JP3592655B2 - 表面電位計及び形状測定器 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は表面電位計及び形状測定器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、走査型力顕微鏡としては、走査型プローブ顕微鏡セミナーテキスト(セイコー電子工業株式会社、1994年6月)に記載されているものが知られており、図2にその構成を示す。この力顕微鏡は、一般的にKFM(Kelvin Force Microscope)と呼ばれるもので、試料(測定物)の表面電位分布(表面電位像)と試料の表面形状(トポ像)を同時かつ独立に測定することができて表面電位計及び形状測定器として用いることができる。導電性カンチレバー11の先端には導電性探針12が取り付けられ、この導電性探針12は試料13に対向配置される。圧電素子14は交流電源15から交流電圧Vr・sinωrtが印加されて導電性カンチレバー11の固定端に導電性カンチレバー11の共振周波数ωrの振動を与え、導電性カンチレバー11が共振周波数ωrで振動する。
【0003】
また、交流電源16からのカンチレバー11の非共振周波数ωの交流電圧VAC・sinωtと直流電源17からの直流オフセット電圧Voffとを重畳した電圧が試料13のベースとなる導電性基板18に印加されてカンチレバー11の先端の探針12と試料13の表面との間に静電引力が発生し、この静電引力によりカンチレバー11に周波数ωの振動が生ずる。このカンチレバー11の振動はレーザダイオードからなる光源19と2分割フォトダイオードからなる受光素子20により光てこ法で検出され、つまり、光源19からカンチレバー11にレーザ光が照射されてその反射光が受光素子20により受光されてその反射光が2分割フォトダイオード20に照射される位置が検出される。これによりカンチレバー11の振動を検出できる。
【0004】
受光素子20の出力信号は2台のロックインアンプ21,22に入力され、ロックインアンプ21,22はそれぞれ交流電源15、16からの交流電圧Vrsinωrt、VACsinωtを参照信号として受光素子20の出力信号を位相検波して増幅することによりカンチレバー11の振動のω成分の振幅Aωとωr成分の振幅Aωrを分離増幅する。電圧フィードバック回路23は振幅Aωの分離増幅を行うロックインアンプ21の出力信号により直流電源17を制御して直流オフセット電圧Voffを制御し、電圧フィードバック回路23の直流オフセット電圧Voffに対する制御量が試料13の表面電位Vsの測定結果として出力される。ここに、交流電源16から試料13に印加する交流電圧の周波数はカンチレバー11の共振周波数の1/2以下にしている。
【0005】
また、Zサーボ回路24は、試料13をZ軸方向に駆動してカンチレバー11の探針12と試料13との間の距離を可変するZ軸アクチュエータを有し、振幅Aωrを分離増幅するロックインアンプ22の出力信号によりZ軸アクチュエータを制御することで探針12と試料13との間の距離を制御する。スキャナ25は試料13をZ軸と直角な方向に走査し、Zサーボ回路24のZ軸アクチュエータに対する制御量が試料13の表面形状(いわゆるトポ像:TOPOGRAPHY)の測定結果として出力される。
【0006】
次に、図3を用いてこの力顕微鏡の動作原理を詳しく説明する。カンチレバー11には、圧電素子14によりカンチレバー11を機械的に加振する力Fvibと、探針12に印加される電圧により生ずる静電引力Fesと、試料13の表面と探針12との間に働くファン・デル・ワールス力Fvdwという3つの力が働く。カンチレバー11はFvibにより共振振動する。また、Fesは次の(1)式で表わされる。
【0007】
Fes=−(1/2)(∂C/∂Z)V2・・・(1)
ここで、Cは探針12と試料13のベース18との間の静電容量、Zは探針12と試料13のベース18との間の距離であり、Vは次の(2)式で表わされる。
V=(Vs+Voff)+VACsinωt・・・(2)
したがって、Fesは次の(3)式で表わされる。
【0008】
また、Fvdwは次の(4)式で表わされる。
Fvdw=−H/Z6・・・(4)
ここで、HはHamaker定数である。
探針12と試料13の表面との間に働く力Fは次の(5)式で表わされる。
【0009】
F=Fvdw+Fes・・・(5)
カンチレバー11は、Fvibにより共振振動しているが、探針12と試料13の表面との間に働く直流成分の力により共振周波数がずれる。しかし、カンチレバー11は、圧電素子14により周波数ωrで強制振動しているので、その振動振幅が上記直流成分の力により小さくなる。このカンチレバー11の自由振動時の振動振幅からの減少分をΔAとすると、これは次の(6)式で表わされる。
【0010】
ここで、A0はカンチレバー11の自由振動時の振動振幅、Kはカンチレバー11のバネ定数、Qは共振特性のQ値である。実際の試料13の表面電位測定はファン・デル・ワールス力が及ばない距離Zで行われるので、ΔAは次の(7)式のようになる。
【0011】
Vs+Voffは次に述べるように電圧フィードバック回路23による帰還制御により0に保たれ、A0、K、Q、VACは一定である。また、Zサーボ回路24がΔAが一定になるようにZ軸アクチュエータを制御するから、トポ像は(∂2C/∂Z2)が一定の像を与える。試料13の絶縁膜の容量がカンチレバー11先端の探針12と試料13の表面との間の容量よりも十分に大きければ、トポ像は試料13の表面形状を示す。
【0012】
一方、カンチレバー11の振動のω成分の振幅Aωは次の(8)で表わされる。
【0013】
Aω=−(∂C/∂Z)(Vs+Voff)VAC・・・(8)
従って、Aω=0となるようにVoffを制御することにより(∂C/∂Z)に関係なくVoffの値から試料13の表面電位Vsを測定することができる。
このようにして試料13の表面電位Vsと形状を同時に測定することができる。
【0014】
また、図4に示すような表面電位計及び形状測定器としての力顕微鏡が提案されている。この力顕微鏡では、導電性カンチレバー26の先端には導電性探針27が取り付けられ、この導電性探針27は試料28に対向配置される。交流電源29からの交流電圧VA・sinωact、交流電源30からの交流電圧VB・sin(ωact/2)及び直流電圧Vbは加算器31で加算されてアンプ32を介してカンチレバー26に印加され、カンチレバー26先端の探針27と試料28の表面との間に静電引力Fesが働いてカンチレバー26が振動する。
【0015】
このカンチレバー26の振動はレーザダイオードからなる光源34とフォトダイオードからなる受光素子35により光てこ法で検出され、つまり、光源34からカンチレバー26に光が照射されてその反射光が受光素子35により受光されてその反射光が2分割フォトダイオード20に照射される位置が検出される。これによりカンチレバー11の振動を検出できる。受光素子35の出力信号はプリアンプ36を介してロックインアンプ37、38に入力される。探針27と試料28の表面との間の電圧をVとすると、静電引力Fesは次の(9)式で表わされる。
【0016】
Fes=−(1/2)(∂C/∂Z)V2・・・(9)
ここで、Cは探針27と試料28のベースとなる導電性基板33との間の静電容量、Zは探針27と試料28のベース33との間の距離である。試料28の表面電位をVsとすると、Vは次の(10)式で表わされる。
V=Vb−Vs+VAsinωact+VBsin(ωact/2)・・・(10)
したがって、Fesは次の(11)式で表わされる。
【0017】
ωacをカンチレバー26の共振周波数ω0とすれば、カンチレバー26は次の(12)式で表わされるFesのωac成分Fesωacにより共振する。
【0018】
したがって、Fesωacによって生ずるカンチレバー26の振動を示すプリアンプ36の出力信号vは次の(13)式で表わされる。
ただし、aは比例定数であり、
φ1=φ・・・(14)
φ2=−π/2+φ・・・(15)
である。φは力Fesωacの位相と、Fesωacにより生ずるカンチレバー26の共振振動との間の位相差である。
【0019】
(13)式の括弧の中の第1項は周波数ω0の第1交流電圧により生ずるカンチレバー26の振動を表わし、その位相φ1は交流電源29からカンチレバー26に印加している第1交流電圧の位相を基準にしている。この位相φ1は交流電源29からロックインアンプ37に与えられる参照信号を基準としている。(13)式の括弧の中の第2項は周波数ω0/2の第2交流電圧により生ずるカンチレバー26の振動を表わし、その位相φ2は交流電源30からカンチレバー26に印加している第2交流電圧の位相を基準にしている。この位相φ2は交流電源30からロックインアンプ38に与えられる参照信号を基準としている。また、第1交流電圧と第2交流電圧は位相が一致している。ロックインアンプ37、38はプリアンプ36の出力信号を交流電源29、30からの参照信号により位相φ1、φ2で位相検波して増幅する。
【0020】
また、asin(ωt+φ)なる交流信号を位相θでロックインアンプにより位相検波して増幅した時の出力Vは
V=(A/2){cos(−θ+ψ)−cos(−θ+ψ+π)}・・・(16)
となる。ただし、Aは比例定数である。
ここで、(13)式を(16)式に当てはめると、
となる。
【0021】
ここで、ωacをカンチレバー26の機械的共振周波数ω0と完全に一致させる(ωac=ω0とする)と、φ=−π/2である。
これを(17)式に代入すると、
となる。
【0022】
位相θ=θ1=−π/2でロックインアンプ37によりプリアンプ36の出力vを検波・増幅すれば、ロックインアンプ37の出力信号V1は(18)式に位相θ=θ1=−π/2を代入したものとなる。また、位相θ=θ2=−πでロックインアンプ38によりプリアンプ36の出力vを検波・増幅すれば、ロックインアンプ38の出力信号V2は(18)式に位相θ=θ2=−πを代入したものとなる。ロックインアンプ37、38の出力信号V1、V2は次の(19)、(20)で表わされる。
【0023】
V1=−A1(∂C/∂Z)(Vb−Vs)VA・・・(19)
V2=−(1/4)A2(∂C/∂Z)VB2・・・(20)
ここで、A1、A2は比例定数である。以上のように(13)式の括弧内の第1項と第2項の振幅をロックインアンプ37、38で分離することができる。ロックインアンプ37の出力V1は積分器39により積分されて加算器31に上記直流電圧Vbとして入力されてV1が0になるようにVbが制御され、(∂C/∂Z)に関係なくVbの値から試料26の表面電位が測定できる。
【0024】
ロックインアンプ38の出力V2は、比較器40により基準電圧源41の基準電圧と比較され、その比較結果が積分器42により積分される。Z軸アクチュエータ43は積分器42の出力信号により試料28を駆動し、V2が一定になるように試料28と探針27との間の距離が制御される。したがって、トポ像(Z軸アクチュエータ43の制御電圧から得られる像)は(∂C/∂Z)が一定の像となる。試料28の絶縁膜の容量が探針27先端と試料28の表面との間の容量より十分に大きければ、トポ像は試料28の表面形状を示す。
このようにして試料28の表面電位と表面形状を同時に測定することができる。
【0025】
また、上記力顕微鏡では、カンチレバーの振動を検出する方法としてカンチレバーの曲がり傾斜角度を検出する光てこ法を用いたが、カンチレバーの振動時の変位を検出する光干渉法、カンチレバー背後に設けた電極とカンチレバーとの間に流れるトンネル電流を検出するトンネル電流法、カンチレバー振動時の速度を検出するヘテロダイン光干渉法などを用いたものもある。カンチレバーの振動による曲がり傾斜角度、変位、速度を検出するカンチレバー上の位置(すなわちプローブとなるレーザ光を照射する位置や電極を対向させる位置)はカンチレバーの先端に設定されている。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
上記図2に示す力顕微鏡では、(7)式において、ΔAは(∂2C/∂Z2)と(Vs+Voff)の関数になっているが、Aω=0となるようにVoffを電圧フィードバック回路23で制御することにより、Vs+Voff=0となり、ΔAは(∂2C/∂Z2)のみの関数となる。これにより、試料13の表面形状を測定できるとしているが、実際はAω=0とする帰還には遅れがあり、Vs+Voff=0が成り立たない時間がある。したがって、試料13の表面形状の測定結果に対する干渉が実際には存在する。
【0027】
しかし、この力顕微鏡の測定対象は、異種金属間の接触電位差やLB(Langmuri Blodgett)上の表面電位分布であり、表面電位がせいぜい100mV程度の分布しかない。したがって、帰還の遅れにより、Vs+Voff=100mVであったとしても、(Vs+Voff)2は0.01V2である。一方、VACは通常5V程度であるから、VAC2/2=12.5[V2]である。VACは一定であるから、(Vs+Voff)によるΔAの変動は、0.1/12.5=0.08%であり、ほとんど問題にならない。
【0028】
ところが、この力顕微鏡により、電子写真装置に用いられる感光体の表面電位分布を測定する場合は事情が異なる。感光体の表面電位は通常1000V程度であり、感光体の電位分布(測定領域中の表面電位の範囲)も数百Vは存在する。したがって、帰還の遅れによる(Vs+Voff)の値も従来の試料の表面電位を測定する場合よりも大きくなる。仮に、帰還による遅れで(Vs+Voff)が1000Vの1/100の10Vであったとしよう。
【0029】
この時、(Vs+Voff)2=100[V2]となり、VAC2/2=12.5[V2]の8倍になってしまう。したがって、試料の表面電位の測定結果に対する干渉が大きく、トポ像の測定結果に対しても無視できない測定誤差となる。これを解決する手段としては、VACを大きくすることが考えられる。例えば、(Vs+Voff)2/(VAC2/2)=0.1%とするためには、VAC=447Vにしなければならない。一方、試料の表面電位分布を少なくとも数十μmの分解能で測定するためには、試料18の表面と探針13との間の距離を数十μm以下にしなければならない。したがって、交流電源16から探針13に印加する交流電圧が数百Vになると、探針13と試料18の表面との間で放電が生じ、測定が不可能となる。
【0030】
以上のように上記力顕微鏡により高電圧な表面電位分布を測定する場合には今まで無視できた誤差が大きくなり、大きな問題となる。
また、上記力顕微鏡では、交流電源16から試料13に印加する交流電圧の周波数はカンチレバー11の共振周波数の1/2以下にしている。従って、カンチレバー11は交流電源16から試料13に交流電圧が印加されても共振振動を生じないので、その振動振幅は共振を使用した場合に比べて著しく小さくて感度が悪い。
【0031】
そこで、交流電源16から試料13に印加する交流電圧の周波数を、カンチレバー11を圧電素子14で機械的に加振して共振させている共振周波数に設定すると、受光素子20の出力信号からロックインアンプ21,22でカンチレバー11の交流電圧による振動と機械的加振による振動の各成分を分離することができず、試料13の表面電位と表面形状を独立に測定することができない。
【0032】
また、図4に示す上記力顕微鏡では、交流電源29から出力される交流電圧の周波数ωacをカンチレバー26の機械的共振周波数ω0と完全に一致させている。したがって、φ=−π/2となるので、ロックインアンプ37により位相θ=−π/2でプリアンプ36の出力信号vを位相検波して増幅し、ロックインアンプ38により位相θ=−πでプリアンプ36の出力信号vを位相検波して増幅すれば、(13)式の括弧内の第1項と第2項の振幅を(17)、(18)に示すように分離して得ることができる。ところが、カンチレバー26の機械的共振周波数ω0は測定を何回か行っている間に周囲の気温や湿度、気圧などの影響により少しづつずれてくる。しかし、交流電源29から出力される交流電圧の周波数ωacは、安定しているので、変化しない。したがって、ω0とωacとは一致しなくなってくる。
【0033】
また、カンチレバー26の振動は共振点付近ではカンチレバー26の機械的共振周波数のずれに対する位相の変化が非常に大きい。従って、カンチレバー26の共振点のずれにより、φの−π/2からの差が無視し得ないものとなる。一方、ロックインアンプ37、38において位相検波を行う位相は測定当初に設定したθ1=−π/2、θ2=−πのままである。したがって、(17)、(18)式のように(13)式の括弧内の第1項と第2項の振幅を分離できなくなる。
【0034】
例えば、ω0=ωacが成り立たなくなってφ=−π/2+Δφとなったとしよう。この時、Vは次の(21)式で表わされる。
ここで、θ=θ1=−π/2の時のロックインアンプ37の出力V1及びθ=θ2=−πの時のロックインアンプ38の出力V2はそれぞれ
となる。
【0035】
(22)、(23)から分かるように、Δφ≠0であるために、(13)式の括弧内の第1項と第2項の振幅は分離されず、表面電位測定信号であるV1には表面形状を測定するための(13)式の括弧内の第2項の振幅が混入している。また、表面形状測定信号であるV2には表面電位を測定するための(13)式の括弧内の第1項の振幅が混入している。すなわち、試料の表面電位が表面形状の測定結果に混入・干渉し、試料の表面形状が表面電位の測定結果に混入・干渉する。
このようにカンチレバー26の共振周波数であるω0が、周囲の気温や湿度、気圧などの影響によりわずかに変動することにより、試料の表面電位と表面形状の測定結果が互いに干渉し、無視できない誤差となって現われてくる。
【0036】
従来、力顕微鏡では、図5(a)に示すように棒11の片端を固定して棒44の他端を自由にした場合の棒(カンチレバー)44の横振動を利用し、カンチレバー44の一次共振させて試料の表面状態(表面電位や表面形状)を測定している。図5(b)、(c)、(d)はカンチレバー44の一次、二次及び三次の共振状態における各振動モードを示す。カンチレバー44の長さを1とした場合、二次及び三次の共振状態におけるカンチレバー44の節の位置を図5(c)、(d)に示す。
【0037】
従来、力顕微鏡は一般にカンチレバーの一次共振を利用して試料の表面状態(表面電位や表面形状)を測定している。カンチレバーの振動を検出する方法としては、カンチレバーの曲がり傾斜角度を検出する光てこ法、カンチレバーの振動時の変位を検出する光干渉法、カンチレバー背後に設けた電極とカンチレバーとの間に流れるトンネル電流を検出するトンネル電流法、カンチレバー振動時の速度を検出するヘテロダイン光干渉法などがある。
【0038】
カンチレバーの一次共振を利用する場合、カンチレバーの振動による曲がり傾斜角度、変位、速度はカンチレバーの先端において最も大きい。したがって、カンチレバーの振動による曲がり傾斜角度、変位、速度を検出するカンチレバー上の位置(すなわちプローブとなるレーザ光を照射する位置や電極を対向させる位置)はカンチレバーの先端に設定されている。カンチレバーの振動を検出する際の感度やS/N比を考えた場合、カンチレバーの振動による曲がり傾斜角度、変位、速度が最大となる位置においてこれら曲がり傾斜角度、変位、速度を検出するのが最も有利である。
【0039】
しかし、上記図4に示す力顕微鏡のようにカンチレバーの高次共振を利用して試料の表面状態(表面電位や表面形状)を測定する場合には、図5(c)、(d)からも分かるように、必ずしもカンチレバーの先端において振動による曲がり傾斜角度、変位、速度が最大になるものではない。したがって、カンチレバーの先端で振動による曲がり傾斜角度、変位、速度を検出すると、必ずしも感度やS/N比の点で有利な測定を行っていることにはならない。
【0040】
また、力顕微鏡において、カンチレバーの非共振、一次共振、及び高次共振の内の少なくとも2つを利用する場合、カンチレバーはそれぞれの振動を重畳した振動を示す。一方、カンチレバーの振動信号は、通常ロックインアンプに入力される。ロックインアンプは入力信号の中から参照信号の周波数成分のみをフィルタリングして増幅する狭帯域アンプと考えられる。このロックインアンプは、複数の周波数成分を持つカンチレバー振動信号から測定したい振動周波数成分と同じ周波数の参照信号が入力され、ロックインアンプにて複数の周波数成分を持つカンチレバー振動信号から他の周波数成分を分離して所望の振動周波数成分のみを抽出し増幅する。
【0041】
例えば、カンチレバー振動信号に異なる周波数を持つ2つの信号があって、これをロックインアンプにより分離して検出する場合、片方の信号(以下A信号と呼ぶ)にとって他の信号(以下B信号と呼ぶ)はノイズとなる。したがって、A信号にとってはB信号は小さい程良いのであるが、そのような状態になると、B信号にとってノイズとなるA信号が非常に多い信号の中からB信号をフィルタリングして増幅しなければならず、B信号の分離・増幅にとって非常に不利になる。このようなことをなくすためには、カンチレバーの振動信号におけるA信号とB信号の振幅がほぼ等しい状態にあることが必要である。
【0042】
一方、図5に示すように例えば、一次共振振動によるカンチレバーの振動による曲がり傾斜角度、変位、速度が最大になる位置は、必ずしも高次の共振振動によるカンチレバーの曲がり傾斜角度、変位、速度が最大になる位置とは限らない。したがって、2つの周波数の振動振幅ががほぼ等しくならないことが多い。これらの振動振幅を同程度にするためには、2つの信号の内、振幅が小さい方の振動を生じさせている力、例えば静電引力を大きくするという方法をとればよい。しかし、静電引力を大きくするためには、カンチレバー先端の探針と試料の表面との間で放電が生じ、測定が不可能になる。したがって、このような方法では、必ずしも異なる周波数の振動振幅を同程度にすることはできない。
【0043】
本発明は、測定を精度良く安定して行うことができる表面電位計及び形状測定器、力顕微鏡を提供することを目的とする。
【0044】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、測定物に対向配置される導電性探針を先端部に設けたバネを、前記測定物と前記バネとの間に作用する静電引力により変形させ、該バネの変形により前記測定物と前記バネとの間に作用する静電引力を検出して前記測定物の電位と形状の何れか一方或いは両方を測定するようにした表面電位計及び形状測定器において、前記バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の第1交流電圧と、前記バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの内、前記第1交流電圧の周波数とは異なる周波数の2分の1の周波数を持つ第2交流電圧とを重畳させた電圧を前記導電性探針に印加する電圧印加手段と、前記第1交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第1振動の振幅から前記測定物の電位を測定する表面電位測定手段と、前記第2交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第2振動の振幅から前記測定物の形状を測定する形状測定手段とを備えたものである。
【0045】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の表面電位計及び形状測定器において、前記電圧印加手段が前記導電性探針に前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧とを重畳した電圧を印加し、かつ、前記第1交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第1振動の振幅が零もしくは一定値になるように前記直流電圧を可変する電位制御手段と、前記直流電圧を測定する電位測定手段と、前記測定物と前記導電性探針との間の距離を可変するアクチュエータを有し前記第2交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第2振動の振幅が一定値になるように前記アクチュエータを制御して前記測定物と前記導電性探針との間の距離を制御する距離制御手段と、前記アクチュエータの変位量を測定する変位量測定手段とを備えたものである。
【0046】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、前記導電性探針に印加すべき電圧を測定物の導電性基板に印加し、前記導電性探針の電位を基準電位としたものである。
【0047】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、交流電圧と直流電圧の内のいずれか1つ或いは前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを前記導電性探針に印加し、残りの1つを前記測定物に印加する電圧印加手段を有するものである。
【0048】
請求項5記載の発明は、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを測定物の導電性基板に印加し、残りの1つを前記導電性探針に印加する電圧印加手段を有するものである。
【0049】
【作用】
請求項1記載の発明では、バネの先端部に設けられた導電性探針が測定物に対向し、バネは測定物とバネとの間に作用する静電引力により変形する。このバネの変形により、測定物とバネとの間に作用する静電引力が検出されて測定物の電位と形状の何れか一方或いは両方が測定される。バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の第1交流電圧と、バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの内、前記第1交流電圧の周波数とは異なる周波数の2分の1の周波数を持つ第2交流電圧とを重畳させた電圧が電圧印加手段により導電性探針に印加され、表面電位測定手段が第1交流電圧による導電性探針と測定物との間の静電引力により生ずるバネの第1振動の振幅から測定物の電位を測定する。そして、形状測定手段が第2交流電圧による導電性探針と測定物との間の静電引力により生ずるバネの第2振動の振幅から測定物の形状を測定する。
【0050】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の表面電位計及び形状測定器において、電圧印加手段が導電性探針に第1交流電圧と第2交流電圧と直流電圧とを重畳した電圧を印加し、電位制御手段が第1交流電圧による導電性探針と測定物との間の静電引力により生ずるバネの第1振動の振幅が零もしくは一定値になるように上記直流電圧を可変し、電位測定手段が上記直流電圧を測定する。距離制御手段は、アクチュエータにより測定物と導電性探針との間の距離を可変し、第2交流電圧による導電性探針と測定物との間の静電引力により生ずるバネの第2振動の振幅が一定値になるようにアクチュエータを制御して測定物と導電性探針との間の距離を制御する。そして、アクチュエータの変位量が変位量測定手段により測定される。
【0051】
請求項3記載の発明では、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、導電性探針に印加すべき電圧が測定物の導電性基板に印加され、導電性探針の電位は基準電位である。
【0052】
請求項4記載の発明では、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、電圧印加手段は、交流電圧と直流電圧の内のいずれか1つ或いは第1交流電圧と第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを導電性探針に印加し、残りの1つを測定物に印加する。
【0053】
請求項5記載の発明では、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、電圧印加手段は、第1交流電圧と第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを測定物の導電性基板に印加し、残りの1つを導電性探針に印加する。
【0054】
【実施例】
図1は本発明の第1実施例を示す。この第1実施例は、請求項1、2記載の発明の実施例であり、前述した図4に示す力顕微鏡とは以下の点が異なる。交流電源29はカンチレバー26の一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の第1交流電圧を発生し、交流電源30はカンチレバー26の一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の2分の1の周波数を持つ第2交流電圧を発生する。例えば、交流電源29は交流電圧Vr1sinωr1tを発生し、交流電源30は交流電圧Vωr2sin(ωr2t/2)を発生する。ここに、ωr1はカンチレバー26の第1共振周波数、ωr2はカンチレバー26の第2共振周波数とする。
【0055】
ロックインアンプ37はプリアンプ36の出力信号を交流電源29からの参照信号Vr1sinωr1tにより位相検波して増幅することによりカンチレバー26の振動のωr1成分の振幅を分離増幅し、ロックインアンプ38はプリアンプ36の出力信号を交流電源30からの参照信号Vr2sin(ωr2t/2)により位相検波して増幅することによりカンチレバー26の振動のωr2成分の振幅を分離増幅する。V r2sin( ω r2 t/2 ) は、以下、V r2sin ω r2 t/2と略称する。
【0056】
本実施例において、探針27の先端と試料28の表面との間の電位差Vは
V=Vb−Vs+Vr1sinωr1t+Vr2sinωr2t/2・・・(45)
となる。したがって、Fesは次の(9)式より
となる。
【0057】
ωr1はカンチレバー26の第1共振周波数、ωr2はカンチレバー26の第2共振周波数であるから、カンチレバー26は次の(47)式で表わされるFesのωr1、ωr2成分Fesωrにより共振する。
したがって、Fesωrによって生ずるカンチレバー26の振動を示すプリアンプ36の出力vは次の(48)式で表わされる。
【0058】
ロックインアンプ37、38は入力信号の参照信号周波数と同じ周波数成分のみを増幅する狭帯域アンプと考えられる。したがって、2位相式のロックインアンプ38によりωr2の参照信号でvを増幅することにより、(48)式のωr2成分のみをその位相ωr2に無関係に得ることができる。
【0059】
このロックインアンプ38の出力信号V2は次の(49)式のようになる。
【0060】
V2=−(1/4)A2(∂C/∂Z)Vr22・・・(49)
すなわち、周囲の気温や湿度、気圧などの影響によりωr1、ωr2がずれ、φr1、φr2が変動しても試料28の表面電位が試料28の表面形状測定結果に混入・干渉することはない。
【0061】
一方、ロックインアンプ37によりωr1の参照信号でvを増幅することにより、(48)式のωr1成分のみを増幅することができる。この時、ロックインアンプ37において、位相θでvを位相検波増幅すれば、ロックインアンプ37の出力信号V1は次の(49)式のようになる。
【0062】
(50)式にはφr2が含まれていないので、試料28の表面電位測定結果はφr2の変動による影響を受けない。θ=φr1とすると、V1は、
V1=−A1(∂C/∂Z)(Vb−Vs)Vr1・・・(51)
となり、最大値を示す。
【0063】
ここで、周囲の気温や湿度、気圧などの影響によりωr1がずれ、φr1が(φr1+Δφr1)に変動したとする。また、θはφr1のままであったとすると、この時のV1は
V1=−A1(∂C/∂Z)(Vb−Vs)Vr1cosΔφr1・・・(52)
となる。(52)式からφr1の変動により、V1は最大値から小さくなるが、試料28の表面形状が試料28の表面電位測定結果に混入・干渉することはない。以上のように、第4実施例においては、従来技術のように、カンチレバーの共振周波数が周囲の気温や湿度、気圧などの影響によりわずかに変動することで、試料の表面電位と表面形状の測定結果が互いに干渉して無視できない誤差となって現われてくるようなことが無い。すなわち、カンチレバーの共振周波数の変動に無関係に安定して試料の表面電位と表面形状を測定することができる。
【0064】
このように、第1実施例は、測定物28に対向配置される導電性探針27を先端部に設けたバネとしての導電性カンチレバー26を、測定物28とバネ26との間に作用する静電引力により変形させ、バネ26の変形により測定物28とバネ26との間に作用する静電引力を検出して測定物28の電位と形状の何れか一方或いは両方を測定するようにした表面電位計及び形状測定器としての力顕微鏡において、バネ26の一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の第1交流電圧と、バネ26の一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの内、前記第1交流電圧の周波数とは異なる周波数の2分の1の周波数を持つ第2交流電圧とを重畳させた電圧を導電性探針27に印加する電圧印加手段としての交流電源29、30と、第1交流電圧による導電性探針27と測定物28との間の静電引力により生ずるバネ26の第1振動の振幅から測定物28の電位を測定する表面電位測定手段としてのロックインアンプ37と、第2交流電圧による導電性探針27と測定物28との間の静電引力により生ずるバネ26の第2振動の振幅から測定物の形状を測定する形状測定手段としてのロックインアンプ38とを備えたので、バネ26の共振周波数の変動に無関係に安定して試料の表面電位と表面形状を測定することができる。
【0065】
また、第1実施例は、請求項2記載の発明の実施例であって、電圧印加手段としての交流電源29、30、加算器31が導電性探針27に第1交流電圧と第2交流電圧と直流電圧とを重畳した電圧を印加し、かつ、第1交流電圧による導電性探針27と測定物28との間の静電引力により生ずるバネ26の第1振動の振幅が零(もしくは一定値)になるように上記直流電圧を可変する電位制御手段としての積分器39を含む帰還回路と、直流電圧を測定する電位測定手段としてのロックインアンプ37と、測定物28と導電性探針26との間の距離を可変するアクチュエータとしてのZ軸アクチュエータ43を有し第2交流電圧による導電性探針27と測定物28との間の静電引力により生ずるバネ26の第2振動の振幅が一定値になるようにアクチュエータ43を制御して測定物28と導電性探針27との間の距離を制御する距離制御手段としての帰還回路と、アクチュエータ43の変位量を測定する変位量測定手段としてのロックインアンプ38とを備えたので、バネ26の共振周波数の変動に無関係に安定して試料の表面電位と表面形状を測定することができる。
【0066】
また、請求項3記載の発明の一実施例は、上記第1実施例において、導電性探針27に印加すべき電圧を導電性探針27に印加せずに測定物28の導電性基板33に印加し、導電性探針27の電位を基準電位としたものであり、第1実施例と同様な効果が得られる。
【0067】
また、請求項4記載の発明の実施例は、上記第1実施例において、交流電源29、30を含む電圧印加手段により、上記第1交流電圧と上記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを導電性探針27に印加し、残りの1つを測定物28に印加するようにしたものであり、第1実施例と同様な効果が得られる。なお、この実施例では、測定物の導電性基板は接地しない。
【0068】
また、請求項5記載の発明の実施例は、上記第1実施例において、交流電源29、30を含む電圧印加手段により、上記第1交流電圧と上記第2交流電圧と上記直流電圧の内のいずれか2つをカンチレバー26に印加せずに測定物28の導電性基板33に印加し、残りの1つを導電性探針27に印加するようにしたものであり、第1実施例と同様な効果が得られる。
【0069】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、測定物に対向配置される導電性探針を先端部に設けたバネを、前記測定物と前記バネとの間に作用する静電引力により変形させ、該バネの変形により前記測定物と前記バネとの間に作用する静電引力を検出して前記測定物の電位と形状の何れか一方或いは両方を測定するようにした表面電位計及び形状測定器において、前記バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の第1交流電圧と、前記バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの内、前記第1交流電圧の周波数とは異なる周波数の2分の1の周波数を持つ第2交流電圧とを重畳させた電圧を前記導電性探針に印加する電圧印加手段と、前記第1交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第1振動の振幅から前記測定物の電位を測定する表面電位測定手段と、前記第2交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第2振動の振幅から前記測定物の形状を測定する形状測定手段とを備えたので、バネの共振周波数の変動に無関係に安定して試料の表面電位と表面形状を測定することができる。
【0070】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の表面電位計及び形状測定器において、前記電圧印加手段が前記導電性探針に前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧とを重畳した電圧を印加し、かつ、前記第1交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第1振動の振幅が零もしくは一定値になるように前記直流電圧を可変する電位制御手段と、前記直流電圧を測定する電位測定手段と、前記測定物と前記導電性探針との間の距離を可変するアクチュエータを有し前記第2交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第2振動の振幅が一定値になるように前記アクチュエータを制御して前記測定物と前記導電性探針との間の距離を制御する距離制御手段と、前記アクチュエータの変位量を測定する変位量測定手段とを備えたので、バネの共振周波数の変動に無関係に安定して試料の表面電位と表面形状を測定することができる。
【0071】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、前記導電性探針に印加すべき電圧を測定物の導電性基板に印加し、前記導電性探針の電位を基準電位としたので、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器と同様な効果が得られる。
【0072】
請求項4記載の発明によれば、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、交流電圧と直流電圧の内のいずれか1つ或いは前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを前記導電性探針に印加し、残りの1つを前記測定物に印加する電圧印加手段を有するので、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器と同様な効果が得られる。
【0073】
請求項5記載の発明によれば、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを測定物の導電性基板に印加し、残りの1つを前記導電性探針に印加する電圧印加手段を有するので、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示すブロック図である。
【図2】従来の力顕微鏡の一例を示すブロック図である。
【図3】同力顕微鏡の一部を示すブロック図である。
【図4】従来の力顕微鏡の他の例を示すブロック図である。
【図5】従来の力顕微鏡を説明するための図である。
【符号の説明】
11,26 カンチレバー
12,27 導電性探針
13,28 試料
14 圧電素子
15,16,29,30 交流電源
17 直流電源
18,33 導電性基板
19,34 光源
20,35 受光素子
21,22,37,38,55 ロックインアンプ
23 電圧フィードバック回路
24 Zサーボ回路
25 スキャナ
31 加算器
32 アンプ
36 プリアンプ
39,42 積分器
41 基準電圧源
43 Z軸アクチュエータ
【産業上の利用分野】
本発明は表面電位計及び形状測定器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、走査型力顕微鏡としては、走査型プローブ顕微鏡セミナーテキスト(セイコー電子工業株式会社、1994年6月)に記載されているものが知られており、図2にその構成を示す。この力顕微鏡は、一般的にKFM(Kelvin Force Microscope)と呼ばれるもので、試料(測定物)の表面電位分布(表面電位像)と試料の表面形状(トポ像)を同時かつ独立に測定することができて表面電位計及び形状測定器として用いることができる。導電性カンチレバー11の先端には導電性探針12が取り付けられ、この導電性探針12は試料13に対向配置される。圧電素子14は交流電源15から交流電圧Vr・sinωrtが印加されて導電性カンチレバー11の固定端に導電性カンチレバー11の共振周波数ωrの振動を与え、導電性カンチレバー11が共振周波数ωrで振動する。
【0003】
また、交流電源16からのカンチレバー11の非共振周波数ωの交流電圧VAC・sinωtと直流電源17からの直流オフセット電圧Voffとを重畳した電圧が試料13のベースとなる導電性基板18に印加されてカンチレバー11の先端の探針12と試料13の表面との間に静電引力が発生し、この静電引力によりカンチレバー11に周波数ωの振動が生ずる。このカンチレバー11の振動はレーザダイオードからなる光源19と2分割フォトダイオードからなる受光素子20により光てこ法で検出され、つまり、光源19からカンチレバー11にレーザ光が照射されてその反射光が受光素子20により受光されてその反射光が2分割フォトダイオード20に照射される位置が検出される。これによりカンチレバー11の振動を検出できる。
【0004】
受光素子20の出力信号は2台のロックインアンプ21,22に入力され、ロックインアンプ21,22はそれぞれ交流電源15、16からの交流電圧Vrsinωrt、VACsinωtを参照信号として受光素子20の出力信号を位相検波して増幅することによりカンチレバー11の振動のω成分の振幅Aωとωr成分の振幅Aωrを分離増幅する。電圧フィードバック回路23は振幅Aωの分離増幅を行うロックインアンプ21の出力信号により直流電源17を制御して直流オフセット電圧Voffを制御し、電圧フィードバック回路23の直流オフセット電圧Voffに対する制御量が試料13の表面電位Vsの測定結果として出力される。ここに、交流電源16から試料13に印加する交流電圧の周波数はカンチレバー11の共振周波数の1/2以下にしている。
【0005】
また、Zサーボ回路24は、試料13をZ軸方向に駆動してカンチレバー11の探針12と試料13との間の距離を可変するZ軸アクチュエータを有し、振幅Aωrを分離増幅するロックインアンプ22の出力信号によりZ軸アクチュエータを制御することで探針12と試料13との間の距離を制御する。スキャナ25は試料13をZ軸と直角な方向に走査し、Zサーボ回路24のZ軸アクチュエータに対する制御量が試料13の表面形状(いわゆるトポ像:TOPOGRAPHY)の測定結果として出力される。
【0006】
次に、図3を用いてこの力顕微鏡の動作原理を詳しく説明する。カンチレバー11には、圧電素子14によりカンチレバー11を機械的に加振する力Fvibと、探針12に印加される電圧により生ずる静電引力Fesと、試料13の表面と探針12との間に働くファン・デル・ワールス力Fvdwという3つの力が働く。カンチレバー11はFvibにより共振振動する。また、Fesは次の(1)式で表わされる。
【0007】
Fes=−(1/2)(∂C/∂Z)V2・・・(1)
ここで、Cは探針12と試料13のベース18との間の静電容量、Zは探針12と試料13のベース18との間の距離であり、Vは次の(2)式で表わされる。
V=(Vs+Voff)+VACsinωt・・・(2)
したがって、Fesは次の(3)式で表わされる。
【0008】
また、Fvdwは次の(4)式で表わされる。
Fvdw=−H/Z6・・・(4)
ここで、HはHamaker定数である。
探針12と試料13の表面との間に働く力Fは次の(5)式で表わされる。
【0009】
F=Fvdw+Fes・・・(5)
カンチレバー11は、Fvibにより共振振動しているが、探針12と試料13の表面との間に働く直流成分の力により共振周波数がずれる。しかし、カンチレバー11は、圧電素子14により周波数ωrで強制振動しているので、その振動振幅が上記直流成分の力により小さくなる。このカンチレバー11の自由振動時の振動振幅からの減少分をΔAとすると、これは次の(6)式で表わされる。
【0010】
ここで、A0はカンチレバー11の自由振動時の振動振幅、Kはカンチレバー11のバネ定数、Qは共振特性のQ値である。実際の試料13の表面電位測定はファン・デル・ワールス力が及ばない距離Zで行われるので、ΔAは次の(7)式のようになる。
【0011】
Vs+Voffは次に述べるように電圧フィードバック回路23による帰還制御により0に保たれ、A0、K、Q、VACは一定である。また、Zサーボ回路24がΔAが一定になるようにZ軸アクチュエータを制御するから、トポ像は(∂2C/∂Z2)が一定の像を与える。試料13の絶縁膜の容量がカンチレバー11先端の探針12と試料13の表面との間の容量よりも十分に大きければ、トポ像は試料13の表面形状を示す。
【0012】
一方、カンチレバー11の振動のω成分の振幅Aωは次の(8)で表わされる。
【0013】
Aω=−(∂C/∂Z)(Vs+Voff)VAC・・・(8)
従って、Aω=0となるようにVoffを制御することにより(∂C/∂Z)に関係なくVoffの値から試料13の表面電位Vsを測定することができる。
このようにして試料13の表面電位Vsと形状を同時に測定することができる。
【0014】
また、図4に示すような表面電位計及び形状測定器としての力顕微鏡が提案されている。この力顕微鏡では、導電性カンチレバー26の先端には導電性探針27が取り付けられ、この導電性探針27は試料28に対向配置される。交流電源29からの交流電圧VA・sinωact、交流電源30からの交流電圧VB・sin(ωact/2)及び直流電圧Vbは加算器31で加算されてアンプ32を介してカンチレバー26に印加され、カンチレバー26先端の探針27と試料28の表面との間に静電引力Fesが働いてカンチレバー26が振動する。
【0015】
このカンチレバー26の振動はレーザダイオードからなる光源34とフォトダイオードからなる受光素子35により光てこ法で検出され、つまり、光源34からカンチレバー26に光が照射されてその反射光が受光素子35により受光されてその反射光が2分割フォトダイオード20に照射される位置が検出される。これによりカンチレバー11の振動を検出できる。受光素子35の出力信号はプリアンプ36を介してロックインアンプ37、38に入力される。探針27と試料28の表面との間の電圧をVとすると、静電引力Fesは次の(9)式で表わされる。
【0016】
Fes=−(1/2)(∂C/∂Z)V2・・・(9)
ここで、Cは探針27と試料28のベースとなる導電性基板33との間の静電容量、Zは探針27と試料28のベース33との間の距離である。試料28の表面電位をVsとすると、Vは次の(10)式で表わされる。
V=Vb−Vs+VAsinωact+VBsin(ωact/2)・・・(10)
したがって、Fesは次の(11)式で表わされる。
【0017】
ωacをカンチレバー26の共振周波数ω0とすれば、カンチレバー26は次の(12)式で表わされるFesのωac成分Fesωacにより共振する。
【0018】
したがって、Fesωacによって生ずるカンチレバー26の振動を示すプリアンプ36の出力信号vは次の(13)式で表わされる。
ただし、aは比例定数であり、
φ1=φ・・・(14)
φ2=−π/2+φ・・・(15)
である。φは力Fesωacの位相と、Fesωacにより生ずるカンチレバー26の共振振動との間の位相差である。
【0019】
(13)式の括弧の中の第1項は周波数ω0の第1交流電圧により生ずるカンチレバー26の振動を表わし、その位相φ1は交流電源29からカンチレバー26に印加している第1交流電圧の位相を基準にしている。この位相φ1は交流電源29からロックインアンプ37に与えられる参照信号を基準としている。(13)式の括弧の中の第2項は周波数ω0/2の第2交流電圧により生ずるカンチレバー26の振動を表わし、その位相φ2は交流電源30からカンチレバー26に印加している第2交流電圧の位相を基準にしている。この位相φ2は交流電源30からロックインアンプ38に与えられる参照信号を基準としている。また、第1交流電圧と第2交流電圧は位相が一致している。ロックインアンプ37、38はプリアンプ36の出力信号を交流電源29、30からの参照信号により位相φ1、φ2で位相検波して増幅する。
【0020】
また、asin(ωt+φ)なる交流信号を位相θでロックインアンプにより位相検波して増幅した時の出力Vは
V=(A/2){cos(−θ+ψ)−cos(−θ+ψ+π)}・・・(16)
となる。ただし、Aは比例定数である。
ここで、(13)式を(16)式に当てはめると、
となる。
【0021】
ここで、ωacをカンチレバー26の機械的共振周波数ω0と完全に一致させる(ωac=ω0とする)と、φ=−π/2である。
これを(17)式に代入すると、
となる。
【0022】
位相θ=θ1=−π/2でロックインアンプ37によりプリアンプ36の出力vを検波・増幅すれば、ロックインアンプ37の出力信号V1は(18)式に位相θ=θ1=−π/2を代入したものとなる。また、位相θ=θ2=−πでロックインアンプ38によりプリアンプ36の出力vを検波・増幅すれば、ロックインアンプ38の出力信号V2は(18)式に位相θ=θ2=−πを代入したものとなる。ロックインアンプ37、38の出力信号V1、V2は次の(19)、(20)で表わされる。
【0023】
V1=−A1(∂C/∂Z)(Vb−Vs)VA・・・(19)
V2=−(1/4)A2(∂C/∂Z)VB2・・・(20)
ここで、A1、A2は比例定数である。以上のように(13)式の括弧内の第1項と第2項の振幅をロックインアンプ37、38で分離することができる。ロックインアンプ37の出力V1は積分器39により積分されて加算器31に上記直流電圧Vbとして入力されてV1が0になるようにVbが制御され、(∂C/∂Z)に関係なくVbの値から試料26の表面電位が測定できる。
【0024】
ロックインアンプ38の出力V2は、比較器40により基準電圧源41の基準電圧と比較され、その比較結果が積分器42により積分される。Z軸アクチュエータ43は積分器42の出力信号により試料28を駆動し、V2が一定になるように試料28と探針27との間の距離が制御される。したがって、トポ像(Z軸アクチュエータ43の制御電圧から得られる像)は(∂C/∂Z)が一定の像となる。試料28の絶縁膜の容量が探針27先端と試料28の表面との間の容量より十分に大きければ、トポ像は試料28の表面形状を示す。
このようにして試料28の表面電位と表面形状を同時に測定することができる。
【0025】
また、上記力顕微鏡では、カンチレバーの振動を検出する方法としてカンチレバーの曲がり傾斜角度を検出する光てこ法を用いたが、カンチレバーの振動時の変位を検出する光干渉法、カンチレバー背後に設けた電極とカンチレバーとの間に流れるトンネル電流を検出するトンネル電流法、カンチレバー振動時の速度を検出するヘテロダイン光干渉法などを用いたものもある。カンチレバーの振動による曲がり傾斜角度、変位、速度を検出するカンチレバー上の位置(すなわちプローブとなるレーザ光を照射する位置や電極を対向させる位置)はカンチレバーの先端に設定されている。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
上記図2に示す力顕微鏡では、(7)式において、ΔAは(∂2C/∂Z2)と(Vs+Voff)の関数になっているが、Aω=0となるようにVoffを電圧フィードバック回路23で制御することにより、Vs+Voff=0となり、ΔAは(∂2C/∂Z2)のみの関数となる。これにより、試料13の表面形状を測定できるとしているが、実際はAω=0とする帰還には遅れがあり、Vs+Voff=0が成り立たない時間がある。したがって、試料13の表面形状の測定結果に対する干渉が実際には存在する。
【0027】
しかし、この力顕微鏡の測定対象は、異種金属間の接触電位差やLB(Langmuri Blodgett)上の表面電位分布であり、表面電位がせいぜい100mV程度の分布しかない。したがって、帰還の遅れにより、Vs+Voff=100mVであったとしても、(Vs+Voff)2は0.01V2である。一方、VACは通常5V程度であるから、VAC2/2=12.5[V2]である。VACは一定であるから、(Vs+Voff)によるΔAの変動は、0.1/12.5=0.08%であり、ほとんど問題にならない。
【0028】
ところが、この力顕微鏡により、電子写真装置に用いられる感光体の表面電位分布を測定する場合は事情が異なる。感光体の表面電位は通常1000V程度であり、感光体の電位分布(測定領域中の表面電位の範囲)も数百Vは存在する。したがって、帰還の遅れによる(Vs+Voff)の値も従来の試料の表面電位を測定する場合よりも大きくなる。仮に、帰還による遅れで(Vs+Voff)が1000Vの1/100の10Vであったとしよう。
【0029】
この時、(Vs+Voff)2=100[V2]となり、VAC2/2=12.5[V2]の8倍になってしまう。したがって、試料の表面電位の測定結果に対する干渉が大きく、トポ像の測定結果に対しても無視できない測定誤差となる。これを解決する手段としては、VACを大きくすることが考えられる。例えば、(Vs+Voff)2/(VAC2/2)=0.1%とするためには、VAC=447Vにしなければならない。一方、試料の表面電位分布を少なくとも数十μmの分解能で測定するためには、試料18の表面と探針13との間の距離を数十μm以下にしなければならない。したがって、交流電源16から探針13に印加する交流電圧が数百Vになると、探針13と試料18の表面との間で放電が生じ、測定が不可能となる。
【0030】
以上のように上記力顕微鏡により高電圧な表面電位分布を測定する場合には今まで無視できた誤差が大きくなり、大きな問題となる。
また、上記力顕微鏡では、交流電源16から試料13に印加する交流電圧の周波数はカンチレバー11の共振周波数の1/2以下にしている。従って、カンチレバー11は交流電源16から試料13に交流電圧が印加されても共振振動を生じないので、その振動振幅は共振を使用した場合に比べて著しく小さくて感度が悪い。
【0031】
そこで、交流電源16から試料13に印加する交流電圧の周波数を、カンチレバー11を圧電素子14で機械的に加振して共振させている共振周波数に設定すると、受光素子20の出力信号からロックインアンプ21,22でカンチレバー11の交流電圧による振動と機械的加振による振動の各成分を分離することができず、試料13の表面電位と表面形状を独立に測定することができない。
【0032】
また、図4に示す上記力顕微鏡では、交流電源29から出力される交流電圧の周波数ωacをカンチレバー26の機械的共振周波数ω0と完全に一致させている。したがって、φ=−π/2となるので、ロックインアンプ37により位相θ=−π/2でプリアンプ36の出力信号vを位相検波して増幅し、ロックインアンプ38により位相θ=−πでプリアンプ36の出力信号vを位相検波して増幅すれば、(13)式の括弧内の第1項と第2項の振幅を(17)、(18)に示すように分離して得ることができる。ところが、カンチレバー26の機械的共振周波数ω0は測定を何回か行っている間に周囲の気温や湿度、気圧などの影響により少しづつずれてくる。しかし、交流電源29から出力される交流電圧の周波数ωacは、安定しているので、変化しない。したがって、ω0とωacとは一致しなくなってくる。
【0033】
また、カンチレバー26の振動は共振点付近ではカンチレバー26の機械的共振周波数のずれに対する位相の変化が非常に大きい。従って、カンチレバー26の共振点のずれにより、φの−π/2からの差が無視し得ないものとなる。一方、ロックインアンプ37、38において位相検波を行う位相は測定当初に設定したθ1=−π/2、θ2=−πのままである。したがって、(17)、(18)式のように(13)式の括弧内の第1項と第2項の振幅を分離できなくなる。
【0034】
例えば、ω0=ωacが成り立たなくなってφ=−π/2+Δφとなったとしよう。この時、Vは次の(21)式で表わされる。
ここで、θ=θ1=−π/2の時のロックインアンプ37の出力V1及びθ=θ2=−πの時のロックインアンプ38の出力V2はそれぞれ
となる。
【0035】
(22)、(23)から分かるように、Δφ≠0であるために、(13)式の括弧内の第1項と第2項の振幅は分離されず、表面電位測定信号であるV1には表面形状を測定するための(13)式の括弧内の第2項の振幅が混入している。また、表面形状測定信号であるV2には表面電位を測定するための(13)式の括弧内の第1項の振幅が混入している。すなわち、試料の表面電位が表面形状の測定結果に混入・干渉し、試料の表面形状が表面電位の測定結果に混入・干渉する。
このようにカンチレバー26の共振周波数であるω0が、周囲の気温や湿度、気圧などの影響によりわずかに変動することにより、試料の表面電位と表面形状の測定結果が互いに干渉し、無視できない誤差となって現われてくる。
【0036】
従来、力顕微鏡では、図5(a)に示すように棒11の片端を固定して棒44の他端を自由にした場合の棒(カンチレバー)44の横振動を利用し、カンチレバー44の一次共振させて試料の表面状態(表面電位や表面形状)を測定している。図5(b)、(c)、(d)はカンチレバー44の一次、二次及び三次の共振状態における各振動モードを示す。カンチレバー44の長さを1とした場合、二次及び三次の共振状態におけるカンチレバー44の節の位置を図5(c)、(d)に示す。
【0037】
従来、力顕微鏡は一般にカンチレバーの一次共振を利用して試料の表面状態(表面電位や表面形状)を測定している。カンチレバーの振動を検出する方法としては、カンチレバーの曲がり傾斜角度を検出する光てこ法、カンチレバーの振動時の変位を検出する光干渉法、カンチレバー背後に設けた電極とカンチレバーとの間に流れるトンネル電流を検出するトンネル電流法、カンチレバー振動時の速度を検出するヘテロダイン光干渉法などがある。
【0038】
カンチレバーの一次共振を利用する場合、カンチレバーの振動による曲がり傾斜角度、変位、速度はカンチレバーの先端において最も大きい。したがって、カンチレバーの振動による曲がり傾斜角度、変位、速度を検出するカンチレバー上の位置(すなわちプローブとなるレーザ光を照射する位置や電極を対向させる位置)はカンチレバーの先端に設定されている。カンチレバーの振動を検出する際の感度やS/N比を考えた場合、カンチレバーの振動による曲がり傾斜角度、変位、速度が最大となる位置においてこれら曲がり傾斜角度、変位、速度を検出するのが最も有利である。
【0039】
しかし、上記図4に示す力顕微鏡のようにカンチレバーの高次共振を利用して試料の表面状態(表面電位や表面形状)を測定する場合には、図5(c)、(d)からも分かるように、必ずしもカンチレバーの先端において振動による曲がり傾斜角度、変位、速度が最大になるものではない。したがって、カンチレバーの先端で振動による曲がり傾斜角度、変位、速度を検出すると、必ずしも感度やS/N比の点で有利な測定を行っていることにはならない。
【0040】
また、力顕微鏡において、カンチレバーの非共振、一次共振、及び高次共振の内の少なくとも2つを利用する場合、カンチレバーはそれぞれの振動を重畳した振動を示す。一方、カンチレバーの振動信号は、通常ロックインアンプに入力される。ロックインアンプは入力信号の中から参照信号の周波数成分のみをフィルタリングして増幅する狭帯域アンプと考えられる。このロックインアンプは、複数の周波数成分を持つカンチレバー振動信号から測定したい振動周波数成分と同じ周波数の参照信号が入力され、ロックインアンプにて複数の周波数成分を持つカンチレバー振動信号から他の周波数成分を分離して所望の振動周波数成分のみを抽出し増幅する。
【0041】
例えば、カンチレバー振動信号に異なる周波数を持つ2つの信号があって、これをロックインアンプにより分離して検出する場合、片方の信号(以下A信号と呼ぶ)にとって他の信号(以下B信号と呼ぶ)はノイズとなる。したがって、A信号にとってはB信号は小さい程良いのであるが、そのような状態になると、B信号にとってノイズとなるA信号が非常に多い信号の中からB信号をフィルタリングして増幅しなければならず、B信号の分離・増幅にとって非常に不利になる。このようなことをなくすためには、カンチレバーの振動信号におけるA信号とB信号の振幅がほぼ等しい状態にあることが必要である。
【0042】
一方、図5に示すように例えば、一次共振振動によるカンチレバーの振動による曲がり傾斜角度、変位、速度が最大になる位置は、必ずしも高次の共振振動によるカンチレバーの曲がり傾斜角度、変位、速度が最大になる位置とは限らない。したがって、2つの周波数の振動振幅ががほぼ等しくならないことが多い。これらの振動振幅を同程度にするためには、2つの信号の内、振幅が小さい方の振動を生じさせている力、例えば静電引力を大きくするという方法をとればよい。しかし、静電引力を大きくするためには、カンチレバー先端の探針と試料の表面との間で放電が生じ、測定が不可能になる。したがって、このような方法では、必ずしも異なる周波数の振動振幅を同程度にすることはできない。
【0043】
本発明は、測定を精度良く安定して行うことができる表面電位計及び形状測定器、力顕微鏡を提供することを目的とする。
【0044】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、測定物に対向配置される導電性探針を先端部に設けたバネを、前記測定物と前記バネとの間に作用する静電引力により変形させ、該バネの変形により前記測定物と前記バネとの間に作用する静電引力を検出して前記測定物の電位と形状の何れか一方或いは両方を測定するようにした表面電位計及び形状測定器において、前記バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の第1交流電圧と、前記バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの内、前記第1交流電圧の周波数とは異なる周波数の2分の1の周波数を持つ第2交流電圧とを重畳させた電圧を前記導電性探針に印加する電圧印加手段と、前記第1交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第1振動の振幅から前記測定物の電位を測定する表面電位測定手段と、前記第2交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第2振動の振幅から前記測定物の形状を測定する形状測定手段とを備えたものである。
【0045】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の表面電位計及び形状測定器において、前記電圧印加手段が前記導電性探針に前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧とを重畳した電圧を印加し、かつ、前記第1交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第1振動の振幅が零もしくは一定値になるように前記直流電圧を可変する電位制御手段と、前記直流電圧を測定する電位測定手段と、前記測定物と前記導電性探針との間の距離を可変するアクチュエータを有し前記第2交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第2振動の振幅が一定値になるように前記アクチュエータを制御して前記測定物と前記導電性探針との間の距離を制御する距離制御手段と、前記アクチュエータの変位量を測定する変位量測定手段とを備えたものである。
【0046】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、前記導電性探針に印加すべき電圧を測定物の導電性基板に印加し、前記導電性探針の電位を基準電位としたものである。
【0047】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、交流電圧と直流電圧の内のいずれか1つ或いは前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを前記導電性探針に印加し、残りの1つを前記測定物に印加する電圧印加手段を有するものである。
【0048】
請求項5記載の発明は、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを測定物の導電性基板に印加し、残りの1つを前記導電性探針に印加する電圧印加手段を有するものである。
【0049】
【作用】
請求項1記載の発明では、バネの先端部に設けられた導電性探針が測定物に対向し、バネは測定物とバネとの間に作用する静電引力により変形する。このバネの変形により、測定物とバネとの間に作用する静電引力が検出されて測定物の電位と形状の何れか一方或いは両方が測定される。バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の第1交流電圧と、バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの内、前記第1交流電圧の周波数とは異なる周波数の2分の1の周波数を持つ第2交流電圧とを重畳させた電圧が電圧印加手段により導電性探針に印加され、表面電位測定手段が第1交流電圧による導電性探針と測定物との間の静電引力により生ずるバネの第1振動の振幅から測定物の電位を測定する。そして、形状測定手段が第2交流電圧による導電性探針と測定物との間の静電引力により生ずるバネの第2振動の振幅から測定物の形状を測定する。
【0050】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の表面電位計及び形状測定器において、電圧印加手段が導電性探針に第1交流電圧と第2交流電圧と直流電圧とを重畳した電圧を印加し、電位制御手段が第1交流電圧による導電性探針と測定物との間の静電引力により生ずるバネの第1振動の振幅が零もしくは一定値になるように上記直流電圧を可変し、電位測定手段が上記直流電圧を測定する。距離制御手段は、アクチュエータにより測定物と導電性探針との間の距離を可変し、第2交流電圧による導電性探針と測定物との間の静電引力により生ずるバネの第2振動の振幅が一定値になるようにアクチュエータを制御して測定物と導電性探針との間の距離を制御する。そして、アクチュエータの変位量が変位量測定手段により測定される。
【0051】
請求項3記載の発明では、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、導電性探針に印加すべき電圧が測定物の導電性基板に印加され、導電性探針の電位は基準電位である。
【0052】
請求項4記載の発明では、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、電圧印加手段は、交流電圧と直流電圧の内のいずれか1つ或いは第1交流電圧と第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを導電性探針に印加し、残りの1つを測定物に印加する。
【0053】
請求項5記載の発明では、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、電圧印加手段は、第1交流電圧と第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを測定物の導電性基板に印加し、残りの1つを導電性探針に印加する。
【0054】
【実施例】
図1は本発明の第1実施例を示す。この第1実施例は、請求項1、2記載の発明の実施例であり、前述した図4に示す力顕微鏡とは以下の点が異なる。交流電源29はカンチレバー26の一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の第1交流電圧を発生し、交流電源30はカンチレバー26の一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の2分の1の周波数を持つ第2交流電圧を発生する。例えば、交流電源29は交流電圧Vr1sinωr1tを発生し、交流電源30は交流電圧Vωr2sin(ωr2t/2)を発生する。ここに、ωr1はカンチレバー26の第1共振周波数、ωr2はカンチレバー26の第2共振周波数とする。
【0055】
ロックインアンプ37はプリアンプ36の出力信号を交流電源29からの参照信号Vr1sinωr1tにより位相検波して増幅することによりカンチレバー26の振動のωr1成分の振幅を分離増幅し、ロックインアンプ38はプリアンプ36の出力信号を交流電源30からの参照信号Vr2sin(ωr2t/2)により位相検波して増幅することによりカンチレバー26の振動のωr2成分の振幅を分離増幅する。V r2sin( ω r2 t/2 ) は、以下、V r2sin ω r2 t/2と略称する。
【0056】
本実施例において、探針27の先端と試料28の表面との間の電位差Vは
V=Vb−Vs+Vr1sinωr1t+Vr2sinωr2t/2・・・(45)
となる。したがって、Fesは次の(9)式より
となる。
【0057】
ωr1はカンチレバー26の第1共振周波数、ωr2はカンチレバー26の第2共振周波数であるから、カンチレバー26は次の(47)式で表わされるFesのωr1、ωr2成分Fesωrにより共振する。
したがって、Fesωrによって生ずるカンチレバー26の振動を示すプリアンプ36の出力vは次の(48)式で表わされる。
【0058】
ロックインアンプ37、38は入力信号の参照信号周波数と同じ周波数成分のみを増幅する狭帯域アンプと考えられる。したがって、2位相式のロックインアンプ38によりωr2の参照信号でvを増幅することにより、(48)式のωr2成分のみをその位相ωr2に無関係に得ることができる。
【0059】
このロックインアンプ38の出力信号V2は次の(49)式のようになる。
【0060】
V2=−(1/4)A2(∂C/∂Z)Vr22・・・(49)
すなわち、周囲の気温や湿度、気圧などの影響によりωr1、ωr2がずれ、φr1、φr2が変動しても試料28の表面電位が試料28の表面形状測定結果に混入・干渉することはない。
【0061】
一方、ロックインアンプ37によりωr1の参照信号でvを増幅することにより、(48)式のωr1成分のみを増幅することができる。この時、ロックインアンプ37において、位相θでvを位相検波増幅すれば、ロックインアンプ37の出力信号V1は次の(49)式のようになる。
【0062】
(50)式にはφr2が含まれていないので、試料28の表面電位測定結果はφr2の変動による影響を受けない。θ=φr1とすると、V1は、
V1=−A1(∂C/∂Z)(Vb−Vs)Vr1・・・(51)
となり、最大値を示す。
【0063】
ここで、周囲の気温や湿度、気圧などの影響によりωr1がずれ、φr1が(φr1+Δφr1)に変動したとする。また、θはφr1のままであったとすると、この時のV1は
V1=−A1(∂C/∂Z)(Vb−Vs)Vr1cosΔφr1・・・(52)
となる。(52)式からφr1の変動により、V1は最大値から小さくなるが、試料28の表面形状が試料28の表面電位測定結果に混入・干渉することはない。以上のように、第4実施例においては、従来技術のように、カンチレバーの共振周波数が周囲の気温や湿度、気圧などの影響によりわずかに変動することで、試料の表面電位と表面形状の測定結果が互いに干渉して無視できない誤差となって現われてくるようなことが無い。すなわち、カンチレバーの共振周波数の変動に無関係に安定して試料の表面電位と表面形状を測定することができる。
【0064】
このように、第1実施例は、測定物28に対向配置される導電性探針27を先端部に設けたバネとしての導電性カンチレバー26を、測定物28とバネ26との間に作用する静電引力により変形させ、バネ26の変形により測定物28とバネ26との間に作用する静電引力を検出して測定物28の電位と形状の何れか一方或いは両方を測定するようにした表面電位計及び形状測定器としての力顕微鏡において、バネ26の一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の第1交流電圧と、バネ26の一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの内、前記第1交流電圧の周波数とは異なる周波数の2分の1の周波数を持つ第2交流電圧とを重畳させた電圧を導電性探針27に印加する電圧印加手段としての交流電源29、30と、第1交流電圧による導電性探針27と測定物28との間の静電引力により生ずるバネ26の第1振動の振幅から測定物28の電位を測定する表面電位測定手段としてのロックインアンプ37と、第2交流電圧による導電性探針27と測定物28との間の静電引力により生ずるバネ26の第2振動の振幅から測定物の形状を測定する形状測定手段としてのロックインアンプ38とを備えたので、バネ26の共振周波数の変動に無関係に安定して試料の表面電位と表面形状を測定することができる。
【0065】
また、第1実施例は、請求項2記載の発明の実施例であって、電圧印加手段としての交流電源29、30、加算器31が導電性探針27に第1交流電圧と第2交流電圧と直流電圧とを重畳した電圧を印加し、かつ、第1交流電圧による導電性探針27と測定物28との間の静電引力により生ずるバネ26の第1振動の振幅が零(もしくは一定値)になるように上記直流電圧を可変する電位制御手段としての積分器39を含む帰還回路と、直流電圧を測定する電位測定手段としてのロックインアンプ37と、測定物28と導電性探針26との間の距離を可変するアクチュエータとしてのZ軸アクチュエータ43を有し第2交流電圧による導電性探針27と測定物28との間の静電引力により生ずるバネ26の第2振動の振幅が一定値になるようにアクチュエータ43を制御して測定物28と導電性探針27との間の距離を制御する距離制御手段としての帰還回路と、アクチュエータ43の変位量を測定する変位量測定手段としてのロックインアンプ38とを備えたので、バネ26の共振周波数の変動に無関係に安定して試料の表面電位と表面形状を測定することができる。
【0066】
また、請求項3記載の発明の一実施例は、上記第1実施例において、導電性探針27に印加すべき電圧を導電性探針27に印加せずに測定物28の導電性基板33に印加し、導電性探針27の電位を基準電位としたものであり、第1実施例と同様な効果が得られる。
【0067】
また、請求項4記載の発明の実施例は、上記第1実施例において、交流電源29、30を含む電圧印加手段により、上記第1交流電圧と上記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを導電性探針27に印加し、残りの1つを測定物28に印加するようにしたものであり、第1実施例と同様な効果が得られる。なお、この実施例では、測定物の導電性基板は接地しない。
【0068】
また、請求項5記載の発明の実施例は、上記第1実施例において、交流電源29、30を含む電圧印加手段により、上記第1交流電圧と上記第2交流電圧と上記直流電圧の内のいずれか2つをカンチレバー26に印加せずに測定物28の導電性基板33に印加し、残りの1つを導電性探針27に印加するようにしたものであり、第1実施例と同様な効果が得られる。
【0069】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、測定物に対向配置される導電性探針を先端部に設けたバネを、前記測定物と前記バネとの間に作用する静電引力により変形させ、該バネの変形により前記測定物と前記バネとの間に作用する静電引力を検出して前記測定物の電位と形状の何れか一方或いは両方を測定するようにした表面電位計及び形状測定器において、前記バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の第1交流電圧と、前記バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの内、前記第1交流電圧の周波数とは異なる周波数の2分の1の周波数を持つ第2交流電圧とを重畳させた電圧を前記導電性探針に印加する電圧印加手段と、前記第1交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第1振動の振幅から前記測定物の電位を測定する表面電位測定手段と、前記第2交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第2振動の振幅から前記測定物の形状を測定する形状測定手段とを備えたので、バネの共振周波数の変動に無関係に安定して試料の表面電位と表面形状を測定することができる。
【0070】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の表面電位計及び形状測定器において、前記電圧印加手段が前記導電性探針に前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧とを重畳した電圧を印加し、かつ、前記第1交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第1振動の振幅が零もしくは一定値になるように前記直流電圧を可変する電位制御手段と、前記直流電圧を測定する電位測定手段と、前記測定物と前記導電性探針との間の距離を可変するアクチュエータを有し前記第2交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第2振動の振幅が一定値になるように前記アクチュエータを制御して前記測定物と前記導電性探針との間の距離を制御する距離制御手段と、前記アクチュエータの変位量を測定する変位量測定手段とを備えたので、バネの共振周波数の変動に無関係に安定して試料の表面電位と表面形状を測定することができる。
【0071】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、前記導電性探針に印加すべき電圧を測定物の導電性基板に印加し、前記導電性探針の電位を基準電位としたので、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器と同様な効果が得られる。
【0072】
請求項4記載の発明によれば、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、交流電圧と直流電圧の内のいずれか1つ或いは前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを前記導電性探針に印加し、残りの1つを前記測定物に印加する電圧印加手段を有するので、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器と同様な効果が得られる。
【0073】
請求項5記載の発明によれば、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを測定物の導電性基板に印加し、残りの1つを前記導電性探針に印加する電圧印加手段を有するので、請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示すブロック図である。
【図2】従来の力顕微鏡の一例を示すブロック図である。
【図3】同力顕微鏡の一部を示すブロック図である。
【図4】従来の力顕微鏡の他の例を示すブロック図である。
【図5】従来の力顕微鏡を説明するための図である。
【符号の説明】
11,26 カンチレバー
12,27 導電性探針
13,28 試料
14 圧電素子
15,16,29,30 交流電源
17 直流電源
18,33 導電性基板
19,34 光源
20,35 受光素子
21,22,37,38,55 ロックインアンプ
23 電圧フィードバック回路
24 Zサーボ回路
25 スキャナ
31 加算器
32 アンプ
36 プリアンプ
39,42 積分器
41 基準電圧源
43 Z軸アクチュエータ
Claims (5)
- 測定物に対向配置される導電性探針を先端部に設けたバネを、前記測定物と前記バネとの間に作用する静電引力により変形させ、該バネの変形により前記測定物と前記バネとの間に作用する静電引力を検出して前記測定物の電位と形状の何れか一方或いは両方を測定するようにした表面電位計及び形状測定器において、前記バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの周波数の第1交流電圧と、前記バネの一次及び高次の共振周波数又はこの共振周波数とほぼ等しい周波数の何れかの内、前記第1交流電圧の周波数とは異なる周波数の2分の1の周波数を持つ第2交流電圧とを重畳させた電圧を前記導電性探針に印加する電圧印加手段と、前記第1交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第1振動の振幅から前記測定物の電位を測定する表面電位測定手段と、前記第2交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第2振動の振幅から前記測定物の形状を測定する形状測定手段とを備えたことを特徴とする表面電位計及び形状測定器。
- 請求項1記載の表面電位計及び形状測定器において、前記電圧印加手段が前記導電性探針に前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧とを重畳した電圧を印加し、かつ、前記第1交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第1振動の振幅が零もしくは一定値になるように前記直流電圧を可変する電位制御手段と、前記直流電圧を測定する電位測定手段と、前記測定物と前記導電性探針との間の距離を可変するアクチュエータを有し前記第2交流電圧による前記導電性探針と前記測定物との間の静電引力により生ずる前記バネの第2振動の振幅が一定値になるように前記アクチュエータを制御して前記測定物と前記導電性探針との間の距離を制御する距離制御手段と、前記アクチュエータの変位量を測定する変位量測定手段とを備えたことを特徴とする表面電位計及び形状測定器。
- 請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、前記導電性探針に印加すべき電圧を測定物の導電性基板に印加し、前記導電性探針の電位を基準電位としたことを特徴とする表面電位計及び形状測定器。
- 請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、交流電圧と直流電圧の内のいずれか1つ或いは前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを前記導電性探針に印加し、残りの1つを前記測定物に印加する電圧印加手段を有することを特徴とする表面電位計及び形状測定器。
- 請求項1または2記載の表面電位計及び形状測定器において、前記第1交流電圧と前記第2交流電圧と直流電圧の内のいずれか2つを測定物の導電性基板に印加し、残りの1つを前記導電性探針に印加する電圧印加手段を有することを特徴とする表面電位計及び形状測定器。
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