JP3592839B2 - 電解質板、セラミック補強材及びセラミック焼結体の各製造方法 - Google Patents

電解質板、セラミック補強材及びセラミック焼結体の各製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば溶融炭酸塩型燃料電池に用いられる電解質板、セラミック補強材及びセラミック焼結体の各製造方法に係わり、特に、セラミック補強材を均一分散でき、機械的強度を向上し得る電解質板、セラミック補強材及びセラミック焼結体の各製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、溶融炭酸塩型燃料電池としては、電解質板にセラミック多孔質体又はセラミック焼結体を用いることが知られている。
図9はこの種の溶融炭酸塩型燃料電池の基本構成例を示す概略図である。この溶融炭酸塩型燃料電池は、導電性を有する一対の電極である燃料極(以下、アノードと称する)1と酸化剤極(以下、カソードと称する)2との間には、混合アルカリ炭酸塩からなる電解質を保持した電解質板3が挟み込まれている。
【0003】
この電解質板3を高温下で溶融させ、アノード1にハウジング4aの供給口5を通じて燃料ガス(H 、CO )を、またカソード2にハウジング4bの供給口6を通じて酸化剤ガス(空気、CO )をそれぞれ供給すると、アノード1では下記(1)式の反応が、カソード2では下記(2)式の反応がそれぞれ生じ、ハウジング4aの排気口7から排出ガス(CO 、H O)が、ハウジング4bの排気口8から排出ガス(N )がそれぞれ排出される。
【0004】
+CO 2− → H O+CO +2e (1)
1/2 O +CO +2e → CO 2− (2)
この種の溶融炭酸塩型燃料電池に使用される電解質板3は、基本的には、高温運転時に液体となる電解質の流出を防止するための保持材粒子、及び昇降温時に電解質板3の割れ発生や潰れを防止するための補強材粒子及び補強材繊維から構成された多孔質体に、混合アルカリ炭酸塩からなる電解質を含浸させたものである。
【0005】
このアルカリ炭酸塩は、通常、Li CO 、K CO 、Na CO の3種のうちの、2種または3種の混合塩の形で使用される。
また、保持材粒子としては、一次粒子径がサブミクロン(例えば0.05μm以上0.2μm以下)であるα−LiAlO ,β−LiAlO ,γ−LiAlO 等の微粉末が使用される。
【0006】
補強材粒子としては、平均粒径が数十ミクロン(例えば15μm)以上の粗粒が用いられ、補強材繊維としては、アスペクト比(L/D、L:繊維長、D:繊維径)が約100のものが用いられる。
【0007】
ところで、このような電解質板3は、炭酸イオン(CO 2−)の移動を媒介するだけでなく、アノード1及びカソード2間の反応ガスの直接混合(ガスクロスオーバー)を阻止するためのガス透過障壁層としても機能する。なお、この機能を果たすには、電解質板3中に電解質が十分に保持されることが必要となる。
【0008】
一方、電解質板3からの電解質の流出(電解質ロス)は、内部抵抗の増大を招く上、電解質板3の割れや潰れを生じ、これがガスクロスオーバーの発生原因となる。
【0009】
このような電解質板3の割れや潰れは、燃料電池の起動時及び昇降温時での熱変化により、電解質板3を構成する多孔質体の微細構造が変化して生じる。故に、現在の溶融炭酸塩型燃料電池には、実用化に向けて電解質板3の割れや潰れの発生防止が強く要請されている。
【0010】
現在、このような要請に基づき、適切な微細構造を持つ多孔質体を得る方法として、予め保持材及び補強材粉末、補強材繊維を含むスラリーを、ドクターブレード法でシート化して多孔質体(マトリックス)を形成した後に、この多孔質体に混合アルカリ炭酸塩からなる電解質を含浸させるマトリックス法が多く採用されており、これまでに、補強材粒子径、繊維径、繊維長を限定する方法が試みられてきている。
【0011】
しかしながら、本発明者は、補強材粒子径、繊維径、繊維長等の形態以外に、形成された多孔質体中の補強材の分散状態及び存在形態によって電解質板3に発生する割れの度合いが異なり、多孔質体中の補強材の凝集等による不均一分散状態によって電解質板3に割れが発生し、これが原因でガスクロスオーバーの発生を招くものと考えている。
【0012】
また、補強材として、アスペクト比50〜1000程度の繊維又は長さ1mm以上の繊維については、特に当該多孔質体に添加する状態で既に強固な凝集形態を有しており、これが多孔質体中の補強材の均一分散状態を阻害する要因になっていると考えている。
【0013】
また一方、割れや潰れの発生を阻止可能な電解質板3として、セラミック焼結体が期待されている。これについて説明する。
セラミック焼結体としては、例えば窒化ケイ素セラミックスがある。この窒化ケイ素セラミックスは、高い破壊強度と、良好な耐熱衝撃性という他のセラミックスにない優れた特性を備えている。しかし、窒化ケイ素セラミックスを機械部品、構造用材料として実用化するには、セラミックス特有の弱点である脆いという性質を克服することが不可欠である。材料の脆さは、破壊靭性値にて評価可能である。窒化ケイ素系セラミックスは、他のセラミックスに比べ、比較的高い破壊靭性値をもつものの、実用化にはより一層の高靭性化が望まれている。
【0014】
この種の高靭性化の技術としては、窒化ケイ素マトリックス中にウィスカーや繊維などの補強材を複合させる、いわゆる繊維添加法がある。しかしながら、この繊維強化方式は、破壊靭性が若干向上される場合もあるが、未だ不十分な結果しか得られていない。これは、窒化ケイ素マトリックス中に補強材繊維を均一に分散させることが困難であることによる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の溶融炭酸塩型燃料電池においては、形成された多孔質体中の補強材の分散状態及び存在形態によって電解質板3に発生する割れの度合いが異なり、多孔質体中の補強材の凝集等による不均一分布状態によって電解質板3に割れが発生し、これによりガスクロスオーバーが発生する恐れがあるという問題がある。
【0016】
また、セラミック焼結体にも同様の問題が存在している。
本発明は上記実情を考慮してなされたもので、ガスクロスオーバーの発生を阻止するため、セラミック補強材の凝集を阻止して均一分散させ、機械的強度を向上し得る電解質板、セラミック補強材及びセラミック焼結体の各製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1に対応する発明は、繊維状又は粒子状の複数のセラミック部材と、前記各セラミック部材の表面に設けられ、有機溶媒への分散の際に前記有機溶媒の膨潤により他のセラミック部材との凝集を阻止するための潤滑剤膨潤層となる表面潤滑剤層とを備えたセラミック補強材の製造方法であって、前記各セラミック部材の表面に表面潤滑剤を浸漬処理し、前記表面潤滑剤層を設ける工程を含んだセラミック補強材の製造方法である。
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応するセラミック補強材の製造方法において、前記表面潤滑剤層を設ける工程の後に、前記各セラミック部材にその凝集を解くための振動処理を与える工程を含んだセラミック補強材の製造方法である。
請求項3に対応する発明は、請求項1又は請求項2に対応するセラミック補強材の製造方法において、前記浸漬処理に代えて、噴霧処理を用いたセラミック補強材の製造方法である。
【0018】
また、請求項に対応する発明は、電解質を保持するための粉末状の複数の保持材及び繊維状又は粒子状の複数の補強材からなる多孔質体に混合アルカリ炭酸塩からなる電解質を含浸させてなり、前記各補強材の表面に他の補強材との凝集を阻止するための潤滑剤膨潤層を備えた電解質板の製造方法であって、前記各補強材の表面に表面潤滑剤を浸漬処理し、表面潤滑剤層を設ける工程と、前記表面潤滑剤層を設ける工程の後に、前記各補強材にその凝集を解くための振動処理を与える工程と、前記振動処理を与える工程の後に、前記各補強材を前記各保持材及び有機バインダと有機溶媒の混合下で分散しながら混合し、前記有機溶媒の膨潤により前記表面潤滑剤層を前記潤滑剤膨潤層にする工程とを含んだ電解質板の製造方法である。
請求項5に対応する発明は、請求項4に対応する電解質板の製造方法において、前記浸漬処理に代えて、噴霧処理を用いた電解質板の製造方法である。
【0019】
さらに、請求項6に対応する発明は、電解質を保持するための粉末状の複数の保持材、及び繊維状の複数の補強材からなり、前記各保持材及び前記各補強材がセラミックである多孔質体のセラミック焼結体の製造方法であって、前記各補強材の表面に表面潤滑剤を浸漬処理し、他の補強材との凝集を阻止するための表面潤滑剤層を設ける工程と、前記表面潤滑剤層を設ける工程の後に、前記各補強材にその凝集を解くための振動処理を与える工程と、前記振動処理を与える工程の後に、前記各補強材を前記各保持材及び有機溶媒の混合下で分散しながら混合し、前記有機溶媒の膨潤により前記表面潤滑剤層を潤滑剤膨潤層にする工程と、前記混合により得られたスラリーを乾燥させた後、焼結する工程とを含んだセラミック焼結体の製造方法である。
請求項7に対応する発明は、請求項6に対応するセラミック焼結体の製造方法において、前記浸漬処理に代えて、噴霧処理を用いたセラミック焼結体の製造方法である。
【0023】
作用)
従って、請求項1に対応する発明は以上のような手段を講じたことにより、各セラミック部材の表面に設けられた表面潤滑剤層が、他のセラミック部材との凝集を阻止するので、スラリー分散の際に、各セラミック部材を均一に分散できるため、多孔質体又は焼結体からなる電解質板の機械的強度の向上を図ることができ、ガスクロスオーバーの阻止を期待することができる。
また、各セラミック部材の表面に表面潤滑剤を浸漬処理し、表面潤滑剤層を設けることができるので、セラミック補強材を容易且つ確実に製造することができる。
さらに、請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する表面潤滑剤層を設けた後に、各セラミック部材にその凝集を解くための振動処理を与えるので、請求項1に対応する作用と同様の作用に加え、セラミック部材をより一層、均一に分散させることができる。
また、請求項3に対応する発明は、請求項1,2に対応する浸漬処理に代えて、噴霧処理を用いているので、請求項1,2に対応する作用と同様の作用を奏することができる。
【0024】
また、請求項に対応する発明は、電解質板を構成する多孔質体にて、各補強材の表面に設けられた表面潤滑剤層が、他の補強材との凝集を阻止するので、スラリー分散の際に、各補強材を均一に分散できるため、多孔質体からなる電解質板の機械的強度を向上でき、ガスクロスオーバーの発生を阻止することができる。
また、請求項5に対応する発明は、請求項4に対応する浸漬処理に代えて、噴霧処理を用いているので、請求項4に対応する作用と同様の作用を奏することができる。
【0025】
さらに、請求項に対応する発明は、例えば電解質板を構成する焼結体にて、各補強材の表面に設けられた表面潤滑剤層が、他の補強材との凝集を阻止するので、スラリー分散の際に、各補強材を均一に分散できるため、焼結体の機械的強度を向上でき、電解質板に適用した場合にはガスクロスオーバーの発生を阻止することができる。
また、請求項7に対応する発明は、請求項6に対応する浸漬処理に代えて、噴霧処理を用いているので、請求項6に対応する作用と同様の作用を奏することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るセラミック多孔質体からなる電解質板の適用された溶融炭酸塩燃料電池の概略構成を示す斜視図であり、図2はこの溶融炭酸塩燃料電池のスタック発電要素部分を拡大して示す斜視図である。この溶融炭酸塩型燃料電池は、アノード11、カソード12、及びアノード11とカソード12との間に挟み込んで配置され、混合アルカリ炭酸塩を電解質として保持する電解質板13を備えている。これらアノード11、カソード12及び電解質板13が単位セルとされ、複数の単位セルがセパレータ14aを挟んで積層される。
【0031】
電解質板13上面に配置されたアノード11の対向する一対の縁部は、電解質板13の縁部から所望距離隔てて内側に位置し、かつアノード11が存在しない電解質板13の両縁部とセパレータ14との間には、エッジシール板15aが配置される。
【0032】
一方、電解質板13下面に配置されたカソード12のエッジシール板15aと直交する一対の縁部は、電解質板13の縁部から所望距離隔てて内側に位置され、かつカソード12が存在しない電解質板13の両縁部とセパレータ14bとの間には、エッジシール板15bが配置される。
【0033】
アノード11、セパレータ14a及びエッジシール板15aで区画された空間(燃料ガス流通空間)には、集電板としての導電性を有する孔開き板16a、波板17aが、アノード11側から順次積層される。
【0034】
同様に、カソード12、セパレータ14b及びエッジシール板15bで区画された空間(酸化剤ガス流通空間)には、集電板としての導電性を有する孔開き板16b、波板17bが、カソード12側から順次積層される。
【0035】
このような複数の単位セルがセパレータ14を挟んで積層されたスタック発電要素の4つの側面には、枠状のフランジ18を有するマニホールド19がそれぞれ配置される。
【0036】
また、スタック発電要素の4つの側面とマニホールド19とフランジ18との間には、それぞれ枠状のマニホールドシール板20が介在して設けられる。
燃料ガス流通空間が表出するスタック発電要素の側面に対応するマニホールド(図示せず)には、燃料ガス21を供給するための供給管22が取付けられ、供給管22と反対側のマニホールド19には、ガス排出管23が取付けられる。
【0037】
同様に、酸化剤ガス流通区間が表出するスタック発電要素の側面に対応するマニホールド(図示せず)には、酸化剤ガス24を供給するための供給管25が取付けられ、供給管25と反対側のマニホールド19には、ガス排出管26が取付けられる。
【0038】
ここで、アノード11、カソード12としては、例えば、ニッケル又はニッケルベースアロイの多孔質焼結体から形成可能である。
セパレータ14a、セパレータ14b、エッジシール15a、エッジシール15b、孔開き板16a、孔あき板16b、波板17a及び波板17bは、例えば、ステンレス鋼から形成可能である。
【0039】
燃料ガス21としては、例えば水素(H )と二酸化炭素(CO )との混合ガス等が使用可能である。
一方、電解質板13は、保持材及び補強材からなる気孔率40〜65%の多孔質体に、溶融状態の電解質を含浸させることにより、製造される。なお、補強材は、図3又は図4に示すように、表面が表面潤滑剤層にて覆われている。
【0040】
次に、以上のように構成された溶融炭酸塩型燃料電池に適用されたセラミック多孔質体からなる電解質板13の製造方法及び作用を説明する。
(製造方法)
電解質板13の製造方法について図5及び図6に示す補強材の製造工程を参照しながら説明する。
【0041】
始めに、エタノール溶剤中に表面潤滑剤が添加され、この表面潤滑剤が濃度を可能な限り均一とするようにエタノール溶剤中に溶解されることにより(図中、均一溶液処理)、表面潤滑剤溶液が調整される。
【0042】
調整された表面潤滑剤溶液は、例えば長さ3mmの補強材繊維の表面に浸漬工程又は噴霧工程によりコーティングされ、しかる後、この補強材繊維は乾燥処理される。次に、この補強材繊維は振動フルイにより解繊処理される。同様にして、表面潤滑剤溶液のコーティング、乾燥及び解繊処理が補強材粒子に施される。
【0043】
なお、表面潤滑剤のコーティング処理後に補強材繊維に解繊処理を施し、同様に表面潤滑剤のコーティング処理後に補強材粒子に解粒処理を施したことにより、多孔質体中に補強材を均一に分散させることができる。例えば、これら補強材繊維及び補強材粒子をSEM(scanning electron microscope)により観察したところ、凝集した補強材繊維、補強材粒子は解けていることが確認された。なお、図3にこの補強材繊維の外観を断面層構造と共に示し、また、図4に補強材粒子の外観及び断面層構造を示した。
【0044】
次に、これら補強材繊維及び補強材粒子は、保持材粉末及び有機バインダと有機溶媒の混合下で分散しながら混合される。なお、分散過程は、溶媒及び表面潤滑剤の種類により、図7(a)〜(c)のいずれか又はこれらの組合せとなる。
【0045】
混合により調整されたスラリーは、ドクターブレード法によりグリーンシートに成形された後に脱脂され、所定の気孔率を有する多孔質体に成形される。この多孔質体に、混合アルカリ炭酸塩からなる溶融された電解質が含浸されることにより、電解質板13が製造される。
【0046】
なお、このような電解質板13の製造には、例えば以下の材料が使用可能である。
[表面潤滑剤]…ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、テフロン、ナイロン、アクリル又はシリコン系樹脂等。
[補強材繊維]…Al 繊維(長さ3mm、径10μm;アスペクト比=約300)、リチウムアルミネート繊維、ジルコニア繊維又はリチウムジルコニウム繊維等。
[補強材粒子]…Al 粒子、リチウムアルミネート粒子、ジルコニア粒子又はリチウムジルコニウム粒子等。
[保持材粉末]…γ−LiAlO (比表面積10m /g)
[有機バインダ]…表面潤滑剤、ポリビニルブチラール、フタル酸ジブチル、アクリル樹脂等又はこれらの数種類。
[有機溶媒]…エチルアルコール、n−ブタノール又はメチルエチルケトン等。
[電解質(混合アルカリ炭酸塩)]…炭酸リチウム(Li CO )と炭酸カリウム(K CO )の混合物、Li CO と炭酸ナトリウム(Na CO )の混合物、あるいはLi CO とK CO とNa CO の混合物等。なお、この種の混合物にアルカリ土類金属炭酸塩を添加してもよい。
(電解質板13の作用)
前述した通りに製造された電解質板13と、ニッケルベースアロイからなるアノード及びカソードと、ステンレス鋼からなるセパレータ、エッジシール板、孔開き板、波板とを用い、前述した図1及び図2に示す溶融炭酸塩型燃料電池が組立てられる。
【0047】
次に、アノード11には、燃料ガス21としてH とCO との混合ガスが供給され、一方、カソード12には、酸化剤ガス24として空気とCO との混合ガスが供給される。この状態で、所定の負荷条件で3000時間の発電試験が行なわれた。なお、発電試験中には10回の熱サイクルが印加された。
【0048】
発電試験終了後、アノード11には、上記燃料ガス21にガスクロスリーク検出ガス(He)を加えた混合ガスが供給され、一方、カソード12には上記酸化剤ガス24が供給される。このとき、カソード12の出口側のガス中に含まれるHe濃度を測定し、ガスクロスリーク量を求めた。
【0049】
その結果、ガスクロスリーク量は、出口側のガス中の1.5%以下であった。すなわち、補強材の表面に表面潤滑剤層を設けてなるセラミック多孔質体から製造された電解質板13は、長時間の運転及び熱サイクルに充分耐え得ることを示した。
【0050】
上述したように第1の実施の形態によれば、各補強材の表面に設けられた表面潤滑剤層が、他の補強材との凝集を阻止するので、スラリー分散の際に、各補強材を均一に分散できるため、多孔質体からなる電解質板13の機械的強度を向上でき、ガスクロスリーク量を1.5%以下としたように、ガスクロスオーバーの発生を抑制することができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、表面潤滑剤層の形成方法として浸漬処理又は噴霧処理を用いることにより、本発明に係る補強材を容易且つ確実に製造することができる。
【0052】
さらに、本実施の形態によれば、表面潤滑剤層を設けた後に、振動フルイを用いて解繊処理や解粒処理を行なうため、本発明に係る補強材をより一層、均一に分散させることができる。
【0053】
なお、本実施の形態とは異なる手順として、表面潤滑剤のコーティング処理前に解繊処理を行なうと、繊維が飛散したり、処理後の繊維の再凝集が確認されており、好ましくない。補強材粒子の場合にも同様である。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るセラミック焼結体からなる電解質板について図1乃至図6を用いて説明するが、図1乃至図6と同一部分についてはその詳しい説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0054】
すなわち、本実施形態に係る電解質板13は、第1の実施形態のセラミック多孔質体からなる電解質板13とは異なり、セラミック焼結体で構成されている。
(製造方法)
この電解質板(セラミック焼結体)13は、具体的には次のように製造される。
【0055】
まず、前述同様に、図5又は図6に示す手順にて補強材繊維の表面に表面潤滑剤層が設けられ、本実施形態に係る補強材繊維が得られる。次に、得られた補強材繊維と、窒化ケイ素粉末及び焼結助剤粉末とが溶媒中にて浸漬・混合されてスラリーが得られる。このスラリーは乾燥された後、焼結され、もって、セラミック焼結体が製造される。
【0056】
なお、これらの材料には、例えば以下のものが使用可能である。
[補強材繊維]…炭化ケイ素の短繊維や長繊維(いわゆるSiCウィスカーやSiCファイバー)。
[窒化ケイ素粉末]…α型の結晶を多く含むものが好ましい。
[焼結助剤]…イットリア、チタニア、アルミナ、マグネシア又はこれらの複合酸化物。
[溶媒]…水や各種有機溶媒。
(電解質板13の作用)
次に、以上のように製造されたセラミック焼結体について、破壊強度、破壊エネルギー及び破壊靭性値(KIC)の項目からなる機械的特性を測定した。
【0057】
その結果、破壊強度、破壊エネルギー、破壊靭性値(KIC)は従来よりも高い値を示した。
すなわち、表面潤滑剤層を有する補強材繊維と、窒化ケイ素粉末及び焼結助剤とを溶媒中で、浸漬、混合、乾燥することにより、補強材繊維の均一な分散状態を保持することができ、よって、この均一な分散状態をもつ混合粉末が焼結されてなるセラミック焼結体は、窒化ケイ素と炭化ケイ素繊維との複合効果が顕著となって、繊維強化の機構が充分に作用するため、優れた機械的特性を奏することができる。
【0058】
従って、このセラミック焼結体を電解質板13として溶融炭酸塩型燃料電池に用いることにより、割れ発生を低減できると共に、割れ発生に伴うガスクロスオーバー発生を抑制することができる。
【0059】
上述したように第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができ、さらに、電解質板13がセラミック焼結体であることから、より一層、破壊強度、破壊エネルギー、破壊靭性値からなる機械的強度を向上させることができる。
(他の実施の形態)
なお、上記第1の実施の形態では、予め電解質板13を作成してから燃料電池を組立てた場合を説明したが、これに限らず、次の(1)〜(2)のように燃料電池を組立てた後に電解質板13を製造しても、本発明を同様に実施して同様の効果を得ることができる。
(1)前述した通りに作成した多孔質体を、あらかじめ混合アルカリ炭酸塩からなる電解質を含浸させたアノード11と無含浸のカソード12との間に配置し、これを前述の図2に示した単位セルとし、複数の単位セルをセパレータを挟んで積層してスタック発電要素とした後、この発電要素の4つの側面にマニホールドを取り付けて燃料電池を組み立てる。
(2)その後、作動温度まで昇温させて、上記電解質板13の気孔部分に、上記アノード11中の溶融した混合アルカリ炭酸塩を拡散、充填して、電解質板13を製造する。
その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0060】
【実施例】
(第1の実施例)
(実施例1;セラミック多孔質体)
まず、表面潤滑剤のポリビニルブチラールをエタノール溶剤中で溶解することにより、表面潤滑剤溶液を1リットル調製した。
【0061】
次に、補強材の表面に表面潤滑剤をコーティングするため、補強材として、アスペクト比が約300となる繊維長3mm,繊維径10μmのAl 繊維50gを、上記表面潤滑剤溶液に対して浸漬処理した後、50℃で2時間の乾燥処理を行なった。
【0062】
次に、この補強材に対して、振動フルイによる解繊処理を施し、表面潤滑剤層を設けたAl 繊維を得た。そして、このように得た補強材をSEMにより観察したところ、凝集した繊維は解けていることが確認された。
【0063】
次に、保持材粉末として、比表面積10m /gのγ−LiAlO をアルミナポットに入れ、エタノール、ポリビニルブチラール、フタル酸ジブチルと共に20時間湿式混合した後、補強材として上記表面潤滑剤層を設けたAl 繊維を、保持材:補強剤=7:3の重量比となるように添加した後に5時間混合し、多孔質体用スラリーを調製した。
【0064】
次に、調整したスラリーをキャリアシート上に展開し、厚さ0.5mmのマトリックスグリーンシートを成形した後、脱脂してセラミック多孔質体を作成した。
【0065】
さらに、電解質としての混合アルカリ炭酸塩(Li CO :62mol%、K CO :38mol%)を、上記セラミック多孔質体に550℃まで昇温して溶融含浸することにより、厚さ0.5mmの電解質板を作成した。
(比較例1)
実施例1の材料及び手順を用いたが、実施例1とは異なり、表面潤滑剤層の省略された補強材(Al 繊維)を添加して多孔質体用スラリーが調整され、多孔質体が作成されている。
【0066】
すなわち、比較例1は、実施例1から表面潤滑剤のコーティング処理までを省略し、表面潤滑剤層の無い補強材を用いて製造された電解質板である。
(実施例1の作用)
次に、以上のように得られた実施例1の電解質板13と、ニッケルベースアロイからなるアノード11及びカソード12と、ステンレス鋼からなるセパレータ14a,14b、エッジシール板15a,15b、孔開き板16a,16b、波板17a,17bとを用いて、前述した図1及び図2に示す溶融炭酸塩型燃料電池を組み立てた。
【0067】
次に、アノード11には、燃料ガス21としてのH 80 vol%とCO 20 vol%との混合ガスが供給され、一方、カソード12には、酸化剤ガス24としての空気70 vol%とCO 30 vol%との混合ガスが供給される。この状態にて、700℃で150mA/cm の負荷条件で発電試験が行なわれた。
【0068】
この発電試験は3000時間行なわれ、その間に10回の熱サイクルが印加された。
発電試験終了後、アノード11には、上記燃料ガス21にガスクロスリーク検出ガスとしてのHeを10 vol%加えた混合ガスが供給され、一方、カソード12には、上記酸化剤ガス24が供給される。このとき、カソード12の出口側のガス中に含まれるHe濃度を測定し、ガスクロスリーク量を求めた。また、同様にして比較例1の電解質板についてもガスクロスリーク量を求めた。これらの結果は、ガスクロスリーク量と熱サイクル数との関係として図8に示される。
【0069】
図8に示すように、実施例1の表面潤滑剤層を有する補強材を用いた電解質板13では、3000時間中に10回の熱サイクルが印加された発電試験の後でも、ガスクロスリーク量がカソード12の出口側のガス流量に対して1.5%以下に収まり、もって、長時間の運転及び熱サイクルに耐え得ることを示した。
【0070】
一方、比較例1の表面未処理の補強材を用いた電解質板では、3000時間中に5回の熱サイクルを印加した発電試験の後にて、ガスクロスリーク量がカソード12の出口側のガス流量に対して4%以上に上昇し、ガスクロスオーバーが著しく生じてしまった。
【0071】
上述したように第1の実施例によれば、電解質板13の多孔質体の補強に用いる多孔質体用補強材の表面に表面潤滑剤層を設けることにより、ガスクロスリーク量を抑えることができる。
【0072】
これにより、電解質板13の割れ発生を低減し、割れ発生に伴なうガスクロスオーバーの発生を抑制することができる。
(第2の実施例)
(実施例2;セラミック焼結体)
窒化ケイ素粉末として平均粒径0.7μmでα型を主成分とし、焼結助剤として平均粒径0.5μmのアルミナ及び平均粒径0.5μmのイットリア、繊維としては、実施例1と同様な方法で表面潤滑剤層を設けた長さ10〜1000μmのスラリー分散用炭化ケイ素繊維を用いた。まず、溶媒として、n−ブタノールを用い、ゴムライニングボールミルにより、窒化ケイ素粉末100g、イットリア5g、アルミナ5gを約24時間混合した。次に、得られた混合粉末と炭化ケイ素繊維25gを湿式混合し、約40℃で乾燥させて混合粉末を得た。この粉末を成形した後、1750℃、1時間の条件で焼結することにより、セラミック焼結体(電解質板13)を製造した。
(比較例2)
実施例2の材料及び手順を用いたが、実施例2とは異なり、表面潤滑剤層の省略された補強材(炭化ケイ素繊維)を湿式混合して得られる混合粉末により、セラミック焼結体を得ている。
【0073】
すなわち、比較例2は、実施例2から表面潤滑剤のコーティング処理までを省略し、表面潤滑剤層の無い補強材を用いて製造されたセラミック焼結体である。
(実施例2の作用)
表1は、実施例2及び比較例2の各々の焼結体に関し、破壊強度、破壊エネルギー及び破壊靭性値の測定結果を示している。なお、破壊強度は、JIS規格に基づいて3点曲げにより求めた。また、破壊靭性値(KIC)は、破壊強度測定用の試験片と同一サイズの試験片を用い、ダイヤモンドカッターで試験片中央部に幅0.1mm、深さ0.75mmのU溝を形成し、スパン30mm、クロスヘッドスピード0.75mm/minの条件で常温において測定し、次式に従って求めた。
IC=Yσa1/2
但し、Y;形状因子、σ;曲げ強度、a;亀裂長さである。
また、破壊エネルギーは、この破壊靭性試験の際に得られる応力−歪み曲線の面積と試験片破面の断面積から計算した。
【0074】
【表1】
Figure 0003592839
【0075】
表1に示すように、実施例2の焼結体は、比較例2よりも、破壊強度、破壊エネルギー、破壊靭性値が向上しており、優れた機械的特性を有している。
すなわち、実施例2の焼結体では、表面潤滑剤層を設けた補強材繊維を用いることにより、窒化ケイ素マトリックス中に炭化ケイ素繊維を均一分散できたため、窒化ケイ素と炭化ケイ素繊維との複合効果を顕著にでき、高靭性化を実現させることができた。
【0076】
上述したように第2の実施例によれば、電解質板13の焼結体の補強に用いる焼結体用補強材の表面に表面潤滑剤層を設けることにより、焼結体中にて補強材を均一に分散できるため、機械的特性を向上させることができる。
これにより、電解質板13の割れ発生を低減し、割れ発生に伴うガスクロスオーバーの発生を抑制することができる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように発明によれば、ガスクロスオーバーの発生を阻止するため、セラミック補強材の凝集を阻止して均一分散させ、機械的強度を向上し得る電解質板、セラミック補強材及びセラミック焼結体の各製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るセラミック多孔質体からなる電解質板の適用された溶融炭酸塩燃料電池の概略構成を示す斜視図
【図2】同実施の形態における溶融炭酸塩燃料電池のスタック発電要素部分を拡大して示す斜視図
【図3】同実施の形態における補強材繊維の外観を断面層構造と共に示す模式図
【図4】同実施の形態における補強材粒子の外観及び断面層構造を示す模式図
【図5】同実施の形態における補強材の製造工程を説明するための流れ図
【図6】同実施の形態における補強材の製造工程を説明するための流れ図
【図7】同実施の形態における補強材の分散過程を示す模式図
【図8】本発明の第1の実施例に係る電解質板に関してガスクロスリーク量と熱サイクル数との関係を比較例と比較して示す特性図
【図9】一般的な溶融炭酸塩型燃料電池の基本構成例を示す概略図
【符号の説明】
11…アノード(燃料極)
12…カソード(空気極)
13…電解質板
14a,14b…セパレータ
15a,15b…エッジシール板
16a,16b…孔開き板
17a,17b…波板
18…フランジ
19…マニホールド
20…マニホールドシール板
21…燃料ガス
22,25…供給管
23,26…ガス排出管
24…酸化剤ガス

Claims (7)

  1. 繊維状又は粒子状の複数のセラミック部材と、
    前記各セラミック部材の表面に設けられ、有機溶媒への分散の際に前記有機溶媒の膨潤により他のセラミック部材との凝集を阻止するための潤滑剤膨潤層となる表面潤滑剤層と
    を備えたセラミック補強材の製造方法であって、
    前記各セラミック部材の表面に表面潤滑剤を浸漬処理し、前記表面潤滑剤層を設ける工程を含んだことを特徴とするセラミック補強材の製造方法。
  2. 請求項に記載のセラミック補強材の製造方法において、
    前記表面潤滑剤層を設ける工程の後に、前記各セラミック部材にその凝集を解くための振動処理を与える工程を含んだことを特徴とするセラミック補強材の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のセラミック補強材の製造方法において、
    前記浸漬処理に代えて、噴霧処理を用いたことを特徴とするセラミック補強材の製造方法。
  4. 電解質を保持するための粉末状の複数の保持材及び繊維状又は粒子状の複数の補強材からなる多孔質体に混合アルカリ炭酸塩からなる電解質を含浸させてなり、前記各補強材の表面に他の補強材との凝集を阻止するための潤滑剤膨潤層を備えた電解質板の製造方法であって、
    前記各補強材の表面に表面潤滑剤を浸漬処理し、表面潤滑剤層を設ける工程と、
    前記表面潤滑剤層を設ける工程の後に、前記各補強材にその凝集を解くための振動処理を与える工程と、
    前記振動処理を与える工程の後に、前記各補強材を前記各保持材及び有機バインダと有機溶媒の混合下で分散しながら混合し、前記有機溶媒の膨潤により前記表面潤滑剤層を前記潤滑剤膨潤層にする工程と
    を含んだことを特徴とする電解質板の製造方法。
  5. 請求項4に記載の電解質板の製造方法において、
    前記浸漬処理に代えて、噴霧処理を用いたことを特徴とする電解質板の製造方法。
  6. 電解質を保持するための粉末状の複数の保持材、及び繊維状の複数の補強材からなり、前記各保持材及び前記各補強材がセラミックである多孔質体のセラミック焼結体の製造方法であって、
    前記各補強材の表面に表面潤滑剤を浸漬処理し、他の補強材との凝集を阻止するための表面潤滑剤層を設ける工程と、
    前記表面潤滑剤層を設ける工程の後に、前記各補強材にその凝集を解くための振動処理を与える工程と、
    前記振動処理を与える工程の後に、前記各補強材を前記各保持材及び有機溶媒の混合下で分散しながら混合し、前記有機溶媒の膨潤により前記表面潤滑剤層を潤滑剤膨潤層にする工程と、
    前記混合により得られたスラリーを乾燥させた後、焼結する工程と
    を含んだことを特徴とするセラミック焼結体の製造方法。
  7. 請求項6に記載のセラミック焼結体の製造方法において、
    前記浸漬処理に代えて、噴霧処理を用いたことを特徴とするセラミック焼結体の製造方法。
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