JPWO2005085204A1 - 含窒素5員環化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
含窒素5員環骨格の構築に有用な方法の一つとして、[3+2]環化反応がある。中でもニトロンなどの反応性の高い1,3−双極子を用いる環化反応は広く研究されており、光学活性な含窒素5員環骨格を与える触媒的不斉環化反応の例も報告されている(例えば、非特許文献1および2)。しかし、これらの反応は、いずれも強酸性の条件下、あるいは熱的条件下での反応を要するものであり、触媒量のルイス酸を用いて、穏和な条件下で隣り合った窒素原子を有する光学活性な5員環化合物、すなわち、ピラゾリン骨格やピラゾリジン骨格を得る環化反応方法については、これまで知られていなかった(例えば、非特許文献3および4)。
この出願の発明者らは、触媒量のジルコニウムトリフラートを用いることにより穏和な条件下でも高収率、高ジアステレオ選択的にヒドラゾンの分子内環化反応が起こることを明らかにし、報告している(非特許文献5)。しかし、このような反応は、適用される化合物の範囲が狭く、汎用性に乏しかったのが実情である。
Comprehensive Organic Synthesis;Trost,B.M.Ed.;Pergamon Press:Oxford,1991;Vol.5,Chap.3.3. Gothelf,K.V.;Jorgensen,K.A.Chem.Rev.1998,98,86 Kanemasa,S.;Kanai,K.J.Am.Chem.Soc.2000,122,10710; Shintani,R.;Fu,G.,C.J.Am.Chem.Soc.2003,125,10778. Kobayashi,S.;Hirabayashi,R.;Shimizu,H.;Ishitani,H.;Yamashita,Y.;Tetrahedron Lett.,2003,44,3351. Cox,P.J.;Wang,W.;Snieckus,V.Tetrahedron Lett.1992,33,2253. Yamashita,Y.;Ishitani,H.;Shimizu,H.;Kobayashi,S.J.Am.Chem.Soc.2002,124,3292. Kaya,R.;Beller,N.R.J.Org.Chem.1981,46,196.
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、次式(I)
(ただし、R1およびR2は同一または別異に水素原子または炭化水素基を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す)で表されるN−アシルヒドラゾンを、ルイス酸触媒と反応させることにより次式(II)
(ただし、R1、R2およびArは前記のものである)で表されるN−アシルピラゾリン誘導体を得ることを特徴とするN−アシルヒドラゾンの分子内環化反応方法を提供する。
また、この出願の発明は、第2には、ルイス酸触媒は、スカンジウムトリフラートであるN−アシルヒドラゾンの分子内環化反応方法を提供する。
この出願の発明は、第3には、次式(I)
(ただし、R1およびR2は同一または別異に水素原子または炭化水素基を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す)で表されるN−アシルヒドラゾンを、
次式(III)
(ただし、Pはアルコキシ基、Qはアルコキシ基またはハロゲン原子を表す)で表されるジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムジアルコキシドジハライドと、次式(IV)
(ただし、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、またはパーフルオロアルキル基を示し、Yは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、またはパーフルオロアルキル基を示し、XとYは同一であってもよい)で表されるビナフトール誘導体を混合して得られる不斉ルイス酸触媒と反応させることにより次式(II’)
(ただし、R1、R2およびArは前記のものである)で表される光学活性N−アシルピラゾリン誘導体を得ることを特徴とするN−アシルヒドラゾンの不斉分子内環化反応方法を提供する。
そして、第4には、この出願の発明は、次式(V)
(ただし、R3は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す)で表されるN−アシルヒドラゾンと、次式(VI)
(ただし、R4およびR5は同一または別異に水素原子または炭化水素基、アルコキシ基、アルキルチオ基からなる群より選択される置換基であり、少なくとも1つは水素原子以外の基である)で表されるオレフィンを、次式(III)
(ただし、Pはアルコキシ基、Qはアルコキシ基またはハロゲン原子を表す)で表されるジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムジアルコキシドジハライドと、次式(IV)
(ただし、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、またはパーフルオロアルキル基を示し、Yは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、またはパーフルオロアルキル基を示し、XとYは同一であってもよい)で表されるビナフトール誘導体を混合して得られる不斉ルイス酸触媒の存在下に反応させることにより、次式(VII)
(ただし、R3〜R5およびArは前記のものである)で表される光学活性N−アシルピラゾリジン誘導体を得ることを特徴とするN−アシルヒドラゾンの不斉分子間環化反応方法を提供する。
この出願の発明の分子内環化反応方法においては、ルイス酸触媒を使用することにより、次式(I)
のN−アシルヒドラゾンの分子内環化反応が起こり、次式(II)
のN−アシルピラゾリン誘導体が得られる。一方、不斉ルイス酸触媒を使用した場合には、式(I)のN−アシルヒドラゾンの不斉分子内環化反応が起こり、次式(II’)
の光学活性N−アシルピラゾリン誘導体が得られる。
このとき、出発物質としての式(I)のN−アシルヒドラゾンにおけるR1およびR2は、同一または別異に水素原子または炭化水素基を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。具体的には、R1およびR2は、水素原子、または、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される置換基であり、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の直鎖状または分岐状アルキル基やフェニル、トリル、ナフチル等のアリール基が挙げられる。これら炭化水素基は反応を阻害することのない許容される各種の置換基を有していてもよい。一方、Arとしては、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール基の他に、これらにアルキル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基等の置換基が結合したものが挙げられる。
なお、式(II)および式(II’)におけるR1、R2およびArは、式(I)と同じものを示す。つまり、この出願の発明の分子内環化反応方法および不斉分子内環化反応方法では、これらの基R1、R2およびArは、環化反応によって得られる生成物中に残留するのである。したがって、これらの基は、目的とする含窒素5員環化合物の構造に応じて適宜選択すればよい。
この出願の発明のN−アシルヒドラゾンの分子内環化反応において使用されるルイス酸触媒としては、各種のものが適用できるが、中でも希土類金属トリフラート、より具体的には、スカンジウムトリフラートが好ましく例示される。
一方、N−アシルヒドラゾンの不斉分子内環化反応において使用される不斉ルイス酸触媒は、次式(III)
(ただし、Pはアルコキシ基、Qはアルコキシ基またはハロゲン原子を表す)のジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムジアルコキシドジハライドと、次式(IV)
のビナフトール誘導体を混合して得られるものである。このような不斉ルイス酸触媒は、ジルコニウムアルコキシド(またはジルコニウムジアルコキシドジハライド)とビナフトール誘導体を混合した後、単離されたものであってもよいが、単離することなく反応系においてin situで得られるものであってもよい。なお、式(IV)のビナフトール誘導体におけるXは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、またはパーフルオロアルキル基を示し、Yは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、またはパーフルオロアルキル基を示し、XとYは同一であってもよい。このような不斉ルイス酸触媒を用いることにより、N−アシルヒドラゾンの分子内環化が立体選択的に起こるのである。
以上のとおりの分子内環化反応および不斉分子内環化反応において、触媒以外の条件はとくに限定されないが、好ましくは、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒中で反応させる。
この出願の発明では、さらに、次式(V)
で表されるN−アシルヒドラゾンの不斉分子間環化反応が提供される。このような不斉分子間環化反応では、式(V)のN−アシルヒドラゾンと、次式(VI)
で表されるオレフィンを、前記の不斉ルイス酸触媒、すなわち、式(III)のジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムジアルコキシドジハライドと式(IV)のビナフトール誘導体を混合して得られる不斉ルイス酸触媒の存在下で反応させることにより、不斉分子間環化が起こり、次式(VII)
で表される光学活性N−アシルピラゾリジン誘導体が得られる。
式(V)において、R3は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。具体的には、R3としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状アルキル基、フェニル、トリル、ナフチル等の芳香族基、さらには、ベンジル基、フェニルチオメチル基等が例示される。さらにこれらの炭化水素基は、アルコキシ基、アルキルチオ基、シリルオキシ基、ニトロ基、シアノ基等の許容される各種の置換基を有していてもよい。また、Arとしては、フェニル、トリル、ナフチル、p−ニトロフェニル、o,p−ジニトロフェニル、アミノフェニル等が例示される。
一方、式(VI)におけるR4およびR5は、同一または別異に、水素原子または炭化水素基、アルコキシ基、アルキルチオ基からなる群より選択される置換基であり、少なくとも1つは水素原子以外の基である。
以上のとおりのこの出願の発明の不斉分子間環化反応方法では、これらの置換基R3〜R5およびArは、不斉分子間環化反応によって得られる生成物中に残留する。したがって、これらの置換基は、目的とする含窒素5員環化合物の構造に応じて、適宜選択すればよい。
この出願の発明の不斉分子間環化反応方法は、以上のとおりにの触媒系の存在下でN−アシルヒドラゾン誘導体とオレフィンを反応させればよく、その反応条件は、とくに限定されない。しかし、とくに反応系に一級アルコールが共存する場合には、立体選択性が高くなり、好ましい。このとき添加される一級アルコールの種類や量は限定されない。例えば、n−プロパノールを前記(IV)のビナフトール誘導体に対して1〜10当量添加すればよい。
この出願の発明の不斉分子間環化反応では、その他の反応の条件はとくに限定されないが、0℃〜室温付近の反応温度という非常に穏和な条件下でも収率および立体選択性高く不斉分子間環化反応が進行する点が特徴的である。反応溶媒としては、各種の有機溶媒が例示されるが、好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエンなどが例示される。前記のとおり、反応溶媒中に一級アルコールを添加することにより立体選択性がより向上し、好ましい。
この出願の発明の方法により製造されたN−アシルピラゾリン誘導体やN−アシルピラゾリジン誘導体は、さらに、各種の有機合成手法を適用することにより、所望の物質に反応、変換させてもよい。例えばこれらの誘導体のN−N結合を切断して光学活性な1,3−ジアミンを誘導することが考慮される。また、この出願の発明の分子内環化反応方法、不斉分子内環化反応方法、不斉分子間環化反応方法を実施した後に、生成物を精製するために、抽出、分離、ろ過、再結晶、洗浄、乾燥等の一般的な操作を行ってもよい。
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
旋光は、JASCO P−1010偏光計を用いて測定した。
高速液体クロマトグラフィーは、SHIMADZU LC−10AT(液体クロマトグラフ)、SHIMADZU SPD−10A(UV検出器)、およびSHIMADZU C−R6Aクロマトパックを用いて行った。
EI高分解能マススペクトル(EI−HRMS)は、JEOL−JMX−SX−102マススペクトロメーターを用いて測定した。
カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル60(Merk)または酸化アルミニウム(活性化、約300mesh)を用いて行った。また、薄層クロマトグラフィーは、Wacogel B−5Fを用いて行った。
使用された溶媒は、MS 4A上で乾燥させた。
ジルコニウムプロポキシド−プロパノール錯体(Zr(OPr)4)は、Fluka Chemie AGから購入して使用した。プロパノールはマグネシウムプロポキシドの存在下で蒸留した。BINOLは非特許文献6〜7記載の方法により合成した。
ケテンジメチルジチオアセタール(化合物2a)は、非特許文献8記載の方法により合成した。
ビニルエーテルは、Sigma−Aldrichから購入し、使用直前に蒸留した。
ヒドラゾン化合物は、いずれも、適当なアルデヒドとヒドラジンをDMFまたはTMF中、少量の塩酸水溶液の存在下、室温で混合し、再結晶により精製して得た。
すべての反応はアルゴン雰囲気下、よく乾燥させたガラス機器を用いて行った。
<実施例1> N−アシルヒドラゾンの分子内環化反応
次の反応式(A)に従い、α,β−不飽和ケトン由来のN−アシルヒドラゾンの分子内環化を行った。
アルゴン雰囲気下、カルコン由来のベンゾイルヒドラゾン(化合物a;133mg)とスカンジウムトリフラート(40mg)のトルエン(2mL)懸濁液を14時間加熱還流した。室温まで放冷後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ、得られた混合物を分液し、水層から塩化メチレンを用いて抽出した。
有機層を回収して無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過、濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲル薄層クロマトグラフィーで精製し、目的物1−ベンゾイル−3,5−ジフェニル−2−ピラゾリン(128mg,収率96%)を得た。
表1に生成物の同定結果を示した。
次の反応式(B)に従い、α,β−不飽和ケトン由来のN−アシルヒドラゾンの不斉分子内環化を行った。
アルゴン雰囲気下、(R)−3,3’,6,6’−テトラヨード−1,1’−ビナフタレン−2,2’−ジオール(70mg)の無水トルエン(0.3mL)懸濁液にジルコニウムプロポキシド−プロパノール錯体(31mg,純度77%)のトルエン(0.4mL)溶液を加えて室温で3時間攪拌し、キラルジルコニウム触媒溶液を調製した。別の良く乾燥した容器にカルコン由来のベンゾイルヒドラゾン(121mg)をはかり取り、無水トルエン(0.7mL)を加えた。この懸濁液にアルゴン雰囲気下、ジルコニウム触媒溶液を無水トルエン(0.4mL)を用いてカニューレで加えた。
得られた混合物を80℃で18時間攪拌した。室温まで放冷後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ、得られた混合物を分液し、水層から塩化メチレンを用いて抽出した。
有機層を合わせて無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過、濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲル薄層クロマトグラフィーで精製し、目的物1−ベンゾイル−3,5−ジフェニル−2−ピラゾリン(76mg,収率62%)を得た。光学純度は51%eeであった。
同定結果を表2に示した。
次の反応式(C)に従い、N−アシルヒドラゾンとオレフィンの不斉分子間環化反応を行った。
(1)化合物1bと2aの不斉環化反応
室温下、(R)−3,3’−I2BINOL(3b,0.048mmol)のトルエン(0.3mL)懸濁液にZr(OPr)4(0.040mmol)のトルエン(0.4mL)溶液を添加した。得られた混合液を0.5時間、同じ温度で攪拌し、プロパノール(0.2mmol)のトルエン(0.3mL)溶液を加えた後、さらに0.5時間攪拌した。
得られた触媒溶液をトルエン(0.5mL)を用いてカニューレでヒドラゾン1b(0.40mmol)を入れた別の容器に移し、混合液を0℃で攪拌した。
この懸濁液にケテンアセタール2aのトルエン(0.5mL)溶液を加え、さらに同じ温度で18時間攪拌した。
水を加えて反応を停止させた後、混合液をCH2Cl2で3回抽出した。有機層を合わせ、無水Na2SO4上で乾燥した。ろ過後、減圧乾燥し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酸化アルミニウム)により精製して目的のピラゾリジン誘導体(4ba)を得た。この生成物の光学純度をキラルカラムを用いたHPLCにより求めた。
(2)化合物1aと2cの不斉環化反応
室温下、(R)−3,3’,6,6’−I4BINOL(3a,0.048mmol)のトルエン(0.3mL)懸濁液にZr(OPr)4(0.040mmol)のトルエン(0.4mL)溶液を添加した。得られた混合液を3時間、同じ温度で攪拌した。
得られた触媒溶液をトルエン(0.8mL)を用いてカニューレでヒドラゾン1a(0.40mmol)を入れた別の容器に移し、混合液を0℃で攪拌した。
この懸濁液にビニルエーテル2cの(4.0mmol)のトルエン(0.5mL)溶液を加え、さらに同じ温度で18時間攪拌した。
水を加えて反応を停止させた後、混合液をCH2Cl2で3回抽出した。有機層を回収し、無水Na2SO4上で乾燥した。ろ過後、減圧乾燥し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酸化アルミニウム)により精製して目的のピラゾリジン誘導体(4ac)をジアステレオマー混合物として得た。ジアステレオマー比は1H NMRにより求めた。また、生成物の光学純度をキラルカラムを用いたHPLCにより求めた。
各種のN−アシルヒドラゾン(化合物1a〜11)とオレフィン(2a〜2e)の反応についても、同様の方法により行った。代表例として、得られたピラゾリジン誘導体4ba、4ca、4da、4ea、4fa、4ga、4ab、4ac、4ad、4ae、4hc、4ic、4jc、4kc、41cの同定結果を次の表3〜18に示した。
実施例3(1)のピラゾリジン誘導体(4ba)の合成反応に沿って、追加プロパノールを添加することなく、R3=tBuMe2SiOCH2CH2,Ar=Phの場合の反応を行った。その結果、収率77%、97%eeの成績で対応するピラゾリジン誘導体を得た。同様に上記ピラゾリジン誘導体(4ba)の合成反応におけるケテンアセタール2aの使用量2.0当量を1.2当量、1.5当量に変更して反応を行った。その結果、各々、収率71%、97%ee,並びに収率85%、97%eeの反応成績を得た。
<参考例> ピラゾリジン誘導体の変換
(1)N−(3−Amino−1−(methylthio)−5−phenylpentyl)benzamide(化合物5)の合成 実施例3で得られた化合物4ba(464mg,1.25mmol)をよく脱気したメタノール(MeOH)(35mL)に溶解し、この溶液に、−78℃でSmI2のTHF溶液(0.15M,50mL,7.5mmol)を添加し、14.5時間、同じ温度で攪拌した。
反応溶液を−78℃で空気に曝し、溶液を濃緑色から黄色に変化することを確認した。溶媒を蒸発させた後、残渣をCH2Cl2/NaHCO3混合溶媒に溶解した。混合液をCelite(登録商標)でろ過し、有機層を回収した。水層をCH2Cl2で洗浄した後、有機層を回収し、水および塩水で洗浄した後、無水Na2SO4上で乾燥した。ろ過し、減圧下で濃縮した後、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CHCl3:MeOH=20:1)で精製して生成物をジアステレオマー混合物(320mg,78%)として得た。
得られた化合物5
の同定結果を表20に示した。
LiAlH4(31mg,0.817mmol)のTHF(1mL)懸濁液に、室温下、上記(1)で得られた化合物5(17.7mg,0.0539mmol)を添加し、溶液を6時間還流させた。反応溶液を室温まで冷却した後、水(0.03mL)、15%NaOH水溶液(0.03mL)、水(0.09mL)を順に加えた後、この混合液をCelite(登録商標)でろ過し、回収された固体をCH2Cl2でよく洗浄した。
ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を室温下で過剰量の無水酢酸のピリジン溶液で処理した。反応を飽和NaHCO3溶液で停止した後、CH2Cl2を添加した。有機層を除去し、水層をCH2Cl2で抽出した後、有機層を回収し、無水Na2SO4上で乾燥し、粗生成物を薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、CHCl3:EtOH=20:1)により精製して化合物6(18.1mg,95%)
を得た。
化合物6の同定結果を表21に示した。
LiAlH4(12.7mg,0.335mmol)のTHF(0.5mL)懸濁液に−78℃で4ac(105mg,0.274mmol)を添加し、同じ温度で9時間攪拌した。水(0.015mL)、15%NaOH水溶液(0.03mL)、水(0.09mL)を順に添加し、反応を停止した。
溶液を室温まで暖めた後、無水Na2SO4を加え、5分間攪拌した。混合液をCelite(登録商標)でろ過し、回収された固体をCH2Cl2で十分に洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を0℃〜室温で塩化アセチル(195μl,2.74mmol)、ピリジン(217mg,2.74mmol)およびp−ジメチルアミノピリジン(DMAP,6.7mg,0.052mmol)のCH2Cl2(2mL)溶液で処理した。
この混合液に、飽和NaHCO3溶液を加え、有機層を除去した。水層をCH2Cl2で抽出した後、有機層を回収し、無水Na2SO4上で乾燥した。粗生成物を薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=1:1、次いでCHCl3:酢酸エチル=4:1)で精製し、化合物7(45.2mg,76%,95% ee)
を得た。
同定結果を表22に示した。
4ac(58.2mg,0.152mmol)およびS−エチルエタンチオエートのトリメチルミリルエノールエーテル(79.3mg,0.450mmol)のCH3CN(0.5mL)溶液にMe3SiTf(100.1mg,0.450mmol)のCH3CN(0.21mL)溶液を0℃で加え同じ温度で24時間攪拌した。水を加えて反応を停止させた後、CH2Cl2を加えた。有機層を除去し、水層をCH2Cl2で抽出した。有機層を回収し、無水Na2SO4上で乾燥させた。ろ過および減圧濃縮後、粗生成を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製し、化合物8(44.2mg,68%,dr=86/14)
を得た。
同定結果を表23に示した。
LiAlH4(118mg,3.11mmol)のTHF(2mL)懸濁液に、−78℃で41c(617mg,1.54mmol)のTHF(2ml)溶液を加え、同じ温度で16時間攪拌した。水(0.12mL)、15%NaOH水溶液(0.12mL)および水(0.36mL)を順に添加して反応を停止した。室温まで昇温させた後、無水Na2SO4を加え、5分間攪拌した。混合液をCelite(登録商標)でろ過し、回収された固体をCH2Cl2で十分に洗浄した。
ろ液を減圧下で濃縮し、0℃から室温で、塩化ニコチノイル塩酸塩(1.10g,6.15mmol)、iPr2NEt(1.59g,12.3mmol)、およびp−ジメチルアミノピリジン(DMAP,187mg,1.53mmol)のCH2Cl2(2mL)溶液で処理した。
混合溶液に飽和NaHCO3溶液を加え、有機層を除去した。水層をCH2Cl2で抽出し、有機層を回収して無水Na2SO4上で乾燥した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=1:2)により精製し、化合物9(312mg,68%)
を得た。
Raney Ni(W−2,ca 0.5g)の混合溶媒(エタノールと酢酸緩衝液(pH=5.2)(2:1))懸濁液に、化合物9(47.4mg,0.189mmol)を溶解し、水素雰囲気(1atm)下で64時間攪拌した。混合液をCelite(登録商標)でろ過し、回収された固体をEtOHで十分に洗浄した。
ろ液を減圧下で濃縮し、残渣をCH2Cl2に溶解した。有機層を飽和NaHCO3溶液で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥した。ろ過および減圧濃縮後、粗生成を薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)で精製し、化合物10(8.6mg,29%,88% ee)
を得た。
同定結果を表25に示した。
上記第1および第2の発明のN−アシルヒドラゾンの分子内環化反応方法では、前記式(I)のN−アシルヒドラゾンをルイス酸触媒の存在下、加熱することにより、分子内[3+2]付加環化反応が起こり、前記式(II)のN−アシルピラゾリン誘導体が得られる。
上記第3の発明のN−アシルヒドラゾンの不斉分子内環化反応方法では、前記式(I)のN−アシルヒドラゾンを、ジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムジアルコキドジハライドと、ビナフトール誘導体を混合して得られる不斉ルイス酸触媒の存在下に加熱することにより、分子内環化反応が起こり、光学活性N−アシルピラゾリン誘導体が得られる。
そして、上記第4の発明のN−アシルヒドラゾンの不斉分子間環化反応方法では、前記式(V)のN−アシルヒドラゾンとオレフィンを、ジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムジアルコキドジハライドと、ビナフトール誘導体を混合して得られる不斉ルイス酸触媒の存在下に反応させることにより、高い立体選択性で光学活性N−アシルピラゾリジン誘導体を得ることが可能となる。
Claims (4)
- ルイス酸触媒は、スカンジウムトリフラートである請求項1のN−アシルヒドラゾンの分子内環化反応方法。
- 次式(I)
(ただし、R1およびR2は同一または別異に水素原子または炭化水素基を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す)
で表されるN−アシルヒドラゾンを、次式(III)
(ただし、Pはアルコキシ基、Qはアルコキシ基またはハロゲン原子を表す)
で表されるジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムジアルコキシドジハライドと、次式(IV)
(ただし、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、またはパーフルオロアルキル基を示し、Yは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、またはパーフルオロアルキル基を示し、XとYは同一であってもよい)
で表されるビナフトール誘導体を混合して得られる不斉ルイス酸触媒と反応させることにより次式(II’)
(ただし、R1、R2およびArは前記のものである)
で表される光学活性N−アシルピラゾリン誘導体を得ることを特徴とするN−アシルヒドラゾンの不斉分子内環化反応方法。 - 次式(V)
(ただし、R3は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す)
で表されるN−アシルヒドラゾンと、次式(VI)
(ただし、R4およびR5は同一または別異に水素原子または炭化水素基、アルコキシ基、アルキルチオ基からなる群より選択される置換基であり、少なくとも1つは水素原子以外の基である)
で表されるオレフィンを、次式(III)
(ただし、Pはアルコキシ基、Qはアルコキシ基またはハロゲン原子を表す)
で表されるジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムジアルコキシドジハライドと、次式(IV)
(ただし、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、またはパーフルオロアルキル基を示し、Yは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、またはパーフルオロアルキル基を示し、XとYは同一であってもよい)
で表されるビナフトール誘導体を混合して得られる不斉ルイス酸触媒の存在下に反応させることにより、次式(VII)
(ただし、R3〜R5およびArは前記のものである)
で表される光学活性N−アシルピラゾリジン誘導体を得ることを特徴とするN−アシルヒドラゾンの不斉分子間環化反応方法。
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