JP3591929B2 - 貫通孔への鞘管固定具 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の仕切空間を形成する仕切板状部(例えば、床や天井や壁)に設けられた鞘管挿通用の貫通孔に挿入自在で、且つ、鞘管に対して外嵌状態で前記鞘管を前記貫通孔に固定自在な固定フレームを設け、熱膨張性の貫通孔密閉用部材を複数、前記固定フレームの内周部における前記貫通孔への挿入方向に間隔をあけた複数箇所に各別に設け、例えば、前記仕切板状部で仕切られた仕切空間の一方で火災が生じても、この貫通孔を通して他方の仕切空間に煙や炎がまわらないようにする防火貫通部形成用の「貫通孔への鞘管固定具」に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の貫通孔への鞘管固定具としては、図7に示すように、固定フレーム40の両端部に、前記貫通孔密閉用部材5を位置させてある部材内装フレーム部41を各別に設け、前記両部材内装フレーム部41は、熱膨張する前記貫通孔密閉用部材5が固定フレーム40の径方向に沿った外方に漏れ出ないように、何れも密閉状態に形成すると共に、両部材内装フレーム部41間の中間部42は、固定用のモルタルMが鞘管P周りにまわるように非密閉状態に形成してあるものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種の鞘管固定具を、前記貫通孔2に設置する方法として、貫通孔2に前記鞘管固定具43を挿入した状態で、鞘管固定具43と、貫通孔2の内周壁2aとの隙間にモルタルMを充填するか、または、鞘管固定具43の外周部に、シート状貫通孔密閉用部材6を巻き付けて、そのまま貫通孔2に挿入することで前記隙間を閉塞した状態に取り付ける方法とがある。
前述した従来の貫通孔への鞘管固定具によれば、部材内装フレーム部41を密閉状態に形成してあるから、火災に伴って、部材内装フレーム部41に内装してある貫通孔密閉用部材5の熱膨張によってのみ、前記鞘管Pの消失跡を埋めることになるわけであるが、予想以上に鞘管Pの消失範囲が広い場合には、貫通孔密閉用部材5の熱膨張が、その広い範囲に消費されることになり、貫通孔2の閉塞力が低下する危険性があり、好ましくは、内装管に対してより強い締付け力を作用させた状態で貫通孔2の閉塞をできることが望まれる。
また、上述の設置方法の内の前者の方法で貫通孔に設置した場合には、前記固定フレーム40の中間部42においては、鞘管Pの周囲にモルタルMがまわり、鞘管Pと貫通孔密閉用部材との接当面間に入り込んだ状態で固まることがある。このようにして貫通孔密閉用部材5と鞘管Pとの間で固まったモルタルによって、前記貫通孔密閉用部材の熱膨張が阻害されるという問題点がある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解消し、より強力に貫通孔の閉塞を実施できる貫通孔への鞘管固定具を提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
〔構成〕
請求項1に係わる本発明の特徴構成は、仕切空間を形成する仕切板状部に設けられた鞘管挿通用の貫通孔に挿入自在で、且つ、鞘管に対して外嵌状態で前記鞘管を前記貫通孔に固定自在な固定フレームの内、前記固定フレームの内周部における前記貫通孔への挿入方向に間隔をあけた複数箇所に各別に設けてある複数の熱膨張性貫通孔密閉用部材を位置させてある部材内装フレーム部に、前記固定フレームの径方向に沿って前記固定フレーム内外空間を連通自在な連通孔を設けてあるところにある。
【0006】
請求項2に係わる本発明の特徴構成は、前記連通孔が、前記固定フレームの前記挿入方向での端部に形成してあるところにある。
【0007】
請求項3に係わる本発明の特徴構成は、前記固定フレームに、前記貫通孔密閉用部材の前記挿入方向に沿った熱膨張を拘束する拘束部を設けてあるところにある。
【0008】
請求項4に係わる本発明の特徴構成は、前記固定フレームが板金製で、前記拘束部は、前記フレーム部を、内周側に切り起こして形成してあるところにある。
【0009】
〔作用及び効果〕
請求項1に係わる本発明の特徴構成によれば、前記固定フレームの内、複数の熱膨張性貫通孔密閉用部材を位置させてある部材内装フレーム部に、前記連通孔を設けてあるから、例えば、鞘管固定具の外周部に、シート状貫通孔密閉用部材を巻き付けた状態で鞘管固定具を貫通孔2に設置してある場合には、前記連通孔を通して、固定フレームの内外に設けてある各貫通孔密閉用部材どうしが力を伝達し合うことが可能となり、内側の貫通孔密閉用部材と外側の貫通孔密閉用部材との両者の熱膨張力を内装管に作用させることができる。従って、より強力に、貫通孔の閉塞が可能となる。
また、前記部材内装フレーム部に前記連通孔が設けてあるものの、その連通孔は固定フレームに内装してある貫通孔密閉用部材によって塞がった状態となるために、鞘管固定具をモルタルで固定する場合であっても、貫通孔密閉用部材と鞘管との間にモルタルが入り込むことを防止できる。
【0010】
請求項2に係わる本発明の特徴構成によれば、前記連通孔が、前記固定フレームの前記挿入方向での端部に形成してあるから、前記両貫通孔密閉用部材による貫通孔の閉塞を、火災側に最も近い位置で実施することが可能となり、より確実な防火貫通部とすることが可能となる。
【0011】
請求項3に係わる本発明の特徴構成によれば、前記固定フレームに、前記貫通孔密閉用部材の前記挿入方向に沿った熱膨張を拘束する拘束部を設けてあるから、前記貫通孔密閉用部材の熱膨張力を、鞘管Pの径方向に沿ってより効率的に作用させて、貫通孔の閉塞をより確実に実施することが可能となる。
【0012】
請求項4に係わる本発明の特徴構成によれば、前記固定フレームが板金製で、前記拘束部は、前記フレーム部を、内周側に切り起こして形成してあるから、上述のような作用効果を叶えることができながら、製作手間の軽減を図り、コストダウンを叶えることが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図4は、壁体1(仕切板状部の一例)に設けられた鞘管挿通用の貫通孔2に、給湯配管を挿通自在な鞘管Pを挿通させて、本発明の「貫通孔の鞘管固定具」の一例である鞘管固定具(以後、単に固定具という)Sによって、前記鞘管Pを貫通孔2内に固定し、防火貫通部を構成してある状況を示すものである。
【0015】
前記鞘管Pは、樹脂製の可撓管によって構成してあり、内部には、例えば、給水管や給湯管等の配管3を挿通させる(予め、挿通させてある場合もある)ことができ、前記配管3が、露出するのを防止して保護することができ、且つ、前記配管3に対する断熱を図り、配管3の結露を発生し難くすることができる。
【0016】
前記固定具Sは、前記貫通孔2に挿入自在で、且つ、鞘管Pに対して外嵌自在な固定フレーム4を設け、前記固定フレーム4に内嵌する状態に、塊状の熱膨張性貫通孔密閉用部材5を設けて構成してある。
また、前記固定フレーム4は、その外周部に、シート状の熱膨張性貫通孔密閉用部材6を巻回して、前記貫通孔2の内周壁2aと、前記固定フレーム4との間に前記シート状貫通孔密閉用部材6が位置する状態で、前記貫通孔2内に固定してある。
従って、仮に、火災が発生して鞘管Pが燃焼したり収縮しても、その周囲に熱膨張した前記両貫通孔密閉用部材5,6が広がって隙間を埋めつくし、煙や炎が貫通孔2を通過しにくいようにすることができる(図5参照)。
因に、前記塊状の貫通孔密閉用部材5は、炭酸カルシウム・無機質膨張剤・有機質膨張剤・ゴム・顔料等の成分によって構成してあり、前記シート状の貫通孔密閉用部材6は、炭酸カルシウム・無機質膨張剤・有機質膨張剤・未加硫のゴム・顔料・ポリオレフィン樹脂等の成分によって構成してある。
【0017】
前記固定フレーム4は、図1・2に示すように、上下に二分割した分割フレーム4a,4bから構成してある。前記両分割フレーム4a,4bは、板金製で、共に、同一形状の原材料金属板を、各別に折り曲げ加工して形成してある。図3に、その展開図を示すが、図中、破線が谷折り線に、一点鎖線が山折り線に、二点鎖線が一方の(下方向に配置される方の)分割フレーム4aにのみ実施される谷折り線に該当する。
図中の7・8・9・10の切り起こし部は、前記塊状の貫通孔密閉用部材5をはめ込むための保持空間X形成用の仕切となり、且つ、前記貫通孔密閉用部材5の前記鞘管長手方向に沿った熱膨張を拘束して、その膨張力が鞘管の径方向に沿った締付け力として作用しやすくなるように形成してある。
前記固定フレーム4の内、前記保持空間Xに面する部分が、部材内装フレーム部4cにあたり、前記7・8・9・10の切り起こし部が、拘束部Kにあたる。また、固定フレーム4の側部にあたる11・12の側面部には、前記保持空間Xにはめ込まれた貫通孔密閉用部材5の外れ防止のための爪部13を各別に設けてあり、前記貫通孔密閉用部材5に外れ方向の力が作用すると、前記爪部13が前記貫通孔密閉用部材5の溝部に引掛って、外れるのを防止することが可能となる。一方、前記側面部11,12の中間部分には、径方向に沿って両分割フレーム4a,4bどうしを合わせることによって係合自在な係合凸部14と係合凹部15とを各別に設けてある。
また、前記7・10の切り起こし部を前記谷折り線に沿って折り曲げることによって図中の16・17の切り起こし部は、固定フレーム4の外周側に突出状態に切り起こされる。この両切り起こし部16,17の内、16の切り起こし部は、上配置の分割フレーム4bにおいては、貫通孔2に対する固定フレーム4の挿入に伴って、終端位置において貫通孔2の周縁部に当接するストッパー(挿入阻止機構の一例)Tとなる。そしてまた、この16の切り起こし部は、下配置の分割フレーム4aにおいては、前記二点鎖線(図3参照)に沿って先端部が折り曲げられて、17の切り起こし部と同寸法の突出量となる。この下配置の分割フレーム4aの16・17の切り起こし部、及び、上配置の分割フレーム4bの17の切り起こし部は、貫通孔の内周壁2aと固定フレーム4との所定の離間距離を確保するスペーサ部Rにあたる。このスペーサ機能によって、固定フレーム4の外周部に巻回するシート状貫通孔密閉用部材6の適切な配置スペースを固定フレーム周囲に確保することができ、直接的に鞘管P・配管3・固定具Sの重量がシート状貫通孔密閉用部材6に作用するのを防止することが可能となる。従って、例えば、火災が発生した場合でも、シート状貫通孔密閉用部材6の熱膨張を、偏りのない状態でサポートでき、前記貫通孔2の高い閉塞効果を期待することが可能となる。
一方、前記部材内装フレーム部4cには、前記固定フレーム4の径方向に沿って前記固定フレーム内外空間を連通自在な連通孔Hを設けてある。具体的には、前記7・8・9・10の切り起こし部の切り起こし跡が、この連通孔Hにあたる。この連通孔Hを設けてあることによって、火災時に、図5に示すように、この連通孔Hを通して、塊状貫通孔密閉用部材5とシート状貫通孔密閉用部材6とが熱膨張力を相互に伝達することができるようになる。従って、例えば、鞘管Pの燃焼跡を塊状貫通孔密閉用部材5の熱膨張によって埋める際に、シート状貫通孔密閉用部材6の熱膨張力をも効果的に作用させることができ、より確実に貫通孔の閉塞を果たし防火貫通部の性能向上を叶えることが可能となる。
また、特に、前記固定フレーム4の端部に形成してある連通孔Hによれば、前記両貫通孔密閉用部材5,6の熱膨張力を、貫通孔2の浅い部分に作用させて、より広範囲の閉塞範囲を確保することが可能となり、防火性能を向上させることが可能となる。
【0018】
本実施形態の固定具Sを用いた防火貫通部の形成方法は、貫通孔2に予め鞘管Pを挿通しておき、その鞘管を前記両分割フレーム4a,4bによって挟み込む状態に固定フレーム4を配置し、その外周部に、シート状貫通孔密閉用部材6を巻き付ける。その状態で、鞘管Pに沿って固定フレーム4をスライドさせて、貫通孔2に挿入することで、固定具Sの設置が完了する。
【0019】
〔別実施形態〕
以下に別実施形態を説明する。
【0020】
〈1〉 前記鞘管固定具は、先の実施形態で説明した上下に二分割に形成してあるものに限らず、例えば、三分割以上の複数分割構成であってもよい。また、板金のプレス加工によるものに限らない。
そして、一つの貫通孔に対して複数の鞘管固定具を並列状態に挿入して設置することも可能である。
〈2〉 前記鞘管固定具Sの貫通孔2への固定は、先の実施形態で説明したシート状貫通孔密閉用部材5に替えて、鞘管固定具Sを貫通孔2内に挿入した状態で、貫通孔の内周壁2aとの空隙にモルタルを充填することも可能である。この場合、部材内装フレーム部4cと部材内装フレーム部4cとの間の中間部分は、固定フレーム4の外方とは仕切られていることと、固定フレーム4の連通孔Hは、塊状貫通孔密閉用部材6によって塞がれていることとから、固定フレーム内空部へのモルタル流入は防止でき、例えば、塊状貫通孔密閉用部材6と鞘管Pとの間の隙間にモルタルが入って固化することによって、そのモルタルが塊状貫通孔密閉用部材6の熱膨張時に鞘管Pに対する締付力に抵抗して充分な貫通孔閉塞が叶えられなくなることを防止できる。
〈3〉 また、前記仕切板状部は、先の実施形態で説明した壁体に限るものではなく、例えば、床板・天井・梁・柱等であってもよく、これらを総称して仕切板状部という。図6には、床板に鞘管固定具を設置してある状況を示すものである。
〈4〉 前記鞘管は、先の実施形態で説明したように、別体の管を内装するものに限定されるものではなく、例えば、鞘管自体が、ケーブルや空調配管等であってもよく、それらを総称して鞘管という。
【0021】
尚、特許請求の範囲の項に、図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】鞘管固定具を示す分解斜視図
【図2】鞘管固定具を示す斜視図
【図3】分解固定フレームの展開図
【図4】鞘管固定具の設置状況を示す断面図
【図5】鞘管固定具の作用を示す断面図
【図6】別実施形態の鞘管固定具の設置状況を示す断面図
【図7】従来の鞘管固定具を示す断面図
【符号の説明】
1 仕切板状部
2 貫通孔
4 固定フレーム
4c 部材内装フレーム部
5 貫通孔密閉用部材
H 連通孔
K 拘束部
P 鞘管
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の仕切空間を形成する仕切板状部(例えば、床や天井や壁)に設けられた鞘管挿通用の貫通孔に挿入自在で、且つ、鞘管に対して外嵌状態で前記鞘管を前記貫通孔に固定自在な固定フレームを設け、熱膨張性の貫通孔密閉用部材を複数、前記固定フレームの内周部における前記貫通孔への挿入方向に間隔をあけた複数箇所に各別に設け、例えば、前記仕切板状部で仕切られた仕切空間の一方で火災が生じても、この貫通孔を通して他方の仕切空間に煙や炎がまわらないようにする防火貫通部形成用の「貫通孔への鞘管固定具」に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の貫通孔への鞘管固定具としては、図7に示すように、固定フレーム40の両端部に、前記貫通孔密閉用部材5を位置させてある部材内装フレーム部41を各別に設け、前記両部材内装フレーム部41は、熱膨張する前記貫通孔密閉用部材5が固定フレーム40の径方向に沿った外方に漏れ出ないように、何れも密閉状態に形成すると共に、両部材内装フレーム部41間の中間部42は、固定用のモルタルMが鞘管P周りにまわるように非密閉状態に形成してあるものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種の鞘管固定具を、前記貫通孔2に設置する方法として、貫通孔2に前記鞘管固定具43を挿入した状態で、鞘管固定具43と、貫通孔2の内周壁2aとの隙間にモルタルMを充填するか、または、鞘管固定具43の外周部に、シート状貫通孔密閉用部材6を巻き付けて、そのまま貫通孔2に挿入することで前記隙間を閉塞した状態に取り付ける方法とがある。
前述した従来の貫通孔への鞘管固定具によれば、部材内装フレーム部41を密閉状態に形成してあるから、火災に伴って、部材内装フレーム部41に内装してある貫通孔密閉用部材5の熱膨張によってのみ、前記鞘管Pの消失跡を埋めることになるわけであるが、予想以上に鞘管Pの消失範囲が広い場合には、貫通孔密閉用部材5の熱膨張が、その広い範囲に消費されることになり、貫通孔2の閉塞力が低下する危険性があり、好ましくは、内装管に対してより強い締付け力を作用させた状態で貫通孔2の閉塞をできることが望まれる。
また、上述の設置方法の内の前者の方法で貫通孔に設置した場合には、前記固定フレーム40の中間部42においては、鞘管Pの周囲にモルタルMがまわり、鞘管Pと貫通孔密閉用部材との接当面間に入り込んだ状態で固まることがある。このようにして貫通孔密閉用部材5と鞘管Pとの間で固まったモルタルによって、前記貫通孔密閉用部材の熱膨張が阻害されるという問題点がある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解消し、より強力に貫通孔の閉塞を実施できる貫通孔への鞘管固定具を提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
〔構成〕
請求項1に係わる本発明の特徴構成は、仕切空間を形成する仕切板状部に設けられた鞘管挿通用の貫通孔に挿入自在で、且つ、鞘管に対して外嵌状態で前記鞘管を前記貫通孔に固定自在な固定フレームの内、前記固定フレームの内周部における前記貫通孔への挿入方向に間隔をあけた複数箇所に各別に設けてある複数の熱膨張性貫通孔密閉用部材を位置させてある部材内装フレーム部に、前記固定フレームの径方向に沿って前記固定フレーム内外空間を連通自在な連通孔を設けてあるところにある。
【0006】
請求項2に係わる本発明の特徴構成は、前記連通孔が、前記固定フレームの前記挿入方向での端部に形成してあるところにある。
【0007】
請求項3に係わる本発明の特徴構成は、前記固定フレームに、前記貫通孔密閉用部材の前記挿入方向に沿った熱膨張を拘束する拘束部を設けてあるところにある。
【0008】
請求項4に係わる本発明の特徴構成は、前記固定フレームが板金製で、前記拘束部は、前記フレーム部を、内周側に切り起こして形成してあるところにある。
【0009】
〔作用及び効果〕
請求項1に係わる本発明の特徴構成によれば、前記固定フレームの内、複数の熱膨張性貫通孔密閉用部材を位置させてある部材内装フレーム部に、前記連通孔を設けてあるから、例えば、鞘管固定具の外周部に、シート状貫通孔密閉用部材を巻き付けた状態で鞘管固定具を貫通孔2に設置してある場合には、前記連通孔を通して、固定フレームの内外に設けてある各貫通孔密閉用部材どうしが力を伝達し合うことが可能となり、内側の貫通孔密閉用部材と外側の貫通孔密閉用部材との両者の熱膨張力を内装管に作用させることができる。従って、より強力に、貫通孔の閉塞が可能となる。
また、前記部材内装フレーム部に前記連通孔が設けてあるものの、その連通孔は固定フレームに内装してある貫通孔密閉用部材によって塞がった状態となるために、鞘管固定具をモルタルで固定する場合であっても、貫通孔密閉用部材と鞘管との間にモルタルが入り込むことを防止できる。
【0010】
請求項2に係わる本発明の特徴構成によれば、前記連通孔が、前記固定フレームの前記挿入方向での端部に形成してあるから、前記両貫通孔密閉用部材による貫通孔の閉塞を、火災側に最も近い位置で実施することが可能となり、より確実な防火貫通部とすることが可能となる。
【0011】
請求項3に係わる本発明の特徴構成によれば、前記固定フレームに、前記貫通孔密閉用部材の前記挿入方向に沿った熱膨張を拘束する拘束部を設けてあるから、前記貫通孔密閉用部材の熱膨張力を、鞘管Pの径方向に沿ってより効率的に作用させて、貫通孔の閉塞をより確実に実施することが可能となる。
【0012】
請求項4に係わる本発明の特徴構成によれば、前記固定フレームが板金製で、前記拘束部は、前記フレーム部を、内周側に切り起こして形成してあるから、上述のような作用効果を叶えることができながら、製作手間の軽減を図り、コストダウンを叶えることが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図4は、壁体1(仕切板状部の一例)に設けられた鞘管挿通用の貫通孔2に、給湯配管を挿通自在な鞘管Pを挿通させて、本発明の「貫通孔の鞘管固定具」の一例である鞘管固定具(以後、単に固定具という)Sによって、前記鞘管Pを貫通孔2内に固定し、防火貫通部を構成してある状況を示すものである。
【0015】
前記鞘管Pは、樹脂製の可撓管によって構成してあり、内部には、例えば、給水管や給湯管等の配管3を挿通させる(予め、挿通させてある場合もある)ことができ、前記配管3が、露出するのを防止して保護することができ、且つ、前記配管3に対する断熱を図り、配管3の結露を発生し難くすることができる。
【0016】
前記固定具Sは、前記貫通孔2に挿入自在で、且つ、鞘管Pに対して外嵌自在な固定フレーム4を設け、前記固定フレーム4に内嵌する状態に、塊状の熱膨張性貫通孔密閉用部材5を設けて構成してある。
また、前記固定フレーム4は、その外周部に、シート状の熱膨張性貫通孔密閉用部材6を巻回して、前記貫通孔2の内周壁2aと、前記固定フレーム4との間に前記シート状貫通孔密閉用部材6が位置する状態で、前記貫通孔2内に固定してある。
従って、仮に、火災が発生して鞘管Pが燃焼したり収縮しても、その周囲に熱膨張した前記両貫通孔密閉用部材5,6が広がって隙間を埋めつくし、煙や炎が貫通孔2を通過しにくいようにすることができる(図5参照)。
因に、前記塊状の貫通孔密閉用部材5は、炭酸カルシウム・無機質膨張剤・有機質膨張剤・ゴム・顔料等の成分によって構成してあり、前記シート状の貫通孔密閉用部材6は、炭酸カルシウム・無機質膨張剤・有機質膨張剤・未加硫のゴム・顔料・ポリオレフィン樹脂等の成分によって構成してある。
【0017】
前記固定フレーム4は、図1・2に示すように、上下に二分割した分割フレーム4a,4bから構成してある。前記両分割フレーム4a,4bは、板金製で、共に、同一形状の原材料金属板を、各別に折り曲げ加工して形成してある。図3に、その展開図を示すが、図中、破線が谷折り線に、一点鎖線が山折り線に、二点鎖線が一方の(下方向に配置される方の)分割フレーム4aにのみ実施される谷折り線に該当する。
図中の7・8・9・10の切り起こし部は、前記塊状の貫通孔密閉用部材5をはめ込むための保持空間X形成用の仕切となり、且つ、前記貫通孔密閉用部材5の前記鞘管長手方向に沿った熱膨張を拘束して、その膨張力が鞘管の径方向に沿った締付け力として作用しやすくなるように形成してある。
前記固定フレーム4の内、前記保持空間Xに面する部分が、部材内装フレーム部4cにあたり、前記7・8・9・10の切り起こし部が、拘束部Kにあたる。また、固定フレーム4の側部にあたる11・12の側面部には、前記保持空間Xにはめ込まれた貫通孔密閉用部材5の外れ防止のための爪部13を各別に設けてあり、前記貫通孔密閉用部材5に外れ方向の力が作用すると、前記爪部13が前記貫通孔密閉用部材5の溝部に引掛って、外れるのを防止することが可能となる。一方、前記側面部11,12の中間部分には、径方向に沿って両分割フレーム4a,4bどうしを合わせることによって係合自在な係合凸部14と係合凹部15とを各別に設けてある。
また、前記7・10の切り起こし部を前記谷折り線に沿って折り曲げることによって図中の16・17の切り起こし部は、固定フレーム4の外周側に突出状態に切り起こされる。この両切り起こし部16,17の内、16の切り起こし部は、上配置の分割フレーム4bにおいては、貫通孔2に対する固定フレーム4の挿入に伴って、終端位置において貫通孔2の周縁部に当接するストッパー(挿入阻止機構の一例)Tとなる。そしてまた、この16の切り起こし部は、下配置の分割フレーム4aにおいては、前記二点鎖線(図3参照)に沿って先端部が折り曲げられて、17の切り起こし部と同寸法の突出量となる。この下配置の分割フレーム4aの16・17の切り起こし部、及び、上配置の分割フレーム4bの17の切り起こし部は、貫通孔の内周壁2aと固定フレーム4との所定の離間距離を確保するスペーサ部Rにあたる。このスペーサ機能によって、固定フレーム4の外周部に巻回するシート状貫通孔密閉用部材6の適切な配置スペースを固定フレーム周囲に確保することができ、直接的に鞘管P・配管3・固定具Sの重量がシート状貫通孔密閉用部材6に作用するのを防止することが可能となる。従って、例えば、火災が発生した場合でも、シート状貫通孔密閉用部材6の熱膨張を、偏りのない状態でサポートでき、前記貫通孔2の高い閉塞効果を期待することが可能となる。
一方、前記部材内装フレーム部4cには、前記固定フレーム4の径方向に沿って前記固定フレーム内外空間を連通自在な連通孔Hを設けてある。具体的には、前記7・8・9・10の切り起こし部の切り起こし跡が、この連通孔Hにあたる。この連通孔Hを設けてあることによって、火災時に、図5に示すように、この連通孔Hを通して、塊状貫通孔密閉用部材5とシート状貫通孔密閉用部材6とが熱膨張力を相互に伝達することができるようになる。従って、例えば、鞘管Pの燃焼跡を塊状貫通孔密閉用部材5の熱膨張によって埋める際に、シート状貫通孔密閉用部材6の熱膨張力をも効果的に作用させることができ、より確実に貫通孔の閉塞を果たし防火貫通部の性能向上を叶えることが可能となる。
また、特に、前記固定フレーム4の端部に形成してある連通孔Hによれば、前記両貫通孔密閉用部材5,6の熱膨張力を、貫通孔2の浅い部分に作用させて、より広範囲の閉塞範囲を確保することが可能となり、防火性能を向上させることが可能となる。
【0018】
本実施形態の固定具Sを用いた防火貫通部の形成方法は、貫通孔2に予め鞘管Pを挿通しておき、その鞘管を前記両分割フレーム4a,4bによって挟み込む状態に固定フレーム4を配置し、その外周部に、シート状貫通孔密閉用部材6を巻き付ける。その状態で、鞘管Pに沿って固定フレーム4をスライドさせて、貫通孔2に挿入することで、固定具Sの設置が完了する。
【0019】
〔別実施形態〕
以下に別実施形態を説明する。
【0020】
〈1〉 前記鞘管固定具は、先の実施形態で説明した上下に二分割に形成してあるものに限らず、例えば、三分割以上の複数分割構成であってもよい。また、板金のプレス加工によるものに限らない。
そして、一つの貫通孔に対して複数の鞘管固定具を並列状態に挿入して設置することも可能である。
〈2〉 前記鞘管固定具Sの貫通孔2への固定は、先の実施形態で説明したシート状貫通孔密閉用部材5に替えて、鞘管固定具Sを貫通孔2内に挿入した状態で、貫通孔の内周壁2aとの空隙にモルタルを充填することも可能である。この場合、部材内装フレーム部4cと部材内装フレーム部4cとの間の中間部分は、固定フレーム4の外方とは仕切られていることと、固定フレーム4の連通孔Hは、塊状貫通孔密閉用部材6によって塞がれていることとから、固定フレーム内空部へのモルタル流入は防止でき、例えば、塊状貫通孔密閉用部材6と鞘管Pとの間の隙間にモルタルが入って固化することによって、そのモルタルが塊状貫通孔密閉用部材6の熱膨張時に鞘管Pに対する締付力に抵抗して充分な貫通孔閉塞が叶えられなくなることを防止できる。
〈3〉 また、前記仕切板状部は、先の実施形態で説明した壁体に限るものではなく、例えば、床板・天井・梁・柱等であってもよく、これらを総称して仕切板状部という。図6には、床板に鞘管固定具を設置してある状況を示すものである。
〈4〉 前記鞘管は、先の実施形態で説明したように、別体の管を内装するものに限定されるものではなく、例えば、鞘管自体が、ケーブルや空調配管等であってもよく、それらを総称して鞘管という。
【0021】
尚、特許請求の範囲の項に、図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】鞘管固定具を示す分解斜視図
【図2】鞘管固定具を示す斜視図
【図3】分解固定フレームの展開図
【図4】鞘管固定具の設置状況を示す断面図
【図5】鞘管固定具の作用を示す断面図
【図6】別実施形態の鞘管固定具の設置状況を示す断面図
【図7】従来の鞘管固定具を示す断面図
【符号の説明】
1 仕切板状部
2 貫通孔
4 固定フレーム
4c 部材内装フレーム部
5 貫通孔密閉用部材
H 連通孔
K 拘束部
P 鞘管
Claims (4)
- 仕切空間を形成する仕切板状部(1)に設けられた鞘管挿通用の貫通孔(2)に挿入自在で、且つ、鞘管(P)に対して外嵌状態で前記鞘管(P)を前記貫通孔(2)に固定自在な固定フレーム(4)を設け、熱膨張性の貫通孔密閉用部材(5)を複数、前記固定フレーム(4)の内周部における前記貫通孔(2)への挿入方向に間隔をあけた複数箇所に各別に設けてある貫通孔への鞘管固定具であって、
前記固定フレーム(4)の内、前記貫通孔密閉用部材(5)を位置させてある部材内装フレーム部(4c)に、前記固定フレーム(4)の径方向に沿って前記固定フレーム内外空間を連通自在な連通孔(H)を設けてある貫通孔への鞘管固定具。 - 前記連通孔(H)は、前記固定フレーム(4)の前記挿入方向での端部に形成してある請求項1に記載の貫通孔への鞘管固定具。
- 前記固定フレーム(4)に、前記貫通孔密閉用部材(5)の前記挿入方向に沿った熱膨張を拘束する拘束部(K)を設けてある請求項1又は請求項2に記載の貫通孔への鞘管固定具。
- 前記固定フレーム(4)は板金製で、前記拘束部(K)は、前記フレーム部(4)を、内周側に切り起こして形成してある請求項1〜3の何れか1項に記載の貫通孔への鞘管固定具。
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