JP3596178B2 - エンジンの点火時期制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの点火時期制御装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のエンジンの点火時期制御装置として、圧縮行程から膨張行程を迎える気筒の点火プラグと排気行程から吸気行程を迎える気筒の点火プラグに同時に点火電流を供給する同時点火式点火装置がある(特開平1−92582号公報、参照)。
【0003】
この同時点火式点火装置は、ある気筒の圧縮行程で混合気に火花を飛ばす主点火が行われるとき、別の気筒の排気行程で既燃焼ガスに火花を飛ばす空打ち点火が行われる。
【0004】
ところで、ノッキングの発生時に点火時期を遅角側に移行してノッキングを抑制するものがある。また、車両に搭載されるオートマチックトランスミッションの変速時等に点火時期を遅角側に移行して変速ショックをやわらげるものがある。
【0005】
しかし、こうして点火時期を遅角側に移行する運転状態において、排気行程の次に迎える吸気行程で空打ち点火が行われる場合、吸気通路から気筒に流入した混合気に着火して、火炎が吸気通路にひろがるバックファイア現象を引き起こす可能性がある。
【0006】
これに対処して従来装置では、点火時期が遅角側に移行することを制限する遅角下限値を、吸気弁が開かれるタイミングより進角側に設定して、吸気弁が開弁した後に空打ち点火が行われることを回避するようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
吸気弁が開弁した後でも、吸気通路から混合気が気筒に流入するまでの間は、空打ち点火を行ってもバックファイア現象が起こらない運転状態がある。すなわち、バックファイア現象が起こる点火時期は、エンジン回転数、エンジン負荷、混合比、スロットルバルブの開閉作動速度等の運転条件に応じて異なる。
【0008】
例えば、点火プラグに放電する時間が一定として制御されると、点火プラグに放電するクランク角はエンジン回転数が上昇するのにしたがって大きくなるため、バックファイア現象が起こる点火時期は、エンジン回転数が上昇するのにしたがって進角側に移行する。
【0009】
また、エンジン負荷が高まるのにしたがってスロットルバルブより下流側に生じる吸入負圧Boostが低くなり、吸気弁が開弁した直後に気筒から吸気通路に逆流する既燃焼ガス量が減少し、吸入行程の初期で吸気通路から気筒に流入する不活性ガス量が減少するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。
【0011】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、同時点火式点火装置を備えるエンジンの点火時期制御装置において、バックファイア現象を防止しながら、点火時期の制御範囲を拡大することを目的とする。
【0012】
請求項1に記載の点火時期制御装置は、図10に示すように、
圧縮行程から膨張行程を迎える気筒の点火プラグと排気行程から吸気行程を迎える気筒の点火プラグに同時に点火電流を供給する同時点火式点火装置101と、
エンジン運転状態に応じて要求点火時期ADVbを計算する要求点火時期計算手段102と、
運転状態に応じて要求点火時期ADVbを遅角側に補正する点火時期補正量ADVdltを計算する点火時期補正量計算手段103と、
を備えるエンジンにおいて、
エンジン回転数とエンジン負荷に応じて遅角下限値ADVlimを計算する遅角下限値計算手段104と、
要求点火時期ADVbと遅角下限値ADVlimを比較して進角側にある値を最終点火時期ADVとして決定する最終点火時期決定手段105とを備え、
前記遅角下限値ADVlimはエンジン負荷が上昇するのにしたがって進角側に移行するように設定する。
【0013】
請求項2に記載のエンジンの点火時期制御装置は、請求項1に記載の発明において、
エンジン回転数が上昇するのにしたがって前記遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように設定する。
【0015】
請求項3に記載のエンジンの点火時期制御装置は、請求項1または2に記載の発明において、
エンジンに吸入される空気量に対する燃料量の混合比を検出する混合比検出手段と、
混合比がリーン側に移行するのにしたがって前記遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように補正する遅角下限値補正手段とを備える。
【0016】
請求項4に記載のエンジンの点火時期制御装置は、請求項1から3のいずれか一つに記載の発明において、
エンジンに吸入される空気を絞るスロットルバルブと、
スロットルバルブの作動速度ΔTVOを検出するスロットルバルブ作動速度検出手段と、
スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって前記遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように補正する遅角下限値補正手段とを備える。
【0017】
【作用】
請求項1に記載のエンジンの点火時期制御装置において、例えばノッキングの発生時、またはオートマチックトランスミッションの変速時に、点火時期補正量ADVdltを介して要求点火時期ADVbを遅角側に補正する。
【0018】
エンジン回転数とエンジン負荷に応じて遅角下限値ADVlimを設定し、要求点火時期ADVbと遅角下限値ADVlimを比較して進角側にある値を最終点火時期ADVとして決定することにより、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。なお、エンジン負荷が高まるのにしたがってスロットルバルブより下流側に生じる吸入負圧が低くなり、吸気弁が開弁した直後に気筒から吸気通路に逆流する既燃焼ガス量が減少し、吸入行程の初期で吸気通路から気筒に流入する不活性ガス量が減少して、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行するので、遅角下限値ADVlimは、エンジン負荷が上昇するのにしたがって進角側に移行するように設定する。
【0019】
請求項2に記載のエンジンの点火時期制御装置において、点火プラグに放電する時間が一定に制御されると、点火プラグに放電するクランク角はエンジン回転数が上昇するのにしたがって大きくなるため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。
【0020】
この特性に対応して、エンジン回転数が上昇するのにしたがって点火開始時点の遅角下限値ADVlimが進角側に移行することにより、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0023】
請求項3に記載のエンジンの点火時期制御装置において、混合比がリーン側に移行するのにしたがって吸入行程の初期で吸気通路から気筒に流入する混合気の可燃混合比範囲への到達が早期化するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。
【0024】
この特性に対応して、混合比がリーン側に移行するのにしたがって遅角下限値ADVlimが進角側に移行することにより、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0025】
請求項4に記載のエンジンの点火時期制御装置において、アクセルペダルが踏み込まれる速さが増して、スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって吸入行程の初期で吸気通路から気筒に流入する混合気の混合比がリーン側へ移行して、混合気の可燃混合比範囲への到達が早期化するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。
【0026】
この特性に対応して、スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって遅角下限値ADVlimが進角側に移行することにより、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0028】
図1に示すように、4気筒エンジン1は、各吸気弁2が開かれるのに伴って吸気通路3から各気筒に吸気(混合気)を吸入し、この吸気をピストン5で圧縮して、点火プラグ6で着火燃焼させ、排気弁7が開かれるのに伴って排気が排気通路8に排出され、これらの各行程が連続して繰り返される。
【0029】
吸気通路3の途中に燃料を噴射するインジェクタ4と、アクセルペダルに連動して吸気を絞るスロットルバルブ9がそれぞれ設けられ、その上流側には吸気量を検出するホットワイヤ式エアフロメータ10が設けられる。インジェクタ4はコントロールユニット13からの信号に基づき、燃料を噴射する。
【0030】
点火プラグ6は各気筒に臨んで設けられる。点火プラグ6はコントロールユニット13からの信号に基づきパワートランジスタ14を介してイグニッションコイル15から送られる電流により点火する。
【0031】
図2に示すように、コントロールユニット13には、エアフロメータ10で検出される吸気量Qaと、スロットルセンサ17で検出されるスロットル開度TVOと、クランク角センサ11で検出されるエンジン回転数Neと、冷却水温センサ18で検出される冷却水温度Tw等を入力する。
【0032】
コントロールユニット13には、基本燃料噴射量Tpを
Tp=K・Qa/Ne ‥‥(1)
ただし、K;定数
なる式から演算した後、最終的な燃料噴射量Tiを次式で算出して燃料噴射量を制御する。
【0033】
Ti=Tp×α×COEF+Ts …(2)
ただし、αは空燃比フィードバック補正係数、COEFは冷却水温度Tw等をパラメータとした各種補正係数の和、Tsは無効噴射パルス幅である。
【0034】
したがって、エンジン1に供給される空気量に対する燃料量の混合比はTi/Tpで表される。
【0035】
こうして演算された燃料噴射量Tiに対応するパルス信号を各インジェクタ4に出力し、燃料噴射制御を行う。
【0036】
同時点火式点火装置として設けられるイグニッションコイル15は、ピストン5が上昇する圧縮行程から膨張行程を迎える気筒の点火プラグ6と、ピストン5が下降する排気行程から吸気行程を迎える気筒の点火プラグ6に同時に点火電流を供給するようになっている。同時点火式のイグニッションコイル15を設けることにより、点火系の簡素化がはかれる。
【0037】
図3は4気筒エンジン1における点火順序を示すタイミングチャートである。この場合、点火順序は気筒毎に#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒となり、同時点火式のイグニッションコイル15を用いた点火は、#1気筒と#4気筒で同時に行われるとともに、#2気筒と#3気筒で同時に行われる。例えば#1気筒の圧縮行程で混合気に火花を飛ばす主点火が行われるとき、#4気筒の排気行程では既燃焼ガスに火花を飛ばす空打ち点火が行われる。
【0038】
しかし、例えばノッキングの発生時、または車両に搭載されるオートマチックトランスミッションの変速時等に、コントロールユニット13により制御される主点火の時期ADVが遅角側に移行するのに伴って、排気行程の次に迎える吸気行程で空打ち点火が行われた場合、吸気通路3から気筒に流入した混合気に着火して、火炎が吸気通路3にひろがるバックファイア現象を引き起こす可能性がある。
【0039】
これに対処して従来装置では、点火時期ADVが遅角側に移行することを制限する遅角下限値ADVlimを、吸気弁2が開かれるタイミングより進角側に設定して、吸気弁2が開弁した後に空打ち点火が行われることを回避するようになっている。
【0040】
ところで、吸気弁2が開弁した後でも、吸気通路3から混合気が気筒に流入するまでの間は、空打ち点火を行ってもバックファイア現象が起こらない運転状態がある。すなわち、バックファイア現象が起こる点火時期ADVは、後述するように、エンジン回転数、エンジン負荷、燃料の混合比、スロットルバルブ9の開閉作動速度等の運転条件に応じて異なる。
【0041】
しかしながら、こうした従来装置にあっては、点火時期ADVの遅角下限値ADVlimを吸気弁2が開かれるタイミングで一義的に決めているため、点火時期ADVの制御範囲が必要以上に縮小されるという問題点が考えられる。
【0042】
本発明はこれに対処して、バックファイア現象が起こらないように点火時期ADVが遅角側に移行することを制限する遅角下限値ADVlimをエンジン回転数とエンジン負荷に応じて設定し、点火時期がこの遅角下限値ADVlimを越えて遅角側に移行することを制限する制御を行い、点火時期ADVの制御範囲を拡大する。
【0043】
さらに、遅角下限値ADVlimをエンジン1に供給される空気量に対する燃料量の混合比に応じて補正するとともに、スロットルバルブ9の開閉作動速度に応じて補正し、点火時期の制御範囲を拡大する。
【0044】
図8のフローチャートは点火時期ADVを決定するルーチンを示しており、コントロールユニット13において一定周期毎に実行される。
【0045】
これについて説明すると、まず、ステップ1にて、クランク角センサ11から信号を基にエンジン回転数Neを計算する。
【0046】
続いて、ステップ2にて、エアフロメータ10で検出される吸気量Qaとエンジン回転数Neを基に、基本燃料噴射量Tpを前記(1)式により計算する。
【0047】
続いて、ステップ3にて、エンジン回転数Neと基本燃料噴射量Tpに応じて、予め設定された点火時期のマップ値ADVmapを計算する。
【0048】
ステップ4にて、例えばノッキングの発生時、またはオートマチックトランスミッションの変速時に、点火時期を遅角側に補正する点火時期補正量ADVdltを計算する。
【0049】
続いて、ステップ5にて、マップ値ADVmapと点火時期補正量ADVdltを基に要求点火時期ADVbを計算する。
【0050】
続いて、ステップ6にて、図4のマップを基に、エンジン回転数とエンジン負荷に応じて基本遅角下限値ADVlmbを計算する。
【0051】
ステップ7にて、図5のマップを基に、混合比(Ti/Tp)とスロットルバルブ作動速度ΔTVOに応じて遅角下限値補正量ADVlmdを計算する。
【0052】
続いて、ステップ8にて、基本遅角下限値ADVlmbと遅角下限値補正量ADVlmdを基に遅角下限値ADVlimを、次式により計算する。
【0053】
ADVlim=ADVlmb+C・ADVlmd …(3)
ただし、C;定数
続いて、ステップ9にて、要求点火時期ADVbと遅角下限値ADVlimを比較する。
【0054】
要求点火時期ADVbが遅角下限値ADVlimより進角側にあると判定された場合、ステップ10に進んで、最終点火時期ADVを要求点火時期ADVbとする。
【0055】
一方、要求点火時期ADVbが遅角下限値ADVlimより遅角側にあると判定された場合、ステップ11に進んで、最終点火時期ADVを遅角下限値ADVlimとする。
【0056】
続いて、ステップ12にて、決定された最終点火時期ADVを所定のアドレスに格納して、本ルーチンを終了する。
【0057】
図9は、最終点火時期ADVの制御例を示している。これから、車両の加速時とオートマチックトランスミッションの変速時に要求点火時期ADVbが遅角側に大幅に移行するが、最終点火時期ADVが遅角下限値ADVlimによって制限されることにより、バックファイア現象を未然に防止できる。
【0058】
最終点火時期ADVが遅角下限値ADVlimによって制限されることにより、点火プラグ6の放電が開始されるクランク角がバックファイア現象を起こす限界クランク角に近づけられ、点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0059】
図4は、エンジン回転数とエンジン負荷に応じて基本遅角下限値ADVlmbを設定したマップであり、エンジン回転数の上昇に伴って点火開始時点の基本遅角下限値ADVlmbが進角側に移行するように設定されている。これは、点火プラグ6に放電する時間が一定として制御されると、点火プラグ6に放電するクランク角がエンジン回転数の上昇に伴って大きくなり、バックファイア現象を起こす限界クランク角が進角側に移行することに対応している。
【0060】
図4のマップにおいて、エンジン負荷が高まるのにしたがって点火開始時点の基本遅角下限値ADVlmbが進角側に移行するように設定される。これは、エンジン負荷が高まるのにしたがってスロットルバルブ9より下流側に生じる吸入負圧Boostが低くなり、吸気弁2が開弁した直後に気筒から吸気通路3に逆流する既燃焼ガス量が減少し、吸入行程の初期で吸気通路3から気筒に流入する不活性ガス量が減少するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行することに対応している。
【0061】
図5は、混合比(Ti/Tp)とスロットルバルブ作動速度ΔTVOに応じて遅角下限値ADVlimの補正に用いられる遅角下限値補正量ADVlmdを設定したマップである。遅角下限値補正量ADVlmdは、混合比がリーン側に移行するのにしたがって点火開始時点の遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように設定される。そして遅角下限値補正量ADVlmdは、スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって点火開始時点の遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように設定される。
【0062】
図6は、設定された燃料の混合比に応じて実際に吸気通路3から気筒に流入する燃料の混合比が変化する様子を示す図である。燃料の混合比がリッチになると、吸気弁2が開弁した直後に気筒に流入する燃料量が増え、吸入行程の初期で吸気通路3から気筒に流入する混合気の可燃混合比範囲への到達が遅れる。
【0063】
図7は、設定された燃料の混合比に応じてバックファイア現象を起こす点火時期が変化する様子を示す特性図である。混合比がリーン側に移行するのにしたがって吸入行程の初期で吸気通路3から気筒に流入する混合気の可燃混合比範囲への到達が早期化するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。この特性に対応して、図5のマップにおいて、点火開始時点の遅角下限値補正量ADVlmdは燃料の混合比がリーン側に移行するのにしたがって進角側に移行するように設定されている。
【0064】
アクセルペダルが踏み込まれる速さが増して、スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって吸入行程の初期で吸気通路3から気筒に流入する混合気の混合比がリーン側へ移行して、混合気の可燃混合比範囲への到達が早期化するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。この特性に対応して、図5のマップにおいて、点火開始時点の遅角下限値補正量ADVlmdはスロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって進角側に移行するように設定されている。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載のエンジンの点火時期制御装置によれば、エンジン回転数とエンジン負荷に応じて遅角下限値ADVlimを設定し、要求点火時期ADVbと遅角下限値ADVlimを比較して進角側にある値を最終点火時期ADVとして決定する構成であり、また、遅角下限値ADVlimはエンジン負荷が上昇するのにしたがって進角側に移行する構成のため、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0066】
請求項2に記載のエンジンの点火時期制御装置によれば、エンジン回転数が上昇するのにしたがって遅角下限値ADVlimが進角側に移行する構成のため、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0068】
請求項3に記載のエンジンの点火時期制御装置によれば、混合比がリーン側に移行するのにしたがって前記遅角下限値ADVlimが進角側に移行する構成のため、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0069】
請求項4に記載のエンジンの点火時期制御装置によれば、スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって遅角下限値ADVlimが進角側に移行する構成のため、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すエンジンのシステム図。
【図2】同じく制御系の構成図。
【図3】同じく点火順序を示すタイミングチャート。
【図4】同じく基本遅角下限値ADVlmbを設定したマップ。
【図5】同じく遅角下限値補正量ADVlmdを設定したマップ。
【図6】同じく設定された燃料の混合比に応じて実際に吸気通路3から気筒に流入する燃料の混合比が変化する様子を示す図。
【図7】同じく設定された燃料の混合比に応じてバックファイア現象を起こす点火時期が変化する様子を示す特性図。
【図8】同じく点火時期ADVを決定する図のフローチャート。
【図9】同じく最終点火時期ADVの制御例を示す説明図。
【図10】請求項1に記載の発明を示すクレーム対応図。
【符号の説明】
1 エンジン
2 吸気弁
3 吸気通路
6 点火プラグ
7 排気弁
9 スロットルバルブ
10 エアフロメータ
11 クランク角センサ
13 コントロールユニット
14 パワートランジスタ
15 イグニッションコイル
101 同時点火式点火装置
102 要求点火時期計算手段
103 点火時期補正量計算手段
104 遅角下限値計算手段
105 最終点火時期決定手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの点火時期制御装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のエンジンの点火時期制御装置として、圧縮行程から膨張行程を迎える気筒の点火プラグと排気行程から吸気行程を迎える気筒の点火プラグに同時に点火電流を供給する同時点火式点火装置がある(特開平1−92582号公報、参照)。
【0003】
この同時点火式点火装置は、ある気筒の圧縮行程で混合気に火花を飛ばす主点火が行われるとき、別の気筒の排気行程で既燃焼ガスに火花を飛ばす空打ち点火が行われる。
【0004】
ところで、ノッキングの発生時に点火時期を遅角側に移行してノッキングを抑制するものがある。また、車両に搭載されるオートマチックトランスミッションの変速時等に点火時期を遅角側に移行して変速ショックをやわらげるものがある。
【0005】
しかし、こうして点火時期を遅角側に移行する運転状態において、排気行程の次に迎える吸気行程で空打ち点火が行われる場合、吸気通路から気筒に流入した混合気に着火して、火炎が吸気通路にひろがるバックファイア現象を引き起こす可能性がある。
【0006】
これに対処して従来装置では、点火時期が遅角側に移行することを制限する遅角下限値を、吸気弁が開かれるタイミングより進角側に設定して、吸気弁が開弁した後に空打ち点火が行われることを回避するようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
吸気弁が開弁した後でも、吸気通路から混合気が気筒に流入するまでの間は、空打ち点火を行ってもバックファイア現象が起こらない運転状態がある。すなわち、バックファイア現象が起こる点火時期は、エンジン回転数、エンジン負荷、混合比、スロットルバルブの開閉作動速度等の運転条件に応じて異なる。
【0008】
例えば、点火プラグに放電する時間が一定として制御されると、点火プラグに放電するクランク角はエンジン回転数が上昇するのにしたがって大きくなるため、バックファイア現象が起こる点火時期は、エンジン回転数が上昇するのにしたがって進角側に移行する。
【0009】
また、エンジン負荷が高まるのにしたがってスロットルバルブより下流側に生じる吸入負圧Boostが低くなり、吸気弁が開弁した直後に気筒から吸気通路に逆流する既燃焼ガス量が減少し、吸入行程の初期で吸気通路から気筒に流入する不活性ガス量が減少するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。
【0011】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、同時点火式点火装置を備えるエンジンの点火時期制御装置において、バックファイア現象を防止しながら、点火時期の制御範囲を拡大することを目的とする。
【0012】
請求項1に記載の点火時期制御装置は、図10に示すように、
圧縮行程から膨張行程を迎える気筒の点火プラグと排気行程から吸気行程を迎える気筒の点火プラグに同時に点火電流を供給する同時点火式点火装置101と、
エンジン運転状態に応じて要求点火時期ADVbを計算する要求点火時期計算手段102と、
運転状態に応じて要求点火時期ADVbを遅角側に補正する点火時期補正量ADVdltを計算する点火時期補正量計算手段103と、
を備えるエンジンにおいて、
エンジン回転数とエンジン負荷に応じて遅角下限値ADVlimを計算する遅角下限値計算手段104と、
要求点火時期ADVbと遅角下限値ADVlimを比較して進角側にある値を最終点火時期ADVとして決定する最終点火時期決定手段105とを備え、
前記遅角下限値ADVlimはエンジン負荷が上昇するのにしたがって進角側に移行するように設定する。
【0013】
請求項2に記載のエンジンの点火時期制御装置は、請求項1に記載の発明において、
エンジン回転数が上昇するのにしたがって前記遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように設定する。
【0015】
請求項3に記載のエンジンの点火時期制御装置は、請求項1または2に記載の発明において、
エンジンに吸入される空気量に対する燃料量の混合比を検出する混合比検出手段と、
混合比がリーン側に移行するのにしたがって前記遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように補正する遅角下限値補正手段とを備える。
【0016】
請求項4に記載のエンジンの点火時期制御装置は、請求項1から3のいずれか一つに記載の発明において、
エンジンに吸入される空気を絞るスロットルバルブと、
スロットルバルブの作動速度ΔTVOを検出するスロットルバルブ作動速度検出手段と、
スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって前記遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように補正する遅角下限値補正手段とを備える。
【0017】
【作用】
請求項1に記載のエンジンの点火時期制御装置において、例えばノッキングの発生時、またはオートマチックトランスミッションの変速時に、点火時期補正量ADVdltを介して要求点火時期ADVbを遅角側に補正する。
【0018】
エンジン回転数とエンジン負荷に応じて遅角下限値ADVlimを設定し、要求点火時期ADVbと遅角下限値ADVlimを比較して進角側にある値を最終点火時期ADVとして決定することにより、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。なお、エンジン負荷が高まるのにしたがってスロットルバルブより下流側に生じる吸入負圧が低くなり、吸気弁が開弁した直後に気筒から吸気通路に逆流する既燃焼ガス量が減少し、吸入行程の初期で吸気通路から気筒に流入する不活性ガス量が減少して、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行するので、遅角下限値ADVlimは、エンジン負荷が上昇するのにしたがって進角側に移行するように設定する。
【0019】
請求項2に記載のエンジンの点火時期制御装置において、点火プラグに放電する時間が一定に制御されると、点火プラグに放電するクランク角はエンジン回転数が上昇するのにしたがって大きくなるため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。
【0020】
この特性に対応して、エンジン回転数が上昇するのにしたがって点火開始時点の遅角下限値ADVlimが進角側に移行することにより、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0023】
請求項3に記載のエンジンの点火時期制御装置において、混合比がリーン側に移行するのにしたがって吸入行程の初期で吸気通路から気筒に流入する混合気の可燃混合比範囲への到達が早期化するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。
【0024】
この特性に対応して、混合比がリーン側に移行するのにしたがって遅角下限値ADVlimが進角側に移行することにより、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0025】
請求項4に記載のエンジンの点火時期制御装置において、アクセルペダルが踏み込まれる速さが増して、スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって吸入行程の初期で吸気通路から気筒に流入する混合気の混合比がリーン側へ移行して、混合気の可燃混合比範囲への到達が早期化するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。
【0026】
この特性に対応して、スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって遅角下限値ADVlimが進角側に移行することにより、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0028】
図1に示すように、4気筒エンジン1は、各吸気弁2が開かれるのに伴って吸気通路3から各気筒に吸気(混合気)を吸入し、この吸気をピストン5で圧縮して、点火プラグ6で着火燃焼させ、排気弁7が開かれるのに伴って排気が排気通路8に排出され、これらの各行程が連続して繰り返される。
【0029】
吸気通路3の途中に燃料を噴射するインジェクタ4と、アクセルペダルに連動して吸気を絞るスロットルバルブ9がそれぞれ設けられ、その上流側には吸気量を検出するホットワイヤ式エアフロメータ10が設けられる。インジェクタ4はコントロールユニット13からの信号に基づき、燃料を噴射する。
【0030】
点火プラグ6は各気筒に臨んで設けられる。点火プラグ6はコントロールユニット13からの信号に基づきパワートランジスタ14を介してイグニッションコイル15から送られる電流により点火する。
【0031】
図2に示すように、コントロールユニット13には、エアフロメータ10で検出される吸気量Qaと、スロットルセンサ17で検出されるスロットル開度TVOと、クランク角センサ11で検出されるエンジン回転数Neと、冷却水温センサ18で検出される冷却水温度Tw等を入力する。
【0032】
コントロールユニット13には、基本燃料噴射量Tpを
Tp=K・Qa/Ne ‥‥(1)
ただし、K;定数
なる式から演算した後、最終的な燃料噴射量Tiを次式で算出して燃料噴射量を制御する。
【0033】
Ti=Tp×α×COEF+Ts …(2)
ただし、αは空燃比フィードバック補正係数、COEFは冷却水温度Tw等をパラメータとした各種補正係数の和、Tsは無効噴射パルス幅である。
【0034】
したがって、エンジン1に供給される空気量に対する燃料量の混合比はTi/Tpで表される。
【0035】
こうして演算された燃料噴射量Tiに対応するパルス信号を各インジェクタ4に出力し、燃料噴射制御を行う。
【0036】
同時点火式点火装置として設けられるイグニッションコイル15は、ピストン5が上昇する圧縮行程から膨張行程を迎える気筒の点火プラグ6と、ピストン5が下降する排気行程から吸気行程を迎える気筒の点火プラグ6に同時に点火電流を供給するようになっている。同時点火式のイグニッションコイル15を設けることにより、点火系の簡素化がはかれる。
【0037】
図3は4気筒エンジン1における点火順序を示すタイミングチャートである。この場合、点火順序は気筒毎に#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒となり、同時点火式のイグニッションコイル15を用いた点火は、#1気筒と#4気筒で同時に行われるとともに、#2気筒と#3気筒で同時に行われる。例えば#1気筒の圧縮行程で混合気に火花を飛ばす主点火が行われるとき、#4気筒の排気行程では既燃焼ガスに火花を飛ばす空打ち点火が行われる。
【0038】
しかし、例えばノッキングの発生時、または車両に搭載されるオートマチックトランスミッションの変速時等に、コントロールユニット13により制御される主点火の時期ADVが遅角側に移行するのに伴って、排気行程の次に迎える吸気行程で空打ち点火が行われた場合、吸気通路3から気筒に流入した混合気に着火して、火炎が吸気通路3にひろがるバックファイア現象を引き起こす可能性がある。
【0039】
これに対処して従来装置では、点火時期ADVが遅角側に移行することを制限する遅角下限値ADVlimを、吸気弁2が開かれるタイミングより進角側に設定して、吸気弁2が開弁した後に空打ち点火が行われることを回避するようになっている。
【0040】
ところで、吸気弁2が開弁した後でも、吸気通路3から混合気が気筒に流入するまでの間は、空打ち点火を行ってもバックファイア現象が起こらない運転状態がある。すなわち、バックファイア現象が起こる点火時期ADVは、後述するように、エンジン回転数、エンジン負荷、燃料の混合比、スロットルバルブ9の開閉作動速度等の運転条件に応じて異なる。
【0041】
しかしながら、こうした従来装置にあっては、点火時期ADVの遅角下限値ADVlimを吸気弁2が開かれるタイミングで一義的に決めているため、点火時期ADVの制御範囲が必要以上に縮小されるという問題点が考えられる。
【0042】
本発明はこれに対処して、バックファイア現象が起こらないように点火時期ADVが遅角側に移行することを制限する遅角下限値ADVlimをエンジン回転数とエンジン負荷に応じて設定し、点火時期がこの遅角下限値ADVlimを越えて遅角側に移行することを制限する制御を行い、点火時期ADVの制御範囲を拡大する。
【0043】
さらに、遅角下限値ADVlimをエンジン1に供給される空気量に対する燃料量の混合比に応じて補正するとともに、スロットルバルブ9の開閉作動速度に応じて補正し、点火時期の制御範囲を拡大する。
【0044】
図8のフローチャートは点火時期ADVを決定するルーチンを示しており、コントロールユニット13において一定周期毎に実行される。
【0045】
これについて説明すると、まず、ステップ1にて、クランク角センサ11から信号を基にエンジン回転数Neを計算する。
【0046】
続いて、ステップ2にて、エアフロメータ10で検出される吸気量Qaとエンジン回転数Neを基に、基本燃料噴射量Tpを前記(1)式により計算する。
【0047】
続いて、ステップ3にて、エンジン回転数Neと基本燃料噴射量Tpに応じて、予め設定された点火時期のマップ値ADVmapを計算する。
【0048】
ステップ4にて、例えばノッキングの発生時、またはオートマチックトランスミッションの変速時に、点火時期を遅角側に補正する点火時期補正量ADVdltを計算する。
【0049】
続いて、ステップ5にて、マップ値ADVmapと点火時期補正量ADVdltを基に要求点火時期ADVbを計算する。
【0050】
続いて、ステップ6にて、図4のマップを基に、エンジン回転数とエンジン負荷に応じて基本遅角下限値ADVlmbを計算する。
【0051】
ステップ7にて、図5のマップを基に、混合比(Ti/Tp)とスロットルバルブ作動速度ΔTVOに応じて遅角下限値補正量ADVlmdを計算する。
【0052】
続いて、ステップ8にて、基本遅角下限値ADVlmbと遅角下限値補正量ADVlmdを基に遅角下限値ADVlimを、次式により計算する。
【0053】
ADVlim=ADVlmb+C・ADVlmd …(3)
ただし、C;定数
続いて、ステップ9にて、要求点火時期ADVbと遅角下限値ADVlimを比較する。
【0054】
要求点火時期ADVbが遅角下限値ADVlimより進角側にあると判定された場合、ステップ10に進んで、最終点火時期ADVを要求点火時期ADVbとする。
【0055】
一方、要求点火時期ADVbが遅角下限値ADVlimより遅角側にあると判定された場合、ステップ11に進んで、最終点火時期ADVを遅角下限値ADVlimとする。
【0056】
続いて、ステップ12にて、決定された最終点火時期ADVを所定のアドレスに格納して、本ルーチンを終了する。
【0057】
図9は、最終点火時期ADVの制御例を示している。これから、車両の加速時とオートマチックトランスミッションの変速時に要求点火時期ADVbが遅角側に大幅に移行するが、最終点火時期ADVが遅角下限値ADVlimによって制限されることにより、バックファイア現象を未然に防止できる。
【0058】
最終点火時期ADVが遅角下限値ADVlimによって制限されることにより、点火プラグ6の放電が開始されるクランク角がバックファイア現象を起こす限界クランク角に近づけられ、点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0059】
図4は、エンジン回転数とエンジン負荷に応じて基本遅角下限値ADVlmbを設定したマップであり、エンジン回転数の上昇に伴って点火開始時点の基本遅角下限値ADVlmbが進角側に移行するように設定されている。これは、点火プラグ6に放電する時間が一定として制御されると、点火プラグ6に放電するクランク角がエンジン回転数の上昇に伴って大きくなり、バックファイア現象を起こす限界クランク角が進角側に移行することに対応している。
【0060】
図4のマップにおいて、エンジン負荷が高まるのにしたがって点火開始時点の基本遅角下限値ADVlmbが進角側に移行するように設定される。これは、エンジン負荷が高まるのにしたがってスロットルバルブ9より下流側に生じる吸入負圧Boostが低くなり、吸気弁2が開弁した直後に気筒から吸気通路3に逆流する既燃焼ガス量が減少し、吸入行程の初期で吸気通路3から気筒に流入する不活性ガス量が減少するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行することに対応している。
【0061】
図5は、混合比(Ti/Tp)とスロットルバルブ作動速度ΔTVOに応じて遅角下限値ADVlimの補正に用いられる遅角下限値補正量ADVlmdを設定したマップである。遅角下限値補正量ADVlmdは、混合比がリーン側に移行するのにしたがって点火開始時点の遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように設定される。そして遅角下限値補正量ADVlmdは、スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって点火開始時点の遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように設定される。
【0062】
図6は、設定された燃料の混合比に応じて実際に吸気通路3から気筒に流入する燃料の混合比が変化する様子を示す図である。燃料の混合比がリッチになると、吸気弁2が開弁した直後に気筒に流入する燃料量が増え、吸入行程の初期で吸気通路3から気筒に流入する混合気の可燃混合比範囲への到達が遅れる。
【0063】
図7は、設定された燃料の混合比に応じてバックファイア現象を起こす点火時期が変化する様子を示す特性図である。混合比がリーン側に移行するのにしたがって吸入行程の初期で吸気通路3から気筒に流入する混合気の可燃混合比範囲への到達が早期化するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。この特性に対応して、図5のマップにおいて、点火開始時点の遅角下限値補正量ADVlmdは燃料の混合比がリーン側に移行するのにしたがって進角側に移行するように設定されている。
【0064】
アクセルペダルが踏み込まれる速さが増して、スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって吸入行程の初期で吸気通路3から気筒に流入する混合気の混合比がリーン側へ移行して、混合気の可燃混合比範囲への到達が早期化するため、バックファイア現象を起こす点火時期が進角側に移行する。この特性に対応して、図5のマップにおいて、点火開始時点の遅角下限値補正量ADVlmdはスロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって進角側に移行するように設定されている。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載のエンジンの点火時期制御装置によれば、エンジン回転数とエンジン負荷に応じて遅角下限値ADVlimを設定し、要求点火時期ADVbと遅角下限値ADVlimを比較して進角側にある値を最終点火時期ADVとして決定する構成であり、また、遅角下限値ADVlimはエンジン負荷が上昇するのにしたがって進角側に移行する構成のため、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0066】
請求項2に記載のエンジンの点火時期制御装置によれば、エンジン回転数が上昇するのにしたがって遅角下限値ADVlimが進角側に移行する構成のため、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0068】
請求項3に記載のエンジンの点火時期制御装置によれば、混合比がリーン側に移行するのにしたがって前記遅角下限値ADVlimが進角側に移行する構成のため、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【0069】
請求項4に記載のエンジンの点火時期制御装置によれば、スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって遅角下限値ADVlimが進角側に移行する構成のため、バックファイア現象を防止しながら、最終点火時期ADVの制御範囲を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すエンジンのシステム図。
【図2】同じく制御系の構成図。
【図3】同じく点火順序を示すタイミングチャート。
【図4】同じく基本遅角下限値ADVlmbを設定したマップ。
【図5】同じく遅角下限値補正量ADVlmdを設定したマップ。
【図6】同じく設定された燃料の混合比に応じて実際に吸気通路3から気筒に流入する燃料の混合比が変化する様子を示す図。
【図7】同じく設定された燃料の混合比に応じてバックファイア現象を起こす点火時期が変化する様子を示す特性図。
【図8】同じく点火時期ADVを決定する図のフローチャート。
【図9】同じく最終点火時期ADVの制御例を示す説明図。
【図10】請求項1に記載の発明を示すクレーム対応図。
【符号の説明】
1 エンジン
2 吸気弁
3 吸気通路
6 点火プラグ
7 排気弁
9 スロットルバルブ
10 エアフロメータ
11 クランク角センサ
13 コントロールユニット
14 パワートランジスタ
15 イグニッションコイル
101 同時点火式点火装置
102 要求点火時期計算手段
103 点火時期補正量計算手段
104 遅角下限値計算手段
105 最終点火時期決定手段
Claims (4)
- 圧縮工程から膨張行程を迎える気筒の点火プラグと排気行程から吸気行程を迎える気筒の点火プラグに同時に点火電流を供給する同時点火式点火装置と、
エンジン運転状態に応じて要求点火時期ADVbを計算する要求点火時期計算手段と、
運転状態に応じて要求点火時期ADVbを遅角側に補正する点火時期補正量AADVdltを計算する点火時期補正量計算手段と、
を備えるエンジンにおいて、
エンジン回転数とエンジン負荷に応じて遅角下限値ADVlimを計算する遅角下限値計算手段と、
要求点火時期ADVbと遅角下限値ADVlimを比較して進角側にある値を最終点火時期ADVとして決定する最終点火時期決定手段と、を備え、
前記遅角下限値ADVlimはエンジン負荷が上昇するのにしたがって進角側に移行するように設定したことを特徴とするエンジンの点火時期制御装置。 - 前記遅角下限値ADVlimは、エンジン回転数が上昇するのにしたがって進角側に移行するように設定したことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの点火時期制御装置。
- エンジンに吸入される空気量に対する燃料量の混合比を検出する混合比検出手段と、
混合比がリーン側に移行するのにしたがって前記遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように補正する遅角下限値補正手段とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの点火時期制御装置。 - エンジンに吸入される空気を絞るスロットルバルブと、
スロットルバルブの作動速度ΔTVOを検出するスロットルバルブ作動速度検出手段と、
スロットルバルブ作動速度ΔTVOが上昇するのにしたがって前記遅角下限値ADVlimが進角側に移行するように補正する遅角下限値補正手段とを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のエンジンの点火時期制御装置。
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