JP3600140B2 - ピアス穿孔器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、本体との間で耳朶を挟むようにスライド可能に設けられたスライド部を有し、主ばねによりスライド方向と平行な射出方向へ付勢されている射出軸を掛け止めておき、耳朶へ穿孔するときに上記掛け止めを外す構成を備えたピアス穿孔器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ピアス穿孔器には様々な種類のものがあるが、特開平4−54904号の明細書及び図面に開示された形式のものは、耳朶の目標位置に狙いを定めてピアス針を打ち出すことができるので、それまで行われていたものよりも早くかつ正確に作業できるという利点がある。このため、その後に提案された特開平11−164713号や同9−19313号に記載されているものも、特開平4−54904号の発明における係止部材によってピアス針の射出軸を掛け止めておく構成を踏襲している。
【0003】
上記発明では、係止部材を射出軸の掛け止めをする態勢に置くために、ばねによって常時付勢している必要がある。同発明における符号44、後の2点の発明における符号34や36で示されたばねがそれに該当する。このため従来の形式では射出用とスライド部材用のほかにもう1点第3のばねが必要であり、これを省略することができない。そのため簡略化に限界があり、コストにも反映せざるを得ない。
【0004】
一方、ピアス穿孔器でも使い捨て式のものが衛生的に優れているため普及しているが、価格上の要求から手指の操作でピアス針を耳朶に刺し通す簡便な構成を採用している。このため耳朶に指し通すのに10分の1秒前後の時間が必要であり、しかも熟練の差によってばらつきが大きい。日本国内では医師にのみ他人へのピアス穿孔が許されているにすぎないが、外国では多くの場合誰でも行えるので、失敗の事例も多く報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、先願発明において必要不可欠であった第3のばねの省略を可能にし、構成の簡略化を実現することである。また本発明の他の課題は、使い捨て式ピアス穿孔器においても、使い捨て式でないものと同等の正確性及び迅速性をもって安全にピアス穿孔を行えるようにすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため本発明は、射出軸を掛け止めておく掛止部材を上記スライド方向と交叉する方向へ移動可能に設け、掛止部材を支えて射出軸を掛け止める位置におく台部をスライド部に設け、スライド部のスライドにより台部が掛止部材から外れたのち、掛止部材を強制的に移動させて掛止を外すカムをスライド部と掛止部材に設けるという手段を講じたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に係るピアス穿孔器は、本体との間で耳朶を挟むようにスライド可能に設けられたスライド部を有している。このスライド部はピアス穿孔器の本体に設けられており、本体から離れる方向へばね付勢されていることが望ましい。穿孔終了後に耳朶から器具を外すには、ばね力で自動的にスライド部が離れた方が作業性が良いからである。
【0008】
本体には、上記スライド方向と平行な方向へ移動可能に射出軸が設けられており、かつ射出軸は射出方向へ付勢されている。この付勢には使い捨て式でないものと同様に十分強力な主ばねを使用することが望ましい。射出軸はばね付勢された状態で掛止部材により掛け止めておかれ、耳朶への穿孔時に掛け止めが外されて射出状態となり、ピアス針を打ち出し可能となる。
【0009】
このような器具において本発明では、射出軸を掛け止めておく掛止部材を、スライド軸のスライド方向と交叉する方向へ移動可能に設ける。射出軸を掛け止めている態勢にある掛止部材を移動させて射出軸を射出可能とするためであるが、掛止部材が移動可能に設けられているからといっても、掛止部材には射出軸からばね付勢力が作用しているので、外部から操作しなければ、掛止部材を移動させ射出軸を射出させることは確実にはできない。その反面、射出軸からのばね付勢力だけでは、掛け止め部材を射出軸を掛け止める位置においたと言うには不充分である。
【0010】
そこで本発明では、掛止部材を支えて射出軸を掛け止める位置におく台部をスライド部に設ける。台部は、従って掛止部材を射出軸との掛け止め位置におく手段であるので、換言すれば先願発明等において必須不可欠であった第3のばねに代わるものである。従って本発明によれば第3のばねが不要化されるので金属部品の削減、組み当ての容易化のほか、伸縮部材がなくなることによる作動の確実性の向上が期待される。
【0011】
このような本発明では、スライド部のスライドにより台部が掛止部材から外れたのち、掛け止め部材がカムによって強制的に移動させられ、掛け止めを外して射出軸の射出動作が行われることになる。カムはスライド部と掛け止め部との間に設けられる。
【0012】
なお、この種の穿孔器の組立てでは射出軸の射出を司るばねの組み込みが問題となる。強力なばねを、他の部材とともに本体内に収めることが容易でないためであるが、本発明ではこの主ばねを本体組み当て後に射出軸に対して後方から組み込み、ばね押さえにより主ばねの抜け止めを施すと同時に、ばね押さえが左右2部分に分かれた本体の結合手段となるように構成することもできる。
【0013】
【実施例】
以下図面を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は本発明に係るピアス穿孔器10を使い捨て式に構成した実施例を示している。ピアス穿孔器10には1個のピアス針11と1個のキャッチャ12とがセットされており、1回の使用ののち廃棄する。
【0014】
このピアス穿孔器10は本体13とスライド部14とを有しており、本体13は左右2部分15、16に分かれている。本体内上部の後側には射出軸17の収容室18が後端を開口した形態に形成されており、射出軸17は後述の掛止部材20に当たって止まる突部17aを有する。収容室18の前壁18aより前側はピアス針11を保持した分離可能なカートリッジの配置部となる。一方、スライド部14は本体内下部の前側に形成されたスライド室19に収まる。スライド部14はスライド室19に収まる軸部21とその外部先端から立ち上がって本体前部との間で耳朶を挟むようにする耳当て部22とを有し、耳当て部22には前記キャッチャ12の配置部が設けられる。
【0015】
上記射出軸17とスライド部14との間には掛止部材20が設けられる。同部材20は射出軸17を下から囲むように、上方が開放された掛止部24を上部に有し、かつまたスライド軸部21と係り合う部分を下部に有する。掛止部材20をスライド部14の移動方向と交叉する方向へ移動可能とするために、掛止部材20の左右両側を受け入れるガイド部23が本体内面に形成されている。
【0016】
射出軸17を掛け止めておくために、掛止部材20はスライド軸部21の内方端近くに設けた台部26に支えられた状態におかれる。この状態は、スライド部14が最も前進した状態であり、後端を本体側のばね受けに支持させた押しばね27によって前方へ押される、スライド部14の突起28が本体内の停止部29に当たることによって位置付けられる。図3参照。
【0017】
掛止部材20は前記の掛止部24の下部に、カム30を構成するカム突部25を設けた枠形を有する。図4参照。例示の場合掛止部材20の下部に窓開口31をあけその下枠上面にカム突部25を設けており、開口31には相手カムであるカム斜面32の頂部33がカム突部25に達するまでスライド部14の突起28の進入が可能である。
【0018】
このように構成されているピアス穿孔器10は、内部に射出軸17、スライド部14及びその押しばね27、そして掛止部材20を夫々所定の位置関係に組み込み、左右に分かれている2部分15、16を凹凸嵌合から成る結合手段34によって一体に組み合わされる。さらに本体13の分離防止のため、左右2部分15、16に結合子35を取り付ける。結合子35は左右両部分15、16を左右外方から押さえるために略U字形に形成されており、先端部に設けられた爪36によって、本体側に設けられているスライド溝37の嵌合部38に嵌まり込み、固定状態となる。
【0019】
さらに本発明ではこの結合子35を利用して、射出軸17を射出させる主ばね40の取り付けを行っている。39はばね受けであり、主ばね40の後端を支持する。主ばね40は後端の開口から収容室に挿入され、その先端は射出軸17の突部17aで支持される。このような構成を有するため本発明では強力な主ばね40を組み当ての最後に装着することができることとなり、組み立てが容易化され、部品の誤装着も防止される。
【0020】
これまでの説明では、キャッチャ12を使用するピアス針11を射出する穿孔器10に付いて記述して来たが、キャッチ不要のピアス針41を射出する穿孔器10′についても本発明を適用できることは当然であるので、その例を実施例2として図5に説明する。
【0021】
実施例2として実施例1と異なるところは、ピアス針41の僅かに膨らんだ尖端42を受け入れる小孔43が耳受け部22の上部に設けられている点のみである。実施例1ではキャッチャ12を前方へ抜け出し可能にセットする構成を持つ部分が、耳朶に接する凸面44となり、その中央に小孔43が開けられている。他の構成は実施例1の場合と全く同様で良いので符号を援用し、詳細な説明を省略する。
【0022】
実施例1に示したピアス穿孔器10について作動を説明すると、初めにピアス針11をセットした本体13とキャッチャ12をセットした耳当て部22との間に耳朶Yが来るようにピアス穿孔器10を誘導する(図6(a))。この状態でスライド部14を本体13に押しばね27に抗して押し込み(図6(b))、ピアス穿孔の目標位置に向かってピアス針11の先端を当てる。なおこの作業は例えば親指と人差し指とで器具両端を加圧する操作で行われる。図6(a)、(b)までの段階ではスライド部14の台部26から掛止部材20が外れるものの、掛止部材20は射出軸17から主ばね40の加圧力を受けているので下方へ移動するおそれはなく、やり直しも可能である。
【0023】
スライド部14と本体13とをさらに接近させると、カム30の斜面32がカム突部25に接し、掛止部材20を強制的に押し下げる作用が加わるので(図6(c))、掛止部材20は下方へ移動し、係止部24が射出軸17の突部17aから外れ、射出軸17は主ばね40の弾圧力によって急速に射出され、耳朶Yを瞬間的に打ち抜く(図7(a))。射出速度は1/100秒程度となり、従来の使い捨て式よりも著しく高速となるので、痛みも軽減される。この時点でピアス穿孔は既に終了しており、ピアス針11の先端にはキャッチャ12が嵌合している。それまでスライド部14側に付いていたキャッチャ12は、ピアス針11の嵌合により、スライド部14から外れる。同時にピアス針11の移動によりカートリッジが分離し(図7(b))、キャッチャ12はスライド部の復帰により耳当て部22から前方へ抜けることとなる(図7(c))。かくしてピアス穿孔に関係した全ての作業が完了するが、再度別のピアス針をセットしようとしても掛け止め部材をセットし直すことができないので再使用できず、安全性が損なわれない。
【0024】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成されかつ作用するものであるから、先願発明において不可欠とされていた第3のばねが不要となったので構造及び組み立てが容易となり、構成の簡略化によるコストの低減が可能となる。第3のばねがある従来の例では射出軸を掛け直して再度使用できる可能性も高いが、本発明では第3のばねがないため再度の掛け直しができず安全性が高い。また主ばねによる強力な射出作用のために使い捨て式でも使い捨て式でないものと同等の正確性及び迅速性をもって安全にピアス穿孔を行うことができる。さらに主ばねを最後に取り付けることによって、ピアス穿孔器の組み立てが容易化され、しかもばね力の選択も容易で適正な射出力を得易い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るピアス穿孔器の実施例1を示す分解斜視図。
【図2】同じく組み立てられた状態を示す斜視図。
【図3】同じく縦断面図。
【図4】掛止部材の3面図。
【図5】(a)本発明の実施例2における待機状態を示す縦断面図。
(b)同じく射出後を示す縦断面図。
【図6】(a)実施例1のものを耳朶に誘導した状態の説明図。
(b)掛止部材が台部から外れた状態の説明図。
(c)カムにより射出軸の掛け止めが外れた状態の説明図。
【図7】(a)射出軸によりピアス針が耳朶を刺通した状態の説明図。
(b)カートリッジが分離した状態の説明図。
(c)ピアス穿孔完了状態の説明図。

Claims (2)

  1. 本体との間で耳朶を挟むようにスライド可能に設けられたスライド部を有し、主ばねによりスライド方向と平行な射出方向へ付勢されている射出軸を掛け止めておき、耳朶へ穿孔するときに上記掛け止めを外す構成を備えた器具であって、射出軸を掛け止めておく掛止部材を上記スライド方向と交叉する方向へ移動可能に設け、掛止部材を支えて射出軸を掛け止める位置におく台部をスライド部に設け、スライド部のスライドにより台部が掛止部材から外れたのち、掛止部材を強制的に移動させて掛止を外すカムをスライド部と掛止部材に設けたことを特徴とするピアス穿孔器。
  2. 射出軸の射出のための主ばねを本体組み立て後に射出軸に対して後方から組み込み、ばね押さえにより主ばねの抜け止めを施すと同時に、ばね押さえが左右2部分から成る本体の結合手段となるように構成されている請求項1記載のピアス穿孔器。
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