JP3591307B2 - トルクコンバータのロックアップ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動変速機の伝動系に挿入して用いられるトルクコンバータを、入出力要素間が直結されたロックアップ状態にするためのロックアップ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トルクコンバータは、流体を介して入出力要素間で動力伝達を行うため、トルク変動吸収機能や、トルク増大機能を果たす反面、伝動効率が悪い。
これがため、車両用自動変速機の伝動系に挿入されたトルクコンバータにあっては、これらトルク変動吸収機能や、トルク増大機能が不要な走行条件のもとで(ロックアップ領域で)、トルクコンバータを入出力要素間がロックアップクラッチの締結により機械的に直結されたロックアップ状態にし、それ以外の走行条件のもとで(コンバータ領域で)、トルクコンバータをロックアップクラッチの解放により上記の直結を解除したコンバータ状態にするようになした、所謂ロックアップ式のトルクコンバータが今日では多用されている。
【0003】
この種トルクコンバータをロックアップ制御するに際しては従来、例えば日産自動車(株)が昭和62年3月に発行した「NISSN RE4R01A型 フルレンジ電子制御オートマチックトランスミッション整備要領書」(A261C07)に記載のように、スロットル開度および車速をパラメータとしたゲインマップを持ち、これによりロックアップクラッチの負荷状態を推定し、当該負荷状態に応じてロックアップクラッチを締結制御するのが常套であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来のロックアップ制御方式では、変速点が大幅に変更になったとき、変速点ごとにゲインのチューニングが必要になり、そのマッチング工数がぼう大になるという大きな問題を生じていた。
【0005】
なお、ロックアップ制御機構として従来本願出願人は、特開平8−14381号公報に記載されているように、ロックアップクラッチの前後差圧そのものを電子制御する差圧制御弁を設け、これにより制御された差圧でロックアップクラッチを締結してトルクコンバータを入出力要素間が直結されたロックアップ状態にするようにしたものを提案済みである。
かかるロックアップ制御機構によれば、トルクコンバータに向かう作動油の圧力変化にかかわらずロックアップクラッチの前後差圧、つまりロックアップクラッチの締結力が、差圧制御弁への制御指令により一義的に決まって、ロックアップクラッチの締結力を正確に制御することができ、その正確な過渡制御も可能である。
【0006】
請求項1に記載の第1発明は先ず、上記のようにロックアップクラッチの前後差圧そのものを電子制御する差圧制御手段を用いて、ぼう大なマッチング工数を要することなく、応答遅れを最小限にしつつ、ロックアップショックの低減と、ロックアップクラッチフェーシングの焼損防止とを両立させ得るようにすることを主旨とし、
更に加えて、差圧制御手段への制御指令とロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係がずれる場合でも、上記の狙いが確実に達成されるロックアップ制御を維持し得るようにしたトルクコンバータのロックアップ制御装置を提案することを目的とする。
【0007】
また請求項1に記載の第1発明は、後者の狙いを達成するための補正が効果的なものとなるようにして当該狙いが一層確実なものとなるようにすることを目的とする。
【0008】
請求項2に記載の第2発明は、第1発明における後者の狙いを達成するためのデータの収集を少なくして、当該狙いのための補正が効率良く行われるようにすることを目的とする。
【0009】
請求項3に記載の第3発明は、第1発明における後者の狙いを達成するためのデータの収集を必要最小限にして、当該狙いのための補正が最も効率良く行われるようにすることを目的とする。
【0010】
請求項4に記載の第4発明は、第1発明における後者の狙いを達成するための補正を演算により行うようにしたトルクコンバータのロックアップ制御装置を提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
これらの目的のため、先ず第1発明におけるトルクコンバータのロックアップ制御装置は、
ロックアップクラッチの前後差圧そのものを電子制御する差圧制御手段を具え、該手段で制御された差圧によりロックアップクラッチを締結してトルクコンバータを入出力要素間が直結されたロックアップ状態にするロックアップ制御装置において、
前記差圧制御手段への制御指令と、前記ロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係を基に、該締結トルク容量を0にする前記制御指令の初期値、およびトルクコンバータ伝達トルクに対応した締結トルク容量のためのものであって、油温が低い程大きくなる制御指令目標値をそれぞれ求め、
トルクコンバータのロックアップに際して前記差圧制御手段への制御指令を、これら制御指令初期値から制御指令目標値まで所定時間かけて、対応する時間変化勾配で漸増させるよう構成し、
前記差圧制御手段への制御指令と、前記ロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係を、前記ロックアップクラッチがトルクコンバータ入出力要素間の回転偏差を学習終了回転数に低下させる締結状態となるに要した時間が設定時間になるよう補正することとしている。
【0012】
そして第1発明は、
トルクコンバータ入出力要素間の回転偏差に係わる前記学習終了回転数を、油温変化によるロックアップクラッチの摩擦係数の変化傾向が不規則にならない回転偏差の下限値に対応させたことを特徴とするものである。
【0013】
第2発明におけるトルクコンバータのロックアップ制御装置は、第1発明において、
前記差圧制御手段への制御指令と、前記ロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係を、前記ロックアップクラッチがトルクコンバータ入出力要素間の回転偏差を学習開始回転数から前記学習終了回転数に低下させる締結状態となるに要した時間が設定時間になるよう補正する構成にしたことを特徴とするものである。
【0014】
第3発明におけるトルクコンバータのロックアップ制御装置は、第2発明において、
トルクコンバータ入出力要素間の回転偏差に係わる前記学習開始回転数を、前記ロックアップクラッチがトルクコンバータ入出力要素間の回転偏差を該学習開始回転数から前記学習終了回転数に低下させる締結状態となるに要した時間が、前記補正を行うに足る必要最小限の長さとなるような回転数に対応させたことを特徴とするものである。
【0015】
第4発明におけるトルクコンバータのロックアップ制御装置は、第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、
前記差圧制御手段への制御指令と、ロックアップクラッチの締結トルク容量との関係を表す演算式を用いてロックアップクラッチの摩擦係数およびトルクコンバータ伝達トルクから差圧制御手段への制御指令を算出し、ロックアップクラッチが前記締結状態となるに要した時間が設定時間となるようロックアップクラッチの摩擦係数を油温に応じて補正するよう学習制御して前記補正を行うよう構成したことを特徴とするものである。
【0016】
【発明の効果】
差圧制御手段はロックアップクラッチの前後差圧を電子制御し、この電子制御された差圧によりロックアップクラッチは締結して、トルクコンバータを入出力要素間が直結されたロックアップ状態にする。
ところで第1発明においては、上記差圧制御手段への制御指令と、ロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係を基に、この締結トルク容量を0にする上記制御指令の初期値、およびトルクコンバータ伝達トルクに対応した締結トルク容量のための制御指令目標値をそれぞれ求め、
トルクコンバータのロックアップに際して上記差圧制御手段への制御指令を、これら制御指令初期値から制御指令目標値まで所定時間かけて、対応する時間変化勾配で漸増させる。
【0017】
これがため第1発明においては、制御指令の初期値でロックアップクラッチが締結トルク容量を一気に0にされて、ショックに関与しないロスストロークを速やかに完了することから、先ずロックアップクラッチの締結応答遅れを最小限にすることができる。
【0018】
また、その後は制御指令を上記の初期値から、トルクコンバータ伝達トルクに対応した締結トルク容量となる制御指令目標値まで所定時間かけて漸増させるため、
ぼう大なマッチング工数を要することなく、ロックアップショックの低減と、ロックアップクラッチフェーシングの焼損防止とを両立させる過渡制御が実現され、ショックの低減を図りつつ、かと言ってロックアップクラッチフェーシングの焼損を生ずることのない態様でロックアップを完遂させることができる。
【0019】
第1発明においては更に、差圧制御手段への制御指令とロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係を、油温の低下に伴うロックアップクラッチの摩擦係数の低下、すなわち油温が低い場合にはロックアップクラッチの摩擦係数が低くなり、逆に油温が高い場合にはロックアップクラッチの摩擦係数が高くなると言う知見に基づき、ロックアップクラッチがトルクコンバータ入出力要素間の回転偏差を学習終了回転数に低下させる締結状態となるに要した時間が設定時間になるよう補正するから、
差圧制御手段への制御指令とロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係がずれる場合でも、上記の狙い通りのロックアップ制御を維持することができる。
【0020】
加えて第1発明においては、トルクコンバータ入出力要素間の回転偏差に係わる前記学習終了回転数を、油温変化によるロックアップクラッチの摩擦係数の変化傾向が不規則にならない回転偏差の下限値に対応させたことから、
差圧制御手段への制御指令とロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係がずれる場合でもロックアップ制御を狙い通りのものに維持するために行う当該関係の前記補正を、一層正確で効果的なものとなし得る。
【0021】
第2発明においては、差圧制御手段への制御指令とロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係を、ロックアップクラッチがトルクコンバータ入出力要素間の回転偏差を学習開始回転数から前記学習終了回転数に低下させる締結状態となるに要した時間が設定時間になるよう補正するから、
差圧制御手段への制御指令とロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係がずれる場合でも上記第1発明におけるロックアップ制御を狙い通りのものに維持するために行う当該関係の前記補正を、少ないデータの収集により行い得ることとなり、当該狙いのための補正を効率良く行うことができる。
【0022】
第3発明においては、トルクコンバータ入出力要素間の回転偏差に係わる第3発明における学習開始回転数を、ロックアップクラッチがトルクコンバータ入出力要素間の回転偏差を該学習開始回転数から前記学習終了回転数に低下させる締結状態となるに要した時間が、前記補正を行うに足る必要最小限の長さとなるような回転数に対応させたから、
差圧制御手段への制御指令とロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係がずれる場合でも前記第1発明におけるロックアップ制御を狙い通りのものに維持するために行う当該関係の前記補正を、必要最小限のデータ収集により行い得ることとなり、当該狙いのための補正を最も効率良く行うことができる。
【0023】
第4発明においては、差圧制御手段への制御指令とロックアップクラッチの締結トルク容量との関係を表す演算式を用いてロックアップクラッチの摩擦係数およびトルクコンバータ伝達トルクから差圧制御手段への制御指令を算出し、ロックアップクラッチが前記締結状態となるに要した時間が設定時間となるようロックアップクラッチの摩擦係数を油温に応じて補正するよう学習制御して前記補正を行うことから、
差圧制御手段への制御指令とロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係がずれる場合でも前記第1発明におけるロックアップ制御を狙い通りのものに維持するために行う当該関係の前記補正を演算により行うこととなり、メモリ容量が少なくてよくなる点で好都合である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態になるロックアップ制御装置を具えたトルクコンバータを含む車両の駆動系を示し、1は原動機としてのエンジン、2はトルクコンバータ、3は自動変速機の歯車変速機構、4はディファレンシャルギヤ装置、5は車輪で、これらを順次図示のように駆動結合して車両の駆動系を構成する。
【0025】
エンジン1を歯車変速機構3に駆動結合するトルクコンバータ2は、エンジン1で駆動される入力要素としてのポンプインペラ2aと、歯車変速機構3の入力軸に結合された出力要素としてのタービンランナ2bと、これらポンプインペラ2aおよびタービンランナ2b間を直結するロックアップクラッチ2cとを具えた、所謂ロックアップ式トルクコンバータとする。
【0026】
ロックアップクラッチ2cの締結力は、その前後におけるアプライ圧PA とレリーズ圧PR の差圧(ロックアップクラッチ締結差圧)により決まり、アプライ圧PA がレリーズ圧PR よりも低ければ、ロックアップクラッチ2cは釈放されてポンプインペラ2aおよびタービンランナ2b間を直結せず、トルクコンバータ2をスリップ制限しないコンバータ状態で機能させる。
アプライ圧PA がレリーズ圧PR よりも高くてその差圧が設定値よりも大きくなると、ロックアップクラッチ2cが締結されてポンプインペラ2aおよびタービンランナ2b間の相対回転がなくなり、トルクコンバータ2をロックアップ状態で機能させる。
【0027】
本実施の形態においては、所定のロックアップ制御を行うべくアプライ圧PA およびレリーズ圧PR 間の差圧(ロックアップクラッチ締結差圧)そのものを決定するロックアップ制御系を以下の構成とする。
但し当該ロックアップクラッチ締結差圧(PA −PR )は、前記特開平8−14381号公報に記載されたごとき構成により決定するようにしても良いこと勿論である。
ロックアップ制御弁11はライン圧PL を元圧とし、コントローラ12によりデューティ制御されるロックアップソレノイド13からの信号圧PS に応じてアプライ圧PA およびレリーズ圧PR 間の差圧(PA −PR )を決定するもので、これらロックアップ制御弁11およびロックアップソレノイド13により差圧制御手段を構成するが、当該ロックアップ制御弁11およびロックアップソレノイド13は図2に明示する周知のものとする。
【0028】
即ち、ロックアップソレノイド13は一定のパイロット圧Pp を元圧として、コントローラ12からのロックアップ制御指令LUdty(ONデューティ)に応じた信号圧PS を発生させるものとする。
そしてロックアップ制御弁11は、上記の信号圧PS およびフィードバックされたレリーズ圧PR を一方向に受けると共に、他方向にバネ11aのバネ力およびフィードバックされたアプライ圧PA を受け、以下のように差圧制御を行うものである。
【0029】
つまり、ロックアップ制御指令LUdty(ONデューティ)の増大に伴ってロックアップソレノイド13からの信号圧PS を上昇されるにつれ、ロックアップ制御弁11はアプライ圧PA およびレリーズ圧PR 間の差圧、つまりロックアップクラッチ締結差圧(PA −PR )を図9(a)に示すごとくに増大させて、ロックアップクラッチ締結差圧(PA −PR )の正値によりロックアップクラッチ2cの締結を可能にし、最終的に設定以上の差圧でトルクコンバータをロックアップ状態にするものとする。
ロックアップ制御弁11は、逆にロックアップ制御指令LUdty(ONデューティ)の低下に伴ってロックアップソレノイド13からの信号圧PS を低下されるにつれ、ロックアップクラッチ締結差圧(PA −PR )を図9(a)に示すごとくに減少させてロックアップクラッチ2cの締結力を低下させ、遂にはロックアップクラッチ締結差圧(PA −PR )の負値によりロックアップクラッチ2cを釈放してトルクコンバータ2をコンバータ状態にするものとする。
【0030】
ところで、ロックアップクラッチ2cの締結トルク容量Tcapは上記のロックアップクラッチ締結差圧(PA −PR )で決まり、ロックアップクラッチ2cのフェーシング外径をr1 、フェーシング内径をr2 、フェーシング中央径をr3 、フェーシングの摩擦係数をμ、安全係数をKS とすると、ロックアップクラッチの締結トルク容量Tcapは次式で表される。
Tcap=(PA −PR )(r1 2 −r2 2 )×π×μ×r3 ×KS ・・・(1)
∴(PA −PR )=Tcap/〔(r1 2 −r2 2 )×π×μ×r3 ×KS 〕・・・(2)
【0031】
しかして、ロックアップクラッチ2cの締結トルク容量Tcapを上記(1)式のように決定するロックアップクラッチ締結差圧(PA −PR )が油温ごとに異なるものの或る油温のもとで例えば図9(a)に示すごとく、ソレノイド13へのロックアップ制御指令LUdty(ONデューティ)で決まることから、
ロックアップクラッチの締結トルク容量Tcapと、ロックアップ制御指令LUdty(ONデューティ)との関係は、油温ごとに異なるが或る油温のもとで例えば図9(b)にLUCで示すように求めることができ。
【0032】
ところで本実施の形態においては、図9(b)にLUCで例示するロックアップクラッチ締結トルク容量Tcapとロックアップ制御指令LUdtyとの関係を表す演算式を用いて、図9(b)に示したトルクコンバータ伝達トルクTinに対応する締結トルク容量Tcap=LUC(Tin)のためのロックアップ制御指令目標値LUdty=TCAPdtyを求めることとする。
ここで上記の演算式は、前記(2)式中のロックアップクラッチ締結トルク容量TcapにLUC(Tin)を当てはめることができ、ロックアップクラッチ締結差圧(PA −PR )がロックアップ制御指令目標値TCAPdtyに定数を掛けたものであって両者の乗算値に置き換えられ、また、LUC(Tin)がトルクコンバータ伝達トルクTinに定数を掛けたものであって両者の乗算値に置き換えられることから、(2)式を書き直して
TCAPdty=K1 (Tin/μ)・・・(3)
但し、K1 :定数
のように求めることができる。
【0033】
ソレノイド13のロックアップ制御指令LUdty(ONデューティ)を決定するコントローラ12には、図1および図2に示すようにエンジン1のスロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ21からの信号と、エンジン回転数Ne (トルクコンバータ入力回転数)を検出するエンジン回転センサ22からの信号と、タービンランナ2bの回転数Nt (トルクコンバータ出力回転数)を検出するタービン回転センサ23からの信号と、変速機出力回転数No を検出する変速機出力回転センサ24からの信号と、変速機作動油温に対応した電圧値ADatfを出力する油温センサ25からの信号とをそれぞれ入力する。
【0034】
コントローラ12はこれら入力情報をもとに、図3〜図5に示す制御プログラムを実行して、ロックアップ制御指令LUdty介しトルクコンバータ2のロックアップ制御を以下のごとくに行うものとする。
図3(a)は信号計測処理を示し、同図(b)はロックアップ制御処理を示し、同図(c)は信号出力処理を示す。
【0035】
図3(a)の信号計測処理に際しては、先ずステップ31において、スロットル開度TVO、エンジン回転数Ne 、変速機入力回転数Nt 、変速機出力回転数No 、および油温センサ出力値ADatfを読み込む。
次いでステップ32において、トルクコンバータ入出力回転偏差絶対値|Ne −Nt |を求めてこれをNerr にセットし、
油温センサ出力値ADatfから、図7に対応したマップを基に変速機作動油温Tempを求め、
スロットル開度TVOおよびエンジン回転数Ne から、予め求めておいたエンジン性能線図を基にエンジントルクTe を求めると共に、これに、トルクコンバータ2の速度比(Nt /Ne )を乗じて変速機入力トルク(トルクコンバータ伝達トルク)Tinを求め、
変速機出力回転数No に定数Kを乗じて車速VSPを求める。
【0036】
図3(b)のロックアップ制御に際しては、先ずステップ33において図4につき後述する処理によりロックアップすべきか否かを判断し、次いでステップ34において、当該判断に基づくロックアップ制御を図5の処理により後述するごとくに行う。
そして図3(c)の信号出力処理は、同図(b)のロックアップ制御により決定されたロックアップ制御指令LUdtyを、ステップ35においてソレノイド13に出力する処理である。
【0037】
図4のロックアップ判断を説明するに、ステップ41において変速機作動油温Tempが、トルクコンバータ2のロックアップを許可すべき設定温度Tmpth以上の高温か、ロックアップを禁止すべき設定温度Tmpth未満の低温かを判定する。
ロックアップを許可すべき高温なら、ステップ42においてロックアップ領域判定フラグLUが0か否かにより、前回コンバータ領域だったか、前回ロックアップ領域だったかを判定する。
【0038】
前回コンバータ領域であれば、ステップ43,44において図8の実線で示すロックアップON線LUTonよりも右側のロックアップ領域に入ったか否かを判定する。
つまり、先ずステップ43において車速VSPから図8の実線で示すロックアップON線LUTon上のロックアップON開度TVOonを図8に例示するように検索し、
次いでステップ44において、スロットル開度TVOが上記のロックアップON開度TVOon未満であるか否かにより、今回ロックアップ領域に入ったか否かを判定する。
【0039】
今回ロックアップ領域に入ったと判定する時、ステップ45において、このことを示すようにロックアップ領域判定フラグLUを1にセットして、次回のステップ42での判定に資する。
しかして、ステップ44で今回もロックアップ領域に入っていないと判定する場合、制御をそのまま終了することによりロックアップ領域判定フラグLUを0のままに維持して、次回のステップ42での判定に資する。
【0040】
ステップ42で前回ロックアップ領域であったと判定する場合、ステップ46,47において図8の破線で示すロックアップOFF線LUToffよりも左側のコンバータ領域に入ったか否かを判定する。
つまり、先ずステップ46において車速VSPから図8の破線で示すロックアップOFF線LUToff上のロックアップOFF開度TVOoffを図8に例示するように検索し、
次いでステップ47において、スロットル開度TVOが上記のロックアップOFF開度TVOoff以上であるか否かにより、今回コンバータ領域に入ったか否かを判定する。
【0041】
今回コンバータ領域に入ったと判定する時、ステップ48において、このことを示すようにロックアップ領域判定フラグLUを0にリセットして、次回のステップ42での判定に資すると共に、後述のごとくコンバータ領域からロックアップ領域に切り換わった時の初期化のための初期化フラグFLGfを0にリセットする。
しかして、ステップ47で今回もコンバータ領域に入っていないと判定する場合、制御をそのまま終了することによりロックアップ領域判定フラグLUを1のままに維持して、次回のステップ42での判定に資する。
【0042】
ステップ41において変速機作動油温Tempがロックアップを禁止すべき低温であると判定した時は、ステップ42〜47をスキップしてステップ48のみを実行し、ロックアップ領域判定フラグLUを0にリセットすると共に、初期化フラグFLGfを0にリセットする。
【0043】
上記のロックアップ領域判定結果に基づく図3(b)のステップ34でのロックアップ制御を図5により詳述するに、図5のロックアップ制御は例えば10msec毎の定時割り込みにより繰り返し実行されるもので、先ずステップ51においてロックアップ領域判定フラグLUが1であるか否かにより、ロックアップ領域かコンバータ領域かをチェックする。
LU=0のコンバータ領域であれば、ステップ52でロックアップ制御指令LUdtyを0%にしたのち制御を終了する。ここでLUdty=0%は、図3(c)の信号出力ステップ35においてソレノイド13に指令され、これによりトルクコンバータ2をコンバータ状態にする。
【0044】
ステップ51においてLU=1のロックアップ領域であると判定する場合、以下のようにしてトルクコンバータ2のロックアップ制御を実行する。
すなわち、先ずステップ53において初期化フラグFLGfが0か否かを判定する。
ここで初期化フラグFLGfは、コンバータ領域に入った時に図4のステップ48で0にリセットされているから、制御はステップ53からステップ54での初期設定処理に進み、その後ステップ55において初期化フラグFLGfを1にセットする。
これがためステップ54での初期設定は、その後のステップ56〜60による後述の学習制御と共に、ロックアップ領域に入った当初の1回だけ実行され、2回目以後はステップ53がステップ61以降に制御を進めて後述のロックアップ制御を遂行する。
【0045】
ステップ54での初期設定を説明するに、マップMyu(Temp)を基に、図3(a)のステップで求めた油温Tempから、現在の油温のもとでのロックアップクラッチ(クラッチフェーシング)の摩擦係数μを読み出し、
図9(b)に例示するロックアップクラッチ2cの締結トルク容量Tcapと、ソレノイド13へのロックアップ制御指令LUdty(ONデューティ)との油温ごとの関係を基に、油温Tempから締結トルク容量Tcap=0に対応した初期容量LUC(0,Temp)のためのロックアップ制御指令初期値LUDiを求める。
【0046】
次いで、ロックアップクラッチ2cの締結トルク容量Tcapを当該初期容量LUC(0,Temp)から、前記した変速機入力トルク(トルクコンバータ伝達トルク)Tinに対応する油温Tempごとの目標容量LUC(Tin,Temp)に上昇させるためのロックアップ所要時間LUTIMを読み込む。
但しこのロックアップ所要時間LUTIMは、トレードオフの関係にあるロックアップクラッチの締結ショック低減および発熱によるクラッチフェーシング焼損防止とがバランス良く両立するような時間とし、油温TempごとのデータLUT(Temp)として実験などにより予め決定し、メモリしておくものとする。
従ってロックアップ所要時間LUTIMの読み込みは、当該データLUT(Temp)を基に油温Tempから読み込む。
【0047】
次に、ロックアップ制御指令初期値LUDiをロックアップ制御指令LUdtyにセットし、これを図3(c)のステップ35でロックアップソレノイド13に出力する。
よって図11に示すように、ロックアップ領域フラグLUが0から1に切り換わるコンバータ領域からロックアップ領域への移行瞬時t1 にロックアップ制御指令LUdtyが一気に、締結トルク容量Tcap=0に対応した初期容量LUC(0)のための制御指令初期値LUDiに上昇されることとなり、ロックアップクラッチ2cがショックに関与しないロスストロークを速やかに完了してロックアップの応答遅れを防止することができる。
【0048】
更に、詳しくは後述するようにして計測したロックアップ学習時間tLRNをその前回値tLRNoLD にセットし、次いで当該ロックアップ学習時間tLRNを次回の計測のために0にリセットし、最後にロックアップ学習時間tLRNの計測を禁止するように学習許可フラグstartを0にリセットする。
【0049】
ステップ55に続くステップ56〜60においては、ステップ54で上記の如くに読み出したロックアップクラッチの摩擦係数μを、詳しくは説明の便宜上後で説明する学習制御により補正すると共に、当該摩擦係数μの補正値を対応するマップデータMyu(Temp)に置き換えて更新する。
【0050】
上記の1回目のループが終了した後における2回目以降は、ステップ53がステップ61に制御を進め、当該ステップ61および62において、図3(a)のステップ32で求めたトルクコンバータ入出力回転偏差絶対値Nerr =|Ne −Nt |が、図10および図11に例示した学習開始回転数N1 および学習終了回転数N2 (N1 >N2 )間の値であるのか、これらの間から外れた値であるのかを判定する。
【0051】
ここで図10は、油温Tempが120°,80°,40°である場合におけるトルクコンバータ入出力回転偏差Nerr とロックアップクラッチの摩擦係数μとの関係を例示する実験データで、これから明らかなように回転偏差Nerr が設定値N2 未満の小さな値になると、油温Tempの変化によるロックアップクラッチの摩擦係数μの変化傾向が不規則になり、μの逆転現象さえ起きることを確かめた。
かかる領域で摩擦係数μの学習を行うと、当該学習がでたらめになり信頼性に欠けることから、この領域では摩擦係数μの学習が行われることのないよう学習終了回転数N2 を、油温Tempの変化によるロックアップクラッチの摩擦係数μの変化傾向が不規則にならない回転偏差の下限値に対応させる。
また学習開始回転数N1 は、ロックアップクラッチが回転偏差Nerr を当該開始回転数N1 から学習終了回転数N2 に低下させる締結状態となるのに必要な時間が、摩擦係数μの学習を行うに足る必要最小限の時間となるような回転数に対応させる。
【0052】
ステップ61においてトルクコンバータ入出力回転偏差Nerr が学習開始回転数N1 以上であると判定する場合、つまり、図11の瞬時t2 に至っていないと判定する場合、ステップ63において学習許可フラグstartを1にセットした後、ステップ66において前記(3)式の演算により、ステップ56〜60で学習制御により補正したロックアップクラッチ摩擦係数μを用いて、図3(a)のステップ32で求めた変速機入力トルクTin(トルクコンバータ伝達トルク)に対応する図9(b)のごときロックアップクラッチ締結トルク容量LUC(Tin,Temp)のためのロックアップ制御指令目標値TCAPdty(=K1 ・Tin/μ)を算出する。
【0053】
そしてステップ67で、ロックアップ制御指令目標値TCAPdtyとロックアップ制御指令初期値LUDiとの間の段差(TCAPdty−LUDi)を上記のロックアップ所要時間LUTIMで除算することにより、締結トルク容量Tcapを初期容量LUC(0,Temp)からロックアップ所要時間LUTIMかけて目標容量LUC(Tin,Temp)まで徐々に増大させるためのロックアップ制御指令LUdtyの時間変化勾配DFFdtyを算出する。
【0054】
さらに、当該ロックアップ制御指令の時間変化勾配DFFdtyと、ロックアップクラッチ2cがジャダーを生じないロックアップ制御指令の時間変化勾配の下限値DFFminとの大きい方max(DFFdty,DFFmin)を選択してDFFdtyにセットし、ロックアップ制御指令LUdtyの時間変化勾配DFFdtyが下限値DFFminよりも小さくならないようにしてロックアップクラッチ2cのジャダーを防止するようになす。
【0055】
次いでステップ68において、図3(a)のステップ32で求めたトルクコンバータ入出力回転偏差Nerr が設定値Nth以上のランプ制御域か、ランプ固定域かを判定する。
ランプ制御域ならステップ69において、ロックアップ制御指令LUdtyを図11の瞬時t1 以降におけるように前記の時間変化勾配DFFdty=max(DFFdty,DFFmin)で増大させ、これを図3(c)のステップ35でロックアップソレノイド13に出力する。
そして、上記ロックアップ制御の進行によりトルクコンバータ入出力回転偏差Nerr が設定値Nth未満のランプ固定域となる図11の瞬時t4 以降は、ステップ70でロックアップ制御指令LUdtyを比較的速い固定の時間変化勾配RMP1で上昇させ、これを図3(c)のステップ35でロックアップソレノイド13に出力する。
【0056】
以上のステップ66〜70は、ステップ62,64,65での後述するロックアップ学習時間計測処理ループが選択される場合においても継続的に実行される。
これがため図11の瞬時t1 以降はロックアップ制御指令LUdtyを、締結トルク容量Tcap=0に対応した初期容量LUC(0,Temp)のための制御指令初期値LUDiから上記のロックアップ所要時間LUTIMをかけて瞬時t4 までの間に、変速機入力トルク(トルクコンバータ伝達トルク)Tinに対応する締結トルク容量Tcap=LUC(Tin,Temp)のためのロックアップ制御指令目標値TCAPdtyまで対応する時間変化勾配DFFdtyで漸増させることとなり、
ぼう大なマッチング工数を要することなく、ロックアップショックの低減と、ロックアップクラッチフェーシングの焼損防止とを両立させる過渡制御を実現することが可能となり、ロックアップショックの低減を図りつつ、かと言ってロックアップクラッチフェーシングの焼損を生ずることのない態様でロックアップを完遂させることができる。
【0057】
ステップ61においてトルクコンバータ入出力回転偏差Nerr が学習開始回転数N1 未満になったと判定する場合、つまり、図11の瞬時t2 に至ったと判定する場合、ステップ62おいてトルクコンバータ入出力回転偏差Nerr が学習終了回転数N2 未満になったと判定するまでの間、つまり、図11の瞬時t3 に至ったと判定するまでの間、ステップ64で学習許可フラグStartが1にセットされていると判定することを条件に、ステップ65でロックアップ学習時間計測タイマtLRNをインクリメントさせ、ロックアップクラッチ2cが回転偏差Nerr を学習開始回転数N1 から学習終了回転数N2 に低下させるに要したロックアップ学習時間tLRNを図11のように計測する。
【0058】
なお、ステップ64で判定する学習許可フラグStartは大抵の場合ステップ63で1にセットされることから、上記ロックアップ学習時間tLRNの計測を実行させるが、図11のロックアップ指令瞬時t1 に回転偏差Nerr が既に学習開始回転数N1 未満になっていた場合はステップ63が実行されないため学習許可フラグStartが0のままであることから、ステップ64がステップ65をスキップしてロックアップ学習時間tLRNの計測を実行させないこととする。
その理由は、図11のロックアップ指令瞬時t1 に回転偏差Nerr が既に学習開始回転数N1 未満になっていた場合、ロックアップ学習時間tLRNが正確な学習を行うに足る長さでなくなって、学習が不正確になるためである。
【0059】
以上により計測した、ロックアップクラッチ2cが回転偏差Nerr を学習開始回転数N1 から学習終了回転数N2 に低下させる締結状態となるに要したロックアップ学習時間tLRNは、次のロックアップ開始時にステップ54において学習時間前回値tLRNoLD にセットされ、ステップ56〜60での学習制御に用いられる。
ステップ56,57において学習時間前回値tLRNoLD が、図11に例示した設定時間TM1 〜TM2 (TM1 <TM2 )の間にあると判定する場合は、検出油温Tempに対応したロックアップクラッチの摩擦係数μが変化していないとして、制御をそのまま終了することによりステップ54における摩擦係数μ用マップMyu(Temp)の対応データを更新せずに現状のままに保つ。
なお設定時間TM1 ,TM2 はそれぞれ、前記したロックアップ所要時間LUTIMに応じて予め定めておくものとする。
【0060】
ステップ56において学習時間前回値tLRNoLD が設定時間TM2 を越えていると判定した場合は、検出油温Tempに対応したロックアップクラッチの摩擦係数μが低下していることから、ステップ58において当該摩擦係数μをΔμだけ大きくする補正を行い、この補正値をステップ66での演算に資することとし、
ステップ57において学習時間前回値tLRNoLD が設定時間TM1 より短いと判定した場合は、検出油温Tempに対応したロックアップクラッチの摩擦係数μが増大していることから、ステップ59において当該摩擦係数μをΔμだけ低下させる補正を行い、この補正値をステップ66での演算に資することとする。
【0061】
次にステップ60において、ステップ58または59で求めた摩擦係数μの補正値を、ステップ54で用いる摩擦係数μの対応するマップデータMyu(Temp)と置換して当該データの学習制御による更新を行い、次回ステップ54で摩擦係数μを読み出す時に用いる。
【0062】
以上の学習制御によれば、ロックアップクラッチ2cがトルクコンバータ入出力要素間の回転偏差Nerr を学習開始回転数N1 から前記学習終了回転数N2 に低下させる締結状態となるに要した時間tLRNが設定時間TM1 〜TM2 に収まるよう、油温Tempごとに読み出したロックアップクラッチの摩擦係数μを補正して、ステップ66での変速機入力トルクTin(トルクコンバータ伝達トルク)に対応したロックアップ制御指令目標値TCAPdty(=K1 ・Tin/μ)の算出に資するから、
ロックアップソレノイド13への制御指令LUdtyとロックアップクラッチ2cの締結トルク容量との油温Tempごとの関係がずれても、この関係が実情にマッチするよう補正されることとなり、図11につき前述したロックアップ制御が保証されてこれによる前記の作用効果、つまり、ロックアップショックの低減を図りつつ、ロックアップクラッチフェーシングの焼損を防止し得るという作用効果を常時確実に達成させることができる。
【0063】
なお学習終了回転数N2 を、図10につき前述したごとく油温(Temp)変化によるロックアップクラッチの摩擦係数μの変化傾向が不規則にならない回転偏差の下限値に対応させたことから、上記の学習制御が不正確になるのを回避して当該学習制御による上記の作用効果を一層効果的なものにし得る。
【0064】
更に学習開始回転数N1 を、ロックアップクラッチ2cがトルクコンバータ入出力要素間の回転偏差Nerr を学習開始回転数N1 から学習終了回転数N2 に低下させる締結状態となるに要した時間tLRNが、前記学習制御による摩擦係数μの補正を行うに足る必要最小限の長さとなるような回転数に対応させたことから、学習制御に際して必要最小限のデータ収集を行うだけでよくなり、当該学習制御を最も効率良く行うことができる。
【0065】
以上の学習制御を含むロックアップ制御装置をブロック線図で示すと図6のごときものとなる。
回転偏差算出部81では、トルクコンバータ入出力回転偏差の絶対値Nerr =|Ne −Nt |を求めてこれをNerr にセットし、
学習制御可否判定部82では、トルクコンバータ入出力回転偏差Nerr が学習開始回転数N1 および学習終了回転数N2 間の値にあって、学習制御を行うべきであるのかどうかを判定する。
ロックアップ学習時間計測部83では、判定部82で学習制御を行うべきであると判定している時間、つまり、トルクコンバータ入出力回転偏差Nerr が学習開始回転数N1 まで低下した後、更に学習終了回転数N2 に低下するまでの時間(ロックアップ学習時間)tLRNを計測する。
【0066】
ロックアップ所要時間設定部84では、油温Tempに対応するロックアップ所要時間LUTIMを設定し、
ロックアップ学習時間判定用設定時間算出部85では、ロックアップ所要時間LUTIMに対応した下限時間TM1 および上限時間TM2 をそれぞれ求め、
摩擦係数補正要否判定部86では、ロックアップ学習時間tLRNが下限時間TM1 および上限時間TM2 の間にある時ロックアップクラッチ摩擦係数μの補正が不要であると判定し、それ以外で摩擦係数μの補正が必要であると判定する。
【0067】
摩擦係数補正量算出部87は、ロックアップクラッチ摩擦係数μの補正量Δμを算出するもので、ロックアップ学習時間tLRNが上限時間TM2 より長い時ロックアップクラッチ摩擦係数μの補正量Δμを正の一定値+Δμと定め、ロックアップ学習時間tLRNが下限時間TM1 より短い時ロックアップクラッチ摩擦係数μの補正量Δμを負の一定値−Δμと定め、ロックアップ学習時間tLRNが下限時間TM1 および上限時間TM2 の間にある時ロックアップクラッチ摩擦係数μの補正量Δμを0と定める。
【0068】
一方でトルクコンバータ伝達トルク算出部88は、エンジンスロットル開度TVOおよびエンジン回転数Ne からエンジン特性線図をもとにエンジン出力トルク(トルクコンバータ伝達トルク)Tinを求め、
摩擦係数算出部88は、油温Tempからロックアップクラッチの摩擦係数μを推定して求め、
摩擦係数補正部90は、摩擦係数μと補正量Δμとを加算してロックアップクラッチの摩擦係数補正値(μ+Δμ)を求める。
【0069】
ロックアップ制御指令目標値算出部91は、摩擦係数補正値(μ+Δμ)およびトルクコンバータ伝達トルクTinを用いて前記(3)式の演算により、トルクコンバータ伝達トルクTinに対応したロックアップクラッチ締結容量のためのロックアップ制御指令目標値TCAPdtyを算出し、
ロックアップ制御指令初期値算出部92は、ロックアップクラッチ締結容量を丁度0にするためのロックアップ制御指令初期値LUDiを算出する。
【0070】
ロックアップ制御指令基準変化量算出部93は、ロックアップ制御指令目標値TCAPdtyとロックアップ制御指令初期値LUDiとの間の段差(TCAPdty−LUDi)を前記のロックアップ所要時間LUTIMで除算することにより、ロックアップ制御指令基準変化量DFFdtyを算出する。
なおロックアップ制御指令算出部94は、ロックアップソレノイド13へのロックアップ制御指令LUdtyを基準変化量DFFdtyの時間変化勾配で上昇させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になるロックアップ制御装置を具えた車両の駆動系およびその制御システムを示す概略系統図である。
【図2】同実施の形態におけるトルクコンバータのロックアップ制御系を示すシステム図である。
【図3】同実施の形態においてコントローラが実行するロックアップ制御のメインルーチンを示し、
(a)は、信号計測処理のフローチャート、
(b)は、ロックアップ制御処理のフローチャート、
(c)は、信号出力処理のフローチャートである。
【図4】同実施の形態におけるロックアップ判断処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】同実施の形態におけるロックアップ制御処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】同ロックアップ制御処理の機能別ブロック線図である。
【図7】油温センサ値と油温との関係線図である。
【図8】トルクコンバータのロックアップ領域およびコンバータ領域を例示する線図である。
【図9】(a)は、或る油温についてロックアップソレノイドへの制御指令とロックアップクラッチ締結差圧との関係を示す線図、
(b)は、同じ油温についてロックアップソレノイドへの制御指令とロックアップクラッチの締結トルク容量との関係を示す線図である。
【図10】油温をパラメータとして、トルクコンバータ入出力要素間の回転偏差と、ロックアップクラッチの摩擦係数との関係を例示した特性図である。
【図11】本発明によるロックアップ制御の動作タイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
2 トルクコンバータ
2a ポンプインペラ(入力要素)
2b タービンランナ(出力要素)
2c ロックアップクラッチ
3 歯車変速機構
4 ディファレンシャルギヤ装置
5 車輪
11 ロックアップ制御弁(差圧制御手段)
12 コントローラ
13 ロックアップソレノイド(差圧制御手段)
21 スロットル開度センサ
22 エンジン回転センサ
23 タービン回転センサ
24 変速機出力回転センサ
25 油温センサ
Claims (4)
- ロックアップクラッチの前後差圧そのものを電子制御する差圧制御手段を具え、該手段で制御された差圧によりロックアップクラッチを締結してトルクコンバータを入出力要素間が直結されたロックアップ状態にするロックアップ制御装置において、
前記差圧制御手段への制御指令と、前記ロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係を基に、該締結トルク容量を0にする前記制御指令の初期値、およびトルクコンバータ伝達トルクに対応した締結トルク容量のためのものであって、油温が低い程大きくなる制御指令目標値をそれぞれ求め、
トルクコンバータのロックアップに際して前記差圧制御手段への制御指令を、これら制御指令初期値から制御指令目標値まで所定時間かけて、対応する時間変化勾配で漸増させるよう構成し、
前記差圧制御手段への制御指令と、前記ロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係を、前記ロックアップクラッチがトルクコンバータ入出力要素間の回転偏差を学習終了回転数に低下させる締結状態となるに要した時間が設定時間になるよう補正し、
トルクコンバータ入出力要素間の回転偏差に係わる前記学習終了回転数を、油温変化によるロックアップクラッチの摩擦係数の変化傾向が不規則にならない回転偏差の下限値に対応させたことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ制御装置。 - 請求項1において、前記差圧制御手段への制御指令と、前記ロックアップクラッチの締結トルク容量との油温ごとの関係を、前記ロックアップクラッチがトルクコンバータ入出力要素間の回転偏差を学習開始回転数から前記学習終了回転数に低下させる締結状態となるに要した時間が設定時間になるよう補正する構成にしたことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ制御装置。
- 請求項2において、トルクコンバータ入出力要素間の回転偏差に係わる前記学習開始回転数を、前記ロックアップクラッチがトルクコンバータ入出力要素間の回転偏差を該学習開始回転数から前記学習終了回転数に低下させる締結状態となるに要した時間が、前記補正を行うに足る必要最小限の長さとなるような回転数に対応させたことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ制御装置。
- 請求項1乃至3のいずれか1項において、前記差圧制御手段への制御指令と、ロックアップクラッチの締結トルク容量との関係を表す演算式を用いてロックアップクラッチの摩擦係数およびトルクコンバータ伝達トルクから差圧制御手段への制御指令を算出し、ロックアップクラッチが前記締結状態となるに要した時間が設定時間となるようロックアップクラッチの摩擦係数を油温に応じて補正するよう学習制御して前記補正を行うよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ制御装置。
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