JP3596356B2 - 冶金用コークスの製造方法、ならびにそれに用いる疑似粒子の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石炭を乾留して冶金用コークスを製造する冶金用コークスの製造方法、ならびにそれに用いる疑似粒子の製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在の高炉操業においては、特に、微粉炭の多量吹き込み操業の定常化に伴って、炉下部の通気性の低下が問題点として挙げられている。この通気性の低下は、微粉炭多量吹き込みに伴う、微粉炭の未燃焼チャーの増加および炉内の通気性を確保するためのコークスの装入量の減少によって生じるものである。このため、高炉操業においては、通気性を確保するために、炉内におけるコークス充填層内の空隙率を増すことが必要であり、そのために大粒径のコークスを装入してコークス間の空隙を大きくすること、およびコークス自体の気孔率を高めて低嵩密度とし空隙率を確保することが検討されている。
【0003】
コークス自体の気孔率を高めて低嵩密度とする方法としては、石炭にプラスチック等の気孔生成剤を添加して乾留することにより、コークス塊内に任意の気孔を生成する方法が検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような方法でコークスの気孔率を高める場合には、気孔率が高くなると気孔壁が薄くなってコークスの強度自体が低下してしまい、高炉内へ装入した際に炉内で劣化が進み、炉下部で細粒化する。その結果、炉下部の通気性低下に関する問題が残存する。
【0005】
このような問題は高強度コークスを用いることにより解消されるが、高強度コークスは、一般に、配合炭品位を向上させる方法によって製造されるため、コークスの製造コストが高くなるという問題点がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、通常の配合炭を使用して、強度を低下させずに気孔率の高い低嵩密度コークスを製造することができる冶金用コークスの製造方法、ならびにそれに用いる疑似粒子を歩留まり良く製造することができる疑似粒子の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、気孔生成剤を用いて高気孔率のコークスを製造する場合に、配合炭の品位を高くすることなく通常の石炭で所定強度を確保する方法を検討した結果、気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着させた疑似粒子を作成し、それを石炭に添加すれば、気孔壁が強化され、かつ微細亀裂を閉塞させるため、コークスの基質強度が高められ、コークス強度を低下させることなく気孔率の高い低嵩密度コークスが得られること、およびこのような疑似粒子は、原料として気孔生成剤、バインダー、補強剤を使用し、搬送ラインに気孔生成剤、水、補強剤の順に連続的に供給してこれらを連続的に搬送し、これらを撹拌し、造粒することにより容易かつ高歩留まりで製造することができることを知見した。
【0008】
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、第1発明は、石炭を乾留して冶金用コークスを製造する冶金用コークスの製造方法であって、
気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着してなる疑似粒子を製造する工程と、
前記疑似粒子を石炭に添加する工程と、
前記疑似粒子が添加された石炭を乾留する工程とを有し、
前記疑似粒子を製造する工程は、
(a)疑似粒子製造用原料として少なくとも気孔生成剤、バインダー、および補強剤を使用すること、
(b)搬送ラインに気孔生成剤、バインダー、補強剤の順に連続的に供給してこれらを連続的に搬送すること、
(c)気孔生成剤、バインダー、補強剤を混合すること、
(d)これら混合原料を造粒すること
を含むことを特徴とする冶金用コークスの製造方法を提供する。
また、第1発明の別の態様では、石炭を乾留して冶金用コークスを製造する冶金用コークスの製造方法であって、
気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着してなる疑似粒子を製造する工程と、
前記疑似粒子を石炭に添加する工程と、
前記疑似粒子が添加された石炭を乾留する工程とを有し、
前記疑似粒子を製造する工程は、
(a)疑似粒子製造用原料として少なくとも気孔生成剤、バインダー、および補強剤を使用すること、
(b)搬送ラインに気孔生成剤、バインダー、補強剤の順に連続的に供給してこれらを連続的に搬送すること、
(c)気孔生成剤、バインダー、補強剤を混合してある程度の大きさに造粒すること、
(d)これら混合原料を造粒すること
を含むことを特徴とする冶金用コークスの製造方法を提供する。
【0009】
第2発明は、上記第1発明において、気孔生成剤と補強剤との供給割合を気孔生成剤/補強剤で2.5以下とすることを特徴とする冶金用コークスの製造方法を提供する。
【0010】
第3発明は、石炭を乾留して冶金用コークスを製造するにあたり、石炭に添加される、気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着してなる疑似粒子の製造方法であって、
(a)疑似粒子製造用原料として少なくとも気孔生成剤、バインダー、および補強剤を使用すること、
(b)搬送ラインに気孔生成剤、バインダー、補強剤の順に連続的に供給してこれらを連続的に搬送すること、
(c)気孔生成剤、バインダー、補強剤を混合すること、
(d)これら混合原料を造粒すること
を含むことを特徴とする疑似粒子の製造方法を提供する。
【0011】
第4発明は、上記第3発明において、気孔生成剤と補強剤との供給割合を気孔生成剤/補強剤で2.5以下とすることを特徴とする疑似粒子の製造方法を提供する。
【0012】
第5発明は、石炭を乾留して冶金用コークスを製造するにあたり、石炭に添加される、気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着してなる疑似粒子の製造装置であって、
気孔生成剤、バインダー、補強剤がこの順で連続的に供給される搬送ラインを有し、これらを搬送する搬送装置と、
気孔生成剤、バインダー、補強剤を混合する混合装置と、
混合後の原料を造粒する造粒装置と、
を具備することを特徴とする疑似粒子の製造装置を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明においては、石炭として通常の配合炭を用い、これをコークス炉にて乾留することにより冶金用コークスを得る。この際に、気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着させた疑似粒子を製造し、それを石炭に添加する。
【0014】
この疑似粒子を製造する工程は、(a)疑似粒子製造用原料として少なくとも気孔生成剤、バインダー、および補強剤を使用すること、(b)搬送ラインに気孔生成剤、バインダー、補強剤の順に連続的に供給してこれら連続的に搬送すること、(c)気孔生成剤、バインダー、補強剤を混合すること、(d)これら混合原料を造粒することを含む。
【0015】
以下、疑似粒子の製造の具体例について図1を参照しながら説明する。図1は疑似粒子を製造する設備を示す模式図である。この設備は、投入された原料を撹拌しながら搬送するための撹拌型搬送装置1を有している。この撹拌型搬送装置1は、その内部に長手方向に沿って撹拌スクリュー2が設けられており、その上面には、上流側から順に、気孔生成剤3を貯留する気孔生成剤ホッパ4と、補強剤5を貯留する補強剤ホッパ6とが設けられている。また、撹拌型搬送装置1の下面の気孔生成剤ホッパ4と補強剤ホッパ6との間に対応する部分には、撹拌型搬送装置1の内部にバインダーとしての水を導入するための導水口7が設けられている。したがって、撹拌型搬送装置1には、気孔生成剤3、水、および補強剤5がこの順で撹拌型搬送装置1に装入され、これらが撹拌されつつ、図面左から右へ向かう搬送ラインに沿って搬送される。撹拌搬送装置1の上面の最下流側部分にはバインダー導入口8が設けられており、必要に応じてバインダー導入口8から適宜のバインダーが撹拌搬送装置1内の原料に添加される。
【0016】
撹拌搬送装置1の下面の最下流側部分には、混合された原料を排出する排出口9が設けられており、この排出口9からは所定量の混合原料が切り出されるようになっている。
【0017】
この混合原料は、ドラム型混合機10に装入され、その中で混練(混合)される。この際に、混合原料はある程度の大きさに造粒される。ドラム型混合機10から排出された混合原料は、ホッパ11に一旦貯留される。ホッパ11の混合原料は、スプレー12から水が供給されながら、皿型造粒機13に供給される。皿型造粒機13では、混合原料が造粒されて造粒原料となる。
【0018】
このようにして得られた造粒原料はスクリーン14に供給され、スクリーン14を通過したものはドラム型混合機10またはホッパ11に戻され、スクリーン14上の二次造粒粒子は疑似粒子として配合槽へ搬送され、配合槽において、この疑似粒子が通常の配合炭に添加される。
【0019】
ここで気孔生成剤3としては、乾留中にガスを発生させてコークス中に気孔を生成する機能を有するものが用いられる。このような気孔生成剤としては、例えば、プラスチック、高揮発分炭、高石炭化度の風化炭、半無煙炭等を用いることができる
【0020】
補強剤5は、コークスの気孔壁の強化、および微細亀裂を閉塞のために用いられる。このような補強剤としては、ピッチ等の粘結剤や強粘結炭を好適に用いることができる。
【0021】
上記撹拌搬送装置1における気孔生成剤3と補強剤5の供給割合は、気孔生成剤/補強剤で表して2.5以下とすることが望ましい。また、撹拌型搬送装置1へ供給される気孔生成剤3と補強剤5の粒径の比率は、気孔生成剤最大粒径/補強剤最大粒径で6.0以上とすることが望ましい。
【0022】
水以外のバインダーは、疑似粒子の強度をハンドリングに耐え得るものとするために必要に応じて添加され、デンプン、糖蜜、高分子凝集剤、タール、PDA等を用いることができる。バインダーを添加する場合には、その添加率は疑似粒子全体に対して0.5〜3%程度が適当である。ただし、水の粘結作用で十分な場合には水以外のバインダーは添加する必要はない。なお、気孔生成剤3および補強剤5の間に水を添加したが、ここで水以外のバインダーを添加してもよい。
【0023】
上述のような設備で、疑似粒子を製造する場合には、撹拌型搬送装置1において、搬送ラインに気孔生成剤3、水、補強剤5がこの順で連続的に供給されて連続的に搬送されるので、これらがドラム型混合機10において混合されることにより、気孔生成剤3の周囲に補強剤5が強固に形成され、これが造粒されることにより疑似粒子歩留まりが高いものとなる。そしてこのような疑似粒子が石炭に添加されて乾留された際には、気孔生成剤3からガスが発生されることにより形成された気孔の周囲を補強剤5で確実に補強することができ、しかも補強剤5によって微細亀裂を閉塞させることができる。したがって、高気孔率すなわち低嵩密度でありながら、強度の高い冶金用コークスを得ることができる。
【0024】
なお、疑似粒子原料の搬送装置として撹拌型搬送装置を用いたが、必ずしも撹拌される必要はなく、ベルトコンベア等のように単に搬送するだけのものであってもよい。また、搬送装置内で混合を十分に行うことが可能な場合には、搬送装置から直接造粒装置に混合原料を搬送してもよい。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
配合炭に本発明に係る方法によって得られた疑似粒子を配合して乾留することによりコークスを製造した。比較のため、気孔生成剤を全く用いないもの(無添加)についても同様にコークスを製造した。
【0026】
疑似粒子は、表1に示す気孔生成剤および補強剤を使用して製造した。なお、表1にはこれらの工業分析値、最大平均反射率、ギーセラー流動性を示す。また、これらを用いて種々の条件(A〜E法)で製造した疑似粒子の気孔生成剤および補強剤の粒径、重量比で示した気孔生成剤/補強剤の値、バインダーの添加条件、および疑似粒子歩留まり(+6mm)を表2に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
表2に示すように、本発明に基づいて製造した疑似粒子は、いずれも5%以上の歩留まりが得られたが、中でも気孔生成剤の粒径が1〜3mm、気孔生成剤/補強剤の値が最も小さい0.43、バインダーとしてデンプンを3%添加したA法の場合に最も高い疑似粒子歩留まり44.4%が得られた。
【0030】
次に、気孔生成剤と補強剤との供給重量比である気孔生成剤/補強剤の値が疑似粒子歩留まりに及ぼす影響を確認した。図2に、気孔生成剤/補強剤の値と疑似粒子歩留まり(+6mm)との関係を示す。この図に示すように、気孔生成剤/補強剤の値が大きくなるにつれて疑似粒子歩留まりは減少し、気孔生成剤/補強剤の値が2.5を超えると疑似粒子歩留まりが5%以下と低い値となることが確認された。
【0031】
次に、表2に示すA法、B法、C法、D法、E法の5種類の方法で製造した疑似粒子を配合炭に添加してコークスを製造した際の、コークスの気孔率、粒径、ドラム強度指数DI30 15を測定した。また、気孔形成剤無添加の場合についても同様に測定した。これらの結果を図3に示す。なお、ドラム強度指数DI30 15はJIS K2151に準拠して、ドラムの中に石炭を装入し30回転させた後の15mm目ふるいに残存した量の百分率を指数表示したものである。
【0032】
図3に示すように、本発明に従って疑似粒子を製造して配合炭に添加したA〜E法は、気孔生成剤無添加のものよりも気孔率が高くることが確認された。また、A〜E法の中では、疑似粒子歩留まりが最も大きかったA法を用いた場合に、最も気孔率が高く、強度も高く、さらにコークス粒径が最も大きくなることが確認された。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着してなる疑似粒子を、搬送ラインに気孔生成剤、バインダー、補強剤の順に連続的に供給してこれら連続的に搬送し、これらを混合し、これら混合原料を造粒することにより製造し、これを石炭に添加してコークスを製造するので、コストを上昇させることのない通常の配合炭を用いて、強度を低下させずに気孔率の高い低嵩密度コークスを製造することができ、高炉内において充分な通気性が碓保され、安定操業を継続することができるコークスを供給することができる。また、上記のようにして疑似粒子を製造することにより、高い疑似粒子歩留まりを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着させた疑似粒子を製造する設備を示す模式図。
【図2】気孔生成剤/補強剤の値と疑似粒子歩留まり(+6mm)との関係を示すグラフ。
【図3】本発明に従って製造された疑似粒子を添加して製造したコークス、および気孔形成剤無添加のコークスの特性を示すグラフ。
【符号の説明】
1;撹拌型搬送装置
3;気孔形成剤
4;気孔形成剤ホッパ
5;補強剤
6;補強剤ホッパ
7;水導入口
10;ドラム型混合機
11;ホッパ
12;スプレー
13;皿型造粒機
14;スクリーン
Claims (6)
- 石炭を乾留して冶金用コークスを製造する冶金用コークスの製造方法であって、
気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着してなる疑似粒子を製造する工程と、
前記疑似粒子を石炭に添加する工程と、
前記疑似粒子が添加された石炭を乾留する工程とを有し、
前記疑似粒子を製造する工程は、
(a)疑似粒子製造用原料として少なくとも気孔生成剤、バインダー、および補強剤を使用すること、
(b)搬送ラインに気孔生成剤、バインダー、補強剤の順に連続的に供給してこれらを連続的に搬送すること、
(c)気孔生成剤、バインダー、補強剤を混合すること、
(d)これら混合原料を造粒すること
を含むことを特徴とする冶金用コークスの製造方法。 - 石炭を乾留して冶金用コークスを製造する冶金用コークスの製造方法であって、
気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着してなる疑似粒子を製造する工程と、
前記疑似粒子を石炭に添加する工程と、
前記疑似粒子が添加された石炭を乾留する工程とを有し、
前記疑似粒子を製造する工程は、
(a)疑似粒子製造用原料として少なくとも気孔生成剤、バインダー、および補強剤を使用すること、
(b)搬送ラインに気孔生成剤、バインダー、補強剤の順に連続的に供給してこれらを連続的に搬送すること、
(c)気孔生成剤、バインダー、補強剤を混合してある程度の大きさに造粒すること、
(d)これら混合原料を造粒すること
を含むことを特徴とする冶金用コークスの製造方法。 - 気孔生成剤と補強剤との供給割合を気孔生成剤/補強剤で2.5以下とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冶金用コークスの製造方法。
- 石炭を乾留して冶金用コークスを製造するにあたり、石炭に添加される、気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着してなる疑似粒子の製造方法であって、
(a)疑似粒子製造用原料として少なくとも気孔生成剤、バインダー、および補強剤を使用すること、
(b)搬送ラインに気孔生成剤、バインダー、補強剤の順に連続的に供給してこれらを連続的に搬送すること、
(c)気孔生成剤、バインダー、補強剤を混合すること、
(d)これら混合原料を造粒すること
を含むことを特徴とする疑似粒子の製造方法。 - 気孔生成剤と補強剤との供給割合を気孔生成剤/補強剤で2.5以下とすることを特徴とする請求項4に記載の疑似粒子の製造方法。
- 石炭を乾留して冶金用コークスを製造するにあたり、石炭に添加される、気孔生成剤を核としてその周囲に補強剤を付着してなる疑似粒子の製造装置であって、
気孔生成剤、バインダー、補強剤がこの順で連続的に供給される搬送ラインを有し、これらを搬送する搬送装置と、
気孔生成剤、バインダー、補強剤を混合する混合装置と、
混合後の原料を造粒する造粒装置と、
を具備することを特徴とする疑似粒子の製造装置。
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