JP3595840B6 - ストレプトリシンo誘導体 - Google Patents

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関連出願
本出願は、クレイグW.アダムス(Craig W.Adams)による『ストレプトリシンOバリエント(Streptolysin O Varients)』と表題のついた米国特許第07/752,428号(1991年8月30日出願)(Beckman Docket No.128D−122)およびクレイグW.アダムス(Craig W.Adams)およびパティ・パング(Patty Pang)による『ストレプトリシンO誘導体およびバリエントの抗体(Antibodies to Streptolysin O Derivatives and Varients)』と表題のついた米国特許第07/753,289号(Beckman Docket No.128D−123)に関連する。この二つの出願は、今回同時に提出されていて、ここでは参考のために記載した。
発明の分野
本発明は、ストレプトリシンO一般に関し、さらに詳細には、組換えDNA技術により産生されたストレプトリシンO誘導体に関する。
発明の背景
本明細書には、抗原物質であるストレプトリシンOの誘導体融合生成物であるが開示されている。ストレプトリシンOは、人間の場合、たとえば、リウマチ熱と関連しているので、ストレプトリシンOに対する免疫応答の証拠についての免疫診断アッセイが、日常的に用いらてれている。ストレプトリシンOの開示した誘導体変種は、組換えDNA技術により製造され、形質発現により可溶であり、野性型SLOに結合し得る少なくともひとつの抗体により束縛され得るものであり、溶血活性である。本発明以前は、ストレプトリシンOは、バクテリアストレプトコッカスピヨゲネス(streptococcus pyogenes)を経て得ることができた。ストレプトリシンOの毒性と病原特性は、赤血球の溶菌により典型的にモニタ−される。
I.遺伝暗号(コード)
特定のたんぱく質たとえばストレプトリシンO(以下『SLO』とする)の遺伝子コードは、『コドン』と呼ばれる3つのヌクレオチドの逐次群別とそのようなコドンの相互の関係の配列に依存する。
『ヌクレオチド』は、ヌクレオシドと1つまたはそれ以上のりん酸基からなっている。『ヌクレオシド』は、ペントース糖に結合した窒素性塩基からなっている。『ペントース』糖は、5つの炭素原子を含んでいる。デオキシリボ核酸すなわち『DNA』の分子中では、ペントース糖は、『デオキシリボース』であり、窒素性塩基は、アデニン(『A』)、グアニン(『G』)、チミン(『T』)またはシトシン(『C』)である。リボ核酸すなわち『RNA』の分子中では、ペントース糖は、『リボース』であり、窒素性塩基は、ウラシル(『U』)がチミンに取って替わること以外DNAについてと同じである。3つの種類のRNAである、メッセンジャーRNAすなわち『mRNA』、転移RNAすなわち『tRNA』およびリボソームすなわち『rRNA』は、RNA中のコード化した遺伝情報をたとえばポリペプチドまたはたんぱく質に翻訳する。このように遺伝情報は、通常、次のように転移される:DNA→RNA→たんぱく質。
DNA分子の窒素性塩基の配列は、その分子に含まれる遺伝情報を暗号化する。DNA分子の糖およびりん酸基は、構造的な役割を行い、DAN『巨大分子』と呼ばれる一連のDNA分子の主鎖を形成する。DNAは、ヌクレオチド鎖の2つの相補鎖からなり、これらの鎖は、(比較的に)弱い水素結合により一緒に保たれている。それぞれのDNA分子の塩基は互いに結合している:Aは、常にTと、Cは、常にGと結合している。したがって、第1の鎖の配列5'−ATCG−3'は、他方の鎖の相補配列5'−TAGC−3'にすぐに向き合っている。これは、『相補塩基対合』と呼ばれる。相補塩基対合のプロセスは、『ハイブリッド形成』と呼ばれ、安定なDNA巨大分子の形成をもたらす。
それぞれのコドンは、1つのアミノ酸を指定する。『アミノ酸』は、たんぱく質の主要成分であり、『たんぱく質』はすべての生きている細胞の必須成分である。20の天然のアミノ酸がある。4つのヌクレオチド塩基(A、C、GおよびT)と3つのヌクレオチドがコドン1つ当たりにあるので、64の可能なコドン(43)がある。したがって、わずか20個の天然のアミノ酸があるだけなので、ほとんどのアミノ酸は、2つ以上のコドンにより指定される。これは、『重複性』または『縮退』と呼ばれる。たとえば、コドンGCG、GCA、GCTおよびGCCはすべて、アミノ酸アラニンについてコード化する。
コドンATG(Metアミノ酸コドン)は、正常な『読み始め』コドンである。アミノ酸に対してコード化しないコドンTAA、TAGおよびTGAは、正常な『停止』コドンである。mRNAの情報は、得られる1本鎖mRNAがDNAの1本鎖の配列に相補的なヌクレオチド配列を持つように2本鎖DNA巨大分子の1本の鎖の読み始めコドンに基づいて確立される。停止コドンが、DNA分子に沿いmRNAにより到達されると、翻訳は停止する。
mRNAから翻訳されたDNA巨大分子に沿う領域は、真核生物については『エクソン』と呼ばれ、原核生物については『翻訳された領域』と呼ばれる。『遺伝子』は、エクソン(真核生物)および翻訳された領域(原核生物)を含む。したがって、遺伝子はたんぱく質および/またはポリペプチドについてコード化する。たとえば、ほ乳動物は、真核生物であり、バクテリアは、原核生物である。
たんぱく質の天然の合成は、一連のいくつかの段階にわたり起こる。第1の段階は、上記したようにDNA巨大分子に相補的なmRNAの形成である。その後、tRNAが形成される;tRNAは、mRNA巨大分子上のそれぞれのコドンについて相補的なコドン(『アンチコドン』)を与える。その後、rRNAは、mRNA:tRNAから生じたコドン特異性アミノ酸(codon−specific amino acids)の集合を触媒してたんぱく質および/またはポリペプチドにすることになる。
II.組み換えDNA技術
ほとんどのたんぱく質は、非常に少量、天然につくられる。組み換えDNA技術の出現は、以前そのような少量でのみ得られたたんぱく質の多量の産生を可能とした。
以下は、クローニングに用いられる典型的なバクテリアホストである大腸菌、エスケリチア コリ(Escherichia coli)に適用されるであろう『典型的な』遺伝子操作についての説明である。
遺伝子を単離するためすなわち『クローン化』するため、DNAライブラリーは、ベクターを用いてDNA配列(ゲノムと呼ばれる)から構成される。『ベクター』は、バクテリア、イーストおよびほ乳動物の細胞に天然に存在する2本鎖DNAの小さな円形の分子である。ベクターは、通常、次に示す性質を有している:(i)ベクターが、適当なホスト細胞(たとえばE.コリ(E.coli)に保持されるであろうことを確実にする選択可能な『マーカー』をコード化するDNA配列;(ii)調節可能な転写プロモーター−−『調節可能な』とは、たとえばベクターの環境の操作によりプロモーターが『スイッチを入れられる』ことができることを意味し;『プロモーター』は、スイッチが入れられるとベクターに組み込まれた関心のもたれる遺伝子から多量のmRNAを生じるDNA配列の領域である−−異なるプロモーター(たとえば、lact rptacなど)は、mRNA産生の異なる速度を有する;
(iii)翻訳調節配列、たとえば、適当に位置したATG読み始めコンドン;および(iv)ポリリンカー;『ポリリンカー』は、ベクター内の正しい配向での関心のもたれる遺伝子の組み込みを単純化する。ベクターは、関心のもたれる遺伝子が、読み始めコドンの隣に組み込まれるようにベクターに位置したATG読み始めコドンの両側に制限エンドヌクレアーゼ部位を与えるように仕組まれ得る;このことは、プロモーター遺伝子の活性化で遺伝子の即座の転写を考慮する。
『制限エンドヌクレアーゼ』は、長さが4〜8のヌクレオチドの指定された配列で2本鎖のDNAを切断する酵素であり、多くの制限エンドヌクレアーゼは、切断箇所で短い1本鎖のテイルをのこすスタガードカットをつくる。この末端は、他の粘着性の末端と相補的な塩基対を形成し得るので『粘着末端(cohesive endまたはsticky end)』と呼ばれる。ゲノムは、ベクターを切断するために用いた制限エンドヌクレアーゼに相当する指定された制限エンドヌクレアーゼにより切断され(cut−up)、切断されたゲノムのそれぞれの小片は、ベクターに組み込まれる。特定の制限エンドヌクレアーゼによる細胞の全ゲノムを無作為的に切断することは、ゲノムクローニングへの『ショットガン』アプローチと典型的に呼ばれる。ショットガンアプローチは、非常にたくさんのDNA断片を生じさせ得、そのすべてが、ベクターに組み込まれる。
個々の小片のゲノムおよびベクター(対応する粘着末端を有する)は、互いに『融合され』すなわち『アニールされ』て、ベクターとゲノムの一部を含んでなる円形ハイブリッドDNA『プラズミド』を形成する。
プラズミドは、次に、ホスト細胞に導入される。2種類のホスト細胞『真核ホスト細胞』と『原核ホスト細胞』がある。真核ホスト細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣(『CHO』)であり、原核ホスト細胞の例は、E.コリバクテリアである。以下の説明の目的から、原核ホスト細胞に特に注目する。
プラズミドが、ホスト細胞に導入されると、これらの細胞は、プラズミドにより『形質転換』されていると呼ばれる。細胞が成長し、分裂すると、プラズミドは、同様に複製して、DNA断片を含むプラズミドのコピーを生じる。それぞれの形質転換された細胞は、『ゲノムDNAクローン』と呼ばれ、異なるDNA断片のすべてを含む形質転換された細胞の全集合は、『ゲノムDNAライブラリー』と呼ばれる。
どのゲノムDNAクローンが、対応するmRNAにコピーされ得るDNA配列を含むかを決定するのには、ゲノムDNAクローンを分離すなわち『スクリーニング』する必要がある。これを行うのには、いくつかの方法があり、例えば、放射性DNAプローブまたは免疫反応性の証拠の使用がある。認められるように、定義よりショットガンアプローチが、かなりの数のゲノムDNAクローンの形成をもたらし、これは、関心のもたれる可能性のある候補を見つけるようにスクリーニングされねばならないので、スクリーニングは、極端に労働集約的なプロセスとなろう。
III.ストレプトリシンO
ストレプトリシンO(『SLO』)は、およその分子量約65,000〜約70,000ダルトンを有している。SLOは、、4つの異なる属(ストレプトコッカス(streptococus)、バシラス(bacillus)、クロストリジウム(clostridium)およびリステリア(listeria))に属するグラム陽性バクテリア種により生じる酸素感受性(『チオール活性化された』)、細胞破壊(『細胞溶解性』)毒素(『細胞毒』)の種類に属する。
SLOは、膜コレステロールと相互作用し、広範囲のほ乳動物細胞に細胞溶解性−細胞毒性作用を示す。さらに、SLOは、非常に効果的な心臓毒性を有している。SLOと関連する毒性および病原性性質のひとつは、溶血活性であり、すなわち、SLOは、赤血球を溶解し、ヘモクロビンの放出をもたらす。SLOは、比較的少ない投与量で実験動物に死をもたらし得る。SLOの動物への注入は、その動物の即座の死を典型的にもたらす。
SLOは、指定されたバクテリア種により生じ得るので、これらの種が、ほ乳動物ホストを『襲う』と、バクテリアにより放出されたSLOが、異種たんぱく質としてホストにより扱われる。すると、SLOは、抗原である。『抗原』は、脊椎動物の血液流に入るとB型の小さなリンパ球のリンパ芽球への変換を刺激する高分子化合物である。リンパ芽球は、抗原刺激因子に特異性の抗体を分泌する。抗体は、刺激抗原の反応特性すなわち反応部位に対して特異的に相補的な反応部位を有するたんぱく質である。通常、抗体は、抗原粒子または分子に、免疫学的に活性部位すなわち『エピトープ』を占めることによりホスト有機体に対して抗原を無害とさせる性質を有している。抗SLO抗体(『ASO』)は、したがって、ホスト中へのSLOの分泌に応答してホストにより生成される。現在の連鎖球菌性感染またはその後遺症(病気または障害の後続作用)の各人の約80−85%は、上昇したレベルのASOを証明するであろう。
SLOを分泌する指定したバクテリア種による前のおよび/または現在の感染の測定は、たとえば、SLOの溶血特性またはASOのSLOへの結合に依存する免疫診断アッセイ技術を用いることにより可能である。SLOについての溶血免疫診断アッセイに焦点を当てると、患者のサンプルを、その患者とは異なる給源から得られた既知量のSLOに加え、この混合物を既知量の赤血球たとえばうさぎの赤血球に加える。SLOは、溶血特性を有するので、これは、これらの赤血球を溶解することになる。しかしながら、ASOがSLOに結合すると、SLOの溶血特性は中和される。したがって、サンプルが、現在の連鎖球菌性感染またはその後遺症を有する患者から得られるなら、サンプルに上昇したレベルのASOがあるであろう。したがって、混合物が、高いレベルの溶血活性をもたらすなら、このことは、あるとしても血清サンプル中にASOがほとんどないことを示し(したがって、SLO分泌バクテリアからの感染があったとしてもほとんどない)、その理由は、混合物中のSLOの既知量は、混合物中の既知量の赤血球を溶解し得るからである。混合物が、溶血活性につながらないなら、このことは、サンプル中のASOの量が、混合物中のSLOの既知量を不活性化するのに十分であることを示す。研究者は、ASOのそのような量を『タイター』と呼ぶ。典型的には約300国際単位/mlより大きいASOタイターは、SLOを分泌し得るバクテリア源による感染を示す。SLOを分泌するバクテリアによる感染を測定する他の免疫診断アッセイには、比濁プロトコールおよび混濁度プロトコールがある。
上記に概説した免疫診断アッセイ法を用いるためには、混合物に加える十分なSLOへの到着が必要である。SLOの1つの給源は、バクテリアストレプトコッカスピヨゲネス(Streptococcus pyogenes)(『S.ピヨゲネス』)を含む培養ブイヨンである。しかしながら、このようにしてSLOを得ることは、極めて困難であり費用がかかる:S.ピヨゲネス培養ブイヨン1リッターに対し、わずか約0.5mgのSLOが期待でできるだけである;S.ピヨゲネスを成長させる典型的な媒体は、高価である;S.ピヨゲネスは、クラス2病原体である;このようにして得られるSLOは、多くの他の抗原物質を含んでいる。さらに、この手順で得られるSLOは、液体の状態において不安定である傾向がある。したがって、そのようなSLO調剤(preparations)は、薬ビンに入れた乾燥凍結粉末としておおくは典型的に供給される。使用前に、凍結乾燥粉末は、適当な溶剤で元に戻すことが必要である。残念なことには、そのような元に戻されたSLOは、その溶血活性を迅速に失い、したがって、元に戻されてから短期間で使用されないなら廃棄されなくてはならない。このことは1つの顕著な否定的な結果を有する:個々の血清サンプルを入手すると直にテストすることは通常不可能である。よって、溶血活性に基づいてASOアッセイを行う実験質は、凍結乾燥したSLOの経済的な使用を可能とするように十分な数が集まるまで個々のサンプルを保存するのが典型的である。このことは、テスト結果を得るのに過度な後れをもたらし得る。
比濁プロトコールまたは混濁度プロトコールに依存するASOアッセイは、有意的な量の精製SLOを必要とする。S.ピヨゲネスから有意的な量の精製SLOを得ることに関連する費用は、多くかかるので、上記の溶血性に基づくアッセイは、商業的に得られる代1のASOアッセイであった。
SLO融合生成物を得るための組み換えDNA法は、そのような生成物を比較的多量に得る利点を与える。そのような方法を用いることにより、S.ピヨゲネスからSLOを得る長たらしくコスト的に効果的でない点を避けることができよう。ここに用いたように、用語『SLO誘導体』は、可溶性で溶血活性であり少なくとも1つの抗体により野生型SLOに結合され得るSLO融合生成物である。SLO誘導体は、ここでは、『rSLO』と呼ばれる。これらのSLO誘導体は、多量に供給され、実質的に純粋であり、溶血活性を保持する。
そのようなSLO誘導体は、たとえば、野生型のSLOの溶血特性に依存するたとえば免疫診断アッセイで有益であろう。
発明の要約
本発明は、SLO変形型を提供する。本明細書で『mSLO』と呼ぶこれらの変形型は、次に示すような特徴を有していて、そのような特徴により広く定義される:(i)野性型抗ストレプトリシンO抗体(ASO)により認められる、すなわち、野性型ストレプトリシンOの少なくとも1つのエピトープ特性を含む;(ii)実質的に非溶血活性である。本明細書で用いられているように、用語『認められる』は、mSLOの少なくとも1つのエピトープ部位で結合し得ることを意味し、言葉、『実質的に非溶血活性』とは、野生型SLO比活性4×105溶血単位/mg野生型SLOに基づき約75%よりも少ないパーセント野生型SLO比活性を意味する;『野生型SLO』は、このような言葉に関連する通常の定義と一致する、すなわち、能力のあるバクテリア給源により自然に分泌されるSLOである。定義から、『野生型SLO』は、たとえば、組み換えDNAの技術により得られるSLO融合生成物を含まない。
本発明の開示に従う特に有用なrSLOは、ここでは、1mg当たり約3.6x404溶血単位(『HU』)の比溶血活性を有するrSLO.3と呼ばれる。
【図面の簡単な説明】
図1は、rSLO.3と呼ばれるSLO誘導体の最も好ましい具体例の核酸配列の1本鎖である。
図2は、rSLO.3のアミノ酸配列である。
好ましい態様の詳細な説明
ここでの開示に用いられているように、ストレプトリシンO誘導体すなわち『rSLO』は、次に示すような特徴を有していてそれにより広く定義される:(i)野生型SLOに少なくとも1つの抗体により固定され得る;(ii)発現により可溶性である;(iii)溶血活性である。本明細書で用いられているように、言葉『野生型SLO』は、そのような言葉と関連する通常の定義に一致し、すなわち、そのようなたんぱく質を分泌し得るバクテリア給源により自然に分泌されるSLOである。好ましくは、rSLOの溶血活性は、4×105溶血単位/mgの野生型SLO比活性に基づいて野生型SLOの約75%の溶血活性を有する。より好ましくは、rSLOの溶血活性は、野生型SLO比活性の4×105溶血単位/野生型SLO1mgに基づいて野生型SLOの溶血活性の約5%〜50%の間であり、最も好ましくは約9%である。これらの値は、相対的なものである;したがって、パーセント野生型SLO比活性が、野生型SLO比活性の1×106溶血単位/mgに基づくなら、上記の値は、係数2.5だけ下がる(すなわち、75%は、30%になり、9%は、3.6%になるといった具合である)。
上記が、詳述されるのは、野生型SLOの『比活性』が、約1×106溶血単位/mgもあると記載されているからであるが、約4×105溶血単位/mgの比活性も記載されている。アロフ、J.E.(Alouf),J.E.)『ストレプトコッカルトキシン(Streptococcal Toxins)(ストレプトリシンO、ストレプトリシンS、エリスロゲニックトキシン(Erythrogenic Toxin)』Pharmac.Ther.II.661−717(1980)(参考のためにここに記載した)。したがって、野生型SLOの報告されている『比活性』は、説明しがたいので、前記のパーセントは、この事実に合う。
便宜上、ここで用いているように、用語『ベクター』は、少なくとも1つの制限部位と少なくとも1つのプロモーター遺伝子とを含む円形DNA巨大分子を意味する。用語『プラズミド』は、特に遺伝子を含む関心のもたれるゲノムの一部を更に含んでなるベクターを意味する。用語『ホスト』は、プラズミドにより移入(transfect)され得る細胞を意味する。
本分野で認められているように、ほとんどのベクターは、所望の結果に関連して選択される。たとえば、商業的な環境では、関心のもたれる遺伝子の高いレベルの形質発現は、そのような形質発現に伝導性(conductive)のある適当なプロモーターを有するベクターが選択されるようにすることが典型的には好ましいであろう;一方、研究環境では、ホストの調節要素の支配下にある翻訳信号と転写信号とを有するベクターが適当であるようにそのような高いレベルの形質発現が臨界的でなくてもよい。したがって、所望の結果に適当なベクターの選択では、関心のもたれるベクターのプロモーター遺伝子に同時に焦点を当てることがしばしば有用である。
非常に高いレベルのmRNA産生を達成するプロモーター遺伝子には、たとえば、pL、ptacおよびpT7がある。このリストは、余すところのないリストを意図したものでもそのように解釈されるべきものでもない。むしろこれらのプロモーターは、以下の説明のための代表例として用いられている。当業者は、リストにあげたプロモーターと関連する同等な結果を与え得る所望のプロモーターを有する適当なベクターを容易に選択できる。
たとえば、pT7は、E.コリRNAポリメラーゼの割合の数倍の割合でRNAを合成し、E.コリRNAポリメラーゼよりも転写を少ない頻度で終わらせるT7RNAポリメラーゼと共に用いられる。T7RNAポリメラーゼは、それ自体のプロモーター配列で開始に関しかなり選択的であり;したがって、これは、E.コリDNAへの配列からの転写を開始しない。さらに、T7RNAポリメラーゼは、E.コリRNAポリメラーゼを抑制するリファンピシンのような抗生物質に抵抗性である。したがって、たとえばT7RNAポリメラーゼを促進する細胞へのリファンピシンの添加は、T7RNAポリメラーゼプロモーター、すなわち、pT7の支配下の遺伝子の独占的な形質発現をもたらす。
T7RNAポリメラーゼ/pT7システムを用いる形質発現は、(典型的に)2プラズミドシステムに依存する:第1のプラズミドは形質発現される遺伝子およびpT7を含み、第2のプラズミドはT7RNAポリメラーゼについての遺伝子を含む。第2のプラズミド、たとえば、pGP1−2(これは、T7RNAポリメラーゼについての遺伝子を含む;タバー(Tabor)およびリチャードソン(Richardson)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:1074−078(1985)参照)は、E.コリに永久的に存在し得るかまたは、特殊化したファージたとえばM13ベクター(例として、mGP1−2、ターバーおよびリチャードソンを参照)またはT7RNAポリメラーゼ遺伝子を含むλベクター(例として、CE6、スタディアー(Studier)およびモフェット(Moffett)、J.Mol.Biol.189:113−130(1986)参照)によりE.コリに導入され得る。
典型的には、T7RNAポリメラーゼ遺伝子を含む第2のプラズミドは、熱を誘導し得るE.コリプロモーターの支配下にあり、すなわちたとえば30℃から42℃に温度を上げることにより、熱を誘導し得るE.コリプロモーターは、スイッチが入れられ、これは、次に第1のプラズミドのpT7プロモーターのスイッチを入れ、これにより、たとえば関心のもたれる遺伝子の形質発現がもたらされる。このように、T7RNAポリメラーゼ/pT7形質発現システムを用いることにより、E.コリシステムは、熱を誘導し得るプロモーターたとえばCI857リプレッサーを有するラムダPLを含む。
pT7を含むベクターの例は、たとえば、pT7シリーズ(pT7−5、pT7−6およびpT7−7、これらは、pT7−1の誘導体である;上記のタ−バ−およびリチャードソンを参照)およびpETシリーズ(スタディアー(Studier)ら、Methods Enzymol 185:60−89(1990)参照)である。
もう1つのベクターシステムは、pLプロモーター遺伝子を含む。pLプロモーターは、λバクテリオファージから誘導され、最も強力な調節されたE.コリプロモーターのひとつである。pLからの転写は、十分に抑圧され得、したがってpLを含んでなるプラズミドは、λリプレッサーIにより安定化され得る。このリプレッサーは、λゲノムの一部の一体化コピーを含んでなるE.コリホストにより典型的には供給される。そのようなE.コリホストは、『E.コリリゾゲン』と呼ばれ、次のような性質を有する:(i)これは、λ調節たんぱく質IおよびN(終結抑止機能)を供給する;そして(ii)これは、通常、細胞溶解(cell lysis)に通じる溶解成分を与えない。したがって、たとえば関心のもたれるゲノムおよびpLを含んでなるプラズミドにより移入されたE.コリリソゲンは、遺伝子の形質発現なしで高い密度に初期的に成長され得、リプレッサーの不活性化の下でたんぱく質を合成するように後に誘導される。PL系ベクターの例は、たとえば、米国特許第4,925,799号(『pASI』)、シャツズマン(Shatzman)およびロゼンバーグ(Rosenberg)による"The pAS Vector System and Its Application to Heterologus Gene Expression in Eschericia Coli."Heptalogy :305−355(1987)およびロゼンバーグらによる"The Use of pKC30 and its Derivatives for Controlled Expression of Genes."Methods Enzymol 101:123−139(1983)に記載されている。
ptacプロモーターは、tacおよびlacプロモーターに基づくハイブリッドプロモーターである。デボアー(de Boer)らの"The tac promoter:A functional hybrid derived from the trp and lac promoters."P roc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21−25(1983);およびアマン(Amann)らの"Vectors bearing a hybrid tr plac promotor useful for regulated expression of cloned genes in Eschericia coli.Gene 25:167−178を参照。ptacは、lacオペレーター領域を含むので、これは、lacリプレッサーを著量蓄積するE.コリ株により抑制され得、イソプロピルβ−D−チオガラロクトシド(IPTG)の添加により完全に誘導される。
上記の引例は、参考のためにここに記載した。
適当なベクター/ホストシステムの選択は、精通した者の特定の要求の範囲に入る。最も好ましいベクターは、pLプロモーターに基づいている。表Iは、適当なベクターとホストおよびその給源の代表的な(限定する者ではない)リストを示す。
Figure 0003595840
以下の例について、ベクターpΔ33およびpBTac2DNAが、rSLO.3の形質発現とサブクローン化(初期的にはpUC19から)とについて、ホスト株AR120およびJM105と共にそれぞれ用いられた。

好ましい実施態様を示す以下の例は、請求の範囲の開示を限定することを意図するものでもなくまた限定するように解釈されるべきものでもない。
例1
部分消化されたゲノムストレプトリシンO DNAの準備
引例として示すケホエM(Kehoe,M)らによりInfect. Immun.55:3228−3232(1987)(以下『ケホエ1987』)により示された方法を用いてストレプトコッカスピヨゲネス(ATCC#10389)からゲノムDNAを単離した。約1mgのS.ピヨゲネスDNAが、この手順を用いて得られた(925μg)。
S.ピヨゲネス(S.pyogenes)DNA(2.5μg/μl)370μlへ、300μlの10Xの高塩緩衝液(10X High Salt Buffer)(1.0MのNaCl;100mMのトリスヒドロキシアミノメタンクロリド(『TRIS−Cl』)、pH7.5;100mMのMgCl2;および10mMのジスリオスレオトール(『DTT』))、2310μlの脱イオンH2Oおよび20μlのBgl II(BRL、ガイザースバーグ(Gaithersburg)、MD、Cat.#5213SA)を加え、最終容量を3000μlとした。この混合物を37℃に保ち、夜通し温置した。
この温置した混合物に、3000μlの試薬A(250μlのフェノール、250μlのクロロホルム、10μlのイソアミルアルコール、1μlのβ−メルカプトエタノール)を加えた。水性層と有機層とを分けるためにこの混合物を、遠心分離に先立って、攪拌した。水性の上澄み液を、0.3MのNaOAcと95%のエタノールとを用いて沈殿させた。この沈殿を、次に、250μlのTE(10mMのTRIS−Cl、pH7.5;1mMのEDTA)に再び溶解させ、25μlの10Xのローディングダイ(0.2MのEDTA;50%のグリセロール;0.25%のキシレンシアノール;0.25%のブロモフェノールブルー)をこれに加え、1%アガロースゲルで電気泳動を行った。次に、Bgl II部分消化S.ピヨゲネスゲノムDNAフラグメントを大きさに従って評価した。
認められるように、SLOは、およその分子量65000〜70000ダルトンを有している。各アミノ酸は、およその分子量110ダルトンを有するので、(内輪の見積もりで)70000ダルトンたんぱく質は、およそ636のコドンまたは1909塩基対によりコード化される。したがって、上記のゲル電気泳動法により測定される約2000ないし2500の塩基対(すなわち、2.0〜2.5Kb)の塩基対の部分消化フラグメントが精製された。精製されたフラグメントは、次に、150μlのTEに再び懸濁させた。便宜上、これらは、ここでは、『SLOインサート(insert)』と呼ぶ。
例2
プラズミドを含むストレプトリシンOの準備
使用したベクターは、Bam H I(BRL、Cat.#5201SA)により切断したpUC19(BRL、Cat.#5364SA)であった。
1μlの切断したpUC19ベクターに、15μlのSLOインサート、3μlの10Xのリガチオン緩衝液(660mMのTRIS−Cl、pH7.5;50mMの塩化マグネシウム;10mMのDTT;10mMのATP)を加えた。8μlの脱イオンH2Oを加えることにより最終容量を30μlとした。この混合物に、2μlのT4リガーゼ(USB、5μg/μl)を加えた;夜通し室温でさらに温置した。便宜上、得られたものを『SLOプラズミド候補』と呼ぶ。
例3
SLOプラズミド候補のスクリーニング
ホスト細胞E.コリ株JM105を、次のようにSLOプラズミドにより形質転換させた。300μlの凍結JM105受容細胞を含むバイアルを解かし、16.0μlのSLOプラズミド候補をそれに加えた。この混合物を30分間氷上で培養し、37℃の水浴で2分間熱ショックを与えた。その後、移入されたJM105溶液を2mlのLB培地(10gのバクト−トリプターゼ(Bacto−triptase);5gのバクトイースト抽出物;10gのNaCl;1リッターの脱イオン水;水酸化ナトリウムによりpH7.5)に加えてから37℃で30分間攪拌(200RPM)した。その後、LBアンピリシンプレートに塗布を行い、37℃で夜通し温置した;便宜上これらは、『SLO形質転換体』と呼ぶ。
スクリーニングは、独特な手順を用いて行った。夜通し増殖させた後、PBS/10mM DTT中に0.8%アガロースに含むようにした2.5%の洗浄済うさぎ赤血球でコロニーを覆い、これをプレートを覆うように広げた。37℃で40分の培養の後、SLOを含むコロニーは、溶血の小さなゾーンにより囲まれた。これらのコロニーがSLOを含んでなることを確認するために、SLOの報告されたDNA(ケホエ(Kehoe)、1987参照)を含めたヌクレオチド670−694から誘導された25−merオリゴヌクレオチドプローブを、プローブとして用いた。このプローブを、バイオサーチ(BioSearch)8600DNAシンセシザーにより準備し、マニアチス(Maniatis)らのMolecular Cloning,CSPL(1982)、122−126ページ(以下『Molecular Cloning』)に記載のT4ポリヌクレオチドキナーゼ手順により32Pでラベルした。
血液オーバーレイスクリーニング法は、SLO形質転換体により形質発現されたSLOを迅速にスクリーニングする有効で正確な方法であることがわかった。SLOの性質は、赤血球を溶解するその能力であるので、いずれの給源からの赤血球も用いられ、すなわち人、マウス、山羊、うさぎなどからの赤血球が用いられ得る。うさぎの赤血球が、その入手のしやすさから好ましい。
溶血活性を証明し、25−merプローブとハイブリッド形成しているたんぱく質の発現をもたらしたSLOクローンを、『pUC19−SLO−B』と呼ぶようにした。便宜上、そのノンベクターDNA配列をここでは『rSLO−候補』と呼ぶ。
例4
発現の最適化と溶解度の測定
rSLO候補の発現を最適化するため、Bal−31を用いてrSLO−候補の時限消化(timed−digestion)を行った。さらに、上記したように、始めからの、すなわち、一度発現されたさらに化学的な修飾のない、発現したたんぱく質の溶解度は、重要である。これは、非溶解性SLOは定義により活性でないからである。したがって、発現したたんぱく質が可溶であったかどうが、すなわち、遠心分離の後に、ペレットとは反対に上澄み液にあったかどうかを測定する分析を行った。
pUC19−SLO−Bを次のようにしてBstE II(New England Bio Labs,Cat.#162,10U/μl)によりまず切断した。40μlの40Xの高塩緩衝液、335μlの脱イオンH2Oおよび5μlのBstE IIを、20μlのpUC19−SLO−B(2.5μg/μl)に加えた。この混合物を、2時間60℃で温置し、次に、試薬A400μlで抽出してから、98%エタノール888μlに含むようにした3MのNaOAc(pH4.8)44μlで沈殿させた。次に、沈殿剤は、40μlのH2Oに再溶解させた。その後、90μlのH2O、20μlの10XのBal−31緩衝液(120mMのCaCl2;120mMのMgCl2、2.0MのNaCl;0.2MのTRIS−Cl、pH8.0;10mMのEDTA)および50μlの1mg/mlのウシ血清アルブミンを、再溶解した沈殿剤と混合した。さらに10μlのBal−31(New England Bio Labs,Cat.#213,100U/ml)を加えて全量を210μlとし、室温で培養した。Bal−31の効果を調節するために、210μlの全量のうちの30μlアリコートを、Bal−31添加後、の30分、45分、60分、80分、105分、130分および160分で取り除き、これらのアリコートのそれぞれを0.2MのEGTAの3.3μlと混合し、氷上で保存した。最後のアリコートの準備と保存の後、すべて7つのアリコートをプールし、試薬A230μlにより抽出してから、95%エタノール506μlに含むようにした3MのNaOAc23μlにより沈殿させた。次に沈殿は、75μlのH2Oに再び溶解させた。
フィルイン反応(fill−in reaction)を、5μlの2.5mMのdXTP、10μlの10Xの中塩緩衝液(500mMのNaCl;100mMのTRIS−Cl、pH7.5;100mMのMgCl2;10mMのDTT)および100mMのDTTの10μlを再溶解沈殿剤の75μlへの添加により行い、これにクレノウポリメラーゼ(Klenow polymerase)(5U/μl)6μlを添加し、次に4時間室温で温置した。この混合物を試薬A100μlで抽出し、100%エタノール22μlに含むようにした3MのNaOAc11μlで沈殿させ、次に、40μlのH2O中に沈殿を懸濁させた。
フィルイン反応に続き、5μlの5Xのリンカー連結反応緩衝液(linker ligation buffer)(250mMのTRIS−Cl、pH7.6;50mMのMgCl2;5mMのDTT;5mMのATP;2.5%(w/v)PEG8000(J.T.Baker,Cat.#U222−09))と17μlの再懸濁沈殿を混合した。これに、T4リガーゼ(5U/μl)2μlを加え、室温で6時間温置した。便宜上、得られた物質を『ca/ew』と呼ぶ。
E.コリ株JM105を、上記のca/ewで形質転換し、次に、例1で上記したように夜通し増殖させた。プラズミドがBam H Iリンカーを含んでなるかどうかを測定するため、40μlの10Xの中塩緩衝液および320μl脱イオンH2Oを40μlのca/ew(0.5μg/μl)に加えた。この混合物へ、5μlのEcoR I(BRL,Cat#5202 SA,10U/μl)を加えてから、37℃で2時間温置した。プラズミドが切断されることを確実にするために、ゲル電気泳動(1%アガロースゲル)を行った;これにより、さまざまな大きさのスミア(smear)ができ、切断がうまくいったことを示した。切断したプラズミドに、5MのNaClの8μlを加えてから、さらに、5μlのBam H I(10U/μl)を加えた。この混合物を37℃で2時間温置した。Bal−31消化を行ったrSLO−候補配列の大きさの測定は、ゲル電気泳動(1%アガロースゲル)により行った。これは、rSLO−候補を含む約1.2ないし約2.0Kbで関心のもたれるバンドをもたらした。このように溶血活性を証明した2.0−2.5Kbの初期断片が、大きさを有意的に減じた。
rSLO−候補を含んでなるバンドをゲルから切断し、Bam H IおよびECoR Iにより先に切断したpUC19ベクター中の連結にrSLO−候補が利用できるようにTE15μlで精製した。そのような連結を達成するように、ゲルで精製したrSLO−候補10μlを、先に準備したベクター4μl、10Xの連結緩衝液2μl、10mMのATP2μlおよび脱イオンH2O2μlと混合した。この混合物へ、T4リガーゼ2μlを加えてから、6時間室温で培養した。E.コリホスト細胞株JM105を、上記のようにこれらのプラズミドにより形質転換し、活性なコロニーを、上記の赤血球オーバーレイ法によりスクリーニングした。次に活性なコロニーを選択し、LB培地/100μg/mlアンピシリンに接種し、上記の条件で夜通し増殖させた。
夜通し増殖させた後、細胞は、4℃で8000RPMで5分間遠心分離させ、得られたペレットを2mlの試薬B(150mMのNaCl;20mMのTRIS、pH7.0;1mMのEDTA)に懸濁させた。その後、懸濁細胞を、氷上で2X30秒間音波処理にかけた後、ベックマンJA20.1遠心機を用いて4℃で40分間9500RPMで遠心分離して発現したたんぱく質を得た。
この段階で、rSLO−候補が可溶性のたんぱく質の発現をもたらせば、そのたんぱく質は、上澄み液にあることになる。したがって、抗体活性たんぱく質の測定のための標準ウエスタンブロットプロトコールを用いて上澄み液中のrSLO−候補の存在の分析を行った。そのようなウエスタンブロット分析の結果は、馬抗SLO候補(horse anti−SLO antibodies)により認められる上澄み液中のSLO融合生成物があったことを示した。1つのそのような融合生成物を選択し、『rSLO.3』と名づけた。便宜上、rSLO.3の発現をもたらすDNA配列もrSLO.3と呼ぶ。rLSO.3の高いレベルの発現をその後試みた。
例5
rSLO.3の高いレベルの発現
pUC19ベクターを含んでなるプラズミドからのrSLO.3の除去は、次のようにして行った。40μlの10XのSma I緩衝液(200mMのKCl;100mMのTRIS−Cl、pH8.0;100mMのMgCl2;10mMのDTT)および345μlの脱イオンH2Oを、rSLO.3(0.5μg/μl)を含んでなるプラズミド15μlに加えた。この混合物に、5μlのSma I(BRL,Cat#5228 SA,10U/μl)を加え、次に、2時間37℃で培養した。プラズミドが切断されることを確実にするように、ゲル電気泳動(1%アガロースゲル)を行った;これは単一バンドをもたらし、切断がうまくいったことを示した。この切断プラズミドに、8μlの5MのNaClを加え、さらに、5μlのBam H I(10U/μl)を加えた。この混合物を、2時間37℃で培養した。rSLO.3配列が約2.7Kb pUC 19ベクターから好首尾に切断されることを確実にするため、ゲル電気泳動(1%アガロースゲル)を行った。これは、2つのバンドをもたらし、1つは約2.7Kb(ベクター)で、もう1つは、約1.4Kb(rSLO.3)であった。このバンドは、rSLO.3がBam H IおよびSma Iにより先に切断したpΔ33ベクターの連結に利用できるようにゲルから切断し、15μlの脱イオンH2Oで精製した。
上記の誘導したrSLO.3DNA2μlに、上記のベクター2μl、10Xの連結緩衝液1.5μl、10mMのATP1.5μlおよび脱イオンH2Oを加えた。この混合物に、T4リガーゼ(10U/μl)2μlを加え、次に5時間室温で培養した。この培養は、rSLO.3およびpΔ33ベクターを含んでなるプラズミドをもたらした。
E.コリ株AR120を、E.コリ株JM105について概説してある手順に従い上記のプラズミドにより形質転換した。その後、Current Protocols in Molecular Biology,Auschel,F.M.et al.,Eds,John Wiley & Sons(New York)(1987),Section 1.6.に記載されたDNAミニ準備(mini prep)を行い、次に、プラズミドがrSLO.3を含んでなるかどうか測定するためBam H IとSal I(BRL,Cal.#5217 SA)によりプラズミドを切断した。rSLO.3を含んでなるプラズミドにより形質転換されたこれらのホスト細胞を、ナリジキシン酸プロトコールを介して誘導にかけた。参考としてあげる、モットJ.E.(Mott,J.E.)らの『λpLプロモーターを含むプラズミドベクターからの遺伝子発現の最大限化:転写終了因子pを著量蓄積する方法(Maximizing gene expression from plasmid vectors containing the λpL promoter:Strategies for overproducing transcription termination factor p)』PNAS USA82:88−92(1985)を参照。本分野のものに理解されるように、DNAを損傷するナリジキシン酸は、E.コリに対するリカバリーたんぱく質であるrecAたんぱく質を誘導する。誘導された利益対オーバー発現(derivative benefit vis−a−vis overexpression)は、recAが、プロテアーゼ活性を有することであり、これは、特に、λcI+リプレッサーの不活性化をもたらし、この不活性化は、pLプロモーターによるオーバー発現につながる。
特に、形質転換されたAR120を含んでなるコロニーは、寒天平板から引き上げられ、A650での培地の光学密度が、0.4になるまで、スーパーボス(Superboth)(塩基−12gのトリプトン、24gのイースト抽出物、5mlのグリセロール、900mlの蒸留H2O;塩(塩基1リッター当たり)−1.7gのKH2PO4、15.8gのK2HPO4(無水物)、100mlの蒸留H2O)および100μg/mlのアンピシリン中に37℃で接種した。その後、ナリジキシン酸を、最終濃度60μg/mlで接種した混合物へ加え、4時間37℃で培養した。上澄み液のウエスタンブロット分析は、rSLO.3の存在を証明した。
rSLO.3のアミノ酸配列およびDNAを次に測定した(Lark Sequencing Technologies,Houston TX)。rSLO.3の測定されたDNA配列の一本鎖の表示を、図1に示し、rSLO.3の測定されたアミノ酸配列を図2に示した。
例6
rSLO.3の比活性
未精製のSLO.3の比活性とたんぱく質濃度を、ナリジキシン酸誘導の直後に測定した。
rSLO.3粗抽出物についてのたんぱく質濃度を、ビオラッドたんぱく質アッセイ法(Biorad Protein Assay method)(クーマシーブルーG−250)(Coomassie Blue G−250)を用いて推定した。ナリジキシン酸誘導たんぱく質混合物を4℃で5分間8000PRMで遠心分離し、ペレットを、500μlの音波処理緩衝液(sonification buffer)(400mMのTRIS、pH7.5;1mMのEDTA;1mMのDTT;200mMのNaCl)に懸濁させた。再懸濁させたペレットを、次に、氷上で、2X30秒間音波処理してから、4℃で40分間12000PRMで遠心分離した。その後、5μlの再懸濁させたrSLO.3混合物を、たんぱく質濃度について分析した(A595でのODの読み)ら、たんぱく質濃度は、4.6μg/μlであることが測定された。
比活性は、上記の粗抽出物の一連の希釈と、洗浄済うさぎ赤血球(『RRBC』)のそれへの添加、さらに分光光度の読み(A541でのODの読み)により測定した。5mlの新鮮なうさぎの血液を、10mMのDTTを含むPBS45mlで2回洗浄し、次に、4℃で5分間2000RPMで遠心分離した。その後、1.125mlの洗浄済うさぎの赤血球(『RRBC』)を管の底から引き出し、これに、48.875のPBS/10mMのDTTを加えた。これにより、2.25%RRBCを含む溶液が得られた。溶血アッセイのため、PBS/10mMのDTTに含むようにした500μlの1:2の連続的に希釈したrSLO.3に、2.25%RRBCの500μlを加え、30分間37℃で培養した。
これらの連続的な希釈は、分光光度法により分析した(A541でのODの読み)。この分析は、希釈されたrSLO.3粗抽出物の2mlがRRBCの50%溶血を起こしたことを示した;2μlの希釈抽出物は、抽出物自体の0.2μlに匹敵する。したがって、rSL0.3粗抽出物は、0.2マイクロリッター当たり1溶血単位(『HU』)すなわち5000HU/mlを証明した。
認められるように、粗抽出物のたんぱく質濃度は、4.6mg/mlであると測定された。したがって、pΔ33−AR120発現システムから誘導されたrSLO.3の比活性は、1087HU/mgであった。これらは、粗(すなわち精製されてない)抽出物に対する値であるので、これらの値は、抽出物の全たんぱく質濃度に基づいて予測される。精製された抽出物については、比活性値は増加する。
例7
rSLO.3の回収
以下の手順は、約200gの形質転換済ホスト細胞(すなわち、6gの全たんぱく質)に対するのもである。
形質転換済ホスト細胞は、200mlsの試薬C(40mMのTRIS、pH7.5;1mMのEDTA;0.1%2−メルカプトエタノール)に再懸濁させてから、100mMのPMSFを添加した。その後、細胞は、音波処理により崩壊させ、次に、100mMのPMSF4mlを加えた。この混合物を30分間4℃で15000RPMで遠心分離させた。
得られる上澄み液を除去し、とっておいた;試薬C200mlをペレットに加え、さらに100mMのPMSF4mlを加えた。再懸濁されたペレットを次に音波処理してから、上記のように遠心分離した。得られた上澄み液を除き、さきの上澄み液と一緒にし、そのpHをNaOHにより7.0に調節した。
最終的な量の上澄み液に、ポリミンP(Polymin P)(Aldrich Chemicals)にゆっくりと加えて(室温で攪拌を行いながら)最終的な濃度を0.75%にした。この混合物を、次に、30分間室温で10000RPMで遠心分離してから、上澄み液の回収をした。上澄み液の80%飽和まで、固体硫酸ナトリウムを攪拌しながらゆっくりと加えた。
その後、この混合物を、4℃で2時間攪拌してから、15000RPMで4℃で30分間遠心分離にかけた。次にペレットを回収し、400mlの飽和硫酸アンモニウム中に再び懸濁させた(pH7.0)。この混合物を、10000RPMで4℃で30分間遠心分離してから、ペレットを回収し、試薬D(20mMのTRIS、pH7;1mMのEDTA;0.1%の2−メルカプトエタノール)200ml中に再び懸濁させた。
再懸濁させたペレットを次に4℃で4回の交換をして試薬Dの2リッターにたいして透析した。サンプルの容積が増加する透析バッグに十分な余地を残した。透析に続き、サンプルのpHを調べ、NaOHにより7.0に調節した。
次にサンプルは、試薬D中で平衡とさせたファーマシアファーストフローS−セファローズカラム(Pharmacia Fast Flow S−Sepharose column)に充填した。400mlベットボリュームが、サンプルからmSLO.3/6を除去するのに十分であるとわかった。E.コリたんぱく質を含んでなる流れを集めて捨て、カラムは、約1リッターの試薬Dにより洗浄した。
rSLO.3を、緩衝液B中の2X1リッター0.0−0.4M NaCl勾配で溶離した。断片は、SDSアクリルアミドゲル(9%)により分析し、多い量のrSLO.3を有する断片を一緒にした。約250mlの一緒にしたrSLO.3が回収された。
上記の手順を用い、初期の全たんぱく質の約60%(約0.36g)が、rSLO.3であり、必要になるまで4℃で保存した。
例8
rSLO.3の精製
rSLO.3の精製は、次のプロトコールを用いて少なくとも80%の純度とした。
例9に記載したプロトコールに従い誘導した凍結細胞ペースト約600gを解凍(37℃)し、3リッターの冷溶解緩衝液(40mMのTRIS−Cl、pH7.0;1mmのEDTA;0.1%の2−メルカプトエタノール;2MのNaCl;4℃)に再懸濁させてから、ヒートシステム超音波連続流ソニフィケーター(Heat Systems Ultrasonics Continuous Flow sonificator)(Farmingdale,N.Y.,No.W−385)により4−10℃で60分間音波処理した。その後、この物質をベックマンJA10遠心機により9500RPMで40分間20−26℃で遠心分離した。約3リッターの上澄み液が回収された。
上澄み液へ、12.5%で、ポリミンP沈殿剤(Aldrich,Milwaukee,Wis.)の原液を加え、最終濃度を0.2−0.3%の間にした。次にこの溶液を1時間室温で攪拌してから沈殿を捨てた。液体部分のpHを、NaOHにより7.0に調節した。この液体を、室温で夜通し静置した。
その後、溶液を上記のようにして遠心分離にかけ、透明な上澄み液を回収した。この上澄み液を、室温で2ml/分で1リッターのフェニル−セファローゼHICカラム(Pharmacia,Piscataway,N.J.)に充填した。その後、カラムは、溶離緩衝液(20mMのTRIS−Cl、pH7.0;1mMのEDTA;0.1%のBME)により7ml/分で洗浄した。各留分は、Pharmacia Phast−PageTMシステムを用いてSDS−PAGE電気泳動によりモニターした。たんぱく質濃度は、バイオラッドたんぱく質アッセイキット(BioRad Protein Assay Kit)により測定した。たんぱく質を含む留分を一緒にした。
一緒にした留分を、1リッターのブルーアフィニティーカラム(Blue Affinity Column)(BioRad,Richmond,California)に室温で2ml/mmで充填し、次に、2つのカラム容量に対し、室温で2ml/分で上記の溶離緩衝液を用いて洗浄した。
結合したたんぱく質の溶離は、0.0−0.8MのNaCl密度勾配(pH7.0)を用いて達成した。留分は、Phast−PAGEシステムを用いてモニターし、たんぱく質濃度は、ビオラッドたんぱく質アッセイキットにより測定した。単一のピークが、NaCl密度勾配で0.3−0.4Mで得られた。
溶離したrSLO.3の純度は、6つの異なる量の溶離したrSLO.3(16、8、4、2、1、0.5μgのrSLO.3)のゲル電気泳動(12%のSDS−ポリアクリルアミド)から得た主バンド均質性(major band homogeneity)の分析に基づいてベックマンDU7500分光光度計を用いて評価した。主バンド均質性に基づくrSLO.3の測定した純度は、表2に示す。
Figure 0003595840
溶血活性の測定については、精製rSLO.3の濃度を測定した。精製rSLO.3の0.7mg/mlの濃度の1:25,600タイターが、2.5%RRBCの50%溶解より多くを得るのに必要とされた。したがって、精製rSLO.3の比溶血活性は、約3.6×104HU/mg(25,600+0.7)であった。
認められるように、野性型SLOの『比活性』に基づくrSLO(精製rSLO.3)の特定変種のパーセント溶血活性と比活性は次のようである。
Figure 0003595840
例9
rSLO.3の生体内毒性作用
rSLO.3の生体内毒性作用を評価するため、Balb/cマウスにrSLO.3の未希釈静脈注射と希釈静脈注射を行った。未希釈対照懸濁緩衝液と希釈対照懸濁緩衝液を、同数のマウスに投与した。静脈注射を増進させるため、マウスは、注射に先立ち20−30分間ヒートランプ下で加温した。それぞれの条件に対し約20匹のマウスを用いた。
未希釈のrSLO.3について、それぞれのマウスは、ほぼ17mg/kgの投与量とし、希釈rSLO.3については、それぞれのマウスは、ほぼ1000μg/kgの投与量を与えた。対照溶液緩衝液は、対照マウスに作用しなかった。
注射後、数分いくらか興奮状態となることを別として、希釈rSLO.3または未希釈rSLO.3を投与したマウスのいずれも静脈投与による悪い影響を示さなかった。rSLO.3が、溶血活性であり、上記のようなrSLO.3の注射を受けたマウスは、死ななかった。
例9
rSLO.3のサブクローンニング
rSLO.3を得て、確認して、配列決定してから、もう1つの発現/ベクターシステムを用いて、そのサブクローニングと発現を開始させた。ベクターpBTac 2 DNA(Boehringer Mannheim,Cat.No.1081381,10μg)は、30μlのpBTac2 DNA(1μg/μl)、30μlの10Xの中塩緩衝液(Medium Salt Buffer)および240μlの脱イオンH2Oを混合することによりHind III(BRL,Cat.No.52075A,10U/ml)により切断してから、5μlのHind III(BRL,Cat.#5208 SA,10U/μl)を加えた。この混合物を37℃で2時間培養した。その後、この混合物を、ベクターがうまく切断されたかどうか測定するため、アガロース電気泳動(1%アガロースゲル)により分析した;単一バンドが、切断のうまくいったことを示した。
305μlの混合物に対して300μlの試薬Aを加えた。この混合物を次に、ベックマンマイクロ遠心機により12000RPMで5分間遠心分離してから、上層の液体層を回収した。この液体層に、33μlの3MのNaOAc(pH4.8)と660μlのエタノールを加えてから、−20℃で夜通し沈殿させた。次に、ベックマンマイクロ遠心機により12000RPMで10分間遠心分離させた。ペレットを回収してから空気により乾燥させた。乾燥したペレットを次に150μlの脱イオンH2Oに懸濁させた。
Hind III切断ベクターの1つの末端を平滑にする(blunt)(フィルイン)(fill−in)、懸濁させたペレットを含んでなる150μl溶液を、10μlの20XのdNTP(2.5mM)、20μlの10XのMSBおよび20μlの100mMのDTTと混合した。次に、4μlのクレナウポリメラーゼ(Klenow polymerase)(New England Biolab,Cat.No.210,5U/ml)を加えてから、7時間室温で温置した。その後、300μlの試薬Aを温置した混合物に加えてから、12000RPMで5分間遠心分離した。上層の液層を回収して上記のように沈殿させた。乾燥させたペレットを、30μlの脱イオンH2Oに懸濁させた。便宜上、フィルインしたHind III切断ベクターを『vec.rb』と呼ぶ。
その後、vec.rbをBam H I(BRL,Cat No.5201 SA,10U/μl)により切断した。30μlのvec.rbに、30μlの10Xの高温緩衝液および240μlの脱イオンH2Oを加えた。この混合物に、5μlのBam H Iを加え、37℃で2時間培養した。培養した混合物に、試薬A300μlを加えてから、上記のように遠心分離した。上層の液体層を回収して上記のように沈殿させた。次に乾燥させたペレットを20μlの脱H2Oに懸濁させた。この懸濁させたペレットは、Hind III切断、フィルインした、Bam H I切断したpBTac2 DNAを含んでなっていた。
rSLO.3を、上記のように記載したプラズミドから除去した。rSLO.3(1μg/1μl)を含んでなるプラズミド40μlへ、10XのSma I Bafferおよび320μlの脱イオンH2Oを加えた。この混合物に、5μlのSma I(10U/μl)を加えてから、2時間37℃で温置した。プラズミドが切断されることを確実にするため、ゲル電気泳動(1%アガロースゲル)を行ったところ、単一バンドが得られ、好首尾の切断を示した。切断されたプラズミドに、8μlの5MのNaClを加え、5μlのBam H I(10U/μl)をさらに加えた。この混合物を、2時間37℃で温置した。約6.3Kb pΔ33ベクターからrSLO.3配列がうまく切断されるのを確実にするように、ゲル電気泳動(1%アガロースゲル)を行った。これは2つのバンドをもたらし、1つは約6.3Kb(ベクター)であり、もう1つは約1.4kB(rSLO.3)である。1.4Kbバンドを、ゲルから切断され、20μlの脱イオンH2Oで精製して、rSLO.3が準備したpBTac2ベクターの連結で利用できるようにした。
3μlのベクターへ、2μlのrSLO.3、1.5μlの10Xの連結緩衝液(Ligation Buffer)(0.66MのTRIS−Cl(pH7.5)、50mMのMgCl2、50mMのDTT、10mMのATP)、1.5μlの10mMのATPおよび7μlの脱イオンH2Oを加えた。その後、1.5μlのT4リガーゼをそれに加えてから、室温で夜通し温置した。便宜上、この混合物を『サブクローン』と呼ぶ。
E.コリ株JM105を、次のようにしてサブクローンにより移入した。凍結JM105受容細胞300μlを含むバイアルを解凍し、8.0μlのサブクローンをそれに加えた。この混合物を氷上で30℃で培養してから、2分間37℃の水浴でヒートショックを行った。その後、形質転換したJM105溶液を2mlのLB培地(10gのバクト−トリプタン(Bacto−triptane);5gのバクトイースト抽出物(Bacto yeast extract);10gのNaCl;11の脱イオン水;水酸化ナトリウムによりpH7.5に加えてから、37℃で30分間振盪(200RPM)した。その後、LBアンピシリンプレート(LB Ampicillin)上での平板培養(plating)を行い、次に、37℃で夜通し増殖させた。スクリーニングは、上記の血液オーバーレイ法を用いて行い、溶血を明示するコロニーを選択した。
rSLO.3サブクローンを含む選択したスクリーン済のコロニーを12mlのスーパーブロスアンピシリンブイヨンに接種した。培養液が、OD600の読み0.7の時、培養液へ最終濃度1mMで、イソプロピルーβ−D−チオガラクトピラノシド(isoprpyl−β−D−thiogalactopyranoside)(『IPTG』)を加えることにより誘導を行った。得られる溶液12mlを10分間4℃で8000RPMで遠心分離し、得られるペレットを、1.2mlのPBS/10mMのDTTに懸濁させた。懸濁させたペレットは、1.5分間音波処理し、音波処理の抽出物のたんぱく質濃度を、上記のバイオラッドたんぱく質アッセイプロトコールを用いて測定した。たんぱく質濃度は、9.3mg/mlであると測定された。このデータを用い、上記の2.5%洗浄済うさぎ赤血球プロトコールの50%ライゼに基づくタイターにより音波処理した抽出物の比溶血活性を測定した。rSLO.3を含んでなる培養物のタイターに基づく溶血活性は、2.69×103HU/mgであると測定された。
上記の例は、SLOゲノムライブラリーの世代に向けられている。本分野のものが認識するように、ゲノムDNAライブラリーよりも複雑でないもう1つの種類のライブラリーは、『相補的DNA』すなわち『cDNA』ライブラリーである。cDNAは、mDNAから直接に誘導され、したがって、定義より、cDNAライブラリーは、翻訳の領域からなる。mSLO DNAに相補的なmRNAに基づくcDNAライブラリーを誘導する方法は、mSLOについてのcDNA系ライブラリーが本開示の一部であることが、熟達者の範囲と考えられる。
たんぱく質の折りたたみ
ヌクレオチドの直線状の配置は、特定のコドンを定めるので、アミノ酸の配置すなわち配列は、その特定の機能を含めてたんぱく質を定める。しかしながら、特定のアミノ酸配列が、たんぱく質の同定に関して重要であるのに対し、たんぱく質が示す特別な三次元の形も同様に重要である。本質的に、形の上での特異性は、たんぱく質の性質を共同定義(co−dfine)する:なぜなら、たんぱく質の形は、たんぱく質にその特定のたんぱく質の形を認識し得るだけの他の分子と特異的に相互作用させるからである。
たいていのたんぱく質は、その正しい形に自然と折れる。たんぱく質をある種の変性溶剤により処理することにより、たんぱく質は、柔軟な鎖へと『広がる』ことができる。変性剤を除くと、柔軟な鎖の一部は、その初めの構造へと再び折れる。これは、たんぱく質の折りたたみを支配する最も重要な因子のひとつが、そのたんぱく質のアミノ酸の極性(親水性すなわち『水を嫌う』)および非極性(疎水性すなわち『水を好む』)の側鎖の分布であるからである。変性溶剤は、アミノ酸側鎖の極性を妨害する。次のアミノ酸が極性側鎖を有する:Asn;Gln;Ser;Thr;およびTyr。次のアミノ酸が非極性の側鎖を有する:Gly;Ala;Val;Leu;Iso;Pro;Phe;Met;Trp;およびCys。塩基性側鎖および酸性側鎖を有するアミノ酸は、非常に極性である。次のアミノ酸は、塩基性側鎖を有する:Lys;Arg;およびHis。次のアミノ酸は、酸性側鎖を有する:AspおよびGlu。
たんぱく質が天然に存在する環境は、定義により、非変性環境であり、それは典型的には、水性である。したがって、たんぱく質の疎水性側鎖は、たんぱく質分子の内部で一緒に押し込められる傾向があり、このことは、疎水性の側鎖が水性の環境と接触するのを避けるのを可能とする。他方、極性の側鎖は、たんぱく質分子の外側近くで極性の側鎖自体配置する傾向があり、その位置で極性の側鎖は水および他の極性の分子と相互作用し得る。
直線状DNA配列が転写され対応するポリペプチドの正確なアミノ酸配列に翻訳される分子的な機構はよくわかっているが、ポリペピチド鎖がどのように同時にかつ自主的にその三次元構造に折りたたまれるかは、よくはわかっていない。しかしながら、合成DNAすなわち組換え技術により合成されたDNAの実際の可能性は、たんぱく質設計の領域で実現されるであろう。しかしながら、これを実現させるためには、たんぱく質の折りたたみの機構がより簡潔に明らかとされねばならない。配列からたんぱく質構造を予測する一般的な問題は、とらえがたく(構造を配列に関連づけさせる規則が出現していないことが主な理由である)、配列のある部分が、構造に重要であり、他の部分が、これらの部分に置換または修飾が可能であることから構造の点で比較的に重要でないことが明白である。したがって、たんぱく質の配列の一部が、折り込まれたたんぱく質の構造の安定に有意的に寄与しているものと思われる。
たんぱく質配列からたんぱく質構造を予測することは、とらえにくいが、定義から、たんぱく質は、測定することのできる独特な三次元構造を有している。たとえば、次の方法論が、たんぱく質構造の測定に用いることができる:結晶学、光学活性、核磁気共鳴分光学。
a)結晶学
たんぱく質は結晶を形成し得る。たんぱく質は、たんぱく質の溶解度に影響する多数の変数のうちの1つ以上を変えることにより達成され得る飽和または過飽和の状態で通常結晶する。したがって、溶液のイオン濃度を変えるか、または有機ポリマーたとえばポリエチレングリコールの利用により、たんぱく質は晶出し得る。たんぱく質結晶を成長させる技術は、Narang,S.A.Proten Eng ineering:Approaches to the Manipulation of Pr otein Folding(Butternworth,Publisher,Soneham MA.,1990),Chpt.6(以下『Narang』とする)に記載されている。上記の本は、参考としてここに示した。たんぱく質を晶出したら、x−線、中性子および電子回折法が用いられてたんぱく質の構造が測定できる(好ましくはx−線回折法が用いられる)。結晶のたんぱく質構造は、結晶形に対し分子の最小限立体配座フリーエネルギーにあるかまたはその近くにあると思われる。
b)光学活性
アミノ酸の不斉中心に起因し、また、その不斉配座に起因してポリペプチド/たんぱく質の光学活性は、ポリペプチド/たんぱく質の構造の測定に用いることができる。この不斉は、たんぱく質を右旋偏光および左旋偏光と異なるように相互反応させる:2つのビームがたんぱく質を異なる速度で結果的に進行すると、偏光は回転される。旋光分散(『ORD』)は、波長へのこの回転の依存である。たんぱく質分子が光を吸収しない波長域で、回転は、波長と共に漸進的に変化するが、吸収域では、回転は、1つの方向でまず鋭く増加し、吸収極大でゼロに下がり、次に反対方向で鋭くリスト(riste)する。左旋偏光および右旋偏光の不均等な吸収もあり、これは、円偏光2色性(『CD』)と呼ばれる。たんぱく質のCDおよびOESスペクトルは、その構造的な立体配座に非常に鋭敏である。折りたたまれたたんぱく質は、通常、近UV領域(250−300nm)で有意的に光学活性を有する。
c)核磁気共鳴分光学
たとえば、1H、13C、15N、13pおよび2Hを用いる核磁気共鳴分光学は、溶液中のたんぱく質の構造を研究するのに大いに役に立つことが証明されている。1Hに関心を払うと、分子中のそれぞれの水素原子は、核磁気スピンを有している、すなわち、原子の核は、小さな磁石のようにふるまう。外部の磁界の不在下で、プロトンの磁気モーメントはランダムに配向している。核磁気共鳴の実験では、強い外部の磁界が、特定の方向に沿ってサンプルに加えられ、磁気モーメントと特定の方向の軸線に沿う正味巨視的磁化(net macroscopic magnetization)とが整合する;適当な強さの短いラジオ周波数パルスが加わり、磁化ベクターがこの軸線から離れるようにノックする。磁化が回復すると、過渡的なラジオ周波数信号が、時間の関数として記録される。この信号のフーリエ変換は、周波数スペクトルを生じる。分子のそれぞれのプロトンは、そのプロトンの局部電子環境により定められるある特徴的な共鳴周波数で起こるこのスペクトルでピークを生じさせる。特定のプロトンの共鳴周波数は、その『化学的シフト』と呼ばれ、ある基準周波数からのオフセットとして測定される。NMRからのストラクチャード情報(structured information)は、核オーバーハウザー効果(nulcear Overhauser effect)(『NOE』、これは1対のプロトンが、空間で互いに近いかどうかを定める)と3つ以下の化学結合により分離されるプロトンの結合定数とから誘導される。NOEおよび結合定数は、一次元データを与える;二次元データは、特に核オーバーハウザーエンハンスメント分光法(NOESY)と二次元相関分光法(COSY)とにより与えられ、そしてそのようなデータから、三次元たんぱく質構造が決定され得る。
たんぱく質分子の三次元構造の決定について述べた上記の情報の点で、DNA巨大分子およびアミノ酸の後記の請求の範囲は、三次元構造をそれにより表されるたんぱく質分子と関連させて固有に含む。
ここに記載の例は、好ましい特定のベクター、プラズミドおよびホスト細胞に限定されて解釈されるものではない。ここで説明のrSLOは、rSLO.3と呼称した好ましいrSLOまたは好ましいベクター、プラズミドおよびホスト細胞だけに限定されると解釈されるものではない。同様に、好ましいrSLO.3は、DNAおよびそのアミノ酸配列が本出願人の題しているDNAおよびアミノ酸配列だけでであるということを実際上意味することでも暗示するものでもない。これらは、適用できる特許法のもとに十分な保護を受ける資格がある。
指定により物質をクレームする目的で、pΔ33−rSLO.3を含んでなるプラスミドで形質転換したAR120およびpBTacDNA−rSLO.3を含んでなるプラズミドで形質転換したJM105を1991年8月23日に、ザ・アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(the American Type Culture Collection)(ATCC)、12301 Parklawn Drive,Rockville,Maryland,20852に特許手続き上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約(the Budapest Treaty for the International Recognition of the Deposite of Microorganisms for the Purpose of Patent Procedure)の条項により寄託した。これらは、1991年8月27日にthe ATCCにより試験され両方とも生存できると測定された。the ATCCは、これらの物質にそれぞれ寄託番号ATCC68675およびATCC68677を付与した。
ここになした開示に基づき、当業者は、図1に示したDNA配列の断片が、野生型SLOの特徴的な少なくとも1つのエピトープ部位(epitopic site)を保持し続け、溶血特性を維持する該図1に示したDNA配列の断片を容易に得ることができる。さらに、気づかれるように、ヌクレオチドの保存置換(conservative substitution)は、当業者に理解され認められるように、アミノ酸配列の付随する変化なしに行われ得る。たとえば、『コンピュータライズドバック翻訳(computerized back translation)』が用いられ得、これにより、アミノ酸配列がコンピューターにより分析され、コンピューターが、そのようなアミノ酸を暗号化するに必要なコドンに用いるための最適ヌクレオチドを決定する。さらに、DNA合成技術は、図1のDNA配列の長さを有するオリゴヌクレオチドが得られるように進行するので、技術のそのような進行と共に適当にその配列を合成できる。
SLO誘導体のスクリーニングが、上記の液体オーバーレイ法を用いて容易に達成できるので、多数のSLO誘導体候補を迅速に評価できる。したがって、当業者は、この方法を用いてSLO誘導体類似体候補を誘導し、溶血活性の表示のためのこれらの候補を迅速にスクリーニングして、類似体の核酸およびアミノ酸配列を決定することが容易にできる。
したがって、ここに記載の例が、特定のSLO特異体であるrSLO.3に向けられていて、技術のこの進歩をものにすれば、当業者は、本分野で公知の技術を用いてこの進歩を当業者自身に適用できるので、本出願人の発明は、上記に定めた特徴を有するSLO誘導体を含むと理解され、例に開示した特定の誘導体に限定されるものではない。
本発明は、ある好ましい実施態様について記載したが、本発明の教示の範囲に入る他の実施態様も可能である。特定のSLO誘導体の産生を詳述したが、それ自体代表例と解釈されるべきである。したがって、開示も後記の請求の範囲もここに記載の好ましい実施態様の説明により限定されることを意図するものでも解釈されるものでもない。
37C.F.R. §1.821(c)配列一覧表
(1)一般情報
(i)出願人:アダムス、クレイグM.(Adams,Craig M.)およびワング、エバY.(Wang,Eva Y.)
(ii)発明の名称:ストレプトリシンO誘導体
(iii)配列:2
(iv)通信住所:
(A)受信人:ベックマン・インストラメンツ社(Beckman Instruments,Inc.)
(B)通り:2500ハーバー大通り(2500 Harbor Blvd.)
(C)市:フラートン(Fullerton)
(D)州:カリホルニア(California)
(E)国:アメリカ合衆国(USA)
(F)郵便番号(ZIP):92634
(v)コンピューター読み取り可能フォーム:
(A)媒体タイプ:ディスケット、3.5インチ、1.44Mb
(B)コンピューター:IBM
(C)作動システム:MS.DOS
(D)ソフトウエアー:WordPerfect 5.1
(vi)現在の出願データ(CURRENT APPLICATION DATA:
(A)出願番号:(ここに記載)
(B)出願日:(ここに記載)
(C)分類:
(vii)先行出願データ:(適用不可)
(A)出願番号:
(B)出願日:
(viii)弁理士/代理人情報
(A)名前:バーグーン、リチャードP.(Burgoon,Richard P.)
(B)登録番号:34,787
(C)参照/名簿番号:128D−1023
(ix)電気通信情報
(A)電話:(714)773−7610
(B)テレファックス:(714)773−7936
(2)SEQ ID NO.の情報:1
(i)配列特性:
(A)長さ:1524塩基対
(B)タイプ:核酸
(C)鎖特性(STRANDEDNESS):二重
(D)トポリジー:直線状
(ii)分子タイプ:ゲノムDNA
(vi)初期の給源:
(A)生物体:ストレプトコッカスピヨゲネス
(vii)即時(IMMEDIATE)給源:
(A)ライブラリー:ゲノム
(B)クローン:sSLO.3
(xi)配列記事:SEQ ID NO.:1
Figure 0003595840
Figure 0003595840
(3)SEQ ID No.の情報:2
(i)配列特性:
(A)長さ:480アミノ酸
(B)タイプ:アミノ酸
(C)トポロジー:直線状
(ii)分子タイプ:たんぱく質
(ix)特徴:
(A)名前/キー:シグナル配列
(B)位置:SLOのアミノ酸98からアミノ酸571まで
(C)同定方法:組換えベクターから可溶性で溶血活性なSLOの生成に基づいて実験的に定める。
(D)他の情報:リセス赤血球
(xi)配列記事:SEQ ID No.:2
Figure 0003595840
Figure 0003595840
Figure 0003595840

Claims (10)

  1. 溶血活性を有し可溶性のストレプトリシンO誘導体をエンコードする、下記のDNA配列からなる精製された単離DNA。
    Figure 0003595840
    Figure 0003595840
  2. 請求項1に記載のDNAで形質転換又はトランスフェクションされ、溶血活性を有し可溶性のストレプトリシンO誘導体を発現できる、原核は真核ホスト細胞。
  3. DNAベクターと請求項1に記載のDNAを含む、DNAプラスミド。
  4. 請求項3に記載のDNAプラスミドで形質転換又はトランスフェクションされた、原核又は真核ホスト細胞。
  5. 溶血活性を有し可溶性で下記のアミノ酸配列からなる、ストレプトリシンO誘導体。
    Figure 0003595840
    Figure 0003595840
    Figure 0003595840
  6. ATCC寄託番号第ATCC68675番の材料により発現される、溶血活性を有する可溶性のストレプトリシンO誘導体。
  7. ATCC寄託番号第ATCC68677番の材料により発現される、溶血活性を有する可溶性のストレプトリシンO誘導体。
  8. 請求項1に記載のDNAで形質転換又はトランスフェクションされ、溶血活性を有し可溶性のストレプトリシンO誘導体を発現できる、哺乳類ホスト細胞。
  9. 前記DNAベクターはハイコピープラスミドである、請求項3に記載のDNAプラスミド。
  10. 前記DNAベクターは非常に高いレベルのmRNA産生を達成するプロモーター遺伝子を含む、請求項4に記載のDNAプラスミド。
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