昇圧する昇圧回路8を設けると、エキサイタコイル2として巻数が少ないものを用いてしかも点火用コンデンサを充電するために必要な高い電圧(200V以上の電圧)を得ることができるため、磁石発電機を小形に構成することができるが、本発明はこのように昇圧回路を設ける場合に限定されるものではなく、エキサイタコイル2として巻数が多いものを用いて、昇圧回路を設けることなくエキサイタコイル2から点火用コンデンサを充電するために必要な電圧を得るようにする場合にも本発明を適用することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、機関を失火させる際にも点火用コンデンサを充電するようにしたため、機関を点火する際も、失火させる際もエキサイタコイルの負荷を同一とすることができ、機関の点火動作を停止させることを指令する停止命令が与えられて機関を失火させる際のエキサイタコイルの正負の半サイクルの位相関係と、機関の定常運転時のそれとを同一とすることができる。したがって、停止指令が与えられていないときも、与えられているときも、点火時期の計測開始タイミングを同一とすることができ、機関を一旦失火させた後、点火動作を再開させた際に点火時期が正規の時期からずれて内燃機関の動作が異常になるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる内燃機関用点火装置の構成例を示した回路図である。
【図2】図1の点火装置において基準信号が発生するタイミングを点火時期の計測を開始するタイミングとした場合の各部の電圧の波形を示した波形図である。
【図3】図1の点火装置において、点火時期の計測を開始するタイミングを図2の例と異ならせた場合の各部の電圧波形を示した波形図ある。
【図4】従来の内燃機関用点火装置を示した回路図である。
【図5】図4の各部の電圧の波形またはスイッチの動作を示した波形図である。
【符号の説明】
1…磁石発電機、2…エキサイタコイル、3…点火コイル、5…点火用コンデンサ、7…サイリスタ、10…サイリスタ、11…抵抗、12…マイクロコンピュータ、15…電源回路、16…波形整形回路、17…基準信号発生回路、18…停止指令発生回路、19…停止指令スイッチ。

Claims (4)

  1. 内燃機関により駆動される磁石発電機内に設けられたエキサイタコイルと、点火コイルと、前記点火コイルの一次側に設けられて前記エキサイタコイルの一方の半サイクルの出力電圧で充電される点火用コンデンサと、前記内燃機関の点火時期を演算する点火時期演算手段と、前記エキサイタコイルの出力電圧の波形に基づいて定めた計測開始タイミングで前記点火時期演算手段により演算された点火時期の計測を開始して該点火時期が計測された時に点火信号を発生する点火信号発生手段と、前記点火信号が発生した時に前記点火用コンデンサを前記点火コイルの一次コイルを通して放電させる第1の放電回路とを備え、前記第1の放電回路を通して行われる点火用コンデンサの放電により前記点火コイルの二次コイルに点火用高電圧を誘起させるコンデンサ放電式内燃機関用点火装置において、
    前記内燃機関の点火動作を停止させる必要があるときに停止指令を発生する停止指令発生手段と、前記停止指令が発生しているときに前記点火信号の代りに放電指令信号を発生する放電指令信号発生手段と、前記放電指令信号が発生した時に前記点火用コンデンサの電荷を放電させる第2の放電回路とを具備し、
    前記第2の放電回路は、該第2の放電回路を通して行われる前記点火用コンデンサの放電によっては前記点火コイルの二次コイルに点火用高電圧を誘起させないように構成されていることを特徴とするコンデンサ放電式内燃機関用点火装置。
  2. 前記エキサイタコイルの出力電圧を入力として、該エキサイタコイルの出力が他方の半サイクルから一方の半サイクルに移行する際に立ち上がり、該一方の半サイクルが終了するまでの間に消滅する基準信号を発生する基準信号発生回路が設けられ、
    前記点火信号発生手段は、前記基準信号の立上りのタイミングを前記計測開始タイミングとするように構成されている請求項1に記載のコンデンサ放電式内燃機関用点火装置。
  3. 前記エキサイタコイルの他方の半サイクルの出力電圧で一方の極性に充電される電源コンデンサと該電源コンデンサの端子電圧が設定値に達した時に前記エキサイタコイルを短絡するエキサイタ短絡用サイリスタとを備えて前記点火時期演算手段及び点火信号発生手段を実現するマイクロコンピュータに与える電源電圧を出力する直流電源回路と、前記エキサイタコイルの他方の半サイクルの出力電圧がスレショールドレベルに達した時に立上がり、前記エキサイタ短絡用サイリスタがオン状態になった時に立ち下がるパルス信号を発生するパルス信号発生回路とを更に備え、
    前記点火信号発生手段は、前記パルス信号の立上りのタイミングを前記計測開始タイミングとするように構成されている請求項1に記載のコンデンサ放電式内燃機関用点火装置。
  4. 前記第2の放電回路は、前記放電指令信号が発生したときにオン状態になる放電用スイッチと、電流制限素子とを備えて、前記放電用スイッチと電流制限素子とを通して前記点火用コンデンサを放電させるように構成されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載のコンデンサ放電式内燃機関用点火装置。
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