JP3589592B2 - ポリハロゲン化モノテルペン並びにハロモンの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、ポリハロゲン化モノテルペン並びにハロモンの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、脳腫瘍等のガン治療薬等として期待されているハロモンをはじめとするポリハロゲン化モノテルペンの簡便で選択性の高い新しい製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
ポリハロゲン化モノテルペンの一種としての次式
【0003】
【化12】
【0004】
で表わされるハロモンは、フィリピンやハワイなどの海域で採集された紅藻Portieria homemanniiから数種類の類縁体とともに発見され、X線結晶構造解析により構造が決定された。最近、顕著な腫瘍選択性を持つことがわかり注目されている物質である。しかしながら、ハロモンは現在、アメリカ国立癌研究所によって前臨床試験薬に指定されているが、天然からの供給量が極めて少なく、臨床試験に進めない状況にある。
【0005】
ハロモンについては、従来よりその全合成について検討され、いくつかの方法が提案されているが、いずれも極めて多数の反応段階を要し、煩雑な操作が必要とされており、全工程の収率が低レベルに止まっている。実際、Jung,M.E. らにより提案されたアセチレン三重結合を有するアルコール化合物からの合成方法では11段階の反応からなり(J.Org.Chem.1997,62,7094) 、MioskowskiC.らにより提案された方法では14段階もの反応を必要としている。
【0006】
ハロモンの実際的な全合成が難しいのは、次式
【0007】
【化13】
【0008】
に示したように、イソハロモンをはじめとする数多くの類縁体が存在し、選択的にポリハロゲン化モノテルペンとしてのハロモンを合成することは容易ではないという理由による。
【0009】
このような事情はハロモンに限られることはない。数多くの臭素原子、塩素原子を結合しているポリハロゲン化モノテルペンの合成は、これらハロゲン原子の導入が極めて難しいのである。
【0010】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来の問題点を解消し、ハロモンの実際的な全合成をも可能とする、簡便で高選択的なポリハロゲン化モノテルペンの製造方法を提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記のとおりの課題を解決するものとして、第1には、少くとも二つのオレフィン性二重結合を分子内に有するモノテルペン化合物にテトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートを反応させて、分子内の一つのオレフィン性二重結合部に臭素原子と塩素原子の付加結合を形成してブロモクロロ化することを特徴とするポリハロゲン化モノテルペンの製造方法を提供する。
【0012】
また、この出願の発明は、第2には、次式(A)
【0013】
【化14】
【0014】
で表わされるミルセンをブロモクロロ化して次式(B)
【0015】
【化15】
【0016】
で表わされる化合物を製造する前記のポリハロゲン化モノテルペンの製造方法を提供し、第3には、次式(B)
【0017】
【化16】
【0018】
で表わされる化合物をブロモクロロ化して次式(C)
【0019】
【化17】
【0020】
で表わされる化合物を製造する前記のポリハロゲン化モノテルペンの製造方法を、第4には、次式(D)
【0021】
【化18】
【0022】
で表わされる化合物をブロモクロロ化して次式(E)
【0023】
【化19】
【0024】
で表わされるハロモンを製造する前記のポリハロゲン化モノテルペンの製造方法を提供する。
さらに、この出願の発明は、第5には、次の4段階の反応工程;
<1>次式(A)
【0025】
【化20】
【0026】
で表わされるミルセンをブロモクロロ化反応させて次式(B)
【0027】
【化21】
【0028】
で表わされる化合物を製造する
<2>前記式(B)の化合物をブロモクロロ化反応させて次式(C)
【0029】
【化22】
【0030】
で表わされる化合物を製造する
<3>前記式(C)の化合物を脱ブロモ化反応させて次式(D)
【0031】
【化23】
【0032】
で表わされる化合物を製造する
<4>前記式(D)の化合物をブロモクロロ化反応させて次式(E)
【0033】
【化24】
【0034】
で表わされるハロモンを製造する
を備えていることを特徴とするハロモンの製造方法をも提供する。
【0035】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0036】
なによりも、この出願の発明は、発明者によって、ハロモンの3、9位および6、7位のハロゲン官能基が、相当するオレフィンに対してMarkovnikov 型に配置していることに注目されたことを契機とし、全く同じ炭素骨格を持つミルセンに対して、位置および立体選択的なブロモクロロ化を行えば、ハロモンを効率良く合成できるはずである。
との観点に基づいてなされたものである。そして、ハロモンを含めてポリハロゲン化モノテルペンのブロモクロロ化反応について、テトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートを用いることを特徴とするこの出願の発明が完成されている。
【0037】
この発明のポリハロゲン化モノテルペンの製造方法では、少くとも二つのオレフィン性二重結合を分子内に有するモノテルペン化合物の各種のものが出発物質となる。ジエン、トリエン、さらにはテトラエンの各種のモノテルペン化合物であって、これらは、この発明のブロモクロロ化反応を阻害することのない許容される適宜な置換基をあらかじめ有していてもよい。このような置換基としては、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、アリール基等の炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基等々が例示される。
【0038】
ブロモクロロ化は、R4 NBrCl2 として表わされるテトラアルキルアンモニウム ジクロロブロメートを用いて行うことになる。
このテトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートにおいては、式中のR(アルキル基)は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、オクチル基等の各種のアルキル基でよい。
【0039】
ブロモクロロ化反応においては、出発物質の前記モノテルペン化合物とテトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートとの使用割合は、モノテルペン化合物に対して、モル比で0.3〜1.7程度のテトラアルキルアンモニウム ジクロロブロメートが使用されるのが好ましい。また反応は、極性溶媒中において行うのが好ましい。たとえばジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、クロロホルム、アセトニトリル等が好ましい溶媒として例示される。反応温度としては常温以下とすることが好ましく、さらに好適には5℃以下の温度とすることが考慮される。
【0040】
テトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートによるオレフィン化合物のブロモクロロ化反応はNegoroらにより報告されている方法であるが、この出願の発明のように、二つ以上の複数のオレフィン性二重結合を分子内に持つ化合物に対して適用し、一つのオレフィン性二重結合部のみに選択的に臭素原子と塩素原子とを付加結合させることはこれまで全く報告も示唆もされていないことである。そして、高い選択率と収率でブロモクロロ化モノテルペン化合物が得られることはこれまで予期できなかったことである。
【0041】
この発明のブロモクロロ化反応の方法は、代表的には、ハロモン全合成の反応ステップを構成するものとして重要な、前記のとおりのミルセン(A)からの化合物(B)の製造に、また化合物(B)から化合物(C)の製造に、さらには、化合物(D)からハロモン(E)の製造に際して適用される。
【0042】
そして、この発明のブロモクロロ化反応の方法によって、前記のとおりの4段階の反応工程で、ミルセンを出発物質としてハロモンの全合成が可能とされる。この合成は、極めて簡便であって、しかも選択性・収率ともに高く、実用的に極めて価値のあるプロセスを構成する。
【0043】
この発明のハロモンの全合成の方法は、たとえば次式
【0044】
【化25】
【0045】
によって例示される。ミルセン(A)から化合物(B)へ、化合物(B)から化合物(C)へ、そして、化合物(D)からハロモン(E)への反応段階は、いずれもBr4 NBrCl2 等のテトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートを用いてのブロモクロロ化反応として行われる。
【0046】
化合物(C)から化合物(D)への反応は、たとえばDBUの存在下での脱ブロモ化反応として行われる。この反応も室温程度の条件下において容易に実施することが可能となる。
【0047】
以上のような、わずか4段階で、入手し易いミルセンを出発物質としてのハロモンの合成は画期的なものである。
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。
【0048】
【実施例】
(実施例1)
次の反応式に従ってブロモクロロ化反応を実施した。
【0049】
【化26】
【0050】
窒素置換した50ml二口フラスコに、ミルセン0.17ml(1.0mmol)を無水ジクロロメタン10mlとともに入れた。氷浴でフラスコを冷却し、テトラ−n−ブチルアンモニウムジクロロブロメート393mg(1.0mmol)を加え、1時間攪拌した。水を加え反応を停止し、エーテルで抽出した。水、飽和食塩水で順次洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、化合物1と化合物2の混合物210mg(84%)を得た。逆相HPLCによる分析(Cosmosil 5C18MS、4.6×150mm、メタノール/水=80/20、1ml/min)により、1(RT9.29min)と2(RT10.90min)の比は43:1と決定された。
【0051】
化合物1、すなわち、3−ブロモ−2−クロロ−2−メチル−6−メチリデン−7−オクテンは、前記説明の化合物(B)に該当するものである。
物性値は次の表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
(実施例2)
次式の反応を実施した。
【0054】
【化27】
【0055】
窒素置換した50ml二口フラスコに、化合物1の1.81g(7.2mmol)を無水ジクロロメタン14mlとともに入れた。室温でテトラ−n−ブチルアンモニウムジクロロブロメート3.11g(7.9mmol)を加え、10分攪拌した。生じた黄色溶液に水を加え反応を停止し、エーテルで抽出した。水、飽和食塩水で順次洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、化合物3と化合物4の混合物(1.87g、71%)および5と6の混合物を得た(0.21g、8%)。プロトンNMRから化合物3と化合物4の比は約2:1、5と6の比は約3:1と決定された。化合物3と化合物4は逆相HPLC(Cosmosil 5C18MS、10×250mm、メタノール/水=85/15、3.5ml/min)により繰り返し分取された。
【0056】
化合物4、すなわち1,6−ジブロモ−2,7−ジクロロ−7−メチル−3−メチリデンオクタンは、前記説明の化合物(C)に該当するものである。
物性値は次の表2に示した。
【0057】
【表2】
【0058】
(実施例3)
次の反応を行った。
【0059】
【化28】
【0060】
窒素置換した10mlナスフラスコに、化合物4の149mg(0.40mmol)と無水DMF4mlを入れた。室温でDBU60μl(0.40mmol)を加え、40分攪拌し、反応液をヘキサン10mlと水10mlに加えて反応を停止した。さらに水を加えた後、ヘキサンで抽出した。有機相は水、飽和食塩水で順次洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、化合物7を得た(98.7mg、86%)。
【0061】
化合物7、すなわち、6−ブロモ−2,7−ジクロロ−7−メチル−3−メチリデン−1−オクテンは、前記説明の化合物(D)に該当するものである。
物性値は次の表3に示した。
【0062】
【表3】
【0063】
(実施例4)
次の反応を行った。
【0064】
【化29】
【0065】
窒素置換した10ml二口フラスコに、化合物7の1.81g(7.2mmol)を無水ジクロロメタン14mlとともに入れた。室温でテトラ−n−ブチルアンモニウムジクロロブロメート3.11g(7.9mmol)を加え、10分攪拌した。生じた黄色溶液に水を加え反応を停止し、エーテルで抽出した。水、飽和食塩水で順次洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)、逆相HPLC(Cosmosil 5PYE、4.6×150mm、メタノール/水=80/20、1ml/min)で精製し、ハロモンを得た。
【0066】
このものは、図1に示したとおりの 1HNMRスペクトルを示し、すでに報告されている値(Boyd,M.R.et al.J.Med.Chem.1992,35,3007)とよく一致した。
また、このハロモンはジアステレオマー混合物の状態にあるが、HPLC(OJ−Rカラム、CH3 CN/H2 O=55/45)により純度よくエナンチオマーに分割された。
【0067】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、ハロモンの実際的な全合成をも可能とする、簡便で高選択的なポリハロゲン化モノテルペンの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハロモンの 1H−NMRスペクトル図である。
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、ポリハロゲン化モノテルペン並びにハロモンの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、脳腫瘍等のガン治療薬等として期待されているハロモンをはじめとするポリハロゲン化モノテルペンの簡便で選択性の高い新しい製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
ポリハロゲン化モノテルペンの一種としての次式
【0003】
【化12】
【0004】
で表わされるハロモンは、フィリピンやハワイなどの海域で採集された紅藻Portieria homemanniiから数種類の類縁体とともに発見され、X線結晶構造解析により構造が決定された。最近、顕著な腫瘍選択性を持つことがわかり注目されている物質である。しかしながら、ハロモンは現在、アメリカ国立癌研究所によって前臨床試験薬に指定されているが、天然からの供給量が極めて少なく、臨床試験に進めない状況にある。
【0005】
ハロモンについては、従来よりその全合成について検討され、いくつかの方法が提案されているが、いずれも極めて多数の反応段階を要し、煩雑な操作が必要とされており、全工程の収率が低レベルに止まっている。実際、Jung,M.E. らにより提案されたアセチレン三重結合を有するアルコール化合物からの合成方法では11段階の反応からなり(J.Org.Chem.1997,62,7094) 、MioskowskiC.らにより提案された方法では14段階もの反応を必要としている。
【0006】
ハロモンの実際的な全合成が難しいのは、次式
【0007】
【化13】
【0008】
に示したように、イソハロモンをはじめとする数多くの類縁体が存在し、選択的にポリハロゲン化モノテルペンとしてのハロモンを合成することは容易ではないという理由による。
【0009】
このような事情はハロモンに限られることはない。数多くの臭素原子、塩素原子を結合しているポリハロゲン化モノテルペンの合成は、これらハロゲン原子の導入が極めて難しいのである。
【0010】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来の問題点を解消し、ハロモンの実際的な全合成をも可能とする、簡便で高選択的なポリハロゲン化モノテルペンの製造方法を提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記のとおりの課題を解決するものとして、第1には、少くとも二つのオレフィン性二重結合を分子内に有するモノテルペン化合物にテトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートを反応させて、分子内の一つのオレフィン性二重結合部に臭素原子と塩素原子の付加結合を形成してブロモクロロ化することを特徴とするポリハロゲン化モノテルペンの製造方法を提供する。
【0012】
また、この出願の発明は、第2には、次式(A)
【0013】
【化14】
【0014】
で表わされるミルセンをブロモクロロ化して次式(B)
【0015】
【化15】
【0016】
で表わされる化合物を製造する前記のポリハロゲン化モノテルペンの製造方法を提供し、第3には、次式(B)
【0017】
【化16】
【0018】
で表わされる化合物をブロモクロロ化して次式(C)
【0019】
【化17】
【0020】
で表わされる化合物を製造する前記のポリハロゲン化モノテルペンの製造方法を、第4には、次式(D)
【0021】
【化18】
【0022】
で表わされる化合物をブロモクロロ化して次式(E)
【0023】
【化19】
【0024】
で表わされるハロモンを製造する前記のポリハロゲン化モノテルペンの製造方法を提供する。
さらに、この出願の発明は、第5には、次の4段階の反応工程;
<1>次式(A)
【0025】
【化20】
【0026】
で表わされるミルセンをブロモクロロ化反応させて次式(B)
【0027】
【化21】
【0028】
で表わされる化合物を製造する
<2>前記式(B)の化合物をブロモクロロ化反応させて次式(C)
【0029】
【化22】
【0030】
で表わされる化合物を製造する
<3>前記式(C)の化合物を脱ブロモ化反応させて次式(D)
【0031】
【化23】
【0032】
で表わされる化合物を製造する
<4>前記式(D)の化合物をブロモクロロ化反応させて次式(E)
【0033】
【化24】
【0034】
で表わされるハロモンを製造する
を備えていることを特徴とするハロモンの製造方法をも提供する。
【0035】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0036】
なによりも、この出願の発明は、発明者によって、ハロモンの3、9位および6、7位のハロゲン官能基が、相当するオレフィンに対してMarkovnikov 型に配置していることに注目されたことを契機とし、全く同じ炭素骨格を持つミルセンに対して、位置および立体選択的なブロモクロロ化を行えば、ハロモンを効率良く合成できるはずである。
との観点に基づいてなされたものである。そして、ハロモンを含めてポリハロゲン化モノテルペンのブロモクロロ化反応について、テトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートを用いることを特徴とするこの出願の発明が完成されている。
【0037】
この発明のポリハロゲン化モノテルペンの製造方法では、少くとも二つのオレフィン性二重結合を分子内に有するモノテルペン化合物の各種のものが出発物質となる。ジエン、トリエン、さらにはテトラエンの各種のモノテルペン化合物であって、これらは、この発明のブロモクロロ化反応を阻害することのない許容される適宜な置換基をあらかじめ有していてもよい。このような置換基としては、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、アリール基等の炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基等々が例示される。
【0038】
ブロモクロロ化は、R4 NBrCl2 として表わされるテトラアルキルアンモニウム ジクロロブロメートを用いて行うことになる。
このテトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートにおいては、式中のR(アルキル基)は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、オクチル基等の各種のアルキル基でよい。
【0039】
ブロモクロロ化反応においては、出発物質の前記モノテルペン化合物とテトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートとの使用割合は、モノテルペン化合物に対して、モル比で0.3〜1.7程度のテトラアルキルアンモニウム ジクロロブロメートが使用されるのが好ましい。また反応は、極性溶媒中において行うのが好ましい。たとえばジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、クロロホルム、アセトニトリル等が好ましい溶媒として例示される。反応温度としては常温以下とすることが好ましく、さらに好適には5℃以下の温度とすることが考慮される。
【0040】
テトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートによるオレフィン化合物のブロモクロロ化反応はNegoroらにより報告されている方法であるが、この出願の発明のように、二つ以上の複数のオレフィン性二重結合を分子内に持つ化合物に対して適用し、一つのオレフィン性二重結合部のみに選択的に臭素原子と塩素原子とを付加結合させることはこれまで全く報告も示唆もされていないことである。そして、高い選択率と収率でブロモクロロ化モノテルペン化合物が得られることはこれまで予期できなかったことである。
【0041】
この発明のブロモクロロ化反応の方法は、代表的には、ハロモン全合成の反応ステップを構成するものとして重要な、前記のとおりのミルセン(A)からの化合物(B)の製造に、また化合物(B)から化合物(C)の製造に、さらには、化合物(D)からハロモン(E)の製造に際して適用される。
【0042】
そして、この発明のブロモクロロ化反応の方法によって、前記のとおりの4段階の反応工程で、ミルセンを出発物質としてハロモンの全合成が可能とされる。この合成は、極めて簡便であって、しかも選択性・収率ともに高く、実用的に極めて価値のあるプロセスを構成する。
【0043】
この発明のハロモンの全合成の方法は、たとえば次式
【0044】
【化25】
【0045】
によって例示される。ミルセン(A)から化合物(B)へ、化合物(B)から化合物(C)へ、そして、化合物(D)からハロモン(E)への反応段階は、いずれもBr4 NBrCl2 等のテトラアルキルアンモニウムジクロロブロメートを用いてのブロモクロロ化反応として行われる。
【0046】
化合物(C)から化合物(D)への反応は、たとえばDBUの存在下での脱ブロモ化反応として行われる。この反応も室温程度の条件下において容易に実施することが可能となる。
【0047】
以上のような、わずか4段階で、入手し易いミルセンを出発物質としてのハロモンの合成は画期的なものである。
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。
【0048】
【実施例】
(実施例1)
次の反応式に従ってブロモクロロ化反応を実施した。
【0049】
【化26】
【0050】
窒素置換した50ml二口フラスコに、ミルセン0.17ml(1.0mmol)を無水ジクロロメタン10mlとともに入れた。氷浴でフラスコを冷却し、テトラ−n−ブチルアンモニウムジクロロブロメート393mg(1.0mmol)を加え、1時間攪拌した。水を加え反応を停止し、エーテルで抽出した。水、飽和食塩水で順次洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、化合物1と化合物2の混合物210mg(84%)を得た。逆相HPLCによる分析(Cosmosil 5C18MS、4.6×150mm、メタノール/水=80/20、1ml/min)により、1(RT9.29min)と2(RT10.90min)の比は43:1と決定された。
【0051】
化合物1、すなわち、3−ブロモ−2−クロロ−2−メチル−6−メチリデン−7−オクテンは、前記説明の化合物(B)に該当するものである。
物性値は次の表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
(実施例2)
次式の反応を実施した。
【0054】
【化27】
【0055】
窒素置換した50ml二口フラスコに、化合物1の1.81g(7.2mmol)を無水ジクロロメタン14mlとともに入れた。室温でテトラ−n−ブチルアンモニウムジクロロブロメート3.11g(7.9mmol)を加え、10分攪拌した。生じた黄色溶液に水を加え反応を停止し、エーテルで抽出した。水、飽和食塩水で順次洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、化合物3と化合物4の混合物(1.87g、71%)および5と6の混合物を得た(0.21g、8%)。プロトンNMRから化合物3と化合物4の比は約2:1、5と6の比は約3:1と決定された。化合物3と化合物4は逆相HPLC(Cosmosil 5C18MS、10×250mm、メタノール/水=85/15、3.5ml/min)により繰り返し分取された。
【0056】
化合物4、すなわち1,6−ジブロモ−2,7−ジクロロ−7−メチル−3−メチリデンオクタンは、前記説明の化合物(C)に該当するものである。
物性値は次の表2に示した。
【0057】
【表2】
【0058】
(実施例3)
次の反応を行った。
【0059】
【化28】
【0060】
窒素置換した10mlナスフラスコに、化合物4の149mg(0.40mmol)と無水DMF4mlを入れた。室温でDBU60μl(0.40mmol)を加え、40分攪拌し、反応液をヘキサン10mlと水10mlに加えて反応を停止した。さらに水を加えた後、ヘキサンで抽出した。有機相は水、飽和食塩水で順次洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、化合物7を得た(98.7mg、86%)。
【0061】
化合物7、すなわち、6−ブロモ−2,7−ジクロロ−7−メチル−3−メチリデン−1−オクテンは、前記説明の化合物(D)に該当するものである。
物性値は次の表3に示した。
【0062】
【表3】
【0063】
(実施例4)
次の反応を行った。
【0064】
【化29】
【0065】
窒素置換した10ml二口フラスコに、化合物7の1.81g(7.2mmol)を無水ジクロロメタン14mlとともに入れた。室温でテトラ−n−ブチルアンモニウムジクロロブロメート3.11g(7.9mmol)を加え、10分攪拌した。生じた黄色溶液に水を加え反応を停止し、エーテルで抽出した。水、飽和食塩水で順次洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)、逆相HPLC(Cosmosil 5PYE、4.6×150mm、メタノール/水=80/20、1ml/min)で精製し、ハロモンを得た。
【0066】
このものは、図1に示したとおりの 1HNMRスペクトルを示し、すでに報告されている値(Boyd,M.R.et al.J.Med.Chem.1992,35,3007)とよく一致した。
また、このハロモンはジアステレオマー混合物の状態にあるが、HPLC(OJ−Rカラム、CH3 CN/H2 O=55/45)により純度よくエナンチオマーに分割された。
【0067】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、ハロモンの実際的な全合成をも可能とする、簡便で高選択的なポリハロゲン化モノテルペンの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハロモンの 1H−NMRスペクトル図である。
Claims (5)
- 少くとも二つのオレフィン性二重結合を分子内に有するモノテルペン化合物にテトラアルキルアンモニウム ジクロロブロメートを反応させて、分子内の一つのオレフィン性二重結合部に臭素原子と塩素原子の付加結合を形成してブロモクロロ化することを特徴とするポリハロゲン化モノテルペンの製造方法。
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