JP3592845B2 - 熱可塑性有機樹脂とオルガノポリシロキサンからなるマスターバッチの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性有機樹脂とオルガノポリシロキサンからなるマスターバッチの製造方法に関し、詳しくは熱可塑性有機樹脂中に高粘度のオルガノポリシロキサンが微細に分散してなる、熱可塑性有機樹脂とオルガノポリシロキサンからなるマスターバッチの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
潤滑性,成形性,難燃性等の特性が改良された熱可塑性有機樹脂組成物には、通常、オルガノポリシロキサンが数千ppm〜数%添加配合されている。このような熱可塑性有機樹脂組成物に使用されるオルガノポリシロキサンとしては、特に、25℃における粘度が10万センチストークス以上の高粘度のものが潤滑性等の特性付与の点から好ましいことが知られている。
このような熱可塑性有機樹脂組成物を製造するにあたってオルガノポリシロキサンを熱可塑性有機樹脂に添加配合する方法としては、オルガノポリシロキサンが低粘度である場合には熱可塑性有機樹脂の溶融混練時に直接添加配合することが容易であるため、混練機への定量供給が行われる。一方、オルガノポリシロキサンが高粘度である場合には、溶融した熱可塑性有機樹脂中に高粘度のオルガノポリシロキサンを定量的に供給、混合する方法が提案されている(例えば特公昭64−9172号公報参照)ものの、微量の定量供給を行うことが困難であるため添加量が限定されるという欠点があった。このため、予め高粘度のオルガノポリシロキサンを高濃度に配合した熱可塑性有機樹脂組成物のマスターバッチを作成してこれをペレット化したものを、熱可塑性有機樹脂中に添加配合して溶融混練する方法が行われている。このマスターバッチは、一般に、加熱したニーダーミキサーやバンバリーミキサー中で熱可塑性有機樹脂を溶融し、次いでこれにオルガノポリシロキサンを配合、混練して製造される。しかし、この方法で得られたマスターバッチは、オルガノポリシロキサンが熱可塑性有機樹脂中に十分に分散しておらず、そのためこのマスターバッチを添加配合した熱可塑性有機樹脂組成物は、オルガノポリシロキサンの配合による特性の向上が十分見られないという問題点があった。また混練押出機を用いて、溶融した熱可塑性有機樹脂にオルガノポリシロキサンを添加混合してマスターバッチを連続的に製造する方法も知られている。しかしこの方法では、オルガノポリシロキサンを添加した直後に混合トルク(電力値)が増加して生産性が低下したり、急激な混合トルクの上昇に伴い混練物の温度が上昇して熱可塑性有機樹脂の種類によっては分解反応が起きることがあるという問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは鋭意検討した結果、未溶融の熱可塑性有機樹脂と高粘度のオルガノポリシロキサンとを混合し、次いでこれらを溶融混練することにより、上記問題点が解消することを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の目的は、熱可塑性有機樹脂中に高粘度のオルガノポリシロキサンが微細に分散してなる、熱可塑性有機樹脂とオルガノポリシロキサンからなるマスターバッチの製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段およびその作用】
本発明は、下記2工程を同一混練押出機で連続的に行うことを特徴とする、(A)熱可塑性有機樹脂と(B)25℃における粘度が10万センチストークス以上であるオルガノポリシロキサンからなるマスターバッチの製造方法に関する。
(1)(A)成分と(B)成分とを(A)成分が溶融しない温度条件下で混合する工程。
(2)(1)工程で得られた(A)成分と(B)成分からなる混合物を、(A)成分の溶融温度以上の加熱条件下で溶融混練する工程。
【0005】
本発明に使用される(A)成分の熱可塑性有機樹脂としては、ポリエチレン(PE)樹脂,低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂,高密度ポリエチレン樹脂,超高分子量ポリエチレン(UHMPE)樹脂,ポリプロピレン(PP)樹脂,エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂,ポリスチレン(PS)樹脂,高衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合樹脂,アクリロニトリル−スチレン(AS)共重合樹脂,アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン(AAS)共重合樹脂,アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン(AES)共重合樹脂,ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂などのアクリル樹脂;ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂,ポリビニルアルコール樹脂,ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂,ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂,ポリアミド(ナイロン、PA)樹脂,ポリアセタール(ポリオキシメチレン、POM)樹脂,ポリカーボネート(PC)樹脂,変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)樹脂,ポリ酢酸ビニル(PVAC)樹脂,ポリサルフォン(PSU)樹脂,ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂,ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂,ポリアリレート(PAR)樹脂,ポリアミドイミド(PAI)樹脂,ポリエーテルイミド(PEI)樹脂,ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂,ポリイミド(PI)樹脂,液晶ポリエステル(LCP)樹脂,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂およびこれらの共重合体が例示される。本成分としては、これらの有機樹脂を単独で使用してもよく、また2種類以上の混合物を使用してもよい。また、上記した有機樹脂の他にも、スチレン系,オレフィン系,エステル系,ウレタン系,アミド系,フッ素系,塩化ビニル系などの熱可塑性エラストマーが例示される。このような本成分の形状は、通常、ペレット状または粉状である。
【0006】
(A)成分は、上記熱可塑性有機樹脂にフィラーや各種添加剤を配合したものであってもよい。フィラーとしては、ガラス繊維,炭素繊維,ガラスクロス,炭酸カルシウム,マイカ,タルクが例示される。各種添加剤としては、例えば、強度改良剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,耐光安定剤,耐熱安定剤,可塑剤,発泡剤,結晶核剤,滑剤,帯電防止剤,導電性付与剤,顔料や染料などの着色剤,相溶化剤,架橋剤,難燃剤,防カビ剤,低収縮剤,増粘剤,離型剤,防曇剤,ブルーイング剤,シランカップリング剤が挙げられる。
【0007】
本発明に使用される(B)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が10万センチストークス以上のものであればよい。好ましくは50万センチストークス以上であり、より好ましくは100万センチストークス以上である。通常、100万センチストークス以上もしくはガム状のオルガノポリシロキサンが使用される。これは、10万センチストークス未満であると本発明の効果が発現しないためである。このような高粘度のオルガノポリシロキサンは、通常、直鎖状の分子構造を有するが、一部に式:RSiO3/2(式中、Rは一価有機基である。)で示されるシロキサン単位や式:SiO4/2で示されるシロキサン単位を有するものであってもよい。ケイ素原子に結合した有機基としては、アルキル基,アルケニル基,アリール基などの置換もしくは非置換の一価炭化水素基が一般的であるが、これ以外にも水酸基,アルコキシ基,水素原子,アミノ基,カルボキシル基,エポキシ基が例示される。このような本成分のオルガノポリシロキサンとしては、トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン,トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン,シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体が例示される。
【0008】
本発明の製造方法における上記(A)成分と(B)成分の配合割合は、95〜20重量%:5〜80重量%の範囲であるのが好ましく、より好ましくは80〜40重量%:20〜60重量%の範囲である。これは、(B)成分が5重量%未満であるとマスターバッチとしての付加価値が低くなり、80重量%を越えると得られたマスターバッチの粘着性が高くなってペレット化が困難となるためである。
【0009】
本発明の製造方法では、(1)工程として混練押出機中で上記(A)成分と(B)成分とを、(A)成分が溶融しない温度条件下で混合する。即ち、ペレット状あるいは粉状の(A)成分が溶融されずに(B)成分と混合される。混合温度は(A)成分の溶融温度を越えない温度であればよく、50℃〜200℃の範囲であるのが好ましい。通常は溶融温度より10℃以上低い温度であるが、30℃以上低い温度であってもよい。尚、この工程の前に予め(A)成分を、溶融しない程度に加熱しておくのが好ましい。このときの加熱温度は、前記した混合温度と同じ温度であるのが好ましい。混合装置としては、例えば、一軸混練押出機,二軸混練押出機が挙げられる。この段階では、(A)成分の熱可塑性有機樹脂が(B)成分のオルガノポリシロキサン中に分散した状態であるため、混合装置の混合トルクは(B)成分と同等もしくはこれに近い値となる。
【0010】
次に(2)工程として、上記(1)工程で得られた(A)成分と(B)成分からなる混合物を、同一混練押出機中で(A)成分の溶融温度以上の加熱条件下で溶融混練する。通常は、溶融温度より5℃以上高い温度条件下である。混練機としては、例えば、一軸混練押出機,二軸混練押出機が挙げられる。この段階では、(A)成分の熱可塑性有機樹脂が溶融してこれが(B)成分のオルガノポリシロキサンと混練されることにより、(A)成分中に(B)成分が分散した状態になる。これらを均一に混練した後、冷却することによりマスターバッチを得ることができる。尚、マスターバッチをペレット状に成形する場合には、通常、ペレタイザーが使用される。
【0011】
本発明の製造方法は、上記(1)工程と(2)工程からなり、これらの2工程を同一混練押出機で連続的に行うことを特徴としている。この場合、混練押出機の原料供給口に溶融温度以下の(A)成分と(B)成分を定量供給し、混練押出機中で未溶融の(A)成分が(B)成分と混合されるように、供給口の温度を(A)成分の溶融温度以下に調整する。そして供給口に続くバレル部の温度を(A)成分の溶融温度以上になるように調整する。この連続的混合混練工程では、(B)成分のオルガノポリシロキサンの供給を、高粘度液体を連続的に定量供給できるギヤポンプで行うのが好ましい。
【0012】
以上のような本発明の製造方法によれば、熱可塑性有機樹脂中に高粘度のオルガノポリシロキサンが微細に分散してなるマスターバッチを製造することができ、混合トルクの増加が小さいために生産性がよく、かつ混合トルク上昇に伴う混練物の温度上昇が抑えられるという利点を有する。このマスターバッチは、熱可塑性有機樹脂組成物の配合成分として好適に使用される。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を実施例にて説明する。実施例中、粘度は25℃における測定値である。尚、使用した2軸スクリュー混練押出機[東芝機械(株)製;商品名TEM48]は、バレル部が12等分され、そのL/D(長さ/口径)は48であり、ダイは4.5mm穴を6個有するものであった。またこれは混練能力を上げたスクリュー配列を有し、第1バレル部,第3バレル部,第12バレル部のみが送り用スクリュー配列であり、他のバレル部は全て混練スクリュー配列となっていた。
【0014】
【実施例1】
原料ホッパーを取り付けた2軸スクリュー混練押出機の第1バレル部を100℃にし、この第1バレル部にホッパーからペレット状のポリプロピレン樹脂(メルトインデックス値:12g/10分,溶融温度:170℃)を24kg/hrの速度で定量供給した。また第3バレル部に、粘度約2,000万cStの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンを16kg/hrの速度でギヤポンプを用いて定量供給した。第1バレル部,第2バレル部,第3バレル部を100℃にし、第4バレル部から210±4℃となるようにバレル温度を調整した。なお、第3バレル部ではポリプロピレン樹脂ペレットがオルガノポリシロキサン中に分散していることを確認した。このようにポリプロピレン樹脂とオルガノポリシロキサンを溶融混練して、混練押出機のダイから押出された混練物を室温で放冷してマスターバッチを得た。得られたマスターバッチ中のオルガノポリシロキサンの分散粒子の大きさを電子顕微鏡を用いて測定した。尚、混練押出機の回転数を100rpm、200rpmと変化させてこのときの混合トルク(電力値)も測定した。これらの結果を表1に示した。
【0015】
【実施例2】
2軸スクリュー混練押出機の第1バレル部に、粘度約2,000万cStの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンを15kg/hrの速度でギヤポンプを用いて定量供給し、第3バレル部にペレット状のポリエチレン樹脂(メルトインデックス値:4g/10分,溶融温度:112℃)を18kg/hrの速度で定量供給した。第1バレル部,第2バレル部,第3バレル部を100℃にし、第4バレル部から220±4℃となるようにバレル温度を調整した。なお、第3バレル部ではポリエチレン樹脂ペレットがオルガノポリシロキサン中に分散していることを確認した。このようにポリエチレン樹脂とオルガノポリシロキサンを溶融混練して、混練押出機のダイから押出された混練物を室温で放冷してマスターバッチを得た。得られたマスターバッチ中のオルガノポリシロキサンの分散粒子の大きさを電子顕微鏡を用いて測定した。尚、混練押出機の回転数は100rpmであり、このときの混合トルクも測定した。これらの結果を表1に示した。
【0016】
【比較例1】
原料ホッパーを取り付けた2軸スクリュー混練押出機の第1バレル部を150℃とし、第2バレル部からは210℃になるように調整した。第1バレル部に、ホッパーから実施例1で使用したのと同一のポリプロピレン樹脂ペレットを、24kg/hrの速度で定量供給した。また第3バレル部に、粘度約2,000万cStの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンを16kg/hrの速度でギヤポンプを用いて定量供給した。なお、第3バレル部ではポリプロピレン樹脂は溶融していた。このようにポリプロピレン樹脂とオルガノポリシロキサンを溶融混練して、混練押出機のダイから押出された混練物を室温で放冷してマスターバッチを得た。得られたマスターバッチ中のオルガノポリシロキサンの分散粒子の大きさを電子顕微鏡を用いて測定した。尚、混練押出機の回転数を100rpm、200rpmと変化させてこのときの混合トルクも測定した。これらの結果を表1に示した。
【0017】
【比較例2】
原料ホッパーを取り付けた2軸スクリュー混練押出機の第1バレル部を150℃とし、第2バレル部からは220℃になるように調整した。第1バレル部に、ホッパーから実施例2で使用したのと同一のポリエチレン樹脂ペレットを18kg/hrの速度で定量供給した。また第3バレル部に、粘度約2,000万cStの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンを15kg/hrの速度でギヤポンプを用いて定量供給した。なお、第3バレル部ではポリエチレン樹脂は溶融していた。このようにポリエチレン樹脂とオルガノポリシロキサンを溶融混練して、混練押出機のダイから押出された混練物を室温で放冷してマスターバッチを得た。得られたマスターバッチ中のオルガノポリシロキサンの分散粒子の大きさを電子顕微鏡を用いて測定した。尚、混練押出機の回転数は100rpmであり、このときの混合トルクも測定した。これらの結果を表1に示した。
【0018】
【比較例3】
実施例1で使用したのと同一のポリプロピレン樹脂ペレット3.75kgと粘度約2,000万cStの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン1.5kgを、220℃に加熱した4.3Lのバンバリーミキサ[神戸製鋼所(株)製、OOC型]に投入して、回転数62.5rpmで10分間混合した。さらに回転数125rpmで20分間混合した後、取り出して冷却してマスターバッチを得た。このようにして得られたマスターバッチ中のオルガノポリシロキサンの分散粒子の大きさを電子顕微鏡を用いて測定した。その結果を表1に示した。
【0019】
【表1】
【0020】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性有機樹脂と高粘度のオルガノポリシロキサンからなるマスターバッチの製造方法は、(1)(A)成分と(B)成分とを(A)成分が溶融しない温度条件下で混合する工程と、(2)(1)工程で得られた(A)成分と(B)成分からなる混合物を(A)成分の溶融温度以上の加熱条件下で溶融混練する工程からなり、これら2工程を同一混練押出機で連続的に行うことを特徴とするものであり、これにより熱可塑性有機樹脂中に高粘度のオルガノポリシロキサンが微細に分散してなるマスターバッチを効率よく製造することができるという利点を有する。
Claims (6)
- 下記2工程を同一混練押出機で連続的に行うことを特徴とする、(A)熱可塑性有機樹脂と(B)25℃における粘度が10万センチストークス以上であるオルガノポリシロキサンからなるマスターバッチの製造方法。
(1)(A)成分と(B)成分とを(A)成分が溶融しない温度条件下で混合する工程。
(2)(1)工程で得られた(A)成分と(B)成分からなる混合物を、(A)成分の溶融温度以上の加熱条件下で溶融混練する工程。 - (A)成分がペレット状または粉状である請求項1記載の製造方法。
- (1)工程を50〜200℃の加熱条件下で行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- (A)成分の配合割合が95〜20重量%であり、(B)成分の配合割合が5〜80重量%である請求項1記載の製造方法。
- (A)成分がポリオレフィン系樹脂である請求項1記載の製造方法。
- (B)成分が、25℃における粘度が50万センチストークス以上のオルガノポリシロキサンである請求項1記載の製造方法。
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