JP3595218B2 - 蛍光ランプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は精肉、鮮魚等の赤色を基調とした食品を照明する蛍光ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
3波長域発光形蛍光ランプは青色、緑色、赤色の蛍光体をバランス良く配合させ、発光効率89lm/W(FL40S 5000K 光色記号EX−N)と非常に高効率で平均演色評価数88〜92と高い演色性を有しているが、明るく、被照射物の色が自然に見えるという特徴の反面、特定の色の被照射物をより鮮やかに照明する、いわゆる効果演色には適していない。
赤色の被照射物を鮮やかに照明する技術として、3波長域発光形の蛍光体に、第2の赤色発光成分である波長660nm付近にピークを有する深赤色蛍光体を加える技術が有り、各社の冷蔵ショーケース用蛍光ランプに用いられている。
特に、精肉用蛍光ランプとして各社より製品化されている、図6に示した分光エネルギー分布を有し、図2の従来例1に示した光色を有する蛍光ランプ(従来例1)は、赤色発光成分として深赤色蛍光体をほぼ100%使用し、かつ、光色が店舗の天井照明の主力である3波長域発光形5000K(光色記号EX−N)に近いため、精肉の赤色を鮮やかに見せ、かつ、天井照明との違和感が無いという特徴を有している。
【0003】
一方、赤色の被照射物を鮮やかに照明するもう一つの技術として、赤色発光の緑色発光に対する比率を増加させ、ランプの光色自体を赤方向に寄せる技術がある。深赤色蛍光体は、赤色蛍光体に比べ発光効率が低くランプの効率を低下させる。従って、この技術を上記の深赤色蛍光体の技術と併用することにより深赤色蛍光体の使用比率を低く押さえることが出来、効率の低下を抑制することが出来る。
図7の分光エネルギー分布、図2の従来例2に示した光色を有する蛍光ランプ(従来例2)は、色温度を約5300Kに保ちながら赤色発光の比率を増やしており、3波長域発光形5000K(光色記号EX−N)に対し著しく赤紫方向に寄った光色となっている。この従来例2の蛍光ランプは、ランプ自体の赤色発光の増加が、赤色の被照射物を鮮やかに見せる効果を有しているので、赤色成分における深赤色蛍光体の比率が低くなっており、従来例1と同等の赤色の被照射物を鮮やかに見せる効果を保ちながら、発光効率が従来例1に比べ高いという特徴を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来例1の蛍光ランプのように赤色発光成分として赤色の被照射物を鮮やかに見せる深赤色蛍光体のみを用いた場合、ランプ自身の発光色を赤方向に寄せることなく上記の効果を得ることが出来、天井照明との違和感のない蛍光ランプとすることが出来るが、前述の通り、深赤色蛍光体は発光効率が低いため蛍光ランプの明るさが著しく低くなり、冷蔵ショーケース内の食品が明るく見えないという問題点があった。
【0005】
また、従来例2の蛍光ランプのようにランプ自身の発光色を赤方向に寄せる技術を用いた場合、より明るい蛍光ランプとすることが出来るため、冷蔵ショーケース内の明るさは改善されるが、その発光色が天井照明と著しく乖離しているため違和感を生じるだけでなく、ショーケース内の赤色以外の部分、例えば精肉の樹脂製パックやショーケースのトレー等の白色の部分が赤味がかって見え、店舗への来客に不自然な印象を与えるという問題点があった。
【0006】
本発明は、係る課題を解決するために成されたものであり、蛍光ランプの明るさを著しく低下させることなく赤色の被照射物を鮮やかに見せ、かつ、天井照明との違和感が無く、ショーケース内の照明として不自然な印象を与えない蛍光ランプを供給することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、種種の光色の蛍光ランプの感能試験を実施した結果、ガラスバルブの内面に複数の蛍光体を含む蛍光体層を形成し、前記蛍光体層が、波長450nm付近に発光ピークを有する青色蛍光体、波長540nm付近に発光ピークを有する緑色蛍光体、波長610nm付近に発光ピークを有する赤色蛍光体、波長660nm付近に発光ピークを有する深赤色蛍光体よりなる蛍光ランプにおいて、その発光色の色度がCIE UCS色度図における色度座標(u=0.215,v=0.314),(u=0.221,v=0.320),(u=0.221,v=0.309),(u=0.226,v=0.314)の各点で囲まれた範囲であれば、3波長域発光形5000K(光色記号EX−N)に対する蛍光ランプの発光色の数値上(色度座標上)の乖離が従来例1に比べて大きくても、天井照明との違和感や、冷蔵ショーケース内の照明としての不自然さを与えないことを見いだした。
【0008】
また、この発光色において、赤色被照射物の感能試験と蛍光ランプの明るさの試験を行った結果、540nm付近の発光ピークのエネルギーに対する660nm付近の発光ピークのエネルギーの比(DR/G)を60〜80%に設定すれば、蛍光ランプの明るさを著しく低下させることなく、赤色の被照射物を鮮やかに見せられることを見いだした。
【0009】
この発明によれば、発光色の色度をCIE UCS色度図における色度座標を(u=0.215,v=0.314),(u=0.221,v=0.320),(u=0.221,v=0.309),(u=0.226,v=0.314)の各点で囲まれた範囲に設定したことにより、天井照明との違和感や、冷蔵ショーケース内の照明としての不自然さを与えず、かつ、ランプ自身の光色が適度に赤紫色の方向に寄っているので、発光効率の低い深赤色蛍光体の使用量を従来例1に比べ少なくすることが出来、蛍光ランプの明るさを著しく低下させることなく赤色の被照射物を鮮やかに見せることが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
最初に、天井照明に対して違和感が無く、冷蔵ショーケース内の照明として不自然さの無い蛍光ランプの光色の検討を行った。
図1に示す蛍光体を混合したものを5%のポリエチレンオキサイド・溶液、イオン交換水、アルミナ(Al2 O3 )と共に攪拌し、得られた懸濁液をガラスバルブ内面に塗布し、乾燥、焼成し、封止、排気して、図2のCIE(国際照明委員会)1960UCS色度図(uv色度図)の色度座標上に示した色度点の実施例ランプNo.1〜7、従来例1,2を模した比較例ランプNo.1,2のFL40Sランプを作成した。図2に示すように、実施例ランプNo.1は、CIEUCS色度図における色度座標が(u=0.220,v=0.314)の点(又はその近傍)のランプである。実施例ランプNo.2〜5は、CIE UCS色度図における色度座標が(u=0.215,v=0.314),(u=0.221,v=0.320),(u=0.221,v=0.309),(u=0.226,v=0.314)の各点(又はその近傍)のランプである。実施例ランプNo.6,7、比較例ランプNo.1,2は、CIE UCS色度図における色度座標が(u=0.215,v=0.314),(u=0.221,v=0.320),(u=0.221,v=0.309),(u=0.226,v=0.314)の各点で囲まれた範囲外のランプである。上記各ランプを、天井照明として3波長域発光形5000K、黒体からの偏差duv:0.0(光色記号EX−N)のランプを用い、その下に設置した冷蔵ショーケースに取り付けて点灯し、天井照明との違和感、及び、冷蔵ショーケース内に置かれた白色の精肉用樹脂パックの色の自然さを正常な色覚を持つ成人男性及び成人女性各5人により感能試験評価した結果を図3に示す。
【0011】
感能試験の結果、天井照明との光色の乖離が有る蛍光ランプでも、黒体からの偏差duv×1000が−16.5以上であれば、天井照明との違和感も、精肉樹脂パックの色の不自然さも感じられないことがわかった。即ち、実施例ランプNo.1〜6は、黒体からの偏差duv×1000が−16.5以上であり、天井照明との違和感も、精肉樹脂パックの色の不自然さも感じられないことがわかった。実施例ランプNo.7は、黒体からの偏差duv×1000が−16.5より小さく、天井照明との違和感も、精肉樹脂パックの色の不自然さが感じられた。当然、前述した通り、比較例ランプNo.1は、上記の違和感、不自然さは感じず、比較例ランプNo.2は、上記の違和感、不自然さを感じるという結果となった。
【0012】
次に、上記の検討で蛍光ランプの明るさを著しく低下させず、かつ、赤色の被照射物を鮮やかに見せるための深赤色蛍光体の配合比の検討を行った。
図3の実施例ランプNo.1,2,5,6、比較例ランプNo.1,2と同じ色度で、深赤色蛍光体の混合比率を変えて、緑色発光のピークに対する深赤色発光のピークのエネルギー比(DR/G)を変化させ、図3に示した感能試験と同様の方法で作成した蛍光ランプについて、図3に示した感能試験と同じ条件で設置された冷蔵ショーケースに取り付け、冷蔵ショーケース内に置かれた牛肉及び豚肉の色味の感能試験を図3の感能試験と同じ被検者により実施した結果と、これらの蛍光ランプの初期(点灯100時間後)の発光効率について図4に示す。
【0013】
本実施例の蛍光ランプの光色の範囲では、良好な肉の見え方を得るには、DR/Gが50%の実施例ランプNo.1−1を除き、DR/Gが60%以上のランプで有れば良いが、実施例ランプNo.1−5のように、DR/Gが90%では明るさが大きく低下し、発光効率が50%を下回る。また、実施例ランプNo.6−1の色度u=0.216,v=0.318(色温度:5000K,duv×1000:−7.5)では、ランプ自体の光色の赤味が足りなくなるため、肉の色の見え方が悪くなる。
【0014】
図4の評価結果より、蛍光ランプの明るさを著しく低下させることなく、赤色の被照射物を鮮やかに見せるには、実施例ランプNo.1−2〜1−4,2−1,5−1のように、色温度が4700〜5300K,duv×1000が−9.0〜−16.5の範囲、即ち、色度座標(u=0.215,v=0.314),(u=0.221,v=0.320),(u=0.221,v=0.309),(u=0.226,v=0.314)の各点で囲まれた範囲、かつ、DR/Gが60〜80%の範囲が良いことがわかった。特に、図5に、その分光エネルギー分布を示した実施例ランプNo.1−3(色温度が5000K,duv×1000が−12.5、即ち、色度座標(u=0.220,v=0.314)、かつ、DR/G=70%)が最も好適である。
また、本色度範囲は、図3の検討結果より、天井照明との違和感が無く、ショーケース内の照明として不自然な印象を与えない。
【0015】
なお、ユーロピウム付活クロロリン酸ストロンチウム・バリウム・カルシウム蛍光体の代わりに、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体又はユーロピウム,マンガン付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体を用いていも良い。
また、これらの混合物を用いても良い。
また、ユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体の代わりに、ユーロピウム付活バナジン酸イットリウム蛍光体を用いても良い。
また、これらの混合物を用いても良い。
また、各蛍光体として他の蛍光体を用いても良い。
また、他の蛍光体を含んでも良い。
また、各蛍光体のピーク波長は±5mm又は±10mmのずれがあっても良い。
また、この発明の効果を損なわない範囲において、CIE UCS色度図における色度座標の値に多少のずれがあっても良い。
【0016】
【発明の効果】
以上説明した通り本発明によれば、蛍光ランプの明るさを著しく低下させることなく赤色の被照射物を鮮やかに見せ、かつ、天井照明との違和感が無く、ショーケース内の照明として不自然な印象を与えない蛍光ランプを供給することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における蛍光体を示す図。
【図2】本発明による実施例及び従来例による比較例に係る蛍光ランプの色度範囲又は色度を説明するためのCIE(国際照明委員会)1960UCS色度図(uv色度図)。
【図3】本発明による実施例及び従来例による比較例に係る蛍光ランプの感能試験評価結果を示す図。
【図4】本発明による実施例及び従来例による比較例に係る蛍光ランプの感能試験評価結果と発光効率を示す図。
【図5】本発明の一実施例における分光エネルギー分布図。
【図6】従来例1における分光エネルギー分布図。
【図7】従来例2における分光エネルギー分布図。
Claims (3)
- ガラスバルブの内面に複数の蛍光体を含む蛍光体層を形成し、前記蛍光体層は、波長450nm(±5nm)に発光ピークを有する青色蛍光体、波長540nm(±5nm)に発光ピークを有する緑色蛍光体、波長610nm(±10nm)に発光ピークを有する赤色蛍光体、波長660nm(±5nm)に発光ピークを有する深赤色蛍光体よりなり、CIE(国際照明委員会) UCS色度図における色度座標が(u=0.215,v=0.314),(u=0.221,v=0.320),(u=0.221,v=0.309),(u=0.226,v=0.314)の各点で囲まれた範囲にあり、かつ、540nm(±5nm)の発光ピークのエネルギーに対する660nm(±5nm)の発光ピークのエネルギーの比(DR/G)が60〜80%であることを特徴とする蛍光ランプ。
- 前記蛍光体層の、波長450nm(±5nm)に発光ピークを有する青色蛍光体がユーロピウム付活クロロリン酸ストロンチウム・バリウム・カルシウム蛍光体又はユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体又はユーロピウム,マンガン付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体のうち少なくとも一つ、波長540nm(±5nm)に発光ピークを有する緑色蛍光体がセリウム,テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体、波長610nm(±10nm)に発光ピークを有する赤色蛍光体がユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体又はユーロピウム付活バナジン酸イットリウム蛍光体のうち少なくとも一つ、波長660nm(±5nm)に発光ピークを有する深赤色蛍光体がマンガン付活フルオロゲルマン酸マグネシウムであることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
- 色度座標が(u=0.220,v=0.314)であり、DR/Gが70%であることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
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