JP3601069B2 - ターフェニルメタクリレート誘導体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は高分子分散型液晶表示素子に好適に利用できる新規な有機化合物に関わる。
【0002】
【従来の技術】
近年偏光板を用いない明るい表示素子として、液晶と高分子を互いに分散させた表示素子が注目されている。この表示素子の動作原理は液晶と高分子の屈折率の差を利用しており、電界印加により液晶と高分子の屈折率が一致した場合には透過状態を示し、電界除去により屈折率が相違した場合には散乱状態を示すことによる(特表昭58−501631、これをNCAPと呼ぶ)。また電界無印加時に透過し電界印加時に散乱する逆のモードの表示素子も開発されている(Mol.Cryst.Liq.Cryst.,198,357,(1991)、これをリバースタイプと呼ぶ)。また、これらのモードについては色素を混合することにより、視認性を向上させる方法も提案されている。これらの表示素子に用いられる高分子としてはすでにメソーゲン基としてビフェニル誘導体、フェニルベンゾエート誘導体、ベンゼン環とベンゼン環をシッフ塩基で結合したもの、トラン誘導体をもつ化合物等(特開平4−227684、特開平5−224187、WO 93/08497)が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの高分子を用いた液晶表示素子では、比抵抗が悪い、駆動電圧が高い、散乱時の反射率が十分でない、という欠点があった。さらには高分子前駆体が液晶組成物に溶けにくい化合物も何種類かあった。
【0004】
本発明はこのような実状における要請に答えたものであり、その目的は紫外線を照射しても比抵抗値が低下することがなく、また高分子の前駆体が他の一種または二種以上の液晶と相溶性が良く、重合させて相分散させた表示素子が低電圧で駆動でき、明るく反射率の優れた表示素子を得るのに適している新規化合物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のターフェニルメタクリレート誘導体は、
【0006】
【化10】
【0007】
(上式中、X1,X2,X3,X4,X5,X6,X7,X8,X9,X10,X11,X12はそれぞれ水素原子、またはフッ素原子、または塩素原子、またはメチル基、またはニトリル基を表し、Yは水素原子、またはフッ素原子、または塩素原子、または炭素数が1〜10の直鎖アルキル基、またはニトリル基を示す)で表されることを特徴とする。
【0014】
(上式中、X1,X2,X3,X4,X5,X6,X7,X8,X9,X10,X11,X12はそれぞれ水素原子、またはフッ素原子、または塩素原子、またはメチル基、またはニトリル基を表す)で表される構成要素が少なくとも一部分高分子中にに存在することを特徴とす。また液晶及び高分子を互いに配向分散させた表示素子において、相分離させた液晶と高分子をシアリングにより配向させてもよい。また液晶及び高分子を互いに配向分散させた表示素子において、液晶と高分子がゲルネットワーク状に相分離していてもよい。また液晶及び高分子を互いに配向分散させた表示素子において、高分子を形成する前駆体としてターフェニルメタクリレート誘導体を0.1〜20%含有することを特徴とする。また液晶及び高分子を互いに配向分散させた表示素子において、2色性色素を含有することを特徴とする。また液晶及び高分子を互いに配向分散させた表示素子において、表示素子表面側での配向方向が、主たる光の入射方向と素子表面の法線を含む平面に対して垂直であることを特徴とする。あるいは表示素子表面側での高分子の配向方向が裏面側での高分子の配向方向と異なることを特徴とする。また液晶及び高分子を互いに配向分散させた表示素子において、液晶及び高分子分散層を挟持する2枚の電極の1方が光反射性の電極であることを特徴とする。
【0015】
次に、本発明のターフェニルメタクリレート誘導体(1)と参考例に係わるターフェニルメタクリレート誘導体(2)の一般的製造方法について述べる。
【0016】
【表1】
【0017】
工程1)化合物(I)と化合物(II)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(III)を得る。
【0018】
工程2)化合物(IV)と化合物(III)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(V)を得る。
【0019】
工程3)化合物(V)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(VI)を得る。ただし(V)の化合物中にニトリル基が存在するときはジクロロメタン中で三臭化ほう素と反応させ化合物(VI)を得る。
【0020】
工程4)化合物(VI)とメタクリロイルクロライドをクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(1)を得る。
【0021】
【表2】
【0022】
工程1’)化合物(I)と化合物(II’)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(III’)を得る。
【0023】
工程2’)化合物(IV)と化合物(III’)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(V’)を得る。
【0024】
工程3’)化合物(V’)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(VI’)を得る。ただし(V’)の化合物中にニトリル基が存在するときはジクロロメタン中で三臭化ほう素と反応させ化合物(VI’)を得る。
【0025】
工程4’)化合物(VI’)とメタクリロイルクロライドをクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(2)を得る。
【0026】
以上が一般的合成方法であるが、各々の化合物の合成方法は存在する置換基により少しづつ変わってくる。それは置換基の種類あるいは結合している位置により、入手可能(市販されている)な原料が限られてくることと、反応性に違いが生ずるためである。次に具体的な合成方法として化合物1−a〜hと2−a〜eの化合物の合成方法を述べる。
【0027】
【表3】
【0028】
工程A−1)化合物(1)をテトラヒドロフラン中でマグネシウムと反応させグリニヤール試薬とした後、ほう酸トリイソプロピルと反応させ化合物(2)を得る。
【0029】
工程A−2)化合物(2)と化合物(3)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(4)を得る。
【0030】
工程A−3)化合物(4)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(5)を得る。
【0031】
工程A−4)化合物(5)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(1−a)を得る。
【0032】
【表4】
【0033】
工程B−1)化合物(7)を二硫化炭素中で塩化アルミニウムの存在下でアルキルカルボニルクロライドと反応させ化合物(8)を得る。
【0034】
工程B−2)化合物(8)をトリエチレングリコール中で水酸化カリウムの存在下でヒドラジン一水和物と反応させ化合物(9)を得る。
【0035】
工程B−3)化合物(9)ををテトラヒドロフラン中でマグネシウムと反応させグリニヤール試薬とした後、ほう酸トリメチルと反応させ化合物(10)を得る。
【0036】
工程B−4)化合物(10)をテトラヒドロフラン中で過酸化水素水と水と反応させ化合物(11)を得る。
【0037】
工程B−5)化合物(11)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(1−b)を得る。
【0038】
【表5】
【0039】
工程C−1)化合物(12)と化合物(13)を二硫化炭素中で塩化アルミニウムの存在下で反応させ化合物(14)を得る。
【0040】
工程C−2)化合物(14)をリン酸とポリリン酸の混合中で塩化ヒドロキシルアンモニウムと反応させた後、水酸化ナトリウムで処理して化合物(15)を得る。
【0041】
工程C−3)化合物(15)を酢酸中で亜硝酸ナトリウムと硫酸と反応させジアゾニウム塩にした後、塩化銅と塩酸と反応させ化合物せ化合物(16)を得る。
【0042】
工程C−4)化合物(2)と化合物(16)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(17)を得る。
【0043】
工程C−5)化合物(17)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(18)を得る。
【0044】
工程C−6)化合物(18)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(1−c)を得る。
【0045】
【表6】
【0046】
工程D−1)化合物(14)をジオキサン中で臭素と水酸化ナトリウムと反応させ化合物(19)を得る。
【0047】
工程D−2)化合物(19)を塩化チオニルと反応させ化合物(20)を得る。
【0048】
工程D−3)化合物(20)をジオキサン中でアンモニアと反応させ化合物(21)を得る。
【0049】
工程D−4)化合物(21)を塩化チオニルと反応させ化合物(22)を得る。
【0050】
工程D−5)化合物(2)と化合物(22)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(23)を得る。
【0051】
工程D−6)化合物(23)をジクロロメタン中で三臭化ほう素と反応させ化合物(24)を得る。
【0052】
工程D−7)化合物(24)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(1−d)を得る。
【0053】
【表7】
【0054】
工程E−1)化合物(2)と化合物(25)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(26)を得る。
【0055】
工程E−2)化合物(26)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(27)を得る。
【0056】
工程E−3)化合物(27)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(1−e)を得る。
【0057】
【表8】
【0058】
工程F−1)化合物(28)を酢酸中で亜硝酸ナトリウムと硫酸と反応させジアゾニウム塩とした後、ベンゼンと反応させ化合物(29)を得る。
【0059】
工程F−2)化合物(2)と化合物(29)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(30)を得る。
【0060】
工程F−3)化合物(30)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(31)を得る。
【0061】
工程F−4)化合物(31)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(1−f)を得る。
【0062】
【表9】
【0063】
工程G−1)化合物(25)を二硫化炭素中で塩化アルミニウムの存在下でアルキルカルボニルクロライドと反応させ化合物(32)を得る。
【0064】
工程G−2)化合物(32)をトリフルオロ酢酸中でトリエチルシランと反応させ化合物(33)を得る。
【0065】
工程G−3)化合物(2)と化合物(33)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(34)を得る。
【0066】
工程G−4)化合物(34)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(35)を得る。
【0067】
工程G−5)化合物(35)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(1−g)を得る。
【0068】
【表10】
【0069】
工程H−1)化合物(25)を二硫化炭素中で塩化アルミニウムの存在下アセチルクロライドと反応させ化合物(36)を得る。
【0070】
工程H−2)化合物(36)をジオキサン中で臭素と水酸化ナトリウムと反応させ化合物(37)を得る。
【0071】
工程H−3)化合物(37)を塩化チオニルと反応させ化合物(38)を得る。
【0072】
工程H−4)化合物(38)をジオキサン中でアンモニアと反応させ化合物(39)を得る。
【0073】
工程H−5)化合物(39)を塩化チオニルと反応させ化合物(40)を得る。
【0074】
工程H−6)化合物(2)と化合物(40)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(41)を得る。
【0075】
工程H−7)化合物(41)をジクロロメタン中で三臭化ほう素と反応させ化合物(42)を得る。
【0076】
工程H−8)化合物(42)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(1−h)を得る。
【0077】
【表11】
【0078】
工程I−1)化合物(2)と化合物(43)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(44)を得る。
【0079】
工程I−2)化合物(44)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(45)を得る。
【0080】
工程I−3)化合物(45)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(2−a)を得る。
【0081】
【表12】
【0082】
工程J−1)化合物(2)と化合物(46)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(47)を得る。
【0083】
工程J−2)化合物(47)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(48)を得る。
【0084】
工程J−3)化合物(48)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(2−b)を得る。
【0085】
【表13】
【0086】
工程K−1)化合物(2)と化合物(49)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(50)を得る。
【0087】
工程K−2)化合物(50)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(51)を得る。
【0088】
工程K−3)化合物(51)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(2−c)を得る。
【0089】
【表14】
【0090】
工程L−1)化合物(2)と化合物(52)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(53)を得る。
【0091】
工程L−2)化合物(53)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(54)を得る。
【0092】
工程L−3)化合物(54)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(2−d)を得る。
【0093】
【表15】
【0094】
工程M−1)化合物(2)と化合物(55)をベンゼンとエタノールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウムと炭酸ナトリウムの存在下で反応させ化合物(56)を得る。
【0095】
工程M−2)化合物(56)を酢酸中で臭化水素酸と反応させ化合物(57)を得る。
【0096】
工程M−3)化合物(57)と化合物(6)をクロロホルム中でトリエチルアミンの存在下反応させ化合物(2−e)を得る。
【0097】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
【0098】
(実施例1)〔化合物(1−a)の合成〕
p−ターフェニル−4−イルメタクリレートの製造。
【0099】
工程A−1)窒素置換したフラスコ中にマグネシウム2.0gを入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら4−ブロモアニソール12.5gをテトラヒドロフラン100mlに溶かした溶液をゆっくり滴下した。発熱して反応が進むのを確認した後、15時間攪拌を続けグリニヤール試薬を調製した。新たに用意したフラスコを窒素置換し、その中へテトラヒドロフラン10mlにほう酸トリイソプロピル25gを溶かした溶液を入れ、そこへグリニヤール試薬を滴下し20時間攪拌した。反応液をクロロホルムで抽出し水で3回洗浄した後、クロロホルムを留去した。残留物をメタノールと水の混合溶媒中から再結晶して4−メトキシフェニルほう酸5.8gを得た。
【0100】
工程A−2)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液50mlとベンゼン70mlを入れ、さらに4−ブロモビフェニル8.9g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.1gを入れた。そこへエタノール50mlに4−メトキシフェニルほう酸5.8gを溶かした溶液を滴下し、5時間還流した。反応液をクロロホルムで抽出して水洗した後、クロロホルムを留去した。残留物をクロロホルムとメタノールの混合溶媒中から再結晶して、4−メトキシ−p−ターフェニル3.5gを得た。
【0101】
工程A−3)なす型フラスコに4−メトキシ−p−ターフェニル3.5g,臭化水素酸30ml,酢酸150mlを入れ、20時間還流した。反応液を室温まで冷却した後、濾過して水洗した。アセトンとメタノールの混合溶媒中から再結晶して、4−ヒドロキシ−p−ターフェニル2.4gを得た。
【0102】
工程A−4)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム100ml,4−ヒドロキシ−p−ターフェニル2.4g,トリエチルアミン2mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド1.3mlをゆっくり滴下し、5時間攪拌を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出して、さらにメタノールを入れて再結晶すると本発明の化合物p−ターフェニル−4−イルメタクリレート2.4gを得た。この化合物の融点は211℃であった。
【0103】
この化合物の核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定したところ以下の結果が得られた。
【0104】
【化11】
【0105】
NMR(δ,CDCl3)
2.09(s,3H,CH3), 5.78(s,1H,Hh)
6.38(s,1H,Hi) , 7.23(d,2H,Ha)
7.36(t,1H,Hg) , 7.46(d,2H,Hf)
7.64(d,8H,Hb,Hc,HdおよびHe)
またこの化合物の赤外吸収スペクトルを図1に示す。
【0106】
(実施例2)〔化合物(1−b)の合成〕
4”−ペンチル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレートの製造。
【0107】
工程B−1)フラスコに塩化アルミニウム12.0g,二硫化炭素200mlを入れ、攪拌しながらペンタノイルクロライド9.4gを滴下する。この混合物を氷水浴中で冷却しながら、4−ブロモ−p−ターフェニル20gの二流化炭素800ml溶液を1時間かけて滴下した。滴下後冷却下3時間攪拌し、氷水浴をはずして1晩放置した。その後反応液を塩酸50ml,氷200g中にかき混ぜながら注いだ。混合液の水層をクロロホルムで抽出し油層と合わせて、10%水酸化ナトリウム水溶液で2回,水で2回洗浄した後、溶媒を留去した。残留物をクロロホルムで再結晶して4−ブロモ−4”−ペンタノイル−p−ターフェニル17.2gを得た。
【0108】
工程B−2)フラスコに4−ブロモ−4”−ペンタノイル−p−ターフェニル17.2g,ヒドラジン一水和物6.6g,トリエチレングリコール700mlを入れ、激しく攪拌しながら180℃まで加熱する。反応液を90℃以下に冷却してから水酸化カリウム5.8gを加え、攪拌しながら190℃まで加熱し190〜195℃で5時間攪拌する。反応液を室温まで冷却後、水500mlを加え攪拌してから結晶を濾過し水で洗浄する。結晶をクロロホルムとアセトンの混合溶媒で再結晶し、4−ブロモ−4”−ペンチル−p−ターフェニル15.0gを得た。
【0109】
工程B−3)窒素置換したフラスコ中にマグネシウム1.2gとテトラヒドロフラン50mlを入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながらエタノールを少し加えマグネシウムを活性化させる。フラスコを70℃の温浴にセットし、4−ブロモ−4”−ペンチル−p−ターフェニル15.0gのテトラヒドロフラン350ml溶液を析出しない程度に温めながら滴下ロートで加える。滴下後、3時間還流してグリニヤール試薬を調製した。新たに用意した窒素置換したフラスコの中へテトラヒドロフラン250mlにほう酸トリメチル4.5gを溶かした溶液を入れ−10℃以下に冷却し、そこへグリニヤール試薬をゆっくり滴下し2時間攪拌を続けると、4”−ペンチル−p−ターフェニル−4−イルほう酸溶液を得る。これは、溶液状態のまま次の反応に用いる。
【0110】
工程B−4)工程B−3の反応で得られた4”−ペンチル−p−ターフェニル−4−イルほう酸溶液に酢酸3.3mlを加え攪拌し、過酸化水素水4.4ml,水3.9mlを滴下し、30分攪拌を続ける。反応液を室温まで戻した後、10%硫酸鉄アンモニウム(12水和物)水溶液500mlを加え、10分間攪拌しさらに水500mlを加えて結晶が浮くようにする。結晶を濾別し乾燥させ、クロロホルムで再結晶し4−ヒドロキシ−4”−ペンチル−p−ターフェニル3.4gを得た。
【0111】
工程B−5)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム30ml,4−ヒドロキシ−4”−ペンチル−p−ターフェニル3.4g,トリエチルアミン1.3mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド0.86mlをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物4”−ペンチル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート1.9gを得た。この化合物の融点は223.8℃であった。
【0112】
この化合物の赤外吸収スペクトルを図2に示す。
【0113】
同様にして以下の化合物を合成できる。
【0114】
4”−メチル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート
4”−エチル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート
4”−プロピル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート
4”−ブチル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート
4”−ヘキシル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート
4”−ヘプチル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート
4”−オクチル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート
4”−ノニル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート
4”−デシル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート
(実施例3)〔化合物(1−c)の合成〕
4”−クロロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレートの製造。
【0115】
工程C−1)フラスコに4−ブロモビフェニル12.3g,塩化アルミニウム9.2g ,二硫化炭素100mlを入れ、塩−氷水浴中で攪拌しながらアセチルクロライド5gを二硫化炭素20mlに溶かした溶液を30分で滴下し、2時間攪拌した。反応物を氷80gを含む濃塩酸40ml中にかき混ぜながら注ぎ、油層を分離する。油層を10%塩酸水溶液と水で洗浄する。油状物中の二硫化炭素をアスピレーター減圧下で留去し、残留物を減圧蒸留して4−アセチル−4’−ブロモビフェニル8.7gを得た。
【0116】
工程C−2)フラスコに4−アセチル−4’−ブロモビフェニル8.7g、塩化ヒドロキシルアンモニウム6.7g、りん酸88ml、ポリリン酸36mlをとり、攪拌下3〜4時間かけて160℃まで加熱した。その後160〜170℃で10分間攪拌した。反応液を氷200g中へ注ぎ攪拌した。析出した結晶を濾過し、十分洗浄した。水酸化ナトリウム20gを水100mlに溶かした水溶液中に得られた結晶を入れ、室温で3時間攪拌した。結晶を濾過し十分水洗後、乾燥させ減圧蒸留を行い4−(4’−ブロモフェニル)アニリン6.7gを得た。
【0117】
工程C−3)フラスコに濃硫酸15mlをとり氷−水浴で冷却し、攪拌下液温20℃以下を保つ速度で亜硝酸ナトリウム2gを加えた。その後50℃に加熱し結晶を溶解した。次に氷−水浴で冷却攪拌下、酢酸26mlを液温が15〜25℃を保つ速度で滴下した。氷−水浴で冷却攪拌下、4−(4’−ブロモフェニル)アニリン6.7gを液温が20〜25℃を保つ速度で加えた。さらに20〜25℃の液温で1時間攪拌して結晶を溶解させジアゾニウム塩を調製した。別のフラスコに塩化銅(I)4gと濃塩酸16mlをとり、氷−水浴で冷却攪拌下に先ほど調製したジアゾニウム塩溶液を20℃以下で滴下した。その後発泡がやむまで氷−水浴で冷却攪拌し、その後80℃で発泡がやむまで放置した。反応液に水100mlを加え、クロロホルムで抽出し、水洗後クロロホルムを留去した。残留物を減圧蒸留して4−ブロモ−4’−クロロビフェニル4.5gを得た。
【0118】
工程C−4)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液23mlとベンゼン30mlを入れ、さらに4−ブロモ−4’−クロロビフェニル4.5g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.17gを入れる。そこへエタノール20mlに4−メトキシフェニルほう酸2.6gを溶かした溶液を滴下し、5時間還流する。反応液をクロロホルムで抽出して水洗した後、クロロホルムを留去する。残留物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製した後、アセトン中から再結晶して、4−クロロ−4”−メトキシ−p−ターフェニル2.7gを得た。
【0119】
工程C−5)なす型フラスコに4−クロロ−4”−メトキシ−p−ターフェニル2.7g,臭化水素酸4.6ml,酢酸46mlを入れ12時間還流する。反応液を室温まで冷却した後、濾過して水洗する。残留物をアセトン中からで再結晶して、4−クロロ−4”−ヒドロキシ−p−ターフェニル2.1gを得た。
【0120】
工程C−6)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム9ml,4−クロロ−4”−ヒドロキシ−p−ターフェニル2.1g,トリエチルアミン1.5mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド0.9gをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物4”−クロロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート1.1gを得た。融点は251℃であった。
【0121】
(実施例4)〔化合物(1−d)の合成〕
4”−シアノ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレートの製造。
【0122】
工程D−1)フラスコに水酸化ナトリウム19gをとり水100mlに溶解し攪拌した。
【0123】
その中へ臭素29gを滴下した。フラスコを氷−水の浴内で冷却し、4−アセチル−4’−ブロモビフェニル14.3gを1,4−ジオキサン40mlに溶かした溶液を滴下した。その後フラスコを40℃までゆっくり加熱し、1時間攪拌した。この反応液を濃塩酸100mlと氷150gの混合中へ注ぎ、析出した結晶を濾過、その後水洗した。得られた結晶をエタノール中より再結晶し4−(4’−ブロモフェニル)安息香酸13gを得た。
【0124】
工程D−2)フラスコに4−(4’−ブロモフェニル)安息香酸13g、塩化チオニル17gを入れ5時間還流した。その後塩化チオニルを減圧下で留去し、得られた結晶をヘキサンで洗浄し4−(4’−ブロモフェニル)ベンゾイルクロライド12.1gを得た。
【0125】
工程D−3)フラスコに1,4−ジオキサン75mlをとり、フラスコを氷−水浴中で冷却し、アンモニアガスを飽和させた。この中へ4−(4’−ブロモフェニル)ベンゾイルクロライド12.1gを1,4−ジオキサン40mlに溶かした溶液を滴下した。その後1時間室温で攪拌した。反応液を水中へあけ、析出した結晶を濾過、水洗後、乾燥して4−(4’−ブロモフェニル)ベンズアミド9.7gを得た。
【0126】
工程D−4)フラスコに4−(4’−ブロモフェニル)ベンズアミド9.7gと塩化チオニル20gをとり7時間還流した。その後減圧下で塩化チオニルを留去し、残留物をクロロホルムで抽出後水で2回、5%水酸化カリウム水溶液で2回、もう一度水で2回洗浄後、クロロホルムを留去した。残留物をアセトンとメタノールの混合溶媒中より再結晶し4−(4’−ブロモフェニル)ベゾニトリル6.2gを得た。
【0127】
工程D−5)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液30mlとベンゼン43mlを入れ、さらに4−(4’−ブロモフェニル)ベゾニトリル6.2g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.24gを入れる。そこへエタノール29mlに4−メトキシフェニルほう酸3.6gを溶かした溶液を滴下し、5時間還流する。反応液冷却後クロロホルムで抽出し水で洗浄した後、クロロホルムを留去する。残留物をアセトンとメタノールの混合溶媒中より再結晶して、4”−シアノ−4−メトキシ−p−ターフェニ2.8gを得た。
【0128】
工程D−6)フラスコに三臭化ほう素5.7gを塩化メチレン40mlに溶かした溶液を入れ、その中へ4”−シアノ−4−メトキシ−p−ターフェニル2.8gを塩化メチレン120mlに溶かした溶液を室温で滴下した。その後一晩攪拌後、反応液を水中へ注ぎ析出した結晶を濾過後、水で洗浄した。得られた結晶をアセトンと水の混合溶媒中より再結晶し、4”−シアノ−4−ヒドロキシ−p−ターフェニル1.7gを得た。
【0129】
工程D−7)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム8.7ml,4”−シアノ−4−ヒドロキシ−p−ターフェニル1.7g,トリエチルアミン1.4mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド1.4gをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物4”−シアノ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート1.2gを得た。この化合物の融点は227.2℃であった。
【0130】
(実施例5)〔化合物(1−e)の合成〕
3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレートの製造。
【0131】
工程E−1)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液37mlとベンゼン47mlを入れ、さらに4−ブロモ−2−フルオロビフェニル6.6g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.3gを入れる。そこへエタノール30mlに4−メトキシフェニルほう酸4gを溶かした溶液を滴下し、5時間還流する。反応液をクロロホルムで抽出して水洗した後、クロロホルムを留去する。残留物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製した後、アセトン中から再結晶して、3’−フルオロ−4−メトキシ−p−ターフェニル5gを得た。この化合物の融点は130.5℃であった。
【0132】
工程E−2)なす型フラスコに3’−フルオロ−4−メトキシ−p−ターフェニル5g,臭化水素酸9ml,酢酸90mlを入れ12時間還流する。反応液を室温まで冷却した後、濾過して水洗する。残留物をアセトン中からで再結晶して、3’−フルオロ−4−ヒドロキシ−p−ターフェニル2.9gを得た。
【0133】
工程E−3)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム17ml,3’−フルオロ−4−ヒドロキシ−p−ターフェニル2.9g,トリエチルアミン2.3mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド1.4mlをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート2.5gを得た。この化合物の融点は141.7℃であった。またこの化合物の赤外吸収スペクトルを図3に示す。
【0134】
(実施例6)〔化合物(1−f)の合成〕
3’−クロロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレートの製造。
【0135】
工程F−1)4−ブロモ−2−クロロアニリン45gを18mlの水に加熱溶解させた後、室温に冷却し、濃塩酸43mlを加え、90℃で30分攪拌後室温に冷却した。その後0〜5℃に冷却し、亜硝酸ナトリウム15.3gを水32mlに溶解した溶液を滴下した。その後反応液を0〜5℃に保ちながらベンゼン270mlを加えた。室温で2時間攪拌後、5N水酸化ナトリウム水溶液50mlを加え、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を水で3回洗浄した後クロロホルムを留去した。残留物を水蒸気した後、ヘキサン−シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、4−ブロモ−2−クロロビフェニルを9.1g得た。
【0136】
工程F−2)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液47mlとベンゼン60mlを入れ、さらに4−ブロモ−2−クロロビフェニル9.1g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.34gを入れる。そこへエタノール40mlに4−メトキシフェニルほう酸5.2gを溶かした溶液を滴下し、5時間還流する。反応液をクロロホルムで抽出して水洗した後、クロロホルムを留去する。残留物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製した後、アセトンとメタノールの混合溶媒中から再結晶して、3’−クロロ−4−メトキシ−p−ターフェニル6.1gを得た。この化合物の融点は96.0℃であった。
【0137】
工程F−3)なす型フラスコに3’−クロロ−4−メトキシ−p−ターフェニル6.1g,臭化水素酸10ml,酢酸100mlを入れ12時間還流する。反応液を室温まで冷却した後、濾過して水洗する。残留物をアセトン中からで再結晶して、3’−クロロ−4−ヒドロキシ−p−ターフェニル3.7gを得た。
【0138】
工程F−4)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム23ml,3’−クロロ−4−ヒドロキシ−p−ターフェニル3.7g,トリエチルアミン3.1mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド1.9gをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物3’−クロロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート1.8gを得た。この化合物の融点は104.2℃であった。
【0139】
(実施例7)〔化合物(1−g)の合成〕
4”−エチル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレートの製造。
【0140】
工程G−1)フラスコに4−ブロモ−2−フルオロビフェニル5.0g,塩化アルミニウム6.7g ,1,1,2,2−テトラクロロエタン20mlを入れ、塩−氷水浴中で攪拌しながらアセチルクロライド1.9gを1,1,2,2−テトラクロロエタン 10mlに溶かした溶液を30分で滴下し、2時間攪拌した。反応物を氷50gを含む濃塩酸20ml中にかき混ぜながら注ぎ、油層を分離する。油層を10%塩酸水溶液と水で洗浄する。油状物中の1,1,2,2−テトラクロロエタンをアスピレーター減圧下で留去し、残留物を減圧蒸留(186℃/2mmHg)して4’−アセチル−4−ブロモ−2−フルオロビフェニル5.3gを得た。
【0141】
工程G−2)4’−アセチル−4−ブロモ−2−フルオロビフェニル5.3gをトリフルオロ酢酸15mlに溶かした溶液を室温で攪拌しながらトリエチルシラン4.7gをゆっくり滴下し、5時間攪拌を続けた。反応物を20%NaOH水溶液40mlと氷30g中にかき混ぜながら注ぎ、油層を分離し水層をクロロホルムで抽出する。油層とクロロホルム層を合わせて20%NaOH水溶液と水で洗浄した。クロロホルムを留去し残留物を減圧蒸留(155℃/3mmHg)して4−ブロモ−4’−エチル−2−フルオロビフェニル4.7gを得た。
【0142】
工程G−3)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液40mlとベンゼン60mlを入れ、さらに4−ブロモ−4’−エチル−2−フルオロビフェニル4.7g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.17gを入れる。そこへエタノール40mlに4−メトキシフェニルほう酸2.6gを溶かした溶液を滴下し、5時間還流する。反応液冷却後、クロロホルムで抽出し水で洗浄した後、クロロホルムを留去する。残留物をアセトンとメタノールの混合溶媒中より再結晶して、4”−エチル−3’−フルオロ−4−メトキシ−p−ターフェニル4.1gを得た。この化合物は液晶相を示し、結晶相−ネマチック液晶相転移点(以下C−N点という)は100.8℃
であり、ネマチック液晶相−等方性液体転移点(以下N−I点という)は179.7℃であった。
【0143】
工程G−4)なす型フラスコに4”−エチル−3’−フルオロ−4−メトキシ−p−ターフェニル4.1g,臭化水素酸7ml,酢酸30mlを入れ20時間還流する。反応液を室温まで冷却した後、濾過して水洗する。残留物をアセトンとメタノールの混合溶媒中から再結晶して、4”−エチル−3’−フルオロ−4−ヒドロキシ−p−ターフェニル2.9gを得た。
【0144】
工程G−5)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム40ml,4”−エチル−3’−フルオロ−4−ヒドロキシ−p−ターフェニル 2.9g,トリエチルアミン2.1mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド1.3mlをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物4”−エチル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート2.1gを得た。融点は123.5℃であった。この化合物の赤外吸収スペクトルを図4に示す。
【0145】
同様にして以下の化合物を得た。
【0146】
4”−メチル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート。4”−プロピル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート。4”−ブチル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート。4”−ペンチル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート。
【0147】
融点106.5℃
4”−ヘキシル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート。4”−ヘプチル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート。4”−オクチル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート。4”−ノニル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート。4”−デシル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート。
【0148】
(実施例8)〔化合物(1−h)の合成〕
4”−シアノ−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレートの製造。
【0149】
工程H−1)工程G−1と同様の方法で4’−アセチル−4−ブロモ−2−フルオロビフェニル44gを得た。
【0150】
工程H−2)フラスコに水酸化ナトリウム55gをとり水300mlに溶解し攪拌した。
【0151】
その中へ臭素84gを滴下した。フラスコを氷−水の浴内で冷却し、4’−アセチル−4−ブロモ−2−フルオロビフェニル44gを1,4−ジオキサン114mlに溶かした溶液を滴下した。その後フラスコを40℃までゆっくり加熱し、1時間攪拌した。この反応液を濃塩酸230mlと氷450gの混合中へ注ぎ、析出した結晶を濾過、その後水洗した。得られた結晶をエタノール中より再結晶し4−(4’−ブロモ−2’−フルオロフェニル)安息香酸40gを得た。
【0152】
工程H−3)フラスコに4−(4’−ブロモ−2’−フルオロフェニル)安息香酸40g、塩化チオニル50gを入れ5時間還流した。その後塩化チオニルを減圧下で留去し、得られた結晶をヘキサンで洗浄し4−(4’−ブロモ−2’−フルオロフェニル)ベンゾイルクロライド37gを得た。
【0153】
工程H−4)フラスコに1,4−ジオキサン200mlをとり、フラスコを氷−水浴中で冷却し、アンモニアガスを飽和させた。この中へ4−(4’−ブロモ−2’−フルオロフェニル)ベンゾイルクロライド32gを1,4−ジオキサン120mlに溶かした溶液を滴下した。その後1時間室温で攪拌した。反応液を水中へあけ、析出した結晶を濾過、水洗後、乾燥して4−(4’−ブロモ−2’−フルオロフェニル)ベンズアミド28gを得た。
【0154】
工程H−5)フラスコに4−(4’−ブロモ−2’−フルオロフェニル)ベンズアミド28gと塩化チオニル64gをとり7時間還流した。その後減圧下で塩化チオニルを留去し、残留物をクロロホルムで抽出後水で2回、5%水酸化カリウム水溶液で2回、もう一度水で2回洗浄後、クロロホルムを留去した。残留物をアセトンとメタノールの混合溶媒中より再結晶し4−(4’−ブロモ−2’−フルオロフェニル)ベゾニトリル20gを得た。
【0155】
工程H−6)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液70mlとベンゼン90mlを入れ、さらに4−(4’−ブロモ−2’−フルオロフェニル)ベゾニトリル13g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.5gを入れる。そこへエタノール60mlに4−メトキシフェニルほう酸7.6gを溶かした溶液を滴下し、5時間還流する。反応液冷却後クロロホルムで抽出し水で洗浄した後、クロロホルムを留去する。残留物をアセトンとメタノールの混合溶媒中より再結晶して、4”−シアノ−3’−フルオロ−4−メトキシ−p−ターフェニ6.6gを得た。この化合物は液晶相を示し、C−N点は126.3℃であり、N−I点は247.3℃であった。
【0156】
工程H−7)フラスコに三臭化ほう素5.7gを塩化メチレン40mlに溶かした溶液を入れ、その中へ4”−シアノ−3’−フルオロ−4−メトキシ−p−ターフェニル3gを塩化メチレン120mlに溶かした溶液を室温で滴下した。その後一晩攪拌後、反応液を水中へ注ぎ析出した結晶を濾過後、水で洗浄した。得られた結晶をアセトンと水の混合溶媒中より再結晶し、4”−シアノ−3’−フルオロ−4−ヒドロキシ−p−ターフェニル2gを得た。
【0157】
工程H−8)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム10ml,4”−シアノ−3’−フルオロ−4−ヒドロキシ−p−ターフェニル2g,トリエチルアミン1.4mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド0.9gをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物4”−シアノ−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレート1.6gを得た。この化合物は液晶相を示し、C−N点は146.2℃であった。
【0158】
(実施例9)〔化合物(2−a)の合成〕
p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレートの製造。
【0159】
工程I−1)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液40mlとベンゼン60mlを入れ、さらにp−ジブロモベンゼン3.8g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.9gを入れる。そこへエタノール40mlに4−メトキシフェニルほう酸5gを溶かした溶液を滴下し、5時間還流する。反応液冷却後、析出物を濾過して取り出し、アセトンと水で洗浄して、4,4”−ジメトキシ−p−ターフェニル3.8gを得た。
【0160】
工程I−2)なす型フラスコに4,4”−ジメトキシ−p−ターフェニル3.8g,臭化水素酸20ml,酢酸150mlを入れ30時間還流する。反応液を室温まで冷却した後、濾過して水洗する。残留物をアセトン中に溶かし非溶解物(原料)を取り除く。アセトンを留去し、さらにアセトンとメタノールの混合溶媒中で再結晶して、4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル2.0gを得た。
【0161】
工程I−3)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム50ml,4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル2.0g,トリエチルアミン3.2mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド2.0mlをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレート0.4gを得た。この化合物は220℃付近で熱重合してしまうため、融点は測定できなかった。この化合物の赤外吸収スペクトルを図5に示す。
【0162】
(実施例10)〔化合物(2−b)の合成〕
2’−メチル−p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレートの製造。
【0163】
工程J−1)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液60mlとベンゼン70mlを入れ、さらに2,5−ジブロモトルエン5g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.44gを入れる。そこへエタノール45mlに4−メトキシフェニルほう酸6.7gを溶かした溶液を滴下し、5時間還流する。反応液冷却後、析出物を濾過して取り出し、水で洗浄した後アセトンとメタノールの混合溶媒中より再結晶し、2’−メチル−4,4”−ジメトキシ−p−ターフェニル2.3gを得た。この化合物は液晶相を示し、C−N点は128.6℃であり、N−I点は158.7℃であった。
【0164】
工程J−2)なす型フラスコに2’−メチル−4,4”−ジメトキシ−p−ターフェニル2.3g,臭化水素酸150ml,酢酸100mlを入れ30時間還流する。反応液を室温まで冷却した後、濾過して水洗する。残留物をアセトンと水のの混合溶媒中から再結晶して、2’−メチル−4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル1.9gを得た。
【0165】
工程J−3)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム18ml,2’−メチル−4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル1.9g,トリエチルアミン2.9mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド1.7gをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物2’−メチル−p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレート1.2gを得た。この化合物の融点は131.7℃であった。
【0166】
(実施例11)〔化合物(2−c)の合成〕
2’−フルオロ−p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレートの製造。
【0167】
工程K−1)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液100mlとベンゼン130mlを入れ、さらに1,4−ジブロモ−2−フルオロベンゼン5.8g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.9gを入れる。そこへエタノール90mlに4−メトキシフェニルほう酸8.4gを溶かした物を滴下し、11時間還流する。反応液冷却後、クロロホルムで抽出し水で洗浄した後、クロロホルムを留去する。残留物をアセトンとメタノールで再結晶して、2’−フルオロ−4,4”−ジメトキシ−p−ターフェニル2.3gを得た。この化合物は液晶相を示し、C−N点は182.7℃であり、N−I点は241.9℃であった。
【0168】
工程K−2)なす型フラスコに2’−フルオロ−4,4”−ジメトキシ−p−ターフェニル2.3g,臭化水素酸7.5ml,酢酸38mlを入れ 20時間還流する。反応液を室温まで冷却した後、濾過して水洗する。残留物をアセトンとメタノールの混合溶媒中で再結晶して、2’−ジフルオロ−4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル2.1gを得た。
【0169】
工程K−3)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム23ml,2’−フルオロ−4,4”−ジヒドロキシ−P−ターフェニル2.1g,トリエチルアミン3.2mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド1.9mlをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物2’−フルオロ−p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレート1.9gを得た。この化合物の融点は186.2℃であった。この化合物の赤外吸収スペクトルを図6に示す。
【0170】
(実施例12)〔化合物(2−d)の合成〕
2’−クロロ−p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレートの製造。
【0171】
工程L−1)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液52mlとベンゼン70mlを入れ、さらに1,4−ジブロモ−2−クロロベンゼン5g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.44gを入れる。そこへエタノール45mlに4−メトキシフェニルほう酸6.7gを溶かした物を滴下し、11時間還流する。反応液冷却後、クロロホルムで抽出し水で洗浄した後、クロロホルムを留去する。残留物をアセトンとクロロホルムの混合溶媒中より再結晶して、2’−クロロ−4,4”−ジメトキシ−p−ターフェニル3gを得た。この化合物は液晶相を示し、C−N点は110.2℃であり、N−I点は163.5℃であった。
【0172】
工程L−2)なす型フラスコに2’−クロロ−4,4”−ジメトキシ−p−ターフェニル3g,臭化水素酸9.2ml,酢酸47mlを入れ20時間還流する。反応液を室温まで冷却した後、濾過して水洗する。残留物をアセトンとクロロホルムの混合溶媒中から再結晶して、2’−クロロ−4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル2.9gを得た。
【0173】
工程L−3)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム28ml,2’−クロロ−4,4”−ジヒドロキシ−P−ターフェニル2.9g,トリエチルアミン3.9mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド2.3gをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物2’−クロロ−p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレート2.0gを得た。この化合物の融点は132.6℃であった。(実施例13)〔化合物(2−e)の合成〕
2’,5’−ジフルオロ−p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレートの製造。
【0174】
工程M−1)窒素置換したフラスコ中に2M炭酸ナトリウム水溶液84mlとベンゼン110mlを入れ、さらに1,4−ジブロモ−2,5−ジフルオロベンゼン8.2g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.8gを入れる。そこへエタノール70mlに4−メトキシフェニルほう酸11gを溶かした溶液を滴下し、11時間還流する。反応液冷却後、クロロホルムで抽出し水で洗浄した後、クロロホルムを留去する。残留物をアセトンとクロロホルムの混合溶媒中より再結晶して、2’,5’−ジフルオロ−4,4”−ジメトキシ−p−ターフェニル1.3gを得た。この化合物は液晶相を示し、C−N点は194.3℃であり、N−I点は195.1℃であった。
【0175】
工程M−2)なす型フラスコに2’,5’−ジフルオロ−4,4”−ジメトキシ−p−ターフェニル1.3g,臭化水素酸3.9ml,酢酸20mlを入れ 20時間還流する。反応液を室温まで冷却した後、濾過して水洗する。残留物をアセトンとクロロホルムの混合溶媒中から再結晶して、2’,5’−ジフルオロ−4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル1.1gを得た。
【0176】
工程M−3)窒素置換したフラスコ中にクロロホルム12ml,2’,5’−ジフルオロ−4,4”−ジヒドロキシ−P−ターフェニル1.1g,トリエチルアミン1.7mlを入れ、40℃の湯浴中であたためて完全に溶解させる。そこへ蒸留精製したメタクリロイルクロライド1.0gをゆっくり滴下し、3時間攪拌反応を続ける。反応液をdil.HClaq.,飽和NaHCO3aq.,水で洗浄した後、重合防止のためメタノールを入れてクロロホルムとメタノールを留去する。留去中結晶が現れてきたら取り出し、メタノールを入れて再結晶する。さらに生成物をクロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製して、本発明の化合物2’,5’−ジフルオロ−p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレート1.1gを得た。この化合物の融点は190.0℃であった。この化合物の赤外吸収スペクトルを図7に示す。
【0177】
(実施例14〜28)〔表示素子〕
図8に示すようにガラス基板1及び2の上に透明電極膜(例えばITO膜)からなる電極3を形成し、この上にポリイミド等よりなる配向膜を塗布する。次にラビングして配向制御層4を形成し、さらにガラス基板1及び2をシール剤5を介して対向配置し、ガラス基板間に以下に示す組成物をそれぞれ注入し、TN型の液晶表示セルを作成した。
【0178】
本実施例では、液晶としてTL202とMJ91261(ともにメルク社製)、カイラル成分としてS−1011(メルク社製)、2色性色素としてS−344(三井東圧染料社製)、高分子前駆体として本発明の化合物及び既存化合物のビフェニル−4−イルメタクリレート,ビフェニル−4,4’−ジイルジメタクリレートを用いた。
【0179】
測定した組成物は、TL202とMJ91261の8:2の混合物を90.9%、S−1011を0.5%、S−344を3.6%を混合したものをベース液晶とし、さらにそのベース液晶に高分子前駆体を単独で、あるいは二種類使用して5%混合した。このようにして表16〜19に示したとおり使用した高分子の種類を変え、実施例14〜28の組成物を調合した。
【0180】
この液晶組成物は先に説明した空パネルに封入して、紫外線照射で高分子前駆体を光重合して液晶と高分子を相分離させた。なお、測定はセル温度20゜C,セルギャップ5μmで行った。
【0181】
こうして作製した表示素子を図9に示したような光学系に配置して、1KHzの短形波で波高値を変化させた信号を印加し、電圧を変化させながら反射率を測定し、最小反射率、最大反射率、しきい値電圧(最小反射率から最大反射率へ5%変化したときの電圧値、以下Vthと表す)、飽和電圧(最小反射率から最大反射率へ95%変化したときの電圧値、以下Vsatと表す)を測定した。また応答速度として電圧をON(この時の印加電圧はVth)にして反射率が95%増加するまでに要した時間(立ち上がり速度)と、電圧をOFFにして反射率が95%減少した時間(立ち下がり速度)を測定した。反射率は素子の代わりに白色上質紙を配置した場合の反射率を100%とした。ところで、素子の反射率はパネルへの入射角度を一定にしても光の入射方向により反射率の値が変わるという素子の回転による視角依存性があることが、すでに調べられている。したがって測定条件を合わせるために、ここで示した反射率は最も反射率が大きくなる入射角度でパネルを固定したときの値を用いた。このようにして次に示した表のとおり表示素子の測定結果を得た。
【0182】
【表16】
【0183】
【表17】
【0184】
【表18】
【0185】
【表19】
【0186】
実施例14〜17は高分子前駆体を一種類だけ使用した場合の実施例である。このうち実施例14は既存化合物のビフェニル−4−イルメタクリレートを使用し、実施例15〜17は本発明化合物を使用している。この測定結果を見ると本発明化合物を使用することにより、既存化合物使用に比べ、Vth及びVsatをほぼ同等にしながら、最大反射率を10〜40%ほど増加させることができた。最大反射率の増加は表示素子を作成する場合に重要な特性であり、これを増加できたことの意義は大きい。
【0187】
実施例18〜28は高分子前駆体として一官能基と二官能基の二種類の化合物を使用した場合である。二官能基を使用することにより、Vth、Vsatは増加するが、表示素子の焼き付けを防ぐ効果がある。実施例18は既存化合物のビフェニル−4−イルメタクリレート,ビフェニル−4,4’−ジイルジメタクリレートを使用している。実施例19〜22は一官能基として既存化合物のビフェニル−4−イルメタクリレート、二官能基として本発明化合物を使用した。実施例19では実施例18に比べVthを2.3V下げ、最大反射率も20%近く増加している。実施例23〜27は一官能基に本発明化合物を使用し、二官能基に既存化合物のビフェニル−4,4’−ジイルジメタクリレートを使用した。この場合実施例18に比べVthを2.0〜2.6V下げ、最大反射率を10〜20%増加させることができた。実施例28は一官能基、二官能基とも本発明化合物を使用した例である。実施例18と比べるとVthを2.3V下げ、最大反射率を30%増加させることができた。
【0188】
以上のように、本発明の液晶組成物を用いることにより従来の表示素子より駆動電圧が低く、最大反射率が大きく、表示が明るく見やすい液晶表示素子を得ることができた。また、本発明の化合物の液晶との相溶性であるが、実施例14〜28の組成物を調合するのに問題はなく、実用的な高分子前駆体の含有量において十分な溶解性があることがわかった。さらに高分子前駆体として含んだ液晶組成物の表示素子としての比抵抗は1.5〜2.0×1011Ωcmであり、電圧保持率は98%以上であり、操作上問題のない値であった。
【0189】
上記の実施例においてはTN型の液晶表示セルを用いたが、MIM素子,TFT素子などを用いた場合にも同様な効果が得られた。
【0190】
ここで、液晶の混合比率は上記の例に限らないが、あまりMJ91261を増やすと比抵抗が落ちるため好ましくない。またTL202が多すぎると駆動電圧が高くなり、また散乱度も低下して好ましくない。この液晶組成物に他の液晶を任意の割合で混ぜても表示素子として機能する。
【0191】
カイラル成分はここに示した物に限らず用いることができる。カイラル成分としては高分子前駆体にカイラル中心を持つ物も利用できる。また混合比率についてもここに示した量に限らない、ただしあまり多く入れるとヒステリシスが大きくなる傾向がある。
【0192】
2色性色素については、ここに示した物に限らず用いることができるが、できれば紫外線領域で吸収の少ない物が好ましい。もちろん2色比が高ければさらに好ましい。色素の色については用途に応じて任意に選ぶことができる。色素の含有量についてはここに示した量に限らないが、あまり多いと色素が結晶化したり表示が暗くなる。
【0193】
重合開始剤についてはここでは用いなかったが、光増感剤も含めて用いることができる。ただし、比抵抗が低下しやすいため注意して用いる。
【0194】
用いる高分子の前駆体は他の光重合性の高分子前駆体を混合して用いることもできる。高分子前駆体の含有量についてはここに示した量でなくてもよいが、あまり少ないと散乱度が弱くなり、あまり多いと駆動電圧が高くなる。
【0195】
重合条件は、ここでは300nm以長の紫外線を用いたが、これより短い光を用いても重合できる。ただし、比抵抗が低下しやすいので重合には注意を要する。光強度については3mW/cm2としたが、これに限らない。光強度が弱ければ重合時間を長くし、光強度が強ければ重合時間を短くする。ただしあまり光強度が強いと比抵抗が低下しやすい。光重合時にわずか加熱(20〜50℃程度)すると重合しやすい。
【0196】
反射性電極についてはアルミニウム、銀、ニッケル、クロムなど光を反射する電極であれば用いることができる。また電極を透明なものとし、素子の裏側に反射性背景板を用いても良い。
【0197】
配向処理については、液晶が配向するような処理であればどのような方法であっても構わない。
【0198】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の化合物を用いることにより、従来の化合物及び組成物を用いた表示素子より駆動電圧が低く、反射率が大きい反射型表示素子を作製することが可能となった。また、本発明の化合物は従来のあらゆる液晶組成物と混ぜた場合に相溶性が良好であった。本発明の化合物を用いれば、大容量ディスプレイなどの明るい省電力マンマシンインターフェイスを容易に、そして安価に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で得られたp−ターフェニル−4−イルメタクリレートの赤外吸収スペクトル図。
【図2】本発明の実施例2で得られた4”−ペンチル−p−ターフェニル−4−イルメタクリレートの赤外吸収スペクトル図。
【図3】本発明の実施例5で得られた3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレートの赤外吸収スペクトル図。
【図4】本発明の実施例7で得られた4”−エチル−3’−フルオロ−p−ターフェニル−4−イルメタクリレートの赤外吸収スペクトル図。
【図5】本発明の実施例9で得られたp−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレートの赤外吸収スペクトル図。
【図6】本発明の実施例11で得られた2’−フルオロ−p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレートの赤外吸収スペクトル図。
【図7】本発明の実施例13で得られた2’,5’−ジフルオロ−p−ターフェニル−4,4”−ジイルジメタクリレートの赤外吸収スペクトル図。
【図8】本発明の実施例14〜28における表示素子の断面を示す図。
【図9】本発明の実施例14〜28における表示素子の電気光学特性を測定した際の光学系を示す図。
【符号の説明】
1,2 ガラス基板
3 電極
4 配向制御層
5 シール剤
6 色素
7 液晶
8 高分子
(9 反射電極を用いない場合には反射性背景板)
10 表示素子
11 光源
12 結像用レンズ
13 光電子増倍管
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