JP4196423B2 - アルキルグリオキサール付加体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なアルキルグリオキサール付加体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
これまでメチルグリオキサール(MGと略す。)と蛋白質、ペプチドあるいはアミノ酸との反応は、既に知られている。特に、アミノ酸のアルギニン(Arg)、リジン(Lys)あるいはシステイン(Cys)とMGの反応がかなり詳細に論じられている(J.Biol.Chem.,vol.269,p32299−323305(1994年)、J.Prot.Chem.V14(5)p359−372(1995年))。
【0003】
例えば、アミノ酸のアルギニン(Arg)とMGの反応では、蛋白質やペプチドのアルギニン残基あるいはアミノ酸のアルギニンとMGと反応して次の一般式式[IV]
【化4】
(式中、R2、R3は、蛋白質残基、ペプチド残基あるいはR2=OH基、R3=Ac基であり、R2=OH基、R3=Ac基のときN−アセチルアルギニンを示す。)
で表されるアルグピリミジン構造を有する化合物を生成することが知られている。
【0004】
また、リジン(Lys)とMGの反応では、蛋白質やペプチドのリジン残基あるいはアミノ酸のリジンとMGと反応して次の一般式[V]
【化5】
(式中、R2、R3は蛋白質残基、ペプチド残基あるいはR2=OH基、R3=Ac基であり、R2=OH基、R3=Ac基のときN−アセチルリジンを示す。)
で表されるリジン残基2モルとMG1モルとの化合物を生成することが知られている。
【0005】
またさらに、システイン(Cys)とMGの反応では、蛋白質やペプチドのシステイン残基あるいはアミノ酸のシステインとMGと反応して次の一般式[VI]
【化6】
(式中、R2、R3は蛋白質残基、ペプチド残基あるいはR2=OH基、R3=Ac基であり、R2=OH基、R3=Ac基のときN−アセチルシステインを示す。)
で表されるシステイン残基1モルとMG1モルとの化合物を生成することが知られている。
以上のようなメチルグリオキサールとアミノ酸との反応の型は知られているが、アルギニン1分子にメチルグリオキサール2分子が反応した化合物は知られていない。
【0006】
MGと蛋白質の反応により生じる化合物は生体内でも一部知られており、これらの構造体を明確にすることは、臨床学上、あるいは分析方法上非常に有用である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、アルギニン残基とアルキルグリオキサールの2分子が結合した構造の新規化合物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、前記のアルギニン残基とアルキルグリオキサールの2分子が結合した構造の新規化合物の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アミノ基をアセチル化したアルギニンにメチルグリオキサールを反応させるとグリオキサール付加体の新規化合物ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は次の(1)〜(5)である。
(1)下記の一般式[I]
【化7】
(式中、Rは、蛋白質、ペプチドあるいはアルギニンの残基を示す。またR1はアルキルグリオキサール由来の炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
で表されるアルキルグリオキサール付加体。
【0009】
(2)R1がメチル基である、下記一般式[II]
【化8】
(式中、Rは前記に同じ)
で表される前記のアルキルグリオキサール付加体。
【0010】
(3)下記の式[III]
【化9】
(式中、Acはアセチル基を示す)
で表されるアルギニンのメチルグリオキサール付加体である前記のアルキルグリオキサール付加体。
【0011】
(4)蛋白質、ペプチドあるいはN−アセチル化したアルギニンを原料として、アルキルグリオキサールと反応させてなる前記のグリオキサール付加体の製造方法。
(5)N−アセチル化したアルギニンを原料として、メチルグリオキサールと水溶液中で反応させ、その際のアルギニン残基/メチルグリオキサールのモル比は1/5〜100/1である前記グリオキサール付加体の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明では、蛋白質、ペプチドあるいはアルギニンを次の式[VII]
【化10】
で示す。
ここで、Rは、アミノ酸の構成単位としてアルギニンを含む蛋白質、ペプチドあるいはアルギニン自体の残基を示し、例えばRが次式[VIII]のとき、アセチル化アルギニンを示す。
【化11】
ただしこの場合Acはアセチル基を示す。
【0013】
また、一般式[I]で表されるアルキルグリオキサール付加体において、R1はアルキルグリオキサール由来のアルキル基であり、アルキルグリオキサールは、次式[IX]で表される。
【化12】
ここで、R1は炭素数1〜6のアルキル基を示す。アルキルグリオキサールとして、具体的には、メチルグリオキサール、エチルグリオキサール、プロピルグリオキサール、ブチルグリオキサール、ペンチルグリオキサール、ヘキシルグリオキサール等が挙げられる。
【0014】
前記の一般式[I]で表されるアルキルグリオキサール付加体は、例えば前記の一般式[VII]で表される蛋白質、ペプチドあるいはアルギニンと、一般式[IX]で表されるアルキルグリオキサールの原料を水溶液でかき混ぜることにより反応させることができる。
一般式[VII]で表されるアルギニンの当量と一般式[IX]で表されるアルキルグリオキサールとのモル比は、アルギニンの当量/アルキルグリオキサールのモル比で、1/5〜100/1であり、好ましくは、1/3〜 50/1である。より好ましくは、アルギニンの等量/アルキルグリオキサールのモル比で、1/2〜10/1である。一般式[VII]で表されるアルギニンの当量と一般式[IX]で表されるアルキルグリオキサールとのモル比が1/5より小さいとアルキルグリオキサール付加体の収率が少なくなり、100/1より大きいとアルキルグリオキサール付加体の収率は多くなるものの精製が困難となるので好ましくない。
【0015】
反応のときに用いる溶媒としては、水、あるいはメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒を用いることができる。またこれらの溶媒と水との混合溶媒も好ましく挙げられる。より好ましくは水である。
用いる溶媒は、pH緩衝剤を含有していてもよい。緩衝剤としては、リン酸塩、炭酸塩等が挙げられる。好ましくは、リン酸塩が挙げられる。緩衝剤を含有する場合のpHは、反応が進行するpHであればよく、特に限定されないが、好ましくはpH6〜11、より好ましくはpH7〜9が挙げられる。また緩衝液の濃度は1mM〜0.5Mであり、好ましくは10〜200mMである。
反応時間は、1時間〜20日、好ましくは、1〜10日が挙げられる。
また反応温度は、5〜60℃、好ましくは、30〜40℃である。
触媒は特に必要としない。
【0016】
精製方法としては、反応液を凍結乾燥後、分取型高速液体クロマトグラフィーにより分取して精製する方法、溶剤抽出、凍結乾燥、晶析−再結晶等の方法により精製することができる。また、カラムクロマトグラフィによる分離精製を行ってもかまわない。好ましくは、凍結乾燥後、分取型高速液体クロマトグラフィーにより分取して精製する方法が挙げられる。
【0017】
反応方法および精製方法としては、具体的には、例えば所定量の原料のアルギニンをpH緩衝剤の水溶液に溶かし、これに所定量のメチルグリオキサールを加えて所定温度で所定時間かき混ぜた後、凍結乾燥で固形分とし、ついでこれに溶媒を加えて化合物を抽出し、次にその溶媒を留去してから水に溶解し高速液体クロマトグラフィーにより分取して精製した目的物を得ることができる。
なお、適宜保護基として用いたN−アセチル基は、加水分解で取り除いてもよい。
【0018】
【発明の効果】
本発明の化合物は、アルギニン残基に2分子のアルキルグリオキサールが付加した新規化合物である。この化合物は、生体内で生じるメチルグリオキサールと蛋白質のアルギニン残基との反応物類似体として、臨床学上、あるいは分析上有用である。また、本発明のアルギニン残基に2分子のアルキルグリオキサールが付加した新規化合物の製造方法は、原料の水溶液をかき混ぜておくだけで粗生成物が得られ、抽出精製、分取精製することにより簡便に精製したアルキルグリオキサール付加体を得ることができる方法である。
【0019】
【実施例】
本発明を実施例に基づいて説明する。
実施例1−1
N−アセチルアルギニン(シグマ社製)0.215g(10mmol)とメチルグリオキサール(シグマ社製)0.072g(10mmol)を100mMのリン酸緩衝液(pH7.4)10mlに溶解し、この反応液を37℃で7日間反応した。その後、反応液を凍結乾燥した後、25mlのエタノールで3回抽出した。得られた抽出液をエバポレーターで濃縮した後、高速液体クロマトグラフィーで次の条件により分取して目的物の溶液を得た。これを凍結乾燥して目的物11.5mgを得た(収率4%)。
<高速液体クロマトグラフィーの条件>
高速液体クロマトグラフィーの機種;日本分光社製ガリバーPV980
カラム;Develosil ODA−HG−5(径8mm×長さ250mm)
溶剤;50mM酢酸水溶液
流量;2.0ml/min
検出波長;215nmのUV波長
【0020】
実施例1−2
前記の得られたメチルグリオキサール付加体は、1H−NMR、13C−NMR、FAS−MASS、元素分析を行った。結果を次に示した。
1H−NMR分析の結果を次に示した。
(1H−NMR(δ(ppm)、D2O/TMS);
1.49−1.52;C(g)H 3 ,s、
1.53−1.57;C(f)H 3 s、
1.59−1.63;C(d)H 2 m、
1.65−1.88;C(c)H 2 m、
1.98 ;C(a)H 3 s、
3.17−3.23;C(e)H 2 t、
3.66−3.93;C(h)H s、
4.18−4.24;C(b)H m。
【0021】
13C−NMR分析の結果を次に示した。
13C−NMR(δ(ppm)、D2O/TMS);
22.6(C(a),C(f)),24.7(C(d)),25.2(C(g)),29.0(C(c)),41.1(C(e)),54.4(C(b)),58.4(C(h)),72.5(C(n)),75.4(C(l)),80.2(C(m)),151.6(C(k)),174.8(C(i)),177.9(C(j))。
【0022】
FAS−MASSの分析結果を次に示した。
FAS−MASS(M/Z);
361(M++1)
【0023】
元素分析の結果;
(C14 H24 N4 O6として)
理論値C=46.65;H=6.72;N=15.55
計算値C=46.64;H=6.68;N=15.53
【0024】
以上の結果から、実施例1−1で得られた化合物は次式の構造であると確認した。
【化13】
【0025】
以上の結果からアルギニンのメチルグリオキサール2モル付加体が確認された。また本発明の製造方法で前記の化合物が合成できることがわかった。
Claims (5)
- 蛋白質、ペプチドあるいはN−アセチル化したアルギニンを原料として、アルキルグリオキサールと反応してなる請求項1ないし3項のいずれか1項に記載のグリオキサール付加体の製造方法。
- N−アセチル化したアルギニンを原料として、メチルグリオキサールと水溶液中で反応させ、その際のアルギニン残基/メチルグリオキサールのモル比は、1/5〜100/1で反応させてなる請求項4記載のグリオキサール付加体の製造方法。
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JP04582898A JP4196423B2 (ja) | 1998-02-26 | 1998-02-26 | アルキルグリオキサール付加体およびその製造方法 |
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