JP3586710B2 - ラクトンイミン化合物及びそれらの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なラクトンイミン化合物およびそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ウルチタン化合物として、その骨格内に2個の酸素原子と1個の窒素原子を有する、ウルチタン誘導体は知られている(H. Izumi 他, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1925 (1998))。
本発明者らは、先に、このウルチタン骨格とペプチドあるいはアミノ酸を組み合わせることにより、ウルチタン誘導体に擬タンパク質としての構造を持たせた新規なウルチタン誘導体を提案した(和泉他、特願2000-135364)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記発明にかかるウルチタン誘導体の構造に更なる改良を施し、他の官能基が導入可能な構造とすることにより、センサーなどのホストゲスト化合物の形成、分子認識機能を利用した神経伝達関連などの薬剤、更には界面活性剤、保護基等の応用面での展開が充分に期待される、新規なラクトンイミン化合物及びそれらの有利な製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、第一に、下記一般式( I )で示されるラクトンイミン化合物が提供される。
【化3】
式中、 R はアルキル基、 R はアミノ酸側鎖、 R は水酸基あるいはペプチド鎖を示す。
第二に、下記一般式(II)で示される3,5-ジオキサ-12-アザウルチタン化合物のヒドリド転位異性化反応を利用することを特徴とする上記(1)に記載のラクトンイミン化合物の製造方法が提供される。
【化4】
式中、 R はアルキル基、 R はアミノ酸側鎖、 R は水酸基あるいはペプチド鎖を示す。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、例えば前記一般式( II で表されるような3,5-ジオキサ-12-アザウルチタン化合物に他の官能基が導入可能な構造を持たせるための研究を鋭意進めた結果、水性溶媒を含有した親水性極性有機溶媒3,5-ジオキサ-12-アザウルチタン化合物例えば前記一般式( II で示される化合物を溶解させると、意外にも収率よく反応が進行し、所望のラクトンイミン化合物( I が得られることを知見し、本発明を為すに至った。
即ち、本発明に係る新規な前記一般式( I で表されるラクトンイミン化合物は、他の官能基の導入可能な、ラクトン部位及びイミン基を有する基本骨格からなり、更にその基本骨格を形成するイミン基の窒素原子にアミノ酸側鎖或いはペプチド鎖が導入されたものである。
従って、本発明に係る前記ラクトンイミン化合物は、ラクトン部位やイミン基を介して糖鎖及びペプチド鎖のような官能基の導入が容易な構造を有することから、高い反応活性を示し、また、擬たんぱく質としての特異な構造を有することから、センサーなどのホストゲスト化合物の形成、分子認識機能を利用した神経伝達関連などの薬剤、更には界面活性剤、保護基等の応用面での展開が充分に期待されるものである。
【0006】
前記一般式( I )において、 R はアルキル基、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基を示すが、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル基などのアルキル基が例示される。 R は後記するようなアミノ酸側鎖、 R は水酸基あるいはペプチド鎖を示す。
【0007】
本発明に係る前記一般式 I で表されるラクトンイミン化合物の代表例を以下に示す。
【表1】
【0008】
本発明の一般式( I で表されるラクトンイミン化合物は、水性溶媒を含有した親水性極性有機溶媒もしくは水性溶媒に3,5-ジオキサ-12-アザウルチタン化合物 II を溶解させることにより合成される。この反応態様によれば下記反応式に従い、一段階でペプチド鎖あるいはアミノ酸側鎖を有するラクトンイミン化合物 I を得ることが出来る。
【化5】
(式中、R、R及びRは前記と同じ。)
【0009】
本発明の原料である3,5-ジオキサ-12-アザウルチタン化合物 II は既知の方法、例えば和泉他、特願2000−1353654(特開2001−316392号公報)に記載される方法に従って製造すればよい。ここで、アミノ酸側鎖としては、従来公知のものが何れも使用でき、次のようなアミノ酸の側鎖が例示される。
グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ileu)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Try)、セリン(Ser)、トレオニン(Thre)、システイン(CySH)、シスチン(CyS-SCy)、メチオニン(Meth)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)等。
また、ペプチドとしては、これらのアミノ酸が任意にアミド結合した、その結合数が2〜10程度のオリゴペプチド、10〜100程度のポリペプチドの何れもが使用できる。
このようなペプチドとしては、例えば次のようなものが例示される。
(Gly)n、(Ala)n、(Val)n、(Leu)n、(Ileu)n、(Phe)n、(Tyr)n、(Try)n、(Ser)n、(Thre)n、(CySH)n、(CyS-SCy)n、(Meth)n、(Asp)n、(Glu)n、(Lys)n、(Arg)n、(His)nおよびこれらペプチドの任意の組み合わせ等。ここでnは整数を示す。
【0010】
本反応に用いられる有機溶媒としては、水に混和する親水性極性有機溶媒であれば特に制限はないが、アセトニトリル、アセトン等のアプロティック溶媒が好ましく使用される。
また、水性溶媒としては、例えば水、緩衝溶液及びその成分溶液等が挙げられるが、好ましくは水が使用される。
反応温度は、特に制限はないが、0〜70 ℃程度の範囲で行うことが望ましく、また反応圧力は常圧で十分である。
【0011】
本発明の目的生成物であるラクトンイミン化合物( I は、上記反応式に従い反応を行い、反応終了後に凍結乾燥等により溶媒を留去し、粗生成物を得、ついでこれを再結晶等の精製手段を講じることにより高収率で得ることが出来る。
【0012】
【実施例】
次に本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
【0013】
実施例1
アセトニトリルと水の混合溶媒に3,5-ジオキサ-12-アザウルチタン化合物 II 128 mgを溶解させ、室温で5日間攪拌した。反応後、常法に従い溶媒留去して得られた粗生成物を再結晶により精製し、109 mg(85 %)のラクトンイミン化合物 I )( R はメチル基、 R Gly 側鎖、 R は水酸基のナトリウム塩)を得た。このものの分光学的データを以下に示す。
H NMR(acetonitrile-d3/DO):δ 0.97(s, 3H, メチルH)、0.98(s, 3H, メチルH)、1.05(d, 1H, J = 14.1 Hz, メチレンH)、1.23(d, 1H, J = 13.7 Hz, メチレンH)、1.26(s, 3H, メチルH)、1.30(d, 1H, J = 12.8 Hz, メチレンH)、1.55(d, 1H, J = 12.8 Hz, メチレンH)、2.34(d, 1H, J = 14.1 Hz, メチレンH)、2.51(d, 1H, J = 13.7 Hz, メチレンH)、3.47(d, 1H, J = 15.9 Hz, メチレンH)、3.57(d, 1H, J = 15.9 Hz, メチレンH)、4.02(d, 1H, J = 16.2 Hz, メチレンH)、4.35(d, 1H, J = 16.2 Hz, メチレンH)、8.15(s, 1H, イミンH)
MS(ESI): m/z 266(M-Na)
【0014】
実施例2
アセトニトリルと水の混合溶媒に3,5-ジオキサ-12-アザウルチタン化合物 II 50 mgを溶解させ、室温で5日間攪拌した。反応後、常法に従い溶媒留去して得られた粗生成物を再結晶により精製し、35 mg(70 %)のラクトンイミン化合物 I )( R はメチル基、 R Gly 側鎖、 R はラクトンイミンで置換された His-Lys 残基のナトリウム塩)を得た。このものの分光学的データを以下に示す。
H NMR(acetonitrile-d3/DO):δ 8.18(s, 1H, イミンH)、8.20(s, 1H, イミンH)
MS(ESI): m/z 723(M-Na)
【0015】
【発明の効果】
本発明に係る新規な前記一般式 I で表されるラクトンイミン化合物は、他の官能基を導入し易い、ラクトン部位及びイミン基を有する基本骨格からなり、更にその基本骨格を形成するイミン基の窒素原子にアミノ酸側鎖或いはペプチド鎖が導入されたものである。
従って、本発明に係る前記ラクトンイミン化合物は、ラクトン部位やイミン基を介して糖鎖及びペプチド鎖のような官能基の導入が容易な構造を有することから、高い反応活性を示し、また、擬たんぱく質としての特異な構造を有することから、センサーなどのホストゲスト化合物の形成、分子認識機能を利用した神経伝達関連などの薬剤、更には界面活性剤、保護基等の応用面での展開が充分に期待されるものである。

Claims (2)

  1. 下記一般式( I )で示されるラクトンイミン化合物。
    式中、 R はアルキル基、 R はアミノ酸側鎖、 R は水酸基あるいはペプチド鎖を示す。
  2. 下記一般式( II )で示される 3,5- ジオキサ -12- アザウルチタン化合物のヒドリド転位異性化反応を利用することを特徴とする請求項1に記載のラクトンイミン化合物の製造方法。
    (式中、Rはアルキル基、Rはアミノ酸側鎖、Rは水酸基あるいはペプチド鎖を示す。)
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