JP3599005B2 - スクロール流体機械 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧縮機、真空ポンプ、膨張機などに用いられる容積形流体機械の一種であるスクロール流体機械に係り、特に種々の用途において高性能かつ高信頼性を図るのに好適なスクロール流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば特開昭57−73803号公報に記載されているように、スクロール流体機械の基本的な原理そのものは、古くから一般的に知られており、加工が容易なことなどからラップの渦巻形状として、図13に示すように一定の直径を有する円の伸開線であるインボリュートからなる形状ものが使用されてきた。
【0003】
このようなスクロール流体機械の基本的な構成要素は、一定の直径を有する円の伸開線であるインボリュートからなる同一形状の渦巻体をもつ固定スクロール2と旋回スクロール1、旋回スクロ−ル1の外周側で固定スクロ−ル2に設けられた吸入ポ−ト2c、固定スクロ−ル2の中央部に設けれられた吐出ポ−ト2d、図示しないが固定スクロ−ル2に対して旋回スクロ−ル1を旋回運動させるための自転防止機構、旋回スクロ−ル1を駆動させるための駆動装置から構成されている。
【0004】
又、特開昭60−252102号公報に記載のように、渦巻状のラップの肉厚を巻き始めから巻き終りまで連続的に変化させたものが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来のスクロール流体機械のうち、両スクロールを形成する渦巻体が一定半径の円の伸開線であるインボリュート曲線によって形成されているものでは、渦巻の形状は伸開線の基礎円の半径a、渦巻の巻角(伸開角)、渦巻体の厚さt及び高さhを決定すると、渦巻形状に対する自由度は限定されており、行程容積(最外周の閉じ込み完了時の容積)や組込容積比(内部容積比)が一義的に決定されるため、次のような問題点を有していた。
【0006】
すなわち、吸込み圧力と吐出し圧力の比(圧力比)が大きな条件で運転される冷凍用の圧縮機では、組込容積比を大きくしなければならないが、この組込容積比を大きくするためには、巻角を大きくしなければならず、外形が大きくなる。また、外形寸法や渦巻体の高さを一定として巻角を大きくした場合には、渦巻体の板厚さが小さくなり、強度が低下する、あるいは行程容積が減少するなどの制約を受けていた。
【0007】
又、作動室間の圧力差は、流体が圧縮され圧力の高くなる中心部ほど大きくなるが、上記した従来のスクロール流体機械では渦巻体の板厚が均一であるため、強度低下に対しては渦巻体の高さを一様に低くするか渦巻体の板厚を一様に厚くしなければならないため、不必要な部分まで厚くなり径寸法が大きくなるなどの問題が生じていた。
【0008】
又、特開昭60ー252102号公報に記載のものでは、渦巻き状のラップの肉厚を巻き始めから巻き終りまで変化させているものの、実証的検討を行ったところ、位相などを考慮していないため、固定スクロールと旋回スクロールの曲線が異なり、旋回スクロールと固定スクロールとの加工を異なる加工プログラムで行う必要があった。又、例えば旋回スクロールの渦巻状ラップの外線と固定スクロールの渦巻状ラップの内線との接点は基礎円上の接線からずれるため、必ずしもシール点が完全なものではなかった。
【0009】
本発明の目的は、組込容積比や行程容積、渦巻体の板厚などに対する設計自由度を増し、それぞれの用途に応じた最適な形状のスクロール流体機械を得ることにある。
【0010】
本発明の他の目的は、一方のスクロール部材の背面に背面室を形成し、該背面室に吸入圧力より高い圧力を作用させて他方のスクロール部材に押し付けるようにしたものにおいて、渦巻体の中心部側でかじりや焼き付きなどの損傷が生じるのを防止した信頼性の高いスクロール流体機械を得ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のスクロール流体機械は、台板上に形成された渦巻体を有する2つのスクロール部材を噛み合わせて形成される密閉空間を、一方のスクロール部材を他方のスクロール部材に対して相対的に旋回運動させることにより、拡大あるいは減少させ流体の膨張あるいは圧縮を行うようにしたスクロール流体機械において、前記一方のスクロール部材の背面には背面室が形成され、該背面室には吸入圧力より高い圧力を作用させて前記他方のスクロール部材に押し付けるようにし、前記噛み合わせる両スクロール部材の渦巻体の形状が、渦巻体の一部あるいは全体にわたり、渦巻きの中心部から外側に向かって、両スクロール部材の渦巻体の溝幅が変化すると共に渦巻体の歯厚が小さくなるように構成し、かつ伸開角により半径が変化する円の伸開線により形成され、さらに同一の伸開角に対し、前記渦巻体の外側形状を形成する伸開線の円の半径が渦巻体の内側形状を形成する伸開線の円の半径より小さい半径を有する構成としたことにある。
【0012】
本発明の他の特徴は、台板上に形成された渦巻体を有する2つのスクロール部材を噛み合わせて形成される密閉空間を、一方のスクロール部材を他方のスクロール部材に対して相対的に旋回運動させることにより、拡大あるいは減少させ流体の膨張あるいは圧縮を行うようにしたスクロール流体機械において、前記一方のスクロール部材の背面には背面室が形成され、該背面室には吸入圧力より高い圧力を作用させて前記他方のスクロール部材に押し付けるようにし、前記噛み合わせる両スクロール部材の渦巻体の形状が、渦巻体の一部あるいは全体にわたり、渦巻きの中心部から外側に向かって、両スクロール部材の渦巻体の溝幅が変化すると共に渦巻体の歯厚が小さくなるように構成し、かつ前記両スクロール部材の渦巻体の側面は互いに複数の点でシールポイントを有する共に、複数のシールポイントと前記渦巻体を形成する基礎円とを結ぶ線分を共用する構成としたことにある。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を密閉形スクロール圧縮機を例にとり、図1から図8により説明する。図1は本実施例に係る密閉形スクロール圧縮機の縦断面図であり、図2、図3はそれぞれ本実施例の円の伸開線を示す図、図4は歯、渦巻形状を示す平面図であり、図5は旋回スクロールと固定スクロールを組み合わせた状態を示す図、図6はスクロール圧縮機の作動原理を示す図、図7は歯、渦巻形状を示す平面図、図8は容積変化の関係を示す図である。
【0014】
図1に示すように、密閉形スクロール圧縮機は、互いにラップを内側に向けて組み合わされ、相対的に旋回運動を行う旋回スクロール1と固定スクロール2、クランク軸3、固定スクロール2に締結されたフレーム4を備えるスクロール形圧縮機構部と、これを駆動するモータ5と、これらを収納する密閉容器6などからなっている。旋回スクロール1は台板1a上に渦巻き状のラップ1bを有し、背面には例えばオルダム機構などの自転を防止するための自転防止機構1cと、クランク軸3のクランク部が挿入される旋回軸受1dを有する。固定スクロール2も台板2a上に渦巻状のラップ2bを有する。また固定スクロール2には吸入口2cと吐出口2dが設けられている。旋回スクロール1の背面には、フレーム4にて背面室4bが形成される。この背面室4bは旋回スクロール1の台板1aに設けた均圧穴(図示せず)により、旋回スクロール1及び固定スクロール2の各ラップと台板で形成される圧縮室に連通している。またフレーム4には、クランク軸3を支承する主軸受4cと、モータ5を支承する脚柱4dが設けられている。クランク軸3内には給油穴3aが設けられ、密閉容器6底部の油が旋回軸受1d、主軸受4cへ給油される。
【0015】
このように構成された密閉形スクロール圧縮機において、モータ5の回転によりクランク軸3と自転防止機構1cの働きで、旋回スクロール1と固定スクロール2が相対的に旋回運動を行い、両スクロール1,2で形成される圧縮室が中心に移動するに従ってその容積を減少する。すなわち、図6に示すように、固定スクロール2に対して旋回スクロール1は、その姿勢を変化させないで図6にクランク角φ=0°、90°、180°、270°として示したように固定スクロール2の中心のまわりに公転運動、すなわち所定のクランク半径ε(旋回半径)で旋回運動を行なう。このとき、これら両スクロール1,2により形成される三日月状の密閉空間9(以下作動室9と称す)の容積が減少され、吸入ポート2eより作動室9内に吸い込まれた流体を圧縮して吐出ポート2dから密閉容器6内へ排出する。密閉容器6内へ吐出された流体は、吐出管6aより外部へ吐出される。また、圧縮機構部で圧縮作用を行うと両スクロール1,2を離そうとする力が作用するが、旋回スクロール1背面の背面室4bには吸入圧力より高く、吐出圧力より低い中間の圧力が作用しているので、その中間圧力により旋回スクロール1は固定スクロール2へ押し付けられる。
【0016】
上記のようにスクロール圧縮機の圧縮機構部は、台板1a,2aとこの台板1a,2aに直立した渦巻体1b,2bとからなる旋回スクロール1及び固定スクロール2から構成されている。本実施例の旋回スクロール1及び固定スクロール2の渦巻体の形状は、図2及び図3に示したように、伸開角に応じて基礎円の半径が変わる円の伸開線により形成されている。すなわち、伸開線の基礎円の半径aを伸開角λの関数として表したとき、
a=f(λ) …(1)
伸開線上の点は、
X=f(λ)cosλ+f(λ)λsinλ …(2)
Y=f(λ)sinλ−f(λ)λcosλ …(3)
として与えられる。この場合、f(λ)のλによる微分は次式で表されるが、
f’(λ)=df(λ)/dλ …(4)
f’(λ)>0の場合は、図2に示すように外周部ほど線間の幅は広くなり、f’(λ)<0の場合は、図3に示すように外周部ほど線間の幅は狭くなる。
【0017】
渦巻体1b,2bの形状は、渦巻体1b,2bの外側と内側の形状を決める必要があるが、本実施例の渦巻体1b,2bの形状は、渦巻体1b,2bの外側を表す伸開線の基礎円の半径をao、渦巻体の内側の形状を表す伸開線の基礎円の半径をaiとしたとき、基礎円の半径ao、基礎円の半径aiは、それぞれ数式5、数式6で表すことができる。
ao=f(λ) …(5)
ai=f(λーπ) …(6)
ここで、図4に示す渦巻体2bの形状は、渦巻体の内側の形状を表す伸開線の基礎円の半径は、渦巻体2bの外側の形状を表す伸開線の基礎円の半径に対し、伸開角λに対しπだけ小さい値となるように形成されている。すなわち、図4に示す渦巻体の形状において、基礎円5の半径ao=f(λp)を共有する渦巻体2bの外側の点Pの伸開角をλpとし、内側の点Qの伸開角をλgとすると、数式7で表される関係となるように設定される。
【0018】
λg=λP+π …(7)
また、基礎円の半径aの伸開角λに対する増分は、数式4で表され、図4、図5に示す渦巻体2の形状では、f’(λ)<0、すなわち伸開角λが大きくなる渦巻体2bの外側となるにつれて、基礎円の半径が小さくなるように設定されている。この時、作動室9が形成されるためには、2つの渦巻体1,2が複数個のシールポイント(接点)を形成するように構成される必要があり、渦巻体1,2の厚さも、外側へ伸びるにつれ小さくなるように基礎円の半径aが設定されている。
渦巻体1b,2bの形状をこのように構成にすることにより、位相差πを有しているので、伸開角に応じて半径が変る円の伸開線により渦巻体1b,2bを形成しても、旋回スクロール1と固定スクロール2は、それぞれ複数の点で接触するかシールポイントを形成し、かつそれらの接点と基礎円とを結ぶ線分を共用するように設定でき、両スクロール部材は、渦巻体のそれぞれの側面に垂直な位置にシールポイント(或いは接点)を有することができる。
このように構成されたスクロール流体機械においては、図6に示すように、旋回スクロール1が旋回運動を行うに伴って、両スクロール1,2が同時に複数個のシールポイントを有しながら動作し、最外周側でシールポイントが形成された後密閉空間が形成され、外周側から吸入したガスは密閉空間に閉じ込められ、その後その密閉空間の体積が縮小していくので、ガスが圧縮され中央部から吐出される。
上述したように構成した場合、複数形成される作動室9のうち最外室の閉じ込み容積(最外周側でシールポイントが形成された直後の密閉空間の容積のことをいう)を等しく設定すると、一定の基礎円半径を持つ従来の伸開線からなる渦巻体を用いた場合に比べ、両スクロール1,2の外径を小さくできる。また、同程度の外径に設定するとすると、一定の基礎円半径を持つ従来の伸開線からなる渦巻体を用いた場合に比べ、渦巻の巻数を増やすことができる。このとき、外周部ほど歯の厚みが減少し、シール点の伸開角λに対する密閉空間の閉じ込み容積を最小密閉空間の閉じ込み容積の比として表した図8に示すように、伸開角λに対する容積変化率を小さくすることができるので、よりなめらかな運転用途に対応することができる。また、渦巻体に作用する隣あう作動室9間の圧力差が大きな中心部の渦巻体の厚さを増すことができるので、渦巻体の強度向上や漏れ量の低減をはかることができる。更に、外周部については、渦巻体の中央部ほど厚くする必要がないため、旋回スクロールと固定スクロールの重量軽減をはかることができる。
【0019】
次にf’(λ)>0の場合、すなわち、渦巻が外側へ伸びるにつれて渦巻体2bの基礎円の半径が大きくなる場合について、図7により説明する。この場合もf’(λ)<0の場合について説明したと同様であるが、旋回スクロールと固定スクロールは、それぞれ複数の点で接触し、かつ接点と基礎円とを結ぶ線分を共用することができるが、渦巻体2bの厚さも渦巻が外側へ伸びるにつれて大きくなるように設定されているので、渦巻体2bの巻数を一定とすると、一定の基礎円半径を持った従来の伸開線からなる場合に比べ、最外周の閉じ込み容積と、最内室の閉じ込み容積との比(組込容積比)が大きくなり、より圧力比の高い運転などの用途に適している。この場合は、図8に示すように、伸開角λに対する容積変化率は大きくなる。
【0020】
以上述べたように、本実施例においては、行程容積や組込容積比、渦巻体1b,2b、強度、性能、信頼性、生産性などの目的と用途に応じて渦巻体1b,2bの形状の最適化を図ることができる。また、旋回スクロール1び固定スクロール2の渦巻体1b,2bを同じ加工プログラムで加工することができ、生産性がよい。また、位相差πを有しているので、伸開角λに応じて半径が変わる円の伸開線により渦巻体1b,2bを形成しても、旋回スクロール1と固定スクロール2はそれぞれ複数の点でシールポイント(接点)を形成し、かつ接点と基礎円とを結ぶ線分を共用するように設定でき、両スクロール1,2は、渦巻体1b,2bのそれぞれの側面に垂直な位置にシールポイントを有するので、シール性がよいスクロール流体機械を得ることができる。
【0021】
以上説明したように、本実施例では、旋回スクロール1の外周側で固定スクロール2に設けられた吸入ポート2c、固定スクロール2の中央部に設けれられた吐出ポート2dを有し、自転防止機構により固定スクロール2に対して旋回スクロール1を旋回運動させる旋回式の圧縮機について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば図6においてクランク角φ=0°、270°、180°、90°で示すように、旋回スクロール2は、逆に旋回運動し、流体は吐出ポート2dから作動室3内に流入し、膨張して渦巻体の外周側の吸入ポート2cに吐き出されるように構成されるスクロール形膨張機、スクロール形真空ポンプ、両スクロール部材を所定の距離だけ偏心させ、それぞれ中心まわりに回転させる、いわゆる両回転式のスクロール流体機械にも同様に適用することができる。
【0022】
次に、本発明の他の実施例を説明する。本実施例のラップ形状は、伸開線の基礎円の半径aを伸開角λの関数として表したとき、
と一次関数となる場合を示している。この場合、旋回スクロールの外線の形状は、
で設定し、旋回スクロールの内線の形状は、
で設定している。
【0023】
このように設定することにより、同一形状の両スクロールを180度位相をずらしてかみ合わせることができ、この場合、両スクロールの接点は、その接点の巻角に対応した基礎円の接線上に形成され、本実施例においても図1から図8により説明した実施例と同様の効果を奏する。
【0024】
本発明のさらに他の実施例を図9から図12により説明する。図9は、渦巻体の形状を示す平面図、図10は、渦巻体の中心部の形状を示す平面図、図11は、渦巻体を組み合わせた状態を示す平面図、図12は、エンドミル中心の軌跡を示す平面図である。
【0025】
本実施例における渦巻体11,12の形状は、渦巻体11,12の伸開角に応じて基礎円の半径が変わる円の伸開線により形成される部分と、一定の半径を有する円の伸開線であるインボリュート曲線からなる部分とにより形成されている。また、巻始め部分は、円弧で形成されている。すなわち、例えば渦巻体12の外周部は一定の半径を有する円の伸開線であるインボリュート曲線で形成されており、中心部は渦巻体12の伸開角が大きくなるに従い基礎円の半径が増加する円の伸開線により形成で形成されている。この場合の一例としては、図10に示すように、渦巻体12の外側面12aは点Hから点Iまで渦巻体の伸開角が大きくなるに従い基礎円の半径が増加する円の伸開線からなり、点Iから外側は一定の半径を有する円の伸開線であるインボリュート曲線で形成するように構成されている。一方、渦巻体12の内側面12bは、巻始め部から点Kまでは円弧で形成され、点Kから点Lまでの範囲は、渦巻体12の伸開角が大きくなるに従い基礎円の半径が増加する円の伸開線からなり、点Lから外側は一定の半径を有する円の伸開線であるインボリュート曲線で形成されている。
【0026】
渦巻体12の伸開角が大きくなるに従い基礎円の半径が増加する円の伸開線の部分は、図2から図6に示した実施例と同様に、渦巻体12の外側を表す伸開線の基礎円の半径ao、渦巻体12の内側の形状12bを表す伸開線の基礎円の半径をaiとしたとき、基礎円の半径ao、基礎円の半径aiは、それぞれ数式5、数式6で表すことができ、渦巻体12の内側の形状12bを表す伸開線の基礎円の半径は、渦巻体12の外側の形状12aを表す伸開線の基礎円の半径に対し、伸開角λに対しπだけ小さい値となるように形成されている。すなわち、図9、図10に示す渦巻体12の形状において、基礎円10の半径ao =f(λp)を共有する渦巻体の外側の点Pの伸開角をλPとし、内側の点Qの伸開角をλgとすると、数式7で表される関係となるように設定されている。また、数式4で示されるf’(λ)はf’(λ)>0に設定されている。
【0027】
本実施例では、このような構成とすることにより、渦巻体12を形成する円の伸開線の基礎円の半径が伸開角により変化する領域から一定の半径を有する領域まで連続的に変化し、外周部の形状は変えず、渦巻体12の中心部のラップ厚さを大きくとることができるので、渦巻体12の強度向上や漏れ量の低減を図ることができる。また、とじ込み容積比を変えることもできるなど、設計の自由度を増すことができる。
【0028】
図11に示すように、渦巻体11,12が組み合わされた状態で、作動室9が形成されるためには、2つの渦巻体11,12により互いに複数個のシールポイントが形成されるようにする必要があるが、前述したように渦巻体11,12の内側の伸開線11b,12bと外側の伸開線11a,12aが伸開角λに関し位相差πを有しているので、一対のスクロールはそれぞれ複数の点でシールポイント(あるいは接点)を有し、かつシールポイント(あるいは接点)と基礎円とを結ぶ線分を共有するように設定でき、両スクロール部材は渦巻体11,12のそれぞれの側面に垂直な位置にシールポイント(あるいは接点)を有することができる。
【0029】
このように構成されたスクロール流体機械においては、旋回運動を行うことにより、両スクロールが同時に複数個のシールポイントを有しながら作動するが、図10に示すように渦巻体12の巻始め部の形状が、外側線凸部が半径rpの円弧からなり、内側線の凹部が半径rqの円弧からなり、これらの円弧の半径と旋回半径εとは、rp+ε=rqなる関係を満たすように渦巻体の形状が形成されているので、一対の渦巻体11,12は、巻始め部から互いにシールポイントを有し、閉じ込み容積比を大きくすることが可能となる。
【0030】
本実施例の渦巻体12を加工するときのエンドミル軌跡の一例を図12により説明する。外周部の一定半径の円の伸開線部分は渦巻体12の母場が一様に形成されているため、歯幅底面の加工を1度(必要に応じて2度行ってもよいことはもちろんである)で終わらせることができる。これに対し、中心部の渦巻体12が伸開線の伸開角に応じて半径が変わる円の伸開線により形成される部分は、渦巻体12の歯溝幅が変わるため、歯底面の加工をする際は1度では加工できず、歯幅の外側の部分と内側の部分の加工をそれぞれエンドミル中心の軌跡を実線13aと破線13bで示すごとく2度に分けて加工しなければならない。しかし、本実施例によれば、渦巻体12の大部分は歯溝幅が一定であり、2度に分けて加工しなければならないのは中心部のみに限られるので、生産上簡単になる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、両スクロール部材の渦巻体の形状を、渦巻体の一部あるいは全体にわたり、渦巻きの中心部から外側に向かって、両スクロール部材の渦巻体の溝幅が変化すると共に渦巻体の歯厚が小さくなるように構成しているので、寸法的な制約を受けても、用途に応じた容積変化の渦巻体を得ることができるから、組込容積比や行程容積、渦巻体の板厚などに対する設計自由度が増し、それぞれの用途に応じた最適な形状のスクロール流体機械を得ることができる。しかも、中心部から外側に向かって、渦巻体の歯厚だけでなく、渦巻体の溝幅も変化させ、かつ両スクロール部材の渦巻体の側面は互いに複数の点でシールポイントを有する共に、当該それぞれのシールポイントはそれぞれの渦巻体の側面に垂直な位置に存在する構成としたから、両スクロール部材を噛み合わせて形成される密閉空間のシール性を向上させた性能の高いスクロール流体機械を得ることができる。
【0032】
さらに、一方のスクロール部材の背面に背面室を形成し、該背面室に吸入圧力より高い圧力を作用させて他方のスクロール部材に押し付けるようにしたスクロール流体機械では、押圧されたスクロール部材中心部付近の渦巻体の先端部と、他方のスクロール部材の渦巻体底面、或いは押圧されたスクロール部材中心部付近の渦巻体の底面と、他方のスクロール部材の渦巻体先端部が強く接触し、かじりや焼き付きなどの損傷を生じる虞があったが、本発明によれば渦巻体の中心部側の歯厚が相対的に大きくなるから、接触部の面圧を低下させることができる。この結果、かじりや焼き付きなどの損傷を防止でき、信頼性の高いスクロール流体機械が得られるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すスクロール圧縮機の縦断面図である。
【図2】本実施例の円の伸開線(f’(λ)>0の場合)を示す図である。
【図3】本実施例の円の伸開線(f’(λ)<0の場合)を示す図である。
【図4】渦巻体の形状を示す平面図である。
【図5】一組の渦巻体の組成せ状態を示す平面図である。
【図6】その作動原理を示すための平面図である。
【図7】渦巻体の形状を示す平面図である。
【図8】容積変化の関係を示す図である。
【図9】本発明のさらに他の実施例である渦巻体の形状を示す平面図である。
【図10】渦巻体の中心部の形状を示す平面図である。
【図11】渦巻体を組み合わせた状態を示す平面図である。
【図12】エンドミル中心の軌跡を示す平面図である。
【図13】従来のスクロール流体機械の作動原理を示す平面図である。
【符号の説明】
1…旋回スクロール、2…固定スクロール、3…密閉空間、4…吐出口、5…基礎円。
Claims (2)
- 台板上に形成された渦巻体を有する2つのスクロール部材を噛み合わせて形成される密閉空間を、一方のスクロール部材を他方のスクロール部材に対して相対的に旋回運動させることにより、拡大あるいは減少させ流体の膨張あるいは圧縮を行うようにしたスクロール流体機械において、
前記一方のスクロール部材の背面には背面室が形成され、該背面室には吸入圧力より高い圧力を作用させて前記他方のスクロール部材に押し付けるようにし、
前記噛み合わせる両スクロール部材の渦巻体の形状が、渦巻体の一部あるいは全体にわたり、渦巻きの中心部から外側に向かって、両スクロール部材の渦巻体の溝幅が変化すると共に渦巻体の歯厚が小さくなるように構成し、かつ伸開角により半径が変化する円の伸開線により形成され、さらに同一の伸開角に対し、前記渦巻体の外側形状を形成する伸開線の円の半径が渦巻体の内側形状を形成する伸開線の円の半径より小さい半径を有する構成としたことを特徴とするスクロール流体機械。 - 台板上に形成された渦巻体を有する2つのスクロール部材を噛み合わせて形成される密閉空間を、一方のスクロール部材を他方のスクロール部材に対して相対的に旋回運動させることにより、拡大あるいは減少させ流体の膨張あるいは圧縮を行うようにしたスクロール流体機械において、
前記一方のスクロール部材の背面には背面室が形成され、該背面室には吸入圧力より高い圧力を作用させて前記他方のスクロール部材に押し付けるようにし、
前記噛み合わせる両スクロール部材の渦巻体の形状が、渦巻体の一部あるいは全体にわたり、渦巻きの中心部から外側に向かって、両スクロール部材の渦巻体の溝幅が変化すると共に渦巻体の歯厚が小さくなるように構成し、かつ
前記両スクロール部材の渦巻体の側面は互いに複数の点でシールポイントを有する共に、複数のシールポイントと前記渦巻体を形成する基礎円とを結ぶ線分を共用する構成としたことを特徴とするスクロール流体機械。
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