JP3584030B2 - 魚類の養殖装置およびその方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、魚、特に回遊魚の人工養殖にあって、魚に不要なストレスを与えることなく優良な品質に養殖して、安定的な市場提供を行うことができる魚類の養殖装置およびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
我が国にとって漁業資源は、その食材等にあって日常社会の中で、大きな比重を占めているもので、特に、マグロやカジキなどは鮮魚としての利用・消費が諸外国と比べて極めて多いものである。
しかしながら、漁獲される天然のマグロは、その資源維持や有効利用のために国際的な資源管理が図られているので、国内にあって十分な利用・消費がなされておらず、また、その供給量の不足から、市場においては高値で取引される結果となるものであった。
【0003】
特に、鯖科回遊魚の養殖にあたっては、重要なことは海水や餌の状態あるいは十分な酸素取り入れのための回遊できる場所などが上げられ、しかも、元来神経質なことから養殖環境も考慮しなければならない。
また、養殖中に生ずる天災などの被害もあらかじめ想定しなければならず、自ずとその養殖生け簀は、体長150cmから最大で300cmとなる巨大魚を回遊養殖させるためには、最低でも半径50mの大きさを必要とするもので、養殖に際しての前記悪条件に加え、更には、既存の漁場との関係から希望する設置場所は十分に得られなのが現状であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記した問題点を解決するためになされたもので、螺旋状に設けた水槽内へその一側部から水を定められた流速となるように供給しつつ、水槽の他側部より排水した該水槽内に一連の水流路を形成させた状態において、水槽の一側部から魚を投入し、一連の水流路内を前記魚の遊泳速度に合わせて水槽内の水の流速を調整させ、該水槽内においてこの水槽に対する魚の遊泳移動量を抑えさせた状態で該魚を養殖させることにより、魚、特に回遊魚の人工養殖にあって、魚に不要なストレスを与えることなく優良な品質に養殖して、安定的な市場提供を行うことができる魚類の養殖装置およびその方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するための本発明の手段は、内部に魚類を収容する水槽と、水槽より上部に設けられるタンクと、該水槽の一側部へ接続させた前記魚類が生息し得る水を前記タンクから導入する供給手段と、前記水槽の他側部に接続させて該水槽内の水を排出する排水手段と、前記水槽の適所に設けた魚の投入部および魚の取出部とを有する魚類の養殖装置にあって、前記水槽は、その内部を前記一側部から前記他側部にわたって一連となる空洞の筒状に形成して、前記一側部から前記他側部に至るまでを螺旋状となるように設けてあり、前記内部を前記供給手段と前記排水手段とによって前記水を定められた流速となるように充満させた魚類の養殖装置の構成にある。
【0006】
水槽の適所に該水槽内の環境を検出する検出手段を一個または複数個配設させる。
【0007】
螺旋状に設けた水槽内へ前記水槽より上部に設けられるタンクから前記水槽の一側部水を定められた流速となるように供給しつつ、前記水槽の他側部より排水した該水槽内に一連の水流路を形成させた状態において、前記水槽の一側部から魚を投入し、前記一連の水流路内を前記魚の遊泳速度に合わせて前記水槽内の水の流速を調整させ、該水槽内においてこの水槽に対する前記魚の遊泳移動量を抑えさせた状態で該魚を養殖させる魚類の養殖方法にある。
【0008】
水槽内へ、養殖する多量の魚とこの魚が遊泳し得る水とを供給して収容し、この水槽内の水に対して定められた流速の旋回流を与えつつ、魚の遊泳速度に合わせて水槽内の水の旋回流速を調整させ、該水槽内においてこの水槽に対する魚の遊泳移動量を抑えさせた状態で該魚を養殖させる魚類の養殖方法にある。
【0009】
【実施例】
次に、本発明に関する魚類の養殖装置およびその方法の実施の一例を図面に基づいて説明する。
図1および図5においてAは第一の実施例の魚類の養殖装置で、支持体1と、水槽2と、供給手段3と、排水手段4と、魚bの投入部5および魚bの取出部6とにより基本的に構成される。
なお、この魚類の養殖装置Aにあって、養殖する魚bの種類は、例えば、マグロ類やブリ,カツオなど回遊魚がより適している。
また、該魚類の養殖装置Aの設置にあっては、海や湖などの水中であっても構わないが、好ましくは、潮流や波などの影響を受けず、かつ、管理や作業等が良好に行える陸地7上に設けるものであり、更には、魚bが海水魚であれば、海沿岸に付近の陸地7に設けることが好ましい。
【0010】
そして、前記した支持体1は、堅牢に構成されていて、後記する水槽2を陸地7上へ安定的に支持させるもので、水槽2を包持させる筒状に形成したり、枠組み状に形成したりする。
【0011】
前記した水槽2は、支持体1へ取り付けて、その内部に魚b類を収容して、一定の期間該魚b類を人工養殖するいわゆる、生け簀となるもので、内部が透視できる透明や半透明に形成すれば、魚bの飼育状態が外部から把握できたり、太陽光の照射により光合成などによる水質維持が図れるもので、この透明や半透明の構成は、水槽2の一部や全部に設けることができ、水槽2における底部のみに設けることのできる。更には、水槽2の適所に、間隔的にのぞき窓(図示せず)を設けてもよい。
なお、この水槽2内に供給する水は、人工養殖する魚bが海水魚であれば海水を用い、淡水魚であれば淡水を用いることはもちろんのことである。また、海水の場合は、海洋深層水を用いることもある。
【0012】
この水槽2は、その内部を一側部(投入部5)から他側部(取出部6)にわたって一連となる空洞(水の収容部となる)の筒状に形成して、図3および図4に示すように、該水槽2の一側部(投入部5)から他側部(取出部6)に至るまでを、その平面形状略円形(図2参照)となる螺旋状となるように複数巻きに、例えば、4〜5重巻きに設けてあり、水槽2の内部を後記する供給手段3と後記する排水手段4とによって前記水の流動速度を定められた流速となるように充満させておく。なお、この複数巻きの螺旋状態は、図3に示すように、そのピッチに隙間を生ずることなく接触させて形成することが好ましい。
【0013】
なお、該水槽2の一側部(投入部5)から他側部(取出部6)に至るまで配置は、この一側部(投入部5)から他側部(取出部6)が縦方向となるように設けられるもので、これにより、前記水は、その縦方向に付けられた落差により重力落下させることができ、該水に流動流速が与えられる。
【0014】
更に、この水槽2は、水の流動する方向に対して略直交するように断面したその断面形状が、円形や角形などに形成させるもので、その内径は、養殖する魚bの大きさにもよるが、例えば、2m〜6m程度に、好ましくは、2.5m〜3.2mに形成する。
また、該水槽2は、例えば、透明強化プラスチック製により形成して、外部から内部の状態が目視するできるようにしてあり、更に、内部からは外部が見えないあるいは見えにくい構成にしてある。
【0015】
前記した供給手段3は、水槽2の一側部(投入部5を利用するかあるいは水槽2の他の適所)へ接続させて、魚b類が生息し得る前記水を導入するもので、海などの水を濾過部材を備えたポンプ3aにより取り入れて一旦貯水タンク3bに蓄溜し、水槽2の一側部(投入部5)から他側部(取出部6)に至るまでを縦向き配置にすることで、前記水が水槽2内を流動する際に、その落差による自重落下によって所定の流速が得られる。
更には、水の供給路に一基または複数基を設けた水流発生部材等の送水手段9により強制的に定められた水の流速を与えることもできる。
なお、前記した貯水タンク3bは、付設したソーラヒーティング等からなる水温調整部材(図示せず)により常に内部の水温が適温に保たれており、タンクの容積は、その外壁などが伸縮することで変化・調整させることができる。また、この貯水タンク3bは水槽2の上部に設けることで、該貯水タンク3b内に収容した水の重力が水槽2内へ導入された際に、該水の流動流速を与える推進源とにもなる。
【0016】
この水槽2内を流動させる水の流速は、魚bが持つその遊泳速度とほぼ同速に設定することが好ましいもので、これにより、魚bは水槽2内において水の流速と魚bの前記遊泳速度とが相殺されて、見かけ上水槽2内のある位置を略停止した状態となって、該魚bは、水槽2内の水路の長い距離を無駄に遊泳することがなくその魚bの生息を維持し生長を続けることができ、そのため、水槽2の内壁に当たったり、他の魚bと干渉する不都合が解消され、魚bに与えるストレスや魚体損傷をできるだけ減少させることができる。
すなわち、水は水槽2の一側部(投入部5)から他側部(取出部6)へ向かって流動し、一方、一側部(投入部5)に設けた可動式の保護ネット2bを通過させて水槽2内に収容された魚bは、この水の流れに逆らって泳ごうとする性質があるため、前記水の流速を魚bの遊泳速度に合わせてやればよいことになる。
【0017】
なお、この水槽2は、図1においては1基のみを示しているが、複数基を並列的に接続させてもよく、養殖魚bの育成状況に合わせて、他の水槽2へ移し換えることができ、所定に成長したとき出荷準備を始める。
【0018】
前記した排水手段4は、水槽2の他側部(取出部6)に接続させて該水槽2内の水を排出するもので、基本的には、供給手段3により供給された水量と同量を排出するものであって、その出口管に付設した自動または手動式のバルブ等の排水調整手段8によって制御される。
なお、水の排出の際に、水槽2内の養殖中の魚bが水と一緒に排出されないように、所定メッシュの網体(図示せず)を設けることもある。
【0019】
前記した魚bの投入部5および魚bの取出部6は、水槽2の適所に、例えば、水槽2の始端部である一側部に投入部5を設け、水槽2の終端部である他側部に取出部6を設けてある。
このうち、投入部5は、水の供給手段3の供給口と兼用することができるものであるが、図3に示すように、水槽2の流路の適所に設けることもできる。
また、魚bの投入にあっては、例えば、稚魚や幼魚である未養殖の魚bを収容させた予備槽10の搬入部11を、水のろ過手段20を介してこの投入部5に接続してある。
該予備槽10は、前記水を収容してあって、魚bの回遊速度に合わせた旋回流をこの水に与えてある。魚bの水槽2への投入にあっては、予備槽10内の水と共に行うと良い。
更に、この予備層10は、複数基の槽を水槽2の近傍において該水槽と接続するように並列的に設置して、順次、魚bの生育度合いに応じて、水槽2側へ向かって移し換えたり、水槽2の容積に対応するようにこの複数の予備層10に分散収容させておくものである。
【0020】
また、魚bの取出部6は、該魚bの取り出しにあって、水槽2内の水の排出と共に行うことができるもので、必要に応じて、取出部6の出口管に付設したバルブ8を全開放し、この取出部6に接続した回収槽12へ送り込む。
【0021】
この回収槽12は、図5に示すように、水槽2内の水を回収して該水をこの回収槽12内に収容してあって、魚bの遊泳速度に合わせた旋回流Mをこの水に与えてあるもので、水槽2の容量に合わせて、一基あるいは複数基並列的に設けられていて、魚bの出荷状況に合わせて、一時、該魚bを待機・蓄溜させておく。なお、魚bの出荷にあっては、該回収槽12の適所に設けた搬出部13から取り出され、運搬車輌等の搬送手段34へ積み込む。なお、稚魚・幼魚bが取出部6から万一流出しても、この回収槽12において回収され、再び水槽2へ投入することができる。
搬出部13からの取り出しにあっては、魚bが赤色の光に向かっていく習性を利用して、この搬出部13の適所あるいはその近傍における適所に、赤色照明体13aを付設しておく、または、この搬出部13付近から搬出ラインにおいて適宜赤色照明することで、魚bの回収槽12からの取り出しが容易となる。
【0022】
また、該回収槽12の適所には、過剰の水を排出する排出部14を設けてあって、この排出口には、魚bが流れ出ないように防護ネット14aを張設してあって、配管15を介して一旦、ろ過手段16へ送り込む。
このろ過手段16では、水槽2内において発生した異物や汚物、例えば、魚bの排泄物や魚bの餌の残り物などを水槽2内から回収した水中より除去し、清浄化した後、使用水が海水であれば海17へ、淡水であれば河川や海17へ切り換え部材18を経て排出する。
また、必要に応じて、切り換え部材18を経て配管19により予備層10へ戻すことで、水の循環使用をすることができる。
【0023】
なお、図1および図3,図4において21は、魚bへ餌を与える給餌手段で、水槽2の適所において該水槽2内の魚bに対して万遍なく餌が行き渡るように、間隔的に複数箇所にわたって設けてある。
この給餌手段21は、図示しない管理室からや他の制御手段などの操作によって、定められた時間と定められた量の餌を自動的に供給するように構成することが好ましい。
【0024】
更に、水槽2の適所において間隔的に多数箇所に、内部の水および魚bに対して酸素を供給する供給部22を設けてあって、配管23を介して酸素供給源24からの酸素が水槽2内へ送り込まれる。この酸素供給動作は、水槽2内の水質状態(水温も含む)を逐次検査し、この検査データに基づいて、図示しない管理室からや他の制御手段などにより適宜制御される。
【0025】
図1〜図3において25は検出手段で、水槽2内に収容された魚bの移動流速闇図の流動速度の検出をはじめ、魚の位置や水温、水質、酸素濃度、魚類の体温などの水槽2内のさまざまな生息環境を検出するもので、水槽2の適所において一個または複数個配設させる。この検出された各種情報は、図示しない管理室に送信され、該管理室において一元的に制御される。また、カメラを設置してその画像を前記管理室に送信してモニターなどで集中的に把握することができる。
すなわち、この検出手段25による魚bの移動流速の検出にあっては、所定の流速を有する水流に対して逆らうように遊泳(魚bの持つ性質)する水槽2内の魚bが、この水流に対して負けて下流側へ流されるのであれば、供給手段3による水の供給流速を遅く(弱く)調整し、魚bが、前記水流に抗して上流側へ溯るのであれば、供給手段3による水の供給流速を早く(強く)調整することで、水槽2内の魚bは、常に水槽2の同一位置付近を遊泳することができて、水槽2の内壁への体当たりや他の受けるストレスによる養殖された魚体の品質低下を防止することができる。
【0026】
したがって、前述のように構成される本発明実施例の魚類の養殖装置Aおよびその方法は以下に述べる作用を奏する。
例えば、マグロの稚魚bを、螺旋状に設けた水槽2内へその上部に設けられた一側部である投入部5から海水を定められた流速で一方向(図2において矢印Mに示す方向)となるように供給する。このとき、供給する海水は、あらかじめ大型水タンクに蓄溜させた海水あるいは海洋深層水を用いたり、海中から直接取り入れたりする。また、海水の流速は、適宜、送水手段9によりその速遅を調整可能とすることで、更には、排水手段4との併用により、魚bの生育によって変化する該魚bの遊泳速度に適宜対応させる。
【0027】
また、水槽2の他側部である取出部6より連続状態で排水してあって、該水槽2内に一連の水が流動する水流路を形成させた状態において、この水槽2の一側部(投入部5)から、例えば、大量のマグロの稚魚bを投入し、前記一連の水流路内を魚bの遊泳速度に合わせて、前記水槽内の水の流速を調整(例えば、稚魚bの遊泳速度≒海水の流動速度 となるように調整)させる。
【0028】
すると、大量に投入された稚魚bは、該水槽2内においてその全体へ徐々にばらけて、この水槽2の全体にわたって互いに干渉しない間隔で供給された流速のある海水に逆らって(図2において矢印Nの方向へ)自力で遊泳する。
このとき、魚bは、自分の遊泳速度と水槽2を流動する海水速度とがほぼ同じであるため、各魚bが水槽2内において、ばらけて移動した現在の位置とほぼ同じ位置を遊泳し続けるので、実質的、この水槽2の水流路に対する魚bの遊泳移動量がほとんど無く、他の魚bに干渉したり、水槽2の内壁などに衝突する、あるいは、前記干渉や衝突を回避するためにこれら魚bに生ずるストレスが可及的減少させることができて、該魚bが良好な状態で成長が促進され、結果、優良品となる魚bを短期間で養殖させることができる。
【0029】
また、水槽2の適所において多数散在させた検出手段25により、絶えず、水槽2内を遊泳する魚b全体に対して万遍なくその遊泳速度を検出しているため、該魚bの遊泳速度に変化を生ずれば、海水の送水手段9や排水調整手段8を任意に操作して、できるだけ、水槽2に対する魚bの遊泳移動量がほとんど無いように調整する。
【0030】
更に、水槽2内の魚bたちには、水槽2の適所において多数散在させた給餌手段21により、定期的にあるいは間欠的に必要量の餌が与えられるもので、魚bは遊泳しながら確実に餌を補食することができ、ムラのない成長が望める。
【0031】
そして、水槽2にあって、魚bたちが排泄した排泄物や食べ残した餌あるいは他の異物は、この水槽2内の水流路に絶えず海水が流動し、かつ、常に新しく養分を含んだ海水が供給されるため、直ちに水槽2の終端部における取出部6の排水手段から排出され、水槽2内は前記異物などによって汚染させることなく、魚bの生育に良好な清浄な状態に維持される。
【0032】
なお、取出部6から排出された前記異物などは、ろ過手段16において、海水と前記異物などとが分離され、前記異物などは別途他の処理手段(図示せず)において処理され、有機肥料などに再利用されると共に、残りの清浄となった海水は、海に戻したり、再び、貯水タンク3bを経て水槽2への供給水として利用する。
【0033】
こうして、一定の大きさや重量に成長した魚bは、水槽2から取り出されるもので、この場合、投入部5からの海水の供給を停止することで、魚bは、取出部6から次から次へと回収槽12へ回収される。この回収槽12において出荷調整等がなされ、適宜、搬送手段14によって市場へ出荷される。
【0034】
したがって、本発明実施例によれば、従来から養殖が困難とされていたマグロであっても、良好な歩留まりにより、良質のマグロが短期間に大量に養殖することができる。
【0035】
図6および図7においてAは、第二の実施例の魚類の養殖装置で、養殖する多量の魚bとこの魚bが遊泳し得る水とを収容する水槽30と、その水槽30内の水に対して定められた一方向の旋回流を与える作動手段31とを有する。
【0036】
前記した水槽30は、その平面形状が略円形に形成することが前記水の旋回流を生じやすいもので、所定の深さを有する。
【0037】
前記した作動手段31は、図6に示すように、送水ポンプ等の送水手段を用いて、略円形の水槽30の中心より偏心した位置に、すなわち、水槽30の内壁に対して接線状に水の投入部32を設けて、この投入部32からの圧力水を水槽30内へ供給することで、水槽30の内壁に沿った旋回流が生ずる。
【0038】
更に、この作動手段31は、図7に示すように、水槽30内に旋回流を生じさせる旋回翼を有する回転羽根部材を設けてもよく、基本的には、水槽30内に収容された魚bの遊泳速度に見合う旋回流を発生させるものであれば、前記以外にも任意の手段が選定し得る。
【0039】
また、水槽30の適所に水槽30内の水および魚bを水槽30外へ排出する取出部33を設けてあるもので、水と魚bが取り出しやすい位置であれば水槽30の任意の位置に設けられる。また、図6に示すような、送水ポンプ等の送水手段式の作動手段31を用いた場合には、水槽30の底部中心部に設けることで、水槽30内の水の排水に際して、水槽30内の水に渦巻き流が生じて、一層、前記水の旋回流の発生を助長させることができる。
【0040】
なお、本実施例の魚類の養殖装置Aにあって、この装置Aに附帯する予備層10やろ過手段16,20,回収槽12,給餌手段21,検出手段25,酸素を供給する供給部25などは同様に水槽30に対して配備されているもので、その構成は、基本的には前記第一の実施例と同様に構成されかつ、同様の作用・効果を奏するものであるから、一部のものには同一符号を付し、また、その詳細な説明は第一の実施例の構成を援用して省略する。
【0041】
したがって、この魚類の養殖装置Aによる魚類の養殖方法は、以下に述べる作用を奏する。
まず、水槽30内へ、養殖する多量の魚bとこの魚bが遊泳し得る水とを投入部32より供給して収容し、この水槽30内の水に対して作動手段31により定められた流速の旋回流(図7において矢印M方向)を与えつつ、魚bの遊泳速度に合わせて水槽30内の水の旋回流速を調整させ、該水槽30内においてこの水槽30に対する魚bの遊泳移動量を抑えさせた状態で該魚bを養殖させる。
【0042】
また、水槽2の他側部である取出部33より連続状態で排水(排水しない場合もある)して、水槽30内を魚bの遊泳速度に合わせて水槽30内の水の流速を調整(例えば、稚魚bの遊泳速度≒海水の旋回流動速度 となるように調整)させる。
【0043】
すると、大量に投入された稚魚bは、該水槽30内において徐々にばらけてこの水槽30の全体にわたって互いに干渉しない間隔で、供給された流速のある旋回流の水に逆らって(図7において矢印Nの方向へ)遊泳する。このとき、魚bは、自分の遊泳速度と水槽30を旋回流動する水速度とがほぼ同じであるため、各魚bが水槽30内において、現在の位置とほぼ同じ位置を遊泳し続けるので、実質的、この水槽30に対する魚bの遊泳移動量がほとんど無く、他の魚bに干渉したり、水槽30の内壁などに衝突する、あるいは、前記干渉や衝突を回避するためにこれら魚bに生ずるストレスが可及的減少させることができて、該魚bが良好な状態で成長が促進され、結果、優良品となる魚bを養殖させることができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、従来から養殖が困難とされていた高速回遊魚であっても、良好な歩留まりにより、良質の魚が短期間で大量に養殖することができる。
水槽を陸地に設置することができるので、海や湖などの波等の水の影響、特には、台風時における影響を受けにくいため、安定した魚の養殖を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関する魚類の養殖方法に採用した魚類の養殖装置の第一の実施例の概要を示す説明図である。
【図2】図1における魚類の養殖装置の水槽部を示す横断断面図である。
【図3】図1における魚類の養殖装置の水槽部の他の例を示す要部の正面図である。
【図4】図1における魚類の養殖装置の水槽部を示す要部の斜視図である。
【図5】図1における魚類の養殖装置の最終部に接続させた回収槽の概略を示す平面図である。
【図6】本発明に関する魚類の養殖方法に採用した魚類の養殖装置の第二の実施例の概要を示す説明図である。
【図7】図4における魚類の養殖装置の水槽部の概略を示す平面図である。
【符号の説明】
A…魚類の養殖装置.b…魚.1…支持体.2,30…水槽.3…供給手段.4…排水手段.5…投入部.6…取出部.25…検出手段

Claims (3)

  1. 内部に魚類を収容する水槽と、水槽より上部に設けられるタンクと、該水槽の一側部へ接続させた前記魚類が生息し得る水を前記タンクから導入する供給手段と、前記水槽の他側部に接続させて該水槽内の水を排出する排水手段と、前記水槽の適所に設けた魚の投入部および魚の取出部とを有する魚類の養殖装置にあって、前記水槽は、その内部を前記一側部から前記他側部にわたって一連となる空洞の筒状に形成して、前記一側部から前記他側部に至るまでを螺旋状となるように設けてあり、前記内部を前記供給手段と前記排水手段とによって前記水を定められた流速となるように充満させたことを特徴とする魚類の養殖装置。
  2. 水槽の適所に該水槽内の環境を検出する検出手段を一個または複数個配設させたことを特徴とする請求項1記載の魚類の養殖装置。
  3. 螺旋状に設けた水槽内へ前記水槽より上部に設けられるタンクから前記水槽の一側部水を定められた流速となるように供給しつつ、前記水槽の他側部より排水した該水槽内に一連の水流路を形成させた状態において、前記水槽の一側部から魚を投入し、前記一連の水流路内を前記魚の遊泳速度に合わせて前記水槽内の水の流速を調整させ、該水槽内においてこの水槽に対する前記魚の遊泳移動量を抑えさせた状態で該魚を養殖させることを特徴とする魚類の養殖方法。
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