JP3600837B2 - シリコン片の洗浄方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、シリコン片を半導体用原料として再利用できる純度に洗浄することができるシリコン片の洗浄方法に関する。
半導体用の多結晶シリコン棒は単結晶シリコンの原料として用いられ、多結晶シリコン棒を小塊に破砕し、これを溶融して単結晶シリコンを引上げる。この多結晶シリコン棒の破砕に伴って生じるシリコン片は、破砕の際に汚染されているため半導体原料としては使用されず、大部分はそのまま廃棄されており、太陽電池用原料などとして再利用されるものはごく僅かである。本発明はこのような従来、廃棄処分されていた破砕シリコン片を半導体原料として再利用できる純度に洗浄する方法を提供するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】
多結晶シリコン棒の破砕方法としては、超硬合金製ハンマーなどにより打撃して破砕する方法、高温に加熱した後に急冷することにより発生する熱歪みによって破砕する方法などが知られているが、何れの方法によっても機器などによってシリコン片が汚染されるのを避けることができない。一方、半導体用原料として用いられる多結晶シリコン棒は半導体級の高純度シリコンからなるものであり、従って、その破砕シリコン片は破砕によって生じた表面の汚染を除去できれば半導体原料として再利用できる品質のものである。ところが、従来は、その洗浄効果が期待したほどではなく、汚染を十分に除去できないために半導体原料としては使用されていない。
【0003】
【発明の解決課題】
通常、半導体原料として用いられるシリコンの表面汚染を除去するには、塩酸や硝酸などの水溶液を洗浄液として用い、酸洗浄を行う。多結晶シリコン棒の破砕によって生じたシリコン片についても、この酸洗浄によって表面汚染を一応除去することができるが、洗浄効果が不十分であり、半導体用原料としての純度が得られない。すなわち、この種の洗浄は、一般に、シリコン片を収容した洗浄容器に洗浄液を供給し、シリコン片を洗浄液に浸漬した状態で攪拌することによって行われるが、洗浄効果を高める目的で攪拌速度を上げ、あるいは攪拌時間を長くしても洗浄効果はそれほど向上せず、不純物を十分に除去することができない問題がある。また雰囲気からの不純物の混入を防止するために、クリーンブース内で操作を行っても同様である。
本発明は、従来の洗浄方法における上記問題を解決するものであって、多結晶シリコンの破砕シリコン片を半導体原料として使用できる純度に洗浄する方法を提供するものである。
【0004】
【課題の解決手段】
本発明者は、多結晶シリコン棒の破砕によって生じるシリコン片の洗浄方法について検討を進め、容器に収容した破砕シリコン片に洗浄液を供給して攪拌洗浄する場合、上記シリコン片は端部が鋭利な破砕面であるため、容器内壁に衝突するシリコン片によって容器内壁が削られ、これが新たな汚染源になることを見出した。このため、攪拌を強めると容器内壁に衝突するシリコン片が多くなり、洗浄効果を高めることができない。
そこで、本発明は、シリコン片を収容した容器内に供給する洗浄液の供給方法を制御し、溶液内壁に沿いシリコン片を自重によって沈降させることにより容器内壁の損傷を防止して洗浄効果を高め、さらに、洗浄水によってシリコン片を容器上部から排出させることにより、洗浄後のシリコン片の取り出しを容易にすると共に、真空乾燥を行うことによって乾燥効果を高めたものである。
【0005】
本発明によれば、以下の構成からなるシリコン片の洗浄方法が提供される。
(1)シリコン片が収容された容器底部の中心部から洗浄液を導入し、容器の中心部では供給された洗浄液によってシリコン片が上昇すると共に容器内壁側ではシリコン片が自重によって沈降する流圧の対流を容器内に形成して洗浄することを特徴とするシリコン片の洗浄方法。
(2)多結晶シリコン棒の破砕によって生じたシリコン片を洗浄する上記(1)に記載の洗浄方法。
(3)シリコン片が収容された容器底部の中心部から洗浄液を導入し、容器の中心部では供給された洗浄液によってシリコン片が上昇すると共に容器内壁側ではシリコン片が自重によって沈降する流圧の対流を容器内に形成して洗浄し、さらに、洗浄液によって流動化された容器内に純水を導入し、流動状態のシリコン片を洗浄水によって容器上部から排出させる上記(1)または(2)に記載のシリコン片の洗浄方法。
(4) 酸洗浄と水洗浄を繰り返した後に、純水によって流動状態のシリコン片を容器上部から排出させる上記(1)〜(3)の何れかに記載のシリコン片の洗浄方法。
(5)純水によって排出されたシリコン片を密閉自在な乾燥容器に導き、脱水後、真空乾燥する上記(1)〜(4)の何れかに記載するシリコン片の洗浄方法。
【0006】
【具体的な説明】
多結晶シリコン棒は単結晶シリコン引上げ原料として使用する場合、20〜120mmの小塊(ナゲット)に破砕する。この破砕の際に10mm以下の小片状のシリコンが生じる。本発明の洗浄方法は主に多結晶シリコン棒を破砕する際に生じるこのシリコン片を対象とするが、破砕シリコン片に限らず端部が鋭利なシリコン片の洗浄について効果がある。
上記シリコン片は洗浄容器に収容され、洗浄液が供給される。洗浄容器はその内部で洗浄液の緩やかな対流を形成するために筒状であって底部が漏斗状のものが好ましい。さらに洗浄容器はその底部に洗浄液の給液口を有し、上部に排液口を有するものが用いられる。
洗浄液は、半導体原料用シリコンの洗浄に通常用いるものであれば良く、例えば酸洗浄には、塩酸、硝酸、弗酸と硝酸の混酸などの水溶液が用いられる。洗浄液の酸濃度は適宜定められる。また水洗浄には純水が用いられる。
【0007】
上記シリコン片を収容した洗浄容器の底部から洗浄液を導入する。洗浄液の流圧は、容器中心部でシリコン片が上昇し、容器内壁側ではシリコン片が自重によって沈降する緩やかな対流を形成する圧力であり、容器底部の中心部から真上に向って供給する。このように洗浄液の供給方法を制御することにより容器内部を流動状態に保って洗浄を行う。シリコン片は容器中央部で洗浄液によって上昇され、容器上部で反転し、容器両側の内壁に沿い自重により沈降して容器底部に至り、再び洗浄液によって上昇される。容器内壁側においてシリコン片は自重により内壁に沿って緩やかに沈降するので、容器内壁がシリコン片によって削り取られる虞がなく、容器材料による2次汚染を生じない。
なお、自重によって容器底部に沈降したシリコン片が底部中央部に集まるように、漏斗状底部の開き角度αは図示するように100度以下が適当であり、90度以下が好ましく、60度以下が一層好ましい。この角度αが大きすぎるとシリコン片が底部に滞留し、底部中央に流下し難くなるため洗浄液による攪拌が不十分になり、シリコン片の均一な流動状態が得られない。
【0008】
酸洗浄の後に洗浄液を純水に切り替え、酸洗浄液によって流動化された容器内に容器底部の給液口を通じて純水を導入し、酸を希釈して酸洗浄液を純水に置換し、純水による洗浄を行い、酸を除去しつつ流動状態のシリコン片をこの洗浄水によって容器上部の排液口から外部に押出す。好ましい実施態様としては、洗浄容器上部の排液口に乾燥工程に至る管路と共に酸循環用管路を分岐して接続し、洗浄水の導入によって酸洗浄液を酸循環用管路に送り出し、容器内の酸濃度を次第に希釈して洗浄液と入れ替える。
酸洗浄と純水による水洗浄は必要に応じて繰返し行われる。例えば、純水洗浄→塩酸洗浄→純水洗浄→弗酸と硝酸の混酸による1次混酸洗浄→純水洗浄→2次混酸洗浄→純水洗浄の順に洗浄を行う。ここで、塩酸洗浄は金属不純物を除去するためのものであり、混酸洗浄のみでは鉄などが不動態を形成し除去し難いので予めこれを除去する。混酸洗浄はシリコン表面をエッチングし、そこに濃縮している不純物を除去するためのものであり、混酸洗浄を2回繰り返すことにより、最初の混酸洗浄でシリコン表面から溶出した金属不純物が混酸中に濃縮して再付着するのを防止する。
【0009】
洗浄後、洗浄液の給液量を増してシリコン片を洗浄液と共に容器上部の排液口から送り出し、管路を通じて密閉可能な乾燥容器に導く。シリコン片を洗浄水と共に流出させることにより洗浄容器からシリコン片を連続的に取り出すことができ、シリコン片の排出が容易になる。
乾燥容器には密閉可能な容器を用い、真空乾燥することが好ましい。具体的には、密閉自在なストッカーを管路に着脱自在に接続し、シリコン片をストッカーに流入させた後に排水し、管路を閉じて接続バルブから容器を切離し、クリーンブース内の乾燥設備に容器を移し、減圧下で乾燥する。
シリコン片の乾燥方法として従来は、乾燥容器内に熱風を供給する熱風乾燥、イソプロピルアルコールに浸漬した後に加熱乾燥する方法などが実施されているが、熱風乾燥では容器内のシリコン片の間に熱風が均一に流れず、乾燥が不均一になり易い。またアルコールを用いる方法ではアルコールの炭素が残留して2次汚染を生じるので好ましくない。真空乾燥ではこのような問題がない。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。なお本実施例は例示であり本発明の範囲を限定するものではない。
図1は本発明方法を実施する洗浄装置の一例を示す概略構成図である。図示するように洗浄容器1は筒状をなし、その底部は漏斗状に形成されており、底部中央に給液口3が設けられ、該給液口3に洗浄液の給液管5が接続されている。該給液管5には比抵抗17MΩcm以上の純水が供給されると共に塩酸タンク7、1次混酸タンク9、2次混酸タンク11が接続している。一方、洗浄容器の頭部には排液口2が設けられており、該排液口2に乾燥用ストッカー4に連なる排液管6が接続し、該排液管6から酸循環用管路8が分岐している。各管路にはバルブ10が介設され、管路の開閉と流量の調整がなされる。また管路8の分岐部分近傍にはシリコン片の流入を防ぐストレーナが介設されている。ストッカー4は接続バルブ12によって着脱自在に接続されており、その底部にはシリコン片の流出を防ぐフィルタ13を有する排水口13が設けられている。洗浄時には管路8を開き排液管6を閉じ、洗浄後は管路8を閉じ排液管6が開かれる。
【0011】
シリコン片20は洗浄容器1に収容され、給液口3を通じて洗浄液が供給される。洗浄液は所定の酸濃度になるように各タンク7、9、11から塩酸または混酸が供給される。洗浄容器内部で、洗浄液は図示するように緩やかな対流を形成し、シリコン片20はこの流れに従って容器中央部では上昇し、容器内壁側では自重によって沈降する。洗浄液の量が増加するのに伴い、洗浄液は容器頭部の排液口2から溢流し、管路8を通じて外部に排出され、あるいは塩酸タンクや混酸タンクに戻される。また洗浄後のシリコン片20は洗浄水によってストッカー4に送り出され、脱水後、ストッカー4に収容した状態で乾燥設備に送られる。因みに、上記洗浄装置の材質は例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂などが好ましい。装置材料として常用される塩化ビニルは好ましくない。塩化ビニルは含有されている安定化剤の金属化合物が硝酸によって溶出し汚染源となる。
【0012】
実施例1
多結晶シリコン棒の破砕により生じたシリコン片を漏斗状底部を有する筒状の洗浄容器に収容し、純水(比抵抗17MΩcm以上)による水洗浄後、塩酸で10分洗浄して純水で20分洗浄後、混酸で10分洗浄(1次洗浄)した後に純水で20分洗浄し、さらに混酸で10分洗浄(2次洗浄)、水で20分洗浄を行い、真空乾燥後、シリコン片に残留する不純物濃度を測定した。試料のシリコン片は平均粒径5mmのものを30g用い、洗浄液は160cc/min供給した。洗浄液は容器底部から供給し、容器中央部でシリコン片が上昇し、容器内壁側ではシリコン片が自重で沈降する緩やかな対流を形成するように洗浄した。洗浄容器の漏斗状底部の角度は60度である。洗浄前と洗浄後の不純物濃度を表1に対比して示した。また、シリコン片の使用量と洗浄液量を変えて同様の洗浄方法で洗浄を行った。この結果を表1に纏めて示した。
一方、比較のため、同様のシリコン片30g、洗浄液160cc/minの条件で、酸洗浄を行わない純水による洗浄効果と、塩酸中に静置した場合の洗浄効果および従来の塩酸中での攪拌洗浄の効果を併せて示した。なお、塩酸は原子吸光用純度38%濃度の水溶液を用い、混酸はフッ酸と硝酸を1:10に混合したものであり、フッ酸と硝酸は何れも原子吸光用純度であり、おのおの38%濃度、68%濃度である。
【0013】
【表1】
Figure 0003600837
【0014】
本実施例によれば、混酸2次洗浄後の不純物濃度は半導体原料として使用できる程度に大幅に低下している。一方、純水による洗浄のみ、および塩酸中の静置洗浄では不純物の洗浄効果は低く、半導体原料として到底使用できない。また従来の塩酸中の攪拌洗浄では、容器内壁から削られた小片(1mm以下)が液面に数個〜数十個浮遊し、このため炭素の汚染が著しく、半導体原料として使用できるものではなかった。
【0015】
実施例2
図1に示す装置を用い、洗浄容器(容量20リットル)に破砕シリコン片(平均粒径5mm)を10Kg装入し、次の手順に従って水洗浄と酸洗浄を繰返し、洗浄後、真空乾燥してシリコン片に残留する不純物濃度を測定した。この結果を表2に示した。使用した酸は、半導体用純度50%濃度フッ酸、電子工業用純度の68%濃度の硝酸および38%濃度の塩酸である。純水は比抵抗17MΩcmのものを用いた。
洗浄操作
シリコン片を収容した洗浄容器に純水を60 l/minの流量で供給し、水洗浄を行った後に、塩酸を60 l/minで10分供給し、酸洗浄を行った。溢流した塩酸は管路8を通じて塩酸タンクに戻した。引き続き純水を供給して塩酸を押し出した後に、混酸(フッ酸1:硝酸10)を60 l/minで5分供給して1次洗浄を行い、溢流した混酸は管路8を通じて混酸タンクに戻し、1次洗浄後、純水を供給して混酸を押し出した後に、さらに上記混酸を60 l/minで5分供給して2次洗浄を行った後に、純水を供給して混酸を押し出し、水洗浄を行って酸を除去した。この水洗浄の後に管路8を閉じて管路6を開き、水量を上げてシリコン片を洗浄水と共にストッカー4に導いた。シリコン片を脱水後、密閉乾燥設備に移し、真空乾燥した。
洗浄効果
上記洗浄結果を、シリコン片の使用量および洗浄液量を変えて同様の方法で洗浄した結果と併せて表2に示した。
【0016】
【表2】
Figure 0003600837
【0017】
【発明の効果】
本発明の洗浄方法によれば、多結晶シリコン棒の破砕に伴って生じる破砕屑のシリコン片などのように鋭利なシリコン片であっても、洗浄容器内壁側では自重によって緩やかに沈降するので容器内壁を削る虞がなく、洗浄容器の材料による2次汚染を生じないので、シリコン片を半導体原料として使用できる純度に洗浄することができる。従って、多結晶シリコン棒の破砕に伴って生じる破砕屑のシリコン片を洗浄して半導体原料として再利用することができ、従来はその大部分が廃棄処分されていた破砕シリコン片の有効利用を図ることができる。また、洗浄水と共に乾燥容器に排出できるので、洗浄したシリコン片の取り出しが容易であり、かつ洗浄後から乾燥するまでの間の汚染も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施する洗浄装置の一例を示す概略構成図。
【符号の説明】
1−洗浄容器、 2−排液口、 3−給液口、 4−ストッカー、
5−給液管、 6−排液管、 7−塩酸タンク、 8−酸循環用管路、
9−1次混酸タンク、 10−バルブ、 11−2次混酸タンク、
12−接続バルブ、 13−排水口、 20−シリコン片。

Claims (5)

  1. シリコン片が収容された容器底部の中心部から洗浄液を導入し、容器の中心部では供給された洗浄液によってシリコン片が上昇すると共に容器内壁側ではシリコン片が自重によって沈降する流圧の対流を容器内に形成して洗浄することを特徴とするシリコン片の洗浄方法。
  2. 多結晶シリコン棒の破砕によって生じたシリコン片を洗浄する請求項1に記載の洗浄方法。
  3. シリコン片が収容された容器底部の中心部から洗浄液を導入し、容器の中心部では供給された洗浄液によってシリコン片が上昇すると共に容器内壁側ではシリコン片が自重によって沈降する流圧の対流を容器内に形成して洗浄し、さらに、洗浄液によって流動化された容器内に純水を導入し、流動状態のシリコン片を洗浄水によって容器上部から排出させる請求項1または2に記載のシリコン片の洗浄方法。
  4. 酸洗浄と水洗浄を繰り返した後に、純水によって流動状態のシリコン片を容器上部から排出させる請求項1〜3の何れかに記載のシリコン片の洗浄方法。
  5. 純水によって排出されたシリコン片を密閉自在な乾燥容器に導き、脱水後、真空乾燥する請求項1〜4の何れかに記載するシリコン片の洗浄方法。
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