JP3587134B2 - 電気湯沸かし器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は主として一般家庭または事務所等で使用される電気湯沸かし器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の電気湯沸かし器の構成は図5及び図6に示すようであった。1は上部を開口した容器でステンレス鋼板を絞り加工または溶接加工で形成され、上端の全周には水平方向にフランジ2が形成されている。3は容器1底面に形成された凸部である。すなわち凸部3は容器1の底面に形成された平面である。4は凸部3の裏面に収納される加熱装置であるヒーターユニットである。ヒーターユニット4は上側から集成マイカでを打ち抜いて形成された第1の絶縁物5、ステンレス鋼板を打ち抜いて形成して約1000ワットの消費電力である湯沸かし電熱線6、集成マイカで形成した第2の絶縁物7、ステンレス鋼板を打ち抜いて形成した約100ワットの消費電力がある保温電熱線8、集成マイカで形成された第3の絶縁物9で順番に重ねられて構成されている。
【0003】
容器1の底部側からはアルミ鍍金鋼板などをプレス加工して形成したシーム板10を抵抗溶接で外周と中央付近とを溶接してヒーターユニット4を凸部3の裏面に収納して下方からヒーターユニット4を凸部3の裏面に圧接している。11は容器1の底部に溶接して固定された一対の取付金具であり、下端は止めねじ12でねじ止めされる構造になっている。
【0004】
13は前記容器1を収容する筒状のボデーでPP樹脂などの合成樹脂で形成されている。上端下端が開口したボデー13下部には開口部15を設けて組立時等に利用する。16は鋼板をプレス加工して形成してボデー13下側の開口部15を塞ぐ底板である。
【0005】
17は容器1の下に位置して一端を容器1の底部に連通し、他端を昇水パイプ18に連通した送水装置である遠心ポンプである。昇水パイプ18は給湯口19を介して外方に開放されている。
【0006】
20は前記容器1のフランジ2を係止する円形の段部21を略中央に備えた合成樹脂で形成された上枠である。上枠20はボデー13上端の開口部15に嵌着する。
【0007】
全体の構成は容器1を上枠20中央の段部21に収納して上枠20をボデー13上端に嵌着する。容器1下端に固定された取付金具11はボデー13の取付部14に嵌合する。ここで止めねじ12で底板16を取付部14を介して取付金具11に固定する。取付金具11と取付部14とは設計上約3mmの隙間が締め代として設けてある。容器1と底板16を締め付けると締め代分だけフランジ2を介して上枠20とボデー13を締め付けることとなり、止めねじ12で取付金具11を介して容器1底部を引っ張る応力を常に加えていることとなる。
【0008】
22は給電口である。23は前記容器1の上部開口を塞ぐ蓋であり、蓋23の一端には回転軸24が設けてあり、他端には前記上枠20の係止部25に係止して蓋23をロックするロック爪26が前後に摺動するように備えてある。回転軸24は上枠20の軸受け部27に回転自在に取り付けられて前記蓋23の開閉時に回転する。
【0009】
28は凸部3中央の裏面に備えられたサーミスタで形成された温度検知素子であり、凸部3の面を介して容器1内の湯の温度を検知する。29はヒーターユニット4への通電を制御する制御部であり、上下に分割できる防水ケース30内に収納されて容器1の下方に位置している。制御部29はヒーターユニット4の湯沸かし電熱線6、保温電熱線8と、遠心ポンプ17と温度検知素子28とを制御する。
【0010】
以上の構成において、動作を説明する。まず、水を容器1に所定量入れる。次に給電口22から給電する。制御部29が操作に基づいてヒーターユニット4へ通電する。湯沸かし時には湯沸かし電熱線6と保温電熱線8に通電して合計1100ワットの電力で湯沸かしする。ヒーターユニット4で発生した熱は容器1の凸部3を介して容器1内の水を加熱する。このとき湯沸かし電熱線6の温度は約500度に達しており、またシーム板10の温度は約250度に達している。温度検知素子28は容器1内の湯温を検知し、やがて温度検知素子28が湯の沸騰を検知して制御部29は湯沸かし電熱線6への通電を停止する。湯沸かし電熱線6への通電を停止させた直後はヒーターユニット4とシーム板10の温度は100度以上であるのでその熱容量と100度以上の温度のために、数十秒間は容器1底面の凸部3の表面から蒸気の気泡が発生し続ける。やがてヒーターユニット4とシーム板10の温度が100度以下になると気泡の発生が次第に停止する。以降は制御部29が保温電熱線8への通電を制御して容器1内の湯温を約95度に維持する。このとき制御部29はまず温度検知素子28の温度を信号として入力し、保温電熱線8へ通電するが、通電当初はヒーターユニット4全体を加熱して温度上昇させる必要があり、やがてヒーターユニット4全体が加熱されると次に凸部3を通して容器1内の湯を加熱することとなる。このときシーム板10の温度は約110度である。
【0011】
湯沸かし時も保温時もヒーターユニット4へ通電しているときはシーム板10下面から輻射熱を放出していることとなる。
【0012】
湯を所望のときは、操作部(図示せず)から遠心ポンプ17を駆動して昇水パイプ18と給湯口19を介して給湯する。湯が少なくなると蓋23を回動させて容器1上部を開放する。所望の水を容器1内に注水すると制御部29が温度検知素子28で湯温を検知して再度湯を沸かしてから保温する。以降は必要に応じて給湯する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の構成では、第1にヒーターユニット4の熱容量(ヒートマス)が大きく温度検知素子28で湯温を検知して制御部29でヒーターユニット4へ通電して湯温を制御するときの通電と湯温上昇の時間のずれが大きい。第2にヒーターユニット4の熱容量(ヒートマス)が大きく沸騰して湯沸かしヒーターユニット4への通電を停止した直後の数十秒間は容器1底部から熱容量による余熱で沸騰状態の蒸気の泡が多量に発生して遠心ポンプ17内に巻き込むために、遠心ポンプ17の給湯能力が著しく低下する。第3に湯沸かし中や保温時にヒーターユニット4へ通電するとシーム板10の温度が湯沸かし時には約250度になり、また保温時には約110度になり、容器1底部近傍の部品を構成する材料をより耐熱の高い材料で形成するか、ヒーターユニット4から距離をおいて位置させる必要がある。第4にヒーターユニット4へ通電しているときはシーム板10から下方に熱が輻射により放散している。第5にヒーターユニット4を構成する第1の絶縁物5と、第2の絶縁物7と、第3の絶縁物9と、湯沸かし電熱線6と、保温電熱線8の各部品を別々に加工する必要があるといった課題を有していた。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記従来の課題を解決するために、上部にフランジを有する水を収容する容器と、前記容器を収容する筒状のボデーと、前記ボデー上端に嵌着されるとともにその上面に前記容器が釣支される上枠と、前記容器底面に形成した段部と、さらに前記段部の内側に一段下方に凸に形成し球面の一部を切り取った形状をした底面と、前記凸に形成した底面に形成した第1の電気絶縁層とこの第1の電気絶縁層上に印刷で形成した電気抵抗体層と、さらに前記電気抵抗体層上に形成した第2の電気絶縁層とを備えた加熱部と、前記電気抵抗体層上に印刷で形成した電気導体層と、前記電気導体層に電気的に接続した金属端子と、前記段部に固定した取付金具とを備え、前記上枠を前記容器のフランジ部と前記ボデーで、前記ボデーの下部を前記取付金具の下端と止めねじで挟んで固定することにより、挟着して固定した構成としたものである。
【0015】
上記発明によれば、熱容量による温度制御タイミングの遅れを少なくし、ヒーターユニットの下方の温度上昇を抑制し、ヒーターユニット下面からの熱の放散を低減し、さらにヒーターユニットの部品点数を低減し印刷面への応力を低減するとともに加工工程を著しく簡素化することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、上部にフランジを有する水を収容する容器と、前記容器を収容する筒状のボデーと、前記ボデー上端に嵌着されるとともにその上面に前記容器が釣支される上枠と、前記容器底面に形成した段部と、さらに前記段部の内側に一段下方に凸に形成し球面の一部を切り取った形状をした底面と、前記凸に形成した底面に形成した第1の電気絶縁層とこの第1の電気絶縁層上に印刷で形成した電気抵抗体層と、さらに前記電気抵抗体層上に形成した第2の電気絶縁層とを備えた加熱部と、前記電気抵抗体層上に印刷で形成した電気導体層と、前記電気導体層に電気的に接続した金属端子と、前記段部に固定した取付金具とを備え、前記上枠を前記容器のフランジ部と前記ボデーで、前記ボデーの下部を前記取付金具の下端と止めねじで挟んで固定することにより、挟着して固定したものである。
【0017】
これにより、熱容量による温度制御タイミングの遅れを改善し、ヒーターユニットの下面温度上昇を抑制し、ヒーターユニット下面からの熱の放散を低減し、ヒーターユニットの部品点数を低減するとともに加工工程も著しく簡素化することができる。
【0018】
また、これにより、ボデーに取付金具による容器取付時の応力が容器の印刷面に直接加わらない。
【0019】
【実施例】
(実施例1)
以下に本発明の実施例1について、図1、図2、図3、図4を参照しながら説明する。フランジ2、止めねじ12、ボデー13、取付部14、開口部15、底板16、遠心ポンプ17、昇水パイプ18、給湯口19、上枠20、段部21、給電口22、蓋23、回転軸24、係止部25、ロック爪26、軸受け部27、温度検知素子28、制御部29、防水ケース30は従来の実施例と同一の形状と機能であり、同一の名称と符号を使用して説明は省略する。
【0020】
41は上部を開口し上端全周に水平方向にフランジ2を設けた円筒状の側壁42と段部43を備えた水を収容する容器である。外周が略円形の段部43は側壁42の内周より約1mm程度直径が大きく側壁42と段部43の溶接加工時は段部43を側壁42に下方から圧入して外周を側壁42に水密に溶接している。この結果段部43外周は圧入時に約1mm程度上にへこむこととなる。44は段部43から一段下方に凸に形成された底面である。底面44は相対する2カ所に平行な直線の段部である直線部45を絞り加工で形成し、他の部分は段部43の外周からほぼ均等な距離で絞り加工されている。底面44は全体としては略小判形をしている。底面44は平面ではなく球面の一部を切り取った形状をしており、容器41の段部43の中央部が一番深い絞り加工になるように下方に凸な形状をしている。
【0021】
46は底面44の外周近傍に穴を開けてステンレスパイプを咬めて水密的に形成した流出口であり、遠心ポンプ17に連通している。流出口46を段部43と別部品とすることで流出口46の取付加工を任意の行程で行うことができる。これは後述する印刷加工が極めて施し易い構成である。
【0022】
47は底面44下面のほぼ全面にあたる印刷曲面であり、ここに加熱部48が形成される。印刷曲面47の曲率については概略次のように設定すると良い。つまり、印刷曲面47の最長寸法に対してその100分の1以上の深さにする。理由は概略金属の熱膨張率は高くても10のマイナス5乗オーダーであり、温度差を1000度としても10のマイナス2乗つまり100分の1膨張することになる。これに対して絞り加工の深さを100分の1にすることで曲面がどのように熱膨張してもその凹凸が反転することはない。従って印刷曲面の絞り深さを最大寸法の100分の1以上にすると局部的な熱膨張による段部43に発生する応力は印刷曲面47の変形のみで吸収することができる。
【0023】
加熱部48は以下のような構造になっている。まず印刷曲面47全面に無機質であるガラスを主成分とする電気絶縁物を3層のシルク印刷で約50マイクロメートルから約200マイクロメートルに積層して第1の電気絶縁層49を形成する。この第1の電気絶縁層49の厚みは定格電圧や必要とする絶縁耐力によって印刷回数や印刷時のインクの濃度を調節して所望の厚さにする。印刷状態のまま電気炉で約10分間約400度で焼結する。するとステンレス鋼板(JIS規格のSUS444相当)の線膨張係数10.5〜11.9×10のマイナス6乗と同じ膨張係数の第1の電気絶縁層49が完成する。
【0024】
次に図3のように金属酸化物を主成分とする適度な電気抵抗を持った抵抗体を含んだインクで電気抵抗体層50をシルク印刷で形成する。シルク印刷の版は被印刷面よりも大きい面積を必要とするので容器41の側壁42下端の位置に対して印刷曲面47は側壁42下端より一段下に位置する底面44に設けてある。これによりシルク印刷版は容器41側壁42下端に当たることなく電気抵抗体層50を印刷することができる。
【0025】
印刷のパターンは最内周には幅の広い湯沸かし回路51の一部を設け、外周部にも湯沸かし回路51の一部を設け、その間には幅の狭い保温回路52を形成するパターンとする。電気抵抗体層50を同心円状とするのはシルク印刷加工法において、シルク版は平面状であるのに印刷曲面47は球面であり、印刷時にシルク版の押し圧が大きい中央付近ほど充分に印刷される一方で押し圧が小さい外周部ほど薄く印刷される傾向があるから同心円状に同一条件の印刷をするためである。同心円状の印刷条件は比較的管理しやすいので電気抵抗体層50を同心円状にしてこれにより消費電力のばらつきを約5%以下に押さえることができる。
【0026】
湯沸かし回路51の一部が最内周に位置するのは、発熱の多い湯沸かし回路51の熱でいち早く温度検知素子28に熱を伝えるためである。湯沸かし回路51と保温回路52の両端は共通端子53に一端を接続して他端はそれぞれ湯沸かし端子54と保温端子55として湯沸かし回路51と保温回路52のパターンよりも幅を広くして印刷曲面47の外周近傍に形成されている。この状態で電気炉内で約10分間約400度で焼結する。共通端子53と湯沸かし端子54と保温端子55と湯沸かし回路51と保温回路52とで電気抵抗体層50を形成している。
【0027】
次に、共通端子53と湯沸かし端子54と保温端子55とを銀を主成分とする銀ろう付け加工を表面に施す。また、同心円状の電気抵抗体層50を中心から放射状方向に銀ろう付け加工する。同心円状の電気抵抗体層50を中心から放射状方向に銀ろうで接続するのは熱膨張により印刷曲面47が中心から放射状方向に熱による膨張と収縮が大きいためにこの寸法変化に追従できる銀を主成分とする銀ろうで放射状方向の接続をおこなうためである。前記共通端子53と湯沸かし端子54と保温端子55と放射状方向の接続部の銀ろう加工部で電気導体層56を形成する。電気導体層56はシルク印刷で形成した後に電気炉で焼結する。
【0028】
次に、第1の電気絶縁層49の範囲から共通端子53と湯沸かし端子54と保温端子55とを除く範囲を無機質であるガラスを主成分とする電気絶縁物を1層にシルク印刷で約20マイクロメートルの厚さに積層して第2の電気絶縁層57を形成する。この第2の電気絶縁層57の厚みは定格電圧や必要とする絶縁耐力によって印刷回数や印刷時のインクの濃度を調節して所望の厚さにする。印刷状態のまま電気炉で約10分約400度で焼結する。するとステンレス鋼板(JIS規格のSUS444相当)の線膨張係数10.5〜11.9×10のマイナス6乗と同じ膨張係数の第2の電気絶縁層57が完成する。第1の電気絶縁層49と電気抵抗体層50と第2の電気絶縁層57とで加熱部48を形成している。
【0029】
58は前記共通端子53と湯沸かし端子54と保温端子55とに銀ろう付けで接続された金属端子であり、黄銅にスズ鍍金を施した材料または鉄にニッケル鍍金を施した材料をプレス加工で打ち抜いて形成している。
【0030】
59は容器41の段部43で底面44の直線部45近傍に溶接して固定された一対の取付金具である。取付金具59は下端にねじ穴60が設けてあり、取付金具59とでボデー13(取付部14)を挟んで止めねじ12で固定することとなる。取付金具59を段部43に溶接するのは取付金具59間に制御部29を内蔵した防水ケース30を収納することができるからである。また取付金具59は容器底部を引っ張る応力を常に加え、上枠20とボデー13を締め付けて固定するので締め付けによる応力を段部43に加えることとなる。44は段部43から一段下方に凸に形成された底面である。この構成とするのは、その応力を底面44を挟んだ印刷曲面47に伝わりにくくするためである。印刷曲面47には焼結した加熱部48が固着しているのでこれに応力が加わらないようにすることが重要である。
【0031】
61は容器41下部に接して備えられた断熱材であり、ガラス繊維、発泡シリコンゴム、熱変形温度が200度以上の熱可塑性樹脂の発泡材、無機質材料の積層材等で形成されている。
【0032】
以上のように構成された電気湯沸かし器についてその動作を説明する。基本的な動作は前述の従来の技術の動作と同じである。容器41段部43近傍の動作について述べる。容器41内に水を入れる。給電口22から商用電力を供給する。制御部29が温度検知素子28からの信号で容器41内の水温を検知して湯沸かしモードに入り、湯沸かし回路51と保温回路52に通電する。湯沸かし回路51と保温回路52はジュール熱により発熱して約150度の温度になり、第1の電気絶縁層49と第2の電気絶縁層57に熱が伝導する。第1の電気絶縁層49から容器41段部43を介して容器41内の水を加熱する。ここで第1の電気絶縁層49は段部43と電気抵抗体層50とにそれぞれ焼結で密着しているので熱伝導が非常にすぐれており、発熱した熱が電気抵抗体層50に滞留することなく容器41内の水を加熱することとなる。この状態で湯沸かしが進行する。
【0033】
また、電気抵抗体層50は通電とともに急激に温度上昇するので熱膨張係数に見合う膨張が発生する。温度上昇は急激で局部的な発生であり電気抵抗体層50が熱膨張する瞬間はまだステンレス鋼板で形成された段部43はまだ温度上昇していないので電気抵抗体層50と段部43の層状構成においてバイメタルのような挙動をする。しかし、印刷曲面47は熱膨張による応力をその曲率がわずかに変化することで吸収してしまう。印刷曲面47の熱膨張による曲率の変化は段部43の取付金具59には伝わらないために、ボデー13の締め付け寸法には影響しない。印刷曲面47の熱膨張による変化はそれ以外の部品には応力の影響はないこととなる。
【0034】
やがて容器41内の水は沸騰する。温度検知素子28が約100度の沸騰温度または温度上昇が停止して一定温度になったことを検知して制御部29が湯沸かし回路51と保温回路52の通電を停止する。このとき電気抵抗体層50と第1の電気絶縁層49および第2の電気絶縁層57は熱容量が小さく温度上昇も比較的少ない上に前述のように電気抵抗体層50と第1の電気絶縁層49と段部43はそれぞれ焼結で熱伝導が良いために通電を停止して1秒程度で段部43からの沸騰時の蒸気の泡は発生しなくなる。これにより沸騰直後に遠心ポンプ17を作動させても泡を巻き込んで給湯能力が低下することはない。
【0035】
以上のように実施例1によれば、第1に印刷曲面47に加熱部48を形成することで発熱による熱膨張応力を吸収することができる。第2に加熱部48の熱容量が小さいので加熱時のレスポンスが良く温度制御しやすい。第3に沸騰直後に余熱による蒸気の泡の発生が瞬時に停止するので遠心ポンプ17が泡を巻き込んで給湯性能が低下することがなく常に安定した給湯操作が可能となる。第4に加熱部48は焼結により熱伝導が良いために容器41下部の温度上昇が小さく従って容器41下部近傍に配置する部品の耐熱温度を低く設定することができる。第5に第2の絶縁層57の下面温度が比較的低いので輻射による放熱が少なく効率的な湯沸かしができる。第6に印刷による加熱部48の形成は各部品の加工行程を著しく簡素化できてしかも印刷加工では余分な廃材がないために地球環境にも優しい加工が行える。
【0036】
なお、加熱部48の印刷工程を側壁42と段部43を溶接して容器41を形成した後としたが、段部43のみの状態のときに先に印刷加工を施してから側壁42と段部43の溶接加工を施しても良い。
【0037】
また、印刷加工をシルク印刷加工法としたが、転写等の異なる印刷方法でも良い。要は液体状の材料を容器41段部43に固着させればよい。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明の電気湯沸かし器は、加熱部の熱膨張による変形および応力の発生を略半球面状にさせた底面で吸収することができ、また熱容量の小さい加熱部を形成することで温度制御のレスポンスを良くすることができ、また加熱部下面の温度上昇を比較的小さくすることができるとともに加熱部からの輻射により放熱を小さくすることができ、さらに加熱部を形成する部品の加工を印刷加工のみとして著しく簡素化することができる。
【0039】
さらに、前記構成に加え、湯沸かし器のボデー上面に釣支する上部にフランジを有する水を収容する容器の底面に下方に形成した段部と、さらに前記段部の内側に一段下方に凸に形成し球面の一部を切り取った形状をした底面と、前記容器の底面段部に固定した取付金具とを備えた構成とすることで、取付金具に発生する応力が印刷曲面に伝わることなく印刷曲面の加熱部に応力が加わらない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1を示す電気湯沸かし器の構成を示す断面図
【図2】本発明の実施例1を示す電気湯沸かし器の加熱用容器の分解斜視図
【図3】本発明の実施例1を示す電気湯沸かし器の加熱用容器の下面からの加熱部の部分図
【図4】本発明の実施例1を示す電気湯沸かし器の加熱用容器の加熱部の要部断面図
【図5】従来の実施例を示す電気湯沸かし器の構成を示す断面図
【図6】従来の実施例を示す電気湯沸かし器の加熱用容器の要部の部分断面図
【符号の説明】
2 フランジ
13 ボデー
20 上枠
41 容器
43 段部
44 底面
47 印刷曲面
48 加熱部
49 第1の電気絶縁層
50 電気抵抗体層
56 電気導体層
57 第2の電気絶縁層
58 金属端子
59 取付金具
Claims (1)
- 上部にフランジを有する水を収容する容器と、前記容器を収容する筒状のボデーと、前記ボデー上端に嵌着されるとともにその上面に前記容器が釣支される上枠と、前記容器底面に形成した段部と、さらに前記段部の内側に一段下方に凸に形成し球面の一部を切り取った形状をした底面と、前記凸に形成した底面に形成した第1の電気絶縁層とこの第1の電気絶縁層上に印刷で形成した電気抵抗体層と、さらに前記電気抵抗体層上に形成した第2の電気絶縁層とを備えた加熱部と、前記電気抵抗体層上に印刷で形成した電気導体層と、前記電気導体層に電気的に接続した金属端子と、前記段部に固定した取付金具とを備え、前記上枠を前記容器のフランジ部と前記ボデーで、前記ボデーの下部を前記取付金具の下端と止めねじで挟んで固定することにより、挟着して固定した電気湯沸かし器。
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