JP3596923B2 - 帯電防止樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、帯電防止能を有する樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体や電子部品を扱うハイテク工場ではデバイスや電子部品を静電気破壊から守るために、また有機溶剤や粉体を扱う工場では静電気スパークによる事故を未然に防ぐために静電気の帯電防止が不可欠である。
【0003】
上記の工場内では、埃が付着しにくく衛生的で人体に帯電している静電気を瞬時に除去する帯電防止能を有する除電マット、床材、防塵シートが使用されている。また、表面に粘着性を持ち、作業者が靴で踏んだときに靴底に付着している埃を除去すると同時に人体に帯電している静電気を瞬時に除去する帯電防止能を有する粘着シート、除電マットも使用されている。
【0004】
これらの帯電防止能を得るため、従来、安価な塩化ビニル系樹脂等のベースポリマーにカーボン、金属粉または界面活性剤を混合または塗布したシート状またはフィルム状の樹脂が用いられている。
【0005】
しかしながら、カーボンや金属粉を混合した場合、黒色ないし不透明に着色し、透明性を得たり所望の色に着色したりすることが困難である。また、多量の粉末を混合しなくてはならず、物理強度が低下してしまったり、混合したカーボンや金属粉が脱落して工場内の環境を汚染してしまう問題がある。
【0006】
また、界面活性剤の場合、透明性には問題ないが、ブリードし易い、長期間使用すると帯電防止能が低下する、湿度の影響を受け易い等の問題がある。
【0007】
塩素系化合物を含む界面活性剤は、塩素を嫌う工場内では使用できず、塩化ビニル系樹脂もまた塩素が遊離する恐れがあり、同様の理由で使用できない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、長期間にわたり高い帯電防止能を有し、透明性を有するかまたは所望の色に着色でき、十分な物理強度を有する帯電防止樹脂の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記問題を解決し得る帯電防止樹脂の製造方法を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、末端イソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマーと末端水酸基を有するポリエーテルポリオールとを、イソシアナート基に対する水酸基のモル比が0.8以上2.0以下となるように混合した混合物100重量部に、過塩素酸リチウム10重量%を含むポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体を3重量部以上15重量部以下添加した組成物を、加圧成型しながら重合することを特徴とする帯電防止樹脂の製造方法であり、また、該組成物を、透明樹脂上に塗布した後、重合して、導電層を形成することを特徴とする帯電防止樹脂の製造方法である。
【0011】
以下、本発明の帯電防止樹脂の製造方法について詳述する。
【0012】
本発明に用いられる末端イソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマーは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール等の平均分子量500以上の高分子ポリオールと、必要に応じて、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の平均分子量500以下のポリオールを、単独または二種以上混合した後、過剰のトルエンジイソシアナート等の芳香族イソシアナートまたはヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族イソシアナートと反応させたものである。
【0013】
上記ポリウレタンプレポリマーは、常温で無色透明の液状であり、末端にイソシアナート基(以下、NCOと略記)を有し、NCOの含有量は、通常1〜20重量%である。
【0014】
また、本発明では、製造方法に応じて、加熱硬化型、常温硬化型いずれのポリウレタンプレポリマーも使用できる。
【0015】
本発明に用いられる末端水酸基を有するポリエーテルポリオールは、ポリエチレングリコール系またはポリプロピレングリコール系のジオールまたはトリオールで、常温で無色透明の液状で、末端が水酸基(以下、OHと略記)になっている。
【0016】
上記ポリウレタンプレポリマーに混合される末端水酸基を有するポリエーテルポリオールの量は、NCOに対するOHのモル比が0.8以上2.0以下である。モル比が0.8より小さい場合、得られる樹脂が脆くなって物理的強度が得ることができない。また、2.0より大きい場合、得られる樹脂がゲル状になってしまい、不都合である。
【0017】
本発明で用いられる、過塩素酸リチウム10重量%を含むポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールとの共重合体は、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体90重量部に過塩素酸リチウム10重量部を溶解したもので、常温で無色透明の液状である。
【0018】
ついで、前記ポリウレタンプレポリマーとポリエーテルポリオールとの混合物100重量部に対して、上記共重合体を3重量部以上15重量部以下添加する。添加量が3重量部より小さい場合、得られる樹脂は帯電防止能がなく、また、15重量部より大にしても、得られる樹脂の帯電防止能は向上しない。
【0019】
この際、得られる樹脂の目的に応じて、公知の硬化触媒、充填剤、顔料または抗菌剤等を添加することは、全く問題ない。
【0020】
その後、プレス機の金型に充填し、室温ないしは200℃以下で、加圧成型しながら重合する。硬化後、脱型し、シート状またはフィルム状の帯電防止樹脂を得る。必要に応じ、複合材を裏打ちしてから、加圧成型しながら重合することもできる。
【0021】
また、前記ポリウレタンプレポリマーとポリエーテルポリオールとの混合物に上記共重合体を添加したものを、離型紙上に塗布した後、硬化させ、剥離することにより、シート状またはフィルム状の帯電防止樹脂を得ることもできる。
【0022】
あるいは、前記ポリウレタンプレポリマーとポリエーテルポリオールとの混合物に上記共重合体を添加したものを、ポリエステル等の透明樹脂上に塗布した後、硬化させ、表面に導電層を有するシート状またはフィルム状の帯電防止樹脂を得ることもできる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。実施例中、「%」は、「重量%」を表す。
【0024】
実施例1
加熱硬化型ポリウレタンプレポリマー(三井東圧化学(株)製ハイプレンQP−204)250g(NCO含有量:1.18モル)に、プロピレングリコール系ポリエーテルポリオール(三井東圧化学(株)製ポリオールQH−8001)430g(OH含有量:1.12モル)を混合した。NCOに対するOHのモル比は0.95である。
【0025】
この混合物に、過塩素酸リチウム10%を溶解したポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体(分子量:1280、エチレングリコール鎖含有量:20%)68g(ポリウレタンプレポリマーとポリエーテルポリオールとの混合物の総量680gに対し10%)、酸化鉛硬化触媒2g、淡灰色顔料2gを加え、約30秒間撹拌した後、金型に充填した。プレス機で、60℃で3分間加圧成型した後、脱型して、シート状の淡灰色樹脂を得た。樹脂の組成を表1に示す。
【0026】
ハイレスタ(三菱化学(株)製)を用いて、得られた樹脂の表面抵抗を測定した。初期表面抵抗は5×10Ω・cmであった。結果を表5に示す。
【0027】
実施例2
室温硬化型ポリウレタンプレポリマー(三井東圧化学(株)製ハイプレンP−302)90g(NCO含有量:0.0685モル)に、プロピレングリコール系ポリエーテルポリオール(三井東圧化学(株)製ポリオールMN3050K)60g(OH含有量:0.0593モル)を混合した。NCOに対するOHのモル比は0.87である。この混合物に、過塩素酸リチウム10%を溶解したポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体(分子量:1750、エチレングリコール鎖含有量:10%)7.5g(混合物の総量150gに対し5%)、酸化鉛硬化触媒2gを加えた。
【0028】
ついで、コーティングマシンを用いて、厚さ100μmの離型紙上に、上記共重合体を厚さ0.2mmに塗布した後、放置、硬化した後、離型紙から剥離し、フィルム状の透明樹脂を得た。樹脂の組成を表3に示す。
【0029】
実施例1と同様にして、得られた樹脂の表面抵抗を測定した。初期表面抵抗は9×10Ω・cmであった。結果を表5に示す。
【0030】
実施例3
室温硬化型ポリウレタンプレポリマー(三井東圧化学(株)製ハイプレンP−302)90g(NCO含有量:0.0685モル)に、プロピレングリコール系ポリエーテルポリオール(三井東圧化学(株)製ポリオールMN3050K)100g(OH含有量:0.0989モル)を混合した。NCOに対するOHのモル比は1.44である。
この混合物に、過塩素酸リチウム10%を溶解したポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体(分子量:1750、エチレングリコール鎖含有量:10%)9.5g(混合物の総量190gに対し5%)、酸化鉛硬化触媒2gを加えた。
【0031】
ついで、コーティングマシンを用いて、厚さ50μmのポリエステル樹脂上に、上記共重合体を厚さ0.2mmに塗布した後、放置、硬化し、フィルム状の透明樹脂を得た。樹脂の組成を表3に示す。
【0032】
実施例1と同様にして、得られた樹脂の表面抵抗を測定した。初期表面抵抗は5×10Ω・cmであった。また、20回水洗後の表面抵抗は8×10Ω・cmであり、初期値とほぼ同等であった。
【0033】
また、タックメーター(東洋精機製作所製PICMAタックテスター)を用いて、得られた樹脂の粘着力を測定した。粘着力は120gであった。結果を表5に示す。
【0034】
実施例4
実施例3において、プロピレングリコール系ポリエーテルポリオール100gを110g(NCOに対するOHのモル比:1.59)、過塩素酸リチウム10%を溶解したポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体9.5gを10g(混合物の総量200gに対し5%)とした以外は、実施例3と同様にしてフィルム状の透明樹脂を得た。樹脂の組成を表3に示す。
【0035】
実施例1及び実施例3と同様にして、得られた樹脂の表面抵抗及び粘着力を測定した。初期表面抵抗は6×10Ω・cm、粘着力は180gであった。結果を表5に示す。
【0036】
実施例5
実施例3において、プロピレングリコール系ポリエーテルポリオール100gを120g(NCOに対するOHのモル比:1.73)、過塩素酸リチウム10%を溶解したポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体9.5gを10.5g(混合物の総量210gに対し5%)とした以外は、実施例3と同様にしてフィルム状の透明樹脂を得た。樹脂の組成を表3に示す。
【0037】
実施例1及び実施例3と同様にして、得られた樹脂の表面抵抗及び粘着力を測定した。初期表面抵抗は8×10Ω・cm、粘着力は240gであった。結果を表5に示す。
【0038】
比較例1
実施例1において、プロピレングリコール系ポリエーテルポリオール430gを317g(OH含有量:0.826モル)とした以外は、実施例1と同様にしてシート状の淡灰色樹脂を得た。NCOに対するOHのモル比は0.7、混合物の総量567gに対する共重合体は12%である。樹脂の組成を表1に示す。
【0039】
得られた樹脂は、硬化不良で、物理的強度がなく、使用に耐えなかった。結果を表5に示す。
【0040】
比較例2
実施例1において、プロピレングリコール系ポリエーテルポリオール430gを1041g(OH含有量:2.71モル)とした以外は、実施例1と同様にして淡灰色樹脂を得た。NCOに対するOHのモル比は2.3、混合物の総量に対する共重合体は5.3%である。樹脂の組成を表1に示す。
【0041】
得られた樹脂は、ゲル状であり、使用に耐えなかった。結果を表5に示す。
【0042】
比較例3
実施例1において、過塩素酸リチウム10%を溶解したポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体68gを13.6g(混合物の総量680gに対して2%)とした以外は、実施例1と同様にしてシート状の淡灰色樹脂を得た。樹脂の組成を表2に示す。
【0043】
実施例1と同様にして、得られた樹脂の表面抵抗を測定した。初期表面抵抗は3×1010Ω・cmであり、帯電防止効果が十分でなかった。結果を表5に示す。
【0044】
比較例4
実施例1において、過塩素酸リチウム10%を溶解したポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体68gを109g(混合物の総量680gに対して16%)とした以外は、実施例1と同様にしてシート状の淡灰色樹脂を得た。樹脂の組成を表2に示す。
【0045】
実施例1と同様にして、得られた樹脂の表面抵抗を測定した。初期表面抵抗は7×10Ω・cmであり、実施例1と同等であった。結果を表5に示す。
【0046】
比較例5
実施例1において、過塩素酸リチウム10%を溶解したポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体68gの代りに、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体61.2g及び過塩素酸リチウム粉末6.8gを用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状の淡灰色樹脂を得た。樹脂の組成を表2に示す。
【0047】
実施例1と同様にして、得られた樹脂の表面抵抗を測定した。初期表面抵抗は8×1013Ω・cmであり、帯電防止効果がなかった。結果を表5に示す。
【0048】
比較例6
実施例3において、過塩素酸リチウム10%を溶解したポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体9.5gの代りにカーボンブラック9.5gを用いた以外は、実施例3と同様にしてフィルム状の黒色樹脂を得た。樹脂の組成を表4に示す。
【0049】
得られた樹脂は、黒色で透明性が得られず、また指でフィルム表面を触るとカーボンが指に付着し、カーボンが脱離しやすい。結果を表5に示す。
【0050】
比較例7
実施例3において、過塩素酸リチウム10%を溶解したポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体9.5gの代りに陰イオン系界面活性剤9.5gを用いた以外は、実施例3と同様にしてフィルム状の透明樹脂を得た。樹脂の組成を表4に示す。
【0051】
実施例1と同様にして、得られた樹脂の表面抵抗を測定した。初期表面抵抗は6×10Ω・cmであったが、20回水洗後の表面抵抗は3×1012Ω・cmとなり、表面抵抗が増大した。水洗により界面活性剤が洗い流されたためと考えられる。結果を表5に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0003596923
【0053】
【表2】
Figure 0003596923
【0054】
【表3】
Figure 0003596923
【0055】
【表4】
Figure 0003596923
【0056】
【表5】
Figure 0003596923
【0057】
【発明の効果】
本発明で得られた帯電防止樹脂は、長期間にわたって高い帯電防止能を有し、湿度安定性に優れており、水洗しても帯電防止能が低下しない。また、透明性を有するかまたは所望の色に着色でき、十分な物理的強度を有している。さらに、カーボンを用いた場合のように、カーボンの脱離による工場内の汚染がない。

Claims (4)

  1. 末端イソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマーと末端水酸基を有するポリエーテルポリオールとを、イソシアナート基に対する水酸基のモル比が0.8以上2.0以下となるように混合した混合物100重量部に、過塩素酸リチウム10重量%を含むポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体を3重量部以上15重量部以下添加した組成物を、加圧成型しながら重合することを特徴とする帯電防止樹脂の製造方法。
  2. 末端イソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマーと末端水酸基を有するポリエーテルポリオールとを、イソシアナート基に対する水酸基のモル比0.8以上2.0以下となるように混合した混合物100重量部に、過塩素酸リチウム10重量%を含むポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体を3重量部以上15重量部以下添加した組成物を、離型紙上に塗布し、重合した後、剥離すること特徴とする帯電防止樹脂の製造方法。
  3. 末端イソシアナート基を有するポリウレタンプレポリマーと末端水酸基を有するポリエーテルポリオールとを、イソシアナート基に対する水酸基のモル比0.8以上2.0以下となるように混合した混合物100重量部に、過塩素酸リチウム10重量%を含むポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体を3重量部以上15重量部以下添加した組成物を、透明樹脂上に塗布した後、重合して、導電層を形成することを特徴とする帯電防止樹脂の製造方法。
  4. 帯電防止樹脂が、シート状またはフィルム状であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の帯電防止樹脂の製造方法。
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