JP3586779B2 - 強誘電性液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、個人的に使用するワードプロセッサ,パーソナルコンピュータ等、小型軽量化が求められる情報機器には、液晶ディスプレイが広く使用されている。特に最近広く普及しつつある携帯型の情報機器に使用される液晶ディスプレイには、単に、小型化,軽量化だけでなく、低消費電力化,カラー化等の画質向上が強く要望されている。低消費電力という観点から見ると、バックライトが不要である高画質の反射型液晶表示素子が求められている。
【0003】
このような液晶表示素子において、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子、所謂、強誘電性液晶表示素子が注目されている。強誘電性液晶は、強誘電性を示すスメチック相からなる液晶分子の配列を有し、液晶分子の配列にメモリ性がある、応答速度が極めて速い、視野角が広い等の優れた特徴を備えている。
【0004】
強誘電性液晶を液晶表示素子に用いる場合、液晶分子の螺旋構造をほどいて、それぞれの液晶分子の自発分極を層間にわたって一定方向に揃えることが必要である。これを実現するためには、液晶表示素子のセル厚を螺旋ピッチよりも小さくすれば良い。即ち、強誘電性液晶の螺旋軸が基板に平行、層が垂直なパネルにおいては、1〜2μmぐらいの薄さになると、図8に示すような構造になる。
【0005】
この表面で安定化された状態(Surface Stabilized states:SS状態)では、自発分極の反転という強誘電性液晶の強誘電性としての性質を利用できる。このような液晶パネルを表面安定化強誘電性液晶(Surface Stabilized Ferroelectric Liquid Crystal:SSFLC)パネルという。自発分極Pの上向き,下向きに対応して、液晶分子Lの長軸が層法線方向から右側,左側にそれぞれθだけ傾いており(この傾斜角をチルト角という)、双安定状態になっている。右側に傾いた状態と左側に傾いた状態とが最初は混在していても、透明電極を使って電場Eを上向きに印加すれば、全体が右側に傾いた状態となる。一方、印加電場Eを反転して下向きにすれば、全体が右側に傾いた状態になる。この様子をモデル的に図9に示す。
【0006】
SS状態を利用した強誘電性液晶パネルは、双安定性を示し、層法線に対して左右いずれの側に傾いた状態も安定であり、しかも電場印加によりいずれかの状態にした後、電場を切っても、その状態を維持し続ける。すなわち、メモリ性があり、この強誘電性液晶液晶のメモリ効果を利用した大容量表示が可能である。また、ネマチック液晶のスイッチングが液晶の誘電異方性と電界エネルギとの相互作用によって行われるのに対して、強誘電性液晶のスイッチングは液晶の双極子モーメントと電界との相互作用によって行われるので、その応答速度はネマチック液晶に比べて非常に速く、1ライン当たりの走査時間が100 μsec.程度と極めて短く、高速対応である。更に、強誘電性液晶表示素子では、液晶分子が印加電圧の有無に関わらず常に基板に対して平行であるので、視野角が極めて広く、実用上、表示特性の視野角がないと言ってもよい程である。
【0007】
直交させた2枚の偏光板の間にこの強誘電性液晶パネルを挿入し、例えば液晶分子の長軸が右側に傾いているとき暗視野になるように、一方の偏光板の偏光軸を液晶分子の長軸と一致させておく。電場を反転させて、液晶分子の長軸を左側に傾かせれば、複屈折により光が透過する。この際の透過光量Iは入射光量I0 を用いて以下の式(1)で表される。
【0008】
I=I0 sin2 2α・ sin2 (πΔnd/λ) …(1)
但し、
d:パネルギャップ Δn:液晶の屈折率
λ:波長 α:液晶の光軸と一方の偏光板の偏光軸とのなす角度
【0009】
一方の偏光板の偏光軸と液晶分子の長軸とが一致しているとき、式(1)においてα=0となり、透過光量I=0(黒レベルが最小)となる。電場を反転させると、液晶分子が逆に傾き、α=2θとなる。よって、理論的には、式(1)においてα=45°つまりθ=22.5°のとき、透過光量Iは最大となる。しかしながら、実際の強誘電性液晶のチルト角θは10〜16°程度と小さいので、最大の透過光量を得ることができない。
【0010】
図10は、強誘電性液晶表示素子の基本的な構成を示す図である。図10において、31,32は図示しないスペーサにより所定間隔(1〜2μm程度)を隔てて対向配置された2枚の透明なガラス基板である。下側のガラス基板32の上面には、画面部分に電界を与えるため一方の電極である透明電極34,絶縁膜36及び配向膜38がこの順に積層形成されている。上側のガラス基板31の下面には、画素部分に電界を与えるための他方の電極である透明電極33,絶縁膜35及び配向膜37がこの順に積層形成されている。配向膜37,38が対向する空間内に強誘電性液晶39が封入されている。このような構成の液晶セルが、偏光軸を直交させた2枚の偏光板40,41の間に挿入されている。なお、バックライトを用いず周囲光を利用して表示を行う反射型の強誘電性液晶表示素子の場合には、一方の偏光板40(または41)に反射膜が付設されている。
【0011】
上述した構成において、例えば強誘電性液晶39の分子が右側に傾いているときに暗視野になるように、一方の偏光板40(または41)の偏光軸を強誘電性液晶39の分子長軸と一致させている。即ち、偏光板40,41の両偏光軸と液晶分子長軸との関係は図11のようになり、最小の暗レベルを得ることができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように、強誘電性液晶のチルト角θは、実際には、10〜16°程度であり、透過光量を最大とする理想の22.5°を得ることが難しい。従って、従来の強誘電性液晶表示素子における偏光板の偏光軸と液晶分子長軸との関係では、最小の暗レベルを得ることはできるが、チルト角が小さいので、明状態における光の利用効率が悪く、暗い明状態となってしまう。特に、反射型の強誘電性液晶ディスプレイでは、周囲光のみを用いて表示を行うので、利用できる光量が絶対的に小さいため、明状態において光の利用効率が低くて大きな透過光量を得られないという問題は深刻である。このように、従来の反射型の強誘電性液晶ディスプレイは、暗い表示しか行えないという課題があり、透過率の向上,明るさの増大が望まれている。
【0013】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、明状態における光の利用効率を高めて明るい表示を実現できる強誘電性液晶表示素子、特に、反射型の強誘電性液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の強誘電性液晶表示素子は、2枚の基板によって形成される空隙内に表面安定化された強誘電性液晶が封入された液晶パネルと、該液晶パネルを挟むように配置された2枚の偏光板とを有する強誘電性液晶表示素子において、前記強誘電性液晶のチルト角をθ、液晶分子の長軸と一方の偏光板の偏光軸とが一致して暗状態のレベルが最小となる状態から明状態が明るくなる方向への前記一方の偏光板の偏光軸の回転角をφとした場合に、明状態における液晶分子の長軸と前記一方の偏光板の偏光軸とのなす角である2θ+φの大きさが35〜55°となるように前記一方の偏光板を設置していることを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の強誘電性液晶表示素子は、請求項1において、明状態における液晶分子の長軸と前記一方の偏光板の偏光軸とのなす角である2θ+φの大きさがが45°であることを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の強誘電性液晶表示素子は、請求項1または2において、光反射膜を備え、反射型の強誘電性液晶表示素子であることを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の強誘電性液晶表示素子は、請求項1,2または3において、カラーフィルタを備え、カラーの強誘電性液晶表示素子であることを特徴とする。
【0018】
本発明の強誘電性液晶表示素子にあっては、液晶分子長軸と一方の偏光板の偏光軸とが一致して暗状態のレベルが最小となる従来の状態から、明状態が明るくなる方向に、その偏光板を回転させ、明状態の液晶分子長軸とその偏光板の偏光軸とのなす角が35〜55°、好ましくは45°となるようにその偏光板を設置する。このようにすると、以下に述べるような理由により、明状態での光の利用効率を高めることができ、明るい表示が可能となる。
【0019】
従来の液晶分子長軸と一方の偏光板の偏光軸とが一致して暗状態のレベルが最小となる状態から、図12に示すように、明状態が明るくなる方向へ、偏光軸をφだけ回転させると透過光量Iは、以下の式(2)で表される。
【0020】
I=I0 sin2 2(α+φ)・ sin2 (πΔnd/λ) …(2)
【0021】
例えば、使用する強誘電性液晶のチルト角θが16°(α=2θ=32°)のとき明状態の透過光量は、φが大きくなるに従って増加し、φ=13°(α+φ=45°)のとき、すなわち、液晶分子長軸と一方の偏光板の偏光軸とのなす角が45°のときに最大となる。また、例えば、チルト角θが13°である強誘電性液晶を使用した場合には、φが大きくなるに従って透過光量が増加し、φ=19°(α+φ=45°)のとき最大となる。
【0022】
以上のように、使用する強誘電性液晶のチルト角θとは無関係に、液晶分子長軸と一方の偏光板の偏光軸とが一致して暗状態のレベルが最小となる状態から、明状態が明るくなる方向へ、その偏光板の偏光軸をずらすことにより、明状態の透過光量を増加することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1(第1例)による強誘電性液晶表示素子の構成を示す図である。図1において、2,11は2枚の透明なガラス基板である。下側のガラス基板11の上面には、画面部分に電界を与えるため一方の電極であるITOからなる透明電極10,SiO2 からなる絶縁膜9及び上面がラビング処理されたポリイミドからなる配向膜8がこの順に積層形成されている。上側のガラス基板2の下面には、画素部分に電界を与えるための他方の電極であるITOからなる透明電極3,SiO2 からなる絶縁膜4及び下面がラビング処理されたポリイミドからなる配向膜5がこの順に積層形成されている。
【0025】
ガラス基板2,11を含むそれぞれの積層体は、ガラス球からなるスペーサ6により所定間隔(基板間隔が約2μm)を隔てて、配向膜5,8が対向する態様にて対向配置されており、両積層体間の空間内に強誘電性液晶7が封入されている。強誘電性液晶7は、ナフタレン系液晶を主成分とし、ブックシェルフ型の層構造を有し、チルト角θ=16°である。
【0026】
表面にSiO2 膜(絶縁膜4,9)を約1000Å蒸着した透明電極3,10(電極幅 0.185mm,ピッチ 0.2mm)付きのガラス基板2,11をそれぞれ洗浄した後、ポリイミドをスピンコータで塗布し、200 ℃,1時間焼成し、約1000Åのポリイミド膜(配向膜5,8)を成膜し、このポリイミド膜の表面をレーヨン製の布でラビングし、 1.6μm平均粒径のガラス球をスペーサ6として、液晶パネルを作製する。出来上がりのセルギャップは約2μmであり、このセルにナフタレン系液晶を主成分とするチルト角θ=16°の強誘電性液晶7を注入して、上述した構成を有する液晶パネルを作製する。
【0027】
このような構成の液晶セルが、偏光軸を直交させた2枚の偏光板1,12の間に挿入されている。この際、強誘電性液晶7の分子長軸と一方の偏光板1の偏光軸とが一致して暗状態のレベルが最小となる状態から、この一方の偏光板1をφだけ回転させた状態に設定する。他方の偏光板12は、その偏光軸が偏光板1の偏光軸に直交するように設定する。なお、これらの各偏光板1,12として、例えば、日東電工(株)製:NPF−G1220DU の偏光板を使用する。
【0028】
図2は、チルト角θ=16°(α=2θ=32°)の強誘電性液晶7の暗状態における分子長軸と偏光板1の偏光軸とのなす角φを変化させた場合における光透過率の変化を示すグラフであり、光透過率は最大の透過量に対する比の値で示している。また、チルト角θ=13°(α=2θ=26°)である強誘電性液晶7を使用した場合における同様な光透過率の変化を図3に示す。図2,図3においては、実線が前述の式(2)に基づく明状態の計算値、点線が前述の式(2)に基づく暗状態の計算値を示し、○が明状態の実際の測定値、△が暗状態の実際の測定値を示している。なお、透過光量は、光電子増倍管にて測定した。
【0029】
図2,図3から明らかなように、透過光量比の測定値は、前述の式(2)に基づく計算値と良好な一致を示す。そして、強誘電性液晶7のチルト角θによらず、φが0°から大きくなるに従って透過光量比が増大し、明状態における一方の偏光板1の偏光軸と強誘電性液晶7の分子長軸とのなす角φ+αの値が35〜55°のときに、明状態の透過光量比が0.88以上と高い値を示す。同様に、φ+αの値が40〜50°のときには、明状態の透過光量比が0.97以上とほぼ1に近い値が得られる。さらにφ+αの値が45°(チルト角θ=16°の強誘電性液晶7の場合にはφ=13°,チルト角θ=13°の強誘電性液晶7の場合にはφ=19°)になると、明状態の透過光量比が最大の1になる。
【0030】
以上のように、暗状態のレベルが最小となる従来の状態から、明状態が明るくなる方向へ、一方の偏光板を回転させ、明状態の液晶分子長軸と一方の偏光板の偏光軸とのなす角を35〜55°、好ましくは40〜50°、さらに好ましくは45°となるように偏光板を設置することにより、明状態での透過光量を高めることが可能となり、明るい表示が可能になる。また、2枚の偏光板の偏光軸を直交させているので、黒の表示が明瞭となる。
【0031】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2(第2例)による強誘電性液晶表示素子の構成を示す図である。図4に示す第2例は、バックライトを用いずに周囲光を利用して表示を行う反射型の強誘電性液晶表示素子である。一方の偏光板12の下側面(ガラス基板11と反対側の面)に、光を反射する反射膜13が設けられている点を除いて、第2例の構成は上述した第1例の構成と基本的に同じであり、図4に示す第2例において、図1に示す第1例と同一部分には同一番号を付して説明を省略する。なお、第2例でも第1例と同様に、封入する強誘電性液晶7として、ブックシェルフ型の層構造を有し、チルト角θ=16°であり、ナフタレン系液晶を主成分とする液晶を用いている。また、この第2例の製造工程は、予め反射膜13が付設された偏光板12(例えば、日東電工(株)製:NPF−F3225Mの偏光板)を準備しておけば、上述した第1例の製造工程と同様であるので、その説明は省略する。
【0032】
図4に示す第2例では、偏光軸が直交した2枚の偏光板1,12(偏光板12には反射膜13が付設)の間に液晶パネルを挿入し、強誘電性液晶7の2つの安定状態の内、一方に傾いたときの強誘電性液晶7の分子長軸と偏光板1の偏光軸とが図5に示すように45°となるように、すなわち、従来の液晶分子長軸と一方の偏光板の偏光軸とが一致した状態から13°だけ偏光板1を回転させて配置している。
【0033】
この第2例の反射型の強誘電性液晶表示素子の明状態の反射輝度を、1000lxの環境下において、輝度計を用いて測定すると、21.4cd/m2 と高く、明るい表示が得られた。同様にして、暗状態の反射輝度を測定すると、1.67cd/m2 と低く、良好な黒が得られた。
【0034】
上述の第2例と同様な構成を有し、明状態の強誘電性液晶7の分子長軸と偏光板1の偏光軸とのなす角が35°,55°である反射型の強誘電性液晶表示素子を作製し、明状態,暗状態の反射輝度を測定した。35°のとき、明状態では18.6cd/m2 、暗状態では1.51cd/m2 の輝度であった。55°のとき、明状態では18.3cd/m2 、暗状態では1.85cd/m2 の輝度が得られた。このように、明状態の強誘電性液晶7の分子長軸と偏光板1の偏光軸とのなす角が35°,55°の場合においても、明るい表示が得られた。
【0035】
また、上述の第2例と同様な構成を有し、従来例のように、暗状態の強誘電性液晶の分子長軸と一方の偏光板の偏光軸とを一致させた反射型の強誘電性液晶表示素子(比較例1)を作製した。この比較例1の反射型の強誘電性液晶表示素子の明状態の輝度を、1000lxの環境下において、輝度計を用いて測定すると、12.1cd/m2 と低く暗い表示であった。同様にして、暗状態の輝度を測定すると、1.22cd/m2 であった。
【0036】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3(第3例)による強誘電性液晶表示素子の構成を示す図である。図6に示す第3例は、バックライトを用いずに周囲光を利用してカラー表示を行う反射型のカラー強誘電性液晶表示素子である。図6において図4と同一部分には同一番号を付して説明を省略する。図6に示す第3例では、一方のパターン化された透明電極10とガラス基板11との間にRGBカラーフィルタ14が設けられている。このRGBカラーフィルタ14のそれぞれの膜厚と色度(x,y)とは、R:1.80μm,(0.64,0.33)、G:1.58μm,(0.30,0.66)、B:1.15μm,(0.14,0.12)である。また、第3例でも第1,第2例と同様に、封入する強誘電性液晶7として、ブックシェルフ型の層構造を有し、チルト角θ=16°であり、ナフタレン系液晶を主成分とする液晶を用いている。
【0037】
表面にSiO2 膜(絶縁膜4)を約1000Å蒸着した透明電極3(電極幅 0.3mm,ピッチ0.33mm)付きのガラス基板2、及び、SiO2 膜(絶縁膜9),透明電極10(電極幅0.08mm,ピッチ0.11mm),RGBカラーフィルタ14付きのガラス基板11を洗浄した後、ポリイミドをスピンコータで塗布し、200 ℃,1時間焼成し、約1000Åのポリイミド膜(配向膜5,8)を成膜した。このポリイミド膜の表面をレーヨン製の布でラビングし、 1.6μm平均粒径のガラス球をスペーサ6として、液晶パネルを作製する。出来上がりのセルギャップは約2μmであり、このセルにナフタレン系液晶を主成分とするチルト角θ=16°の強誘電性液晶7を注入して、上述した構成を有する液晶パネルを作製する。
【0038】
偏光軸が直交した2枚の偏光板1,12(内1方の偏光板12は反射膜13付き)の間にこの液晶パネルを挿入し、上述の第2例と同様に、強誘電性液晶7の2つの安定状態の内、一方に傾いたときの強誘電性液晶7の分子長軸と偏光板1の偏光軸とが45°(図5参照)となるように配置した反射型のカラー強誘電性液晶表示素子を作製する。
【0039】
この第3例の反射型のカラー強誘電性液晶表示素子における各カラーフィルタ14(RGB)の表示色(x,y)と明状態,暗状態の輝度とを1000lxの環境下において測定した。表示色の測定結果を図7に、輝度の測定結果を表1に示す。また、上述の第3例と同様な構成を有し、従来例のように、暗状態の強誘電性液晶の分子長軸と一方の偏光板の偏光軸とを一致させた反射型のカラー強誘電性液晶表示素子(比較例2)を作製し、この反射型のカラー強誘電性液晶表示素子の各カラーフィルタ(RGB)の表示色と明状態,暗状態の輝度を、1000lxの環境下において測定した。表示色の測定結果を図7に、輝度の測定結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
明状態,暗状態の輝度については、表1に示すように、従来例による比較例2では、明状態の輝度が低く、暗い表示であったが、本発明による第3例では、明状態の輝度が高く、明るい表示であった。また、表示色については、図7に示すように、比較例2では、各カラーフィルタ(RGB)の彩度が低く、色再現性が悪い表示であったが、第3例では、各カラーフィルタ14(RGB)で高い彩度が得られており、表示色に優れた表示であった。
【0042】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明の強誘電性液晶表示素子では、強誘電性液晶の分子長軸と一方の偏光板の偏光軸とが一致して暗状態のレベルが最小となる従来の状態から、明状態が明るくなる方向に、その偏光板を回転させ、明状態の液晶分子長軸とその偏光板の偏光軸とのなす角が35〜55°、好ましくは45°となるようにその偏光板を設置するようにしたので、広視野角,大容量表示及び高速応答が可能な強誘電性液晶表示素子の透過光量の最適化を実現でき、明るく、明瞭な表示が可能な反射型の強誘電性液晶表示素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1例による透過型の強誘電性液晶表示素子の構成図である。
【図2】チルト角16°の強誘電性液晶を用いた第1例における偏光板の偏光軸と液晶分子長軸との角度を変えた場合の光透過率の変化を示す図である。
【図3】チルト角13°の強誘電性液晶を用いた第1例における偏光板の偏光軸と液晶分子長軸との角度を変えた場合の光透過率の変化を示す図である。
【図4】本発明の第2例による反射型の強誘電性液晶表示素子の構成図である。
【図5】第2例における偏光板の偏光軸と液晶分子長軸との関係を示す図である。
【図6】本発明の第3例による反射型のカラー強誘電性液晶表示素子の構成図である。
【図7】第3例及び比較例2におけるCIE色度図である。
【図8】表面安定化強誘電性液晶を説明するための図である。
【図9】強誘電性液晶表示素子を説明するための液晶分子のモデル図である。
【図10】強誘電性液晶表示素子の一般的な構成を示す図である。
【図11】従来の強誘電性液晶表示素子における偏光板の偏光軸と液晶分子長軸との関係を説明するための図である。
【図12】本発明の強誘電性液晶表示素子における偏光板の偏光軸と液晶分子長軸との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
1,12 偏光板
2,11 ガラス基板
3,10 透明電極(ITO)
4,9 絶縁膜(SiO2 )
5,8 配向膜(ポリイミド)
6 スペーサ
7 強誘電性液晶
13 反射膜
14 RGBカラーフィルタ
Claims (4)
- 2枚の基板によって形成される空隙内に表面安定化された強誘電性液晶が封入された液晶パネルと、該液晶パネルを挟むように配置された2枚の偏光板とを有する強誘電性液晶表示素子において、前記強誘電性液晶のチルト角をθ、液晶分子の長軸と一方の偏光板の偏光軸とが一致して暗状態のレベルが最小となる状態から明状態が明るくなる方向への前記一方の偏光板の偏光軸の回転角をφとした場合に、明状態における液晶分子の長軸と前記一方の偏光板の偏光軸とのなす角である2θ+φの大きさが35〜55°となるように前記一方の偏光板を設置していることを特徴とする強誘電性液晶表示素子。
- 明状態における液晶分子の長軸と前記一方の偏光板の偏光軸とのなす角である2θ+φの大きさがが45°であることを特徴とする請求項1記載の強誘電性液晶表示素子。
- 光反射膜を備え、反射型の強誘電性液晶表示素子であることを特徴とする請求項1または2記載の強誘電性液晶表示素子。
- カラーフィルタを備え、カラーの強誘電性液晶表示素子であることを特徴とする請求項1,2または3記載の強誘電性液晶表示素子。
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