JP3592804B2 - 乾燥こんにゃく及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水,湯で速やかに元に戻り(元の生こんにゃくの状態を再現し)、しかも長期間保存可能な乾燥こんにゃくとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
こんにゃくは、我が国の伝統的な食品の一つであり、特に近年は低カロリーの食物繊維食品として、注目を浴びている。
しかしながら、こんにゃくは、その大部分が水分であり、流通性や保存性に欠けるという問題がある。
すなわち、こんにゃくは常に90数%の水分を保有させておく必要があり、常に水中に保存しておくことが要求されるため、流通時における取扱い性(流通性)に劣ると共に、保存条件や保存期間によっては腐敗等のおそれがあり、保存性に劣るという問題がある。
【0003】
一方、我が国の寒冷地では、こんにゃくを外気等にさらすことによって自然凍結させ、これを解凍した後、乾燥させた凍こんにゃくが知られている。
しかしながら、この凍こんにゃくは、凍結・乾燥によって本来の弾性を失い、スポンジ状の組織を有するものであって、不可逆性の変性を生じたものであるため、食用としては不適当なものである。
【0004】
また、通常のこんにゃくを乾燥により水分を5〜40%の範囲にして乾燥こんにゃくとすることが提案されている(特開昭61−195664号公報)。
同様にこんにゃくを調味液で煮沸した後、水分が10〜30%の範囲となるように乾燥させて味付乾燥こんにゃく食品とすることも提案されている(特開昭58−60966号公報)。
しかしながら、これらはいずれもこんにゃくの乾燥物を菓子やおつまみ等としてそのまま食するものであって、生こんにゃくそのものの持つ独特の食感を有するものではなかった。
【0005】
そこで、こんにゃく芋又はこんにゃくマンナンに対して所量の澱粉、澱粉誘導体、小麦粉、グルテン、又は大豆タンパク質等を択一的に添加混練し、常法に従ってゲル化させて出来たこんにゃくを凍結させた後、解凍し、さらに得られた解凍こんにゃくを乾燥させることにより乾燥こんにゃくを製造する方法が提案されている(特開昭62−55052号公報)。
この方法によれば、水戻しすることにより、食用に適するこんにゃくが得られるというものの、従来のこんにゃくとは物性の異なる新しいタイプの物性、即ち歯切れ、歯応え等のテクスチュアを示すこんにゃくであり(その発明の効果には、鯨肉を食べているような弾性と粘りある歯応えがあると記載されている。)、しかも水戻しに長時間を要するという問題がある(実施例によれば、30℃の水に15時間浸漬している。)。
【0006】
また、こんにゃく精粉1重量部とデンプン3〜7重量部とを含む水分散ゲルをゲル化したデンプン−こんにゃくマンナン含水ゲルを乾燥してなるデンプンとこんにゃくマンナンを主成分とする乾燥ゲルが提案されている(特開昭62−259550号公報)。
この発明によれば、そのまま食することのできるこんにゃくが得られるというものの、水を加えて煮沸する必要があり、しかも本来の生こんにゃくと類似の物性を有するというよりは寧ろ米飯に類似する食感を有するものであった。
【0007】
さらに、こんにゃく精粉の加水膨潤物とセルロース−澱粉複合体、及び糊化澱粉を混練した後、アルカリ処理及び加熱処理によりゲル化物を得、次いでこれを凍結した後、乾燥することにより、乾燥食品素材を得る方法が提案されている(特開平4−94664号公報)。
この方法によれば、注湯により速やかに復元する乾燥食品素材が得られるものの、90℃程度の熱水を用いる必要があり、しかも従来のこんにゃく利用食品にはない内部組織構造を有し、こんにゃくゲルが変性しているため特有の弾力感をないというものであって、食感がこんにゃくではなく、米飯に酷似したものであった。
【0008】
そこで、こんにゃくにブドウ糖,ショ糖,麦芽糖,乳糖,果糖等の少糖類の内一種類又は数種類を含浸させた後に乾燥することにより、乾燥こんにゃくを製造する方法が提案されている(特開平4−8257号公報)。
この方法は、以上に述べた従来技術の中で唯一、乾燥状態のままで一年間常温で保存可能であり、しかも湯で数分間で戻ることが可能な製品として製品化されているものである。
しかしながら、この方法によれば、水を加えることにより再び元の弾力性を有するこんにゃくに復元できるものの、戻りを早くするために糖の使用量が著しく多く(生こんにゃくに対しては50重量%の糖が必要であり、こんにゃく粉に対しては20倍程度、換言すれば全原料成分の50重量%程度の量の糖が必要である。)、そのため甘味が著しく強く、味の面で本来のこんにゃくとは大きな差異がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の如き従来の欠点を解消し、甘味を抑えつつ、しかも水や湯で戻すことにより、短時間で元の生こんにゃくと同様の食感のものに復元し得る乾燥こんにゃくの製造方法、並びにこのような製造方法により得られる乾燥こんにゃくを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、甘味を抑えるため単純に糖を澱粉で置き換えてしまうと、戻るのに時間がかかるため、糖の使用量を少なくして、澱粉を併用すると共に、さらにゲル化時のpHの幅を限定することにより、甘味を抑えながら、しかも数分間水や湯で戻すことにより、元の生こんにゃくと同様の食感のものに復元し得る乾燥こんにゃくが得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、請求項1記載の本発明は、こんにゃく粉を水に膨潤し、アルカリ性物質を加え、ゲル化し、得られたゲル化物を乾燥させて乾燥こんにゃくを製造するにあたり、ゲル化前に、こんにゃく粉に糖と澱粉を一緒に或いは別々に添加し、次いでpH10.0〜10.9の範囲になるようにアルカリ性物質を加えた後、ゲル化させると共に、前記糖の添加量が全原料成分の2〜15%(w/w)水溶液であり、かつ前記澱粉の添加量が全原料成分の2〜8%(w/w)水溶液であることを特徴とする乾燥こんにゃくの製造方法を提供するものである。
【0012】
次に、請求項5記載の本発明は、上記請求項1記載の方法により得られる乾燥こんにゃくを提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
請求項1記載の本発明では、原料成分として、通常用いられるこんにゃく粉と水の他に、糖と澱粉を用いる。
ここでこんにゃく粉の原料となるこんにゃく芋の種類は特に制限はなく、日本産のこんにゃく( Amorphophallus konjac )のみならず、東南アジア産のムカゴこんにゃくなど、各種のこんにゃく芋を用いることができる。
請求項1記載の本発明では、原料成分として用いるこんにゃく粉としては特に制限はないが、、通常はこんにゃくの製造に常用されているこんにゃく精粉を用いる。ここでこんにゃく精粉とは、こんにゃく芋を短冊状にカットして乾燥した状態の「荒粉」を、粉砕機にかけて粉砕し、軽い粒子からなる、いわゆる「飛び粉」を除去して得られる重い粒子を指す。このようなこんにゃく精粉は、通常、粒径が500〜1,000μm程度のものであり、市販されているものを用いることができる。
【0014】
また、糖としては特に制限はなく、例えば果糖液糖、果糖ぶどう糖、液糖水飴、還元水飴、糖アルコール、麦芽糖、乳糖、果糖、ぶどう糖、砂糖、ショ糖、その他、液糖、粉末糖又はその混合物が挙げられ、これらを単独で、或いは複数用いることができる。
【0015】
次に、澱粉としても種々の澱粉を用いることができ、例えば馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さつまいも澱粉、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、その他、自然作物から抽出された澱粉及びその加工澱粉、又は澱粉を含んだ自然作物の粉末などを使用することができる。これらの中でも馬鈴薯澱粉の加工品が特に好ましい。
なお、請求項1記載の本発明においては、上記原料成分の他に、通常、こんにゃくの製造に使用される他の添加成分、例えばひじき等を使用することができる。
また、本発明は、いわゆるこんにゃくと呼ばれるものの他、こんにゃくゼリー,こんにゃくそばなど、公知のこんにゃく含有食品の乾燥物の製造にも応用することが可能である。
【0016】
請求項1記載の本発明では、ゲル化前に、こんにゃく粉に糖と澱粉を一緒に或いは別々に添加する。
例えば、▲1▼こんにゃく粉に澱粉と糖を添加し、さらに水で膨潤した後、混練しても良いし、或いは▲2▼こんにゃく粉に澱粉を添加し、さらに水で膨潤した後、糖を添加し、混練しても良い。逆に、▲3▼先にこんにゃく粉に糖を添加し、さらに水で膨潤した後、澱粉を添加し、混練しても良い。要は、ゲル化前にこんにゃく粉に糖と澱粉を一緒に或いは別々に添加しておけば良く、添加時期は膨潤の前後を問わないし、また澱粉と糖の添加は一緒であっても良いし、或いは別々であっても良い。
【0017】
ここで糖の添加量は、全原料成分の2〜15%(w/w)水溶液、好ましくは5〜10%(w/w)水溶液である。すなわち、糖の添加量は、水溶液にして、全原料成分の2〜15%(w/w)、好ましくは5〜10%(w/w)である。糖の添加量が、全原料成分の2%(w/w)水溶液未満であると、水や湯での戻り率や戻りのスピードが低下するため好ましくない。一方、糖の添加量が、全原料成分の15%(w/w)水溶液を超えると、こんにゃくとしての食感を保つことが困難になると共に、甘味が強くなるため好ましくない。
【0018】
また、澱粉の添加量は、全原料成分の2〜8%(w/w)水溶液、好ましくは4〜6%(w/w)水溶液である。すなわち、澱粉の添加量は、水溶液にして、全原料成分の2〜8%(w/w)、好ましくは4〜6%(w/w)である。澱粉の添加量が、全原料成分の2%(w/w)水溶液未満であると、戻り率が充分でないため好ましくない。一方、澱粉の添加量が、全原料成分の8%(w/w)水溶液を超えると、こんにゃくとしての食感を保つことが困難になるため好ましくない。
【0019】
なお、こんにゃく粉の使用量は、一般に生こんにゃくの製造に使用されている範囲であれば良く、通常、全原料成分の1.5〜3.5%(w/w)、好ましくは1.8〜3.0%(w/w)である。
【0020】
請求項1記載の本発明においては、以上のように、ゲル化前にこんにゃく粉に糖と澱粉を一緒に或いは別々に添加し、かつ水で膨潤させ、良く混練しておいた後に、アルカリ性物質を加え、ゲル化する。
アルカリ性物質としては、こんにゃくのゲル化に用いられるアルカリ性物質が使用され、特に水酸化カルシウム、炭酸カルシウムが好ましい。
【0021】
さらに、請求項1記載の本発明においては、全原料成分のpHが10.0〜10.9の範囲になるように、上記の如きアルカリ性物質を加えた後、ゲル化させることが必要である。例えば、0.1〜1.0%の石灰水溶液又はこんにゃく凝固可能なアルカリ液を系の2〜10重量%添加して、全体が均一になるように素早く混練する。
ここで全原料成分のpHが10.0未満であると、ゲル強度が不充分となり、こんにゃくの食感が得られなくなるため、好ましくない。一方、全原料成分のpHが10.9を超えると、完全ゲル化してしまい、戻り率が低下するため好ましくない。なお、全原料成分のpHが10.0〜10.9の範囲を逸脱する場合には、少量のアルカリ性物質を添加したり、或いは酸性物質を添加したりして、pH調整を行なえば良い。
混練後は、系内のpH、糖含量、澱粉含量、こんにゃく粉含量が変わらないように(糖や澱粉の分散を避けるため)、水分を含む熱媒体と直接に接触することなく加熱すること、例えば水,湯等に浸漬させることなく加熱すること、が好ましい。
【0022】
加熱方法としては、包材、例えばレトルトパックに入れて加熱したり、或いは金属チューブなどの金属容器に入れて加熱したりする等の方法がある。加熱条件としては、温度が65℃以上、99℃以下となるようにすることが好ましい。ここで65℃未満であるとゲル化せず、一方、99℃を超えると気泡が発生するため、いずれも好ましくない。また、加熱時間は、加熱方法などにより異なり、一義的に定めることは困難であるが、ゾルが加熱設定温度(品温)まで達してから、4分間乃至10分間、加熱温度を保つようにする。
【0023】
このゲル化に際しては、上記のように水分を含む熱媒体と直接に接触することなく加熱すること、例えば水や湯などの水分の不存在下に加熱することが好ましい。このような操作を上記の如き特定のpH条件下に行なうことにより、ゲル化(不完全ゲル化)させる。
ここで水分を含む熱媒体と直接に接触させて加熱すると、糖や澱粉が分散し、ゲル中の糖濃度、澱粉濃度が低くなり、そのため戻りに時間がかかったり、戻り率が低下したりするため好ましくない。
【0024】
上記加熱時に同時に成形を行なうか、或いはゲル化後にカット成形を行なう。
成形後、成形されたゲル化物(すなわち、生こんにゃく)を乾燥させることにより、目的とする乾燥こんにゃくを製造することができる。
乾燥は、水分量が5〜15%の範囲となるように行なえば良く、乾燥温度,乾燥時間,乾燥方法は特に制限はない。通常は熱風乾燥で充分であり、80〜100℃で1〜3時間程度乾燥すれば良い。水分量が5%未満であると、非常に脆く、少しの衝撃で折れ易くなる。一方、水分量が15%を超えると、黴等による腐敗が生じ易くなる。
【0025】
このようにして得られる乾燥こんにゃくは、水や湯に戻すことによって、速やかに生こんにゃくと同様の食感を再現することができる。戻しをより速くするには、戻しに際して、加熱したり、或いは攪拌したりすることが有効である。なお、ここでこんにゃくとは、普通のこんにゃくと、しらたきとを包含するものであることは言うまでもない。
【0026】
請求項5記載の本発明は、このようにして得られた(請求項1記載の方法により得られた)こんにゃくを提供するものである。
【0027】
請求項5記載の本発明の乾燥こんにゃくは、その形状としては特に制限はないが、通常、短冊状又は糸状のものである。但し、必要に応じて、薄いフィルム乃至シート状のものとすることもできる。
短冊状のものの場合、戻しを考慮すると、その厚さが0.5〜3mmのものであることが好ましい。その大きさは特に制限はないが、通常は、復元時の大きさ(約2倍程度に復元する)が、最大、生こんにゃくの大きさ程度であって、最小はいわゆる一口サイズ程度のものである。また、糸状のものの場合、直径が0.5〜4.0mmのものである。
【0028】
【実施例】
以下、実験例及び実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0029】
実験1(ゲル化pHによるゲル強度、戻り率の関係についての検討)
こんにゃく粉含量を最終2.0%(w/w)、澱粉含量を最終4.0%(w/w)に設定して所定量の水で膨潤させた。
膨潤後、最終の糖含量が10.0%(w/w)となるようにマルトース液糖を練り込み、系のpHを0.5%石灰水を用いて、第1表に示す所定値に調整し、均一に混練してから、80℃でゲル化し、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、95℃の温度で2時間乾燥し、水分10%の乾燥糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、水分10%の乾燥状態から、80℃の湯の中に5分間浸漬し、湯に入れる前後の重量比を比較することによって、戻り率の差を比較した。結果を第1表に示す。
また、この湯戻し品を2本使用し、剪断力の測定を行なった。測定機器は、サン科学社製、レオテックスを使用し、プランジャーにはカミソリ刃を使用した。このようにして得られた剪断強度を示すレオメーター値(g)を、ゲル強度として、第1表に示す。
さらに、この湯戻し品の食感を、市販の糸こんにゃくと比較し、市販の糸こんにゃくと同様のものを「良好」とし、これより若干柔らかいものを「多少柔らかい」、さらに柔らかいものを「柔らかい」として第1表に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
第1表の結果によれば、ゲル化pHが10.0以上の場合、ゲル強度が120以上となり、食感も市販の糸こんにゃくに極めて似た良好なものとなることが分かる。
一方、ゲル化pHが10.9は良いが、11.0となると、戻り率が2.0以下に下がることが分かる。
従って、ゲル強度(食感)、戻り率の両方を考慮すると、pHの範囲は10.0〜10.9の間が好ましいことが分かる。
【0032】
実験2(こんにゃくの食感の変化に及ぼす糖含量の検討)
こんにゃく粉含量を最終2.5%(w/w)、馬鈴薯澱粉含量を最終2.0%(w/w)に設定して所定量の水に膨潤させ、膨潤後、最終の糖含量が第2表に示す所定値となるようにマルトース液糖を練り込み、系のpHを水酸化カルシウム0.5%溶液を用いて、pH10.5になるように調整し、均一に混練してから、80℃でゲル化し、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、80℃の温度で2時間乾燥し、水分10%の乾燥糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、水分10%の乾燥状態から、80℃の湯の中に5分間浸漬して湯戻しして、直径3mmの湯戻し品を得た。
この湯戻し品を2本使用し、実験1と同様にして剪断力の測定を行なった。このようにして得られた剪断強度を示すレオメーター値(g)を、ゲル強度として第2表に示した。
また、併せて食感を実験1と同様にして評価した。結果を第2表に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
第2表の結果によれば、糖を15%(w/w)以上練り込んでゲル化すると、こんにゃくとしての食感を保つことができないことが分かる。また、糖を15%(w/w)以上練り込んでゲル化すると、甘味も大きく感じられた。
【0035】
実験3(こんにゃくの戻り率に及ぼす糖含量の検討)
最終の糖含量が第3表に示す所定値となるようにマルトース液糖を用い、タピオカ澱粉含量が最終6.0%(w/w)、こんにゃく粉含量が最終1.8%(w/w)になるように所定量の水に膨潤させ、膨潤後、系のpHを0.5%石灰水を用いて、pH10.5になるように調整し、均一に混練してから、80℃でゲル化し、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、80℃の温度で2時間乾燥し、水分10%の乾燥糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、水分10%の乾燥状態から、90℃の湯の中に10分間浸漬し、実験1と同様に湯に入れる前後の重量比を比較することによって、戻り率の差を比較した。結果を第3表に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
第3表によれば、糖含量が2.0%(w/w)以上の場合に、2倍以上の高戻り率を示した。糖を添加することで、湯戻りで復元する時間を短縮することができると考えられる。従って、糖含量は2.0%(w/w)以上存在することで、澱粉との相互作用により、素早く高戻り率で戻ることに寄与していると考えられる。
【0038】
上記第2表と第3表によれば、糖含量は2.0〜15%(w/w)の範囲が良いことが分かる。
【0039】
実験4(こんにゃくの食感に及ぼす澱粉含量の検討)
こんにゃく粉含量が最終2.5%(w/w)、馬鈴薯澱粉が第4表に示す所定値となるように所定量の水に膨潤させ、最終の糖含量が10%(w/w)となるようにマルトース液糖を練り込み、系のpHを水酸化カルシウム0.5%溶液を用いて、pH10.5になるように調整し、均一に混練してから、80℃でゲル化し、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、90℃の温度で2時間乾燥し、水分10%の乾燥糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、水分10%の乾燥状態から、90℃の湯の中に5分間浸漬し、湯戻ししたサンプルを、20人のパネラーに試食させ、生のこんにゃくとの食感の比較を行なった。結果を第4表に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
第4表によれば、澱粉含量が8%(w/w)を超えたところで、食感が生こんにゃくと差がないと答えた人が、20人中の半分に満たなくなった。この結果より、澱粉含量が8%(w/w)までが、こんにゃくとしての食感を保つことのできる限界であると考えられる。
【0042】
実験5(戻り率に及ぼす澱粉含量の検討)
こんにゃく粉含量が最終1.25%(w/w)、馬鈴薯澱粉が第5表に示す所定値となるように所定量の水に膨潤させ、最終の糖含量が10%(w/w)となるようにマルトース液糖を練り込み、系のpHを0.5%石灰水を用いて、pH10.5になるように調整し、均一に混練してから、80℃でゲル化し、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、95℃の温度で2時間乾燥し、水分10%の乾燥糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを水分10%の乾燥状態から、90℃の湯の中に15分間浸漬し、湯に入れる前後の重量比を比較することによって、戻り率の差を比較した。結果を第5表に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
第5表の結果によれば、澱粉含量が2.0%以上の場合、2倍以上の高戻り率を示した。澱粉を入れることで、乾燥時にこんにゃくが、必要以上に縮んでしまうことを防いでいると考えられる。このことより、澱粉は、2.0%以上存在することによって、戻り率の向上に寄与できると見られた。
【0045】
実施例1
こんにゃく粉20g、馬鈴薯澱粉60g、ひじき1.0gを水670gに懸濁し、2時間膨潤させた。
膨潤後、ブリックス(Brix)50のマルトース液糖200gを添加し、カントミキサーで混練した。完全に混練した後に、0.5%石灰水50gをカントミキサーで素早く混練し、pH10.5を確認した後に、200gずつを金型にとり、90℃、60分間加熱してゲル化させ、板こんにゃくを得た。
得られた板こんにゃくを、短冊型に切取り、60℃、2時間熱風乾燥することで、短冊型乾燥こんにゃくを得た。
このこんにゃくは、お湯で5分間、或いは水で30分間戻すことにより、生の短冊型こんにゃくと同一の味、食感が得られた。
【0046】
実施例2
こんにゃく粉20g、馬鈴薯澱粉60gを水670gに懸濁し、2時間膨潤させた。
膨潤後、ブリックス(Brix)50のグルコース液糖200gを添加し、カントミキサーで混練した。完全に混練した後に、0.5%石灰水50gをカントミキサーで素早く混練し、pH10.5を確認した後に、金属チューブに注入し、90℃、4分間加熱してゲル化させ、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、60℃の熱風乾燥機で乾燥し、乾燥糸こんにゃくを得た。
この乾燥糸こんにゃくは、お湯で5分間、或いは水で30分間戻すことにより、市販の生の糸こんにゃくと同一の味と食感が得られた。
【0047】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明では、糖の使用量を少なくして甘味を抑える一方、澱粉を併用すると共に、さらにゲル化時のpHの幅を限定することにより、戻り率を向上させ、かつこんにゃくらしい食感を持たせている。
従って、請求項1記載の本発明によれば、甘味を抑えながら、しかも短時間水や湯で戻すことにより、元の生こんにゃくと同様の食感のものに復元し得る乾燥こんにゃく、すなわち請求項5記載の乾燥こんにゃくが得られる。
【0048】
また、請求項1記載の本発明により得られる乾燥こんにゃくは、長期間常温で保存可能であり、保存性に優れたものである。
すなわち、請求項1記載の本発明により得られる乾燥こんにゃくは、乾燥状態のものであるため、生のこんにゃくのように常に水につけておく必要もなく、流通時や飲食店や家庭での保存性が大幅に向上している。また、長期間(1年間以上)常温で保存しても腐敗のおそれが殆どなく、無駄も出ないし、衛生・安全面でも問題のないものとなる。
従って、生こんにゃくは特に保存性の点で消費拡大に問題なしとしなかったが、本発明によれば、保存時は乾燥状態であり、必要なときに単に水や湯で戻すだけで簡単に生こんにゃくを得ることができるため、手軽に生こんにゃくを味わうことが可能となり、消費の拡大にも繋がることが期待される。
【0049】
また、請求項1記載の本発明により得られる乾燥こんにゃくは、例えば調味用顆粒などと共に乾燥こんにゃくセットの形で製品とすることもできるし、他の乾物などと一緒に乾物セットとして販売したりすることにより、従来にない新製品として新規需要の開拓に大いに寄与することが期待される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水,湯で速やかに元に戻り(元の生こんにゃくの状態を再現し)、しかも長期間保存可能な乾燥こんにゃくとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
こんにゃくは、我が国の伝統的な食品の一つであり、特に近年は低カロリーの食物繊維食品として、注目を浴びている。
しかしながら、こんにゃくは、その大部分が水分であり、流通性や保存性に欠けるという問題がある。
すなわち、こんにゃくは常に90数%の水分を保有させておく必要があり、常に水中に保存しておくことが要求されるため、流通時における取扱い性(流通性)に劣ると共に、保存条件や保存期間によっては腐敗等のおそれがあり、保存性に劣るという問題がある。
【0003】
一方、我が国の寒冷地では、こんにゃくを外気等にさらすことによって自然凍結させ、これを解凍した後、乾燥させた凍こんにゃくが知られている。
しかしながら、この凍こんにゃくは、凍結・乾燥によって本来の弾性を失い、スポンジ状の組織を有するものであって、不可逆性の変性を生じたものであるため、食用としては不適当なものである。
【0004】
また、通常のこんにゃくを乾燥により水分を5〜40%の範囲にして乾燥こんにゃくとすることが提案されている(特開昭61−195664号公報)。
同様にこんにゃくを調味液で煮沸した後、水分が10〜30%の範囲となるように乾燥させて味付乾燥こんにゃく食品とすることも提案されている(特開昭58−60966号公報)。
しかしながら、これらはいずれもこんにゃくの乾燥物を菓子やおつまみ等としてそのまま食するものであって、生こんにゃくそのものの持つ独特の食感を有するものではなかった。
【0005】
そこで、こんにゃく芋又はこんにゃくマンナンに対して所量の澱粉、澱粉誘導体、小麦粉、グルテン、又は大豆タンパク質等を択一的に添加混練し、常法に従ってゲル化させて出来たこんにゃくを凍結させた後、解凍し、さらに得られた解凍こんにゃくを乾燥させることにより乾燥こんにゃくを製造する方法が提案されている(特開昭62−55052号公報)。
この方法によれば、水戻しすることにより、食用に適するこんにゃくが得られるというものの、従来のこんにゃくとは物性の異なる新しいタイプの物性、即ち歯切れ、歯応え等のテクスチュアを示すこんにゃくであり(その発明の効果には、鯨肉を食べているような弾性と粘りある歯応えがあると記載されている。)、しかも水戻しに長時間を要するという問題がある(実施例によれば、30℃の水に15時間浸漬している。)。
【0006】
また、こんにゃく精粉1重量部とデンプン3〜7重量部とを含む水分散ゲルをゲル化したデンプン−こんにゃくマンナン含水ゲルを乾燥してなるデンプンとこんにゃくマンナンを主成分とする乾燥ゲルが提案されている(特開昭62−259550号公報)。
この発明によれば、そのまま食することのできるこんにゃくが得られるというものの、水を加えて煮沸する必要があり、しかも本来の生こんにゃくと類似の物性を有するというよりは寧ろ米飯に類似する食感を有するものであった。
【0007】
さらに、こんにゃく精粉の加水膨潤物とセルロース−澱粉複合体、及び糊化澱粉を混練した後、アルカリ処理及び加熱処理によりゲル化物を得、次いでこれを凍結した後、乾燥することにより、乾燥食品素材を得る方法が提案されている(特開平4−94664号公報)。
この方法によれば、注湯により速やかに復元する乾燥食品素材が得られるものの、90℃程度の熱水を用いる必要があり、しかも従来のこんにゃく利用食品にはない内部組織構造を有し、こんにゃくゲルが変性しているため特有の弾力感をないというものであって、食感がこんにゃくではなく、米飯に酷似したものであった。
【0008】
そこで、こんにゃくにブドウ糖,ショ糖,麦芽糖,乳糖,果糖等の少糖類の内一種類又は数種類を含浸させた後に乾燥することにより、乾燥こんにゃくを製造する方法が提案されている(特開平4−8257号公報)。
この方法は、以上に述べた従来技術の中で唯一、乾燥状態のままで一年間常温で保存可能であり、しかも湯で数分間で戻ることが可能な製品として製品化されているものである。
しかしながら、この方法によれば、水を加えることにより再び元の弾力性を有するこんにゃくに復元できるものの、戻りを早くするために糖の使用量が著しく多く(生こんにゃくに対しては50重量%の糖が必要であり、こんにゃく粉に対しては20倍程度、換言すれば全原料成分の50重量%程度の量の糖が必要である。)、そのため甘味が著しく強く、味の面で本来のこんにゃくとは大きな差異がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の如き従来の欠点を解消し、甘味を抑えつつ、しかも水や湯で戻すことにより、短時間で元の生こんにゃくと同様の食感のものに復元し得る乾燥こんにゃくの製造方法、並びにこのような製造方法により得られる乾燥こんにゃくを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、甘味を抑えるため単純に糖を澱粉で置き換えてしまうと、戻るのに時間がかかるため、糖の使用量を少なくして、澱粉を併用すると共に、さらにゲル化時のpHの幅を限定することにより、甘味を抑えながら、しかも数分間水や湯で戻すことにより、元の生こんにゃくと同様の食感のものに復元し得る乾燥こんにゃくが得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、請求項1記載の本発明は、こんにゃく粉を水に膨潤し、アルカリ性物質を加え、ゲル化し、得られたゲル化物を乾燥させて乾燥こんにゃくを製造するにあたり、ゲル化前に、こんにゃく粉に糖と澱粉を一緒に或いは別々に添加し、次いでpH10.0〜10.9の範囲になるようにアルカリ性物質を加えた後、ゲル化させると共に、前記糖の添加量が全原料成分の2〜15%(w/w)水溶液であり、かつ前記澱粉の添加量が全原料成分の2〜8%(w/w)水溶液であることを特徴とする乾燥こんにゃくの製造方法を提供するものである。
【0012】
次に、請求項5記載の本発明は、上記請求項1記載の方法により得られる乾燥こんにゃくを提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
請求項1記載の本発明では、原料成分として、通常用いられるこんにゃく粉と水の他に、糖と澱粉を用いる。
ここでこんにゃく粉の原料となるこんにゃく芋の種類は特に制限はなく、日本産のこんにゃく( Amorphophallus konjac )のみならず、東南アジア産のムカゴこんにゃくなど、各種のこんにゃく芋を用いることができる。
請求項1記載の本発明では、原料成分として用いるこんにゃく粉としては特に制限はないが、、通常はこんにゃくの製造に常用されているこんにゃく精粉を用いる。ここでこんにゃく精粉とは、こんにゃく芋を短冊状にカットして乾燥した状態の「荒粉」を、粉砕機にかけて粉砕し、軽い粒子からなる、いわゆる「飛び粉」を除去して得られる重い粒子を指す。このようなこんにゃく精粉は、通常、粒径が500〜1,000μm程度のものであり、市販されているものを用いることができる。
【0014】
また、糖としては特に制限はなく、例えば果糖液糖、果糖ぶどう糖、液糖水飴、還元水飴、糖アルコール、麦芽糖、乳糖、果糖、ぶどう糖、砂糖、ショ糖、その他、液糖、粉末糖又はその混合物が挙げられ、これらを単独で、或いは複数用いることができる。
【0015】
次に、澱粉としても種々の澱粉を用いることができ、例えば馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さつまいも澱粉、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、その他、自然作物から抽出された澱粉及びその加工澱粉、又は澱粉を含んだ自然作物の粉末などを使用することができる。これらの中でも馬鈴薯澱粉の加工品が特に好ましい。
なお、請求項1記載の本発明においては、上記原料成分の他に、通常、こんにゃくの製造に使用される他の添加成分、例えばひじき等を使用することができる。
また、本発明は、いわゆるこんにゃくと呼ばれるものの他、こんにゃくゼリー,こんにゃくそばなど、公知のこんにゃく含有食品の乾燥物の製造にも応用することが可能である。
【0016】
請求項1記載の本発明では、ゲル化前に、こんにゃく粉に糖と澱粉を一緒に或いは別々に添加する。
例えば、▲1▼こんにゃく粉に澱粉と糖を添加し、さらに水で膨潤した後、混練しても良いし、或いは▲2▼こんにゃく粉に澱粉を添加し、さらに水で膨潤した後、糖を添加し、混練しても良い。逆に、▲3▼先にこんにゃく粉に糖を添加し、さらに水で膨潤した後、澱粉を添加し、混練しても良い。要は、ゲル化前にこんにゃく粉に糖と澱粉を一緒に或いは別々に添加しておけば良く、添加時期は膨潤の前後を問わないし、また澱粉と糖の添加は一緒であっても良いし、或いは別々であっても良い。
【0017】
ここで糖の添加量は、全原料成分の2〜15%(w/w)水溶液、好ましくは5〜10%(w/w)水溶液である。すなわち、糖の添加量は、水溶液にして、全原料成分の2〜15%(w/w)、好ましくは5〜10%(w/w)である。糖の添加量が、全原料成分の2%(w/w)水溶液未満であると、水や湯での戻り率や戻りのスピードが低下するため好ましくない。一方、糖の添加量が、全原料成分の15%(w/w)水溶液を超えると、こんにゃくとしての食感を保つことが困難になると共に、甘味が強くなるため好ましくない。
【0018】
また、澱粉の添加量は、全原料成分の2〜8%(w/w)水溶液、好ましくは4〜6%(w/w)水溶液である。すなわち、澱粉の添加量は、水溶液にして、全原料成分の2〜8%(w/w)、好ましくは4〜6%(w/w)である。澱粉の添加量が、全原料成分の2%(w/w)水溶液未満であると、戻り率が充分でないため好ましくない。一方、澱粉の添加量が、全原料成分の8%(w/w)水溶液を超えると、こんにゃくとしての食感を保つことが困難になるため好ましくない。
【0019】
なお、こんにゃく粉の使用量は、一般に生こんにゃくの製造に使用されている範囲であれば良く、通常、全原料成分の1.5〜3.5%(w/w)、好ましくは1.8〜3.0%(w/w)である。
【0020】
請求項1記載の本発明においては、以上のように、ゲル化前にこんにゃく粉に糖と澱粉を一緒に或いは別々に添加し、かつ水で膨潤させ、良く混練しておいた後に、アルカリ性物質を加え、ゲル化する。
アルカリ性物質としては、こんにゃくのゲル化に用いられるアルカリ性物質が使用され、特に水酸化カルシウム、炭酸カルシウムが好ましい。
【0021】
さらに、請求項1記載の本発明においては、全原料成分のpHが10.0〜10.9の範囲になるように、上記の如きアルカリ性物質を加えた後、ゲル化させることが必要である。例えば、0.1〜1.0%の石灰水溶液又はこんにゃく凝固可能なアルカリ液を系の2〜10重量%添加して、全体が均一になるように素早く混練する。
ここで全原料成分のpHが10.0未満であると、ゲル強度が不充分となり、こんにゃくの食感が得られなくなるため、好ましくない。一方、全原料成分のpHが10.9を超えると、完全ゲル化してしまい、戻り率が低下するため好ましくない。なお、全原料成分のpHが10.0〜10.9の範囲を逸脱する場合には、少量のアルカリ性物質を添加したり、或いは酸性物質を添加したりして、pH調整を行なえば良い。
混練後は、系内のpH、糖含量、澱粉含量、こんにゃく粉含量が変わらないように(糖や澱粉の分散を避けるため)、水分を含む熱媒体と直接に接触することなく加熱すること、例えば水,湯等に浸漬させることなく加熱すること、が好ましい。
【0022】
加熱方法としては、包材、例えばレトルトパックに入れて加熱したり、或いは金属チューブなどの金属容器に入れて加熱したりする等の方法がある。加熱条件としては、温度が65℃以上、99℃以下となるようにすることが好ましい。ここで65℃未満であるとゲル化せず、一方、99℃を超えると気泡が発生するため、いずれも好ましくない。また、加熱時間は、加熱方法などにより異なり、一義的に定めることは困難であるが、ゾルが加熱設定温度(品温)まで達してから、4分間乃至10分間、加熱温度を保つようにする。
【0023】
このゲル化に際しては、上記のように水分を含む熱媒体と直接に接触することなく加熱すること、例えば水や湯などの水分の不存在下に加熱することが好ましい。このような操作を上記の如き特定のpH条件下に行なうことにより、ゲル化(不完全ゲル化)させる。
ここで水分を含む熱媒体と直接に接触させて加熱すると、糖や澱粉が分散し、ゲル中の糖濃度、澱粉濃度が低くなり、そのため戻りに時間がかかったり、戻り率が低下したりするため好ましくない。
【0024】
上記加熱時に同時に成形を行なうか、或いはゲル化後にカット成形を行なう。
成形後、成形されたゲル化物(すなわち、生こんにゃく)を乾燥させることにより、目的とする乾燥こんにゃくを製造することができる。
乾燥は、水分量が5〜15%の範囲となるように行なえば良く、乾燥温度,乾燥時間,乾燥方法は特に制限はない。通常は熱風乾燥で充分であり、80〜100℃で1〜3時間程度乾燥すれば良い。水分量が5%未満であると、非常に脆く、少しの衝撃で折れ易くなる。一方、水分量が15%を超えると、黴等による腐敗が生じ易くなる。
【0025】
このようにして得られる乾燥こんにゃくは、水や湯に戻すことによって、速やかに生こんにゃくと同様の食感を再現することができる。戻しをより速くするには、戻しに際して、加熱したり、或いは攪拌したりすることが有効である。なお、ここでこんにゃくとは、普通のこんにゃくと、しらたきとを包含するものであることは言うまでもない。
【0026】
請求項5記載の本発明は、このようにして得られた(請求項1記載の方法により得られた)こんにゃくを提供するものである。
【0027】
請求項5記載の本発明の乾燥こんにゃくは、その形状としては特に制限はないが、通常、短冊状又は糸状のものである。但し、必要に応じて、薄いフィルム乃至シート状のものとすることもできる。
短冊状のものの場合、戻しを考慮すると、その厚さが0.5〜3mmのものであることが好ましい。その大きさは特に制限はないが、通常は、復元時の大きさ(約2倍程度に復元する)が、最大、生こんにゃくの大きさ程度であって、最小はいわゆる一口サイズ程度のものである。また、糸状のものの場合、直径が0.5〜4.0mmのものである。
【0028】
【実施例】
以下、実験例及び実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0029】
実験1(ゲル化pHによるゲル強度、戻り率の関係についての検討)
こんにゃく粉含量を最終2.0%(w/w)、澱粉含量を最終4.0%(w/w)に設定して所定量の水で膨潤させた。
膨潤後、最終の糖含量が10.0%(w/w)となるようにマルトース液糖を練り込み、系のpHを0.5%石灰水を用いて、第1表に示す所定値に調整し、均一に混練してから、80℃でゲル化し、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、95℃の温度で2時間乾燥し、水分10%の乾燥糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、水分10%の乾燥状態から、80℃の湯の中に5分間浸漬し、湯に入れる前後の重量比を比較することによって、戻り率の差を比較した。結果を第1表に示す。
また、この湯戻し品を2本使用し、剪断力の測定を行なった。測定機器は、サン科学社製、レオテックスを使用し、プランジャーにはカミソリ刃を使用した。このようにして得られた剪断強度を示すレオメーター値(g)を、ゲル強度として、第1表に示す。
さらに、この湯戻し品の食感を、市販の糸こんにゃくと比較し、市販の糸こんにゃくと同様のものを「良好」とし、これより若干柔らかいものを「多少柔らかい」、さらに柔らかいものを「柔らかい」として第1表に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
第1表の結果によれば、ゲル化pHが10.0以上の場合、ゲル強度が120以上となり、食感も市販の糸こんにゃくに極めて似た良好なものとなることが分かる。
一方、ゲル化pHが10.9は良いが、11.0となると、戻り率が2.0以下に下がることが分かる。
従って、ゲル強度(食感)、戻り率の両方を考慮すると、pHの範囲は10.0〜10.9の間が好ましいことが分かる。
【0032】
実験2(こんにゃくの食感の変化に及ぼす糖含量の検討)
こんにゃく粉含量を最終2.5%(w/w)、馬鈴薯澱粉含量を最終2.0%(w/w)に設定して所定量の水に膨潤させ、膨潤後、最終の糖含量が第2表に示す所定値となるようにマルトース液糖を練り込み、系のpHを水酸化カルシウム0.5%溶液を用いて、pH10.5になるように調整し、均一に混練してから、80℃でゲル化し、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、80℃の温度で2時間乾燥し、水分10%の乾燥糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、水分10%の乾燥状態から、80℃の湯の中に5分間浸漬して湯戻しして、直径3mmの湯戻し品を得た。
この湯戻し品を2本使用し、実験1と同様にして剪断力の測定を行なった。このようにして得られた剪断強度を示すレオメーター値(g)を、ゲル強度として第2表に示した。
また、併せて食感を実験1と同様にして評価した。結果を第2表に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
第2表の結果によれば、糖を15%(w/w)以上練り込んでゲル化すると、こんにゃくとしての食感を保つことができないことが分かる。また、糖を15%(w/w)以上練り込んでゲル化すると、甘味も大きく感じられた。
【0035】
実験3(こんにゃくの戻り率に及ぼす糖含量の検討)
最終の糖含量が第3表に示す所定値となるようにマルトース液糖を用い、タピオカ澱粉含量が最終6.0%(w/w)、こんにゃく粉含量が最終1.8%(w/w)になるように所定量の水に膨潤させ、膨潤後、系のpHを0.5%石灰水を用いて、pH10.5になるように調整し、均一に混練してから、80℃でゲル化し、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、80℃の温度で2時間乾燥し、水分10%の乾燥糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、水分10%の乾燥状態から、90℃の湯の中に10分間浸漬し、実験1と同様に湯に入れる前後の重量比を比較することによって、戻り率の差を比較した。結果を第3表に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
第3表によれば、糖含量が2.0%(w/w)以上の場合に、2倍以上の高戻り率を示した。糖を添加することで、湯戻りで復元する時間を短縮することができると考えられる。従って、糖含量は2.0%(w/w)以上存在することで、澱粉との相互作用により、素早く高戻り率で戻ることに寄与していると考えられる。
【0038】
上記第2表と第3表によれば、糖含量は2.0〜15%(w/w)の範囲が良いことが分かる。
【0039】
実験4(こんにゃくの食感に及ぼす澱粉含量の検討)
こんにゃく粉含量が最終2.5%(w/w)、馬鈴薯澱粉が第4表に示す所定値となるように所定量の水に膨潤させ、最終の糖含量が10%(w/w)となるようにマルトース液糖を練り込み、系のpHを水酸化カルシウム0.5%溶液を用いて、pH10.5になるように調整し、均一に混練してから、80℃でゲル化し、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、90℃の温度で2時間乾燥し、水分10%の乾燥糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、水分10%の乾燥状態から、90℃の湯の中に5分間浸漬し、湯戻ししたサンプルを、20人のパネラーに試食させ、生のこんにゃくとの食感の比較を行なった。結果を第4表に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
第4表によれば、澱粉含量が8%(w/w)を超えたところで、食感が生こんにゃくと差がないと答えた人が、20人中の半分に満たなくなった。この結果より、澱粉含量が8%(w/w)までが、こんにゃくとしての食感を保つことのできる限界であると考えられる。
【0042】
実験5(戻り率に及ぼす澱粉含量の検討)
こんにゃく粉含量が最終1.25%(w/w)、馬鈴薯澱粉が第5表に示す所定値となるように所定量の水に膨潤させ、最終の糖含量が10%(w/w)となるようにマルトース液糖を練り込み、系のpHを0.5%石灰水を用いて、pH10.5になるように調整し、均一に混練してから、80℃でゲル化し、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、95℃の温度で2時間乾燥し、水分10%の乾燥糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを水分10%の乾燥状態から、90℃の湯の中に15分間浸漬し、湯に入れる前後の重量比を比較することによって、戻り率の差を比較した。結果を第5表に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
第5表の結果によれば、澱粉含量が2.0%以上の場合、2倍以上の高戻り率を示した。澱粉を入れることで、乾燥時にこんにゃくが、必要以上に縮んでしまうことを防いでいると考えられる。このことより、澱粉は、2.0%以上存在することによって、戻り率の向上に寄与できると見られた。
【0045】
実施例1
こんにゃく粉20g、馬鈴薯澱粉60g、ひじき1.0gを水670gに懸濁し、2時間膨潤させた。
膨潤後、ブリックス(Brix)50のマルトース液糖200gを添加し、カントミキサーで混練した。完全に混練した後に、0.5%石灰水50gをカントミキサーで素早く混練し、pH10.5を確認した後に、200gずつを金型にとり、90℃、60分間加熱してゲル化させ、板こんにゃくを得た。
得られた板こんにゃくを、短冊型に切取り、60℃、2時間熱風乾燥することで、短冊型乾燥こんにゃくを得た。
このこんにゃくは、お湯で5分間、或いは水で30分間戻すことにより、生の短冊型こんにゃくと同一の味、食感が得られた。
【0046】
実施例2
こんにゃく粉20g、馬鈴薯澱粉60gを水670gに懸濁し、2時間膨潤させた。
膨潤後、ブリックス(Brix)50のグルコース液糖200gを添加し、カントミキサーで混練した。完全に混練した後に、0.5%石灰水50gをカントミキサーで素早く混練し、pH10.5を確認した後に、金属チューブに注入し、90℃、4分間加熱してゲル化させ、糸こんにゃくを得た。
得られた糸こんにゃくを、60℃の熱風乾燥機で乾燥し、乾燥糸こんにゃくを得た。
この乾燥糸こんにゃくは、お湯で5分間、或いは水で30分間戻すことにより、市販の生の糸こんにゃくと同一の味と食感が得られた。
【0047】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明では、糖の使用量を少なくして甘味を抑える一方、澱粉を併用すると共に、さらにゲル化時のpHの幅を限定することにより、戻り率を向上させ、かつこんにゃくらしい食感を持たせている。
従って、請求項1記載の本発明によれば、甘味を抑えながら、しかも短時間水や湯で戻すことにより、元の生こんにゃくと同様の食感のものに復元し得る乾燥こんにゃく、すなわち請求項5記載の乾燥こんにゃくが得られる。
【0048】
また、請求項1記載の本発明により得られる乾燥こんにゃくは、長期間常温で保存可能であり、保存性に優れたものである。
すなわち、請求項1記載の本発明により得られる乾燥こんにゃくは、乾燥状態のものであるため、生のこんにゃくのように常に水につけておく必要もなく、流通時や飲食店や家庭での保存性が大幅に向上している。また、長期間(1年間以上)常温で保存しても腐敗のおそれが殆どなく、無駄も出ないし、衛生・安全面でも問題のないものとなる。
従って、生こんにゃくは特に保存性の点で消費拡大に問題なしとしなかったが、本発明によれば、保存時は乾燥状態であり、必要なときに単に水や湯で戻すだけで簡単に生こんにゃくを得ることができるため、手軽に生こんにゃくを味わうことが可能となり、消費の拡大にも繋がることが期待される。
【0049】
また、請求項1記載の本発明により得られる乾燥こんにゃくは、例えば調味用顆粒などと共に乾燥こんにゃくセットの形で製品とすることもできるし、他の乾物などと一緒に乾物セットとして販売したりすることにより、従来にない新製品として新規需要の開拓に大いに寄与することが期待される。
Claims (7)
- こんにゃく粉を水に膨潤し、アルカリ性物質を加え、ゲル化し、得られたゲル化物を乾燥させて乾燥こんにゃくを製造するにあたり、ゲル化前に、こんにゃく粉に糖と澱粉を一緒に或いは別々に添加し、次いでpH10.0〜10.9の範囲になるようにアルカリ性物質を加えた後、ゲル化させると共に、前記糖の添加量が全原料成分の2〜15%(w/w)水溶液であり、かつ前記澱粉の添加量が全原料成分の2〜8%(w/w)水溶液であることを特徴とする乾燥こんにゃくの製造方法。
- ゲル化に際し、水分を含む熱媒体と直接に接触することなく加熱する請求項1記載の方法。
- 乾燥を水分量が5〜15%(w/w)の範囲となるように行なう請求項1記載の方法。
- アルカリ性物質が、水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムである請求項1記載の方法。
- 請求項1記載の方法により得られる乾燥こんにゃく。
- 短冊状又は糸状である請求項5記載の乾燥こんにゃく。
- 厚さが0.5〜3mmの短冊状又は直径が0.5〜4.0mmの糸状である請求項5記載の乾燥こんにゃく。
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