JP3585269B2 - 遊星歯車式変速装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車や鉄道車両等の多段自動変速機に用いられる遊星歯車式変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
遊星歯車式変速装置にトルクコンバーターを組み合わせた自動変速機が実用化されている。遊星歯車式変速装置は、複数の遊星歯車装置に複数のクラッチやブレーキを組み合わせて構成されており、複数のクラッチやブレーキの断続の組み合わせを変更して、変速比(=入力回転数/出力回転数)を複数通りに切り替えることができる。遊星歯車装置は、外側のリングギヤと中心のサンギヤとの間に1〜2段のピニオンギヤを配置し、複数のピニオンギヤがピニオンキャリヤに拘束されて一体に遊星運動する。遊星歯車装置のリングギヤ、ピニオンキャリヤ、サンギヤ、および複数のクラッチやブレーキの各要素間は、トルク伝達を担う殻構造や一方向クラッチによって、適当な組み合わせで相互に連結される。
【0003】
従来の自動車用の自動変速機における遊星歯車式変速装置は、前進3段、後退1段の4段階や前進4段、後退1段の5段階に変速比を切り替え可能で、最低の変速比を1としたものが主流であったが、変速比が1以下のいわゆるオーバードライブ段を追加して、前進4段、後退1段の5段階や前進5段、後退1段の6段階に変速比を切り替え可能なものも実用化されている。オーバードライブ段ではエンジン回転数が抑制されて、高速走行における燃費が向上する。ここで、前進5段型の遊星歯車式変速装置は、通常、前進4段型の自動変速機に対してその上位車種用や高級仕様向けとして採用されるが、両者の間では、最大限の部品共通化が望まれている。
【0004】
前進4段型と前進5段型の遊星歯車式変速装置の間における部品共通化を目的とする発明が特開昭59−113346号公報に示される。ここでは、2組の遊星歯車装置を含む前進4段型の遊星歯車式変速装置の出力軸側に副変速装置を連結して前進5段型の遊星歯車式変速装置とする。従って、前進4段型の遊星歯車式変速装置の構成部品の大部分を前進5段型でもそのまま使用することが可能である。副変速装置は、1組の遊星歯車装置と1個のクラッチと1個のブレーキを内蔵している。
【0005】
一方、特開昭47−19268号公報や特開昭50−64660号公報に示される前進5段型の遊星歯車式変速装置は、3組の遊星歯車装置を内蔵しており、筐体内部の1または2のクラッチやブレーキを取り外すことによって、前進4段型の遊星歯車式変速装置とすることが可能である。ここでは、前進4段型と前進5段型で遊星歯車式変速装置の外観が全く同じとなり、自動車側の自動変速機取り付け構造も共通化できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特開昭59−113346号公報に示される遊星歯車式変速装置は、副変速装置を使用しない専用の前進5段型遊星歯車式変速装置に比較して締結要素(クラッチやブレーキ)の数が多くなる。従って、運転中、非締結状態で空転する締結要素の数が増して自動変速機内の摩擦損失が大きくなり、自動変速機内に不必要な熱を発生させるとともに、自動車の燃費を悪化させもする。特に、変速比の小さい4速や5速の高速ギヤ段は、常用されるにもかかわらず、専用の前進5段型遊星歯車式変速装置に比較して摩擦損失が相当に大きく、高速道路等の高速走行における燃費の悪化が顕著である。また、専用の前進5段型遊星歯車式変速装置に比較して締結要素駆動用の油圧シリンダーの配置、油圧回路、軸構造、トルク伝達のための殻構造や一方向クラッチ等の配置がそれぞれ複雑化し、これらの部品点数の増加と相乗して自動変速機が大型化し、重量も増大する。これらの部品点数の増加は、自動変速機の部品コストと組み立て工数を増して、最終的な自動変速機の信頼性を低下させることにもなる。
【0007】
上述の特開昭50−64660号公報に示される前進5段型の遊星歯車式変速装置は、ブレーキ1個を取り除いて容易に前進4段型の遊星歯車式変速装置とすることができる。しかし、遊星歯車装置の組数が削減されないため、専用の前進4段型遊星歯車式変速装置に比較して、部品コストが高く、遊星歯車装置の摩擦損失が大きく、小型化軽量化が困難である。また、4段型では、5段階の途中が1段階抜け落ちた変速比の分布となるから、4段型を優先すれば5段型で変速比が偏り、5段型を優先すれば4段型で不自然な変速比の分布となる。
【0008】
上述の特開昭47−19268号公報に示される前進5段型の遊星歯車式変速装置は、ブレーキ1個と遊星歯車装置1組を取り除いて前進4段型の遊星歯車式変速装置とすることができる。しかし、変速比が1を越える変速段、いわゆるアンダードライブ変速段における変速が2つのクラッチの掛け変えによる変速を含むため、変速時のショックが大きい。そして、ショックを緩和するには、切り替え動作を遅くして変速に要する時間の延長を黙認する必要がある。
【0009】
本発明は、前進4段型と前進5段型の間で最大限の部品共通化を達成しつつも両者を最小限の部品点数で構成でき、両者でそれぞれ最適な変速比の分布を確保できる遊星歯車式変速装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の遊星歯車式変速装置は、入力部材および出力部材の軸線上に配置された第1遊星歯車装置および第2遊星歯車装置を有する遊星歯車式変速装置において、第2遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第1クラッチと、第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤを前記入力部材に対して締結可能な第2クラッチと、第1遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第3クラッチと、第1遊星歯車装置のサンギヤの回転を停止可能な第1ブレーキと、第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤの回転を停止可能な第2ブレーキと、第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第2遊星歯車装置のリングギヤの間を回転連絡する第1連絡手段と、第1遊星歯車装置のリングギヤと第2遊星歯車装置のピニオンキャリヤの間を回転連絡する第2連絡手段と、第2遊星歯車装置のピニオンキャリヤと前記出力部材の間を回転連絡する第3連絡手段と、第2遊星歯車装置のリングギヤに対してそのサンギヤを回転連絡させたダブルピニオン型の第3遊星歯車装置と、第3遊星歯車装置のリングギヤの回転を停止可能な第3ブレーキと、第3遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第1遊星歯車装置のサンギヤの間を回転連絡する第4連絡手段とを有する前進5段型のものである。
【0011】
請求項2の遊星歯車式変速装置は、請求項1の構成において、第1遊星歯車装置、第2遊星歯車装置、第1クラッチ、第2クラッチ、第3クラッチ、第1ブレーキ、および第2ブレーキを格納した主筐体構造に接続可能な副筐体構造を有し、前記副筐体構造に第3遊星歯車装置および第3ブレーキを配置したものである。
【0012】
請求項3の遊星歯車式変速装置は、請求項2の構成において、第3遊星歯車装置が第1遊星歯車装置と第2遊星歯車装置の間に配置されるとともに、前記主筐体構造が2分割可能に構成され、前記副筐体構造は、2分割された前記主筐体構造に挟み込んで接続されるものである。
【0013】
【作用】
請求項1の遊星歯車式変速装置は、2組の遊星歯車装置と3個のクラッチと2個のブレ ーキを含む前進4段型の基本構成に第3遊星歯車装置および第3ブレーキを追加することにより前進5段型としたものである。
まず基本構成において、1速では、第2遊星歯車装置のリングギヤを第2ブレーキでロックし、第2遊星歯車装置にサンギヤ入力する。
2速では、第1遊星歯車装置が第2遊星歯車のリングギヤを第2遊星歯車装置のリングギヤと同じ方向にリングギヤよりも遅い速度で回転させる。
3速では、第1クラッチと第2クラッチの両方が締結されて第1遊星歯車装置と第2遊星歯車装置が相互にロック状態となり、入力部材の回転が1対1に出力部材に伝達される。
4速では、第1遊星歯車装置がピニオンキャリヤへの入力を増速して出力部材に出力させる。
この基本構成に対する上記追加構成によって、上記1速と2速の間に中間の回転数(中間の変速比)の変速段が追加される。この追加された新しい2速においては、第3ブレーキによってリングギヤをロックされた第3遊星歯車装置が、第2遊星歯車装置のリングギヤをサンギヤと同じ方向に回転させる。
後退では、第1遊星歯車装置にサンギヤ入力して、リングギヤから減速された逆回転を取り出す。
【0014】
請求項2の遊星歯車式変速装置では、前進4段型の基本構成部分を格納した主筐体構造に対して、追加構成である第3遊星歯車装置と第3ブレーキを格納した副筐体構造を接続して前進5段型の遊星歯車式変速装置が形成される。
【0015】
請求項3の遊星歯車式変速装置では、前進5段型の遊星歯車式変速装置の軸方向の中間部分である副筐体構造を除去して、全体を短く再接続することによって前進4段型の遊星歯車式変速装置を構成する。
【0016】
【実施例】
図1〜図7を参照して第1実施例の遊星歯車式変速装置を説明する。実施例の遊星歯車式変速装置は、図示しないトルクコンバーターやオイルポンプに組み合わせて自動車用の自動変速機(オートマチックトランスミッション)に組み立てられる。図1〜図7では、遊星歯車式変速装置の構成が、構成部品の配置と接続状態を表して中心線から下側を図示略したスケルトンで示される。図1は第1実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図、図2は前進4段型の遊星歯車式変速装置の説明図、図3、図4は各変速段における遊星歯車装置の作動図、図5、図6は遊星歯車装置の配置と接続状態の変形例、図7は筐体構造の説明図である。図1中、(a)はスケルトン、(b)は各変速段におけるクラッチおよびブレーキの締結状態と変速比を示す。図2中、(a)はスケルトン、(b)は各変速段におけるクラッチおよびブレーキの締結状態を示す。図3中、(a)は1速、(b)は2速、(c)は3速の作動状態をそれぞれ示す。図4中、(a)は4速、(b)は5速、(c)は後退の作動状態をそれぞれ示す。図5の(a)、(b)、図6の(a)、(b)はそれぞれ別の変形例を示す。図7中、(a)は副筐体構造を連結する構造、(b)は副筐体構造を挟み込む構造を示す。
【0017】
図1の(a)において、入力軸E1と同一軸線上に左から3組のクラッチK1、K2、K3、3組のブレーキB1、B2、B3、3組の遊星歯車装置G11、G12、G13、および出力軸E2が配置される。上方にハッチングで示した筐体D1は、これらの機構を格納するとともに、入力軸E1および出力軸E2を回転可能に支持する。遊星歯車装置G11は、外周のリングギヤR11と中心のサンギヤS11の間に複数のピニオンギヤP11を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP11をピニオンキャリヤC11で一体に拘束する。遊星歯車装置G12は、外周のリングギヤR12と中心のサンギヤS12の間に複数のピニオンギヤP12を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP12をピニオンキャリヤC12で一体に拘束する。遊星歯車装置G13は、いわゆるダブルピニオン型であり、外周のリングギヤR13と中心のサンギヤS13の間に2段のピニオンギヤP13、Q13を複数組配置して噛み合わせ、2段のピニオンギヤP13、Q13をピニオンキャリヤC13で一体に拘束する。
【0018】
クラッチK1は、入力軸E1を遊星歯車装置G12のサンギヤS12に対して締結可能である。クラッチK2は、入力軸E1を遊星歯車装置G11のピニオンキャリヤC11に対して締結可能である。クラッチK3は、入力軸E1を遊星歯車装置G11のサンギヤS11に対して締結可能である。ブレーキB1は、筐体D1に対して遊星歯車装置G11のサンギヤS11をロックして、サンギヤS11の回転を停止可能である。ブレーキB2は、筐体D1に対して遊星歯車装置G12のリングギヤR12をロックして、リングギヤR12の回転を停止可能である。ブレーキB3は、筐体D1に対して遊星歯車装置G13のリングギヤR13をロックして、リングギヤR13の回転を停止可能である。
【0019】
遊星歯車装置G11のリングギヤR11と遊星歯車装置G12のピニオンキャリヤC12の間に連絡部材N12が配置される。遊星歯車装置G11のピニオンキャリヤC11と遊星歯車装置G12のリングギヤR12の間に連絡部材N11が配置される。遊星歯車装置G12のリングギヤR12と遊星歯車装置G13のピニオンキャリヤC13の間に連絡部材N14が配置される。遊星歯車装置G12のピニオンキャリヤC12と遊星歯車装置G13のサンギヤS13の間に連絡部材N13が配置され、サンギヤS13が出力軸E2に連結される。これらの連絡部材は、トルク伝達用の殻構造や軸方向の噛み合わせ構造や多重の軸構造によって構成され、相対回転を固定して正逆両方向に回転トルクを伝達する。
【0020】
図1の(b)において一覧表として示すように、1速ではクラッチK1とブレーキB3の組み合わせが締結される。2速ではクラッチK1とブレーキB2の組み合わせが締結される。3速ではクラッチK1とブレーキB1の組み合わせが締結される。4速ではクラッチK1、K2の組み合わせが締結される。5速ではクラッチK2とブレーキB1の組み合わせが締結される。後退ではクラッチK3とブレーキB2の組み合わせが締結される。これらの変速段における変速比は、遊星歯車装置G11、G12、G13の歯数比α1 、α2 、α3 を用いて右側の数式のように求められる。この数式を用いて歯数比α1 、α2 、α3 をそれぞれ0.375、0.725、0.50と定めた場合の具体的な変速比の数値が右端の欄に示される。
【0021】
図1の(a)に示す前進5段、後退1段の遊星歯車式変速装置は、遊星歯車装置G13とブレーキB3を除去して、破線で囲んだ部分A1を残すことで前進4段、後退1段の遊星歯車式変速装置とすることができる。前進4段、後退1段の遊星歯車式変速装置を図2に示す。図2の(b)では、図1の(b)の遊星歯車装置G13の関与する1速が失われて、図1の(b)の破線で囲んだ部分が新しい各変速段におけるクラッチとブレーキの作動組み合わせとなる。図2の(b)の1速、2速、3速、4速が、図1の(b)の2速、3速、4速、5速となり、変速比の数式や数値(歯数比α1 、α2 が共通として)も同じである。
【0022】
次に、図3、図4を参照して、前進5段、後退1段の変速各段における遊星歯車装置の作動状態を説明する。ここでは、クラッチおよびブレーキについては実線が締結状態、破線が解放状態である。遊星歯車装置および各要素の連絡部分については、変速動作に関与して出力に結び付く状態を実線、無関係な状態を破線で示している。
【0023】
図3の(a)の1速では、ブレーキB3によってリングギヤR13をロックされた遊星歯車装置G13と、クラッチK1によってサンギヤS12入力となる遊星歯車装置G12とによって減速が行われる。遊星歯車装置G13のピニオンキャリヤC13は、サンギヤS13の1/(1+α3 )倍に減速され、遊星歯車装置G12のリングギヤR12をサンギヤS12と逆方向に、サンギヤS12よりも遅い速度で回転させる。これにより、遊星歯車装置G12のピニオンキャリヤC12は、サンギヤS12と同じ方向に、リングギヤR12がロックされている場合よりも遅い速度で回転する。換言すれば、遊星歯車装置G12の減速された回転出力から遊星歯車装置G13が戻し回転を形成し、遊星歯車装置G12がこの戻し回転によってさらに出力を減速させる。
【0024】
図3の(b)の2速では、ブレーキB2によってリングギヤR12をロックされ、クラッチK1によってサンギヤS12入力とされた遊星歯車装置G12によって減速が行われる。1速の場合における遊星歯車装置G12のリングギヤR12の逆回転が無い場合に相当し、この逆回転が無い分だけ1速よりも増速された出力がピニオンキャリヤC12に現れる。
【0025】
図3の(c)の3速では、ブレーキB1によってサンギヤS11をロックされた遊星歯車装置G11と、クラッチK1によってサンギヤS12入力となる遊星歯車装置G12とによって減速が行われる。遊星歯車装置G11のピニオンキャリヤC11は、リングギヤR11のα1 /(1+α1 )倍に減速され、遊星歯車装置G12のリングギヤR12をサンギヤR12と同じ方向に回転させる。これにより、遊星歯車装置R12のピニオンキャリヤC12は、サンギヤR12と同じ方向に、リングギヤR12がロックされている2速の場合よりも速い速度で回転する。
【0026】
図4の(a)の4速では、クラッチK1によってサンギヤS12入力となる遊星歯車装置G12とクラッチK2によってピニオンキャリヤC11入力となる遊星歯車装置G11とが、リングギヤR11とピニオンキャリヤC12が連結されているために相互にロックされた状態となり、2つの遊星歯車装置G11、G12は、そのときの噛み合わせ状態のまま一体に回転する。従って、遊星歯車装置G12のサンギヤS12とピニオンキャリヤC12は同じ回転速度となる。
【0027】
図4の(b)の5速では、ブレーキB1によってサンギヤS11をロックされクラッチK2によってピニオンキャリヤC11入力とされた遊星歯車装置G11によって増速が行われる。リングギヤR11の回転速度は、ピニオンキャリヤC11の(1+α1 )倍となる。
【0028】
図4の(c)の後退では、ブレーキB2によってピニオンキャリヤC11をロックされクラッチK3によってサンギヤS11入力とされた遊星歯車装置G11によって減速の逆回転を形成する。公転位置をロックされたピニオンギヤP11を挟んでサンギヤS11とリングギヤR11が逆方向に回転し、リングギヤR11の回転速度は、サンギヤS11のα1 倍となる。
【0029】
以上のように構成された第1実施例の遊星歯車式変速装置によれば、遊星歯車装置G13とブレーキB3の有無によって、遊星歯車式変速装置の前進4段型と前進5段型を容易に変更できる。また、前進5型とした場合でも、クラッチとブレーキの数はそれぞれ3つで済み、従来の前進5型専用の遊星歯車式変速装置に比較して部品点数の増加とならない。また、前進4段型とした場合でも2つの遊星歯車装置G11、G12を一体に回転させる変速比1の変速段と遊星歯車装置G11によって増速するオーバードライブ変速段がそのまま残るため、高速走行における燃費の悪化を避け得る。さらに、走行中に常用される変速比1の変速段では、遊星歯車装置G11、G12の噛み合いがロックされるため歯面の摩擦や発熱が抑制され、また、締結要素の総数が少ないため非締結の締結要素の空転による発熱も少なく、従って、燃費が向上する。
【0030】
また、使用される頻度の高い変速比1の変速段とオーバードライブ変速段は、ピニオンキャリヤ入力となるため、サンギヤ入力の場合に比較してトルク伝達にかかる歯面が外側に位置する分、歯面圧力が少なくて済み、歯の大きさを小さくして歯数比の選択の自由度を高めたり、遊星歯車装置を小型化して遊星歯車式変速装置を軽量化したり、歯面の摩擦損耗を遅らせて遊星歯車装置の寿命を延長する等が容易である。
【0031】
さらに、図1の(b)の一覧表に明らかなように、1速〜5速の隣接する変速段では、1つの締結要素を共通にしたまま他の1つの締結要素を切り替えて変速動作が実行される。従って、変速動作が円滑となり、2つの締結要素を切り替える場合よりも短い時間で変速動作を完了できる。2つの締結要素を同時に切り替える変速動作が無いから、変速動作に伴って自動変速機の機構や車体にショックを与える心配も無い。従って、動作が円滑で速く、運転者に変速動作の有無を気付かせない自動変速機を提供できる。
【0032】
第1実施例では、遊星歯車装置G11が発明の第1遊星歯車装置、遊星歯車装置G12が発明の第2遊星歯車装置、遊星歯車装置G13が発明の第3遊星歯車装置に相当し、連絡部材N11が発明の第1連絡手段、連絡部材N12が発明の第2連絡手段、連絡部材N13が発明の第3連絡手段、連絡部材N14が発明の第4連絡手段に相当する。なお、これらの連絡手段やその他の正逆両方向で回転トルクを伝達する部材の少なくとも1つ、例えば、連絡部材N13を「一方向クラッチとクラッチを並列配置した連絡手段」に置き換えてもよい。一方向クラッチによって片方向のトルク伝達として不必要なエンジンブレーキを遮断可能とする一方、下り坂等でエンジンブレーキが必要な場合にはクラッチを締結して両方向のトルク伝達とする。また、第1実施例の構成は、3つの遊星歯車装置と3つのブレーキと3つのクラッチの配置の順序を、筐体構造や各要素の連絡構造の都合に合わせて自由に変更できる。遊星歯車装置の歯数比を変更して変速各段の変速比を異ならせてもよい。3つのブレーキと3つのクラッチには、特開平2−159443号の第38図〜第48図に示されるように、多板クラッチ、バンドブレーキ、および、これらに一方向クラッチを組み合わせた構造を用途や目的に応じて選択できる。
【0033】
図5の(a)、(b)、図6の(a)、(b)は、それぞれ、図1の(a)の3組の遊星歯車装置G11、G12、G13や回転トルクを伝達する部材を幾何学的に再配置して得られる第1実施例の変形例を示す。図5の(a)では、遊星歯車装置G11と遊星歯車装置G12の配置を逆にしている。図5の(b)では遊星歯車装置G12と遊星歯車装置G13の配置を逆にしている。図6の(a)では、遊星歯車装置G11のピニオンキャリヤC11と遊星歯車装置G12のリングギヤR12を内側で連絡し、これによって内側に配置できなくなった遊星歯車装置G11のリングギヤR11と遊星歯車装置G12のピニオンキャリヤC12の連絡を外側に配置している。図6の(b)では、図5の(b)における遊星歯車装置G13のピニオンキャリヤC13と遊星歯車装置12のリングギヤR12の連絡構造を無くして、遊星歯車装置G11のピニオンキャリヤC11と遊星歯車装置12のリングギヤR12を軸側で直接に連絡している。これらの変形例は、第1実施例と実質的に同一であり、同様な変速機能を発揮して同様な効果を達成する。
【0034】
図7の(a)、(b)は、第1実施例およびその変形例における筐体の組み立て構造の例を示している。図7の(a)では、前進4段型の遊星歯車式変速装置を内蔵した主筐体D11の出力軸側に副筐体D12を接続して前進5段型の遊星歯車式変速装置を構成する。主筐体D11には、遊星歯車装置G11、G12を含む図2の(a)の構成が格納され、一方、副筐体D12には、遊星歯車装置G13とブレーキB3が格納される。遊星歯車装置G12のリングギヤR12と遊星歯車式変速装置13のピニオンキャリヤC13の連結部分、および、遊星歯車装置G12のピニオンキャリヤC12と遊星歯車式変速装置13のサンギヤS13の連結部分には、軸方向に接近させて噛み合い、軸方向に遠ざけて解放される噛み合わせ構造が採用されており、主筐体D11に副筐体D12を接続すると同時に連結が完遂する。
【0035】
図7の(b)は、図5の(b)に示される変形例における筐体の組み立て構造である。ここでは、主筐体が前部D13と後部D14に分割されており、前部D13に後部D14を直接連結すれば、図2の(a)に示される前進4段型の遊星歯車式変速装置が構成される。一方、前部D13と後部D14の間に副筐体D15を挟み込んで連結すれば、図5の(b)に示される前進5段型の遊星歯車式変速装置が構成される。副筐体D15は、遊星歯車装置G13、ブレーキB3、および上述の連絡部材を含む破線で囲んだ部分A12の機構を内部に保持する。遊星歯車装置G11のリングギヤR11と遊星歯車装置G13のサンギヤS13を連絡する連絡部材と、遊星歯車装置G13のサンギヤS13と遊星歯車装置G12のピニオンキャリヤC12を連絡する連絡部材は、それぞれ軸方向に相対移動して噛み合わせの係合と解放が可能な噛み合わせ構造で連結されている。遊星歯車装置G13のピニオンキャリヤC13の両側の連絡部材も同様に構成されている。副筐体D15無しで前部D13と後部D14を直接連結した場合、前部D13と後部D14のこれらの噛み合わせ構造が噛み合って、図2の(a)の連結部材N11、N12を構成する。
【0036】
図7の(a)、(b)に示した筐体構造によれば、遊星歯車装置G11、G12、クラッチK1〜K3、ブレーキB1、B2はもちろん、筐体や要素間の連絡構造等についても前進4段型と前進5段型の遊星歯車式変速装置の間で最大限の部品共通化が実現され、必要となる部品点数の削減と部品コストの低減が可能となる。
【0037】
図8〜図12を参照して第2実施例の遊星歯車式変速装置を説明する。図8は第2実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図、図9、図10は各変速段における遊星歯車装置の作動図、図11は遊星歯車装置の配置と接続状態の変形例、図12は筐体構造の説明図である。図8中、(a)はスケルトン、(b)は各変速段におけるクラッチおよびブレーキの締結状態と変速比を示す。図9中、(a)は1速、(b)は2速、(c)は3速の作動状態をそれぞれ示す。図10中、(a)は4速、(b)は5速、(c)は後退の作動状態をそれぞれ示す。図11の(a)、(b)はそれぞれ別の変形例を示す。図12中、(a)は副筐体構造を連結する構造、(b)は副筐体構造を挟み込む構造を示す。
【0038】
図8の(a)において、入力軸E1と同一軸線上に左から3組のクラッチK1、K2、K3、3組のブレーキB1、B2、B3、3組の遊星歯車装置G21、G22、G23、および出力軸E2が配置される。上方にハッチングで示した筐体D2は、これらの機構を格納するとともに、入力軸E1および出力軸E2を回転可能に支持する。遊星歯車装置G21は、外周のリングギヤR21と中心のサンギヤS21の間に複数のピニオンギヤP21を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP21をピニオンキャリヤC21で一体に拘束する。遊星歯車装置G22は、外周のリングギヤR22と中心のサンギヤS22の間に複数のピニオンギヤP22を配置して噛み合わせ、複数のピニオンギヤP22をピニオンキャリヤC22で一体に拘束する。遊星歯車装置G23は、いわゆるダブルピニオン型であり、外周のリングギヤR23と中心のサンギヤS23の間に2段のピニオンギヤP23、Q23を複数組配置して噛み合わせ、2段のピニオンギヤP23、Q23をピニオンキャリヤC23で一体に拘束する。
【0039】
第2実施例における遊星歯車装置G21、G22は、クラッチK1、K2、K3、ブレーキB1、B2との接続状態やいくつかの変速段における機能については、第1実施例における遊星歯車装置G11、G12と同じであるが、後述する変速比を最適化するために歯数比α1 、α2 を異ならせている。
【0040】
クラッチK1は、入力軸E1を遊星歯車装置G22のサンギヤS22に対して締結可能である。クラッチK2は、入力軸E1を遊星歯車装置G21のピニオンキャリヤC21に対して締結可能である。クラッチK3は、入力軸E1を遊星歯車装置G21のサンギヤS21に対して締結可能である。ブレーキB1は、遊星歯車装置G21のサンギヤS21の回転を停止可能である。ブレーキB2は、遊星歯車装置G22のリングギヤR22の回転を停止可能である。ブレーキB3は、遊星歯車装置G23のリングギヤR23の回転を停止可能である。
【0041】
遊星歯車装置G21のリングギヤR21と遊星歯車装置G22のピニオンキャリヤC22の間に連絡部材N22が配置される。遊星歯車装置G21のピニオンキャリヤC21と遊星歯車装置G22のリングギヤR22の間に連絡部材N21が配置される。遊星歯車装置G22のリングギヤR22と遊星歯車装置G23のサンギヤS23の間に連絡部材N24が配置される。遊星歯車装置G22のピニオンキャリヤC22は連絡部材N23を通じて出力軸E2に連結され、出力軸E2は、遊星歯車装置G23のピニオンキャリヤC23にも連結される。これらの連絡部材や連結構造は、正逆両方向に回転トルクを伝達する。
【0042】
図8の(b)において一覧表として示すように、1速ではクラッチK1とブレーキB3の組み合わせが締結される。2速ではクラッチK1とブレーキB2の組み合わせが締結される。3速ではクラッチK1とブレーキB1の組み合わせが締結される。4速ではクラッチK1、K2の組み合わせが締結される。5速ではクラッチK2とブレーキB1の組み合わせが締結される。後退ではクラッチK3とブレーキB2の組み合わせが締結される。これらの変速段における変速比は、遊星歯車装置G21、G22、G23の歯数比α1 、α2 、α3 を用いて、右側の数式のように求められる。この数式を用いて歯数比α1 、α2 、α3 をそれぞれ0.30、0.75、0.45と定めた場合の具体的な変速比の数値が右端の欄に示される。
【0043】
図8の(a)に示す前進5段、後退1段の遊星歯車式変速装置は、遊星歯車装置G23とブレーキB3を除去して、破線で囲んだ部分A2を残すことで前進4段、後退1段の遊星歯車式変速装置とすることができる。破線で囲んだ部分A2は、図1の(a)に示す第1実施例の構成と実質的に同一であり、前進4段、後退1段の遊星歯車式変速装置を構成する。また、図8の(b)に破線で囲んで示す部分も図1の(b)に破線で囲んで示す部分と同一である。従って、第2実施例の遊星歯車式変速装置を前進4段型とした場合の各変速段における変速動作は第1実施例と同じである。前進4段型とした場合、遊星歯車装置G23の関与する1速が失われて、前進5段の2速、3速、4速、5速がそのまま前進4段の1速、2速、3速、4速となる。これらの変速段では、変速比の数式も第1実施例と同じである。
【0044】
次に、図9、図10を参照して、前進5段、後退1段の変速各段における遊星歯車装置の作動状態を説明する。ここで、2速〜5速および後退の変速段については、第1実施例と同一であるので詳しい説明を省略する。
【0045】
図9の(a)の1速では、ブレーキB3によってリングギヤR23をロックされた遊星歯車装置G23と、クラッチK1によってサンギヤS22入力となる遊星歯車装置G22とによって減速が行われる。遊星歯車装置G23のピニオンキャリヤC23が出力軸と一体に回転して、サンギヤS23に連結された遊星歯車装置G22のリングギヤR22が、サンギヤS22と逆方向にサンギヤS22よりも遅い速度で回転する。これにより、遊星歯車装置G22のピニオンキャリヤC22は、サンギヤS22と同じ方向に、リングギヤR22がロックされている場合よりも遅い速度で回転する。ここでは、遊星歯車装置G22の減速された回転出力から遊星歯車装置G23が戻し回転を形成し、遊星歯車装置G22がこの戻し回転によってさらに出力を減速させる。
【0046】
図9の(b)の2速では、遊星歯車装置G22によって減速が行われる。
図9の(c)の3速では、遊星歯車装置G21と遊星歯車装置G22とによって減速が行われる。
図10の(a)の4速では、2つの遊星歯車装置G21、G22が一体に回転して、遊星歯車装置G22のサンギヤS22とピニオンキャリヤC22は同じ回転速度となる。
図10の(b)の5速では、遊星歯車装置G21によって増速が行われる。
図10の(c)の後退では、遊星歯車装置G21によって減速の逆回転が形成される。
【0047】
以上のように構成された第2実施例の遊星歯車式変速装置によれば、第1実施例と同様な効果が得られる。第2実施例では、遊星歯車装置G21が発明の第1遊星歯車装置、遊星歯車装置G22が発明の第2遊星歯車装置、遊星歯車装置G23が発明の第3遊星歯車装置に相当し、連絡部材N21が発明の第1連絡手段、連絡部材N22が発明の第2連絡手段、連絡部材N23が発明の第3連絡手段、連絡部材N24が発明の第4連絡手段に相当する。
【0048】
図11の(a)、(b)は、それぞれ、図8の(a)の構成部品を幾何学的に再配置して得られる第2実施例の変形例を示す。図11の(a)では、遊星歯車装置G21のピニオンキャリヤC21と遊星歯車装置G22のリングギヤR22を内側で連絡しており、これによって内側に配置できなくなった遊星歯車装置G21のリングギヤR21と遊星歯車装置G22のピニオンキャリヤC22の連絡を外側に配置している。図11の(b)では、遊星歯車装置G22と遊星歯車装置G23の配置を逆にしている。これらの変形例は、第2実施例と実質的に同一であり、同様な変速機能を発揮して同様な効果を達成する。
【0049】
図12の(a)、(b)は、第2実施例およびその変形例における筐体の組み立て構造の例を示している。図12の(a)では、前進4段型の遊星歯車式変速装置を内蔵した主筐体D21の出力軸側に副筐体D22を接続して前進5段型の遊星歯車式変速装置を構成している。主筐体D21には、図8の(a)の破線で囲んだ部分A2の構成が格納される。副筐体D22は、破線で囲んだ部分A21の機構、すなわち、遊星歯車装置G23、ブレーキB3、出力軸および各要素を相互連結する部材を内部に格納して保持する。
【0050】
図12の(b)は、図11の(b)に示される第2実施例の変形例における筐体の組み立て構造である。ここでは、主筐体が前部D23と後部D24に分割されており、前部D23に後部D24を連結すれば、前進4段型の遊星歯車式変速装置が構成される。一方、前部D23と後部D24の間に副筐体D25を挟み込んで連結すれば、破線で囲んだ部分A22の機構が追加されて、前進5段型の遊星歯車式変速装置が構成される。
【0051】
図12の(a)、(b)に示した筐体構造によれば、遊星歯車装置G21、G22、クラッチK1〜K3、ブレーキB1、B2はもちろん、筐体や要素間の連絡構造等についても前進4段型と前進5段型の遊星歯車式変速装置の間で最大限の部品共通化が実現され、必要となる部品点数の削減と部品コストの低減が可能となる。
【0052】
図13〜図19を参照して第3実施例の遊星歯車式変速装置を説明する。図13は第3実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図、図14、図15は各変速段における遊星歯車装置の作動図、図16〜図18は遊星歯車装置の配置と接続状態の変形例、図19は筐体構造の説明図である。図13中、(a)はスケルトン、(b)は各変速段におけるクラッチおよびブレーキの締結状態と変速比を示す。図14中、(a)は1速、(b)は2速、(c)は3速の作動状態をそれぞれ示す。図15中、(a)は4速、(b)は5速、(c)は後退の作動状態をそれぞれ示す。図16の(a)、(b)、図17の、(a)、(b)、図18の(a)、(b)はそれぞれ別の変形例を示す。
【0053】
図13の(a)において、入力軸E1と同一軸線上に左から3組のクラッチK1、K2、K3、3組のブレーキB1、B2、B3、3組の遊星歯車装置G31、G32、G33、および出力軸E2が配置される。上方にハッチングで示した筐体D3は、これらの機構を格納するとともに、入力軸E1および出力軸E2を回転可能に支持する。遊星歯車装置G31は、外周のリングギヤR31と中心のサンギヤS31の間に複数のピニオンギヤP31を配置し、複数のピニオンギヤP31をピニオンキャリヤC31で一体に拘束する。遊星歯車装置G32は、外周のリングギヤR32と中心のサンギヤS32の間に複数のピニオンギヤP32を配置し、複数のピニオンギヤP32をピニオンキャリヤC32で一体に拘束する。遊星歯車装置G33は、外周のリングギヤR33と中心のサンギヤS33の間に2段のピニオンギヤP33、Q33を複数組配置して噛み合わせ、2段のピニオンギヤP33、Q33をピニオンキャリヤC33で一体に拘束する。
【0054】
クラッチK1は、入力軸E1を遊星歯車装置G32のサンギヤS32に対して締結可能である。クラッチK2は、入力軸E1を遊星歯車装置G31のピニオンキャリヤC31に対して締結可能である。クラッチK3は、入力軸E1を遊星歯車装置G31のサンギヤS31に対して締結可能である。ブレーキB1は、遊星歯車装置G31のサンギヤS31の回転を停止可能である。ブレーキB2は、遊星歯車装置G33のリングギヤR33の回転を停止可能である。ブレーキB3は、遊星歯車装置G33のサンギヤS33を介して、遊星歯車装置G32のリングギヤR32の回転を停止可能である。遊星歯車装置G31、G32は、その実質的な接続状態や対応する変速段における機能が図1の(a)の遊星歯車装置G11、G12と等しいが、後述する変速比を最適化するために歯数比α1 、α2 を異ならせている。また、ブレーキB3は、その配置と対応する変速段における機能が図1の(a)のブレーキB2と等しい。
【0055】
遊星歯車装置G31のリングギヤR31と遊星歯車装置G32のピニオンキャリヤC32の間に連絡部材N32が配置される。遊星歯車装置G31のピニオンキャリヤC31と遊星歯車装置G32のリングギヤR32の間に連絡部材N31が配置される。遊星歯車装置G31のサンギヤS31と遊星歯車装置G33のピニオンキャリヤC33の間に連絡部材N34が配置される。遊星歯車装置G32のピニオンキャリヤC32は連絡部材N33を通じて出力軸E2に連結される。これらの連絡部材や連結構造は、トルク伝達用の殻構造や噛み合わせ構造や軸構造によって構成され、正逆両方向に回転トルクを伝達する。
【0056】
図13の(b)に一覧表として示すように、1速ではクラッチK1とブレーキB3の組み合わせが締結される。2速ではクラッチK1とブレーキB2の組み合わせが締結される。3速ではクラッチK1とブレーキB1の組み合わせが締結される。4速ではクラッチK1、K2の組み合わせが締結される。5速ではクラッチK2とブレーキB1の組み合わせが締結される。後退ではクラッチK3とブレーキB3の組み合わせが締結される。これらの変速段における変速比は、遊星歯車装置G31、G32、G33の歯数比α1 、α2 、α3 を用いて右側の数式のように求められる。この数式を用いて歯数比α1 、α2 、α3 をそれぞれ0.30、0.40、0.575と定めた場合の具体的な変速比の数値が右端の欄に示される。
【0057】
図13の(a)に示す前進5段、後退1段の遊星歯車式変速装置は、遊星歯車装置G33とブレーキB2を除去して、破線で囲んだ部分A3とブレーキB3を残すことで前進4段、後退1段の遊星歯車式変速装置とすることができる。このとき、遊星歯車装置G33の関与する2速が失われて、図13の(b)の破線で囲んだ部分が前進4段、後退1段の各変速段におけるクラッチとブレーキの作動組み合わせとなる。図1の(b)の1速、3速、4速、5速、後退が、そのまま前進4段、後退1段の1速、2速、3速、4速、後退となり、変速比の数式も同じである。
【0058】
次に、図14、図15を参照して、前進5段、後退1段の変速各段における遊星歯車装置の作動状態を説明する。第3実施例の遊星歯車式変速装置は、ブレーキB3を図1の(b)のブレーキB2とみなせば、1速、3速、4速、5速、後退が、それぞれ第1実施例の遊星歯車式変速装置における2速、3速、4速、5速、後退に相当している。そして、相当する変速段では、左側の2つの遊星歯車装置(G11、G12、G31、G32)の作動状態が等しく、変速比の数式も同一である。従って、1速、3速、4速、5速、後退の変速段については、詳細な説明を省略する。
【0059】
図14の(a)の1速では、ブレーキB3によってリングギヤR32をロックされ、クラッチK1によってサンギヤS32入力とされた遊星歯車装置G32によって減速が行われる。
図14の(b)の2速では、3つの遊星歯車装置G31、G32、G33が同時に関与して減速を行う。ブレーキB2によってリングギヤR33をロックされた遊星歯車装置G33と、遊星歯車装置G33のピニオンキャリヤC33からサンギヤS31入力される遊星歯車装置G31とを協働させて、遊星歯車装置G32のリングギヤR32をサンギヤS32と同じ方向にゆっくりと回転させる。これにより、リングギヤR32が停止状態となる1速に比較して速い回転速度がピニオンキャリヤC32に出力される。
【0060】
図14の(c)の3速では、ブレーキB1によってサンギヤS31をロックされた遊星歯車装置G31と、クラッチK1によってサンギヤS32入力となる遊星歯車装置G32とによって減速が行われる。
図15の(a)の4速では、クラッチK1によってサンギヤS32入力となる遊星歯車装置G32とクラッチK2によってピニオンキャリヤC31入力となる遊星歯車装置G31とが相互にロックされた状態となり、遊星歯車装置G31、G32が一体に回転して、遊星歯車装置G32のサンギヤS32とピニオンキャリヤC32が同じ回転速度となる。
図15の(b)の5速では、ブレーキB1によってサンギヤS31をロックされるとともに、クラッチK2によってピニオンキャリヤC31入力とされた遊星歯車装置G31によって増速が行われる。
図15の(c)の後退では、ブレーキB3によってピニオンキャリヤC31をロックされるとともに、クラッチK3によってサンギヤS31入力とされた遊星歯車装置G31によって減速の逆回転を形成する。
【0061】
以上のように構成された第3実施例の遊星歯車式変速装置によれば、遊星歯車装置G33とブレーキB2の有無によって、遊星歯車式変速装置の前進4段型と前進5段型を容易に変更できる。そして、部品点数や組み立てコスト、部品共通化等について第1実施例と同様な効果が得られる。
第3実施例では、遊星歯車装置G31が発明の第1遊星歯車装置、遊星歯車装置G32が発明の第2遊星歯車装置、遊星歯車装置G33が発明の第3遊星歯車装置に相当し、連絡部材N31が発明の第1連絡手段、連絡部材N32が発明の第2連絡手段、連絡部材N33が発明の第3連絡手段、連絡部材N34が発明の第4連絡手段に相当する。また、ブレーキB1が発明の第1ブレーキ、ブレーキB3が発明の第2ブレーキ、ブレーキB2が発明の第3ブレーキに相当する。
【0062】
図16の(a)、(b)、図17の(a)、(b)、図18の(a)、(b)は、それぞれ、図13の(a)の3組の遊星歯車装置G31、G32、G33や回転トルクを伝達する部材を幾何学的に再配置して得られる第3実施例の変形例を示す。図16の(a)では、遊星歯車装置G33よりも出力軸側に遊星歯車装置G31を移動している。図16の(b)では、(a)の構成におけるブレーキB3を遊星歯車装置G31の左側に移動したため、遊星歯車装置G33のピニオンキャリヤC33と遊星歯車装置G31のサンギヤS31を内側で連結することが可能となった。図17の(a)では、遊星歯車装置G31と遊星歯車装置G32の間に遊星歯車装置G33を配置している。図17の(b)、図18の(a)、(b)では、それぞれ遊星歯車装置G31と遊星歯車装置G33の配置を逆にしている。これらの変形例は、第3実施例と同様に機能して、第3実施例と同様な効果を達成する。
【0063】
図19は、第3実施例における筐体構造の例を示している。前進5段、後退1段の遊星歯車式変速装置の筐体構造は、前部分D31、中部分D32、後部分D33の3つに分割されている。前部分D31には、図13の(a)の破線で囲んだ部分A3が格納され、後部分D33には、ブレーキB3が格納されている。中部分D32には、遊星歯車装置G33とブレーキB2が格納されており、中部分D32を除去することで、破線で囲んだ部分A31の機構、すなわち、遊星歯車装置G33、ブレーキB2、および各要素を相互連結する部材が無くなり、これにより前進4段、後退1段の遊星歯車式変速装置が得られる。
【0064】
【発明の効果】
本発明の遊星歯車式変速装置によれば、前進4段、後退1段の遊星歯車式変速装置に1組の遊星歯車装置と1個のブレーキを追加するだけで、前進5段、後退1段の遊星歯車式変速装置が得られる。従って、前進4段型と前進5段型の遊星歯車式変速装置間で最大限の部品共通化が可能となり、製作コストの低減や信頼性の向上が容易となる。そして、前進4段型とした場合でも、必要なクラッチ数が3、ブレーキ数が2にとどまり、従来の専用の前進4段型に比較してこれらの必要数を増さないで済む。また、遊星歯車装置とブレーキが除去されることにより、無駄な部品を内部に抱え込んだり、無駄な部品が空転して損失を高めたりする心配が無い。従って、遊星歯車式変速装置の小型化、軽量化が容易となり、製作コストもさらに低減される。
【0065】
筐体構造を分割して前進4段型と前進5段型の区別に応じて連結する構成とした場合、前進4段型と前進5段型の間で筐体部品の共通化が可能となるにもかかわらず、前進4段型を必要最小限の内容積を持つ軽量小型の遊星歯車式変速装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図である。
【図2】前進4段型の遊星歯車式変速装置の構成の説明図である。
【図3】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図4】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図5】遊星歯車装置の配置と接続状態の変形例である。
【図6】遊星歯車装置の配置と接続状態の変形例である。
【図7】筐体構造の説明図である。
【図8】第2実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図である。
【図9】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図10】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図11】遊星歯車装置の配置と接続状態の変形例である。
【図12】筐体構造の説明図である。
【図13】第3実施例の遊星歯車式変速装置の構成の説明図である。
【図14】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図15】各変速段における遊星歯車装置の作動図である。
【図16】遊星歯車装置の配置と接続状態の変形例である。
【図17】遊星歯車装置の配置と接続状態の変形例である。
【図18】遊星歯車装置の配置と接続状態の変形例である。
【図19】筐体構造の説明図である。
【符号の説明】
B1、B2、B3 ブレーキ
K1、K2、K3 クラッチ
E1 入力軸
E2 出力軸
D1、D2、D3 筐体
C11、C12、C13、C21、C22、C23、C31、C32、C33 ピニオンキャリヤ
G11、G12、G13、G21、G22、G23、G31、G32、G33 遊星歯車装置
N11、N12、N13、N14、N21、N22、N23、N24、N31、N32、N33、N34 連絡部材
P11、P12、P13、P21、P22、P23、P31、P32、P33 ピニオンギヤ
R11、R12、R13、R21、R22、R23、R31、R32、R33 リングギヤ
Claims (3)
- 入力部材および出力部材の軸線上に配置された第1遊星歯車装置および第2遊星歯車装置を有する遊星歯車式変速装置において、
第2遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第1クラッチと、
第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤを前記入力部材に対して締結可能な第2クラッチと、
第1遊星歯車装置のサンギヤを前記入力部材に対して締結可能な第3クラッチと、
第1遊星歯車装置のサンギヤの回転を停止可能な第1ブレーキと、
第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤの回転を停止可能な第2ブレーキと、
第1遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第2遊星歯車装置のリングギヤの間を回転連絡する第1連絡手段と、
第1遊星歯車装置のリングギヤと第2遊星歯車装置のピニオンキャリヤの間を回転連絡する第2連絡手段と、
第2遊星歯車装置のピニオンキャリヤと前記出力部材の間を回転連絡する第3連絡手段と、を有し、かつ、
第2遊星歯車装置のリングギヤに対してそのサンギヤを回転連絡させたダブルピニオン型の第3遊星歯車装置と、
第3遊星歯車装置のリングギヤの回転を停止可能な第3ブレーキと、
第3遊星歯車装置のピニオンキャリヤと第1遊星歯車装置のサンギヤの間を回転連絡する第4連絡手段と、を設けたことを特徴とする前進5段、後退1段の変速が可能な遊星歯車式変速装置。 - 第1遊星歯車装置、第2遊星歯車装置、第1クラッチ、第2クラッチ、第3クラッチ、第1ブレーキ、および第2ブレーキを格納した主筐体構造に接続可能な副筐体構造を有し、
前記副筐体構造に第3遊星歯車装置および第3ブレーキを配置したことを特徴とする請求項1記載の遊星歯車式変速装置。 - 第3遊星歯車装置が第1遊星歯車装置と第2遊星歯車装置の間に配置されるとともに、前記主筐体構造が2分割可能に構成され、
前記副筐体構造は、2分割された前記主筐体構造に挟み込んで接続されることを特徴とする請求項2記載の遊星歯車式変速装置。
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