JP2674600B2 - 液晶表示装置 - Google Patents

液晶表示装置

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JP2674600B2 JP63109893A JP10989388A JP2674600B2 JP 2674600 B2 JP2674600 B2 JP 2674600B2 JP 63109893 A JP63109893 A JP 63109893A JP 10989388 A JP10989388 A JP 10989388A JP 2674600 B2 JP2674600 B2 JP 2674600B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、簡単な構造で、コントラストが高く、かつ
カラー表示装置への応用が可能な大表示容量の液晶表示
装置に関する。
〔技術の背景〕
従来、高デューティ比のマルチプレックス駆動におい
て高コントラストで大容量の表示が可能な液晶表示装置
として、SBE(Supertwisted Birefringence Effect)タ
イプの液晶表示装置が開示されている。
しかし、このSBEタイプの液晶表示装置は、複屈折効
果を利用しているために表示画像部および背景部が特定
の色に着色するという欠点があり、そのため、表示品
質が劣る、色彩に対するユーザーの好みに対応できな
い、カラー表示が困難である、等の問題があった。
しかるに、斯かる着色の問題を解決して明瞭な白黒表
示を達成する技術として、下記の技術が提案された。
(1)液晶における屈折率異方性の大きさΔnと液晶層
の厚さd(μm)との積Δn・dの値を、0.4〜0.6μm
程度にして、着色を、防止するOMI方式(Appl.Phys.Let
t.50(1987)P236〜238参照)。
(2)一方の液晶セルに、液晶層の液晶分子のねじれ方
向が逆である他方の液晶セルを重ね合わせて2層セル構
造とし、当該他方の液晶セルを光学補償板として用いる
ことにより着色を防止する2層セル方式(日経マイクロ
デバイス,1987年10月号P84〜88参照)。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、上記技術(1)のOMI方式においては、高コ
ントラストが得られず、表示画像が暗く、また着色を完
全に防止することが困難である、という問題がある。
また、上記技術(2)の2層セル方式においては、1
つの液晶セルのみにより装置を構成する場合に比して製
造コストが高くなり、しかも重量が増大し、また2つの
液晶セルの厚さを均一化することが困難であるために光
学補償板としての機能が十分に得られず、そのため着色
を完全に防止することが困難である、という問題があ
る。
さらにSBEタイプの液晶表示装置では、安定な配向状
態を形成し、高いコントラストを得るためには高いプレ
ティルト角の配向層を必要とする。従来、高プレティル
ト角の配向層の形成方法として斜方蒸着法が知られてい
るが、量産性、大面積均一処理の点で問題がある。ま
た、最近、量産性に優れたラビング法で高いプレティル
ト角を実現する方法がいくつか提案されているが、均一
な配向が得られるプレティルト角は高々25゜程度であ
る。そしてプレティルト角が25゜未満の液晶表示おいて
は高デューティ比のマルチプレックス駆動において十分
なコントラストを得ることができなかった。
本発明は以上の如き事情に基づいてなされたものであ
って、その目的は、プレティルト角が25゜未満の液晶表
示装置であって、構造が簡単で製造コストの低減化を図
りながら、高デューティ比のマルチプレックス駆動にお
いて高コントラストでかつ着色の少ない明瞭な表示を実
現し、カラーフィルターとの組合せにより色純度の高い
カラー表示が可能な液晶表示装置を提供するものであ
る。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するため、本発明は、対向して配置さ
れた各々配向層を有する一対の電極基板間に、旋光性物
質を添加したネマチック液晶がねじれ構造を形成して配
置された液晶層を備えた液晶セルと、当該液晶セルの両
側に配置された一対の偏光板とを有してなり、電極基板
面に接する液晶分子のダイレクタ方向と当該電極基板面
とのなす角度(プレティルト角)θが25゜未満である
液晶表示装置において、以下の条件(a)〜(d)を満
たすことを特徴とする。
条件(a);液晶層におけるねじれ構造のねじれ角αが
220〜300゜であること。
条件(b);ネマチック液晶の屈折率異方性の大きさΔ
nと、液晶層の厚さd(μm)との積Δn・dが0.60〜
0.85μmであること。
条件(c);ねじれ角αとの関係において、一対の偏光
板の偏光軸と、当該偏光板のそれぞれに隣接する電極基
板の配向処理方向とのなす角度(ずれ角)βおよびγが
下記式及び式を満足すること。
式;α+β−γ−180゜=90゜−δ (0゜<δ<40゜) 式;β=(360゜−α)/2−δ/2 条件(d);旋光性物質を添加した状態のネマチック液
晶の自発ねじれピッチPsと、配向層によりねじれ構造が
強制的に規制されたときの液晶層の規制ねじれピッチPc
が下記式を満足すること。
式;(Pc−Ps)/Ps<0 以下、本発明を具体的に説明する。
通常、白黒表示の液晶表示装置に、赤(R)、緑
(G)、青(B)の3色のカラーフィルターを組合せ
て、加法混色カラー表示を行う場合、色純度の高いカラ
ー表示を実現するためには液晶表示装置が次の条件を満
たさなければならない。
(1)明状態(光透過状態)において、赤、緑、青の3
波長領域の光をまんべんなく透過すること。
(2)赤、緑、青の各波長領域の光に対するオン−オフ
のコントラストが十分に高いこと。
本発明者等は、従来のSBEタイプの液晶セルを備えた
液晶表示装置において、明状態(光透過状態)で着色が
生ずる原因を調べたところ、このタイプの液晶表示装置
の明状態の透過スペクトルには、第1図に示すように、
可視光波長域において光をほどんど透過しない非透過波
長域Aのあることを見出した。
そして、この非透過波長域Aは、ネマチック液晶にお
ける屈折率異方性の大きさΔnと、液晶セルを構成する
液晶層の厚さdとの積Δn・dを小さくすると、短波長
側にシフトする。
しかし、積Δn・dが過小になると、可視光波長域に
おける光の透過率が全体的に低くなり、そのため明状態
(光透過状態)における表示が暗くなる。
そこで、斯かる知見に基づいて研究を重ねた結果、当
該積Δn・dが0.85μm以下で、かつ0.06μm以上(条
件(b)であれば、非透過波長域Aを可視光波長域から
紫外域へシフトできて着色を防止でき、しかも可視光波
長域の全体における光の透過率を十分に維持できて明状
態(光透過状態)における表示を明るくできることを見
出した。
さらに研究を重ねた結果、液晶セルの両側に配置する
一対の偏光板のずれ角βおよびγを変更すると、第1図
に示した透過スペクトルにおいて、その極小点Pおよび
極大点Qにおる透過率が変化することが判った。すなわ
ち、極小点Pにおける透過率は、β+γの値を90゜から
0゜に変化させると、次第に大きくなり、極大点Qにお
ける透過率は、ずれ角βおよびγの絶対値の差を大きく
すると、次第に小さくなることが判明した。
従って、ずれ角βおよびγを適宜設定して透過スペク
トルを平坦化することにより、色づきの解消を図ること
が可能となる。しかし、実際には、ずれ角βおよびγの
みによって透過スペクトルを完全に平坦にすることが困
難であるので、必要に応じて、透過スペクトルをより平
坦化するためのフィルターを用いるか、あるいは光源の
種類を選択して透過光スペクトルを補正することが好ま
しい。
一方、表示画面のコントラストを高くするためには、
暗状態(光非透過状態)における漏れ光を小さく抑制す
ることが必要である。特に、赤、緑、青の3色カラーフ
ィルターを組合せてカラー表示する場合には、色純度を
高めるために当該漏れ光を極力小さくする必要がある。
しかるに、従来のプレティルト角θが25゜未満のSB
Eタイプの液晶表示装置において、1/100Dデューティ比
のマルチプレックス駆動においてコントラストが最大で
も15程度であり、カラー表示用としては、いまだ不十分
である。
そこで、本発明者等は、さらに良好なカラー表示のた
めに、コントラストが20以上である液晶表示装置を得る
ことを目的として、研究を重ねた結果、ねじれ構造のネ
マチック液晶層を備えた液晶セルと一対の偏光板とを組
合せる場合に、当該液晶層のねじれ角αとの関係におい
て、一方の偏光板のずれ角βを固定したときに、暗状態
における透過率を極小にするときの他方の偏光板のずれ
角γは下記式により決定できることを見出した。
式;α+β−γ−180゜=90゜−δ (0゜<δ<40゜) すなわち、上記式においてねじれ角αとの関係にお
いてずれ角βおよびγを選定することにより、暗状態に
おける透過率を極小にでき、従って、暗状態における漏
れ光を小さくでき、結果としてコントラストを高くでき
る。
このδの値は、暗状態(オン電圧印加時の光非透過状
態)におけるネマチック液晶層中の液晶分子の平均ティ
ルト角θONに依存し、この平均ティルト角θONが90゜に
近づくとδの値は0゜に近づく。なお、平均ティルト角
θONとは、液晶分子のダイレクタ方向と電極基板面との
なす角度の液晶層の厚さ方向における平均値という。の
平均ティルト角θONは、配向層の種類とネマチック液晶
の物性およびオン電圧に依存する値である。
上記式において、左辺は一対の偏光板の偏光軸同士
のなす角度に等しい。従って、オン電圧印加時に液晶層
中の液晶分子が完全に電界方向に配向したなら(θON
90゜)、式の左辺が90゜に等しいとき暗状態の漏れ光
は最小になる。しかし、実際はオン電圧を印加した時、
液晶層中の液晶分子は完全に垂直には立上がっておらず
(θON<90゜)、そのため液晶層は入射光に対し若干の
リターデーションを示す。暗状態の漏れ光を最小にする
ためにはこのリターデーションによる旋光効果を打ち消
すために、式の左辺の値を平均ティルト角θONに応じ
た補正角δだけ90゜からずらさなければならないことが
判った。ずらす方向は、δが正の方向でなければならな
い。δの値と、オン電圧印加時の平均ティルト角θON
の関係を第2図に示す。
第2図において、実線はΔn・dが0.77μmのときの
オン電圧印加時の平均ティルト角θONとδの値との関係
を示しており、破線はΔn・dが0.60〜0.85μmの範囲
で上記関係が変異する範囲を示している。
なお、平均ティルト角θONは実測することは難しいが
液晶セルの示すリターデーションを測定することにより
推定することができる。また、液晶セルの示す双安定性
の程度が同程度であれば、平均ティルト角θONはプレテ
ィルト角θに比例する。
さらに、研究を重ねた結果、下記式に従ってずれ角
βを設定すれば、上記極小値をさらに最小にできること
を見出した。
すなわち、液晶セルの液晶層のねじれ角αとの関係に
おいて、上記式および式を満たすように一対の偏光
板のずれ角βおよびγを選定することにより、コントラ
ストを最大にできる。
さて、上記式および式を満たすように偏光板のず
れ角βおよびγを設定すれば、マルチプレックス駆動時
の暗状態の漏れ光の量を最小に抑えることができるので
あるが、このときの漏れ光の最小値の大きさは、暗状態
(オン電圧印加時)における液晶層中の液晶分子の平均
ティルト角θONに依存して決まる。
例えばΔn・dが0.77μmのときの暗状態の漏れ光の
最小値と、平均ティルト角θONとの関係の計算結果を第
3図に示す。同図から理解できるように、オン電圧印加
時の平均ティルト角θONが45゜を超えると漏れ光の強度
は急激に小さくなり、平均ティルト角θONが60゜以上で
は漏れ光がほとんどなくなる。
しかし、平均ティルト角θONはプレティルト角θ
依存するため、このプレティルト角θが25゜未満の液
晶セルにおいては、概してオン電圧印加時に液晶分子が
十分に立上がらず、漏れ光量が大きくなってしまう。
そこで、オン電圧印加時に液晶分子が十分に立上がる
ための液晶セルの条件を検討した結果、駆動電圧に対し
て液晶配向状態が若干の双安定現象を示すこと、そし
て、さらに旋光性物質を添加した状態のネマチック液晶
自発ねじれピッチPsと、配向層によりねじれ構造が強制
的に規制されたときの液晶層の規制ねじれピッチPcとの
関係(Pc−Ps)/Psが小さくなるほど平均ティルト角θ
ONが高くなることが判った。
そして、下記式を満たすとき、暗状態の漏れ光を十
分に小さく抑えることができることを見出した。
式;(Pc−Ps)/Ps<0 なお、プレティルト角θが小さいほど、オン電圧印
加時の平均ティルト角θONが低くなるので、Pc−Ps)/P
sをより負に設定するとよい。
ここで「双安定現象」とは、第4図に示すように、駆
動電圧のしきい値電圧Vthにおいてオフ状態配向領域か
らオン状態配向領域へのディスクリネーションの移動を
伴う配向状態の遷移が観測される現象をいう。この双安
定現象が起こるときには、駆動電圧に対する透過光強度
がしきい値電圧Vthを境にして急激に変化する。
そして、駆動電圧に対して液晶配向状態が若干の双安
定現象を示すためには、ネマチック液晶層におけるねじ
れ構造のねじれ角αが220゜以上であることが必要であ
る。
しかし、このねじれ角αが過大になると、第5図に示
すように、双安定現象が大きくなって駆動電圧に対する
透過光強度の変化がヒステリシス現象を示し、その結果
マルチプレックス駆動において駆動電圧のオン・オフに
対する表示画面の暗・明の応答速度が遅くなる。従っ
て、当該応答速度を速くするためには、ねじれ角αは30
0゜以下であることが必要である。
さらに、暗状態の漏れ光を小さく抑えるために、次の
条件が満たされることが好ましい。
条件(e);ネマチック液晶におけるスプレイ弾性定数
k11またはツイスト弾性定数k22と、ベンド弾性定数k33
とが下記式またはの少なくとも一方を満足するこ
と。
式;k33/k22≧2.3 式;k33/k11≧1.5 すなわち、上記条件(e)を満たす液晶を用いること
により暗状態(オン電圧印加時)の平均ティルト角θON
をより高くするとができ、漏れ光を小さくすることがで
きる。
上記式のδの値は、配向層の種類の液晶の物性値と
によりその最適値が定まるが、同一の液晶に対しては、
プレティルト角θを大きくするに従ってδは小さくな
る。そして、このδが小さくなるに従って暗状態の漏れ
光が小さくなる。
また、このδの値は、液晶セルの双安定現象が大きく
なるに従って小さくなる。
δの最適値が大きい液晶セルでは暗状態の漏れ光が大
きく、δの最適値が40゜を超える液晶セルでは他のパラ
メータを最適値にして設定しても十分なコントラストを
得ることができない。
しかして、δの最適値は、配向層の種類の液晶との組
合せに依存するので、その組合せごとに最適なδを決定
する必要がある。
具体的には、次のようにして決定することができる。
すなわち、上記条件(a),(b),(d)を満たす
液晶セルに対して、一対の偏光板のずれ角の初期値を β=(360゜−α)/2 γ+(α−180゜)/2 に設定する。
次いで、βおよびγを上記初期値から下記式のように
して徐々に変化させながら、暗状態(オン電圧印加時の
光非透過状態)の漏れ光の強度を測定し、当該強度が最
小となるときのωの値ωを求める。
β=(360゜−α)/2−ω γ=(α−180゜)/2+ω 前記式から理解されるように、上記ωが、δ/2に
相当するので、これよりδの値を決定することができ
る。
このようにして、一旦、δの値が決定されると、この
δの値を用いて、上記式により、βおよびγの任意の
最適な組合せを見出すことができる。
ここで、オン電圧とは、1/Nデューティ比のマルチプ
レックス駆動におけるオン・オフ実効値電圧比 に対応するオン電圧VONで、かつ、表示画面の明から暗
へのスイッチング応答時間tONと、暗から明へのスイッ
チング応答時間tOFFとが等しくなるときのオン電圧をい
う。
下記第1表は、前記条件(a),(b),(d)を満
たす液晶セルにおいて、実験的に得られた、プレティル
ト角θとδとの関係を示すものである。
以上のように、上記式および式をともに満たすよ
うに偏光板のずれ角βおよびγを設定すれば最大コント
ラストの液晶表示装置が得られるが、上記式のみを満
たす範囲でずれ角βおよびγを設定し、β+γの値を90
゜から0゜または90゜から180゜の方向へ変位させる
と、明状態(光透過状態)における明るさが増し、色づ
きが減少する。
従って、コントラストおよび明状態(光透過状態)に
おける明るさの条件を、実用的な観点からともに満足さ
せたい場合には、上記式を満たす範囲で、β+γが90
゜から変位した値となるように当該ずれ角βおよびγの
値を選定すればよい。
なお、以上の条件(a)〜(d)を満たすときには、
明状態の明るさは、ねじれ角αが270゜−δの付近にあ
るときに最大となる。従って、そのようなねじれ角αを
選定した場合には、さらにコントラストを高くすること
ができる。
次に、本発明に係る液晶表示装置を実際に作製するに
際しての、その他の好ましい条件について説明する。
(1)液晶のネマチック液晶相から等方性液体への転移
温度TNIが90゜以上であることが好ましい。
すなわち、このような好ましい条件を選択することに
より、液晶表示装置の通常の使用温度範囲内において、
表示色、駆動電圧、応答速度等の温度変化に起因する変
動を小さく抑制することが可能となり、その結果信頼性
の高い液晶表示装置を得ることができる。
(2)ネマチック液晶の屈折率異方性の大きさΔnは、
0.10以上であることが好ましい。
すなわち、このような好ましい条件を選択することに
より、液晶セルを薄くすることが可能となり、その結果
オン・オフに要する時間がきわめて短くて一層優れた応
答特性を有するものとなる。
(3)ネマチック液晶の温度20℃における粘度ηは、30
cp以下であることが好ましい。
すなわち、このような好ましい条件を選択することに
より、液晶表示装置における立下がり時間を極めて短く
することができ、一層優れた応答特性を有するものとな
る。
(4)さらに、また、液晶分子のねじれ状態を安定に
し、異なるねじれ角を有する液晶分子の配列部分が生じ
ないようにするために、液晶層の厚さdと自発ねじれピ
ッチPSとの間に、以下の関係式が成立することが好まし
い。
(α/360)−0.25<d/Ps<(α/360)+0.30 このd/Psの値が過小のときには設定しようとするねじ
れ角αより180゜小さいねじれ角を有する配列部分が生
ずる場合があり、一方、このd/Psの値が過大のときには
設定しようとするねじれ角αより180゜大きいねじれ角
を有する配列部分が生ずる場合である。
(5)ネマチック液晶における誘導率異方性Δεおよび
液晶分子長軸方向に直角方向の誘電率εの比Δε/ε
が1.8以上であることが好ましい。
すなわち、このような好ましい範囲を選定することに
より、液晶表示装置においては低い駆動電圧により十分
にハイマルチプレックス駆動を行うことができ、安価で
消費電力の小さな液晶表示装置を得ることが可能とな
る。
このΔε/εの値が過小の場合には、駆動電圧が高
くなり、また印加電圧に対る透過光もしくは反射光の強
度変化が緩やかとなり、十分高いコントラストを得るこ
とが困難となる場合がある。
なお、本発明においては、屈折率異方性の大きさΔ
n、スプレイ弾性定数k11、ツイスト弾性定数k22、ベン
ド弾性定数k33、誘電率異方性Δε、誘電率ε、転移
温度TNI、粘度ηは、いずれも旋光性物質を添加する前
の状態におけるネマチック液晶の物性値をいう。なお、
旋光性物質の添加量は微量であるため、添加後のネマチ
ック液晶の物性値は、添加前の物性値とほとんど変わら
ない。
また、プレティルト角θは、例えば磁界容量零位法
(J.Appl.Phys.48,1783(1977))により測定できる。
そして、本発明において、ずれ角βとは、光の入射側
の偏光板のずれ角をいい、ずれ角γとは、透過型の液晶
表示装置に場合には光の出射側の偏光板のずれ角、反射
型の液晶表示装置の場合には光の反射側の偏光板のずれ
角をいう。
そして、偏光板のずれ角は、電極基板の表面に接する
液晶分子のダイレクタ方向(液晶分子の長軸が優先的に
配向している方向)の電極基板表面への射影方向を基準
として、当該電極基板側に配置された偏光板の偏光軸方
向(透過軸方向または吸収軸方向)のなす角度をいう。
なお、偏光板のずれ角βおよびγの値−90゜から+90
゜の間の値で読むことにする。すなわち、例えばずれ角
β=135゜はずれ角β−45゜に等しい。
ここで、電極基板の表面に接する液晶分子のダイレク
タ方向の電極基板表面への射影方向は、一般に電極基板
の配向層の配向処理方向に一致する。また、配向処理方
向とは、例えば配向処理がラビング法である場合にはラ
ビング方向をいう。
偏光板の偏光軸としては、透過軸、吸収軸のいずれを
とってもよい。すなわち、例えばずれ角βおよびγを、
共に透過軸で規定する場合、あるいは共に吸収軸で規定
する場合には、オフ電圧印加時に光透過状態となり、オ
ン電圧印加時に光非透過状態となる表示モード(ノーマ
リオープンモード)となり、この場合には特に高いコン
トラストが得られる。なお、本明細書中の説明はすべて
この表示モードに基づいて行っている。
また、例えばずれ角βおよびγの一方を透過軸で規定
し、他方を吸収軸で規定する場合には、オフ電圧印加時
に光非透過状態となり、オン電圧印加時に光透過状態と
なる表示モード(ノーマリオープンモード)となり、こ
の場合には特に着色のない優れた光透過状態を実現する
ことができる。
なお、ずれ角βおよびγの符号は、第6図に示すよう
に、液晶分子のねじれ方向が入射光の進行方向に左回り
の場合には、電極基板の表面に接する液晶分子のダイレ
クタ方向から偏光軸方向に向かって時計回り方向を正に
とり、一方、第7図に示すように、液晶分子のねじれ方
向が入射光の進行方向に右回りの場合には、上記とは反
対に反時計回り方向を正にとる。
ねじれ角αは、一般に、一対の電極基板のそれぞれに
形成される配向層の配向方向、ネマティック液晶および
これに添加される旋光性物質の種類、量等によって規定
することができる。
また、自発ねじれピッチPsとは、ネマティック液晶に
旋光性物質等を添加することにより生ずる液晶層の自然
のねじれ構造におけるピッチをいう。具体的には、第8
図に示すように、配向層51および52を有する電極基板11
および12を、配向層51および52が対向するようくさび状
に配置して液晶セル31を構成し、この液晶セル31内にネ
マチック液晶32を封入し、このとき液晶セル31面に生ず
るしま模様(1/2ピッチごとのディスクリネーションラ
イン)の間隔rと液晶層の厚さd1と液晶セル31の長さl
とを測定することにより、下記式によって求めることが
できる。
自発ねじれピッチPs=2d1r/l なお、61はスペーサ、41および42は偏光板であり、ま
た、配向層51および52はそれぞれ互いに平行方向の配向
処理がなされている。
また、規制ねじれピッチPcは、液晶表示装置の液晶層
の厚さdと、ねじれ角αとにより、下記式によって定義
される。
規制ねじれピッチPc=(360゜/α)×d また、k33/k22およびk33/k11は、一様に配向した液晶
セルに磁界を印加したときの当該液晶セルの電気容量変
化、または光学変化のしきい値から求める方法(H.Grul
er,et al,Z.Naturforsch,279(1972)966)、一様に配
向した液晶セルに電界を印加したときの当該液晶セルの
電気容量変化から求める方法(H.Deuling,Mol.Cryst.Li
q.Cryst.19(1972)123)等の方法により測定すること
ができる。
配向層を有する電極基板を得るための手段としては、
特に限定されず従来公知の種々の手段を採用することが
できる。本発明においては、特に量産性に優れたラビン
グ法を有効に用いることができ、より高いプレティルト
角を得るために特に以下の手段が好ましい。
(1)例えば無極性長鎖ポリマー主鎖または側鎖に有す
るイミド系、アミド系、ポリビニルアルコール系、フェ
ノキシ系等の高分子物質の被膜を電極基板の表面に形成
し、この被膜の表面を綿、ビニロン、テトロン、ナイロ
ン、レーヨン、炭素繊維等よりなる織布、植毛布、綿状
布等によって擦るラビング法により配向処理する手段。
(2)例えばイミド系、アミド系、ポリビニルアルコー
ル系等の水平配向処理剤に、カルボン酸クロム錯体、有
機シラン化合物等の垂直配向処理剤を適量混合した配向
処理剤の被膜を電極基板の表面に形成し、この被膜の表
面をラビング法により配向処理する手段。
(3)電極基板の表面をLB(Langmuir−Blodgett)膜を
形成することにより配向処理する手段。
(4)ホトリソグラフィー、あるいは異方性エッチング
等の手段により電極基板の表面にグレーティング状の一
定方向の溝を形成し、液晶分子を配向させる手段。
ネマチック液晶としては、特に限定されず種々の物質
を用いることができる。代表的なものを以下に示すが、
これらに限定されない。また、これらの物質は混合して
用いてもよい。
(1)下記構造式で示されるシクロヘキシルカルボン酸
エステル系化合物 (ただし、Xは、R(炭素数が1〜18のアルキル基、以
下においても同様)、OR、CN、 を表す。) (2)下記構造式で示されるビフェニル系化合物 (ただし、Xは、R、OR、 を表す。) (3)下記構造式で示されるフェニルシクロヘキサン系
化合物 (ただし、Xは、R、OR、CN、 を表す。) (4)下記構造式で示されるピリミジン系化合物 (ただし、Xは、R、CN、 を表し、 Yは、R、OR、CNを表す。) (5)下記構造式で示されるアゾ系−アゾキシ系化合物 (ただし、Xは、−N=N−、 を表す。) (6)下記構造式で示される安息香酸エステル系化合物 (ただし、Xは、R、RO、 を表し、 YはR、OR、CN、 を表す。) (7)下記構造式で示されるトラン系化合物 (ただし、XおよびYはそれぞれ、F、R、OR、 を表す。) (8)下記構造式で示されるエタン系化合物 (ただし、XおよびYはそれぞれ、R、OR、 を表し、 Zは、H、F、Cl、BrまたはRを表す。) なお、本発明に用いるネマチック液晶には、必要に応
じてスメクティック液晶、コレステリック液晶等が含有
されてもよい。
ネマチック液晶に添加される旋光性物質としては、一
般にはカイラルネマティック液晶と呼ばれる、例えば下
記一般式で示される光学活性基を末端基として有するエ
ステル系、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系ま
たはアゾ系等のネマティック液晶を用いることができ
る。
(ただし、R1,R2,R3は各々アルキル基または水素原子で
あり、R1,R2,R3は互いに異なる。) 具体的には、例えば以下に示す構造式で示される化合
物を用いることができる。
また、ネマチック液晶に添加される旋光性物質とし
て、カイラルスメクティック液晶、コレステリック液晶
等を用いてもよい。
本発明に用いるネマチック液晶中に含有される旋光性
物質としては、ネマチック液晶への単位添加量当りの自
発ねじれピッチを十分に短かくすることができるもので
あることが好ましく、そのようなものを選択することに
より、ネマチック液晶への旋光性物質の必要添加量を小
さく抑制、好ましくは1.5重量%以下に抑制することが
でき、その結果旋光性物質の添加に起因して生ずるネマ
チック液晶から等方性液体への転移温度TNIの低下を最
小限にとどめることができ、また自発ねじれピッチの温
度依存性を小さくすることができる。また、本発明にお
いては、自発ねじれピッチの温度依存性をより小さくす
るために、自発ねじれピッチの温度変化係数が互いに逆
符号である複数種の旋光性物質を組合せて用いてもよ
い。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
第9図は、本発明に係る液晶表示装置の概略図であ
る。
上部の電極基板11と下部の電極基板12とが間隙を介し
て対向配置され、上部の電極基板11は支持板11Aの内側
の表面に電極層11Bおよび配向層11Cを設けて構成され、
下部の電極基板12は支持板12Aの内側の表面に電極層12B
および配向層12Cを設けて構成されてる。
上部の電極基板11と下部の電極基板12との間の空間は
シール部71によってシールされ、液晶セル30が構成され
ている。液晶セル30の内部には、複数のスペーサ72がそ
れぞれ離間した状態で配置されると共に、旋光性物質を
添加したネマチック液晶がねじれ構造を形成して配置さ
れ、これにより液晶層20が形成されている。
上部の電極基板11および下部の電極基板12の外側の表
面には、それぞれ前方の偏光板41および後方の偏光板42
が設けられている。
電極基板11および12はいずれも透光性を有する。すな
わち、この例は透過タイプの液晶表示装置である。な
お、反射タイプの液晶表示装置においては、後方の偏光
板42の外側の表面に反射板を設ければよい。
支持板11Aおよび12Aを構成する材料としては、ソーダ
ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等のガラス;1軸
延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフ
ォン、ポリビニルアルコール等よりなるプラスチックシ
ート;アルミニウム、ステンレススチール等よりなる金
属シート;等を用いることができる。
電極層11Bおよび12Bは、支持板11Aおよび12Aの表面に
配置された例えばITO(スズとインジウムの酸化物)よ
りなる透明電極により構成されている。一方の電極層11
Bを構成する透明電極と他方の電極層12Bを構成する透明
電極はそれぞれが相互に直角をなすよう配置され、これ
によって、マトリックス形表示の電極構造が構成されて
いる。
なお、上部の電極基板11および下部の電極基板12に
は、必要に応じてさらに絶縁層、誘電体層、アルカリイ
オン移動防止層、反射防止層、偏光層、反射層等を設け
てもよい。
<実施例および比較例> 各実施例および比較例においては、後記第2表〜第6
表に示した条件で、第9図に示した構成の液晶表示装置
を作製した。
なお、前方の偏光板41および後方の偏光板42は「NPF
−G1220DU」(日東電工(株)製)により構成した。ま
た、スペーサ72はグラスファイバーにより構成し、シー
ル部71は「ストラクトボンドXN−5A−C」(三井東圧化
学(株)製)により構成した。
(評価) 各液晶表示装置について、1/100デューティ比のマル
チプレックス駆動により実際に表示する試験を行い、コ
ントラスト、無彩色性を調べた。
なお、無色彩性の評価は、表示画面を目視により観察
して、色づきがほとんど認められず明瞭な表示である場
合を「○」、色づきが若干生じたが実用的には問題ない
場合を「△」、色づきが顕著で実用的には不良である場
合を「×」とした。
以上の結果を後記第2表〜第6表に併せて示す。
〔発明の効果〕 以上説明したように、本発明によれば、プレティルト
角が25゜未満の液晶表示装置であって、条件(a)〜
(d)を満たすので、構造が簡単で製造コストの低減化
を図りながら、高デューティ比のマルチプレックス駆動
において、コントラストが高く、しかも着色の少ない良
好な表示を達成できる。
そして、プレティルト角θが25゜未満であるので、
例えばラビング法により配向層を形成することができ、
装置の製造が容易となる。
また、ずれ角βがさらに式を満たす場合には、コン
トラストをさらに高くできる。
【図面の簡単な説明】
第1図は従来の液晶表示装置における透過スペクトルを
示す図、第2図はオン電圧印加時の平均ティルト角θON
とδとの関係を示す説明図、第3図はオン電圧印加時の
平均ティルト角θONと漏れ光強度との関係を示す説明
図、第4図は双安定現象を示す説明図、第5図は双安定
現象のヒステリシス現象を示す説明図、第6図および第
7図はねじれ角αとずれ角βおよびγとの関係を示す説
明図、第8図は自発ねじれピッチPsを特定するための説
明図、第9図は本発明に係る液晶表示装置の概略を示す
説明用断面図である。 11,12……電極基板、11A,12A……支持板 11B,12B……電極層、11C,12C……配向層 20……液晶層、30,31……液晶セル 32……ネマチック液晶、41,42……偏光板 51,52……配向層、61,72……スペーサ 71……シール部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−217221(JP,A) 特開 昭62−215232(JP,A) 電子情報通信学会技術研究報告 87 [363]P.1−6

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】対向して配置された各々配向層を有する一
    対の電極基板間に、旋光性物質を添加したネマチック液
    晶がねじれ構造を形成して配置された液晶層を備えた液
    晶セルと、当該液晶セルの両側に配置された一対の偏光
    板とを有してなり、電極基板面に接する液晶分子のダイ
    レクタ方向と当該電極基板面とのなす角度(プレティル
    ト角)θが25゜未満である液晶表示装置において、 以下の条件(a)〜(d)を満たすことを特徴とするカ
    ラーフィルターと組み合わせられるカラー表示用液晶表
    示装置。 条件(a);液晶層におけるねじれ構造のねじれ角αが
    220〜300゜であること。 条件(b);ネマチック液晶の屈折率異方性の大きさΔ
    nと、液晶層の厚さd(μm)との積Δn・dが0.60〜
    0.85μmであること。 条件(c);ねじれ角αとの関係において、一対の偏光
    板の偏光軸と、当該偏光板のそれぞれに隣接する電極基
    板の配向処理方向とのなす角度(ずれ角)βおよびγが
    下記式及び式を満足すること。 式;α+β−γ−180゜=90゜−δ (0゜<δ<40゜) 式;β=(360゜−α)/2−δ/2 条件(d);旋光性物質を添加した状態のネマチック液
    晶の自発ねじれピッチPsと、配向層によりねじれ構造が
    強制的に規制されたときの液晶層の規制ねじれピッチPc
    が下記式を満足すること。 式;(Pc−Ps)/Ps<0
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