JP3597982B2 - 溶融金属の流動駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳型内溶融金属を、交流磁界を加えて流動駆動する流動駆動装置に関する。
【0002】
【従来技術】
例えば連続鋳造では、タンデイッシュより鋳型に溶鋼が注入され、鋳型において溶鋼は鋳型壁面から次第に冷却されつつ引き抜かれる。同一高さの鋳型壁面における温度が不均一であると、表面割れやシェル破断を生じ易い。これを改善するために、従来は、リニアモ−タを用いて、鋳型内で溶鋼を鋳型壁面に沿って流動駆動する(例えば特開平1−228645号公報)。
【0003】
ノズルから鋳型内に注入される溶鋼の流れにより、溶鋼内部ならび溶鋼表面(メニスカス)に溶鋼流を生ずる。この溶鋼流の方向および強さは水平面(x,y)上で不均一で、メニスカスの溶鋼流(表層流)は、メニスカス上のパウダを巻き込み易い。一方、溶鋼が固体に変わるときにCOなどの気体(気泡)が発生する。加えて、鋳型内面の一部に溶鋼が滞留するとパウダが溶鋼に残留し易くしかもブレ−クアウトの原因となる焼付きとなり易い。これらを防止するため、表層に安定した整流を形成させるのが良い。
【0004】
リニアモ−タにより溶鋼メニスカスを、鋳型長辺の内面に沿って水平方向に電磁駆動することにより、溶鋼が撹拌されると共に、鋳型内面が溶鋼で拭われ、溶鋼中の気体やパウダの浮上が促がされ、しかも鋳型内面の一部に溶鋼が滞留することが少くなり、鋳片の表面割れやシェル破断が減少する。
【0005】
ところが上述の方法は、表層流のみの安定化が目的であり、注入ノズルからの突出流の強さおよび不平衡を矯正しようとするには、鋳型の深さ方向の電磁力が不充分である。そこで、特開昭59−70445号公報においては、電磁石のスロットを溶鋼の引き抜き方向に対して斜めに設けることにより、鋳型の深さ方向にも強い電磁力を及ばせようとしている。また、特開昭58−100954号公報においては、電磁石の取り付けを、そのコイルの方向が90度変化するように転換させることが可能である電磁石を提案し、やはり鋳型の深さ方向の電磁力を得ようとしている。
【0006】
本発明者等は、鋳型内溶融金属の流動方向および速度を、2次元方向で、高い自由度で調整するために、鋳型長辺の平面に沿って水平x方向および垂直z方向に面分布する磁極を有する電磁駆動器を提示した(特開平8−141711号公報)。これによれば、任意の方向および強さの電磁推力を溶融金属に与えることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、鋳型内溶融金属を均質にし、鋳造品質を高く維持して連続鋳造を安定にするためには、表層流が水平方向の整流であって、鋳型の所定深さ以上の深さの溶融金属は垂直方向下向きの整流であるのが好ましい。しかしながら、表層流よりも下方の溶融金属流速を均一化しようとする上述の従来例はいずれも、電磁駆動器が複雑となり、また、2次元(x,y)に磁極が分布する電磁駆動器を用いる場合には、電磁推力の分布調整が複雑となる。またいずれの場合も、ノズルから鋳型に溶融金属が流入することにより鋳型内に生ずる流れには反対方向の電磁推力を与え、停滞箇所には積極的に流れを促す電磁推力を与えるので、鋳型の所定深さ以上の深さの溶融金属を垂直方向下向きの整流にする効率が低い。すなわち、整流にするための電磁石構造が過大になる、あるいは、消費電力が過大になる。
【0008】
本発明は、鋳型の所定深さ以上の深さの溶融金属を、効率良く垂直方向下向きの整流とすることを第1の目的とし、表層流は水平整流に、同時に深い位置の溶融金属は垂直方向下向きの整流に効率良く制御することを第2の目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため本発明においては、ノズルから溶融金属が鋳型に注入するときの突出流をそれと直交する方向に電磁駆動する。これによれば、突出流を停止させるほどの強い電磁推力は不要であり、整流効率が高い。
【0010】
(1)これを実現する本発明の溶融金属の流動駆動装置は、それぞれが、複数個の水平y方向に延び水平x方向に分布するスロットを有し、スロット間の歯の先端が鋳型(1)内の溶融金属(2)に対向する電磁石コア(4A,4B)、および、該電磁石コアのスロットに挿入され、x方向に分布する複数個の電気コイル(5A,5B)、を含み、鋳型内溶融金属中に位置する垂直注入口(8a)を有するノズル(8)を通して溶融金属が注入される鋳型(1)を間に置いて相対向して、前記垂直注入口(8a)より鋳型内に出た垂直方向の溶融金属流に、鋳型長辺に沿うx方向の電磁推力を与える第1および第2電磁駆動器(3A,3B);および、第1および第2電磁駆動器(3A,3B)のスロットの配列方向xに沿う推力を溶融金属(2)に与えるための位相差がある交流電圧を電気コイル(5A,5B)のそれぞれに印加する通電手段(20A,20B);を備える(図1,図2)。なお、理解を容易にするためにカッコ内には、図面に示し後述する実施例の対応要素の記号を、参考までに付記した。
【0011】
前記第1および前記第2電磁駆動器(3A,3B)により、鋳型内溶融金属(2)には、鋳型長辺に沿うx方向の電磁推力が作用し、垂直z方向の突出流がz方向およびx方向に成分を有する流れ(ベクトル)になり、x方向に振れた分、垂直zの下方(−z)への突出流の強さが低減し、x方向に分散して、鋳型深さ方向の流れの強さ(z方向速度)がx方向で平準化する。すなわちx方向での、流下速度分布がなだらかになる。例えば、上述の電磁推力を与えていないときには図4に2点鎖線で示すように、ノズル8直下でz方向速度が突出しているが、上述の電磁推力を加えることにより、図4に実線で示すようにz方向速度のx方向分布が平準化する。
【0012】
前記ノズル(8)は、x方向に幅が広く、y方向に幅が狭い溶融金属通流空間を有し、垂直z方向に延び、下端がz方向に開いたフラットノズルである(図1,図2)。
【0013】
前記第1電磁駆動器(3A)は鋳型内溶融金属に+x方向の電磁推力を与え、前記第2電磁駆動器(3B)はそれとは逆方向の−x方向の電磁推力を与える(図1)。これにより溶融金属は、その上方から見降ろした場合に反時計方向廻りの旋回流となり、これにより溶融金属表層も該旋回流となる。この旋回流により、溶融金属表層においては、メニスカスにおいてはパウダが均一に鋳型内面と溶融金属との間に進入し、表層の下方においては、溶融金属が撹拌されると共に、鋳型内面が溶融金属で拭われ、溶融金属中の気体やパウダの浮上が促がされ、しかも鋳型内面の一部に溶鋼が滞留することが少くなり、鋳片の表面割れやシェル破断が減少する。
【0014】
【発明の実施の形態】
(2)それぞれが、複数個のy方向に延び垂直z方向に分布するスロットを有し、スロット間の歯の先端が鋳型内の溶融金属に対向する電磁石コア(4A,4B)、および、該電磁石コアのスロットに挿入され、z方向に分布する複数個の電気コイル(5A,5B)、を含み、鋳型内溶融金属中に位置するx方向に開き相対向する1対の側壁注入口(8e1,8e2)を有するノズル(8)を通して溶融金属が注入される鋳型(1)を間に置いて相対向して、前記側壁注入口(8e1,8e2)より鋳型内に出たx方向の溶融金属流に、垂直方向の下方から上方に向かう垂直方向zの電磁推力を与える第1および第2電磁駆動器(3A,3B);および、第1および第2電磁駆動器(3A,3B)のスロットの配列方向zに沿う推力を溶融金属に与えるための位相差がある交流電圧を電気コイルのそれぞれに印加する通電手段(20A,20B);を備える(図6,図7)。
【0015】
上述の1対の側壁注入口(8e1,8e2)よりの突出流は、垂直下向きz成分があるがこれは弱く、水平x成分が強いので、ノズル直下に上昇流を発生する(例えば図9の2点鎖線)。第1および第2電磁駆動器(3A,3B)により、鋳型内溶融金属(2)には、z方向下向きの電磁推力が作用し、ノズル直下の上昇流が抑制もしくは逆に下向きになり、ノズル直下周りの鋳型深さ方向の流れの強さ(z方向速度)がx方向で平準化する。すなわちx方向での、流下速度分布がなだらかになる。例えば、上述の電磁推力を与えていないときには図9に2点鎖線で示すように、ノズル8直下でz方向速度が上向きであり、これが突出しているが、上述の電磁推力を加えることにより、図9に実線で示すようにz方向速度のx方向分布が平準化する。
【0016】
(3)それぞれが、複数個の水平y方向に延び水平x方向に分布するスロットを有し、スロット間の歯の先端が鋳型内の溶融金属に対向する電磁石コア(4C,4D)、および、該電磁石コアのスロットに挿入され、x方向に分布する複数個の電気コイル(5C,5D)、を含み、鋳型を間に置いて相対向して、第1および第2電磁駆動器(3A,3B)が垂直方向zの電磁推力を与える溶融金属位置よりも上方の溶融金属に、鋳型長辺に沿うx方向の電磁推力を与える第3および第4電磁駆動器(3C,3D);および、第1および第2電磁駆動器(3A,3B)のスロットの配列方向zに沿う推力を溶融金属に与えるための位相差がある交流電圧を第1および第2電磁駆動器の電気コイル(5A,5B)のそれぞれに印加し、第3および第4電磁駆動器(3C,3D)のスロットの配列方向xに沿う推力を溶融金属に与えるための位相差がある交流電圧を第3および第4電磁駆動器の電気コイル(5C,5D)のそれぞれに印加する通電手段(20a,20B,20C,20D);を備える(図11,図12)。
【0017】
前記第1および前記第2電磁駆動器(3A,3B)の電磁推力により、図9の実線で示すように、ノズル直下周りの溶融金属のz方向流速がx方向に平準化するが、鋳型短辺直近では下向きz方向流速が強く、この流れが溶融金属の表層に比較的に強い下向き引込み力を与える。第3および第4電磁駆動器(3C,3D)の電磁推力がこの下向き引込みをx方向に振るので、下向き引込み力がx方向に分散し鋳型短辺近くも平滑化される。
【0018】
前記第3電磁駆動器(3C)は鋳型内溶融金属に+x方向の電磁推力を与え、前記第4電磁駆動器(3D)はそれとは逆方向の−x方向の電磁推力を与える(図11)。これにより溶融金属のメニスカス近くが、その上方から見降ろした場合に反時計方向廻りの旋回流となり、これによりメニスカスにおいてはパウダが均一に鋳型内面と溶融金属との間に進入し、表層の下方においては、溶融金属が撹拌されると共に、鋳型内面が溶融金属で拭われ、溶融金属中の気体やパウダの浮上が促がされ、しかも鋳型内面の一部に溶鋼が滞留することが少くなり、鋳片の表面割れやシェル破断が減少する。
【0019】
本発明の他の目的および特徴は、図面を参照した以下の実施例の説明より明らかになろう。
【0020】
【実施例】
−第1実施例−
図1に、本発明の第1実施例を示す。連続鋳造鋳型1には、下端に垂直注入口(下端開口)を有する扁平4角筒状のフラットノズル8を通して、図示しないタンディシュの溶鋼が供給される。鋳型1内の溶鋼は、鋳型1で冷却されながら下方にゆるやかに引き抜かれる。図1に示す鋳型1の横断面を図2に示す。鋳型1の、相対向する2長辺のそれぞれの外側に第1および第2電磁駆動器3A,3Bが配設されている。第1および第2電磁駆動器3A,3Bは、長辺が延びる方向−xに長い櫛歯状の電磁石コア4A,4Bに、それぞれ12個の電気コイル5A,5Bを巻回したものである。電気コイル5A,5Bには、3相電源回路20A,20Bが、3相信号発生器30が与える各3相信号(Ua,Va,Wa),(Ub,Vb,Wb)に同期した3相交流電圧U,V,Wを印加する。3相信号(Ua,Va,Wa)に対して、3相信号(Ub,Vb,Wb)は、相対位相差φの遅れを有する。
【0021】
図1上において、電気コイルに付したu,V,w,U,v,Wの記号の中の「U」は3相交流のU相の正相通電(そのままの通電)を、「u」はU相の逆相通電(U相より180度の位相づれ通電)を表わし、電気コイル「U」にはその巻始め端にU相が印加されるのに対し、電気コイル「u」にはその巻終り端にU相が印加されることを意味する。同様に、「V」は3相交流のV相の正相通電を、「v」はV相の逆相通電を、「W」は3相交流のW相の正相通電を、「w」はW相の逆相通電を表わす。
【0022】
3相信号発生器30は、交流電圧1周期(位相角0〜359度)の各位相角の電圧レベルを表わすデ−タを格納した、サイン波発生用のROM,電磁駆動器3A,3Bのそれぞれに割り宛てた位相角カウンタA,B(各1個、計2個),電磁駆動器3A,3Bのそれぞれに割り宛てた出力用ラッチA,B(2組、各組3個、計6個)、出力用ラッチA,Bのそれぞれのデ−タをアナログ電圧に変換するD/A変換器A,B(2組、各組3個、計6個)、ならびに、電磁駆動器3Aに割り宛てた位相角カウンタAの、クロックパルスカウント値に基づいて電磁駆動器3A宛ての3相交流電圧デ−タ(Ua,Va,Waの3個)をROMから読み出して電磁駆動器3A宛ての出力用ラッチA(Ua,Va,Wa宛ての3個)にラッチし、電磁駆動器3Bに割り宛てた位相角カウンタBのクロックパルスカウント値および流動コントロ−ラ60からの相対位相角φ(指示値)に基づいて電磁駆動器3B宛ての3相交流電圧デ−タ(Ub,Vb,Wbの3個)をROMから読み出して電磁駆動器3B宛ての出力用ラッチB(Ub,Vb,Wb宛ての3個)にラッチする読出し制御回路を含む。
【0023】
電磁駆動器3Aに割り宛てた位相角カウンタAは、0からクロックパルスをカウントアップしてカウント値が360になるとカウント値を0に初期化してそれからまたカウントアップを行なう循環カウンタである。電磁駆動器3Bに割り宛てた位相角カウンタBには、読出し制御回路が、流動コントロ−ラ60からの相対位相角φを初期値として与え、位相角カウンタBは初期値φからクロックパルスをカウントアップしてカウント値がφ+360になるとカウント値を初期値φに初期化してそれからまたカウントアップを行なう循環カウンタである。
【0024】
読出し制御回路は、クロックパルスが発生しこれに応答して位相角カウンタA,Bが1カウントアップを完了したタイミングで、まず位相角カウンタAのカウント値(位相角)対応の電圧デ−タをROMから読み出して、電磁駆動器3A宛ての出力用ラッチA(Ua,Va,Wa宛ての3個)のUa宛てのものにラッチし、該カウント値に120を加えた値対応の電圧デ−タをROMから読み出して出力用ラッチAのVa宛てのものにラッチし、そして該カウント値に240を加えた値対応の電圧デ−タをROMから読み出して出力用ラッチAのWa宛てのものにラッチする。そして更に、位相角カウンタBのカウント値(位相角)対応の電圧デ−タをROMから読み出して、電磁駆動器3B宛ての出力用ラッチB(Ub,Vb,Wb宛ての3個)のUb宛てのものにラッチし、該カウント値に120を加えた値対応の電圧デ−タをROMから読み出して出力用ラッチBのVb宛てのものにラッチし、そして該カウント値に240を加えた値対応の電圧デ−タをROMから読み出して出力用ラッチBのWb宛てのものにラッチする。
【0025】
これらのラッチA,Bのラッチデ−タは各D/A変換器でアナログ電圧に変換されて、電磁駆動器3A宛てのラッチAのデ−タを変換したアナログ信号(Ua,Va,Wa)は3相電源回路20Aに、電磁駆動器3B宛てのラッチBのデ−タを変換したアナログ信号(Ub,Vb,Wb)は3相電源回路20Bに印加される。
【0026】
アナログ信号Ua,Va,Waは、第1組(A)の3相交流信号の各相電圧であり、第2組(B)のアナログ信号Ub,Vb,Wbは、第1組よりφなる位相遅れを有する3相交流信号の各相電圧である。
【0027】
図3に、第1組(A)の3相電源回路20Aの構成を示す。3相交流電源には直流整流用のサイリスタブリッジ22Aが接続されており、その出力(脈流)はインダクタ25Aおよびコンデンサ26Aで平滑化される。平滑化された直流電圧は3相交流形成用のパワ−トランジスタブリッジ27Aに印加され、これが出力する3相交流のU相が図1に示す電磁駆動器3AのU相端子に、V相がV相端子に、またW相がW相端子に印加される。
【0028】
流動コントロ−ラ60から、コイル電圧指令値VdcAが位相角α算出器24Aに与えられ、位相角α算出器24Aが、指令値VdcAに対応する導通位相角α(サイリスタトリガ−位相角)を算出し、これを表わす信号をゲ−トドライバ23Aに与える。ゲ−トドライバ23Aは、各相のサイリスタを、各相のゼロクロス点から位相カウントを開始して位相角αで導通トリガ−する。これにより、トランジスタブリッジ27Aには、指令値VdcAが示す直流電圧が印加される。
【0029】
一方、3相信号発生器30が与える各相電圧Ua,Va,Waが比較器29Aに与えられる。比較器29Aにはまた、三角波発生器30Aが3KHzの、定電圧三角波を与える。比較器29Aは、U相信号Uaが正レベルのときには、それが三角波発生器30Aが与える三角波のレベル以上のとき高レベルH(トランジスタオン)で、三角波のレベル未満のとき低レベルL(トランジスタオフ)の信号を、U相の正区間宛て(U相正電圧出力用トランジスタ宛て)にゲ−トドライバ28Aに出力し、U相信号が負レベルのときには、それが三角波発生器30Aが与える三角波のレベル以下のとき高レベルHで、三角波のレベルを越えるとき低レベルLの信号を、U相の負区間宛て(U相負電圧出力用トランジスタ宛て)にゲ−トドライバ28Aに出力する。V相信号VaおよびW相信号Waに関しても同様である。ゲ−トドライバ28Aは、これら各相,正,負区間宛ての信号に対応してトランジスタブリッジ27Aの各トランジスタをオン,オフ付勢する。これにより、電源接続端子Uには、3相交流のU相電圧が出力され、電源接続端子Vに同様なV相電圧が出力され、また電源接続端子Wに同様なW相電圧が出力され、これらの電圧の上ピ−ク/下ピ−ク間レベルはコイル電圧指令値VdcAで定まる。
【0030】
なお、ゲ−トドライバ23Aおよび28Aは、流動コントロ−ラ60が与える電源出力オン/オフ信号に応じて、それがオンを指示するときには上述のように電圧出力を行なうが、オフを指示するときには、出力を停止する。3相電源回路20Bの構成は、20Aの構成と同様であるが、この3相電源回路には、3相信号発生器30から、3相信号Ub,Vb,Wbが印加される。
【0031】
再度図1を参照する。流動コントロ−ラ60には、オペレ−タからのデ−タ入力用およびオペレ−タへの状態およびデ−タ出力用の操作盤70が接続されている。流動コントロ−ラ60はCPUを中心とするコンピュ−タシステムであり、3相信号発生器30には、操作盤70にオペレ−タが入力した相対位相差φを指定するデ−タRφを与え、3相電源回路20A,20Bには電源出力オン/オフ信号を与える。
【0032】
流動コントロ−ラ60は、連続鋳造設備の図示しない鋳造管理用のコンピュ−タ(ホストコンピュ−タ)に通信線を介して接続されており、流動コントロ−ラ60は、電磁駆動中であるか否かを示すデ−タと、電磁駆動中であると駆動状態デ−タを、ホストコンピュ−タおよび操作盤70に出力する。なお、ホストコンピュ−タは、鋳造管理を行なう。
【0033】
電源が投入されると流動コントロ−ラ60は、内部レジスタ,カウンタ,タイマならびに入出力ポ−トを待機時の状態に設定し、操作盤70にレディを表示し、ホストコンピュ−タにレディを報知する。そして、操作盤70又はホストコンピュ−タから、デ−タ入力又は制御指示が到来するのを待ち、デ−タ入力があると、デ−タ種別対応のレジスタに格納し、スタ−ト指示が到来するのを待つ。
【0034】
オペレ−タ又はホストコンピュ−タから流動制御スタ−ト指示があると、流動コントロ−ラ60は、操作盤70又はホストコンピュ−タから入力があった電磁駆動条件デ−タを3相信号発生器30および3相電源回路20A,20Bに与えて、3相電源回路20A,20Bに電源出力オンを指示する。この指示に応答して3相電源回路20A,20Bが各3相交流電圧を電磁駆動器3A,3Bの電気コイルに印加する。これにより、電磁駆動器3Aが、図1上の左側長辺に沿って+x向きの電磁推力を鋳型1内の溶鋼に与え、電磁駆動器3Bが、図1上の右側長辺に沿って−x向きの電磁推力を鋳型1内の溶鋼に与える。これにより、溶鋼は反時計廻りに旋回する。
【0035】
この電磁駆動により、垂直−z方向の突出流がz方向およびx方向に成分を有する流れ(ベクトル)になり、x方向に振れた分、垂直zの下方(−z)への突出流の強さが低減し、x方向に分散して、鋳型深さ方向の流れの強さ(z方向速度)がx方向で平準化する。すなわちx方向での、流下速度分布がなだらかになる。上述の電磁推力を与えていないときには図4に2点鎖線で示すように、ノズル8直下でz方向速度が突出しているが、上述の電磁推力を加えることにより、図4に実線で示すようにz方向速度のx方向分布が平準化する。
【0036】
図5には、x方向流速の分布を示す。図5上の2点鎖線は電磁推力を与えないときのもの、実線が上述の電磁推力を与えたときのものであり、いずれも、相対向2長辺の一方(図1上で左側のもの)の面に接する部位のものである。なお、他方の長辺の面に沿っては、大略で、図5上の実線を上下方向(縦軸方向)に反転した形のx方向流速の分布となり、2長辺の面をx方向に拭う旋回流となることが分かる。この旋回流により、溶鋼は、その上方から見降ろした場合に反時計方向廻りの旋回流となり、これにより溶鋼の表層も該旋回流となる。この旋回流により、溶融金属表層においては、メニスカスにおいてはパウダが均一に鋳型内面と溶融金属との間に進入し、表層の下方においては、溶融金属が撹拌されると共に、鋳型内面が溶融金属で拭われ、溶融金属中の気体やパウダの浮上が促がされ、しかも鋳型内面の一部に溶鋼が滞留することが少くなり、鋳片の表面割れやシェル破断が減少する。
【0037】
−第2実施例−
図6に第2実施例の鋳型短辺側側面を示し、図7に平面を示す。溶鋼注入ノズル8は、図8に示すように、2つの側壁注入口8e1,8e2を有し、それぞれより、x成分が大きい+x方向および−x方向の突出流を生ずる。これらの突出流は鋳型短辺に当って、短辺に沿う上昇流と降下流に分岐し、上昇流は突出流の上側に渦巻き流を、降下流は突出流の下側に渦巻き流を生ずる。この下側の渦巻き流によりノズル8直下に上昇流が現われる。図9に、電磁推力を与えていないときの、垂直方向の流速のx方向分布(2点鎖線)を示す。
【0038】
第2実施例では、ノズル8直下の上昇流を抑えて垂直方向の流速のx方向分布を平準化するために、第1および第2電磁駆動器3A,3Bを垂直姿勢で配設し、流電磁駆動器3A,3Bで共に溶鋼に垂直下向き(−z)の電磁推力を与える。この第2実施例で用いている3相信号発生器30および3相電源回路20A,20Bの構成は、第1実施例のものと同一である。
【0039】
側壁注入口8e1,8e2よりの突出流は、垂直下向きz成分があるがこれは弱く、水平x成分が強いので、ノズル直下に上昇流を発生する(例えば図9の2点鎖線)。第1および第2電磁駆動器3A,3Bにより、鋳型1内溶鋼2には、z方向下向きの電磁推力が作用し、ノズル直下の上昇流が抑制もしくは逆に下向きになり、ノズル直下周りの鋳型深さ方向の流れの強さ(z方向速度)がx方向で平準化する。すなわちx方向での、流下速度分布がなだらかになる。上述の電磁推力を与えていないときには図9に2点鎖線で示すように、ノズル8直下でz方向速度が上向きであり、これが突出しているが、上述の下向き電磁推力を加えることにより、図9に実線で示すようにz方向速度のx方向分布が平準化する。しかし、側壁注入口8e1,8e2よりの突出流が相対的に逆向きであるので、ノズル8から見て+x方向側と−x方向側で溶鋼のx方向の流れ成分の方向が、同一長辺の内面に沿う経路上で、逆である。
【0040】
−第3実施例−
第3実施例は、この逆の流れを旋回流に整流するものである。図10に第3実施例の平面を示し、図7に鋳型短辺側側面を示す。溶鋼注入ノズル8は、第2実施例と同様に、2つの側壁注入口8e1,8e2を有し、それぞれより、x成分が大きい+x方向および−x方向の突出流を生ずる。
【0041】
これらの突出流によるノズル8直下の上昇流を抑制し垂直方向流速のx方向分布を平準化するために、第2実施例と同様に、第1および第2電磁駆動器3A,3Bを縦配列している。その効果は第2実施例と同様である。
【0042】
第3実施例では、第1および第2電磁駆動器3A,3Bが下向き電磁推力を与える領域の上方の溶鋼に水平旋回流を与えるために、更に第3および第4電磁駆動器3C,3Dを、鋳型1に対しては第1実施例の電磁駆動器3A,3Bと同様な態様で装備した。ただし、第1実施例の電磁駆動器3A,3Bはノズルからの突出流に最も効果的に電磁推力を与えるZ位置であるが、第3実施例では、第3および第4電磁駆動器3C,3Dは、ノズルの側壁注入口8e1,8e2より上側の溶鋼(表層を含む)に電磁推力を与えるz位置であって図11に示すように、第1および第2電磁駆動器3A,3Bの上側に配設した。
【0043】
この第3実施例で用いている3相信号発生器30および3相電源回路20A,20B,20C,20Dの構成は、第1実施例の3相信号発生器30および3相電源回路20Aと同一である。
【0044】
電磁駆動器3Cが、図10上の左側長辺に沿って+x向きの電磁推力を鋳型1内の溶鋼に与え、電磁駆動器3Dが、図10上の右側長辺に沿って−x向きの電磁推力を鋳型1内の溶鋼に与える。これにより、表層から側壁注入口8e1,8e2までの溶鋼は反時計廻りに旋回する。側壁注入口8e1,8e2以下の溶鋼にもこの旋回が波及し、電磁駆動器3A,3Bの電磁推力作用域の溶鋼も反時計方向に旋回する。
【0045】
側壁注入口8e1,8e2よりの突出流が相対的に逆向きであるがために、ノズル8から見て+x方向側と−x方向側で溶鋼のx方向の流れ成分の方向が逆であったところ、電磁駆動器3C,3Dによって電磁推力を加えることにより上述のように旋回を生じ、同一長辺の内面に沿う経路上で、実質上同一方向となる。図13には、x方向流速の分布を示す。図13上の2点鎖線は、電磁駆動器3C,3Dによる電磁推力を与えないときのもの、実線が上述の電磁推力を与えたときのものであり、いずれも、相対向2長辺の一方(図10上で左側のもの)の面に接する部位のものである。なお、他方の長辺の面に沿っては、大略で、図13上の実線を上下方向(縦軸方向)に反転した形のx方向流速の分布となり、2長辺の面をx方向に拭う旋回流となることが分かる。この旋回流により、溶鋼は、その上方から見降ろした場合に反時計方向廻りの旋回流となり、これにより溶鋼の表層も該旋回流となる。この旋回流により、溶融金属表層においては、メニスカスにおいてはパウダが均一に鋳型内面と溶融金属との間に進入し、表層の下方においては、溶融金属が撹拌されると共に、鋳型内面が溶融金属で拭われ、溶融金属中の気体やパウダの浮上が促がされ、しかも鋳型内面の一部に溶鋼が滞留することが少くなり、鋳片の表面割れやシェル破断が減少する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の構成を示すブロック図であり、連続鋳造鋳型1廻りは平面図である。
【図2】図1に示す鋳型1の垂直横断面図である。
【図3】図1に示す3相電源回路20Aの構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す鋳型1内の溶鋼のz方向流速の分布の計算値を示すグラフであり、2点鎖線は電磁推力を加えないときのもの、実線が電磁駆動器3A,3Bで電磁推力を加えたときのものである。
【図5】図1に示す鋳型1内の溶鋼のx方向流速の分布の計算値を示すグラフであり、2点鎖線は電磁推力を加えないときのもの、実線が電磁駆動器3A,3Bで電磁推力を加えたときのものである。
【図6】本発明の第2実施例の構成を示すブロック図であり、連続鋳造鋳型1廻りは、鋳型短辺を見る側面図である。
【図7】図6に示す鋳型1の平面図である。
【図8】図6に示す鋳型1の縦断面図である。
【図9】図6に示す鋳型1内の溶鋼のz方向流速の分布の計算値を示すグラフであり、2点鎖線は電磁推力を加えないときのもの、実線が図6に示す電磁駆動器3A,3Bで電磁推力を加えたときのものである。
【図10】本発明の第3実施例の構成を示すブロック図であり、連続鋳造鋳型1廻りは平面図である。
【図11】図10に示す連続鋳造鋳型1廻りの、鋳型短辺を見る側面図である。
【図12】図11に示す鋳型1内の溶鋼のx方向流速の分布の計算値を示すグラフであり、2点鎖線は電磁推力を加えないときのもの、実線が図11に示す電磁駆動器3C,3Dで電磁推力を加えたときのものである。
【符号の説明】
1:鋳型 2:溶鋼
3A〜3D:電磁駆動器 4A〜4D:電磁石コア
5A〜5D:電気コイル
Claims (3)
- それぞれが、複数個の水平y方向に延び水平x方向に分布するスロットを有し、スロット間の歯の先端が鋳型内の溶融金属に対向する電磁石コア、および、該電磁石コアのスロットに挿入され、x方向に分布する複数個の電気コイル、を含み、鋳型内溶融金属中に位置する垂直注入口を有するノズルを通して溶融金属が注入される鋳型を間に置いて相対向して、前記垂直注入口より鋳型内に出た垂直方向の溶融金属流に、鋳型長辺に沿うx方向の電磁推力を与える第1および第2電磁駆動器;および、第1および第2電磁駆動器のスロットの配列方向xに沿う推力を溶融金属に与えるための位相差がある交流電圧を電気コイルのそれぞれに印加する通電手段;を備える溶融金属の流動駆動装置であって、
前記ノズルは、x方向に幅が広く、y方向に幅が狭い溶融金属通流空間を有し、垂直z方向に延び、下端がz方向に開いたフラットノズルであり;前記第1電磁駆動器は鋳型内溶融金属に+x方向の電磁推力を与え、前記第2電磁駆動器はそれとは逆方向の−x方向の電磁推力を与えるものである;ことを特徴とする溶融金属の流動駆動装置。 - それぞれが、複数個のy方向に延び垂直z方向に分布するスロットを有し、スロット間の歯の先端が鋳型内の溶融金属に対向する電磁石コア、および、該電磁石コアのスロットに挿入され、z方向に分布する複数個の電気コイル、を含み、鋳型内溶融金属中に位置するx方向に開き相対向する1対の側壁注入口を有するノズルを通して溶融金属が注入される鋳型を間に置いて相対向して、前記側壁注入口より鋳型内に出たx方向の溶融金属流に、垂直方向の下方から上方に向かう垂直方向zの電磁推力を与える第1および第2電磁駆動器;および、
第1および第2電磁駆動器のスロットの配列方向zに沿う推力を溶融金属に与えるための位相差がある交流電圧を電気コイルのそれぞれに印加する通電手段;
を備える溶融金属の流動駆動装置。 - それぞれが、複数個の水平y方向に延び水平x方向に分布するスロットを有し、スロット間の歯の先端が鋳型内の溶融金属に対向する電磁石コア、および、該電磁石コアのスロットに挿入され、x方向に分布する複数個の電気コイル、を含み、鋳型を間に置いて相対向して、第1および第2電磁駆動器が垂直方向zの電磁推力を与える溶融金属位置よりも上方の溶融金属に、鋳型長辺に沿うx方向の電磁推力を与える第3および第4電磁駆動器;および、第1および第2電磁駆動器のスロットの配列方向zに沿う推力を溶融金属に与えるための位相差がある交流電圧を第1および第2電磁駆動器の電気コイルのそれぞれに印加し、第3および第4電磁駆動器のスロットの配列方向xに沿う推力を溶融金属に与えるための位相差がある交流電圧を第3および第4電磁駆動器の電気コイルのそれぞれに印加する通電手段;を備える溶融金属の流動駆動装置であって、
前記第3電磁駆動器は鋳型内溶融金属に+x方向の電磁推力を与え、前記第4電磁駆動器はそれとは逆方向の−x方向の電磁推力を与えるものである;ことを特徴とする、溶融金属の流動駆動装置。
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-
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- 1997-12-08 JP JP33719497A patent/JP3597982B2/ja not_active Expired - Lifetime
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