JP3584140B2 - 計測装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脈波信号や、体動信号などの検出信号を増幅した後、これを演算処理して脈拍数や、体動ピッチなどを求める計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、脈拍数や、体動ピッチなどを計測する計測装置においては、被験者の脈波波形を示す脈波信号や、体動ピッチを示す体動信号などの信号を、センサにより検出して、所定のゲインで増幅した後、FFT処理などの演算処理を実行し、その周波数成分を解析して、脈拍数や体動ピッチなどの情報を計測する構成となっている。
そして、これらの情報は、計時開始からの経過時間に対応付けることで、大きな意味を持つ。例えば、脈拍数や体動ピッチなどでは、ランニング開始からの経過時間に対応付けることで、当該ランニングにおける運動強度や、ペースなどが判る。このため、計測結果が計時開始指示からの経過時間と対応付けて記憶される構成となっている。これにより、記憶した計測結果に基づいて各種の処理、例えば、計測途中や、計測後などにおいて、計測結果の時間的推移を表示するなどの処理が可能となり、トレーニングなどにおいて活用が期待されている。
【0003】
さて、センサによる検出信号のレベルは、周辺環境や、センサ装着状態などに起因して変動するため、一定とはならずに計測毎に変化する。このことは、演算処理において誤差の原因となる。そこで、この種の計測装置においては、検出信号のレベルが演算処理するのに十分なレベル範囲に収まるように、ゲインを設定し直す構成、すなわち、自動的にゲインを制御する構成となっている。さらに、計時開始の指示がなされる前には、現時点の計測結果を表示して、それが正しく行なわれているかをユーザに確認させる構成にもなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記自動ゲイン制御は、通常一定周期毎に行なわれるから、計時開始の前後においても同じ周期で行なわれる。ここで、ゲインの設定周期を長くすると、計時開始前において、適切なゲインに設定するまで時間が必要とするので、経過時間を伴う計測を直ちに開始することができないという問題があった。反面、ゲインの設定周期を短くすると、計時開始後において、ゲインが頻繁に変更されるので、演算処理における誤差が生じやすいという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、計時開始の指示前にあっては、検出信号のゲイン設定を素早く完了する一方、計時開始の指示後にあっては、ゲインの設定変更を少なく済ますことが可能な計測装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、第1の発明は、計測対象の変位を信号として検出する検出手段と、前記検出手段により検出された信号を増幅する増幅手段を備え、前記増幅手段により増幅された信号を演算処理して、所望の計測結果を得る計測装置において、計時開始を指示するための指示手段と、前記増幅手段により増幅された信号の大きさに応じてゲインを設定し直すゲイン設定手段を有し、前記ゲイン設定手段は、前記指示手段による指示が行われる前には第1の周期にてゲインを設定し直す一方、前記指示手段による指示が行われた後には該第1の周期よりも長い第2の周期にてゲインを設定し直す第1の周期指定手段を有することを特徴としている。
【0006】
同様な目的を達成するため、第2の発明は、計測対象の変位を信号として検出する検出手段と、前記検出手段により検出された信号を増幅する増幅手段とを備え、前記増幅手段により増幅された信号を演算処理して、所望の計測結果を得る計測装置において、前記増幅手段により増幅された信号を標本化する標本化手段と、計時開始を指示するための指示手段と、前記増幅手段により増幅された信号の大きさに応じてゲインを設定し直すゲイン設定手段を有し、前記ゲイン設定手段は、前記指示手段による指示が行われる前には第1の標本数の信号の大きさに応じてゲインを設定し直す一方、前記指示手段による指示が行われた後には該第1の標本数よりも多い第2の標本数の信号の大きさに応じてゲインを設定し直す第1の標本数指定手段を有することを特徴としている。
【0007】
(作用)
第1の発明によれば、第1の周期指定手段は、計時開始の指示後にあっては、計時開始の指示前よりも長い周期をゲイン設定手段に指定する。ゲイン設定手段は、指定された周期だけ検出信号の増幅信号を監視し、この監視結果に基づいて、検出信号のゲインを設定する。このため、ゲイン設定は、計時開始の指示前では頻繁に行なわれる一方、計時開始の指示後では、それほど頻繁には行なわれない。
また、第2の発明によれば、第1の標本数指定手段は、計時開始の指示後にあっては、計時開始の指示前よりも多い標本数をゲイン設定手段に指定する。ゲイン設定手段は、指定された標本数だけ、検出信号の増幅した信号の標本を監視し、この監視結果に基づいて、検出信号のゲインを設定する。このため、ゲイン設定は、第1の発明と同様に、計時開始の指示前では頻繁に行なわれる一方、計時開始の指示後では、それほど頻繁には行なわれない。
ここで、ゲインの設定を判断するに際しての周期あるいは標本数を、計時開始の指示前と指示後とでなく、被験者の体動の有無で異ならせるのが望ましい場合がある。
また、ゲインは、本来最大値を考慮して設定すべきであるが、最大値は、突発的ノイズによる影響を受けた可能性があるため、これを判断の対象から除外するのが望ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
<1:第1実施形態>
はじめに、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態にかかる計測装置は、ゲインを設定する際の判断期間について、計時開始(スタート)の指示前よりも指示後の方を長く設定するものである。
【0010】
<1−1:外部構成>
まず、本実施形態の外部構成について説明する。本実施形態にかかる計測装置は、外観的には、図1(a)に示すように、腕時計構造を有する装置本体100、この装置本体に接続されたケーブル101、および、このケーブルの先端側に設けられた脈波検出部110から構成されている。
このうち、装置本体100には、リストバンド102が取り付けられ、その一端が装置本体100の12時方向からユーザの左腕に巻き付いて、その他端が装置本体100の6時方向で固定されている。
また、装置本体100における6時方向の表面側には、コネクタ部103が設けられている。このコネクタ部103には、ケーブル101の端部に設けられたコネクタピース104が着脱自在に取り付けられている。
【0011】
一方、装置本体100の表面には、LCD(液晶表示パネル)からなる表示部120が設けられ、その上側、下側にはそれぞれボタンスイッチ131、132が設けられる。
また、装置本体100の外周部には、ボタンスイッチ133〜137が、装置本体100に対してそれぞれ1時、5時、7時、9時、11時の方向に設けられている。
これらのうち、ボタンスイッチ134が、機能選択を行なうために用いられ、また、ボタンスイッチ131、132が、各種指示を行なうために用いられる。例えば、生体情報を経過時間とともに計測する機能の選択は、ボタンスイッチ134の操作により行なわれ、計時開始の指示は、ボタンスイッチ131のオン操作することで行なわれ、計時終了の指示は、計時中に、再度、ボタンスイッチ131のオン操作することで行なわれる。また、ラップ指示は、ボタンスイッチ132により行なわれる。なお、詳細については後述することする。
【0012】
一方、脈波検出部110は、図1(b)に示すように、青色LEDと受光部とからなるセンサ部111を有し、センサ固定用バンド112によって遮光され、ユーザの左手人指し指の根元から第2指関節までの間に装着されている。そして、センサ部111は、青色LEDから光を照射する一方、その光のうち、毛細血管中のヘモグロビンによって反射したものを受光部により受光し、この受光による出力信号を脈波信号として、ケーブル101を介し装置本体100に出力する。
【0013】
<1−2:機能構成>
次に、本実施形態の機能構成について説明する。図2は、本実施形態にかかる計測装置の機能構成を示すブロック図である。
この図において、生体情報検出部201は、図1における脈波検出部110と、加速度センサからなる体動検出部(ここでは図示せず)とから構成され、本装置を装着した被験者の脈波を示す脈波信号、および、体動状態を示す体動信号をそれぞれアナログ信号で出力する。増幅部202は、生体情報検出部201による各アナログ信号を、所定のゲインでそれぞれ増幅する。
生体情報変換部203は、増幅部202により増幅された各アナログ信号をそれぞれディジタル信号に変換するものであり、生体情報演算部204は、これらのディジタル信号を演算処理し、この結果により、脈拍数と体動ピッチとを生体情報として出力するものである。
したがって、図2では示されないが、生体情報検出部201から生体情報演算部204までには、脈波信号を処理する系統と、体動信号を処理する系統とが存在している。
【0014】
一方、入力部205は、図1におけるボタンスイッチ131〜137による操作状態を検出して、モードの切換や各種の指示などを通知するものである。モード制御部206は、入力部205の通知にしたがって各部を制御する。
ゲイン設定部207は、生体情報変換部203により変換されたディジタル信号(サンプリングデータ)を監視して増幅部202におけるゲインを設定する動作を、計時開始の前後で異なる周期毎に行なうものである。ここで、ゲイン設定部207は、各系統毎にゲインを設定するものとし、ゲイン設定の判断周期を、それぞれ計時開始の指示前にあっては例えば4秒とする一方、計時開始の指示後にあっては例えば20秒として、計時開始の指示前よりも長い周期でゲインを設定する。
【0015】
生体情報記憶部208は、生体情報演算部204により求められた生体情報たる脈拍数および体動ピッチを時系列的に記憶するものである。
表示部120は、図1と同じであり、主に次の表示を行なう。すなわち、表示部120は、現時点において求められた脈波数もしくは体動ピッチの表示と、生体情報記憶部208の記憶内容にしたがった表示とをそれぞれ行なう。
この際、脈拍数もしくは体動ピッチのいずれか一方を表示するかについては、ボタンスイッチ136の操作により予め選択されるものとするが、本来的には、両者を同時に表示する構成でも構わない。
【0016】
<1−3:電気的構成>
次に、上述した機能構成を実際に実現するための構成について説明する。図3は、本実施形態にかかる計測装置の電気的構成を示すブロック図である。
この図において、CPU301は、ROM302に記憶された制御プログラムにしたがって各部の制御や、データの転送を行なうものであり、図2におけるモード制御部206およびゲイン設定部207に相当する。また、RAM303は、生体情報や、CPU301による制御プログラムの実行中に発生する各種のデータを、一時記憶するものであり、図2における生体情報記憶部208に相当する。
発振回路304は、CPU301に制御の基礎となるクロック信号を供給するものであり、計時回路305は、CPU301による制御のもと、時間を計時するものである。
【0017】
一方、増幅回路313は、脈波検出部110のセンサ部111による脈波信号を増幅するものであり、増幅回路314は、加速度センサからなる体動検出部312による体動信号を増幅するものである。すなわち、脈波検出部110および体動検出部312が図2における生体情報検出部201に相当し、増幅回路313および314が増幅部202に相当している。ここで、増幅回路313、314のゲインは、CPU301の指示により設定される。
なお、体動検出部312を、図1および図2において図示しなかったのは、装置本体100に内蔵されるためである。
【0018】
A/D変換回路315、316は、増幅された脈波信号および体動信号をそれぞれディジタル信号に変換するものであり、図2における生体情報変換部203に相当する。
ここで、A/D変換回路315、316のサンプリング周波数は、本実施形態にあっては8Hzであり、脈波波形および体動信号に対して十分高い周波数となっている。したがって、脈波信号および体動信号のサンプリングデータは、4秒間では32点得られ、20秒間では160点得られることとなる。なお、A/D変換回路315、316の量子化は、本実施形態にあってはそれぞれ8ビットで行なわれる。
また、A/D変換回路315、316によるサンプリングデータは、それぞれCPU301に供給され、増幅回路313、314におけるゲイン設定の判断材料にされる。
【0019】
FFT演算回路317は、サンプリングされた脈波信号を4秒毎にFFT(高速フーリエ変換)処理し、周波数分析して、その分析結果たる脈波スペクトラムのうち、例えば、レベルが最大の周波数成分を、脈拍を示す脈拍成分として抽出するとともに、当該脈拍成分を示す周波数を、1分あたりに換算することによって脈拍数を求めるものである。
一方、FFT演算回路318は、サンプリングされた体動信号を4秒毎にFFT処理し、周波数分析して、その分析結果たる体動スペクトラムのうち、例えば、レベルが最大の周波数成分を、体動の基本成分として抽出するとともに、当該基本成分を示す周波数を、1分あたりに換算することによって体動ピッチを求めるものである。
すなわち、FFT演算回路317、318が図2における生体情報演算部204に相当している。
【0020】
<1−3−1:増幅回路の詳細構成>
次に、増幅回路313、314の構成について図4を参照して説明する。なお、両者の構成は同一であるため、ここでは、増幅回路313を例にとって説明する。
この図に示すように、増幅回路313は、脈波検出部110におけるフォトトランジスタにより出力された脈波信号を、一定のゲインで増幅する初段増幅部410と、所定周波数以下の周波数成分を除去するローパスフィルタ420と、CPU301(図3参照)の指示にしたがってゲインを設定する可変ゲイン増幅部430とのカスケード接続により構成される。
このうち、可変ゲイン増幅部430は、CPU301から供給されるデータ線d1〜d4の信号レベルに応じてそれぞれオンオフするアナログスイッチ431〜434を有する。ここで、アナログスイッチ431〜434は、対応するデータ線の信号レベルが「H」レベルとなった場合にオンするものであり、また、CPU301はデータ線d1〜d4のうち、いずれか一つについてのみ、その信号レベルをに「H」レベルとする。したがって、アナログスイッチ431〜434は、いずれかひとつのみがオンされる。
【0021】
ここで、フィードバック抵抗R1〜R5の抵抗値を、例えばR1=40kΩ、R2=40kΩ、R3=80kΩ、R4=160kΩ、R5=320kΩとすると、可変ゲイン増幅部430におけるゲインは、データ線d1が「H」レベルとなって、アナログスイッチ431がオンした場合に2倍となり、データ線d2が「H」レベルとなって、アナログスイッチ432がオンした場合に4倍となり、データ線d3が「H」レベルとなって、アナログスイッチ433がオンした場合に8倍となり、また、データ線d4が「H」レベルとなって、アナログスイッチ434がオンした場合に16倍となる。
なお、各オペアンプは片電源で動作するため、入力信号が電源電圧VDDの半分の電圧VDD/2にプルアップされている。
【0022】
<2:動作>
次に、本実施形態にかかる計測装置の動作について説明する。上述したように、装置本体は、腕時計型構造を有しているため、現在時刻の表示など種々の機能を実行することが可能ではあるが、生体情報、すなわち脈拍数および体動ピッチを計測して表示する機能以外は、本発明と直接関係がないので、その説明を省略することとする。
【0023】
<2−1:計時開始の指示まで>
ユーザが図1におけるボタンスイッチ134を操作して、計測装置に対して生体情報を経過時間とともに計測する機能の実行を指示すると、図3において、当該操作を入力した入力部205がその旨をCPU301に通知する。
この通知を受けたCPU301は、RAM303に対し生体情報を記憶する領域をクリアした後、計時開始の指示があるまで、増幅回路313、314にゲインを設定する処理を、FFT処理演算回路317、318の動作に合わせて4秒毎に行なう。
【0024】
そこで、まず、計時開始の指示前に行なわれるゲイン設定動作について、脈波信号の系統を例にとって説明する。
第1に、CPU301は、A/D変換回路315による脈波信号のサンプリングデータを、4秒間、すなわち、32点を入力し、それらの8ビットデータについて、図5(a)に示すように2SB〜5SBの4ビットを選択して、それぞれRAM303に記憶させる。
第2に、CPU301は、記憶した32点の4ビットデータの値を互いに比較して、その値が2番目に大きいものを抽出する。
第3に、CPU301は、図5(b)に示すテーブルを参照して、抽出した4ビットデータの値に対応するゲインのランクを判断する。例えば、CPU301は、抽出した4ビットデータが「0010」であれば(10進表記では「2」)、ゲインを1ランクアップすべきと判断する。
第4に、CPU301は、現時点において設定されているゲインと、判断したゲインのランクとの双方を考慮して、データ線d1〜d4の信号レベルを定めて、ゲインを設定する。例えば、CPU301は、現時点においてデータ線d2のみの信号レベルを「H」レベルとしていた場合に、ゲインを1ランクアップすべきと判断すると、データ線d3のみの信号レベルを「H」レベルとする。これにより、新たに設定されるゲインは、現時点におけるゲインの2倍となる。
【0025】
以上の第1〜第4の動作を、CPU301は、計時開始の指示前にあっては、図6(a)に示すように、4秒毎に繰り返して行なう。また、CPU301は、かかるゲイン設定を体動信号の系統についても同様に行なう。
このように、ユーザがボタンスイッチ134を操作して、計測装置に対して生体情報を経過時間とともに計測する機能の実行を指示すると、増幅回路313、314のゲインが、4秒毎に設定し直されるため、脈波検出部を装着した直後であっても、脈波信号について、適切なゲインを素早く設定するのが可能となる。また、気温が低いと毛細血管が収縮するので、ヘモグロビンによる反射光が得にくくなって、脈波信号のレベルも小さくなるが、このような状態であっても、本実施形態によれば、計時開始の指示前において脈波信号について、適切なゲインを素早く設定することができる。
【0026】
なお、本実施形態において、A/D変換回路315、316による8ビットのサンプリングデータを4ビットに選択して処理した理由は、CPU301の処理能力が4ビットであるからである。したがって、処理能力の高いものをCPU301に採用するのであれば、8ビットすべてを入力して処理する構成としても良い。
また、本実施形態において、32点のうち、その値が2番目に大きいものを抽出することとした理由は次の通りである。すなわち、ゲインは、本来的に最大値を基準にして設定すべきであるが、最大値は、突発的ノイズによる影響を受けた可能性があるため、除外したのである。
【0027】
さて、CPU301は、ゲインを設定する際に、脈波検出部110が正しく指に装着されていることをユーザに確認すべく、A/D変換回路315によりサンプリングされた脈波信号をFFT演算回路317に処理させて、その時点での脈拍数を表示部120に表示させる。ここで、FFT演算回路317は、4秒毎に処理を行なうので、脈拍数の表示も4秒毎に更新されることとなる。
【0028】
<2−2:計時開始の指示後から計時終了の指示まで>
この後、ユーザがボタンスイッチ131を操作して、経過時間に対応した生体情報の計時開始を指示すると、CPU301は、経過時間に対応した生体情報の計測を開始するとともに、増幅回路313、314にゲインを設定する処理を20秒毎に行なう。
【0029】
そこで、まず、計時開始の指示後に行なわれるゲイン設定動作について、脈波信号の系統を例にとって説明する。
第1に、CPU301は、A/D変換回路315による脈波信号のサンプリングデータを、4秒間、すなわち、32点を入力し、それらの8ビットデータについて、図5(a)に示すように2SB〜5SBの4ビットを選択して、それぞれRAM303に記憶させる。
第2に、CPU301は、記憶した32点の4ビットデータの値を互いに比較して、その値が2番目に大きいものを抽出してRAM303に記憶させる。
この第1および第2の動作を20秒間、すなわち、5回繰り返す。したがって、値が2番目に大きい4ビットデータが5個、20秒を区切った5つの各期間に対応してRAM303に記憶されることとなる。
【0030】
RAM303に4ビットデータを5個記憶すると、第3に、CPU301は、記憶した5個の4ビットデータの値を互いに比較して、その値の大きさを順番にしてソートし、小さいものの3個について平均値を求める。すなわち、値の大きい2個については、平均値の算出から除外する。
第4に、CPU301は、図5(b)に示すテーブルを参照して、求めた平均値に対応するゲインのランクを判断する。例えば、CPU301は、求めた平均値が「13」であれば、ゲインを1ランクダウンすべきと判断する。
第5に、CPU301は、現時点において設定されているゲインと、判断したゲインのランクとの双方を考慮して、データ線d1〜d4の信号レベルを定めてゲインを設定する。例えば、CPU301は、現時点においてデータ線d2のみの信号レベルを「H」レベルとしていた場合に、ゲインを1ランクダウンすべきと判断すると、データ線d1のみの信号レベルを「H」レベルとする。これにより、新たに設定されるゲインは、現時点におけるゲインの1/2倍となる。
以上の第1〜第5の動作を、CPU301は、計時開始の指示後にあっては、図6(b)に示すように、20秒毎に繰り返して行なう。また、CPU301は、このようなゲイン設定を体動信号の系統についても同様に行なう。
【0031】
このように、ユーザがボタンスイッチ131を操作して、経過時間に対応した生体情報の計時開始を指示すると、増幅回路313、314のゲインが、20秒毎に設定し直される。このため、ゲインはさほど頻繁には変更されないので、FFT演算処理において誤差が生じにくくなる。
なお、本実施形態において、平均値の算出において、値の大きい2個のデータを除外した理由は次の通りである。すなわち、値の大きなデータは恣意的な要因による可能性が高いためであり、また、処理能力の低いCPU301において、演算の負担を減らすためでもある。
【0032】
CPU301は、このようなゲイン設定を行なうとともに、次のような計測動作も行なう。
すなわち、CPU301は、計時開始の指示が行なわれると、計時回路305に対し、計時開始からの経過時間を計時させて、その結果を表示部120に表示させる一方、FFT演算回路317、318に対し、A/D変換回路315、316を介した脈波信号および体動信号を、それぞれ演算処理させる。そして、CPU301は、得られた生体情報たる脈拍数および体動ピッチをRAM303に逐次記憶するとともに、その生体情報のうち、脈拍数あるいは体動ピッチのいずれか選択された一方を、表示部120に表示させる。
ここで、FFT演算回路317、318は、4秒毎に生体情報を求めるから、RAM303には、生体情報が4秒毎に記憶されるとともに、表示部120における表示が4秒毎に更新されることになる。
【0033】
さて、計時開始後、ユーザがボタンスイッチ132を操作してラップ指示した場合、CPU301は、次の第1〜第6の制御を行なう。
すなわち、第1に、CPU301は、当該ラップ指示がなされたときの経過時間(スプリットタイム)を計時回路305から求めて、これを一定期間だけ(例えば10秒だけ)、現時点における経過時間よりも優先させて表示部120に表示させる。
第2に、CPU301は、計時回路305によって計時された、当該ラップ指示の直前のラップ指示における経過時間と当該ラップ指示における経過時間との差を演算して、当該ラップ区間のラップタイムを求め、これを当該ラップ回数とともに、表示部120に表示させる。
第3に、CPU301は、当該ラップ区間においてRAM303に記憶された、脈拍数および体動ピッチをすべて読み出し、例えば、それらの平均値を処理結果として求める。
第4に、CPU301は、処理結果たる生体情報のうち、脈拍数あるいは体動ピッチのいずれか選択された一方を、表示部120に、一定期間だけ(例えば10秒だけ)、現時点における4秒毎の生体情報よりも優先させて表示させる。
第5に、CPU301は、処理結果たる生体情報を、当該ラップタイムと当該ラップ回数とに対応付けてRAM303に記憶させる。
第6に、CPU301は、ラップタイムとラップ回数とに対応付けられた生体情報を、RAM303からすべて読み出すとともに、ラップ回数をx軸に、処理結果たる生体情報のうち、脈拍数あるいは体動ピッチのいずれか選択された一方の値をy軸にとり、その棒グラフの表示を、表示部120に行なわせる。これにより、ラップ区間における生体情報の平均値がラップ毎にどのように推移しているかが表示される。
このような第1〜第6の制御を、CPU301はラップ指示がなされる毎に行なう。
【0034】
そして、ユーザが計時中において、ボタンスイッチ131を再操作して計時停止を指示すると、CPU301は、計時開始から計時停止までの経過時間を計時回路305により求め、これを表示部120に表示させる。この状態においてRAM303には、処理結果たる生体情報が、当該ラップタイムと当該ラップ回数とに対応付けられて、ラップ指示がなされた分だけ、記憶されていることになる。
なお、計時停止を指示した後、ユーザがボタンスイッチ131を再び操作すると、CPU301は、計時を再開する。再開する場合、CPU301は、生体情報を前回に引き続いてRAM303に記憶させる。
【0035】
<2−3:計測後>
このように、計時中においては(特に、ラップ指示が行なわれた直後においては)、表示部120において各種の表示が行なわれる。さらに、本実施形態にあっては、計測後においても、記憶された生体情報を呼び出すことができる。この機能について以下簡単に説明する。
ユーザが図1におけるボタンスイッチ134を操作して、計測装置に対し、記憶された生体情報を読み出す機能の実行を指示すると、図3において、当該操作を入力した入力部205がその旨をCPU301に通知する。
この通知を受けたCPU301は、ラップタイムとラップ回数とに対応付けられた処理結果たる生体情報を、RAM303に記憶されたすべて読み出し、ラップ回数をx軸に、生体情報のうち、脈拍数あるいは体動ピッチのいずれか選択された一方の値をy軸にとり、その棒グラフの表示を、表示部120に行なわせる。これにより、ラップ区間における生体情報の平均値がラップ毎にどのように推移しているかが表示される。
【0036】
さらに、ユーザがボタンスイッチ131、132を操作して、特定のラップ区間における生体情報の呼び出し指示を行なうと、CPU301は、そのラップ区間における生体情報を、ラップタイムとともに読み出し、当該ラップタイムおよびラップ回数を表示部120に表示させ、その生体情報にかかる脈拍数あるいは体動ピッチのいずれか選択された一方の値を表示部120に表示させる。
【0037】
このように、本実施形態によれば、生体情報を計測して様々表示が可能であることにくわえて、ゲインの設定間隔が、計時開始の指示前にあっては4秒毎に設定されるので、ゲイン設定を素早く完了することができる一方、計時開始の指示後にあっては20秒毎に設定されるので、演算処理における誤差の影響を少なくすること可能となる。
【0038】
なお、本実施形態にあっては、ゲインの設定に、A/D変換回路によるサンプリングデータを用いたが、本発明はこれに限られず、変換前のアナログ信号をそのものを用いても良い。この場合、ピークホールド回路によりホールドされた最大値や、ローパスフィルタにより平滑化された信号などを基準にゲイン設定を行なうことが考えられる。
【0039】
<3:第2実施形態>
上述した第1実施形態は、ゲイン設定を、計時開始の前後において周期を異ならせて判断するものであったが、この第2実施形態は、標本数を異ならせて判断するものである。なお、この第2実施形態にかかる構成は、図1〜図4に示した第1実施形態と同一であるため、その説明を省略して、動作の相違点を中心にして以下説明する。
【0040】
まず、計時開始の指示前において、CPU301は、増幅回路313、314にゲインを設定する処理を、A/D変換回路315、316によるサンプリングデータがそれぞれ32点となる毎に、FFT処理演算回路317、318の動作に合わせて行なう。
ここで、CPU301は、32点のサンプリングデータを、第1実施形態と同様に処理する。このため、第2実施形態にかかるCPU301は、計時開始の指示前にあっては、図7(a)に示すように、ゲインの設定を、32点毎すなわち4秒毎に繰り返して行なうため、第1実施形態と実質的に同じ動作となる。
【0041】
次に、ユーザがボタンスイッチ131を操作して、経過時間に対応した生体情報の計時開始を指示すると、CPU301は、経過時間に対応した生体情報の計測を開始する。
この際、CPU301は、次の動作を4秒毎に繰り返し行なう。
すなわち、第1に、CPU301は、A/D変換回路315による脈波信号のサンプリングデータを、32点(すなわち4秒間)入力し、それらの8ビットデータについて、図5(a)に示すように2SB〜5SBの4ビットを選択して、それぞれRAM303に記憶させる。
第2に、CPU301は、記憶した32点の4ビットデータの値を互いに比較し、その値が2番目に大きいものを抽出してRAM303に記憶させる。すなわち、4秒毎に当該期間で値が2番目のサンプルデータが記憶されることとなる。第3に、CPU301は、現時点から過去20秒の期間において抽出された5点のサンプルデータの値を互いに比較し、その値の大きさを順番にしてソートして、小さいものの3個について平均値を求める。したがって、値の大きい2個については、平均値の算出から除外されるが、実質的に、過去160点のサンプルデータを考慮することになる。
第4に、CPU301は、第1実施形態と同様に、図5(b)に示すテーブルを参照して、求めた平均値の値に対応するゲインのランクを判断する。
第5に、CPU301は、第1実施形態と同様に、現時点において設定されているゲインと、判断したゲインのランクとの双方を考慮して、データ線d1〜d4の信号レベルを定めてゲインを設定する。
【0042】
以上の第1〜第5の動作を、CPU301は、計時開始の指示後にあっては、図7(b)に示すように、4秒毎に繰り返して行なう。また、CPU301は、このようなゲイン設定を体動信号の系統についても同様に行なう。
結局、第2実施形態では、計時開始の指示後におけるゲインの設定が、計時開始の指示前と同じ4秒毎に行なわれるが、判断の基礎となるサンプルデータが、計時開始の指示前においては32点(すなわち4秒)であるのに対し、計時開始の指示後においては160点(すなわち20秒)である。さらに、計時開始の指示後においてゲイン設定の判断の基礎となるサンプルデータは、図7(b)に示すように、前回基礎となったサンプルデータと順次重複してシフトしている。したがって、ゲインの設定が行なわれる間隔は、計時開始の指示の前後で同じであるが、実際にゲインが変更される頻度は、計時開始の指示前より指示後の方が低い、といえる。すなわち、計時開始の指示後では、ゲインの設定が行なわれても、それは、現状のゲインを保つ設定である場合が高いのである。
なお、第2実施形態においては、生体情報たる脈拍数および体動ピッチの表示、記憶処理については、第1実施形態と同様である。
【0043】
<4:第3実施形態>
上述した第1および第2実施形態は、ゲインの設定条件を、計時開始の指示の前後で異ならせたものであったが、本発明は、これに限られない。例えば、脈拍数と体動ピッチとの関係がより重要視されれば、計時開始の指示よりも、ユーザが運動しているか否かによって、ゲインの設定条件を異ならせる構成が望ましい場合がある。
そこで、この第3実施形態にあっては、実際にユーザが運動を開始すれば、計測条件を変更することとした。なお、この第3実施形態にかかる構成は、図1〜図4に示した第1実施形態と同一であるため、その説明を省略して、動作の相違点を中心にして以下説明する。
【0044】
まず、CPU301は、FFT演算回路318の処理結果から、ユーザが運動を開始しているか否かを判断する。詳細には、CPU301は、分析結果たる体動スペクトラムにおいて、いずれかの周波数成分のレベルが一定のしきい値以下であれば、ユーザが安静状態にあると判別する一方、しきい値以上であれば、ユーザが運動状態にあると判別する。
ここで、CPU301は、安静状態にあると判別すると、第1実施形態において計時開始の指示前と同様にして、ゲインの設定を4秒毎に行なう一方、運動状態にあると判別すると、第1実施形態において計時開始の指示後と同様にして、ゲインの設定を20秒毎に行なう。
すなわち、この第3実施形態においては、ゲイン設定の判断周期を、計時開始の指示ではなく、体動の有無で異ならせるようにしたものである。
【0045】
なお、この第3実施形態にあっては、ゲインの設定を第2実施形態のように行なうことも考えられる。すなわち、ゲインの設定間隔を、体動の有無で同じとし、かつ、体動が有りの場合においてゲイン設定の判断基礎となるサンプルデータの個数を、体動が無い場合よりも多くすることが考えられる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、次のような効果がある。
ゲイン設定は、計時開始の指示前では頻繁に行なわれるので、ゲインの設定を素早く完了することが可能となる一方、計時開始の指示後では、それほど頻繁には行なわれないので、ゲインの変更を少なく済ますことが可能となる(請求項1、3、5)。
被験者が安静状態にあれば、ゲインの設定を素早く完了することが可能となる一方、運動状態にあれば、ゲインの変更を少なく済ますことが可能となる(請求項2、4)。
突発的ノイズによる影響を受けた可能性のある最大値を判断の対象から除外してゲインを設定することが可能となる(請求項6)。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態にかかる計測装置の外部構成を示す図であり、(b)は、同計測装置における脈波検出部の構成を示す図である。
【図2】同実施形態における機能構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態における電気的構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態における増幅回路の詳細構成を示す回路図である。
【図5】(a)および(b)は、それぞれ同実施形態におけるゲイン設定を説明するための図である。
【図6】(a)は、同実施形態において、計時開始の指示前におけるゲイン設定動作を説明するための図であり、(b)は、同実施形態において、計時開始の指示後におけるゲイン設定動作を説明するための図である。
【図7】(a)は、本発明の第2実施形態において、計時開始の指示前におけるゲイン設定動作を説明するための図であり、(b)は、同実施形態において、計時開始の指示後におけるゲイン設定動作を説明するための図である。
【符号の説明】
110……脈波検出部、312……体動検出部(いずれも検出手段)、
313、314……増幅回路(増幅手段)、
315、316……A/D変換回路(標本化手段)、
205……入力部(指示手段)、
301……CPU(第1、第2の周期指定手段、ゲイン設定手段、第1、第2の標本数指定手段)

Claims (6)

  1. 計測対象の変位を信号として検出する検出手段と、
    前記検出手段により検出された信号を増幅する増幅手段を備え、
    前記増幅手段により増幅された信号を演算処理して、所望の計測結果を得る計測装置において、
    計時開始を指示するための指示手段と、
    前記増幅手段により増幅された信号の大きさに応じてゲインを設定し直すゲイン設定手段を有し、
    前記ゲイン設定手段は、前記指示手段による指示が行われる前には第1の周期にてゲインを設定し直す一方、前記指示手段による指示が行われた後には該第1の周期よりも長い第2の周期にてゲインを設定し直す第1の周期指定手段を有する
    ことを特徴とする計測装置。
  2. 請求項1記載の計測装置において、
    被験者の体動を検出する体動検出手段と、
    前記体動検出手段の検出結果により体動の有無を判別する判別手段と、
    前記判別手段が体動ありと判別した場合に、体動なしと判別した場合よりも長い周期を、前記第1の周期指定手段に換えて、前記ゲイン設定手段に対して指定する第2の周期指定手段と
    を備えることを特徴とする計測装置。
  3. 計測対象の変位を信号として検出する検出手段と、
    前記検出手段により検出された信号を増幅する増幅手段とを備え、
    前記増幅手段により増幅された信号を演算処理して、所望の計測結果を得る計測装置において、
    前記増幅手段により増幅された信号を標本化する標本化手段と、
    計時開始を指示するための指示手段と、
    前記増幅手段により増幅された信号の大きさに応じてゲインを設定し直すゲイン設定手段を有し、
    前記ゲイン設定手段は、前記指示手段による指示が行われる前には第1の標本数の信号の大きさに応じてゲインを設定し直す一方、前記指示手段による指示が行われた後には該第1の標本数よりも多い第2の標本数の信号の大きさに応じてゲインを設定し直す第1の標本数指定手段を有する
    ことを特徴とする計測装置。
  4. 請求項3記載の計測装置において、
    被験者の体動を検出する体動検出手段と、
    前記体動検出手段の検出結果により体動の有無を判別する判別手段と、
    前記判別手段が体動ありと判別した場合に、体動なしと判別した場合よりも多い標本数を、前記第1の標本数指定手段に換えて、前記ゲイン設定手段に対して指定する第2の標本数指定手段と
    を備えることを特徴とする計測装置。
  5. 前記ゲイン設定手段は、今回ゲインを設定する際の標本を、前回ゲインを設定する際の標本の一部と重複して、監視することを特徴とする請求項3または4記載の計測装置。
  6. 前記ゲイン設定手段は、指定された周期あるいは標本数における2番目に大きい信号の大きさに応じてゲインを設定し直すことを特徴とする請求項1または3記載の計測装置。
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