JP3599960B2 - ギアポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、互いに噛み合う一対のギアの回転によりポンプ作用をなすギアポンプに関する。特に、一方のギアが、整流子付き電動モータによって駆動されるものに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
ギアポンプは、簡単な構造を有する小型軽量のポンプとして種々の産業分野に用いられている。例えば、近年、上述のギアポンプを電動モータで駆動する電動ポンプユニットとして構成し、このユニットで発生した油圧によって、自動車の舵輪(ステアリングホイール)の操作力を軽減する電動ポンプ式パワーステアリング装置が考えられている。
【0003】
このような電動ポンプ式パワーステアリング装置では、上述の電動ポンプユニットの電動モータに、整流子付きモータが適用されている。整流子付きモータには、外部回路から回転する電機子に通電するために、回転する整流子に接触する黒鉛電極等のブラシが、固定部材として備えられている。このため、このユニットで生ずる騒音には、モータのブラシに起因した騒音(モータ騒音)と、ギアポンプのギアに起因した騒音(ギア騒音)とが含まれており、これらの騒音が合わさった複合騒音が発生していた。
【0004】
一方、電動ポンプ式パワーステアリング装置の電動ポンプユニットは静粛性を要望されている。また、電動ポンプ式パワーステアリング装置に限らず、電動ポンプユニットを用いた一般の装置においても、電動ポンプユニットの静粛性が要望されている。
そこで、本発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、共振に起因した複合騒音の発生を抑制できるギアポンプを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願発明者は以下の点に着目した。すなわち、モータ騒音は整流子数に比例する複数の周波数で騒音ピークを有しており、また、ポンプ騒音はギア歯数に比例する複数の周波数で騒音ピークを有している。従来、これらギア歯数と整流子数との関係は一切考慮されていなかったので、上述のモータ騒音とポンプ騒音との両騒音ピークがほぼ一致する周波数(共振周波数)が比較的に低い周波数帯域に現れ、その結果、両騒音が互いに共鳴して不快な大きさの音を発生しているのではないかとの知見を得るに至った。
【0006】
これらの事柄に鑑みて、本願発明者は以下の本発明を完成したものである。
請求項1にかかる発明のギアポンプは、整流子付き駆動用モータで駆動されるギアを有するギアポンプにおいて、上記ギアの歯数および整流子数の最小公倍数を騒音低減に寄与できる所定値以上としたことを特徴とする。
ここで、騒音低減に寄与できる所定値以上とは、ギア騒音とモータ騒音との共振周波数が、人間にとって聴感が鈍くなる周波数、例えば10kHz以上を実現できるような、歯数および整流子数の最小公倍数の値であり、具体的には、17kHz以上(ポンプの回転速度4000RPM、ギアの歯数が13、整流子数が20の場合)である。
【0007】
この構成によれば、ギア歯数および整流子数の最小公倍数を設定すると、ギア騒音とモータ騒音との共振周波数を決めることができる。この共振周波数を、聴感が鈍くなる周波数以上としたので、体感上の騒音を低減することができる。
請求項2にかかる発明のギアポンプは、請求項1に記載のギアポンプにおいて、上記歯数と整流子数とは、互いに素であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、請求項1にかかる発明の作用に加えて、歯数や整流子数を極端に多くすることなく、両者の最小公倍数を上述の所定値以上にすることができる。
ここで、歯数と整流子数との組合せとしては、(13,20)、(11,20)、(17,20)等の組合せを例示することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態にかかるギアポンプを含む電動ポンプユニットの概略構成を示す正面図である。図2は、図1のギアポンプの断面側面図であり、ハッチングを省略してある。
【0010】
電動ポンプユニットAは、ギアポンプ1と、ギアポンプ1を駆動するモータ2と、モータ2の回転軸21とギアポンプ1の駆動軸11とを接続する軸継手3とを有している。モータ2は、ギアポンプ1のハウジング12に取付部材(図示せず)を介して固定されている。
モータ2は、直流モータである。モータ2は、回転トルクを取り出すための回転軸21を含み回転トルクを発生するための回転子22と、回転子22に外部回路から電流を供給するための複数のブラシ23とを備えている。
【0011】
ブラシ23は、回転子22の外周面に等配に配置された複数、例えば、20個(整流子数Nc)の整流子と接触している。回転子22が回転すると、ブラシ23は各整流子に順次接触しながら 、整流子を介して回転子22の電機子巻線に給電する。各整流子は、回転子22の外周面に配置された部分で、ブラシ23の端面と接触している。ブラシ23は炭素電極からなり、回転子22の外周面に沿って配置された整流子の周囲に、等配に配置されている。
【0012】
回転軸21は、モータ2の一端より突出して設けられている。回転軸21の端部には、軸継手3が取り付けられており、軸継手3はギアポンプ1の駆動軸11に駆動連結されている。
ギアポンプ1は、中央部を貫通する長円形断面の空洞を有する本体筒10aと、本体筒10aの両側全面を覆う一対の蓋板10bと、本体筒10aの空洞の両側から嵌挿された一対のサイドプレート10cとによって構成されたハウジング10を有している。ハウジング10の内部には、略長円形のギア室13が区画されている。ギアポンプ1は、ポンプ作用をなすために、ギア室13内に配置された互いに対をなす駆動ギア14および従動ギア15を備えている。
【0013】
ギア室13は、両ギアの噛み合い位置を挟んだ両側に、吸込室13aと、吐出室13bとを有している。吸込室13aおよび吐出室13bは、ハウジング10の対応位置に開口する吸込口10eおよび吐出口10fを介して、ハウジング10外の図示しない吸込先および吐出先にそれぞれ接続されるようにしてある。また、ギア室13の半円部の一方に駆動ギア14が配置され、ギア室13の半円部の他方に従動ギア15が配置されている。
【0014】
駆動ギア14は、一体に形成された駆動軸11によって、ギア室13の半円部の一方の軸心上に位置してハウジング10に回転自在に支持されている。従動ギア15は、駆動軸11に平行な軸線を有した支持軸17によって、ギア室13の他方の半円部の軸心上に位置してハウジング10に回転自在に支持されている。駆動ギア14と従動ギア15とは、同数の歯を有し、互いに噛み合っており、駆動ギア14の回転に伴って、従動ギア15が従動回転するようにしてある。
【0015】
このギアポンプ1では、吸込口10eを経て吸込室13aに導入される油等の作動流体は、吸込室13aに臨む駆動ギア14および従動ギア15の歯間に受け入れられ、両ギアの回転により、それぞれの歯間と、ギア室13の内周面との間に封止された状態で搬送され、吐出室13bに送り出される。
駆動ギア14は、その外周部に等間隔で配置された複数の歯を有している。この歯数Ntは、例えば、13であり、モータ2の整流子数Ncに応じた値に設定されている。すなわち、歯数Ntと整流子数Ncとの最小公倍数Mが、後述するように騒音低減に寄与できる所定値R以上となる値に設定されている。ここで、騒音低減に寄与できる所定値R以上とは、ギア騒音とモータ騒音との共振周波数Frが、人間にとって聴感が鈍くなる周波数、例えば10kHz以上を実現できるような、歯数Ntおよび整流子数Ncの最小公倍数の値であり、具体的には、所定値Rは17kHz以上(ポンプの回転速度4000RPM、ギアの歯数が13、整流子数が20の場合)である。
【0016】
なお、共振周波数Frは、10kHz以上であればよく、より高い周波数とすれば体感上の騒音をより確実に低減することができる。
また、駆動ギア14の歯数Ntは、モータ2の整流子数Ncに対して、互いに素の関係にある値とされている。それゆえ、歯数Ntおよび整流子数Ncを極端に大きくすることなく、最小公倍数を大きくして所定値R以上にすることができる。
【0017】
次に、この電動ポンプユニットAの動作を説明する。
モータ2は、所定の運転条件、例えば、4000RPMの回転速度で運転される。それに伴い、ギアポンプ1の駆動ギア14および従動ギア15も同じ回転速度で回転する。この動作に伴い、作動流体が送出される。
ところで、この電動ポンプユニットAでは、モータ2のブラシ23に起因したモータ騒音と、ギアポンプ1の駆動ギア14に起因したギア騒音とが合わさった複合騒音が発生する場合がある。
【0018】
図3は、電動ポンプユニットAの騒音特性を説明するためのグラフであり、横軸に周波数(Hz)、縦軸に騒音の大きさを示し、(a)はモータ騒音、(b)はギア騒音、(c)は複合騒音を示す。
モータ騒音は、周波数特性で見ると、複数の騒音ピークを有している。これらの騒音ピークの各周波数FB1,FB2,…には、整流子数Ncまたはその倍数(×2,×3,…)と、モータ2の回転軸21の回転速度Vmとに関連しているものがある。
【0019】
ギア騒音は、周波数特性で見ると、複数の騒音ピークを有している。これらの騒音ピークの各周波数FG1,FG2,…には、駆動ギア14の歯数Ntまたはその倍数(×2,×3,…)と、駆動ギア14の回転速度Vpとに関連しているものがある。なお、本実施の形態では、回転速度Vp=回転速度Vmである。
また、複合騒音は、周波数特性で見ると、複数の騒音ピークを有している。これらの騒音ピークの各周波数FC1,FC2,…には、ギア騒音の各周波数FG1,FG2,…と、モータ騒音の各周波数FB1,FB2,…との少なくとも一方と一致しているものがある。例えば、周波数FC1は周波数FB1と一致している。また、歯数Ntと整流子数Ncとの最小公倍数に関連している周波数FC260(共振周波数Fr)は、17.3kHz(モータ2が4000RPMのとき)と高く、聴感が鈍くなる周波数、例えば、10kHz以上にできているので、モータ騒音とギア騒音の騒音ピーク同士が重なり合って、大きな騒音ピークとなっていても問題ない。
【0020】
このように本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。すなわち、駆動ギア14の歯数Ntと整流子数Ncの最小公倍数を設定すると、ギア騒音とモータ騒音との共振周波数Frを決めることができる。この共振周波数Frを、歯数Ntと整流子数Ncの最小公倍数を所定値R以上とすることによって、聴感が鈍くなる周波数以上としたので、体感上の騒音を低減することができる。
【0021】
また、歯数Ntと整流子数Ncとを互いに素とすることによって、歯数Ntと整流子数Ncの両者の最小公倍数を所定値R以上にするために、歯数Ntと整流子数Ncを極端に多くする必要がないので、上述のように騒音の低減を図る際に、ギアポンプ1や電動ポンプユニットAの大型化を回避することができる。従って、従来のギアポンプや電動ポンプユニットとほぼ同じ大きさ、能力を維持しつつ、騒音の低減を実現することができる。
【0022】
例えば、整流子数Nc=20、歯数Nt=13の本発明の場合には、最小公倍数を260と、整流子数Nc=20、歯数Nt=12の従来の場合の最小公倍数が60であるのに比べて格段に大きくすることができる。従って、共振周波数Frを約4.3倍に高くすることができる。しかも、本実施形態の歯数(13)は、従来の歯数(12)との差も小さいので、ギアポンプとして構成した場合にポンプ能力やポンプの大きさを従来と同程度とすることができる。
【0023】
なお、上述の実施の形態では、駆動ギア14の回転速度は、モータ2の回転速度と等しく設定されていたが、異なっていても構わない。
また、歯数Ntおよび整流子数Ncの組合せは、上述の組合せ(13,20)の他に(11,20)、(17,20)等の組合せを例示することができる。
また、上述の実施の形態では、歯数Ntと整流子数Ncとの最小公倍数の所定値Rを設定したが、換言すれば、この所定値Rを電動ポンプユニットAの運転条件に応じた値に設定してもよく、要は、ギア騒音とモータ騒音との共振周波数Frが、人間にとって聴感が鈍くなる周波数以上を実現できるような、歯数Ntと整流子数Ncの最小公倍数の値であればよい。
【0024】
その他、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0025】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、以下の効果を奏する。すなわち、ギア歯数および整流子数の最小公倍数を所定値以上に設定することによって、ギア騒音とモータ騒音との共振周波数を、聴感が鈍くなる周波数以上にできるので、体感上の騒音を低減することができる。その結果、低騒音のギアポンプを実現することができる。
【0026】
請求項2に係る発明によれば、請求項1にかかる発明の効果に加えて、歯数と整流子数とを互いに素とすることによって、上述のように騒音を低減するために歯数や整流子数を極端に多くする必要がないので、ギアポンプ、ひいては電動ポンプユニットの大型化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるギアポンプを含む電動ポンプユニットの概略構成を示す正面図である。
【図2】図1のギアポンプの断面側面図であり、図1のII─II線に沿う断面図であってハッチングを省略してある。
【図3】図1の電動ポンプユニットの騒音特性を説明するためのグラフであり、横軸に周波数(Hz)、縦軸に騒音の大きさを示し、(a)はモータ騒音、(b)はギア騒音、(c)は複合騒音を示す。
【符号の説明】
1 ギアポンプ
2 モータ
14 駆動ギア(ギア)
23 ブラシ

Claims (2)

  1. 整流子付き駆動用モータで駆動されるギアを有するギアポンプにおいて、
    上記ギアの歯数および整流子数の最小公倍数を騒音低減に寄与できる所定値以上としたことを特徴とするギアポンプ。
  2. 請求項1に記載のギアポンプにおいて、
    上記歯数と整流子数とは、互いに素であることを特徴とするギアポンプ。
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