JP3597307B2 - 光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置、更に詳しくは位置誤差信号とアクチュエータの駆動信号から外乱を推定し外乱を補償する部分に特徴のある光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスク装置においては、ディスクは高速回転しているため回転周波数で振動し、この振動が位置信号に外乱として現れる。この場合アクチュエータに作用する摩擦力等の外力も制御系の外乱となり、トラックの追従誤差となる。これらの外乱を補償するための手段として外乱オブザーバを用いることが知られている。例えば計測自動制御学会論文集Vol.30,No7、828/835(1994)「磁気ディスク装置ヘッド位置決め制御系への外乱オブザーバの応用」では、位置誤差信号とアクチュエータの駆動信号から外乱を推定する外乱オブザーバを構成し、その出力信号を駆動信号に加算して外乱を補償している。
【0003】
外乱を抑圧する効果を大きくするためには、外乱オブザーバの推定帯域を上げる必要がある。特に静止摩擦に対して外乱オブザーバに効果を持たせる場合はその必要性が高い。しかしアクチュエータに高次共振がある場合、推定性能を上げるため外乱オブザーバ帯域を上げると高次共振の成分が外乱オブザーバの出力に現れる。このため高次共振により外乱オブザーバの帯域が制限されてしまう。
【0004】
そこで、特開平5−134707号公報では、外乱オブザーバの出力にノッチフィルタを追加することにより、高次共振の影響を除去して外乱オブザーバの推定帯域を上げている。
【0005】
以下に、従来の光ディスク装置のヘッドの位置決め制御装置を、図面を用いて説明する。図8は、従来の光ディスク装置のヘッドの位置決め制御装置のブロック図である。
【0006】
図8に示すように、従来の光ディスク装置のヘッドの位置決め制御装置100においては、トラックの中心位置を示すトラック位置信号とスポット位置信号の位置誤差は、トラッキングエラー信号検出部101によりトラッキングエラー信号(TES)として出力される。トラッキングエラー信号検出部101は、図示しない光学系とアンプ101aで構成される。
【0007】
トラッキングエラー信号(TES)は、位相補償部102を経て第1のノッチフィルタ103に入力され、その出力は位置決め補償信号となり、この位置決め補償信号は外乱オブザーバ104からの外乱補償信号に加算されて操作信号となる。そして、この操作信号は、駆動回路105を経てトラッキングアクチュエータ106に入力される。
【0008】
トラッキングアクチュエータ106は、推力定数をKf(N/A)、高次共振を除く伝達関数を1/Ms2、高次共振の伝達関数Gとすると、Kf・G/Ms2で表される。
【0009】
また、外乱オブザーバ104には、トラッキングアクチュエータ106の駆動信号として操作信号と、位置信号として位相反転部107で位相が反転されたトラッキングエラー信号(TES)とが入力される。外乱オブザーバ104の出力は、第2のノッチフィルタ108に入力され、上記外乱補償信号が生成される。
【0010】
なお、上記の位相補償部102、第1のノッチフィルタ103、第2のノッチフィルタ108及び外乱オブザーバ104は、アナログ回路またはDSP(デジタルシグナルプロセッサ)等のマイクロプロセッサを用いるデジタルフィルタでも実現出来る。
【0011】
次に、外乱オブザーバ104の構成を図9を用いて説明する。図9は図8における位置決め制御装置の制御系の等価的な機能ブロック図である。図9において、点線で囲んだ部分が外乱オブザーバ104であり、ラプラス演算子をsで表し、トラッキングエラー信号の検出感度をK2(V/m)、駆動回路105のゲインをKa(A/V)、トラッキングアクチュエータ106の推力定数を(N/A)、ヘッドを搭載した可動部の質量をM(kg)とした場合の高次共振を除く伝達関数を1/Ms2、高次共振の伝達関数をG、外乱をD(N)として表している。
【0012】
外乱オブザーバ104は、高次共振を考慮しない操作信号からスポット位置までの伝達関数モデルから作られた連続時間系の同一次元オブザーバであり、モデルの伝達関数をGact とすると、
Gact =K1・K2/Ms2
となる。
【0013】
ゲインK1、l1、l2、Hは外乱のオブザーバのゲインであり次式で表される。
【0014】
K1=Ka・Kf
l1=2ζ・ω/K2
l2=ω2/K2
H=−l2/K1
抑圧したい振動の角周波数をω1とすると、ωはその数倍の周波数に設定し、ζは0.5〜4位に設定される。
【0015】
ここで、アクチュエータに高次共振がなく(すなわちG=1の場合)、第2のノッチフィルタ108を配設しない場合の外乱補償信号をw0とすると、下記の式で表され、w0/Dのゲインの周波数特性は図10に示す実線のようになる。
【0016】
w0=−ω2/(s2+2ζ・ω・s+ω2)/K1・D
また、高次共振があり、第2のノッチフィルタ108を配設した場合の外乱補償信号をw1とすると、w1/Dのゲインの周波数特性は図10の破線のようになる。この場合、オブザーバの理想モデルに対して高次共振によるゲインの変動分が外乱として推定されてしまうため高次共振の周波数成分にピークが発生する。
【0017】
さらに、トラッキングアクチュエータ106に高次共振があり、この高次共振を減衰させる第2のノッチフィルタ108を配設した場合(図9の場合)の外乱補償信号をw2とすると、w2/Dゲインの周波数特性は図10の一点破線のようになる。この場合は、外乱推定値から高次共振の周波数成分が除去されるため、高次共振の影響を受けない。従って外乱推定の帯域を上げることが出来る。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、外乱オブザーバの推定帯域を上げるために、高次共振の周波数成分を除去するノッチフィルタを外乱オブザーバの出力を配設すると以下の問題が生じる。
【0019】
まず、外乱のオブザーバのノッチフィルタをソフトウェアの演算で行った場合は、ノッチフィルタを追加することで演算時間遅れが発生する。これはトラッキングサーボ系の位相余裕、ゲイン余裕の減少につながる。従って、外乱オブザーバの推定帯域が上がってもトラッキングサーボ系の安定性が損なわれることになる。
【0020】
また、フィルタ演算は、通常サンプリング周期ごとの割り込み処理の中で行われるため、処理が増加してサンプリング周期内で演算が終わらなくなった場合は、サンプリング周波数を下げたり、更に高速な演算処理プロセッサ等が必要になったりする。この場合も位相余裕、ゲイン余裕の減少やコストアップにつながる。
【0021】
さらに、外乱オブザーバをアナログ回路で構成した場合、ノッチフィルタを追加することにより回路素子が増える。このため新たな部品の追加や、必要な実装スペースの増加等によりコストアップが発生する。
【0022】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、特に精粗一体駆動型のアクチュエータのように、高次共振の周波数を高くするのが困難なアクチュエータを使用した場合でも、外乱オブザーバの推定帯域を上げることができ、コストアップすることなく安定したトラッキングサーボループ特性が得られる光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置を提供することを目的としている。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置は、光ディスク上に照射されたレーザ光の位置を光ディスクの半径方向に移動するためのトラッキングアクチュエータと、前記レーザ光と前記光ディスク上の情報トラックとの位置ずれを示すトラッキングエラー信号を検出するトラッキングエラー信号検出手段と、前記トラッキングエラー信号を入力とする前記トラッキングアクチュエータの高次共振の周波数成分を除去するノッチフィルタと、前記ノッチフィルタの出力を入力とする位相補償手段と、前記位相補償手段の出力に外乱補償信号を加算した信号に従ってアクチュエータを駆動する駆動回路と、前記ノッチフィルタの出力と前記駆動回路の入力信号とを入力とし、前記外乱補償信号を生成する外乱オブザーバとを備えて構成される。
【0024】
本発明の請求項1に記載の光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置では、前記外乱オブザーバが前記ノッチフィルタの出力と前記駆動回路の入力信号とを入力とし、前記外乱補償信号を生成することで、前記外乱オブザーバを前記トラッキングアクチュエータの高次共振の周波数成分が除去されたモデルに対して動作させ、前記外乱オブザーバが高次共振の影響を受けるのを防止し、新たなノッチフィルタを追加しなくても前記外乱オブザーバの出力に高次共振成分が現れることなく前記外乱オブザーバの推定帯域を上げ、コストアップすることなく安定したトラッキングサーボループ特性を得ること可能とする。
本発明の請求項2に記載の光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置は、光ディスク上に照射されたレーザ光の位置を光ディスクの半径方向に移動するためのトラッキングアクチュエータと、前記レーザ光と前記光ディスク上の情報トラックとの位置ずれを示すトラッキングエラー信号を検出するトラッキングエラー信号検出手段と、前記トラッキングエラー信号を入力とする位相補償手段と、前記位相補償手段の出力に外乱補償信号を加算した信号を入力とするノッチフィルタと、前記ノッチフィルタの出力に従ってアクチュエータを駆動する駆動回路と、前記トラッキングエラー信号とノッチフィルタの入力信号とを入力とし、前記外乱補償信号を生成する外乱オブザーバとを備えて構成される。
【0025】
本発明の請求項2に記載の光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置では、前記外乱オブザーバが前記トラッキングエラー信号とノッチフィルタの入力信号とを入力とし、前記外乱補償信号を生成することで、前記外乱オブザーバを前記トラッキングアクチュエータの高次共振の周波数成分が除去されたモデルに対して動作させ、前記外乱オブザーバが高次共振の影響を受けるのを防止し、新たなノッチフィルタを追加しなくても前記外乱オブザーバの出力に高次共振成分が現れることなく前記外乱オブザーバの推定帯域を上げ、コストアップすることなく安定したトラッキングサーボループ特性を得ること可能とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について述べる。
【0027】
図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態に係わり、図1はヘッド位置決め制御装置の構成を示すブロック図、図2は図1のトラッキングアクチュエータの構成を説明する第1の説明図、図3は図1のトラッキングアクチュエータの構成を説明する第2の説明図、図4は図1の位置決め制御装置の制御系の等価的な機能ブロックを示す機能ブロック図、図5は図1の位置決め制御装置の作用を説明するフローチャートである。
【0028】
光ディスク装置は、図示はしないが、情報トラックが設けられた光ディスクを回転させるためのスピンドルモータと、光ビームを光ディスクに照射する移動光学系と、光ビームの光源であるレーザ光を供給するレーザダイオード及び光ディスクからの戻り光を移動光学系を介して検出するフォトディテクタとを含む固定光学系と、固定光学系のフォトディテクタからトラッキングエラー信号(TES)を検出しトラッキング制御を行うトラッキング制御装置とを備えて構成される。本実施の形態のヘッド位置決め制御装置は、例えば上記トラッキング制御装置内に設けられる装置であり、以下、本実施の形態のヘッド位置決め制御装置に関連する構成のみ説明し、本実施の形態と関連のない構成は公知であるので、説明は省略する。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態のヘッド位置決め制御装置1において、トラッキングエラー信号検出部2は、トラックの中心位置を示すトラック位置信号と光ビームのスポット位置を示すスポット位置信号との位置誤差をトラッキングエラー信号(TES)として出力する。ここで、トラッキングエラー信号検出部2は、図示しない光学系とアンプ2aより構成される。
【0030】
そして、トラッキングエラー信号(TES)は、A/Dコンバータ3のアンチエイリアスフィルタであるローパスフィルタ(LPF)4に入力され、その出力はA/Dコンバータ3に入力され、さらにA/Dコンバータ3の出力はノッチフィルタ5に入力される。
【0031】
ノッチフィルタの5の出力は、位相補償部6と、位相反転部7を経て外乱オブザーバ8とに入力される。そして、位相補償部6の出力である位置決め補償信号と外乱オブザーバ8の出力である外乱補償信号は、加算部9で加算されて操作信号となる。この操作信号は、D/Aコンバータ10でアナログ信号に変換された後、駆動回路11に入力され、駆動回路11の出力はトラッキングアクチュエータ12に入力される。
【0032】
トラッキングアクチュエータ12は、精粗一体型の構造であり、トラッキングアクチュエータ12においては、力定数をKf(N/A)、可動部質量をM(kg)とし、高次共振を除く伝達関数を1/Ms2、高次共振の伝達関数をGで表す。また、外乱はDで表され、トラッキングアクチュエータ12に印加される。なお、ノッチフィルタ5、位相補償部6、外乱オブザーバ8、位相反転部7の各構成要素は、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)の演算により実現している。
【0033】
ここで精粗一体型の上記トラッキングアクチュエータ12の構成について簡単に説明する。
【0034】
図2及び図3に示すように、トラッキングアクチュエータ12は、固定光学系を搭載するキャリッジ21と、このキャリッジ21をトラック方向に駆動するためのTrコイル22a、22b、ガイド軸23a、23b、及び磁気回路24a、24bからなる。そして、Trコイル22a、22bに通電することでキャリッジ21をTr方向に駆動できる。また、フォーカスアクチュエータ25は、対物レンズ26を固定するためのホルダ27、対物レンズ26をフォーカス方向(図のz方向)に可動に、かつトラッキング方向に略方向に支持する板バネ28a及び28b、対物レンズ26を駆動するためのフォーカスコイル29a、29bから構成され、フォーカスアクチュエータ25は、キャリッジ21の上部に搭載されている。そして、フォーカスコイル29a、29bに通電することで、フォーカスアクチュエータ25をフォーカス方向に駆動できる。なお、図3で符号30はカバーである。
【0035】
次に、外乱オブザーバ8の構成を、図1で示した位置決め制御装置1の制御系の等価的な機能ブロック図である図4に示し、DSPで実現されるアルゴリズムは離散時間系の伝達関数で表す。図4においては、z−1は1サンプルの遅延を意味する演算子であり、その他の構成要素は、連続時間系伝達関数として表現されており、ラプラス演算子をsを表している。
【0036】
外乱オブザーバ8の各ゲインk1、k2、G1、G2、L1、L2、H1は、操作信号からA/Dコンバータ3の出力までの伝達関数モデルから作られた離散時間系の同一次元オブザーバのゲインであり、駆動回路11のゲインをKa(A/V)、サンプリング周期をT(s)、D/Aコンバータ10及びA/Dコンバータ3のゲインをそれぞれGDA(V/digit)、GAD(digit/V)、トラッキングエラー信号(TES)の検出感度をK2(V/m)とすると次式で表される。
【0037】
k1=Ka
k2=K2・GAD
G1=Kf・GDA・T2/(2M・k1)
G2=Kf・GDA・T/(M・k1)
L1=2(1−q・cosα)/k2
L2=(1+q2−2q・cosα)/(T・k2)
H1=−M・L2/(Kf・T・Ka・GDA)
ただし、
q=exp(−ζωT)
α=cos{(ωT(1−ζ2)1/2}
で、ω及びζは推定の速さ及び減衰定数を表す。
【0038】
次に、図1、図4、図5を用いて本実施の形態の位置決め制御装置1によるトラッキングサーボ系の動作について説明する。図5はDSPで行う演算のアルゴリズムを示すフローチャートであって、位置決め制御装置1では、図5に示すように、まず、ステップS1で、LPF4を通過したトラッキングエラー信号(TES)をサンプリングしてA/Dコンバータ3でデジタル信号化し、ステップS2でノッチフィルタ5の演算を行った後、デジタル位置信号として変数Yに入力する(図4参照)。そして、ステップS3でノッチフィルタ5の出力を位相補償部6で位相進み補償等の演算を行い、位置決め補償信号を変数Vに入力する。
【0039】
次に、ステップS4で、デジタル位置信号Yから後述のようにして計算されたデジタル推定位置信号Yhを減算してデジタル推定誤差信号Yerrを算出する。さらに、ステップS5で、デジタル推定誤差信号YerrにゲインH1に乗じて外乱補償信号Wを生成する。
【0040】
そして、ステップS6で、前述の位置決め補償信号である変数Vに外乱補償信号Wを加算して操作信号Uを算出し、ステップS7で操作信号UをD/Aコンバータ10でアナログ信号に変換し駆動回路11に入力する。この出力が終わると、次のサンプルに備えてデジタル推定位置信号Yhの計算を開始する。
【0041】
まず、ステップS8で、操作信号Uにk1を乗じた結果を変数Iに入力する。次に、ステップS9で、演算
X1h=X1h+T・X2h+G1・I+L1・Yerr
を行い、さらに、ステップS10で、演算
X2h=X2h+G2・I+L2・Yerr
を行うことによりデジタル推定位置信号X1h、デジタル推定速度信号X2hが算出される。そして、ステップS11で算出されたデジタル推定位置信号X1hにゲインk1を乗じてデジタル推定位置信号Yhを算出し(Yh=k2・X1h)、ステップS12でサンプリング周期である時間T(s)の経過を待ち、時間T(s)が経過すると次のトラッキングエラー信号(TES)をサンプリングするためにステップS1に戻、DSPはサンプリング周期Tで同様の演算を繰り返す。
【0042】
ただし、上記ステップS9、S10の右辺のデジタル推定位置信号X1h、デジタル推定速度X2hは前回のサンプリング時にステップS9、S10で算出した値であり、ステップS11の右辺のデジタル推定位置信号X1hはステップS9で算出したものである。
【0043】
このようにして、トラッキングアクチュエータ12に印加される外力が推定され、外乱補償信号としてトラッキングアクチュエータ12に加わる。従って外乱が相殺される。
【0044】
また、本実施の形態では、外乱オブザーバ8に入力される位置信号としてのトラッキングエラー信号(TES)は、ノッチフィルタ5を通過しているために高次共振の周波数成分は除去される。従って、外乱オブザーバ8は、高次共振が無い理想モデルに近い状態で動作するので、モデルの誤差により外乱補償信号に高次共振の周波数成分が現れることがなくなる。
【0045】
さらに、従来の構成(例えば特開平5−134707号公報)では、新たなノッチフィルタを追加しているが、本実施の形態では、トラッキングサーボ系のノッチフィルタと共用しているため、ノッチフィルタを追加する事により演算時間遅れが発生しない。従ってゲイン余裕、位相余裕が減少することなく安定した光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置を構成できる。また、演算処理による時間遅れを抑えるためにサンプリング周期を短くしている場合でも、新たなノッチフィルタを追加することがないため演算時間の増加はない。このためサンプリング周期内に演算処理が終わらなくなり、サンプリング周期を長くしたり、より高速なDSPを使用するような必要性はない。従って、アクチュエータに高次共振がある場合でも、サーボ系の安定性に対する余裕がなくなったり、コストアップにつながることなく安定した光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置が構成できる。
【0046】
また、本実施の形態で使用している精粗一体型のアクチュエータのように、構造的に高次共振周波数が低いアクチュエータを使用しても、外乱オブザーバの帯域を安定して上げられるので、より安価な光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置が構成できる。
【0047】
なお、本実施の形態では、DSPを用いて演算処理を行っているが、処理時間、コストが許容できれば通常のマイクロプロセッサでも構わない。
【0048】
図6及び図7は本発明の第2の実施の形態に係わり、図6はヘッド位置決め制御装置の構成を示すブロック図、図7は図6の位置決め制御装置の制御系の等価的な機能ブロックを示す機能ブロック図である。
【0049】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態とほとんど同じであるので、異なる点のみ説明し、同一の構成には同じ符号をつけ説明は省略する。
【0050】
本実施の形態のヘッド位置決め制御装置50においては、図6に示すように、トラッキングエラー信号検出部2は、トラック位置とスポット位置の位置誤差をトラッキングエラー信号(TES)として出力し、このトラッキングエラー信号(TES)は、位相補償部51と、位相反転部52を経て外乱オブザーバ53とに入力される。位相補償部51の出力である位置決め補償信号と外乱オブザーバ53の出力である外乱補償信号は、加算部9で加算されて操作信号となる。この操作信号はノッチフィルタ54に入力される。そして、ノッチフィルタ54の出力は駆動回路55に入力され、さらに、駆動回路55の出力はトラッキングアクチュエータ12に入力される。
【0051】
このトラッキングアクチュエータ12は精粗一体型の構造であり、第1の実施の形態と同様の構造である。ここで、外乱はDで表され、トラッキングアクチュエータ12に印加される。なお、ノッチフィルタ54、位相補償部51、外乱オブザーバ53、位相反転部52は、本実施の形態では例えばアナログ回路により実現されている。これらは、演算増幅器による積分器、加算器、差動増幅器等により実現できる。
【0052】
図7は、図6で示した位置決め制御装置50の制御系の等価的な機能ブロック図である。上記外乱オブザーバ53の構成は、従来技術で説明した図9と同じ構成であり、ラプラス演算子をsで表し、トラッキングエラー信号(TES)の検出感度をK2(V/m)、駆動回路55のゲインをKa(A/V)、トラッキングアクチュエータ12の推力定数を(N/A)、ヘッドを搭載した可動部の質量をM(kg)とした場合の高次共振を除く伝達関数を1/Ms2、高次共振の伝達関数をG、外乱をD(N)として表している。
【0053】
外乱オブザーバ53は、高次共振を考慮しない操作信号からスポット位置までの伝達関数モデルから作られた連続時間系の同一次元オブザーバであり、モデルの伝達関数をGactとすると、
Gact =K1・K2/Ms2
となる。
【0054】
ゲインK1、l1、l2、Hは外乱のオブザーバのゲインであり次式で表される。
【0055】
K1=Ka・Kf
l1=2ζ・ω/K2
l2=ω2/K2
H=−l2/K1
抑圧したい振動の角周波数をω1とすると、ωはその数倍の周波数に設定し、ζは0.5〜4位に設定される。
【0056】
本実施の形態の特徴は、トラッキングサーボ系のノッチフィルタ54が、外乱オブザーバ53の駆動信号の入力点と駆動回路55の間にあることである。
【0057】
こうすることにより、外乱オブザーバ53に入力される位置信号としてのトラッキングエラー信号(TES)は、ノッチフィルタ54通過しているために、高次共振の周波数成分は除去される。
【0058】
従って、第1の実施の形態と同じように、外乱オブザーバ53は高次共振が無い、理想モデルに近い状態で動作するので、モデルの誤差により外乱補償信号に高次共振の周波数成分が現れることがなくなる。
【0059】
また、従来の構成(例えば特開平5−134707号公報)では、新たなノッチフィルタを追加しているが、本実施の形態では、トラッキングサーボ系のノッチフィルタと共用しているため、ノッチフィルタを追加する事による部品点数の増加は発生しない。従って、コストアップや、新たに必要となった部品のための実装スペースを確保などの不具合が発生することなく、外乱に強い安定した光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置を構成できる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の請求項1に記載の光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置によれば、外乱オブザーバがノッチフィルタの出力と駆動回路の入力信号とを入力とし、外乱補償信号を生成するので、外乱オブザーバをトラッキングアクチュエータの高次共振の周波数成分が除去されたモデルに対して動作させ、外乱オブザーバが高次共振の影響を受けるのを防止し、新たなノッチフィルタを追加しなくても外乱オブザーバの出力に高次共振成分が現れることなく外乱オブザーバの推定帯域を上げ、コストアップすることなく安定したトラッキングサーボループ特性を得ることができるという効果がある。
【0061】
また、本発明の請求項2に記載の光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置によれば、外乱オブザーバが前記トラッキングエラー信号とノッチフィルタの入力信号とを入力とし、外乱補償信号を生成するので、外乱オブザーバをトラッキングアクチュエータの高次共振の周波数成分が除去されたモデルに対して動作させ、外乱オブザーバが高次共振の影響を受けるのを防止し、新たなノッチフィルタを追加しなくても外乱オブザーバの出力に高次共振成分が現れることなく外乱オブザーバの推定帯域を上げ、コストアップすることなく安定したトラッキングサーボループ特性を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るヘッド位置決め制御装置の構成を示すブロック図
【図2】図1のトラッキングアクチュエータの構成を説明する第1の説明図
【図3】図1のトラッキングアクチュエータの構成を説明する第2の説明図
【図4】図1の位置決め制御装置の制御系の等価的な機能ブロックを示す機能ブロック図
【図5】図1の位置決め制御装置の作用を説明するフローチャート
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るヘッド位置決め制御装置の構成を示すブロック図
【図7】図7の位置決め制御装置の制御系の等価的な機能ブロックを示す機能ブロック図
【図8】従来のヘッド位置決め制御装置の構成を示すブロック図
【図9】図7の位置決め制御装置の制御系の等価的な機能ブロックを示す機能ブロック図
【図10】図7の位置決め制御装置による”外乱補償信号/外乱”のゲインの周波数特性を示す特性図
【符号の説明】
1…ヘッド位置決め制御装置
2…トラッキングエラー信号検出部
2a…アンプ
3…A/Dコンバータ
4…LPF
5…ノッチフィルタ
6…位相補償部
7…位相反転部
8…外乱オブザーバ
9…加算部
10…D/Aコンバータ
11…駆動回路
12…トラッキングアクチュエータ
Claims (3)
- 光ディスク上に照射されたレーザ光の位置を光ディスクの半径方向に移動するためのトラッキングアクチュエータと、
前記レーザ光と前記光ディスク上の情報トラックとの位置ずれを示すトラッキングエラー信号を検出するトラッキングエラー信号検出手段と、
前記トラッキングエラー信号を入力とする前記トラッキングアクチュエータの高次共振の周波数成分を除去するノッチフィルタと、
前記ノッチフィルタの出力を入力とする位相補償手段と、
前記位相補償手段の出力に外乱補償信号を加算した信号に従ってアクチュエータを駆動する駆動回路と、
前記ノッチフィルタの出力と前記駆動回路の入力信号とを入力とし、前記外乱補償信号を生成する外乱オブザーバと
を備えたことを特徴とする光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置。 - 光ディスク上に照射されたレーザ光の位置を光ディスクの半径方向に移動するためのトラッキングアクチュエータと、
前記レーザ光と前記光ディスク上の情報トラックとの位置ずれを示すトラッキングエラー信号を検出するトラッキングエラー信号検出手段と、
前記トラッキングエラー信号を入力とする位相補償手段と、
前記位相補償手段の出力に外乱補償信号を加算した信号を入力とするノッチフィルタと、
前記ノッチフィルタの出力に従ってアクチュエータを駆動する駆動回路と、
前記トラッキングエラー信号とノッチフィルタの入力信号とを入力とし、前記外乱補償信号を生成する外乱オブザーバと
を備えたことを特徴とする光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置。 - 前記トラッキングアクチュエータは、
キャリッジ上に前記レーザ光を集光するための対物レンズを前記トラックを横切る方向に略固定して搭載しており、
前記キャリッジと一体的に設けられた駆動コイルに給電することにより、前記レーザ光が前記光ディスク上の全ての情報トラックを照射できるよう移動可能に構成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスク装置のヘッド位置決め制御装置。
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