JP3600091B2 - 着座用補助装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は足腰の筋力が低下した利用者が利用するのに好適する着座補助装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
足腰の筋力が弱っている利用者が排泄する場合、便器の便座に座ったり、立ち上がることが容易でないことがあり、そのような場合には介助者の介助が必要なことがある。
【0003】
しかしながら、足腰の筋力が弱っている利用者を立ち上がらせたり、座らせるなどの介助は容易でなく、介助者に掛かる負担が大きいから、介助者の負担を軽減することが望まれている。
【0004】
一般に、便器の便座は、後端部を支点として便器に回動可能に設けられ、利用時には便器上にほぼ水平な回動状態で保持されている。そのため、上記便座に着座するとき、利用者は臀部を便座の高さ位置まで深く降ろさなければならないから、その動作が足腰に大きな負担を掛けることになる。
【0005】
また、利用者が立ち上がるときには、便座に深く降ろした臀部を上げなければならず、しかも脚部を曲げた状態から伸ばさなければならないから、座るとき以上に大きな負担となる。
【0006】
そこで、便器の便座をばねで起立方向に付勢することが考えられている。このような構成にすれば、利用者が着座するときには、便座はばねの付勢力で上昇方向に回動した状態にある。
【0007】
そのため、利用者は臀部をわずかに降ろすことで上記便座に当てることができるから、比較的楽に座ることができ、立ち上がるときには上昇方向に付勢された便座によって臀部が押し上げられるから、その場合も比較的楽に立ち上がることが可能となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記構成の便器は、便座がばねの付勢力によって起立方向に付勢されている。そのため、利用者が比較的楽に立ち上がることができるようにするためには、ばねの付勢力を強くして利用者の臀部を強く押し上げるようにしなければならない。また、着座するときにも、利用者の臀部を確実に受けることができるようにするためにはばねの付勢力を十分に強くしなければならない。
【0009】
しかしながら、ばねの付勢力を強くすると、着座するときに臀部で便座をばねの付勢力に抗して強く押圧しなければならないから、臀部に床擦れが生じているような場合には利用者に掛かる負担が大きくなるということがあり、また体重の軽い利用者の場合には着座状態が安定しないということもある。
【0010】
しかも、利用者が立ち上がるときには、ばねの付勢力に応じて利用者の臀部が便座によって強く押されることになるから、足腰の弱い利用者の場合には足腰がふらつくなどして立ちあがるときの安定性が悪くなるということがある。
【0011】
この発明は、着座補助部材をばねによって上昇方向に強く付勢しなくとも、利用者が比較的楽に座ったり、立ち上がることができるようにした着座補助装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、利用者が着座体に座ったり、立ち上がる時の動作を介助するための着座用補助装置において、
上記着座体を囲む状態で配置されるフレームと、
このフレームの前端部に一端部を回動可能に連結して設けられた着座補助部材と、
この着座補助部材を起立方向に付勢した付勢手段と、
上記着座補助部材の一端部の幅方向両側と上記フレームとにそれぞれ連結して設けられたリンク機構と、
このリンク機構に一端を連結して設けられ他端部を押し引きすることで上記リンク機構を作動させて上記着座補助部材を回動させる操作杆とを具備し、
上記リンク機構は、上記操作杆の他端部を前方へ押すことで上記着座補助部材を上昇方向に回動させる構成であることを特徴とする着座補助装置にある。
【0014】
請求項2の発明は、利用者が着座体に座ったり、立ち上がる時の動作を介助するための着座用補助装置において、
上記着座体を囲む状態で配置されるフレームと、
このフレームの前端部に一端部を回動可能に連結して設けられた着座補助部材と、
この着座補助部材を起立方向に付勢した付勢手段と、
上記着座補助部材の一端部の幅方向両側と上記フレームとにそれぞれ連結して設けられたリンク機構と、
このリンク機構に一端を連結して設けられ他端部を押し引きすることで上記リンク機構を作動させて上記着座補助部材を回動させる操作杆とを具備し、
上記リンク機構は、上記操作杆の他端部を後方へ引くことで上記着座補助部材を上昇方向に回動させる構成であることを特徴とする着座補助装置にある。
【0017】
このような構成とすることで、着座するときや立ち上がるときに、利用者が操作杆を操作することで、着座補助部材を起立方向へ回動させたり、倒伏方向へ緩やかに倒伏させることができるから、付勢手段による付勢力を強くしなくとも、比較的楽に着座したり、立ち上がることが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1乃至図4はこの発明の第1の実施の形態の着座補助装置を示す。この着座補助装置はフレーム1を備えている。このフレーム1は、図1と図2に示すようにパイプ材を逆U字状に曲成することで形成された一対の後脚2と、この後脚2の一側と他側とに一端が固着された側部材3と、これら側部材3の他端にそれぞれ連結された前脚4とから構成されている。
【0020】
上記前脚4の上部は後方に向かってL字状に屈曲された折り曲げ部5に形成され、この折り曲げ部5の末端は上記側部材3の中途部上面に固着されている。そして、上記構成のフレーム1は、着座体としての便器6を囲む状態で配置される。
【0021】
上記前脚4の折り曲げ部5の一端部、つまりフレーム1の前端部には取付板7が固着され、この取付板7にはコ字状の枠状部材8の両側前端部が支軸9によって回動可能に連結されている。この枠状部材8には、図1に示すように前端部を枠状部材8の回動支点よりも後方に位置させて便座11が保持されている。さらに、枠状部材8の後端部上面には温水洗浄器12が取り付けられている。
【0022】
上記枠状部材8の両側中途部とフレーム1の側部材3との間にはそれぞれ付勢手段としてのガススプリング13が設けられている。このガススプリング13のロッド13aは突出方向に付勢されている。したがって、枠状部材8は上記ガススプリング13の付勢力によって所定の回動角度で起立している。
【0023】
上記前脚4の折り曲げ部5の後端部にはブラケット14が設けられている。このブラケット14には操作杆15の下端が支軸16によって回動可能に連結されている。この操作杆15は、直杆部15aと、この直杆部15aの上部に固着された曲杆部15bとからなる。上記直杆部15aは下端が上記ブラケット14に支軸16によって回動可能に連結され、上記曲杆部15bは先端部が上記フレーム1の前方に向かって延出されている。
【0024】
図3と図4に示すように、操作杆15と枠状部材8の側部前端部とはリンク機構17によって連結されている。このリンク機構17は、上記直杆部15aの下端部にフレーム1の前方に向くよう一端が固着されたL字状の第1のリンク18を有し、この第1のリンク18の他端には直線状の第2のリンク19の一端が回動可能に連結されている。この第2のリンク19の他端部はフレーム1の前方に延出され、その他端には直線状の第3のリンク21の一端が回動可能に連結されている。この第3のリンク21の他端は上記枠状部材8の前端部の側部に固着されている。
【0025】
したがって、上記操作杆15を図3に鎖線で示す状態から実線で示す状態へ回動、つまり前方へ押し下げれば、この操作杆15の回動に上記リンク機構17が連動してほぼ水平に倒伏した便座11を起立方向へ回動させることができるようになっている。
【0026】
このような構成の着座補助装置において、利用者が便座11に着座していないときには、図4(a)に示すようにガススプリング13の付勢力によって便座11が設けられた枠状部材8は前端部の支軸9を支点として所定の角度で回動上昇している。
【0027】
この状態で利用者が上記便座11に着座する場合、利用者は後向きになって両手で操作杆15の曲杆部15bの先端部を把持し、ついで腰を下して臀部を便座11に当てる。その状態で臀部を徐々に下げれば、その重量によって便座11はガススプリング13の付勢力に抗して便器6の上面に当たるまで倒伏方向へ回動する。
【0028】
したがって、利用者は便座11によって臀部が支えられながら着座することができるから、腰や脚部に大きな負担を掛けることがない。しかも、着座時には利用者が把持した操作杆15が便座11の倒伏方向の回動に連動して回動する。
【0029】
そのため、利用者は操作杆15に加える力を調整することで、上記便座11の倒伏方向への回動速度を変えることができるから、利用者の腰や脚部に負担が掛からないよう、便座11の倒伏方向への回動速度をさらに緩やかにして着座することもできる。さらに、利用者は腰を下ろすときには操作杆15を把持しているから、身体がふらつくようなことなくその動作を安定して行うことができる。
【0030】
便座11を倒伏させて着座した利用者が起立する場合には、操作杆15の曲杆部15bの先端部を把持し、その先端部を図4(b)に矢印で示すように前方へ押し下げる。
【0031】
それによって、この操作杆15の回動に便座11が設けられた枠状部材8がリンク機構17によって前端部を支点として起立する方向に回動するから、利用者は臀部が押し上げられることになる。そのとき、枠状部材8にはガススプリング13の付勢力が加わるから、操作杆15を前方に押し下げるために要する操作力を軽減することができる。
【0032】
したがって、利用者は比較的軽い操作力で操作杆15を操作することで、臀部が斜め前方に押し上げられることになるから、足腰に大きな負担を掛けることなく立ち上がることができる。このときも、利用者は操作杆15を把持しているので、足腰の状態が安定するまで身体を確実に保持しておくことができる。
【0033】
しかも、枠状部材8に設けられた便座11の前端が枠状部材8の回動支点となる支軸9よりも後方に位置している。そのため、利用者が便座11を回動上昇させて起立するときに、便座11の先端部が脚にぶつかることがないから、利用者は安定した状態で立ち上がることができる。
【0034】
図5及び図6(a),(b)はこの発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態はリンク機構17Aの変形例であって、このリンク機構17Aは操作杆15を後方へ引くことで枠状部材8をほぼ水平に倒伏した状態から起立方向へ回動上昇させることができるようになっている。
【0035】
すなわち、上記リンク機構17Aは操作杆15の直杆部15aの下端部にフレーム1の前方に向かうよう一端が固着された直杆状の第4のリンク31を有する。この第4のリンク31の他端には、第4のリンク31に比べて短尺な第5のリンク32の一端が枢着されている。この第5のリンク32の他端は枠状部材8の前端部の側部下面に枢着されている。
【0036】
このような構成によれば、図6(b)に示すように便座11に利用者が着座し、枠状部材8がガススプリング13の付勢力に抗して倒伏した状態において、利用者が操作杆15の曲杆部15bの先端部を把持して後方に引けば、リンク機構17Aが作動して図6(a)に示すように枠状部材8が起立方向に回動する。
【0037】
したがって、利用者は足腰に大きな負担を掛けることなく、比較的楽に立ち上がることが可能となる。この場合も、枠状部材8にはガススプリング13の付勢力が作用しているから、利用者は比較的軽い操作力によって操作杆15を後方へ引くことができる。
【0038】
また、利用者が着座する場合には、便座11が設けられた枠状部材8がガススプリング13の付勢力によって所定角度に回動上昇している。そのため、利用者は臀部を大きく落とすことなく上記便座11に当てることができるから、第1の実施の形態と同様、足腰に大きな負担を掛けることなく着座することができる。
【0039】
なお、上記第1、第2の実施の形態において、操作杆15の操作は、利用者が自ら行ってもよいが、利用者の状態などによっては介助者が行ったり、手助けをするなどしてもよいこと勿論である。
【0040】
図7(a),(b)はこの発明の第3の実施の形態を示す。この実施の形態は便器6に便座35が回動可能に取り付けられている場合で、そのような場合には着座補助装置の枠状部材8にはキャンバスなどのような強度を有する布地やネットなどの材料によって形成されたシート36を張設する。このシート36には上記便座35と対応する位置に開口部36aが形成されている。
【0041】
シート36は枠状部材8にベルベットファスナなどでその周囲を着脱可能に固定されており、汚れたら取り外して洗濯することができる。また、シート36にはパイル地を重合して暖かくしたり、シート36上面に柔らかいクッションを張り付けて使用してもよい。また、シート36は柔軟であるため、便座35の曲面に沿って湾曲するから、利用者は臀部に違和感なく安定した状態で使用することができるということもある。
【0042】
このような構成の着座補助装置によれば、便器6に便座35が設けられている場合に適用することができる。
【0043】
この発明は上記各実施の形態に限定されるものでなく、たとえば着座体としては便器に限られず、椅子などであってもよく、要は利用者が座ったり、立ち上がったりするものであれば、この発明の着座補助装置を適用することができる。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、フレームに回動可能に設けられた着座補助部材を、付勢手段によって起立方向に付勢するとともに、操作杆によって回動を制御できるようにした。
【0045】
そのため、利用者が着座するときや立ち上がるときに、操作杆の操作によって着座補助部材を起立方向へ回動させたり、倒伏方向へ緩やかに倒伏させることができるから、付勢手段による付勢力を強くしなくとも、比較的楽に着座したり、立ち上がることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す便器を囲む状態で着座補助装置を配置した斜視図。
【図2】同じくフレームの斜視図。
【図3】同じくリンク機構の側面図。
【図4】(a)は同じく利用者が着座するときの説明図、(b)は同じく立ち上がるときの説明図。
【図5】この発明の第2の実施の形態を示すリンク機構の側面図。
【図6】(a)は同じく着座するときの説明図、(b)は同じく立ち上がるときの説明図。
【図7】(a)はこの発明の第3の実施の形態を示す便器を囲む状態でフレームを配置した状態の斜視図、(b)は同じくフレームの斜視図。
【符号の説明】
1…フレーム
6…便器(着座体)
8…枠状部材(着座補助部材)
11…便座(着座補助部材)
13…ガススプリング(付勢手段)
15…操作杆
17,17A…リンク機構
35…便座
36…シート
Claims (2)
- 利用者が着座体に座ったり、立ち上がる時の動作を介助するための着座用補助装置において、
上記着座体を囲む状態で配置されるフレームと、
このフレームの前端部に一端部を回動可能に連結して設けられた着座補助部材と、
この着座補助部材を起立方向に付勢した付勢手段と、
上記着座補助部材の一端部の幅方向両側と上記フレームとにそれぞれ連結して設けられたリンク機構と、
このリンク機構に一端を連結して設けられ他端部を押し引きすることで上記リンク機構を作動させて上記着座補助部材を回動させる操作杆とを具備し、
上記リンク機構は、上記操作杆の他端部を前方へ押すことで上記着座補助部材を上昇方向に回動させる構成であることを特徴とする着座補助装置。 - 利用者が着座体に座ったり、立ち上がる時の動作を介助するための着座用補助装置において、
上記着座体を囲む状態で配置されるフレームと、
このフレームの前端部に一端部を回動可能に連結して設けられた着座補助部材と、
この着座補助部材を起立方向に付勢した付勢手段と、
上記着座補助部材の一端部の幅方向両側と上記フレームとにそれぞれ連結して設けられたリンク機構と、
このリンク機構に一端を連結して設けられ他端部を押し引きすることで上記リンク機構を作動させて上記着座補助部材を回動させる操作杆とを具備し、
上記リンク機構は、上記操作杆の他端部を後方へ引くことで上記着座補助部材を上昇方向に回動させる構成であることを特徴とする着座補助装置。
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