JP3598344B2 - 高酸化物イオン伝導性セリア系固体電解質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の本発明は、電気特性に有効な酸素欠陥を有し、強還元雰囲気下においても、高い酸素イオン伝導性を呈し、耐還元性に優れたセリア系固体電解質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セリア(CeO2 )は、ホタル石型結晶構造を持ち、従来は、研磨剤、電極材料及び触媒としてその応用が検討されてきた。また、CeO2 は2価又は3価元素の置換固溶により酸素欠陥が生じるため、高酸素分圧領域では酸化物イオン伝導性を示すことも知られている(例えば T.Takahashi and H.IWAHARA,DENKI KAGAKU,34,254(1966))。しかし、CeO2 は優れた電気特性を持ちながらも、耐還元性が悪いことから、これまで固体電解質への検討は必ずしも十分にはなされておらず、実用には至っていない。その改善方法として、イットリアを添加物として、ホタル石型結晶構造を有するCeO2 に置換固溶させ、ホタル石型の物質として、固体電解質への応用を検討することや(特開平9−2873)、高い導電率をうるための指標である有効性指標を、ホタル石型結晶構造を持つセリアなどに適用し、ホタル石型化合物の改良を行うことが試みられている。(T.MORI and H.YAMAMURA,Proc. he Third International Conference on Ecomaterials,83−86(1977).)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
イットリアなどの稀土類元素をCeO2 に置換固溶させ、酸素欠陥を増加させる方法は、見かけ上の導電率の向上と耐還元特性の改善はなされるものの、結晶構造を本質的に改善するための提案がなされていないために、その改善の効果におのずと限界があり、十分に実用環境に耐えうるものではなかった。一方、高い導電率をうるための指標である有効性指標を、ホタル石型結晶構造を持つセリアなどに適用し、ホタル石型化合物の改良を行う取り組みでは、結晶構造のあるべき姿を考察し、高導電率化を達成してはいるものの、CeO2 に置換固溶できる異種原子価の元素の組み合わせ(例えば、3価と2価元素又は3価と1価元素の組み合わせなど)が、CeO2 結晶格子内に固溶するためには、Ce3+のイオン半径である1.14オングストロームを超えてはならないという規定をもうけ、導入する酸素欠陥の量を調整しているが、その制限ゆえに、十分な導電率をうるために比較的多量の酸素欠陥をCeO2 結晶格子内に導入することになり、かえって、酸素欠陥の会合による導電率の低下を引き起こし、かつCeO2 結晶格子中のCe4+の安定性を十分高めることができず、結果として、十分に高い導電率と耐還元性を両立することができない状態にあった。
【0004】
そこで、この出願の発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、CeO2 結晶構造中に、できるだけむだなく、酸化物イオン伝導に寄与する有効な酸素欠陥だけを導入することにより酸化物イオン伝導と耐還元特性を同時に改善し、従来のものに比べて、イオン伝導性に由来する電気伝導度が高く、同時に、燃料電池用固体電解質への応用などの際に不可欠な低酸素分圧領域まで、n型又はp型半導性が現れることなく、各種ガスに対しても安定な導電特性を示すことが期待される、高酸化物イオン伝導性セリア系固体電解質を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、CeO2 結晶構造中に酸素欠陥の秩序構造を作らせないために、イオン半径の大きいLaをCeのサイトに置換固溶させたうえで、特定の範囲の有効性指標(Effective Index )を満たすように、2価元素であるSr又はBaを置換固溶させることにより、酸素欠陥サイトの無秩序化を促進することが可能となることを見出すとともに、酸化物イオンの通過可能な結晶格子内の空間を適切な大きさにすることが可能となり、あわせて、燃料電池の動作環境でもある10−16 気圧程度の酸素分圧領域においても、安定な導電特性を示すことが可能であることを見出し、この出願の発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、この出願は、まず第1の発明として、組成式:(La1-x Mx )y Ce1-y O2-z (式中、Mは2価のアルカリ土類金属元素であるSr又はBaから選ばれた1種又は2種の元素を示す。x及びyは、0.1≦x≦0.5,0.1<y<0.2及び0.05<z<0.15を示す。ただし、zの値はxおよびyの値を定めることで決定される正電荷と酸素の持つ負電荷のバランスから計算により算出される酸素欠陥量に対応する。)で表されるホタル石型セリア系化合物において、ホタル石型セリア系化合物を構成する全カチオンの平均イオン半径をRc,Ce以外のカチオンの平均イオン半径をRd,Ceのイオン半径をRce、酸素のイオン半径をRoとした場合、下記一般式(1)
有効性指標(Effective index )
=(Rd/Rce)*(Rc/Ro) (1)
〔式中、*の表示は積算であることを示し、Rd,Rc,Ro,Rceはそれぞれ、Rd=RM*x +RLa*(1−x),Rc=Rd*y +Rce*(1−y),Ro=1.4*(1−0.5z),Rce=0.97,RLaはLaの酸素8配位におけるイオン半径である1.18を表し、RM はセリア中に置換固溶するSr又はBaから選ばれた1種又は2種の元素の平均イオン半径を表す。ただし、1.187≦Rd≦1.30の値を表す。(単位はオングストローム(Å)〕で定義される、Effective index (有効性指標)が、0.925<Effective index <1.20の範囲であることを特徴とする高酸化物イオン伝導性セリア系固体電解質を提供する。
【0007】
また、この出願は、第2の発明としての前記第1の発明において、800℃における導電率がlogσTで2.3(S・K/cm)以上であり、導電率が酸素分圧において10-16 気圧以上大気圧までの範囲では1%以内の変動幅で安定であることを特徴とする高酸化物イオン伝導性セリア系固体電解質を提供する。そして、第3の発明として、液相合成法において、セリウム、ランタンと、バリウム及び/又はストロンチウムの硝酸塩水溶液を用いて、この混合溶液にアンモニア水、アンモニアとシュウ酸アンモニウム水溶液、又はアンモニアと炭酸アンモニウム水溶液を滴下し、沈殿を得て、その沈殿を乾燥した後、500℃以上1200℃以下の炭酸ガスを含まない各種ガスの流通下で焼成し、該焼成により合成された立方晶ホタル石型セリア系化合物粉末を成形し、得られた成形体を1400℃以上1600℃以下の温度において脱炭酸ガス雰囲気中で焼結することを特徴とする第1の発明又は第2の発明の固体電解質の製造方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
次にこの発明の実施の形態を更に詳細に説明する。
組成式:(La1−x Mx )y Ce1−y O2−z (式中、Mは2価のアルカリ土類金属元素であるSr又はBaから選ばれた1種又は2種の元素を示す。x及びyは、0.1≦x≦0.5,0.1<y<0.2及び0.05<z<0.15を示す。)で表され,上記(1)式で定義される有効性指標(Effective Index)が上記の範囲にある酸化物においては、上記の組成式中、xは0.1≦x≦0.5であり、この範囲を下回ると、酸素欠陥の無秩序化は、十分に進まず、酸化物イオンが結晶構造内部を通過することが難しくなり、導電率は低い値となるために好ましくない。一方、この範囲を上回ると、極めて微量な2価元素が粒界に析出し、全体の導電率を低下させるので好ましくない。
【0009】
また、上記の組成式中、yは0.1<y<0.2であり、この範囲を下回ると、酸素欠陥の無秩序化は、十分に進まず、酸化物イオンが結晶構造内部を通過することが難しくなり、導電率は低い値となるために好ましくない。一方、この範囲を上回ると、導入した酸素欠陥が必ずしもすべて有効に酸化物イオン伝導に寄与せず、かえってわずかに導電率の低下や耐還元性の低下をもたらすので好ましくない。
【0010】
さらに、有効性指標(Effective Index)は、0.925<Effective Index <1.20の範囲であり、この範囲を下回るとCeO2 結晶格子内に導入した酸素欠陥がすべてイオン伝導に寄与せず、導入した分の効果が100%発揮されないので好ましくない。一方、この範囲のを上回ると、酸素8配位状態の安定性が低下し導電率の低下や、低酸素分圧領域における安定性を低下させるもので好ましくない。
【0011】
また、一般式中、Rd,Rc,Ro,Rceはそれぞれ、Rd=RM *x +RLa*(1−x),Rc=Rd*y +Rce*(1−y),Ro=1.4*(1−0.5z),Rce=0.97,RLaはLaの酸素8配位におけるイオン半径である1.18を表し、RM はCeO2 中に置換固溶するSr又はBaから選ばれた1種又は2種の元素の平均イオン半径を表す。ただし、1.187≦Rd≦1.30の値でなければならない(単位はオングストローム(Å)。従来技術では、CeO2 結晶格子内に置換固溶させる異種原子価元素の平均イオン半径(本発明におけるRd)は1.14オングストロームを超えないことが前提であったが、そのような条件下では、CeO2 結晶格子内に導入された酸素欠陥は、すべて酸化物イオン伝導に寄与するとは限らず、酸素欠陥導入の十分な効果が得られないので、1.187以上でなければならない。また、Rdは上記の範囲を上回ると、
結晶の安定性が必ずしも保てず、かえって導電率の低下や低酸素分圧領域における安定性を低下させるので好ましくない。
【0012】
ただし、zの値はxおよびyの値を定めることで決定される正電荷と酸素の持つ負電荷のバランスから計算により算出される酸素欠陥量に対応するものであり、0.05<z<0.15の値をとる。
上記一般式(1)で定義される有効性指標の値が、上記の範囲に入るように組成式中の元素を選択し、xおよびyの値を定めることで、ホタル石型結晶構造を基本として、この結晶構造中に、すべてが酸化物イオン伝導に寄与する、微量の有効な酸素欠陥を導入することにより高い導電特性と耐還元性を持ち合わせたセリア系固体電解質の作製が可能となる。
【0013】
セリア系化合物の原料粉末は種々の方法により合成できることが知られているが、この発明のセリア系固体電解質粉末の製造方法も特に限定されるものではない。例えば、液相法としては、セリウム、ランタンと、バリウム及び/又はストロンチウムの硝酸塩水溶液を用いて、この混合溶液にアンモニア水又はアンモニアとシュウ酸アンモニウム水溶液又はアンモニアと炭酸アンモニウム水溶液を滴下し、沈殿を得て、その沈殿を熟成、水洗、ろ過、乾燥した後、500℃以上1200℃以下の温度で焼成する共沈法、アルコキシド法としては、セリウム、ランタン、バリウム及びストロンチウムのメトキシド、エトキシド、ブトキシドなどのアルコキシドを非水溶液中で混合し、加水分解、乾燥した後、600℃以上1200℃以下の温度で焼成して得ることができる。
【0014】
ただし、こうした焼成は、空気中において行うことも可能であるが、2価元素などを粒界に析出させることなく、完全にCeO2 結晶構造中に置換固溶させるには、炭酸ガスを除いた環境下で焼成を行うことが好ましい。空気中で焼成すると、2価元素は炭酸塩を作りやすく、こうした不純物が製品の中に残るので好ましくない。
【0015】
焼成温度については、1500℃以上の焼成温度でもセリア系化合物の結晶構造は安定に生成するが、高温での焼成は粉末の比表面積の低下を生じ、その後の焼結の駆動力を低下させ、固体電解質焼結体密度の向上を妨げるので好ましくない。また、焼成時間はあまり長時間としても粉末の比表面積の低下を生じることから好ましくない。
【0016】
原料粉末は成形したのち、焼結を行うが、その焼結温度は、低すぎると焼結体内部に空孔が残存し、十分な電気的特性が得られないために好ましくなく、あまり高すぎても、異常粒成長を起こし、かえって焼結体内部に空孔を発生させ、焼結体密度が低下し、電気的特性の低下の原因になるので、1400℃以上1600℃以下の範囲で良く、粉末合成の際の結晶化温度が1500℃を大きく下回り、1200℃以下であれば、焼結温度も1500℃以下とすることも可能である。さらに焼結を行う際の雰囲気としては、大気中でも十分高密度化するが、焼結は、一般に酸素分圧を低下させた場合にその駆動力が増加することから、さらに好ましくは、焼結時の酸素分圧を低下させる目的で、水素中又は水素とヘリウムなどの混合ガス中、あるいは真空中で焼結することが、焼結体密度を向上させる上では有効である。また、この場合も、極めて微量に焼成粉末中に、原料物質が残存していると、空気中での焼結の際に、粒界に炭酸塩を形成し、電気的特性を低下させる恐れがあるので、炭酸ガスを遮断した環境中で焼結することが好ましい。その例としては、還元雰囲気、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム雰囲気)流通下又は酸化物粉末中で成形体を覆って焼結することでも、成形体と炭酸ガスの接触を断てるので効果的である。焼結時間も焼結温度に到達した後、4時間程度、焼結温度で保持すれば十分であり、あまり短すぎても、焼結が不十分なものとなり、焼結体内部に空孔が多量に残存し、電気的特性を低下させるので好ましくなく、あまり長すぎてもそれなりの効果しか見込めないことから、4時間前後が好ましい。
【0017】
この発明の固体電解質は、上記のように粉末を成形した後、焼結を行い焼結体として利用することもできるが、特にアルコキシドを原料として用いた場合など、その原料となるアルコキシド溶液を所定の組成になるように混合した後、スピンコーターなどの製膜装置を用いて、薄膜状にし、空気中の水分により加水分解を行ったのち、空気中又は酸素気流中において焼成を行い、アルコキシド中に含まれる炭素成分を二酸化炭素として、除去する方法を用いても、良好な電気的特性を有する固体電解質を作製することが可能である。
【0018】
電気的特性発現の機構については、未だ十分には解明されていないが、CeO2 の結晶構造内部にLa,Ba又はSrといった元素を置換固溶させることで、CeO2 結晶構造内部の酸素欠陥の秩序化を抑制し、酸化物イオン伝導性にとって有効な酸素欠陥を導入することが可能になる。また同時に、上記一般式(1)で定義される有効性指標が上記範囲を満たすことにより、導入された酸素欠陥はすべて、酸化物イオン伝導に有効な欠陥となり、この酸化物イオン伝導に有効な酸素欠陥サイトを利用して酸素欠陥がCeO2 結晶内部を自由に拡散できるようになることから、導電率は向上し、有効性指標が上記の範囲内において向上することにより、安定な酸素8配位状態に近づくことから、結晶自体の安定性も増加する傾向を示すので、10−16 気圧といった低酸素分圧領域まで、その導電特性を安定にたもつことが可能になったものと考えられる。
【0019】
以上説明したように、この発明は、CeO2 系化合物において、イオン伝導に極めて有効に寄与する無秩序化した微量の酸素欠陥サイトを有する固体電解質に関するものであり、この酸素欠陥の働きを利用した各種ガスセンサや燃料電池用固体電解質を得ることが可能となる。
【0020】
【実施例及び比較例】
以下、この発明を実施例及び比較例により、さらに詳細に説明するが、この発明はこれら実施例及び比較例に限定されるものではない。
実施例1
組成が(La0.8 Sr0.2)0.175Ce0.825 O1.895 (有効性指標=0.936,Rd=1.194)になるように、原料である硝酸ランタン粉末(和光純薬工業)、硝酸セリウム粉末(和光純薬工業)及び硝酸ストロンチウム粉末(和光純薬工業)を秤量し、蒸留水中に溶解した後混合した。この混合液に沈殿剤として、アンモニアと炭酸アンモニウムの1対1混合溶液を滴下し、沈殿物を得た。得られた沈殿物はろ過したのち乾燥し、1000℃、1時間窒素中において焼成した。こうして得られた粉末は、エタノールを溶液として、ボールミルを用いて24時間粉砕した後乾燥し、その粉末を2トン/cm2 の静水圧を用いて,5mm×15mm×40mmの板状試験片に成形した。成形体は、窒素ガス中200℃/hの昇温速度で1450℃まで昇温し、4時間保持した後、室温まで200℃/hの降温速度で冷却した。得られた焼結体は2mm×10mm×30mmの大きさに加工したのち両面に白金電極を塗布して、1100℃において1時間焼き付け処理を行い、導電率測定用試料とした。導電率の測定は直流4端子法により、800℃の温度範囲において行い、あわせて導電率の酸素分圧依存性を800℃の温度において、大気中から10−16 気圧の酸素分圧領域において調査した。酸素分圧の調整は、窒素ガス中の酸素を8モル%イットリアを固溶したジルコニアポンプを用いて低減し、電気抵抗測定装置内に送り込み、この装置の出口に別途設置したジルコニアセンサにより測定した電気抵抗測定装置出口において酸素分圧が10−16 気圧に到達していることを確認した。また、直流4端子法で測定した導電率は、以下の式により、抵抗値の逆数を用いて、10を底とする対数表示により表すものとする。
導電率=log(R−1*(L/S)*(273+800))
(式中、Rは測定した抵抗値、L及びSはそれぞれ電圧検出電極間距離及び試料の断面積を表す。)
【0021】
表1に測定結果をまとめて示した。この結果から、本発明による固体電解質を用いることで、導電率は高い値を示し、大気中から10−16 気圧の酸素分圧領域において安定であることが確認された。
実施例2
組成が(La0.75Sr0.2Ba0.05)0.175Ce0.825 O1.890 (有効性指標=0.950,Rd=1.206)になるように、実施例1と同様な方法で粉末を合成し、得られた粉末を用いて、実施例1と同様な方法で焼結体を作製した。この試料についても、両面に白金電極を焼き付け、実施例1と同様な方法で、800℃における導電率並びにこの温度における導電率の酸素分圧依存性について検討した。測定結果を表1にあわせて示した。この結果から本発明による固体電解質を用いることで、導電率は高い値を示し、大気中から10−16 気圧の酸素分圧領域において安定であることが確認された。
実施例3
組成が(La0.55Sr0.4Ba0.05)0.175Ce0.825 O1.873 (有効性指標=0.972,Rd=1.220)になるように、実施例1と同様な方法で粉末を合成し、えられた粉末を用いて、実施例1と同様な方法で焼結体を作製した。この試料についても、両面に白金電極を焼き付け、実施例1と同様な方法で、800℃における導電率並びにこの温度における導電率の酸素分圧依存性について検討した。測定結果を表1にあわせて示した。この結果から本発明による固体電解質を用いることで、導電率は高い値を示し、大気中から10−16 気圧の酸素分圧領域において安定であることが確認された。
【0022】
【表1】
【0023】
比較例1
組成が(La0.2 Ce0.8)O1.900 (有効性指標=0.925,Rd=1.180)になるように、実施例1と同様な方法で粉末を合成し、得られた粉末を用いて、実施例1と同様な方法で焼結体を作製した。この試料についても、両面に白金電極を焼き付け、実施例1と同様な方法で、800℃における導電率並びにこの温度における導電率の酸素分圧依存性について検討した。測定結果を表1にあわせて示した。この結果から大気中から10−16 気圧の酸素分圧領域における導電特性は、Ceの酸化物由来のn型半導性を示し、酸素分圧の低下に伴い電子伝導のために、大きく増加する傾向を示した。また、導電率は、800℃においても2.1(S・K/cm)と十分に高いものとはならなかった。以上の結果から、比較例1の組成の化合物においては、特に実用上、重要な800℃程度の比較的低い温度において導電率の値が不十分であり、低酸素分圧領域においては、酸化物イオン伝導以外に電子伝導が著しく発現するなど、実施例にあるような酸化物固体電解質としての特徴を確認することはできなかった。
比較例2
組成が(Sm0.8 Sr0.2)0.275 Ce0.725 O1.835 (有効性指標=0.910,Rd=1.01)になるように、原料として硝酸サマリウム、硝酸ストロンチウム及び硝酸セリウム粉末を用いて、これらの原料を秤量し、実施例1の実験方法と同じ手順で粉末を合成し、得られた粉末を用いて、実施例1と同様な方法で焼結体を作製した。この試料についても、両面に白金電極を焼き付け、実施例1と同様な方法で、800℃における導電率並びにこの温度における導電率の酸素分圧依存性について検討した。測定結果を表1にあわせて示した。この結果から,大気中から10−16 気圧の酸素分圧領域における導電特性は、比較例1に比して良好ではあるが、比較例2の組成物においては、特に実用上、重要な800℃程度の比較的低い温度において導電率の値が低く、実施例にあるような酸化物固体電解質としての特徴を確認することはできなかった。
比較例3
組成が(La0.75Sr0.2Ba0.05)0.175Ce0.825 O1.890 (有効性指標=0.950,Rd=1.206)になるように、原料である硝酸ランタン粉末、硝酸セリウム粉末及び硝酸ストロンチウム粉末を秤量し、蒸留水中に溶解した後混合した。この混合液に沈殿剤として、アンモニアと炭酸アンモニウムの1対1混合溶液を滴下し、沈殿物を得た。得られた沈殿物はろ過したのち乾燥し、1000℃、1時間空気中において焼成した。こうして得られた粉末は、エタノールを溶媒として、ボールミルを用いて24時間粉砕した後乾燥し、その粉末を2トン/cm2 の静水圧を用いて、5mm×15mm×40mmの板状試験片に成形した。成形体は、空気中200℃/hの昇温速度で1450℃まで昇温し、4時間保持した後、室温まで200℃/hの降温速度で冷却した。得られた焼結体は2mm×10mm×30mmの大きさに加工したのち両面に白金電極を塗布して、1100℃において1時間焼き付け処理を行い、導電率測定用試料とした。この試料についても、両面に白金電極を焼き付け、実施例1と同様な方法で、800℃における導電率並びにこの温度における導電率の酸素分圧依存性について検討した。測定結果を表1にあわせて示した。この結果から、大気中から10−5気圧の酸素分圧領域にかける導電率は安定した値を示すものの、800℃における導電率は必ずしも十分に高い値にはならなかった。X線回折試験の結果、微量ながら、炭酸バリウムに由来すると思われる回折線が確認された。以上の結果から、比較例3の組成物においては、特に実用上、重要な800℃程度の比較的低い温度において導電率の値が低く、実施例1〜3のものに比べて特性の低下が認められた。
比較例4
組成が(La0.3 Sr0.7)0.27 Ce0.73O1.771 (有効性指標=1.063,Rd=1.23)になるように、実施例1の実験方法と同じ手順で粉末を合成し、得られた粉末を用いて、実施例1と同様な方法で焼結体を作製した。この試料についても、両面に白金電極を焼き付け、実施例1と同様な方法で、800℃における導電率並びにこの温度における導電率の酸素分圧依存性について検討した。測定結果を表1にあわせて示した。この結果から、大気中から10−16 気圧の酸素分圧領域における導電特性は、比較例1に比して良好ではあるが、比較例4の組成物においては、特に実用上、重要な800℃程度の比較的低い温度において導電率の値が低く、X線回折試験の結果、炭酸ストロンチウムに由来すると思われる回折線が確認された。以上のように、実施例にあるような酸化物固体電解質としての特徴を確認することはできなかった。
【0024】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、CeO2 結晶構造中に、できるだけむだなく、酸化物イオン伝導に寄与する有効な酸素欠陥だけを導入することにより酸化物イオン伝導と耐還元特性を同時に改善し、従来のものに比べて、イオン伝導性に由来する電気伝導度が高く、同時に、燃料電池用固体電解質への応用などの際に不可欠な低酸素分圧領域まで、n型又はp型半導性が現れることなく、各種ガスに対しても安定な導電特性を示すことが期待される、高酸化物イオン伝導性セリア系固体電解質を提供することができる。
Claims (3)
- 組成式:(La1-x Mx )y Ce1-y O2-z (式中、Mは2価のアルカリ土類金属元素であるSr又はBaから選ばれた1種又は2種の元素を示す。x及びyは、0.1≦x≦0.5,0.1<y<0.2及び0.05<z<0.15を示す。ただし、zの値はxおよびyの値を定めることで決定される正電荷と酸素の持つ負電荷のバランスから計算により算出される酸素欠陥量に対応する。)で表されるホタル石型セリア系化合物において、ホタル石型セリア系化合物を構成する全カチオンの平均イオン半径をRc,Ce以外のカチオンの平均イオン半径をRd,Ceのイオン半径をRce、酸素のイオン半径をRoとした場合、下記一般式(1)
有効性指標(Effective index )
=(Rd/Rce)*(Rc/Ro) (1)
〔式中、*の表示は積算であることを示し、Rd,Rc,Ro,Rceはそれぞれ、Rd=RM*x +RLa*(1−x),Rc=Rd*y +Rce*(1−y),Ro=1.4*(1−0.5z),Rce=0.97,RLaはLaの酸素8配位におけるイオン半径である1.18を表し、RM はセリア中に置換固溶するSr又はBaから選ばれた1種又は2種の元素の平均イオン半径を表す。ただし、1.187≦Rd≦1.30の値を表す。(単位はオングストローム(Å)〕で定義される、Effective index (有効性指標)が、0.925<Effective index <1.20の範囲であることを特徴とする高酸化物イオン伝導性セリア系固体電解質。 - 上記請求項1において、800℃における導電率がlogσTで2.3(S・K/cm)以上であり、導電率が酸素分圧において10-16 気圧以上大気圧までの範囲では1%以内の変動幅で安定であることを特徴とする高酸化物イオン伝導性セリア系固体電解質。
- 液相合成法において、セリウム、ランタンと、バリウム及び/又はストロンチウムの硝酸塩水溶液を用いて、この混合溶液にアンモニア水、アンモニアとシュウ酸アンモニウム水溶液、又はアンモニアと炭酸アンモニウム水溶液を滴下し、沈殿を得て、その沈殿を乾燥した後、500℃以上1200℃以下の炭酸ガスを含まない各種ガスの流通下で焼成し、該焼成により合成された立方晶ホタル石型セリア系化合物粉末を成形し、得られた成形体を1400℃以上1600℃以下の温度において脱炭酸ガス雰囲気中で焼結することを特徴とする請求項1又は請求項2項記載の固体電解質の製造方法。
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