JP3586743B2 - ヘマトクリット値を補正した測定方法 - Google Patents
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Description
【発明に属する技術分野】
本発明は、血液中の特定成分を測定するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで液体試料、例えば血液、尿、唾液、汗、髄液中の特定成分を迅速かつ簡易に測定するための手段として、多くの測定用具が開発されてきており、公知である。
特に、乾式の測定用具は、試薬の調製を必要とせず、測定対象試料を用具に滴下することなどの簡単な操作のみにより、液体試料中の特定成分を測定することを可能にしている。
【0003】
臨床検査の分野において、液体試料中の特定成分が、例えば、グルコース、乳酸、尿酸、コレステロールなどのような場合には、基質特異性の高い酵素反応を用いた測定法が従来より用いられている。
【0004】
これまでの乾式の測定用具としては、例えば、酸化酵素及び過酸化酵素を用いた検出系をポリマー中に分散させ、プラスチック部材に塗布した耐水性試験フィルムが特公昭49−33800号に記載されている。このフィルムは、試料を試薬層と一定時間接触させた後に脱脂綿等で拭き取り除去することにより、生成した呈色色素の測定をフィルムの試料供給側から行うことを可能とした。
【0005】
特公昭53−21677号には、液体不浸透性支持体上に、試薬層及び展開層を設けた多層試験フィルムが開示されている。このフィルムの展開層に試料を点着すると、試料は展開層で広がった後、試薬層に移行する。試薬層において生成した呈色色素を液体不浸透性支持体側より測定する。
【0006】
特開昭60−82859号には、展開層と試薬層との間に酸素透過性蛋白質不透過性光遮蔽層を有する一体型多層分析用具が開示されている。
【0007】
本出願人による特開昭60−205364号に開示されている測定用具は、試薬層と支持体の間に多孔質疎水性の酸素供給層を設けている。
【0008】
また、本出願人により、多孔性フィルムを試薬層の支持体に用いた測定用具が特開平2−150751号において開示されている。この測定用具は多孔性フィルム上に試薬層を設置している。
【0009】
また、本出願人により、支持体とカバーが毛細管現象を誘導する程度の間隔で設置されて毛細管を形成している測定用具が特開平4−188065号において開示されている。
【0010】
しかし、これまでの方法は全て、液体試料が血液の場合、その血液のヘマトクリット値、つまり赤血球の量の影響をかなり受けることがわかった。
これまでの乾式の測定用具は、試薬層表面の部分で赤血球と赤血球以外の液体成分(血清又は血漿)とを分けるというふるい的な役割を果たしている。
従って、赤血球が存在すれば、液体成分の浸透性を阻害する要因となる。
そして、結果として、液体成分の浸透性が阻害されれば、反応が遅延し、低い測定値が得られたりする。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、測定用具を用いて測定する際に、上記の様な従来技術の問題点を解決し、迅速かつ簡便に精度良く、血液中の特定成分を測定するための方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、血液中の特定成分を測定するための測定用具である、毛細管室5と、毛細管室5内に特定成分と反応することにより光学的変化を示す試薬層3とを有する測定用具を用いた血液中の特定成分を測定する方法であって、血液を毛細管室5に供給し、試薬層3におけるA点で試薬層3の光学的変化を測定し、毛細管室5のA点以外のB点において光学的変化を測定することにより血液のヘマトクリット値を求め、試薬層3のA点にて光学的変化により測定される特定成分の測定値を、B点にて測定されるヘマトクリット値により補正することを特徴とする測定方法である。なお、説明中の数字は、図1の数字と一致している。
【0013】
本発明は、特開平4−188065号の改良でもあり、特開平4−188065号に記載の用具が応用できる測定方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明における測定用具としては、
光透過性支持体、
光透過性支持体上に固着して、特定成分と反応することにより光学的変化を示す試薬層、
少なくとも試薬層を覆い、試薬層を固着した光透過性支持体との間に毛細管室を形成するように光透過性支持体に固定されたカバーからなる測定用具などがあげられる。
【0015】
上記のカバーは、試料供給口及び空気抜き口を有することが好ましく、この場合、血液を毛細管室に供給する方法としては、血液をカバーの試料供給口から滴下するなどして、毛細管室に供給する。
試料供給口及び空気抜き口は、カバーに開けられた穴であってもよいが、カバーの一部を切り裂いて設けた隙間でも、カバーと光透過性支持体との間に設けた隙間でもよい。
また、カバーの形状は、光透過性支持体に固定されて毛細管室、試料供給口及び空気抜き口を有するようなものであれば、成形品でも構わないし、フィルムの両側にガイドを配置することによって毛細管室を形成するようにしても構わない。
【0016】
光透過性支持体は、種々のものを用いることができるが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、酢酸セルロースフィルムが好ましい。
支持体が光透過性であることで、毛細管室の光学的変化を測定することが可能となる。
また、血液が試料供給口から供給された事を、確認することが可能となる。そして、血液の供給から測定までの時間を一定にして自動的に測定することが可能となる。
【0017】
また、光透過性支持体が直径1〜10mmの貫通孔を有し、試薬層を固着した光透過性フィルムが、該貫通孔を覆っているのが好ましい。
これは、例えば、血液の特定成分がグルコース、尿酸、コレステロールの場合、かつ酸化酵素を用いる場合である。
光透過性フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルムなど種々のものを用いることができるが、多孔性フィルムであることが好ましい。
なぜなら、この様な多孔性フィルムは空気透過性であり、酸化反応に必要な酸素を空気中から試薬層へ容易に充分量供給することができるからである。
【0018】
一方、例えば、血液の特定成分がグルコース、尿酸、コレステロールの場合であっても、酸化酵素を用いない場合、例えば脱水素酵素を用いる場合は、光透過性支持体が直径1〜10mmの貫通孔を有し、試薬層を固着した光透過性フィルムが、該貫通孔を覆っている必要はない。
【0019】
上記の多孔性フィルムには、種々のものがあり、例えば、ニュークリポア(ニュークリポア製)、セルガード(ヘキストセラニーズ製)、サイクロポア(ワットマン製)、オムニポア(ミリポア製)、ゴアテックス(ゴアテックス製)、フィルタライト(メムテック製)などの商品名で市販されている。
【0020】
毛細管室における光学的変化を測定する位置における隙間高さは、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜50μmである。従って、毛細管室全ての隙間高さが、一様に5〜200μmである必要はなく、図1のように毛細管室の一部がこのような隙間高さであればよい。
この点で、本発明の測定用具は、特開平4−188065号記載の用具とは異なる。
この毛細管の一部における光学的変化を測定することで、ヘマトクリット値を求め、試薬層における光学的変化又はこれより求まる測定値を補正することができる。
【0021】
毛細管室における光学的変化は、光透過性支持体側からの透過率でよく、この場合は、カバーが光透過性であることが必要である。
また、光透過性支持体側からの反射率でもよく、この場合は、カバーが光反射性であることが必要である。
【0022】
光学系の配置としては、例えば、光透過性支持体側に光源を配置し、45°反射の位置に検出器を配置したり、光透過性支持体側に光源を配置し、カバー側に検出器を配置したりすることができる。
【0023】
毛細管室における光学的変化を測定する位置は、どこでも構わない。
この部分では、図1の(B)点のように、毛細管室におけるカバーが厚くなって光学的変化を測定しやすい毛細管室になっている。
【0024】
毛細管室における光学的変化を測定し、これにより血液のヘマトクリット値を求めると同時に、血液が供給されたことをも毛細管室における光学的変化によって、検知することもできる。検知によって、オートスタート機能として時間的にスタートをかけることができ、試薬層における光学的変化を一定時間後、例えば1分後に正確に測定することができる。
この場合、毛細管室における光学的変化を測定する位置は、試薬層に距離的に近いことが好ましい。なぜなら、試薬層における反応のスタートと血液が供給されたことの検知は、同時であるべきだからである。
しかも、毛細管室における光学的変化を測定する位置は、図1の(B)点のように、血液の流れ方向において、試薬層の後部、つまり試薬層と空気抜き口の間にあるのが好ましい。なぜなら、毛細管室においては、偶然に血液の移送が停滞しても、もしも、図1の(B)点のように、該位置が血液の流れ方向において、試薬層の後部つまり試薬層と空気抜き口の間にあれば、試薬層に血液が移送されるまでスタートがかからないだけで済む。しかし、もしも該位置が血液の流れ方向において、試薬層の前部つまり試料供給口と試薬層の間にあれば、試料が供給されたとしてスタートされたものの、試薬層にまで血液が移送されずに、結果として低い測定値しか得られない場合が生ずる。
【0025】
試薬層は、特定成分を分析可能な酵素及び色素前駆体を含有する。
例えば、特定成分がグルコースの場合、グルコースオキシダーゼ、、ペルオキシダーゼおよび4−アミノアンチピリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリンなど種々の色素前駆体を含有する。
【0026】
また、試薬層は、光を遮蔽する不溶性粒子を含有することが可能で、これにより、例えば、血液の様な着色成分含有試料の分析においても、多孔性フィルム側から測定することにより、ヘモグロビンといった着色成分を隠蔽し、正確な分析結果を得ることが可能となる。
【0027】
不溶性粒子としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリュウム及び酸化マグネシウムなどの光反射性の白色粒子が好適であるが、液体試料に溶解せず光を遮蔽する物質であればどのようなものでも良い。
例えば、フルオロカーボン、ポリスチレンラテックス粒子、炭酸カルシウム、タルク、アルミニウム粉末、デキストラン、アクリル系ポリマー粒子、ポリスチレン系ラテックス粒子などがあげられる。
【0028】
試薬液の光透過性フィルムへの塗布性能を高めるために、試薬液に親水性高分子を添加してもよい。
親水性高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、修飾ゼラチン、寒天等があげられる。
更に、試薬層の形状を維持したり、浸透性を向上するために、これら親水性高分子に乳化エマルジョン系接着剤やラテックス粒子を添加することもある。例えば、ポリプロピオン酸ビニル共重合体が、プロピオファン(BASF製)の商品名で市販されている。
【0029】
また、試薬液に界面活性剤、可塑剤、安定化剤などを加えることによっても塗布性能及び反応性を向上させることができる。
【0030】
本発明における試薬層を、酵素や色素前駆体等を含む反応層と二酸化チタンのような不溶性粒子を含む分離層の2層に分けることも可能である。
【0031】
以下に実施例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0032】
【実施例1】
血中グルコースの定量
光透過性フィルムとしてのポリプロピレン製多孔性フィルムである、厚み25μmのセルガード(ヘキストセラニーズ製フィルムの商標)に下記の組成の試薬液を、濡れ厚さ100μmで塗布し、40℃で30分間乾燥した。
(試薬液組成)
グルコースオキシダーゼ(東洋紡製) 5ku
ペルオキシダーゼ(東洋紡製) 10ku
4−アミノアンチピリン(キシダ化学製) 50mg
N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)
−3,5−ジメチルアニリン(同仁化学製) 100mg
プロピオファン5D(BASF製) 10g
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0) 2ml
50wt%二酸化チタン水溶液 1g
得られた多孔性フィルムに固着した試薬層を多孔性フィルムごと7mm×7mmに裁断し、4mmの貫通孔を有する10mm×30mmに裁断した支持体としての光透過性ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み188μm)と、熱可塑性樹脂を用いて熱圧着する。ただし、多孔性フィルムと支持体が接着するようにし、かつ、多孔性フィルムが4mmの貫通孔を覆うようにした。
試薬層を上にして、図1に示すような形状に成形された、10mm×30mm×厚み2mmの白色のカバーを支持体を覆うように固定し、熱圧着した。
この時、毛細管室の隙間高さを50μmとした。
これにより、測定用具を得た。
【0033】
これを、図1を用いて説明する。
図1は、貫通孔を有する光透過性支持体1上に貫通孔を覆うように固定した光透過性フィルム2、光透過性フィルム2に固着した試薬層3、試薬層3を覆いながら、光透過性支持体1との間に、毛細管室5を形成するように、光透過性支持体1に固定されたカバー4から成り、カバーは試料供給口6と空気抜き口7を有する、本発明で使用される測定用具の断面図である。
試薬層の反射率測定は(A)点で行い、ヘマトクリット値を求めるための反射率測定及び血液が供給されたことを検知するための反射率測定は、(B)点で行う。
実施例の場合、(B)点における隙間高さは、50μmである。
なお、図1は、わかりやすくするために、上下方向を拡大してある。
【0034】
実施例1で作製した測定用具に、同一のグルコース濃度で、種々のヘマトクリット値の異なる血液試料を20μlずつ滴下し、1分後に支持体の貫通孔を通して、下方から、色差計(日本電色工業製、Σ−90)を用いて、測定波長λ=640nmにおける試薬層の反射率を、(A)点にて測定した。
この反射率から、
クベルカームンク(Kubelka−Munk)の式の簡略型:
K/S=(1−R)2/2R
K:定数
S:散乱係数
R:反射率/100
に従って、K/S値を求めた。
K/S値は、モル濃度に相関するので、検量線を作成して、濃度換算することができる。得られた結果を、測定値とした。
同時に、測定波長λ=600nmにおける毛細管室の反射率を(B)点にて測定した。
この測定結果から、予め作成した表1より、血液試料のヘマトクリット値による補正係数を決定し、測定値×補正係数を求めた。
なお、ヘマトクリット値を、毛細管高速遠沈法にて確認した。
【0035】
また、専用の測定器を用いれば、測定波長λ=600nmにおける毛細管室の反射率を(B)点にて測定し、この測定結果から、予め作成した表1より、血液試料のヘマトクリット値による補正係数を決定すると同時に、反応時間のスタートとし、オートスタート機能として、正確に1分後に、自動的に支持体の貫通孔を通して、測定波長λ=640nmにおける試薬層の反射率を、(A)点にて測定できる。
【0036】
【表1】
【0037】
これらの結果を、表2及び表3にまとめた。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
実施例に示した測定値×補正係数と、単なる測定値とを比較すると、前者はヘマトクリット値による影響が小さくなった。
【0041】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明の測定方法を用いると、血液中の特定成分を迅速かつ簡便に測定することができ、かつ、ヘマトクリット値の影響が軽減され、臨床検査等において絶大な効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する測定用具の一例の断面図である。
【符号の説明】
1 光透過性支持体
2 光透過性フィルム
3 試薬層
4 カバー
5 毛細管室
6 試料供給口
7 空気抜き口
A 試薬層の光学的変化を測定する位置
B ヘマトクリット値を求めるために、毛細管室の光学的変化を測定する位置
Claims (8)
- 血液中の特定成分を測定するための測定用具である、毛細管室5と、毛細管室5内に特定成分と反応することにより光学的変化を示す試薬層3とを有する測定用具を用いた血液中の特定成分を測定する方法であって、血液を毛細管室5に供給し、試薬層3におけるA点で試薬層3の光学的変化を測定し、毛細管室5のA点以外のB点において光学的変化を測定することにより血液のヘマトクリット値を求め、試薬層3のA点にて光学的変化により測定される特定成分の測定値を、B点にて測定されるヘマトクリット値により補正することを特徴とする測定方法。
- 測定用具が、光透過性支持体1、光透過性支持体1上に固着して、特定成分と反応することにより光学的変化を示す試薬層3、少なくとも試薬層3を覆い、試薬層3を固着した光透過性支持体1との間に毛細管室5を形成するように光透過性支持体1に固定されたカバー4からなることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
- 血液を毛細管室5に供給する方法が、血液をカバー4の試料供給口6から毛細管室5に供給することであることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
- 毛細管室5における光学的変化を測定する位置において、隙間高さが5〜200μmであることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
- 毛細管室5における光学的変化を測定する位置において、隙間高さが10〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
- 毛細管室5における光学的変化が光透過性支持体側からの透過率であり、そのためカバーが光透過性であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の測定方法。
- 毛細管室5における光学的変化が光透過性支持体側からの反射率であり、そのためカバーが光反射性であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の測定方法。
- 毛細管室5における光学的変化を測定し、これにより血液のヘマトクリット値を求めると同時に、血液が供給されたことをも毛細管室5における光学的変化によって検知することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の測定方法。
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