JP3584213B2 - 流動性香辛味食品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の辛味成分、具体的には、カプサイシン及びピペリンを含有する流動性香辛味食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、種々の食品原料に対して辛味成分を含有させることにより、特有の風味を活かした香辛味食品が提供されている。しかしながら、辛味成分を含有させた香辛味食品は、特有の風味を有すると共に刺激味を有し、特に、分散性が良好な流動性食品(例えば、カレー、シチュー、スープ、ソース等)においては、刺激味のみが強調されたものになりやすい。このため、流動性食品においては、油脂の含有量を高める等により、上記刺激味を抑えることも試みられているが、この場合には、香辛味食品原料自体に求められる風味も弱められてしまう。
一方、上記辛味成分として用いられるものとしては、例えば、唐辛子等に含まれるカプサイシンや、胡椒等に含まれるピペリン等が挙げられる。これらのカプサイシンやピペリンについては、その他の辛味成分と同様に流動性食品に含ませた場合に刺激味のみが強調されたものとなる傾向にあるという問題に加え、特定の含量で流動性食品に含ませた場合に、これらに特有の刺激味、即ち、舌にピリッとくる辛味がでやすいという問題が生じる。また、レトルト食品等の加圧加熱処理を施した場合には、この刺激味が更に違和感をもつ場合がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、カプサイシンとピペリンを特定量で流動性食品に含ませた場合に、原料食品自体の風味を活かしつつ、カプサイシンとピペリンに基づく特有の刺激味を抑えて、全体として風味の優れた流動性香辛味食品を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定量の、具体的には、0.1〜6.0ppmのカプサイシン含量及び0.5〜130ppmのピペリン含量を有する流動性香辛味食品に、特定品種の馬鈴薯を添加することにより上記課題を効率的に解決できるとの知見に基づくものである。
即ち、本発明は、カプサイシン0.1〜6.0ppm、ピペリン0.5〜130ppm及びさやか品種馬鈴薯を含むことを特徴とする流動性香辛味食品を提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明において、流動性香辛味食品とは、辛味成分、具体的にはカプサイシンとピペリンとを含み、かつ、流動性を有する食品をいう。このような流動性食品としては、例えば、カレー、シチュー、スープ、ソース等が挙げられる。即ち、前記流動性食品は、液状であっても、ペースト状であってもよく、また、固形具材や磨砕物等を含んだ形態のものであってもよい。
本発明の流動性食品は、カプサイシンとピペリンとを特定量含むことを前提とする。各成分の含有量は、前記流動性食品の質量を基準として、カプサイシンが0.1〜6.0ppm、好ましくは0.1〜1.5ppmで、ピペリンが0.5〜130ppm、好ましくは0.5〜60ppmである。本発明の流動性食品は、前記辛味成分2種を組み合せて含むものであるが、更なる辛味成分を含むことを排除するものではなく、上記辛味成分2種の他に、更なる辛味成分を所定量含んでいてもよい。
【0006】
本発明の流動性香辛味食品は、さやか品種馬鈴薯を含むことを特徴とする。これにより、前記辛味成分2種に基づく特有の刺激味を抑えることができる。さやか品種馬鈴薯とは、品種名「さやか」、登録番号「農林36号」、系統名(地方番号)「北海74号」の馬鈴薯のことをいう。その主な特徴としては、熟期が「農林1号」より3日〜18日早い中生であること、L規格以上(120g)いもの割合が高く、L規格以上いも収量は「男しゃくいも」の2.7倍であること、曝光による緑化・グルコアルカロイドの生成量が少ないこと、及び内部異常・剥皮褐変・調理後黒変も少ないことが挙げられる。
本発明の流動性食品は、さやか品種馬鈴薯を種々の形態で含んでいてもよく、例えば、固形具材、煮汁、磨砕物、パウダー又はエキスのいずれかの形態で含んでいてもよい。ここで、固形具材としては、例えば、5〜70mm角にカットしたものや所定の大きさに乱切りしたもの等が含まれる。また、煮汁としては、カット又はスライスしたものをボイルしたボイル液等が含まれる。パウダーとしては、常法により粉末形態としたものの他、煮汁を乾燥して粉末形態としたもの等が含まれる。また、エキスとしては、煮汁を濃縮したもの等が含まれる。刺激味を抑えて、風味の優れた食品を得る上で、煮汁、磨砕物、パウダー及びエキスの形態が望ましい。
好ましくは、前記さやか品種馬鈴薯を、前記食品の質量を基準として、固形具材形態で3〜40質量%(以下、単に%と称する)、より好ましくは5〜20%、煮汁若しくは磨砕物形態で3〜20%、より好ましくは4〜10%、パウダー形態で0.3〜3%、より好ましくは0.5〜1.5%、及び/又はエキス形態で0.6〜10%、より好ましくは1〜5%含ませるのが好ましい。さやか品種馬鈴薯をこれらの量で、上記形態のいずれか又は任意の組み合せで含ませることができる。
【0007】
また、さやか品種馬鈴薯としては、冷凍さやか品種馬鈴薯を解凍したものを用いることができる。この冷凍さやか品種馬鈴薯は、カットしたさやか品種馬鈴薯を、褐変起因酵素を失活させるが澱粉が実質的に完全糊化しない条件でブランチングした後に凍結することにより得ることができる。この際、ブランチングは、カットしたさやか品種馬鈴薯の中心温度が70〜95℃に達するように行い、凍結は急速凍結とするのが好ましい。解凍は常法により行うことができる。このようなさやか品種馬鈴薯を用いることにより、食感(歯応え)及び風味が優れたものとなる。
【0008】
また、本発明においては、上記馬鈴薯以外の野菜又は果実、例えばタマネキ、トマト、人参、セロリー等を含ませるのが好ましく、これらは、煮汁、磨砕物、パウダー及びエキスのいずれかの形態(これらの形態は上記馬鈴薯の場合と同様である)で含ませるのがよい。これにより、上記刺激味が更に低減される。野菜又は果実は、前記食品の質量を基準として、煮汁若しくは磨砕物形態で好ましくは5〜40%、より好ましくは10〜30%、パウダー形態で好ましくは1〜4%、より好ましくは1〜2%、及び/又はエキス形態で好ましくは2〜20%、より好ましくは3〜10%含ませるのがよい。
【0009】
以下、本発明の流動性香辛味食品の一態様であるレトルトカレーの製造方法の一例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、油脂0.5〜2部及び小麦粉0.5〜2部を100〜160℃で5〜30分間焙煎して小麦粉ルウを得る。これとは別に、少量の油脂、細断したタマネギ5〜20部及びトマトの磨砕物0.2〜2部を撹拌しながら焙煎する。
これに、カプサイシン6.5〜210ppm及びピペリン33〜4500ppmを含む香辛料混合物0.5〜3部、さやか品種馬鈴薯の磨砕物1.5〜10部、水15〜30部を加え、クッカーで撹拌しながら80〜95℃に加熱し、カレーソースを得る。尚、さやか品種馬鈴薯は、さやか品種馬鈴薯をコミトロールにかけ、カッティングヘッドのクリアランス0.2〜2mm、1500〜4000rpmで粉砕したものを用いることができる。
上述のようにして得たカレーソース103〜164部、5〜30mmにダイスカットしたさやか品種馬鈴薯3〜15部及び人参3〜10部、及び肉類3〜10部をパウチに充填し、110〜130℃で5〜50分間の条件で常法によりレトルト処理してレトルトカレーを製造することができる。このようにして、カプサイシン含量0.1〜6.0ppmで、ピペリン含量0.5〜130ppmのレトルトカレーを製造することができる。
【0010】
【発明の効果】
本発明により、カプサイシン及びピペリンに基づく、特有の刺激味(舌にピリッとくる辛味)を低減し、流動性食品が全体として風味が円やかなものに改善されるという作用効果が達成される。また、本発明の食品は、辛味成分の刺激味を低減するために、油脂含有量を増大させる必要がないため、近年の健康指向の点からも望ましいものである。
【0011】
【実施例】
実施例1
油脂1部と小麦粉1部を130℃で10分間焙煎して小麦粉ルウを得た。これとは別に少量の油脂、細断したタマネギ10部及びトマトの磨砕物0.5部を撹拌しながら焙煎した。これに、香辛料1部(カプサイシン含量約37.5ppm、ピペリン含量833ppm)、さやか品種馬鈴薯の磨砕物(原料をコミトロールにかけ、カッティングヘッドのクリアランス0.4mm、2000rpmで粉砕したもの)2部、水20部をクッカーで撹拌しながら約90℃まで加熱し、カレーソースを製造した。上記のカレーソース110g、約10mm角にダイスカットしたさやか品種馬鈴薯及び人参各7g、及び牛肉5gをパウチに充填し、122℃、15分間常法によりレトルト処理してレトルトカレーを製造した。
上述のようにして製造したレトルトカレーを常法により温めて食したところ、カプサイシン及びピペリンに基づく特有の刺激味(舌にピリッとくる辛味)が低減され、カレー風味が全体として円やかなものであった。このレトルトカレーは、カプサイシン含量約0.9ppm、ピペリン含量約20ppmのものであった。

Claims (3)

  1. カプサイシン0.1〜6.0ppm、ピペリン0.5〜130ppm及びさやか品種馬鈴薯を含む加圧加熱処理済カレーであって、該さやか品種馬鈴薯を、該加圧加熱処理済カレーの質量を基準として、固形具材形態で3〜40質量%、煮汁若しくは磨砕物形態で3〜20質量%、パウダー形態で0.3〜3質量%、エキス形態で0.6〜10質量%の量で上記形態のいずれか又は任意の組み合せで含むことを特徴とする加圧加熱処理済カレー
  2. 馬鈴薯以外の野菜又は果実を、煮汁、磨砕物、パウダー又はエキスのいずれかの形態で含む請求項記載の加圧加熱処理済カレー
  3. 前記野菜又は果実を、前記加圧加熱処理済カレーの質量を基準として、煮汁若しくは磨砕物形態で5〜40質量%、パウダー形態で1〜4質量%、エキス形態で2〜20質量%の量で、上記形態のいずれか又は任意の組み合せで含む請求項記載の加圧加熱処理済カレー
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