JP3596372B2 - 電源装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電源装置に係り、特に、一対のスイッチング素子によってトランスの一次巻線に断続的に電圧を印加し、トランスの二次巻線に誘起された電圧を負荷に供給する電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、スイッチング素子によってトランスの一次巻線に直流電圧を断続的に印加し、トランスの二次巻線に誘起された電圧を、整流回路によって整流(全波整流)すると共に平滑化することで所定の直流電圧を得るスイッチング電源装置(所謂DC−DCコンバータ)が知られている。上記のスイッチング電源装置の一種であるハーフブリッジ方式の部分共振電源装置の一例を図7に示す。
【0003】
図7に示す電源装置100は、直流電源102の両端子の間に、直列に接続されたMOSFET104,106と、直列に接続された一対の分圧用のコンデンサ108,110と、が各々接続されると共に、トランス112の一次巻線112Aの一端がコンデンサ108,110の間に接続され、一次巻線112Aの他端が共振用のインダクタンス114を介してMOSFET104,106の間に接続されており、MOSFET104,106の間には共振用のコンデンサ116の一端が接続され、コンデンサ116の他端は直流電源102の両端子の一方に接続されている。また、トランス112の二次巻線112Bはダイオード118,120から成る整流回路、インダクタンス122及びコンデンサ124から成る平滑回路を介して負荷126に接続されている。なお、図7ではMOSFET104,106のボディダイオードを各々「104a」「106a」の符号を付して示している。
【0004】
MOSFET104のゲート−ソース間電圧V1、及びMOSFET106のゲート−ソース間電圧V2は、図示しない制御回路により図8に示すように制御される。これにより、図8に示す電圧V1,V2の波形からも明らかなように、MOSFET104,106は所定の同時オフ期間を挟んで交互にオンされ、トランス112の一次巻線112Aには、向きの異なる電圧が所定のオフ期間を挟んで交互に印加される。トランス112の二次巻線112Bに誘起された電圧は整流回路によって整流され、平滑回路によって平滑化されて負荷126に供給される。
【0005】
上記の電源装置100において、MOSFET106がオフすることで同時オフ期間が始まったときには、コンデンサ116はMOSFET106によって両端が短絡されていたため端子間電圧(直流電源102と接続されている側と反対側の電位V3)も0になっており、インダクタンス114は、MOSFET106がオンしていた期間に、インダクタンス114→MOSFET106→直流電源102という経路で流れていた電流によって充電されているため、コンデンサ108,110→一次巻線112A→インダクタンス114→コンデンサ116という経路で充電電流が流れてコンデンサ116への充電が開始され、電位V3は上昇を始める(図8に示すV3(定常時)の変化参照)。
【0006】
コンデンサ116の充電電圧(電位V3)が(直流電源102の電圧Vin+ダイオード104aの電圧降下)に相当する値に達すると、前記充電電流の経路は、インダクタンス114→MOSFET106のボディダイオード106a→直流電源102という経路に変化する。この状態でMOSFET104がオンした場合には、MOSFET104のドレイン−ソース間に加わる電圧はボディダイオード104aにおける電圧降下分だけであるので、MOSFET104におけるスイッチング損失を低減することができる(ゼロ電圧スイッチング)。MOSFET106がオフした後の同時オフ期間(図8に符号「a」で示す期間)における電位V3の変化の傾きは、次式によって表すことができる。
【0007】
【数1】
Figure 0003596372
【0008】
:初期条件における共振電流値(≒出力電流値)
Lr:共振用インダクタンス114のインダクタンス値
Cr:共振用コンデンサ116の静電容量
in:直流電源102の電圧
t:初期条件からの経過時間
【0009】
共振電流値Iは二次巻線112Bに接続された負荷126の変動によって変化するので、上式より、同時オフ期間における電位V3の変化の傾きも負荷126の変動によって変化することが理解できる。図8に「定常時」として示す電位V3の変化は負荷126の大きさが定格(又はその付近)の大きさの場合であるが、負荷126の大きさが小さくなるに従って同時オフ期間における電位V3の変化の傾きは徐々に小さくなり、負荷126の大きさが所定値以下(例えば定格の10%以下)になると、同時オフ期間内ではコンデンサ116の充電が完了せず、電位V3が直流電源102の電圧に達する前にMOSFET104がオンする(図8に示すV3(軽負荷時)の波形参照)。
【0010】
この場合、MOSFET104がオンするときにMOSFET104のドレイン−ソース間に直流電源102の電圧と電位V3の差に相当する電圧Vx(図8参照)が加わっているため、MOSFET104がオンするとMOSFET104を通ってサージ状の過大な電流が流れ(図8に示す電流I1(軽負荷時)の波形参照)、電位V3は急激に上昇する。また図示は省略するが、MOSFET104がオフすることで同時オフ期間が始まった後にMOSFET106がオンしたときにも、上記と同様に軽負荷時にはコンデンサ116からMOSFET106を通ってサージ電流が流れる。
【0011】
このサージ電流によりスイッチング素子(MOSFET104,106)のスイッチング損失が増大するので、軽負荷時の電源装置100の効率低下の原因となっていた。なお本明細書では、スイッチング素子がオンするときにスイッチング素子の両端(例えばMOSFETのドレイン−ソース間)に所定値以上の電圧差が生じており、スイッチング素子がオンするとスイッチング素子をサージ電流が流れる状態を「軽負荷時」と称し、スイッチング素子がオンするときにスイッチング素子の両端の電位差が略0の状態を「定常時」と称する。
【0012】
上記に関連して特開平3−265464号公報には、トランスの1次側に可変インダクタンスを設け、トランスの2次側に接続された負荷の変動に応じてインダクタンスを変化させて共振周波数を変化させることで、共振振幅の変動を抑制し、負荷変動時にも確実に共振動作を行なわせる技術が開示されている(上記公報の第6図、第7図等参照)。また特開平5−292743号公報には、上記の可変インダクタンスに代えて可変キャパシタンスを用いた回路が開示されている(上記公報の図1等参照)。
【0013】
また、特開平9−56151号公報には、スイッチング素子の両端に電圧が発生しているときにはスイッチング素子がオンしないようにスイッチング素子の駆動パルス幅を制限する技術が開示されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平3−265464号公報や特開平5−292743号公報のように、負荷の変動に応じてインダクタンス又はキャパシタンスを変化させて共振周波数を変化させる場合、負荷の変動を検出するために回路構成が複雑になるという問題がある。
【0015】
また、特開平9−56151号公報に記載の技術においても、スイッチング素子の両端に加わる電圧を検出する機構を設ける必要があるので、回路構成が複雑になる。また、スイッチング素子の両端に電圧が加わっている間はスイッチング素子をオンさせることができないので、スイッチング素子をオンさせる期間が制限され、電源装置としての動作範囲が制限されるという問題もある。
【0016】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、軽負荷時の効率を向上させることを簡易な構成で実現できる電源装置を得ることが目的である。
【0017】
【課題を解決するための手段】
例として図1に示すように、上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る電源装置10は、所定電圧が印加される一対の給電端子12,14間に直列に接続され、所定の同時オフ期間を挟んで交互にオンされる一対のスイッチング素子16,18と、前記一対の給電端子12,14間に直列に接続された一対の分圧用コンデンサ20,22と、一次巻線24Aの一端が共振用インダクタンス26を介して前記一対のスイッチング素子16,18の間に接続されると共に、他端が前記一対の分圧用コンデンサ20,22の間に接続され、二次巻線24Bが整流回路を介して負荷に接続されるトランス24と、一端が一対の給電端子12,14の一方に接続された共振用コンデンサ28と、前記共振用インダクタンス26と、前記一対のスイッチング素子16,18の接続点と、の間に設けられた第1のインダクタンス30と、一端が前記第1のインダクタンス30と前記共振用インダクタンス26との間に、他端が前記共振用コンデンサ28の他端に接続され、一対のスイッチング素子16,18の接続点側からトランス24の一次巻線24A側へ向かう電流が前記第1のインダクタンス30を流れたときに、第1のインダクタンス30と前記共振用インダクタンス26との間から前記共振用コンデンサ28へ流れる電流を妨げる向きの起電力が誘起されるように前記第1のインダクタンス30と磁気的に結合された第2のインダクタンス32と、を含んで構成されている。
【0018】
請求項1記載の発明では、一対のスイッチング素子16,18が所定の同時オフ期間を挟んで交互にオンされるので、トランス24の一次巻線24Aには、所定の休止期間(=同時オフ期間)を挟んで向きの異なる電圧が交互に印加されることになる。また、同時オフ期間には共振用コンデンサ28が充電又は放電され、共振用コンデンサ28への充電又は放電の進行に伴って、共振用コンデンサ28の両端のうち給電端子14と接続されている側と反対側の電位V3も変化するが、同時オフ期間における電位V3の変化の傾き(絶対値)は、トランス24の二次巻線24Bに接続されている負荷の大きさが小さくなるに従って小さくなる。
【0019】
従って、定常時には、同時オフ期間が終了しスイッチング素子16又はスイッチング素子18がオンするときの該スイッチング素子の両端の電位差は、共振用コンデンサ28と共振用インダクタンス26の共振動作によって略0となる(共振用インダクタンス26は、単体の素子として回路に設けることなく、トランス24の一次巻線24Aに付随する漏れインダクタンスを利用してもよい)が、軽負荷時においては、同時オフ期間が終了しスイッチング素子16又はスイッチング素子18がオンするときに、オンするスイッチング素子の両端に所定値以上の電位差が生じ、スイッチング素子16がオンしたときには、スイッチング素子16→接続点→第1のインダクタンス30→第2のインダクタンス32→共振用コンデンサ28という経路を瞬間的に過大なサージ電流が流れようとし、スイッチング素子18がオンしたときには、共振用コンデンサ28→第2のインダクタンス32→第1のインダクタンス30→接続点→スイッチング素子18という経路を瞬間的に過大なサージ電流が流れようとする。
【0020】
これに対し、第2のインダクタンス32は、一対のスイッチング素子16,18の接続点側からトランス24の一次巻線24A側へ向かう電流が第1のインダクタンス30を流れたときに、第1のインダクタンス30と一次巻線24Aとの間から前記共振用コンデンサ28へ流れる電流を妨げる向きの起電力が誘起されるように第1のインダクタンス30と磁気的に結合されているので、スイッチング素子16がオンしたときには、第1のインダクタンス30を流れる電流に応じて第2のインダクタンス32に誘起される起電力によってサージ電流が抑制され、スイッチング素子18がオンしたときには、第2のインダクタンス32を流れる電流に応じて第1のインダクタンス30に誘起される起電力によってサージ電流が抑制されることで、スイッチング損失の増大を抑制することができる。
【0021】
このように、請求項1記載の発明によれば、負荷変動を検出する等の特別な回路等を設けることなく、第1のインダクタンス及び第2のインダクタンスを設ける、という非常に簡易な構成により軽負荷時のスイッチング損失の増大を抑制することができるので、軽負荷時の効率を向上させることを簡易な構成で実現することができる。また、スイッチング素子をオンさせる期間を制限する必要がないので、電源装置としての動作範囲が制限されることもない。
【0022】
なお、第1のインダクタンスと第2のインダクタンスは、例えば鉄心を介して磁気的に結合することができる。この場合、第1のインダクタンス、第2のインダクタンス及び鉄心を、一次巻線と二次巻線が鉄心を介して磁気的に結合された構成の既存のトランスによって構成することが可能となり、部品点数の低減、製造の容易化、装置コストの低減を実現できる。
【0023】
また、第1のインダクタンスと第2のインダクタンスは、請求項2に記載したように、第1のインダクタンスと磁気的に結合された第3のインダクタンスと、第2のインダクタンスと磁気的に結合されかつ両端が第3のインダクタンスの両端と接続された第4のインダクタンスと、を含む結合回路を介して結合してもよい。この場合、部品点数は増大するものの、第1乃至第4のインダクタンスとしてのコイルの巻数を調整したり、請求項3や請求項4に記載した素子を追加することで第1のインダクタンス又は第2のインダクタンスに誘起される起電力を容易に調整することができ、装置設計の自由度が向上する。
【0024】
すなわち、請求項3に記載したように、第3のインダクタンス及び第4のインダクタンスと並列に抵抗を接続すれば、例えば第1乃至第4のインダクタンスとしてのコイルの巻数を調整することが困難である等の場合にも、前記抵抗の電気抵抗値を調整することで、第1のインダクタンス又は第2のインダクタンスに誘起される起電力の大きさを容易に調整することができる。
【0025】
また、請求項4に記載したように、第3のインダクタンスと第4のインダクタンスとの間にコンデンサを設ければ、抵抗とコンデンサがハイパスフィルタとして作用するので、第1のインダクタンス及び第2のインダクタンスの一方を流れる電流が瞬間的に変化した場合(例えば軽負荷時にスイッチング素子をオンした直後)等の必要時にのみ他方のインダクタンスに起電力が誘起されるように構成することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図2には実施形態に係る電源装置36が示されている。電源装置36は、一次巻線38A及び中点が設けられた二次巻線38Bを備えたトランス38と、トランス38の一次巻線38Aに接続されたDC−ACインバータ回路40と、トランス38の二次巻線38Bに接続された整流回路42と、整流回路42に接続された平滑回路44と、平滑回路44及びDC−ACインバータ回路40に接続された帰還・制御回路46と、で構成され、平滑回路44に接続された負荷72に直流電圧を供給するものである。
【0027】
DC−ACインバータ回路40はハーフブリッジ型であり、所定の直流電圧を発生させる直流電圧源48を備えている。なお直流電圧源48は、例えば商用の交流電圧源と整流回路と平滑回路で構成することができる。直流電圧源48のプラス端子及びマイナス端子は本発明に係る一対の給電端子に対応しており、直流電圧源48のプラス端子はMOSFET50のドレイン及びコンデンサ54の一端に各々接続されている。
【0028】
MOSFET50のソースは接続点PでMOSFET52のドレインに接続されており、コンデンサ54の他端はトランス38の一次巻線38Aの一端及びコンデンサ56の一端に接続されている。MOSFET52のソース及びコンデンサ56の他端は直流電圧源48のマイナス端子に接続されている。なお図2では、MOSFET50,52のボディダイオードを各々「50a」「52a」の符号を付して示している。MOSFET50,52のゲートは帰還・制御回路46に接続されており、MOSFET50,52は帰還・制御回路46によってオンオフが制御される(詳細は後述)。
【0029】
また、一次巻線38Aの他端は共振用インダクタンス58の一端に接続されており、共振用インダクタンス58の他端はトランス60の一次巻線60Aの一端及び二次巻線60Bの他端に各々接続されている。一次巻線60Aの他端は接続点Pに接続されており、二次巻線60Bの他端は共振用コンデンサ62の一端に接続されている。共振用コンデンサ62の他端は直流電圧源48のマイナス端子に接続されている。
【0030】
トランス60は、接続点P側から共振用インダクタンス58側(トランス38の一次巻線38A側)へ向かう電流が一次巻線60Aを流れたときに、共振用コンデンサ62へ流れる電流を妨げる向きの起電力が二次巻線60Bに誘起されるように、一次巻線60Aと二次巻線60Bが鉄心を介して磁気的に結合されている。このように、トランス60の一次巻線60A及び二次巻線60Bは本発明の第1及び第2のインダクタンスに対応している。
【0031】
一方、整流回路42はダイオード64,66を備えている。ダイオード64のアノードはトランス38の二次巻線38Bの一端に接続されており、ダイオード66のアノードは二次巻線38Bの他端に接続されている。また、ダイオード64,66のカソードは接続点Pで互いに接続されている。平滑回路44は、一端が接続点Pに接続されたインダクタンス68と、一端がインダクタンス50の他端に接続され他端がトランス38の二次巻線38Bの中点に接続されたコンデンサ70と、で構成されている。電源装置36による直流電圧供給対象としての負荷72はコンデンサ70の両端に接続される。
【0032】
また、コンデンサ70の一端から負荷72へ至る給電線の途中には接続線74の一端が接続されており、接続線74の他端は、直列に接続された帰還・制御回路46の抵抗75,76を介してトランス38の二次巻線38Bの中点(二次側の基準電位M)に接続されている。抵抗75と抵抗76の接続点は誤差増幅器77の入力端に接続されており、電源装置36から負荷72に供給される直流電圧は抵抗75,76によって分圧されて誤差増幅器77に入力される。誤差増幅器77は目標電圧値に対する入力電圧値の差(誤差)が0となるように誤差の極性を反転して増幅する。
【0033】
誤差増幅器77の出力端はフォトカプラ78を介して可変周波数発振回路79の入力端に接続されており、可変周波数発振回路79の出力端はパルス発生回路80に接続されている。可変周波数発振回路79は、予め定められた基準周波数に対し、フォトカプラ78を介して誤差増幅器77から入力された信号の電圧値に応じて発振周波数を変化させ、該発振周波数の信号をパルス発生回路80に入力する。
【0034】
本実施形態では、MOSFET50,52のオフ時間tOFF(請求項1に記載の同時オフ期間)を一定とし、オン時間tONを変化させることでMOSFET50,52のオンオフのデューティー比を制御して負荷72に供給する直流電圧を一定に制御している。MOSFET50,52のオフ時間tOFFはワンショットタイマ81に保持されており、オフ時間tOFFを規定する信号がワンショットタイマ81からパルス発生回路80に入力される。
【0035】
パルス発生回路80は、可変周波数発振回路79及びワンショットタイマ81から入力された信号に基づき、MOSFET50のみがオン時間tONだけオンし、次にMOSFET50,52がオフ時間tOFFだけ各々オフし、続いてMOSFET52のみがオン時間tONだけオンし、更にMOSFET50,52がオフ時間tOFFだけ各々オフするようにMOSFET50,52をオンオフさせる駆動信号(図3に電圧V1,V2として示す波形の信号)を生成し、生成した駆動信号をMOSFET50,52のゲートに各々入力する。
【0036】
次に、本実施形態の作用として電源装置36の動作について説明する。DC−ACインバータ回路40では、MOSFET50がオンしているときには、直流電圧源48→MOSFET50→トランス60の一次巻線60A→共振用インダクタンス58→トランス38の一次巻線38A→コンデンサ54,56という経路を電流が流れ、MOSFET52がオンしているときには、コンデンサ54,56→トランス38の一次巻線38A→共振用インダクタンス58→トランス60の一次巻線60A→MOSFET52→直流電圧源48という経路を電流が流れる。
【0037】
従って、一次巻線38Aに流れる電流の向き(一次巻線38Aに印加される電圧の向き)は、MOSFET50がオンしているときとMOSFET52がオンしているときで逆向きとなり、一次巻線38Aには、一定の同時オフ期間(=オフ時間tOFF)を挟んで、極性の異なる電圧が交互に印加されて互いに逆向きの電流が交互に流れる。
【0038】
また、上記のように一定の同時オフ期間を挟んで極性の異なる電圧がトランス38の一次巻線38Aに交互に印加されると、トランス38の二次巻線38Bには、一次巻線38Aと二次巻線38Bの巻線比に対応する大きさで極性の異なる電圧が交互に誘起される。二次巻線38Aに誘起された電圧によって生ずる電流は、整流回路42のダイオード64,66によって整流されると共に、平滑回路44のインダクタンス68及びコンデンサ70によって平滑化されて、負荷72に供給される。
【0039】
また、DC−ACインバータ回路40においてMOSFET52がオンとなっている期間には、電位V3(共振用コンデンサ62のうち直流電圧源48と接続されている側と反対側の端子の電位V3)は0になっており、共振用インダクタンス58は、コンデンサ54,56→トランス38の一次巻線38A→共振用インダクタンス58→トランス60の一次巻線60A→MOSFET52→直流電圧源48という経路を流れる電流によって充電される。
【0040】
従って、上記の状態でMOSFET52がオフすることで同時オフ期間が始まると、コンデンサ54,56→一次巻線38A→共振用インダクタンス58→二次巻線60B→共振用コンデンサ62という経路で充電電流が流れて共振用コンデンサ62への充電が開始され、電位V3は上昇し始める。定常時には、同時オフ期間が終了する前に共振用コンデンサ62の充電電圧(電位V3)が(直流電圧源48の電圧Vin+ダイオード50aの電圧降下)に相当する値に達するので(図3の電位V3(定常時)の波形参照)、MOSFET50がオンするときにゼロ電圧スイッチングを達成できる。
【0041】
一方、軽負荷時には同時オフ期間における電位V3の変化の傾きが小さくなるので、同時オフ期間が終了したときにも電位V3は(直流電圧源48の電圧Vin+ダイオード50aの電圧降下)に相当する値には達せず(図3の電位V3(軽負荷時)の波形参照)、この状態でMOSFET50がオンすると直流電圧源48→MOSFET50→トランス60の一次巻線60A→トランス60の二次巻線60B→コンデンサ62という経路をサージ電流が流れようとする。
【0042】
これに対し、上記経路に沿ってトランス60の一次巻線60Aを電流が流れると、二次巻線60Bには、一次巻線60Aを流れる電流の大きさに応じた大きさの起電力が、上記経路に沿って流れようとする電流を妨げる向きに誘起されるので、図3に示す電流I1(軽負荷時)の波形からも明らかなようにサージ電流が抑制される。
【0043】
また、MOSFET50がオンとなっている期間には、電位V3は直流電圧源48の電圧Vinに一致しており、共振用インダクタンス58は、直流電圧源48→MOSFET50→トランス60の一次巻線60A→共振用インダクタンス58→トランス38の一次巻線38A→コンデンサ56→直流電圧源48という経路を流れる電流によって充電される。
【0044】
従って、上記の状態でMOSFET50がオフすることで同時オフ期間が始まると、共振用コンデンサ62から、共振用コンデンサ62→二次巻線60B→共振用インダクタンス58→一次巻線38A→コンデンサ54,56という経路で放電電流が流れて共振用コンデンサ62からの放電が開始され、電位V3は低下し始める。定常時には、同時オフ期間が終了する前に共振用コンデンサ62の充電電圧(電位V3)がダイオード52aの電圧降下に相当する値まで低下するので(図3の電位V3(定常時)の波形参照)、MOSFET52がオンするときにゼロ電圧スイッチングを達成できる。
【0045】
一方、軽負荷時には同時オフ期間における電位V3の変化の傾き(絶対値)が小さくなるので、同時オフ期間が終了したときにも電位V3はダイオード50aの電圧降下に相当する値には達せず(図3の電位V3(軽負荷時)の波形参照)、この状態でMOSFET52がオンするとコンデンサ62→トランス60の二次巻線60B→トランス60の一次巻線60A→MOSFET52という経路をサージ電流が流れようとする。
【0046】
これに対し、上記経路に沿ってトランス60の二次巻線60Bを電流が流れると、一次巻線60Aには、二次巻線60Bを流れる電流の大きさに応じた大きさの起電力が、上記経路に沿って流れようとする電流を妨げる向きに誘起されるのでサージ電流が抑制される。このように、本実施形態に係る電源装置36は、従来の電源装置(図7参照)にトランス60を追加した、という非常に簡易な構成で、軽負荷時にサージ電流が流れることを抑制することができ、スイッチング損失を低減することができる。
【0047】
次に本発明の他の実施形態に係る電源装置83について、図4を参照して説明する。なお、以下では、図2に示した電源装置36と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、電源装置36と異なる部分についてのみ説明する。
【0048】
電源装置83は、電源装置36(図2参照)においてトランス60の一次巻線60Aが設けられていた位置にトランス84の一次巻線84Aが設けられており、トランス84の二次巻線84Bは鉄心を介して一次巻線84Aと磁気的に結合されている。また、電源装置83は、電源装置36においてトランス60の二次巻線60Bが設けられていた位置にトランス85の二次巻線85Bが設けられており、トランス85の一次巻線85Aは鉄心を介して二次巻線85Bと磁気的に結合されている。
【0049】
そして、トランス84の二次巻線84Bとトランス85の一次巻線85Aは、接続点P側から共振用インダクタンス58側(トランス38の一次巻線38A側)へ向かう電流がトランス84の一次巻線84Aを流れたときに、共振用コンデンサ62へ流れる電流を妨げる向きの起電力がトランス85の二次巻線85Bに誘起されるように、両端が互いに接続されている。また、トランスの二次巻線84B及びトランス85の一次巻線85Aには抵抗86が並列に接続されている。
【0050】
このように、電源装置83において、トランス84の一次巻線84Aは本発明の第1のインダクタンスに対応しており、トランス85の二次巻線85Bは本発明の第2のインダクタンスに対応している。また、トランス84の二次巻線84Bは請求項2に記載の第3のインダクタンスに、トランス85の一次巻線85Aは請求項2に記載の第4のインダクタンスに各々対応しており、抵抗86は請求項3に記載の抵抗に対応している。トランス84の二次巻線84B、トランス85の一次巻線85A及び抵抗86から成る回路は請求項2に記載の結合回路(詳しくは請求項3に記載の結合回路)に対応している。
【0051】
電源装置83では、トランス84の一次巻線84Aを電流が流れると、一次巻線84Aと二次巻線84Bの巻数比に応じた大きさの起電力が二次巻線84Bに誘起される。また、トランス84の二次巻線84Bに誘起された起電力によってトランス85の一次巻線85A及び抵抗86を電流が流れ、一次巻線85Aを流れる電流によって一次巻線85Aと二次巻線85Bの巻数比に応じた大きさの起電力が二次巻線85Bに誘起される。
【0052】
上記のように電源装置83では、軽負荷時にMOSFET50又はMOSFET52がオンし、トランス84の一次巻線84Aを通ってサージ電流が流れようすると、このサージ電流が流れることを妨げようとする起電力が結合回路を介してトランス85の二次巻線85Bに起電力が誘起され、この起電力によって電源装置36と同様にサージ電流が抑制される。
【0053】
また電源装置83では、トランス84の一次巻線84Aと二次巻線84Bの巻数比、トランス85の一次巻線85Aと二次巻線85Bの巻数比、及び抵抗86の抵抗値の各パラメータを変化させることで、トランス85の二次巻線85Bに誘起される起電力の大きさを自由に調整することができる。また、例えばトランス84,85として巻数比の調整が困難な市販のトランスを用いた場合にも、抵抗86の抵抗値を変化させることで、トランス85の二次巻線85Bに誘起される起電力の大きさを調整できる。従って電源装置83は、電源装置36と比較して部品点数は増加するものの、回路設計の自由度が向上する。
【0054】
次に本発明の他の実施形態に係る電源装置88について、図5を参照して説明する。電源装置88は、トランス84の二次巻線84Bの一端と抵抗86の一端との間にコンデンサ89が設けられている点で電源装置83と相違している。コンデンサ89は抵抗86と共に、結合回路を流れる電流に対してハイパスフィルタとして作用する。これにより、トランス85の一次巻線85Aには、トランス84の一次巻線84Aを流れる電流に応じて二次巻線84Bに起電力が誘起されることで生ずる電流のうち高周波成分に相当する電流のみが流れることになる。
【0055】
軽負荷時に同時オフ期間が経過しMOSFET50又はMOSFET52がオンしたときに流れようとするサージ電流は高周波成分から構成されている。従って、軽負荷時にMOSFET50又はMOSFET52がオンし、トランス84の一次巻線84Aを通ってサージ電流が流れようとしたときにのみ、このサージ電流が流れることを妨げようとする起電力をトランス85の二次巻線85Bに誘起させることができる。
【0056】
なお、上記では共振用コンデンサ62の一端を直流電圧源48のマイナス端子に接続した構成を説明したが、これに限定されるものではなく、共振用コンデンサ62の一端を直流電圧源48のプラス端子に接続するようにしてもよいし、例として図6に示すように、一端が直流電圧源48のマイナス端子に接続された共振用コンデンサ62と、一端が直流電圧源48のプラス端子に接続された共振用コンデンサ92と、を各々設けてもよい。
【0057】
また、上記では本発明に係る一対のスイッチング素子としてN型のMOSFETを適用した場合を説明したが、これに限定されるものではなく、バイポーラトランジスタ等の他のトランジスタを用いてもよい。
【0058】
また、上記では整流手段として、2個のダイオード64,66から成る整流回路42を用いていたが、これに限定されるものではなく、複数個のスイッチング素子を備えた整流回路(所謂同期整流回路)を用いてもよい。
【0059】
更に、上記では本発明に係る共振用のインダクタンスとして、単体の素子(共振用インダクタンス58)を回路に設けた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、共振用インダクタンス58を省略し、本発明に係る共振用のインダクタンスとしてトランス38の一次巻線38Aの漏れインダクタンスを利用することも可能である。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明は、共振用インダクタンスと一対のスイッチング素子の接続点との間に第1のインダクタンスを設けると共に、一端が第1のインダクタンスと共振用インダクタンスとの間に、他端が共振用コンデンサの他端に接続された第2のインダクタンスを、前記接続点側から前記一次巻線側へ向かう電流が第1のインダクタンスを流れたときに、第1のインダクタンスと一次巻線との間から共振用コンデンサへ流れる電流を妨げる向きの起電力が誘起されるように第1のインダクタンスと磁気的に結合したので、軽負荷時の効率を向上させることを簡易な構成で実現できる、という優れた効果を有する。
【0061】
請求項2記載の発明は、請求項1の発明において、第1のインダクタンスと磁気的に結合された第3のインダクタンスと、第2のインダクタンスと磁気的に結合されかつ両端が第3のインダクタンスの両端と接続された第4のインダクタンスと、を含む結合回路を介して第1のインダクタンスと第2のインダクタンスを結合したので、上記効果に加え、第1のインダクタンス又は第2のインダクタンスに誘起される起電力を容易に調整することができ、装置設計の自由度が向上する、という効果を有する。
【0062】
請求項3記載の発明は、請求項2の発明において、第3のインダクタンス及び第4のインダクタンスと並列に抵抗を接続したので、上記効果に加え、コイルの巻数を調整することが困難である等の場合にも、第1のインダクタンス又は第2のインダクタンスに誘起される起電力の大きさを容易に調整できる、という効果を有する。
【0063】
請求項4記載の発明は、請求項3の発明において、第3のインダクタンスと第4のインダクタンスとの間にコンデンサを設けたので、上記効果に加え、軽負荷時にスイッチング素子をオンした直後等の必要時にのみ第1のインダクタンス又は第2のインダクタンスに起電力が誘起されるように構成することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の作用を説明するための説明図である。
【図2】本実施形態に係る電源装置の一例を示す回路図である。
【図3】図2に示す電源装置における電圧V1,V2、定常時及び軽負荷時の電位V3、電流I1の変化を示すタイミングチャートである。
【図4】電源装置の他の例を示す回路図である。
【図5】電源装置の他の例を示す回路図である。
【図6】電源装置の他の例を示す回路図である。
【図7】従来のハーフブリッジ方式の部分共振電源装置の一例を示す回路図である。
【図8】図7に示す電源装置における電圧V1,V2、定常時及び軽負荷時の電位V3、電流I1の変化を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
10,36,83,88 電源装置
38 トランス
50,52 MOSFET(スイッチング素子)
54,56 コンデンサ(分圧用コンデンサ)
58 共振用インダクタンス
60 トランス(第1のインダクタンス、第2のインダクタンス)
62 共振用コンデンサ
84 トランス(第1のインダクタンス、第3のインダクタンス)
85 トランス(第2のインダクタンス、第4のインダクタンス)
86 抵抗
89 コンデンサ

Claims (4)

  1. 所定電圧が印加される一対の給電端子間に直列に接続され、所定の同時オフ期間を挟んで交互にオンされる一対のスイッチング素子と、
    前記一対の給電端子間に直列に接続された一対の分圧用コンデンサと、
    一次巻線の一端が共振用インダクタンスを介して前記一対のスイッチング素子の間に接続されると共に、他端が前記一対の分圧用コンデンサの間に接続され、二次巻線が整流回路を介して負荷に接続されるトランスと、
    一端が一対の給電端子の一方に接続された共振用コンデンサと、
    前記共振用インダクタンスと、前記一対のスイッチング素子の接続点と、の間に設けられた第1のインダクタンスと、
    一端が前記第1のインダクタンスと前記共振用インダクタンスとの間に、他端が前記共振用コンデンサの他端に接続され、一対のスイッチング素子の接続点側からトランスの一次巻線側へ向かう電流が前記第1のインダクタンスを流れたときに、第1のインダクタンスと前記共振用インダクタンスとの間から前記共振用コンデンサへ流れる電流を妨げる向きの起電力が誘起されるように前記第1のインダクタンスと磁気的に結合された第2のインダクタンスと、
    を含む電源装置。
  2. 前記第1のインダクタンスと前記第2のインダクタンスは、第1のインダクタンスと磁気的に結合された第3のインダクタンスと、第2のインダクタンスと磁気的に結合されかつ両端が前記第3のインダクタンスの両端と接続された第4のインダクタンスと、を含む結合回路を介して結合されていることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
  3. 前記結合回路は、前記第3のインダクタンス及び前記第4のインダクタンスと並列に接続された抵抗を備えていることを特徴とする請求項2記載の電源装置。
  4. 前記結合回路は、前記第3のインダクタンスと前記第4のインダクタンスとの間に設けられたコンデンサを備えていることを特徴とする請求項3記載の電源装置。
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