JP3584209B2 - シャドウマスク素材用スラブ、そのスラブの製造方法、およびすじむら品位および表面品質に優れたシャドウマスク素材の製造方法 - Google Patents

シャドウマスク素材用スラブ、そのスラブの製造方法、およびすじむら品位および表面品質に優れたシャドウマスク素材の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、すじむら品位と表面品質に優れたシャドウマスク用素材に関し、とくにそれの製造方法の他に、こうした素材を得るためのスラブとこのスラブの製造方法を併せて提案する。
【0002】
【従来の技術】
大型カラーテレビ用ブラウン管やコンピューターディスプレイ用の高精細ブラウン管のシヤドウマスク素材として用いられているFe−Ni合金(特にアンバー合金)には、これをエッチング穿孔した時に“すじむら”と呼ばれる欠陥、即ち圧延方向と平行方向に現れたすじ状の模様が見られる。このすじむらの発生原因は、主にエッチングに供する素材板中に存在するFeとNiの成分偏析に由来するものとされている。それは、こうした成分偏析が、連続鋳造または普通造塊時の凝固偏析がその後の熱間加工、冷間加工、焼鈍等の各工程を経たのちも消滅することなく、最終製品板に残留するからである。
【0003】
従来、このエッチング時のすじむらの発生を抑制するためのいくつかの技術が提案されている。例えば、特公平7−78270号公報には、凝固組織を抑制した連続鋳造スラブに対し一定の温度、時間以上の熱処理を施す方法が開示されている。なお、この公報では、凝固組織にも言及しているが、その意味するところは、凝固組織の結晶配向が製品板中の結晶配向に及ぼす影響と、その結晶配向に起因するエッチングむらを防止するものである。
また、特公平7−78270号公報には、連続鋳造、普通造塊の区別なく、スラブを高温長時間で熱処理することにより、すじむら発生を抑制する方法が開示されている。
これらの従来技術の基本原理は、高温長時間の熱処理によって、スラブ内部に存在するNi、C、Si、Mn、Cr等の成分偏析を熱拡散により均質化し、エッチングむらを防止することを主眼とするものである。
【0004】
その他、Fe−Ni系合金については、その溶製時に脱酸元素としてAlを添加すると、たとえその量が微量であったとしても、Al系の非金属介在物が生成しやすいという課題があった。しかも、この非金属介在物は、クラスター化して粗大化しやすいので、表面性状を悪化させる。この表面性状を向上させるためには、Alクラスターの発生を阻止すると共に発生したそのクラスターを除去することが必要である。しかしながら、クラスター化した非金属介在物は、見かけの比重が溶鋼の比重と近くなるため、取鍋やタンディッシュあるいはモールド内に浮上除去することは困難であることが知られている。
【0005】
そこで、この間題の解決策として、従来、特開平6−41687号公報では、合金組成としてMn:0.1〜0.4wt%、Si:0.05〜0.2wt%、酸可溶性Al:0.001〜0.003wt%のものを溶製することで、非金属介在物の組成をMnO−SiO−Al系に制御する方法、あるいは、特開平225881号公報では、Al:0.003wt%以下、かつ、Si(wt%)/Al(wt%)≧10として非金属介在物の組成をMn−シリケート系に制御する方法などが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上掲の従来技術は、コンピュータディスプレイ用ブラウン管のシャドウマスク用素材としては、一定の特性を有する製品板の製造が可能になったが、近年の、特にコンピューターディスプレイ用ブラウン管では、大型化、高精密化がさらに進み、マスクエッチング条件が厳しくなってきた。そのため、従来技術で達成し得た程度の偏析レベルでは、マスクエッチング時に発生するすじむら抑制が不十分となっており、さらなる偏析の軽減が望まれている。
また、上記各従来技術にあっては、すじむらや表面疵等の欠陥が生じないFe−Ni系合金板が得られた旨の報告がある。しかし、この点についても、発明者らの研究では、Alの低レベル添加時におけるAl成分のコントロールは、副原料のCaOやCaF、あるいはFe−Si合金中のAlやAlが存在するために、技術的に困難である。しかも、所定量以上のAlが混入するおそれがあり、再びAlクラスターが生成してしまうという問題があった。また、これらの技術によると、清浄度が著しく高いと、表面性状に悪影響を及ぼす危険性もあった。
【0007】
そこで、本発明では、上述した従来技術の下では考慮されていなかった、鋳造組織や凝固時の成分偏析、あるいはその偏析状態に即した熱処理条件を工夫することにより、従来技術では達成できなかった高度の偏析軽減技術、すなわち、すじむら低減技術を実現し、そして表面疵の発生原因になりにくいシャドウマスク用素材を得るための技術を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らの研究によると、シャドウマスク素材として用いられるFe−Ni合金の“すじむら”欠陥は、鋳造スラブ中に存在するNiの成分偏析が主要因であることがわかり、そして、このようなNi成分偏析を有するスラブの鋳造組織については、柱状晶および/またはチル晶にすることが好ましいことがわかった。即ち、スラブ鋳造組織の形態が、柱状晶および/またはチル晶でないものを出発材料とすると、その後、該スラブを熱間加工、冷間加工、焼鈍等を行ったとしても、鋳造段階のNi成分偏析がいつまでも解消せずに、最終のシャドウマスク素材としての薄板に、すじむら欠陥として残るのである。
【0009】
次に、発明者らは、圧延時や成形時に表面疵が生じたFe−Ni系合金板の疵部分についても、検討した。その結果、板表面の疵の原因は、クラスター状Alおよびクラスター状MgO・Al系の非金属介在物にあることがわかった。即ち、この種の非金属介在物は、高融点であり、クラスター化しやすいことに加え硬質であることから、これが疵や割れの起点となっているのである。
【0010】
発明者らは、このような調査結果をもとに非金属介在物の組成について種々検討した。その結果、非金属介在物の組成は基本的に、MnO−SiO−CaO−MgO−FeO系であり、かつ、MnO:5〜45wt%、SiO:10〜65wt%、かつ、CaO、MgOおよびFeOの合計量が1〜50wt%であり、そして不可避的不純物中のAlが20wt%以下であるシリケート系の介在物である場合、さらに、MgO・Alスピネルが、体積比にして介在物総量の50vol%以下であれば、クラスターを形成せず、つまり表面性状に悪影響を及ぼすことなく、そして表面疵の発生原因にはなりにくいことがわかった。また、このような非金属介在物は、熱間圧延および冷間圧延の工程で微細に分断されるので、清浄度にも優れることがわかった。
【0011】
上記の知見に基づき開発した本発明は第一に、Si:0.001〜0.3wt%、Mn:0.01〜0.5wt%、Ni:30〜45 wt%、Al:0.005 wt%以下、Mg:0.001wt%以下、Ca:0.002wt%以下、O:0.0005〜0.02wt%を含み、残部 Feおよび不可避的不純物である成分組成を有し、かつCaO+MgO+FeO:1〜50wt%を含むMnO-SiO2-Al2O3-CaO-MgO-FeO系のMnO:5〜45wt%、SiO2:10〜65wt%、Al2O3:20wt%以下の組成をもつ、非金属介在物を含む鋳造スラブに関し、とくに鋳造組織の99%以上が柱状晶および/またはチル晶よりなるものであることを特徴とするシャドウマスク素材用スラブを提案する。
【0012】
本発明においてかかるスラブは、上記構成成分に加えてさらに、Coを1〜10wt%の範囲内で含有すること、あるいは、Nbを0.001〜1.0wt%の範囲内で含有するものであることが好ましく、そして、上記スラブは、連続鋳造法によって、好ましくは電磁攪拌を行うことなく鋳造されたものであることが好ましく、さらに、上記非金属介在物としては、MnO-SiO2-Al2O3-CaO-MgO-FeO系非金属介在物の他に、MgO−Al2O3スピネルを、体積比にして非金属介在物総量の50%以下含有するものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記したスラブを、下記式で示されるNiの拡散距離DNiが39以上となる条件で均質化熱処理を施すことを特徴とするシャドウマスク素材用スラブの製造方法を提案する。
Ni=(D・t)1/2(μm)
D:拡散係数、D=D×exp(−Q/RT)
:振動数項=1.63×10(μm・s−1
Q:Ni拡散の活性化エネルギー=2.79×10(J・mol−1
R:気体定数=8.31(J・mol−1・K−1
T:温度(K)
t:焼鈍時間(s)
なお、上記均質化熱処理は、1100℃〜1375℃の温度で行うことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記したスラブ、または熱処理を施したスラブを、常法に従い熱間圧延、冷間圧延および熱処理を施すことを特徴とするシャドウマスク素材の製造方法を提案する。
【0015】
【発明実施の形態】
本発明のシャドウマスク素材用造スラブの特徴の1つは、スラブ鋳造組織について、それの鋳造方向に直交する断面における面積割合で99%以上(即ち、等軸晶の面積割合が1%未満である)、好ましくは100%が柱状晶および/またはチル晶よりなる連続鋳造スラブを用いることにある。このような鋳造組織に限定したのは、以下の理由による。即ち、鋳造スラブの凝固組織について、以降の工程での熱拡散により、成分偏析を低減する場合に最も支配的な要因となるのは、偏析の成分変動である。発明者らは、この間隔が短いほど、偏析低減に要する加熱温度が低く、また、加熱時間が短くて済むとの知見を得て、スラブの成分偏析と凝固組織との関係に着目し、さらに詳細な調査を行った。
その結果、連続鋳造スラブ中に生ずる柱状晶組織や柱状晶組織と類似の凝固形態を持つチル晶組織については、他の凝固組織と比べて格段に成分偏析を表す間隔が短くなっていることを見いだした。また、これらの凝固組織における成分偏析を表す間隔は、一次デンドライトアームの間隔に依存しているということも見いだした。なお、二次及び三次デンドライトアームに起因する成分偏析は、比較的短時間の熱処理で消失するため、本発明では特に考慮していない。
【0016】
以上説明した理由から、本発明のシャドウマスク素材用スラブの凝固組織としては、柱状晶組織および/またはチル晶組織を99%以上、好ましくは100%とした。なお、本発明において、チル晶組織は、凝固時のモールドに接した急冷凝固部に限られるため発生は少なく、通常の連続鋳造スラブでは、その体積は全体の数%以下にすぎない。
【0017】
本発明においては、チル晶以外の部分をできるだけ、柱状晶組織とすることが好ましいが、そのためには以下のような操業上の下記第一、第二の制御が有効である。第一に、通常の連続鋳造設備の操業ではスラブ中心部に成分偏析あるいは引け巣が集中することを避けるため、電磁攪拌(EMS)を行い溶湯の攪拌を行いながら鋳造しているが、このような操業方法では、スラブの中心部は柱状晶組織ではなく等軸晶組織となってしまい好ましくない。そのため、本発明にかかるスラブを得るためには、意図的にEMSを停止し、連続鋳造モールド内の溶湯の流動を極力抑える操業が有効となる。第二に、溶湯の流動が無い場合でもスラブ内未凝固部の溶湯の温度が液相線以下となった場合には、溶湯中に等軸晶の核発生・成長が起こるため目的とする柱状晶組織を得られなくなる。そのため、操業は溶湯の温度を液相線以上、具体的には液相線からの過熱度(△T)を25℃以上に保ちながら行うことが好ましい。なお、本発明では、特にスラブの加熱温度の上限を定めないが、素材融点のマイナス10℃程度が好ましい。
【0018】
次に、発明者らは、すじむら品位にも影響を及ぼすと考えられる他の要因として、圧延時や成形時に生じたFe−Ni系合金板の表面疵についての調査を行った。その結果、表面疵の原因は、クラスター状Alおよびクラスター状MgO・Al系非金属介在物にあることがわかった。この種の非金属介在物は高融点であり、クラスター化しやすいことに加え硬質であることから、疵や割れの起点となるのである。
そこで、発明者らは、このような調査結果をもとにさらに、非金属介在物組成についても種々検討した。その結果、非金属介在物の組成が基本的に、MnO−SiO−Al−CaO−MgO−FeO系であり、かつ、CaO、MgOおよびFeOの合計量が1〜50wt%であれば、クラスターの生成がなくなり、表面性状に悪影響を及ぼすこともなくなり、そして表面疵の発生原因になりにくく、ひいてはすじむら品位によい影響をもたらすことを見い出した。
【0019】
上述したように、本発明にかかるスラブ中に含まれる非金属介在物としては、クラスター化しにくく、かつ熱間圧延および冷間圧延工程で微細に分断されて清浄度が向上しやすいものにすることが重要であり、このような観点から、本発明のFe−Ni系合金に含有される非金属介在物の組成および種類を特定した。即ち、基本的には、MnO−SiO−Al−CaO−MgO−FeO系のものとし、MnO:5〜45wt%、SiO:10〜65wt%、Al:20wt%以下、そしてCaO+MgO+FeO:1〜50wt%の組成を有するものとする。この理由は、該非金属介在物を熱間圧延時あるいは冷間圧延時に延伸させ、安定して分断性の良好な低融点介在物とするためである。
【0020】
このような非金属介在物の主成分は、MnO:5〜45wt%、SiO:10〜65wt%、Al:20wt%以下、および(CaO+MgO+FeO):1〜50wt%とするが、これは低融点の延伸性の良好なマンガン・シリケート系介在物にするためである。
ここで、MnOが5wt%より少ないと、非金属介在物が高融点になり、延伸性が無くなって清浄度が悪化し、45wt%より多い場合も該非金属介在物が高融点になり、延伸性が無くなって、清浄度が悪化する。
また、SiOが10wt%より少ないと、非金属介在物が高融点になり、延伸性が無くなって清浄度が悪化し、一方、65wt%より多い場合でも、同様に非金属介在物が高融点になり、延伸性が無くなって清浄度が悪化する。
そして、CaOおよびMgOが50wt%以上含まれると、エッチング時に酸可溶性なのでエッチング不良が発生し、一方、1wt%より低いと高融点になり、延伸性が無くなって清浄度が悪化し、清浄度が0.05を越えてしまう。
さらに、FeOは、50wt%以上含まれると、酸素含有量が0.02wt%を超えてしまい、非金属介在物の生成量が増加し、清浄度が0.05を超える。一方、FeOが1%より低いと、大型の介在物が残留し、表面庇を発生させてしまう。
【0021】
不可避的不純物として、精錬時の副原料のCaOやCaF、あるいはSi合金中に含まれるAlおよびAlに起因する、該非金属介在物中のAlは20wt%以下に制限する。この理由は、これらの範囲を超えると、介在物形態が急激に、表面欠陥の原因となる、アルミナあるいはスピネルがクラスターを形成する危険性があるからである。
【0022】
また、本発明のFe−Ni系合金中の該非金属介在物中のMgO・Alスピネルの割合を、体積比で介在物総量の50%以下とした。この理由は、熱間圧延および冷間圧延後の圧延方向に平行な断面の介在物形態の調査結果より、クラスターを形成せず、工業的に安定して表面性状の良好な製品を製造することが可能となるからである。この点、もし、50%より多くなると、硬質のクラスターを形成して表面性状を悪くする。
【0023】
次に、本発明においては、鋳造組織と凝固時の成分偏析の関係、およびその偏析状態に即した、スラブ均質化熱処理条件についても検討を試みた。
まず、鋳造スラブの鋳造組織については、上述したように、鋳造方向に直交する切断端面における柱状晶とチル晶の割合が99%以上、即ち等軸晶の面積割合が1%以下、好ましくは、等軸晶が全くない状態の鋳造スラブを用ることが好ましい。このような鋳造スラブは、連続鋳造によって製造し、かつその際に電磁攪拌を加えることなく連続鋳造することが好ましいことは上述したとおりである。
【0024】
そして、上記の鋳造組織を有するスラブの均質化熱処理は、該スラブを、下記式で示されるNiの拡散距離DNiが39以上、好ましくは、50以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは、150以上となるような条件で行う。
Ni=(D・t)1/2(μm)
D:拡散係数、
D=D×exp (−Q/RT)
:振動数項=1.63×10/μm・s−1
Q:Ni拡散の活性化エネルギー=2.79×10(J・mol−1
R:気体定数=8.31(J・mol−1・K−1
T:温度(K)
T:焼鈍時間(s)
【0025】
上記DNi関係式は、スラブ中に生じた成分偏析が、その後に行われる鋳造スラブの熱処理によって、スラブ中に拡散することができる拡散距離を示す公知の関係式である。この式に、Niの拡散活性化エネルギーの値、スラブ熱処理時間(ソーキング時間)及び熱処理温度(ソーキング温度)を代入して計算する。
上記均質化熱処理の温度は、好ましくは1100℃〜1375℃の範囲内で行う。
【0026】
上述した各処理を経た鋳造スラブは、次に常法に従ってさらに、熱間圧延の処理、冷間圧延の処理、所望の熱処理等を行って、0.1〜0.2mm厚程度のシャドウマスク材とする。
【0027】
次に、本発明にかかるシャドウマスク用素材を製造するために用いられる合金成分の組成限定の理由について説明する。
Siは、合金の熱膨張率を上げる元素であり、0.3wt%を超えると、熱膨張率が大きくなりすぎてシャドウマスク用材料として適当でない。一方、この量が0.001wt%未満では脱酸力が弱くなって清浄度が低下する。したがって、Siの含有量は0.001〜0.3wt%とした。好ましくは、0.005〜0.1wt%である。
【0028】
Mnは、介在物組成をMnO−SiO系に制御するために、有用な元素であるが、熱膨張率を上昇させる元素でもある。こうした観点から、Mn含有量を、0.01〜0.5wt%と定めた。好ましくは、0.01〜0.3wt%である。
【0029】
Niは、熱膨張率に大きく影響を及ぼす元素であり、200℃では36wt%付近、500℃では42wt%付近で熱膨張率が極小となることが知られている。即ち、30wt%未満、または45wt%超えると熱膨張率が大きくなり過ぎ、用途的にシャドウマスク材やリードフレーム材には適しなくなる。したがって、Niの含有量は30〜45wt%とした。
【0030】
Alは、所定量以上が混入するとAlクラスターを生成してしまう危険性がある。但し、Alの低レベル制御は技術的に困難である。そこで、本発明では不可避的不純物として含まれるAlは、0.005wt%以下と制限する。好ましくは、0.003wt%以下である。このAlは、工業規模での生産においては、合金元素として添加したものではないが、副原料としてのCaOやCaF、あるいは脱酸用Si合金中に含まれるAlあるいはAlに起因して混入するので、副原料等はなるべく、AlおよびAl濃度の低いものを厳選して使用する必要がある。
【0031】
Mgは、非金属介在物組成を熱間圧延にて塑性変形しやすいMnO−SiO−Al−CaO−MgO−FeO系のものに制御するために有用な元素である。しかし、0.001wt%を超えるとノズル閉塞などの操業上の問題を引き起こす。したがって、0.001wt%以下とした。好ましくは、0.0008wt%以下である。
【0032】
Caは、非金属介在物組成を熱間圧延にて塑性変形しやすいMnO−SiO−Al−CaO−MgO−FeO系のものに制御するために有用な元素である。しかし、0.002wt%を超えると、該非金属介在物中のCaO濃度を上昇させ、耐食性に悪影響を与え、製品にする際のエッチング時に、エッチングむらを引き起こす危険性がある。したがって、Caは0.002wt%以下とした。好ましくは、0.0015wt%以下である。
【0033】
Oは、濃度が高いと清浄度を悪化させるとともに、介在物組成をMnO−SiO−Al−CaO−MgO−FeO系のものに制御することができなくなる。また、このO濃度が低いと、介在物組成をMnO−SiO−Al−CaO−MgO−FeO系のものに制御することができなくなるばかりか、表面欠陥の原因である、高融点で硬いAlやMgO・Al系になり、表面欠陥などの間題が発生する。したがって、Oは0.0005〜0.02wt%とした。好ましくは、0.001〜0.01wt%である。
【0034】
さらに、本発明においては、上記成分に加えて、必要に応じてCo、Nbを添加することができる。
Coは、シャドウマスクの強度を向上させるために有用な元素であるとともに、Niと最適範囲で組み合わせると熱膨張率を、36wt%Niよりもさらに小さくすることができる。Coが1〜10wt%を外れると熱膨張率が大きくなり、シャドウマスク用として適さなくなるため、1〜10wt%とした。
Nbは、Coと同様シャドウマスクの強度を向上させるために有用な元素である。さらに適正な範囲では熱膨張率を大きくさせないため、0.001〜1.0wt%とした。
【0035】
【実施例】
表1に示す化学成分のFe−Niの溶湯を、60トン電気炉−AOD−CCという工程を経て鋳造スラブを製造した。その際に精錬条件を制御することにより、介在物の組成を制御し、そして、CCでの製造条件を制御することにより、スラブの鋳造組織を制御した。
こうして得られた鋳造スラブを、熱間圧延して2.5mmの熱延板とし、その後硝酸にて酸洗した。そして、次工程の冷間圧延では加工率を、概ね20〜95%の範囲とし、焼鈍は連続式炉を使用する時は700〜1000℃の範囲で行い、調質圧延は、加工率1〜50%の範囲で行った。このような工程を経て、0.25mmのシャドウマスク素材を製造した。
【0036】
このようにして得られたシャドウマスク用素材のエッチング条件は、塩化第二鉄溶液(45ボーメ・50℃)をスプレーエッチングを1分間施したものである。なお、ここでの鋳造組織の割合は、鋳造方向に対し直角断面で観察される面積割合で表した。
ここで、すじむら品位とは、実際にシャドウマスクのエッチングメーカーでシャドウマスクとした場合にすじむらの程度が実用上問題を生じない程度を下記のようにランク付けしたものをいう。
品位Aは、すじむらが全く観察されない場合を示し、品位Eは、すじむらが非常に強く観察される場合を示し、その間をすじむらの強さにより5段階に分けた。
一般に、すじむらの程度としては、品位D以上が望ましいことが従来材の経験や実績からわかっている。従って、品位D以上のシャドウマスク用素材を製造することが望ましい。
テレビブラウン管用の民生シャドウマスク用にはDNi値を39以上とし、品位Dでよく、また、より高品位の求められるパソコン用などに適用されるカラーディスプレイ用高精細シャドウマスク用にはすじむら品位C以上とするのがよいことがわかっている。
品位C以上とするには、DNi値を50以上になるような条件で熱処理することが好ましく、さらに品位B以上とするにはDNi値を100とし、品位AとするにはDNi値を150um以上になるような条件で熱処理することが好ましいことがわかった。したがって、DNi値は、39以上、好ましくは、50以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは150以上がよいことがわかった。
これらのシャドウマスク素材をエッチングしてすじむら品位を調べた結果を表2に示す。
なお、実操業では、熱処理炉の能力や生産性などを考慮し、所望のDNi値を得るためのスラブ熱処理条件を選択し、任意のエッチング時のすじむら品位を有する製品板を製造することが可能となる。
【0037】
さらに、実施例1〜9および比較例1〜9の熱延板および冷延板につき、以下の調査を行った。その結果を表2にあわせて示す。
▲1▼ 非金属介在物の組成をEDS(エネルギー分散型分析装置)により、鋼塊中介在物を30箇所ずつ定量分析して非金属介在物の組成を調査した。
▲2▼ 清浄度「JIS G0555」にしたがい、光学顕微鏡によって圧延方向に平行な断面を400倍/60視野の条件で観察した。
▲3▼ 表面欠陥数表面の任意の20m部分に庇等の表面欠陥がいくつ存在するかを目視で観察した。
【0038】
表2から明らかなように、非金属介在物組成が、MnO−SiO−Al−CaO−MgO−FeO系で、MnO:5〜45wt%、SiO:10〜65wt%、かつCaO+MgO+FeO:1〜5wt%、またはAlを20wt%以下であり、そして介在物中のMgO・Alスピネル割合を体積比にして総介在物量の50vol%以下にした場合には、クラスターが発生しないため、表面欠陥が無く、清浄度も0.05以下と表面性状に優れた冷延板となった。
これに対し、比較例では、介在物中のCaO+MgO+FeOが50wt%を上回ったので、非金属介在物がクラスター化してしまい、表面欠陥が発生したり、清浄度が0.05を上回ったりして、良好な冷延板が得られなかった。また、介在物中のMgO・Alスピネル割合が体積比にして総介在物量の50%より大きい場合は、クラスターを形成してしまうため、表面欠陥が発生し、良好な表面性状の冷延板が得られなかった。
【0039】
【表1】
Figure 0003584209
【0040】
【表2】
Figure 0003584209
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシャドウマスク用鋳造スラブを用いて製造したシャドウマスク用素材は、エッチングメーカーの要求を十分に満足するすじむらレベルのものが得られる。即ち、エッチング後にまったくすじむらの発生がなく、超高精細用に使用可能なレベルのものが得られる。また、本発明によれば、表面欠陥が発生しない、良好な表面性状のシャドウマスク用の材料が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる鋳造スラブ(a)と従来例(b)との鋳造組織の断面模式図である。

Claims (5)

  1. Si:0.001〜0.3wt%、Mn:0.01〜0.5wt%、Ni:30〜45 wt%、Al:0.005 wt%以下、Mg:0.001wt%以下、Ca:0.002wt%以下、O:0.0005〜0.02wt%を含み、残部 Feおよび不可避的不純物である成分組成を有し、かつCaO+MgO+FeO:1〜50wt%を含むMnO-SiO2-Al2O3-CaO-MgO-FeO系のMnO:5〜45wt%、SiO2:10〜65wt%、Al2O3:20wt%以下の組成をもつ、非金属介在物を含む鋳造スラブであって、鋳造組織の99%以上が柱状晶および/またはチル晶よりなるものであることを特徴とするシャドウマスク素材用スラブ。
  2. 上記構成成分に加えてさらに、Coを1〜10wt%の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載シャドウマスク素材用スラブ。
  3. 上記構成成分に加えてさらに、Nbを0.001〜1.0wt%の範囲内で含有することを特徴とする請求項1または2に記載のシャドウマスク素材用スラブ。
  4. 上記非金属介在物としては、MnO-SiO2-Al2O3-CaO-MgO-FeO系非金属介在物の他に、MgO−Al2O3系スピネルを、体積比にして全非金属介在物量の50%以下含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシャドウマスク素材用スラブ。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のスラブを、下記式で示されるNiの拡散距離DNiが39以上となる条件の均質化熱処理を施すことを特徴とするすじむら品位および表面品質に優れたシャドウマスク素材用スラブの製造方法。
    Ni=(D・t)1/2(μm)
    D:拡散係数、D=D0×exp(−Q/RT)D0:振動数項=1.63×108(μm2・s-1
    Q:Ni拡散の活性化エネルギー=2.79×105(J・mol-1
    R:気体定数=8.31(J・mol-1・K-1
    T:温度(K)
    t:焼鈍時間(s)
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