JP3592782B2 - イノシトールの製造方法 - Google Patents
イノシトールの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3592782B2 JP3592782B2 JP04229095A JP4229095A JP3592782B2 JP 3592782 B2 JP3592782 B2 JP 3592782B2 JP 04229095 A JP04229095 A JP 04229095A JP 4229095 A JP4229095 A JP 4229095A JP 3592782 B2 JP3592782 B2 JP 3592782B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- inositol
- phytin
- phytase
- added
- rice bran
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Description
【産業上の利用分野】
この発明はイノシトールの製造方法に関し、詳しくは、穀物中のフィチンを分解してイノシトールを抽出する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、動物の成長促進作用などの極めて有効な生理活性作用を有する物質としてイノシトールが知られている。イノシトールは、例えば、脱脂米ヌカ等の穀物中に含まれるフィチンを化学的方法で分解して得ることができ、フィチン酸とCa、Mg、Kの混合結合塩としてなるフィチンからリン酸が脱離してイノシトールが生成する。
従来のイノシトールの製造方法としては、例えば、▲1▼脱脂米ヌカを酸処理してフィチンを分解し、イノシトールを抽出する、▲2▼フィチンをフィターゼで酵素分解してイノシトールを得る、といった報告がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこのような従来のイノシトールの製造方法によると、フィチンを酸分解する場合については、分解時に比較的強力な酸を用いることから、イノシトールの応用分野が比較的狭くなり、例えば、食品、飼料等への添加剤としてイノシトールを利用することが制限される場合がある。
【0004】
また、フィターゼによりフィチンを酵素分解する場合については、フィターゼの活性が比較的弱いためにフィチンの分解率が低く、穀物原料から効率よくイノシトールを回収することが困難となる。従来の報告では、酵素分解する場合のイノシトールの収率は10〜15%程度である。
本発明はかかる問題点を解決して、穀物中のフィチンから食品等の分野に広く応用可能なイノシトールを高い収率で得るようにすることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を達成するための本発明のイノシトールの製造方法は、フィチンを含有する穀物に、抗酸性で乳酸を生産し酪酸を生産せず病原性を有さずかつ拮抗価50以上である有効微生物群(Effective Micro−orgamisms、以下、EMという)を加えてこれにフィターゼを作用させてフィチンをイノシトールに分解することを特徴とする。
【0006】
ここにおけるEMとは、自然界に存在する農業生産に有効な乳酸菌、酵母、放線菌、光合成菌等の微生物、さらにはその代謝物である酵素等から成り、10属80種以上の微生吻を含むものであって、その中で光合成菌が微生物群を一定の方向(蘇生型)に働かせる性質をもっている。このような多種多様の微生物が穀類を培地として互いに共存共栄し、連動し合い、相乗効果を発揮する仕組みになっている。
【0007】
またEMについて、放線菌に属するものとして、例えばStrepto−myces sp.(ATCC 3004)、Streptoverticillium sp.(ATCC 23654)、Nocardia sp.(ATCC19247)、Micromonospora sp.(ATCC 12452)、Rhodococcus sp.等があり、光合成菌に属するものとして、例えばRhodopseudomonas sp.(R.sphaeroldes)、Rhodosplrillum sp.(R.fulum)、Chromatium sp.(C.okenii)、Chlorobium sp.(C.limicola)等があり、乳酸菌(乳酸生成菌)に属するものとして、例えばLactobacillus sp.(IFO 3070)、Propionibacterium sp.(P.freudenreichii)、Pediococcus sp.(P.halophilus)、Streptococcus sp.(S.lactis、S.faecalis)等があり、糸状菌に属するものとして、例えばAspergillus sp.(RIFY5770,RIFY 5024)、Mucor sp.(IFO8567)等があり、酵母に属するものとして、例えばSaccharomyces sp.(NRRL 1346、Y977)、Candida sp.(C.utilis)等が挙げられる。
【0008】
なお前記の拮抗価とは、微生物間での成育を抑制する働きがある場合、その度合いを相対的に表す尺度のことであって、阻止円測定法により評価し、成育を全く阻止しない場合を0、完全に阻止する場合を100、その中間を50と表す。従って本発明における「拮抗価50以上」とは、比較的成育が抑制されているものが該当する。
【0009】
EMの保持温度については、菌の活動適温である5〜40℃程度が望ましい。
【0010】
原料穀物については、例えば米ヌカ、トウモロコシ、ゴマ等を用いるとよい。特に米ヌカを用いる場合、比較的フィチンの含有量が多く、原料から得られるイノシトールの回収率が良好にる。
【0011】
フィターゼの添加時期については、原料穀物にEMを作用させた後に加えてもよいし、また、予め原料に混合させておくことも可能である。本発明者らの実験によれば、脱脂米ヌカにEMを作用させた後にフィターゼを使用して酵素分解を行うことにより、80%以上の分解率で脱脂米ヌカ中のフィチンをイノシトールに分解できることが判明した。
【0012】
なお、EMに代えて麹菌、黒麹菌類を用いた場合にも、フィチンが30〜50%程度の分解率でイノシトールに変化することが判明した。
【0013】
【作用】
フィチンをイノシトールに分解するにあたり、エステル基を切断する必要があるが、フィチンとフィターゼのみではフィターゼの酵素活性が低いために、ほとんどイノシトールまで分解されない。しかるに、そこにEM、もしくは麹菌、黒麹菌等が混在すると、その代謝過程に伴う何らかの相互作用で前記エステル基の切断を行う酵素活性が向上するものと推定される。実験によれば、その作用は特に拮抗価50以上のEMにおいて顕著であったが、その厳密な理論的解明については今後の研究に待つところであって、本発明の主眼とするところではない。
【0014】
以下、本発明の各実施例を比較例とともに説明する。
【0015】
【実施例1】
滅菌した脱脂米ヌカ810gに、温水に溶解した糖蜜1.5mlとEM((財)自然農法国際研究開発センター事業部 EM研究所製の基準原液)1.5mlを添加し280mlの水を加えて30℃で72時間嫌気醗酵させた後、フィターゼ(天野製薬KK製)10gと水5lとを加えて50℃で50時間保持した。
【0016】
(比較例1‥‥‥EMのみを作用させたもの)
滅菌した脱脂米ヌカ810gに、温水に溶解した糖蜜1.5mlとEM1.5mlを添加し、280mlの水を加え30℃で72時間嫌気醗酵させた。
【0017】
(比較例123‥‥‥フィターゼのみを作用させたもの)
滅菌した脱脂米ヌカ810gに同様のフィターゼ10gと水5lを加え、50℃で50時間保持した。
【0018】
【実施例2】
滅菌した脱脂米ヌカ810gに麹菌体lgを添加し、280mlの水を加えて30℃で45時間好気醗酵させた後、同じくフィターゼ10gと水5lとを加えて50℃で50時間保持した。
【0019】
(比較例2‥‥‥麹菌のみを作用させたもの)
滅菌した脱脂米ヌカ810gに麹菌体1gを添加し、280mlの水を加えて30℃で45時間好気醗酵させた。
【0020】
【実施例3】
滅気した脱脂米ヌカ810gに黒麹菌体1gを添加し、280mlの水を加え30℃で45時間好気醗酵させた後、同様にフィターゼ10gと水5lとを加えて50℃で50時間保持した。
【0021】
(比較例3‥‥‥黒麹菌のみを作用させたもの)
滅菌した脱脂米ヌカ810gに黒麹菌体1gを添加し、280mlの水を加え30℃で45時間好気醗酵させた。
【0022】
以上の実施例1〜3および対応する比較例について、分解後のイノシトールをガスクロマトグラフィーで測定し、フィチンの分解量および分解率について次頁の表1のような結果を得た。これによれば、実施例1〜3については、いずれも高い分解率でフィチンが分解され、イノシトールを良好な収率で回収することができた。特に、実施例1のEMを用いた場合に好結果が得られた。これに対し、フィターゼを使用しない比較例では分解率が低く、また、フィターゼのみでフィチン分解を行った比較例についても、分解率が低いものであった。
【0023】
【表1】
【0024】
【発明の効果】
このように本発明によれば、穀類中に含まれるフィチンの分解率を格段に高めることができ、強力な酸も用いないため、米ヌカ、トウモロコシ等の広範な穀物から食品、飼料等の分野に幅広く応用可能なイノシトールを比較的容易かつ効率よく製造することができるという効果がある。
Claims (1)
- フィチンを含有する穀物に、抗酸性で乳酸を生成し酪酸を生産せず病原性を有さずかつ拮抗価50以上である有効微生物群を加えて嫌気発酵させた後、これにフィターゼを作用させてフィチンをイノシトールに分解することを特徴とするイノシトールの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04229095A JP3592782B2 (ja) | 1995-01-24 | 1995-01-24 | イノシトールの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04229095A JP3592782B2 (ja) | 1995-01-24 | 1995-01-24 | イノシトールの製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08196286A JPH08196286A (ja) | 1996-08-06 |
JP3592782B2 true JP3592782B2 (ja) | 2004-11-24 |
Family
ID=12631918
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP04229095A Expired - Fee Related JP3592782B2 (ja) | 1995-01-24 | 1995-01-24 | イノシトールの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3592782B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6337366B2 (ja) * | 2013-12-06 | 2018-06-06 | 三和油脂株式会社 | 米糠麹の製造方法およびこれを用いた米糠麹糖化物、米糠麹穀物粉糖化物の製造方法 |
CN105803012B (zh) * | 2016-04-15 | 2017-10-10 | 响水县现代化工有限责任公司 | (s)‑2‑[(1‑苄基磺酰基)吡咯烷‑3‑氨基]‑1‑[4‑(2,4,6‑三甲基苄基)哌嗪]乙酮的用途 |
CN110643643B (zh) * | 2019-10-21 | 2021-09-17 | 诸城市浩天药业有限公司 | 一种利用菲汀制备肌醇的工艺方法 |
CN113322287B (zh) * | 2021-05-24 | 2022-12-02 | 浙江工业大学 | 一种通过植酸酶得到肌醇的方法 |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH04365489A (ja) * | 1991-06-12 | 1992-12-17 | Mitsui Toatsu Chem Inc | ミオ−イノシトールの製造法 |
JPH06153896A (ja) * | 1992-08-27 | 1994-06-03 | Nishinomiya Shuzo Kk | 清酒の製造方法 |
JPH0670749A (ja) * | 1992-08-27 | 1994-03-15 | Nishinomiya Shuzo Kk | 麹菌及びその育種方法 |
ES2202305T3 (es) * | 1993-04-05 | 2004-04-01 | Aveve N.V. | Hidrolisis de fitina y composicion de enzimas que tienen actividad hidrolizante de fitato. |
-
1995
- 1995-01-24 JP JP04229095A patent/JP3592782B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08196286A (ja) | 1996-08-06 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN110734885B (zh) | 一种用于发酵海杂鱼的复合微生物菌剂及酶解鱼蛋白氨基酸水溶肥的制备方法 | |
Desai et al. | Production, purification and characterization of L-Glutaminase from Streptomyces sp. isolated from soil | |
DE2313546A1 (de) | Mikrobielle protease und verfahren zu ihrer herstellung | |
JP3592782B2 (ja) | イノシトールの製造方法 | |
JP3951008B2 (ja) | カプサイシン分解合成酵素及びその生産方法 | |
Kurbanoglu | Enhancement of glycerol production with ram horn hydrolysate by yeast | |
US3682778A (en) | Production of microbial cell-lytic enzymes | |
JP2008054580A (ja) | デフェリフェリクリシン高生産変異株、シデロフォア生産用の液体培地、シデロフォアの製造方法 | |
DE3247703C2 (de) | Verfahren zur Gewinnung von L-Threonin | |
KR20210040743A (ko) | 악취 분해를 위한 사료첨가제 | |
Nandini et al. | The suitability of natural tannins from food and agricultural residues (FAR) for producing industrially important tannase and gallic acid through microbial fermentation | |
JPH022589B2 (ja) | ||
KR100801143B1 (ko) | 바실러스 폴리퍼멘티쿠스와 사카로마이세스 세르비지에의혼합배양 방법 | |
JP4537862B2 (ja) | 好気性細菌による高効率な有機酸の製造方法 | |
AU2019470409A1 (en) | Candida utilis double gene co-expression strain that hydrolyzes protein components in food waste and construction method therefor | |
JPH01157395A (ja) | 微生物の培養法 | |
JP2006320278A (ja) | コリネ型細菌による高効率なジカルボン酸の製造方法 | |
JPH08205785A (ja) | フィチン分解性飼料 | |
JPS58201992A (ja) | 微生物によるβ−置換プロピオン酸またはそのアミドの製造法 | |
KR102124585B1 (ko) | 단백질 발효를 통한 아미노산 액비의 제조방법 및 그 방법에 의한 액비 | |
JPH06277040A (ja) | 酵母細胞壁溶解酵素の製造法及び溶解法 | |
US2813061A (en) | Production of bacitracin | |
JPH029384A (ja) | 発酵法によるl−グルタミン酸の製造方法 | |
EP0049410B1 (de) | Wässriges Nährmedium zur Anzucht von Mikroorganismen | |
US4053361A (en) | Process for the preparation of glucose isomerase using curtobacterium |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040817 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040826 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20070903 Year of fee payment: 3 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100903 Year of fee payment: 6 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |