JP3592391B2 - 加熱殺菌方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は容器内に充填された被殺菌物の加熱殺菌方法に係り、特に、食品等を被殺菌物とした場合に用いて好適な加熱殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品の殺菌方法には、従来より、例えばレトルトパウチのような容器内に調理済みの食品を充填し、この食品を容器ごと高圧蒸気滅菌等の方法で加熱殺菌する方法、あるいは、調理済みの食品を直接的に加熱殺菌した後、無菌環境下で容器内に充填する方法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の方法では、食品を容器の壁面を介して間接的に加熱殺菌するため殺菌効率が低く、十分な殺菌のためには、長時間かつ過度な殺菌を行う必要があった。その結果、容器内に充填された食品の味が低下したり、煮くずれを起こしたりする等の問題が生じていた。特に、大きな具が入った食品では、具に熱が浸透しにく、殺菌に極めて長時間を要するため、上記傾向が著しかった。
【0004】
一方、後者の方法では、食品が直接的に加熱殺菌されるため、過度な加熱殺気を行う必要がない点で、前者の方法より優れている。しかしながら、殺菌済みの食品を容器内に充填するには、食品の殺菌から容器への充填に至る全工程において、少なくとも食品の周囲を無菌環境に保つ必要がある。そのため、大規模な設備が必要となり、かつ無菌環境の維持に際しては、煩雑な手続きを要していた。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、被殺菌物と蒸気との直接的な接触による殺菌時間の短縮と、殺菌設備および殺菌作業の簡略化とをその目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の加熱殺菌方法は、被殺菌物を、蒸気は通過するが細菌は通過できない大きさの細孔が多数設けられた濾過部でシールされた容器内に充填した後、この容器の前記濾過部でシールされた面を下向きとして、前記容器ごと加熱殺菌を行うことを主たる特徴としている。
【0007】
【作用】
本発明の加熱殺菌方法においては、被殺菌物を蒸気が通過可能な濾過部でシールされた容器内に充填し、この容器ごと加熱殺菌を行うため、被殺菌物はこの濾過部を介して直接蒸気と接触し、殺菌される。一方、細菌の通過はこの濾過部により阻止されるため、一旦殺菌が終了すると、容器内の被殺菌物は、容器を開けない限り無菌的に保たれる。また、容器の、濾過部でシールされた面を下向きとして加熱殺菌を行うため、シールされた面の表面への水滴等の付着による蒸気の通過量低下を防止しつつ、殺菌を行うことができる。
【0008】
【実施例】
以下、図面に基づき、本発明の実施例について更に詳しく説明する。
図1は、本発明の加熱殺菌方法に使用される、被殺菌物を収容する容器1の例を示すものである。この容器1は有底円筒状をなす本体1aと、この本体1aの開口端に嵌合されて容器1を密閉する蓋部1bとから構成され、かつ蓋部1bの端面はそのほぼ全面にわたり切り欠かれるとともに、蒸気は通過するが細菌は通過できない大きさの細孔が多数設けられた膜(濾過部)2でシールされている。
【0009】
ここで、膜2の材質としては、例えば、弗素樹脂、セルロースと酸とのエステル、あるいはポリ塩化ビニル等が挙げられる。また、細孔の孔径は約25nm〜15μmとすることが望ましい。膜2の他に、孔径約25nm〜15μm程度のセラミック製フィルター等を蓋部1bの端面に嵌合させ、濾過部として用いてもよい。
【0010】
殺菌を行う場合には、まず、所定量の被殺菌物を計量して本体1a内に入れた後、蓋部1bで覆い、被殺菌物を容器1内に充填、密閉する。次いで、被殺菌物が充填された容器1を複数個まとめてオートクレーブ等の殺菌装置に収容し、高圧蒸気滅菌等の方法で加熱殺菌する。
【0011】
ここで、容器1は蒸気の通過が可能な膜2によりシールされているため、容器1内の被殺菌物はこの膜2を介して蒸気と接触することにより直接的に殺菌される。従って、殺菌に際して過度な加熱を行う必要がなく、殺菌時間が短縮される。その結果、食品を被殺菌物とした場合でも、殺菌に伴い容器1内の食品の味が低下したり、煮くずれを起こしたりすることがない。また、被殺菌物に熱が浸透しやすいため、大きな具が入った食品に対しても短時間で殺菌を行うことができる。
【0012】
被殺菌物の加熱殺菌が終了したら、被殺菌物を冷却させた後、容器1を殺菌装置から取り出す。ところが、被殺菌物の種類によっては、膜2を介して被殺菌物の水分が蒸発し、被殺菌物が乾燥、変質する恐れがあるため、容器1内の被殺菌物をレトルトパウチ等の他の容器(以下、「保存用容器」と称する。)に再度充填する必要がある。
【0013】
この場合、膜2は細菌に対する通過性を有さないため、殺菌済みの容器1を無菌環境下から(無菌環境ではない)外部に取り出しても、容器1を開けない限り細菌が容器1内に侵入することはなく、容器1内の被殺菌物は常時無菌的に保たれる。従って、外部に取り出した容器1を再び無菌環境下に置き、容器1の表面を紫外線照射等の簡便な方法で再度殺菌した後、容器1を開けることにより、殺菌済みの被殺菌物を、無菌的に保存用容器へと充填できる。
【0014】
すなわち、本発明に係る方法では、容器1を殺菌してからこの容器1を開けるまでの間は、必ずしも容器1の周囲を無菌的に保つ必要はない。そのため、無菌室等の設備が小規模で済み、かつ無菌環境の維持に際しての煩雑な手続きも少なくなる。一方、殺菌済みの容器1を無菌的環境下で殺菌装置から取り出し、引続き無菌環境下で容器1を開けることにより、殺菌済みの被殺菌物を無菌的に保存用容器へと充填することももちろん可能である。
【0015】
また、膜2表面への水滴等の付着に伴う蒸気の通過量低下を防止する目的で、容器1の上下を入れ替え、膜2を下向きとして加熱殺菌を行ってもよい。この場合、膜2は蒸気は通過するものの液体または固体は通過しないため、膜2を下向きとしても、被殺菌物が膜2を介して容器1外に漏出することなく殺菌が行われる。
【0016】
同様に、加熱殺菌と殺菌液の散布とを併用する場合には、膜2を下向きとし、かつ上方から殺菌液を散布することにより、膜2の表面への殺菌液の付着と、それに伴う蒸気通過量の低下を防止しつつ、殺菌を行うことができる。
【0017】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明に係る加熱殺菌方法によれば、被殺菌物を蒸気が容器に設けられた濾過部を介して蒸気と直接的に接触し殺菌されるため、殺菌に際して過度な加熱を行う必要がなく、殺菌時間が短縮される。その結果、特に食品の殺菌に適用することにより、殺菌に伴う食品の味の低下や煮くずれ等の発生を防止できる。また、被殺菌物に熱が浸透しやすいため、大きな具が入った食品に対しても短時間で殺菌を行うことができる。更に、容器の、濾過部でシールされた面を下向きとして加熱殺菌を行うため、シールされた面の表面への水滴等の付着による蒸気の通過量低下を防止しつつ、殺菌を行うことができる。
【0018】
一方、殺菌済みの容器内に充填された被殺菌物は常時無菌的に保たれるため、殺菌済みの容器を開けるまでの間、必ずしも容器の周囲を無菌的に保つ必要はない。そのため、殺菌設備が小規模で済み、かつ無菌環境の維持に際しての煩雑な手続きも少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加熱殺菌方法に使用される、被殺菌物を収容する容器の構造の例を示す図である。
【符号の説明】
1 容器
1a 本体
1b 蓋部
2 膜(濾過部)
Claims (5)
- 被殺菌物を、蒸気は通過するが細菌は通過できない大きさの細孔が多数設けられた濾過部でシールされた容器内に充填した後、この容器の前記濾過部でシールされた面を下向きとして、前記容器ごと加熱殺菌を行うことを特徴とする加熱殺菌方法。
- 前記容器の上方から殺菌液を散布することを特徴とする請求項1記載の加熱殺菌方法。
- 加熱殺菌済みの前記容器を無菌環境下から取り出した後、再び無菌環境下に置いて前記容器の表面を再度殺菌し、更に前記容器を開けて殺菌済みの被殺菌物を前記容器から取り出し、他の容器内に再充填することを特徴とする請求項1または2記載の加熱殺菌方法。
- 前記容器を加熱殺菌後も引続き無菌環境下に置くとともに、前記容器を開けて殺菌済みの被殺菌物を前記容器から取り出し、他の容器内に再充填することを特徴とする請求項1または2記載の加熱殺菌方法。
- 前記被殺菌物が食品であることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の加熱殺菌方法。
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1995
- 1995-02-27 JP JP03886395A patent/JP3592391B2/ja not_active Expired - Fee Related
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