JP3589987B2 - 寒天被覆処理粉体及びその製造方法、並びに該処理粉体を配合してなる化粧料 - Google Patents

寒天被覆処理粉体及びその製造方法、並びに該処理粉体を配合してなる化粧料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然由来の親水性高分子である寒天で被覆・造粒した処理粉体及びその製造方法、並びに該処理粉体を配合した化粧料に関する。さらに詳しくは、寒天を水に加熱溶解して調製した寒天溶解液を、攪拌しながら冷却して調製した流動性、柔軟性の高い寒天ゲルと、粉体との攪拌混合物を乾燥・粉砕することによって得られる、水分保持能、密着性に優れた処理粉体及びその製造方法、並びに該処理粉体を配合することで、保湿効果、感触、肌への付着性・親和性、化粧膜の均一性、化粧持ち改善効果に優れた化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
特開昭61−286310号公報、特開昭62−169712号公報、特開昭63−199273号公報等には、親水性の高分子化合物にて粉体を処理し、それを化粧料に配合する技術が開示されている。このように、寒天等の親水性高分子で粉体を被覆した処理粉体を化粧料に配合することは公知の技術である。被覆処理によって肌への密着性やなじみ、保湿性が高められた粉体を配合することは、化粧料高機能化の有力な一手段であり、しっとり感や化粧効果持続性の高められた化粧料を得ることができる。一方で、被覆物の種類や改質の条件が得られる粉体の性能を大きく左右することが知られており、その被覆条件(製造条件)により、得られる感触、風合い等が大きく変化し、処理粉体の特性を安定制御することが難しいという問題があった。特に、本発明で用いる寒天のような処理剤の場合には、寒天が架橋して強固な高次構造を形成するため、粉体間の結合力が強くなる傾向があり、その結果粉砕が困難な硬い凝集体として得られやすく、化粧料に配合した場合に感触が著しく悪化する問題があった。
【0003】
寒天で粉体を被覆・造粒する方法としては、特開2000−119135号公報や特開2000−143444号公報等に記載されているように、寒天を熱水で完全に溶解し、この溶解液中に粉体を均一に分散させた後、乾燥・粉砕する方法が最も簡便で一般的であるが、この方法では寒天の架橋効果が顕著に現れ、粉体間の結合力が非常に強くなり、場合によっては、粉砕不可能な程の硬い凝集塊となってしまうことがあり、官能的に化粧料への配合ができなくなることがあった。そこで、特開2000−169341号公報では、寒天等の親水性高分子で被覆処理する際に天然由来三糖類のラフィノースを併用することにより、粉砕が容易で、品質的に安定した粉体が得られることが報告されている。
【0004】
以上のような方法等により寒天で粉体を被覆・造粒する場合には、凝集が緩和され、感触的に改善されたものが得られるが、寒天に起因する粉体間の強い凝集から生じる感触問題の改善はまだまだ不十分であり、さらなる改善が望まれていた。また、上述の製造方法によって寒天で被覆・造粒した処理粉体は、化粧料に配合した場合に、化粧料処方中の油性成分との相性が悪く、均一に分散せず、凝集してしまう例もあった。
【0005】
一方で、寒天で粉体を被覆・造粒する方法としては、寒天溶解液と粉体とからなるスラリーをスプレードライ(噴霧乾燥)する方法も考えられる。しかしながら、スプレードライ法では、凝集の少ない、感触に優れた処理粉体を作ることができる一方で、製造コストが大変高くなること、製造装置が大きくなるため、原料の切り替えが行いにくいという別の問題があり、また、特開平5−201830号公報に記載のごとく、目的の品質、感触を得るためには種々の条件を適宜選択する必要があり、目的の品質を備えた処理粉体を安定的に得ることは非常に難しいのが実情で、実際に親水性高分子化合物で粉体を処理する場合には、特開2000−159634号公報に記載のように厳密な噴霧条件の設定が必要であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明人等は、これらの実情に鑑み、より簡便で、より安価な製造方法で、得られる処理粉体の凝集による硬さを和らげ、感触を高める方法について鋭意検討した結果、寒天を溶解させた後に冷却を行い、均一な流動性、柔軟性の高い寒天ゲルを調製してから、この寒天ゲルと粉体との混合物を乾燥・粉砕することにより、凝集力の弱い、感触の優れた処理粉体が得られることを見出した。通常、ゲルと粉体とを攪拌混合することにより粉体処理を行う場合には、処理の偏りができやすく、不均一な処理となりやすいが、ゲルの流動性、柔軟性を高めることにより均一な処理が可能となった。そして、この処理粉体を化粧料に配合したところ、感触、肌への付着性・親和性、保湿効果、化粧膜の均一性、化粧持ち改善効果に優れた化粧料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、寒天を水に加熱溶解させる工程(A工程)、寒天溶解液を攪拌しながら30℃以下まで冷却して寒天ゲルとする工程(B工程)、寒天ゲルと粉体とを攪拌混合する工程(C工程)、混合物を乾燥・粉砕する工程(D工程)を経て得られる処理粉体の製造方法である。
第2の本発明は、A工程とB工程との間にエステル系油剤を添加することを特徴とする前記の処理粉体の製造方法である。
第3の本発明は、C工程とD工程との間にエステル系油剤を添加し、攪拌混合することを特徴とする前記の処理粉体の製造方法である。
第4の本発明は、C工程とD工程との間に水及び/又は低級アルコールを添加し、攪拌混合することを特徴とする前記の処理粉体の製造方法である。
第5の本発明は、前記の製造方法で得られることを特徴とする処理粉体である。
第6の本発明は、前記の製造方法で得られる処理粉体を配合してなる化粧料である。
第7の本発明は、化粧料が油性化粧料であることを特徴とする前記の化粧料である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のA工程では、寒天を水に加熱溶解させる。寒天を加熱溶解する方法としては、熱水を用いる方法や電子レンジ等を用いて寒天を溶解させる方法等が挙げられ、溶解液が透明になるまで溶解させることが好ましい。
【0009】
本発明に用いられる寒天は主にテングサ、オゴノリ、マクサ等の海藻(紅藻類)を原料に得られる公知の物質で、市販されている例としては、伊那食品工業株式会社の伊那寒天S−7、Z−10、ZH、UP−6、M−7、KT、TC−6、大和等があり、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0010】
本発明では、寒天ゲル総質量中の寒天濃度が、安定で流動性、柔軟性の高い寒天ゲルを形成することのできる0.4〜6質量%の範囲であることが好ましい。水量としては、粉体の質量に対して200〜600質量%の範囲にあることが好ましい。200質量%未満では、粉体と均一に混合分散させることが難しい場合があり、600質量%を超えると得られる処理粉体の感触が悪くなる場合がある。
【0011】
本発明において、粉体を被覆処理する寒天の好適な量は、粉体の質量に対して1〜10質量%である。1質量%未満では本発明の効果を奏しない場合があり、10質量%を超えると凝集が強くなりすぎ、感触が悪くなる場合があり、好ましくない。
【0012】
本発明のB工程では、A工程で調製した寒天溶解液を攪拌しながら30℃以下まで冷却して寒天ゲルとする。30℃より高温であると、場合によっては、溶解している寒天が完全にはゲル化されない問題がある。また流動性、柔軟性の高い寒天ゲルを得るため、寒天溶解液が凍結しない程度まで冷却する。好適には0〜30℃の範囲内で調整する。
【0013】
寒天溶解液を冷却する方法としては、攪拌を行いながら冷却を行うことが流動性、柔軟性の高い寒天ゲルを得るために重要であり、例えば、容器外側を水、氷等で冷やす方法や冷蔵庫中に入れる方法、あるいは水、氷、ドライアイス等を直接添加する方法等が挙げられる。冷却時間の長短は得られる寒天ゲルの品質(流動性、柔軟性、安定性)に影響を与えないことから、特に限定されるものではない。
【0014】
本発明のC工程では、B工程で調製した寒天ゲルと粉体とを攪拌混合する。
【0015】
B工程及びC工程での攪拌方法としては、プロペラ、プラネタリーミキサー、ルーダー等を用いる方法が挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明では、これらの装置を用いて均一に攪拌混合することが好ましい。
【0016】
本発明のD工程では、C工程で調製した混合物を乾燥・粉砕する。本発明で用いる乾燥方法としては、真空乾燥法、凍結乾燥法、熱風乾燥法等が挙げられるが、いずれの方法でもほぼ同様のものが得られるため、特に限定されることはないが、いずれの場合も水分量が総質量の5質量%以下となるように乾燥させることが好ましい。粉砕方法としては、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル、サンドミル等の通常の粉砕機を用いることができるが、いずれを用いても同等の品質のものが得られるため、特に限定されることはない。
【0017】
本発明で用いる粉体の例としては、赤色104号、赤色102号、赤色226号、赤色201号、赤色202号、黄色4号、黒色401号等の色素、青色1号アルミニウムレーキ、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキ、黄色203号バリウムレーキ等のレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、テフロンパウダー、シリコーンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、セルロースパウダー、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末等の高分子、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青等の有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、板状硫酸バリウム等の体質顔料、雲母チタン等のパール顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、アルミナ等の無機粉体、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等が挙げられ、またこれらを従来公知の表面処理、例えば、N−アシル化リジン処理、アミノ酸処理、親水性高分子処理、油剤処理、シリコーン処理、金属石鹸処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理等を施したものを使用することも可能である。これらの粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、燐片状、紡錘状等)に特に制限はない。粉体の大きさとしては、5nm〜100μmの範囲に入るものが好ましく、さらに好ましくは10nm〜25μmである。これらの粉体は単独で処理しても、混合物を形成し、それをまとめて処理しても構わない。また、混合物の色を肌色等に調整したものを処理することも可能である。さらに、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の紫外線散乱成分を使用することで紫外線防御機能を有する処理粉体とすることも可能である。
【0018】
本発明では、寒天溶解液を調製した(A工程)後、攪拌冷却を行う(B工程)前にエステル系油剤を添加することが好ましい。エステル系油剤を添加することにより、寒天ゲルの流動性、柔軟性が顕著に高まり、乾燥上がりの処理粉体の凝集力を低減させ、配合化粧料の感触をより向上させることができる。
【0019】
本発明では、寒天ゲルと粉体とを均一に攪拌混合した(C工程)後、D工程の前にエステル系油剤を添加し、攪拌混合することが好ましい。エステル系油剤を添加し、攪拌混合することにより、エステル系油剤が寒天の高次構造中に入って作用し、乾燥上がりの処理粉体の凝集力を低減させ、配合化粧料の感触をより向上させることができ、さらには、化粧料処方中で他の成分との相性も高め、分散性を向上させることができる。
【0020】
A工程とB工程との間で添加するエステル系油剤の量は、寒天の質量に対して30〜100質量%の範囲であることが好ましい。この範囲であると、寒天ゲルの流動性、柔軟性が高まり、均一性が増すことにより、攪拌混合における粉体の分散性が向上し、得られる処理粉体の凝集力を弱め、感触を一層高めることができる。30質量%未満では効果を奏しない場合があり、100質量%を超えるとエステル系油剤がゲル中に完全に混ざり合わず、油剤が分離することがあるため好ましくない。
【0021】
C工程とD工程との間で添加するエステル系油剤の量は、粉体の質量に対して1〜5質量%の範囲であることが好ましい。この範囲であると、寒天ゲルの架橋構造に作用して、処理粉体の凝集力を弱め、感触を高める効果が得られる。1質量%未満では効果を奏しない場合があり、5質量%を超えるとべたつき感を生じることがあるため好ましくない。
【0022】
本発明で用いるエステル系油剤としては、アジピン酸ジデシル、(アジピン酸・2−エチルへキサン酸・ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸セチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸オクチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸バチル、イソステアリン酸フィトステリル、イソステアリン酸ヘキシル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソパルミチン酸2−エチルヘキシル、イソペラルゴン酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、エルカ酸オクチルドデシル、オキシステアリン酸オクチル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸エチル、オレイン酸グリセリル、オレイン酸ジグリセリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、オレイン酸デシル、オレイン酸フィトステリル、カプリル酸セチル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、ジヤシ油脂肪酸ペンタエリスリット、ステアリン酸エチル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ジグリセリル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸コレステリル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソセチル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸ステアリル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソステアリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、テトラミリスチン酸ペンタエリスリトール、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソオクタン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリオキシステアリン酸グリセリン、トリカプリル酸グリセリン、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、トリ(カプリル酸・カプリン酸・ミリスチン酸・ステアリン酸)グリセリン、トリウンデシル酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン、トリ牛脂脂肪酸グリセリン、トリラノリン脂肪酸グリセリン、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、乳酸オクチルドデシル、乳酸ラウリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸セチル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル、ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ブチル、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、ラウリン酸イソステアリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)、ラウリン酸ヘキシル、ラノリン脂肪酸イソステアリル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、ラノリン脂肪酸コレステリル、リシノレイン酸オクチルドデシル、リシノレイン酸グリセリル、リシノレイン酸セチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられ、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。A工程とB工程との間で添加するエステル系油剤と、C工程とD工程との間で添加するエステル系油剤とは同じものであっても、異なるものであっても構わない。
【0023】
エステル系油剤の添加方法としては、そのまま直接添加するか、又は低級アルコール、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、トルエン等の溶媒に溶解させて添加する方法等が挙げられる。
【0024】
本発明で用いる低級アルコールとしては、例えばイソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコールからなる群より選ばれることが好ましく、さらに好ましくは、イソプロピルアルコール、エチルアルコールである。低級アルコールは1種単独又は2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0025】
本発明では、寒天ゲルと粉体とを均一に攪拌混合した(C工程)後、D工程の前に水及び/又は低級アルコールを添加し、攪拌混合することが好ましい。水及び/又は低級アルコールを添加し、攪拌混合することにより、後から添加した水及び/又は低級アルコールの小滴が、乾燥時、寒天に保持されている水に比較して早く蒸発することにより、乾燥上がりの処理粉体塊中に多くの微細な空隙を作って凝集塊の強度を弱め、粉砕工程を容易にするとともに、処理粉体そのものの結合力を低減させ、配合化粧料の感触をより向上させることができる。
【0026】
C工程とD工程との間で添加する水及び/又は低級アルコールの量は、寒天ゲルの質量に対して4〜25質量%の範囲であることが好ましい。この範囲であると、寒天ゲルの架橋構造の間に多数の小滴として入って、乾燥時、寒天に保持された水に比べて早い段階で蒸発するために小さな空隙を作り、処理粉体凝集塊の強度を脆くする効果が得られる。4質量%未満では効果を奏しない場合があり、25質量%を超えると水及び/又は低級アルコールの小滴として分散させることが難しくなるため、また寒天ゲルそのものの性質を変える場合があるため好ましくない。
【0027】
こうして得られる処理粉体は、寒天の効果によりしっとり感、肌への付着性・親和性に優れ、さらにエステル系油剤、水及び/又は低級アルコールの効果により、緩い凝集体となって得られるため、感触が一段と向上し、化粧料処方中での均一分散性にも優れたものであり、これを配合した化粧料は保湿効果、肌への付着性・親和性、化粧膜の均一性・持続性に優れたものである。
【0028】
本発明では、寒天と共に各種の粘剤、樹脂を併用して用いることも可能である。本発明で用いる粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸カルシウム、カルボキシビニルポリマー、エチレン/アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体、窒素置換アクリルアミド系ポリマー、ポリアクリルアミド、カチオン化ガーガム等のカチオン系ポリマー、ジメチルアクリルアンモニウム系ポリマー、アクリル酸メタクリル酸アクリル共重合体、POE/POP共重合体、ポリビニルアルコール、プルラン、デオキシリボ核酸及びその塩、コンドロイチン硫酸等の酸性ムコ多糖類及びその塩、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、ガーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、ヒアルロン酸及びその塩、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン、セルロース、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコール、カチオン化シリコーン重合体、合成ラテックス等が挙げられ、特にデオキシリボ核酸及びその塩が好ましい。
【0029】
本発明の化粧料で用いる処理粉体の配合量は、化粧料の剤型により異なるが、化粧料の総量を基準として、0.5〜99質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜95質量%である。本発明での処理粉体は、化粧料の剤型等によっては、さらに従来公知の表面処理、例えばフッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N−アシル化リジン処理、金属石鹸処理、アミノ酸処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理等によって表面処理することもできる。
【0030】
本発明の化粧料には、上記の各成分以外に、通常化粧料に用いられる油剤、粉体(顔料、色素、樹脂)、フッ素化合物、樹脂、界面活性剤、粘剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤(有機系、無機系を含む。UV−A、Bのいずれに対応していても構わない)、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤等の成分を使用することができる。
【0031】
上記の油剤としては、通常化粧料に用いられる揮発性及び不揮発性の油剤、溶剤、並びに樹脂等が挙げられ、常温で液体、ペースト、固体のいずれであっても構わない。油剤の例としては、例えばセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリル、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル類、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素、ラノリン、還元ラノリン、液状ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス等のロウ、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油等の油脂、ポリエチレンワックス、エチレン・α−オレフィン・コオリゴマー、エチレンプロピレンポリマー等が挙げられる。
【0032】
また、別の形態の油剤としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アモジメチコーン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴム等のシリコーン化合物、パーフルオロポリエーテル、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコール等のフッ素化合物等が挙げられる。
【0033】
粉体の例としては、前記の粉体とその一般的な表面処理物が挙げられる。表面処理の例としては、フッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N−アシル化リジン処理、金属石鹸処理、アミノ酸処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理等が挙げられる。これらの粉体の内、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末、ポリプロピレン末、テフロン末、シリコーンゴム、ウレタンパウダー等のエラストマーを用いると、製品の経日安定性や感触が向上することから好ましい。特に、シリコーンエラストマー球状粉体とエステル油、又はシリコーンエラストマー球状粉体とシリコーン油(揮発性、不揮発性を含む)を組み合わせて使用することが好ましい。シリコーンエラストマー球状粉体の例としては、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のトレフィル−Eシリーズ等が挙げられる。
【0034】
溶媒の例としては、精製水、環状シリコーン、エタノール、軽質流動イソパラフィン、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N−メチルピロリドン、フルオロアルコール、揮発性直鎖状シリコーン、次世代フロン等が挙げられる。
【0035】
界面活性剤としては、例えばアニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤を用いることができる。
【0036】
粘剤、樹脂の例としては、前記の粘剤、樹脂及び寒天等が挙げられる。
【0037】
本発明の化粧料としては、例えばファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、口紅、ネイルカラー等のメイクアップ化粧料が挙げられ、特に口紅等の油性化粧料が好ましい。油性化粧料では、本発明で用いる処理粉体のエステル系油剤の効果がより顕著に得られやすい長所がある。
【0038】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明する。
また、実施例及び比較例で用いた化粧料の各種特性に対する評価方法を以下に示す。
【0039】
皮膚有用性評価
専門パネラーを各評価品目ごとに10名ずつ用意し(但し、品目によりパネラーが重複する場合もある)、表1に示す評価基準に従って評価を行い、全パネラーの合計点数を以て評価結果とした。したがって、点数が高いほど評価項目に対する有用性が高いことを示す。(満点:50点)
【0040】
Figure 0003589987
【0041】
製造実施例1(処理粉体1)
80℃以上に加熱攪拌した精製水400質量部に、寒天4質量部を数回に分けて添加し、完全に溶解するまでよく攪拌を行った。攪拌を続けながら、容器外側を水で冷却し、30℃以下になるまで冷却を行い、寒天ゲルを調製した。これに混合粉体1(ベンガラ1.0質量部、黄酸化鉄3.0質量部、黒酸化鉄0.4質量部、酸化チタン15.0質量部、マイカ20.0質量部、セリサイト20.0質量部、タルク36.6質量部の割合でミキサー混合したもの)100質量部加え均一に攪拌混合させた後、熱風乾燥機で乾燥させ、ハンマーミルで粉砕を行い、処理粉体1を103g得た。
【0042】
製造実施例2(処理粉体2)
80℃以上に加熱攪拌した精製水400質量部に、寒天4質量部を数回に分けて添加し、完全に溶解するまでよく攪拌を行った。トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン2質量部を加え、攪拌を続けながら、容器外側を水で冷却し、30℃以下になるまで冷却を行い、寒天ゲルを調製した。これに混合粉体1(ベンガラ1.0質量部、黄酸化鉄3.0質量部、黒酸化鉄0.4質量部、酸化チタン15.0質量部、マイカ20.0質量部、セリサイト20.0質量部、タルク36.6質量部の割合でミキサー混合したもの)100質量部を加え均一に攪拌混合させた後、熱風乾燥機で乾燥させ、ハンマーミルで粉砕を行い、処理粉体2を101g得た。
【0043】
製造実施例3(処理粉体3)
80℃以上に加熱攪拌した精製水400質量部に、寒天4質量部を数回に分けて添加し、完全に溶解するまでよく攪拌を行った。トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン2質量部を加え、攪拌を続けながら、容器外側を水で冷却し、30℃以下になるまで冷却を行い、寒天ゲルを調製した。これに混合粉体1(ベンガラ1.0質量部、黄酸化鉄3.0質量部、黒酸化鉄0.4質量部、酸化チタン15.0質量部、マイカ20.0質量部、セリサイト20.0質量部、タルク36.6質量部の割合でミキサー混合したもの)100質量部を加え均一に攪拌混合させた後、さらにトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン2質量部を加え、攪拌混合を行い、熱風乾燥機による乾燥、ハンマーミルを用いた粉砕を経て処理粉体3を105g得た。
【0044】
製造実施例4(処理粉体4)
80℃以上に加熱攪拌した精製水400質量部に、寒天4質量部を数回に分けて添加し、完全に溶解するまでよく攪拌を行った。トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン2質量部を加え、攪拌を続けながら、容器外側を水で冷却し、30℃以下になるまで冷却を行い、寒天ゲルを調製した。これに混合粉体1(ベンガラ1.0質量部、黄酸化鉄3.0質量部、黒酸化鉄0.4質量部、酸化チタン15.0質量部、マイカ20.0質量部、セリサイト20.0質量部、タルク36.6質量部の割合でミキサー混合したもの)100質量部を加え均一に攪拌混合させた後、さらにトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン2質量部を加え、攪拌混合を行った。これに精製水20質量部を加え、攪拌混合した後、熱風乾燥機による乾燥、ハンマーミルを用いた粉砕を経て処理粉体4を105g得た。
【0045】
製造実施例5(処理粉体5)
80℃以上に加熱攪拌した精製水400質量部に、寒天4質量部を数回に分けて添加し、完全に溶解するまでよく攪拌を行った。攪拌を続けながら、容器外側を水で冷却し、30℃以下になるまで冷却を行い、寒天ゲルを調製した。これに混合粉体2(赤色202号1質量部、赤色201号0.5質量部、ベンガラ1質量部、酸化チタン1質量部、雲母チタン3質量部、酸化鉄処理雲母チタン5質量部の割合でミキサー混合したもの)100質量部加え均一に攪拌混合させた後、熱風乾燥機で乾燥させ、ハンマーミルで粉砕を行い、処理粉体5を99g得た。
【0046】
製造実施例6(処理粉体6)
80℃以上に加熱攪拌した精製水400質量部に、寒天4質量部を数回に分けて添加し、完全に溶解するまでよく攪拌を行った。トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン2質量部を加え、攪拌を続けながら、容器外側を水で冷却し、30℃以下になるまで冷却を行い、寒天ゲルを調製した。これに混合粉体2(赤色202号1質量部、赤色201号0.5質量部、ベンガラ1質量部、酸化チタン1質量部、雲母チタン3質量部、酸化鉄処理雲母チタン5質量部の割合でミキサー混合したもの)100質量部を加え均一に攪拌混合させた後、さらにトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン2質量部を加え、攪拌混合を行った。これに精製水20質量部を加え、攪拌混合した後、熱風乾燥機による乾燥、ハンマーミルを用いた粉砕を経て処理粉体6を105g得た。
【0047】
製造比較例1(処理粉体7)
80℃以上に加熱攪拌した精製水400質量部に、寒天4質量部を数回に分けて添加し、完全に溶解するまでよく攪拌を行った。これに混合粉体1(ベンガラ1.0質量部、黄酸化鉄3.0質量部、黒酸化鉄0.4質量部、酸化チタン15.0質量部、マイカ20.0質量部、セリサイト20.0質量部、タルク36.6質量部の割合でミキサー混合したもの)100質量部を加え攪拌冷却し、よく分散させた後、熱風乾燥機で乾燥させ、ハンマーミルで粉砕を行い、処理粉体7を98g得た。
【0048】
製造比較例2(処理粉体8)
80℃以上に加熱攪拌した精製水400質量部に、寒天4質量部を数回に分けて添加し、完全に溶解するまでよく攪拌を行った。これに混合粉体2(赤色202号1質量部、赤色201号0.5質量部、ベンガラ1質量部、酸化チタン1質量部、雲母チタン3質量部、酸化鉄処理雲母チタン5質量部の割合でミキサー混合したもの)100質量部を加え攪拌冷却し、よく分散させた後、熱風乾燥機で乾燥させ、ハンマーミルで粉砕を行い、処理粉体8を96g得た。
【0049】
実施例1〜4、比較例1、2
表2に示す処方と製造方法に従い、ファンデーションを調製した。
尚、処理粉体としては製造実施例1〜4(処理粉体1〜4)、製造比較例1(処理粉体7)で製造したものを用いた。
【0050】
Figure 0003589987
【0051】
製造方法
成分Aをミキサーにて混合した。次いで、均一に混合・溶解した成分Bを成分Aに加えてさらに混合した。得られた粉末をアトマイザーにて粉砕し、メッシュを通した後、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。
【0052】
実施例5、6、比較例3、4
表3に示す処方と製造方法に従い、口紅を調製した。
但し、処理粉体としては製造実施例5、6(処理粉体5、6)、製造比較例2(処理粉体8)で製造したものを用いた。
【0053】
Figure 0003589987
【0054】
製造方法
成分Aを90℃にて溶解後、成分Bを混合し、ローラーを用いてさらに混合・粉砕を行った後、再溶解、脱気を行い、金型に充填し、冷却後とり出して容器に設置し製品を得た。
【0055】
上記の各実施例及び比較例で得られた化粧料の評価結果を表4に示す。
【0056】
Figure 0003589987
【0057】
表4の結果より、本発明の各実施例は比較例と比べてより高い効果を示していることが判った。実施例1〜4は本発明の処理粉体を用いたファンデーションに関するものであり、いずれの評価項目に関しても高い評価を得た。また、実施例5、6は本発明の処理粉体を用いた口紅(油性化粧料)に関するものであり、同様に各評価項目に関して高い評価を得た。これに対して、比較例1、3は一般的な方法で処理した粉体を配合した例であり、感触面での評価が低かった。比較例2、4は未処理の粉体を配合した例であるが、各項目の評価は低かった。
【0058】
【発明の効果】
以上のことから、本発明が、寒天を水に加熱溶解して調製した寒天溶解液を、攪拌しながら冷却して調製した流動性、柔軟性の高い寒天ゲルと、粉体との攪拌混合物を乾燥・粉砕することによって得られる、水分保持能、密着性に優れた処理粉体及びその製造方法、並びに該処理粉体を配合することで、保湿効果、感触、肌への付着性・親和性、化粧膜の均一性、化粧持ち改善効果に優れた化粧料を提供することは明らかである。

Claims (4)

  1. 寒天を水に加熱溶解させる工程(A工程)、寒天溶解液を攪拌しながら30℃以下まで冷却して寒天ゲルとする工程(B工程)、寒天ゲルと粉体とを攪拌混合する工程(C工程)、混合物を乾燥・粉砕する工程(D工程)を経て得られる処理粉体の製造方法。
  2. A工程とB工程との間にエステル系油剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の処理粉体の製造方法。
  3. C工程とD工程との間にエステル系油剤を添加し、攪拌混合することを特徴とする請求項1又は2に記載の処理粉体の製造方法。
  4. C工程とD工程との間に水及び/又は低級アルコールを添加し、攪拌混合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の処理粉体の製造方法。
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